JP6073525B2 - セルロースエーテルを含む粘膜に適用するための組成物 - Google Patents

セルロースエーテルを含む粘膜に適用するための組成物 Download PDF

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Description

本発明は、例えば生理学的活性剤の経粘膜送達のために粘膜に適用する組成物、及び生理学的活性剤を個体に投与する方法に関する。
生理学的活性剤の経粘膜送達用の薬学的組成物のような、粘膜に適用するための組成物は、長く知られている。点鼻薬及び鼻用噴霧剤は、鼻腔への投与が意図される薬物送達系として知られている。しかし、既知の点鼻薬及び鼻用噴霧剤は、鼻孔から、または鼻腔の奥から鼻咽頭へ滴ることにより鼻腔から急速に流出することが多く、生理学的活性剤の不十分な効力をもたらし得る。軟膏剤またはゲル剤のような高粘度送達系は、鼻腔内に長時間保持されるが、軟膏剤またはゲル剤の正確な投与量を計量すること、続いて鼻腔内の所望の位置に送達することは困難である。同様の問題は、薬学的組成物が目の粘膜のような他の粘膜、または頬粘膜のような口腔内の粘膜に適用される場合に経験される。
この問題に対処するため、欧州特許第0023359号は、薬物及び担体を含む、鼻腔の粘膜への適用のための粉末状の薬学的組成物を開示する。この組成物の少なくとも90%が、20〜250μmの有効粒子直径を有する粒子からなる。2%水溶液として37℃±0.2℃で決定される5〜5000mPa・sの粘度を有する低級アルキルのセルロースエーテルを含む組成物。低級アルキルのセルロースエーテルは、好適には、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、またはヒドロキシプロピルメチルセルロースである。0.1〜6、とりわけ0.4〜4.6のエーテル置換度を有するものが、好適であると言われている。この薬学的組成物は、鼻粘膜の粘膜を吸収し、流体表面として鼻粘膜を覆う。残念ながら、粉末状薬学的組成物を鼻腔に噴霧するのはかなり複雑である。欧州特許第023359号は、カプセルに粉末状組成物を充填し、針を備えた噴霧器にそれを装着し、針をカプセルに突き刺して、カプセルの上面及び底面に微小の穴を開け、その後、ゴム風船を用いて空気を送り、粉末を噴射させることを提案している。更に粉末状組成物は、多くの場合、鼻腔内で異物として感じられ、鼻腔を刺激し、鼻腔の乾燥をもたらし得る。
粘膜に適用される従来技術の組成物の上述の欠陥を考慮すると、本発明の目的は、粘膜に容易に適用することができ、粘膜に長時間保持される組成物を提供することである。
本発明の一態様は、粘膜に適用するための組成物であって、
i)等張化剤と、
ii)少なくとも55重量パーセントが水である液体希釈剤と、
iii)組成物の総重量に基づいて、0.1〜6重量パーセントのセルロースエーテルと、を含み、
セルロースエーテルが、2重量%水溶液として20℃、10s−1の剪断速度で測定される、1.2〜8000mPa・sの粘度を有し、
セルロースエーテルが、1〜4個の結合により接合されたアンヒドログルコース単位を有し、かつアンヒドログルコース単位のヒドロキシル基が、s23/s26が0.29以下となるようにメチル基で置換されるような、置換基としてのメチル基、ヒドロキシアルキル基、及び任意選択で、メチルとは異なるアルキル基を有し、
s23は、アンヒドログルコース単位の2位及び3位の2つのヒドロキシル基のみがメチル基で置換されるアンヒドログルコース単位のモル分率であり、
s26は、アンヒドログルコース単位の2位及び6位の2つのヒドロキシル基のみがメチル基で置換されるアンヒドログルコース単位のモル分率である、組成物である。
本発明の別の態様は、上述の組成物を含む容器であり、容器は噴霧により、または滴薬として組成物を放出するように設計されている。
本発明のなお別の態様は、生理学的活性剤を個体に経粘膜投与する方法であり、生理学的活性剤を追加的に含む上述の組成物が個体の粘膜に適用される。
驚くべきことに、本発明の組成物は、最大37℃、典型的には最大35℃、より典型的には最大33℃のゲル化温度を示すことが見出された。本発明の組成物のゲル化温度は、一般に少なくとも18℃、典型的には少なくとも21℃、より典型的には少なくとも24℃、最も典型的には少なくとも27℃である。
本発明の組成物は、例えば生理学的活性剤の経粘膜送達のために、粘膜への適用に極めて有用である。5℃または20℃での、すなわち組成物が通常貯蔵及び/または適用される温度での低粘度は、組成物の、そのような組成物を含む容器からの、例えば滴薬としての、または噴霧による放出、及びこの組成物の粘膜への投与を促進する。組成物の温度は、粘膜への適用の後に上昇する。
本発明の組成物のゲル化温度での熱ゲル化は、送達系の効力を最大化する2つの現象を誘発する。1)熱ゲル化組成物の主要部分の高い粘度は、本発明の組成物の粘膜における保持を促進し、2)本発明の組成物が熱ゲル化すると離漿が生じ、ヒドロキシアルキルメチルセルロース、等張化剤、及び典型的に存在する生理学的活性剤が、離漿流体で粘膜から洗い流される代わりに、濃縮して、粘膜と最も密接に連結する離漿層になる。
従来、ヒドロキシアルキルメチルセルロース、特にヒドロキシプロピルメチルセルロースは、増粘、凍結/解凍安定性、潤滑性、水分保持及び放出、膜形成、改変放出、手触り、稠度、形状保持、乳化、結合、ゲル化、ならびに懸濁特性を提供する、様々な用途に極めて有用であることが見出されている。しかし、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のヒドロキシアルキルメチルセルロースは、通常、付随の実施例に示されているように、ヒトのような哺乳動物の鼻腔内で遭遇する温度で組成物の十分な増粘効果を提供しない。ヒドロキシアルキルメチルセルロースの1つの並外れた特性は、水中で逆熱ゲル化を示すことが知られていることであり、換言すると、ヒドロキシアルキルメチルセルロースは、2%の濃度で溶解したとき、50℃を超える温度でゲル化し、20℃以下の温度に冷却されると液体を形成する。約5℃の水に単独で2重量%に溶解するヒドロキシアルキルメチルセルロースの大部分の等級は、ヒトの通常の体温より少なくとも約10℃高い温度で沈殿し、続いてゲル化する。
本発明において、粘膜に適用するための組成物は、1〜4個の結合により接合されたアンヒドログルコース単位を有し、かつ置換基としてのメチル基、ヒドロキシアルキル基、及び任意選択でメチルとは異なるアルキル基を有する少なくとも1つのセルロースエーテルを含む。ヒドロキシアルキル基は、互いが同じまたは異なってもよい。好適には、セルロースエーテルは、一種または二種のヒドロキシアルキル基、さらに好適には、ヒドロキシプロピル及び/またはヒドロキシエチル等の一種以上のヒドロキシ−C1−3−アルキル基を含む。有用な任意のアルキル基は、例えば、エチルまたはプロピルであり、エチルが好適である。好適な第3級セルロースエーテルは、エチルヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルメチルセルロース、またはヒドロキシエチルヒドロキシプロピルメチルセルロースである。好適なセルロースエーテルは、ヒドロキシアルキルメチルセルロース、特にヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはヒドロキシエチルメチルセルロース等のヒドロキシ−C1−3−アルキルメチルセルロースである。
セルロースエーテルの必須の特徴は、s23/s26が0.29以下、好適には0.28以下、さらに好適には0.26以下、最も好適には0.24以下、特に0.22以下であるような、アンヒドログルコース単位上のメチル基の特有の分布である。典型的に、s23/s26は、0.05以上、さらに典型的には0.08以上、最も典型的には0.11以上である。
s23/s26の比率において、s23は、アンヒドログルコース単位の2位及び3位の2つのヒドロキシル基だけがメチル基で置換されるアンヒドログルコース単位のモル分率であり、s26は、アンヒドログルコース単位の2位及び6位の2つのヒドロキシル基だけがメチル基で置換されるアンヒドログルコース単位のモル分率である。s23を決定するため、「アンヒドログルコース単位の2位及び3位の2つのヒドロキシル基だけがメチル基で置換されるアンヒドログルコース単位のモル分率」という用語は、6位はメチルで置換されない、例えば、これらは非置換ヒドロキシル基であり得るか、またはこれらはヒドロキシアルキル基、メチル化ヒドロキシアルキル基、メチルとは異なるアルキル基、またはアルキル化ヒドロキシアルキル基で置換され得ることを意味する。s26を決定するため、「アンヒドログルコース単位の2位及び6位の2つのヒドロキシル基だけがメチル基で置換されるアンヒドログルコース単位のモル分率」という用語は、3位はメチルで置換されない、例えば、これらは非置換ヒドロキシル基であり得るか、またはこれらはヒドロキシアルキル基、メチル化ヒドロキシアルキル基、メチルとは異なるアルキル基、またはアルキル化ヒドロキシアルキル基で置換され得ることを意味する。
本明細書において使用する場合、用語「メチル基で置換されるヒドロキシル基」または「ヒドロキシアルキル基で置換されるヒドロキシル基」は、ヒドロキシル基上の水素原子が、メチル基またはヒドロキシアルキル基によって置き換えられることを意味する。
以下の式Iは、アンヒドログルコース単位のヒドロキシル基の番号付与を例示している。式Iは、例示の目的のためにのみ使用され、本発明のセルロースエーテルを表さず、ヒドロキシアルキル基での置換は、式Iに示されない。
Figure 0006073525
セルロースエーテルは、好適に1.6〜2.5、さらに好適には1.7〜2.4、最も好適には1.7〜2.2.のDS(メチル)を有する。セルロースエーテルのメチル置換度DS(メチル)は、アンヒドログルコース単位毎にメチル基で置換されるOH基の平均数である。DS(メチル)を決定するため、
用語「メチル基で置換されるOH基」は、セルロース主鎖の炭素原子に直接結合するメチル化OH基だけでなく、ヒドロキシアルキル化後に形成されたメチル化OH基も含む。
セルロースエーテルは、一般的に、0.05〜0.35、好適には0.05〜0.33、さらに好適には0.05〜0.29、最も好適には0.05〜0.25または0.05〜0.20またはさらには0.05〜0.15のMS(ヒドロキシアルキル)を有する。ヒドロキシアルキル置換度は、MS(モル置換)によって記載される。MS(ヒドロキシアルキル)は、1モルのアンヒドログルコース単位毎のエーテル結合によって結合されるヒドロキシアルキル基の平均数である。ヒドロキシアルキル化の間、複数の置換が、側鎖を生じ得る。
メトキシル基の置換度(DS)及びヒドロキシアルコキシル基のモル置換(MS)は、ヨウ化水素によるヒドロキシアルキルメチルセルロースのZeisel開裂、続く定量的ガスクロマトグラフィー分析によって決定することができる(G.Bartelmus and R.Ketterer,Z.Anal.Chem.,286(1977)161−190)。ヒドロキシアルキルメチルセルロースがヒドロキシプロピルメチルセルロースであるとき、メトキシル%及びヒドロキシプロポキシル%の決定は、米国薬局方(USP35、「Hypromellose」、3467〜3469頁)に従って実施される。得られる値は、メトキシル%及びヒドロキシプロポキシル%である。続いてこれらは、メトキシル置換基の置換度(DS)及びヒドロキシプロポキシル置換基のモル置換度(MS)に変換される。塩の残留量が変換の考慮に入っている。
本発明の組成物に利用されるセルロースエーテルは、水中2重量%の溶液として、20℃、10s−1の剪断速度で測定して、1.2〜8000mPa・s、好適には1.8〜6000mPa・s、さらに好適には2.4〜3000mPa・s、さらにより好適には2.4〜1000mPa・s、最も好適には3.0〜500mPa・sの粘度を有する。セルロースエーテルの粘度は、Anton Paar Physica MCR501レオメーター及びカップ及び下げ振り取付具(CC−27)で、水中2重量%の溶液として、20℃、10s−1の剪断速度で測定される。
本発明の組成物に利用されるセルロースエーテルの作製方法は、実施例において詳細に記載される。セルロースエーテルの作製方法はまた、公開された国際特許出願第2012/051035号及び同第2012/051034号にも記載される。本発明の組成物の別の必須成分は、等張化剤である。1つ以上の等張化剤は、体液、例えば鼻腔からの流体または目からの流体の等張性を部分的または完全に達成し、低減した刺激レベルもたらすために、本発明の組成物に含まれ得る。本発明の一態様において、等張化剤は、アルカリまたはアルカリ性土類金属ハロゲン化物、好適にはアルカリまたはアルカリ性土類金属塩化物である。薬学的に許容される等張化剤の例には、塩化ナトリウム、塩化カリウム、デキストロース、キシリトール、塩化カルシウム、グルコース、グリセリン、マンニトール、及びソルビトールが含まれるが、これらに限定されない。等張化剤は、組成物の総重量に基づいて、好適には0.1〜10パーセント、より好適には0.2〜8.0パーセント、さらにより好適には0.3〜6.0パーセントまたは0.5〜4.0パーセント、最も好適には0.5〜2.0パーセントの量で含まれる。一実施形態において、等張化剤は、デキストロース及び/またはキシリトールである。別の実施形態において、等張化剤は、塩化ナトリウムである。なお別の実施形態において、等張化剤は、緩衝剤である。適切な緩衝剤には、クエン酸、グルコン酸、炭酸、酒石酸、コハク酸、酢酸、フタル酸、またはリン酸の塩のような有機酸塩が含まれるが、これらに限定されない。リン酸緩衝液が特に有用である。リン酸緩衝液は、典型的には、二塩基性リン酸ナトリウム若しくはカリウム、または一塩基性リン酸ナトリウム若しくはカリウムを含む。加えて、アミノ酸構成成分を緩衝剤として使用することもできる。そのようなアミノ酸構成成分には、グリシン及びヒスチジンが限定されることなく含まれる。緩衝剤は、改善されたpH制御を提供する。一実施形態において、本発明の組成物は、5.0〜8.0、好適には6.0〜8.0、より好適には6.0〜7.0のpHを有する。特定の実施形態において、本発明の組成物は約6.5のpHを有する。
驚くべきことに、上で更に記載されたセルロースエーテルを等張化剤と組み合わせて含む本発明の組成物は、同じ種類及び量のセルロースエーテルを等張化剤なしで含有する比較組成物よりも低い温度でゲル化を示すことが見出された。代替的には、低濃度の前述のセルロースエーテルを、等張化剤の存在下で利用することができ、同時に、所望の温度で組成物の熱ゲル化を依然として達成することができる。上で更に記載されたセルロースエーテルと組み合わせた等張化剤の効果は、実施例においてより詳細に例示されている。
本発明の組成物は、粘膜への適用のため、例えば鼻腔内、頬側、舌下、膣内、眼内、または直腸内適用のために有用である。
本発明の一実施形態において、組成物は、1つ以上の生理学的活性剤、好適には1つ以上の薬物、1つ以上の診断剤、もしくは1つ以上の精油、または美容もしくは栄養上の目的に有用である1つ以上の生理学的活性剤を含む。用語「薬物」は、個体、特に哺乳動物、とりわけヒトに投与される場合、有益な予防及び/または治療特性を有する化合物を示す。鼻腔内、頬側、舌下、膣内、眼内、もしくは直腸内送達のような経粘膜送達、または歯肉もしくは唇に位置する粘膜を介する送達に有用である生理学的活性剤は、当該技術分野において知られている。
本発明の組成物は、アレルギー性鼻炎、鼻詰まり、及び炎症の治療、糖尿病、片頭痛、嘔気、禁煙、急性疼痛緩和、夜尿症、骨粗鬆症、ビタミンB12欠乏症の治療、ならびに鼻腔内ワクチンの投与に有用な薬物のような1つ以上の生理学的活性剤の鼻腔内送達、または口腔内に位置する粘膜を介する送達に特に有用であるが、生理学的活性剤は、これらの例に限定されない。とりわけ好適な薬物は、アセトアミノフェン、アゼラスチン塩酸塩、ジプロピオン酸ベクロメタゾン一水和物、コハク酸スマトリプタン、メシル酸ジヒドロエルゴタミン、プロピオン酸フルチカゾン、トリアムシノロンアセトニド、ブデソニド、クエン酸フェンタニル、酒石酸ブトルファノール、ゾルミトリプタン、酢酸デスモプレシン水和物、サケカルシトニン、酢酸ナファレリン、酢酸ブセレリン、エルカトニン、オキシトシン、インスリン、フロ酸モメタゾン、エストラジオール、メトクロプラミド、キシロメタゾリン塩酸塩、臭化イプラトロピウム水和物、オロパタジン塩酸塩、オキシメタゾリン塩酸塩、デクスパンテノール、ヒドロコルチゾン、ナファゾリン塩酸塩、フェニレフリン塩酸塩、マレイン酸メピラミン、フェニレフリン塩酸塩、クロモリンナトリウム、レボカバスチン塩酸塩、ビタミンB12、メタスルホ安息香酸ナトリウムプレドニゾロン、硝酸ナファゾリン、テトラヒドロゾリン塩酸塩、マレイン酸クロルフェニラミン、塩化ベンゼトニウム、フマル酸ケトチフェン、ヒスタミン二塩酸塩、フサファンギン、またはこれらの組み合わせである。精油の例は、メントール、サリチル酸メチル、チモール、ユーカリ油、ショウノウ、アニス、アマダイダイ、またはこれらの組み合わせである。本発明のなお別の実施形態において、本組成物は、薬物、診断剤、精油、または美容もしくは栄養上の目的に有用である生理学的活性剤から選択される生理学的活性剤を含まない。上に記載されたセルロースエーテルを等張化剤と組み合わせるが、追加的に生理学的活性剤と組み合わせることなく含む組成物は、例えば、鼻腔をすすぐ、及び/もしくは潤いを与えるため、または人工涙として有用である。
経粘膜送達用の組成物は、液体希釈剤を更に含み、その少なくとも55重量パーセント、最大100パーセントが水である。本発明の組成物は、有機液体希釈剤を追加的に含むことができるが、本発明の組成物は、有機液体希釈剤及び水の総重量に基づいて、少なくとも55、好適には少なくとも65、より好適には少なくとも75、最も好適には少なくとも90、特に少なくとも95重量パーセントの水、及び、最大45、好適には最大35、より好適には最大25、最も好適には最大10、特に最大僅か5重量パーセントの有機液体希釈剤を含むべきである。一実施形態において、希釈剤は水からなる。水は、典型的には、精製水、例えば米国薬局方精製水、欧州薬局方精製水、または注射用水(WFI)のような高級等級の水である。
用語「有機液体希釈剤」は、本明細書で使用されるとき、25℃及び大気圧で液体である有機溶媒または2つ以上の有機溶媒の混合物を意味する。好適な有機液体希釈剤は、酸素、窒素、またはハロゲン(塩素など)のような1個以上のヘテロ原子を有する極性有機溶媒である。より好適な有機液体希釈剤は、アルコール、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及びグリセロールのような多官能アルコール、あるいは、好適にはエタノール、イソプロパノール、もしくはn−プロパノールのような単官能アルコール、または酢酸エチルのようなアセテートである。より好適には、有機液体希釈剤は、1〜6個、好適には1〜4個の炭素原子を有する。有機液体希釈剤は、好適には、エタノールまたはグリセロールのように薬学的に許容されるものである。
本発明の組成物は、1つ以上の懸濁剤、臭気、風味、もしくは味覚改善剤、防腐剤、薬学的に許容される界面活性剤、着色剤、乳白剤、または酸化防止剤のような1つ以上の任意の補助剤を含むことができる。典型的には、薬学的に許容される任意の補助剤が選択される。
安定性の目的において、本発明の組成物(例えば、鼻腔内組成物)は、1つ以上の防腐剤を含めることによって微生物または真菌の汚染及び増殖から保護され得る。薬学的に許容される抗微生物剤または防腐剤の例には、第四級アンモニウム化合物(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、セトリミド、塩化セチルピリジニウム、塩化ラウラルコニウム(lauralkonium chloride)、及びミリスチルピコリニウムクロリド(myristyl picolinium chloride))、水銀剤(例えば、硝酸フェニル水銀、酢酸フェニル水銀、及びチメロサール)、アルコール剤(例えば、クロロブタノール、フェニルエチルアルコール、及びベンジルアルコール)、抗菌性エステル(例えば、パラヒドロキシ安息香酸のエステル)、エデト酸二ナトリウム(EDTA)のようなキレート剤、ならびにクロルヘキシジン、クロロクレゾール、ソルビン酸及びその塩(ソルビン酸カリウム)、及びポリミキシンのような他の抗微生物剤が含まれ得るが、これらに限定されない。薬理学的に許容される抗真菌または防腐剤の例には、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、プロピオン酸ナトリウム、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、及びブチルパラベンが含まれ得るが、これらに限定されない。防腐剤は、含まれる場合、組成物の総重量に基づいて、典型的には0.001〜1%、例えば0.015%〜0.5%の量で存在する。一実施形態において、防腐剤は、塩化ベンザルコニウム、EDTA、及び/またはソルビン酸カリウムから選択される。更なる実施形態において、防腐剤は、EDTA及び/またはソルビン酸カリウムである。
本発明の組成物は、組成物の総重量に基づいて、0.1〜6パーセント、好適には0.2〜5パーセント、さらにより好適には0.5〜4パーセント、最も好適には0.5〜3.5パーセントの上に定義されたセルロースエーテル、典型的には、0.1〜10パーセント、好適には0.2〜8.0パーセント、さらに好適には0.3〜6.0パーセント、さらにより好適には0.5〜4.0パーセント、最も好適には0.5〜2.0パーセントの等張化剤、典型的には0〜20パーセント、または0.01〜10パーセント、または0.1〜5パーセントの生理学的活性剤、及び典型的には、0〜30パーセント、または0.01〜20パーセント、または0.1〜10パーセントの1つ以上の任意の補助剤を含み、残部は液体希釈剤である。液体希釈剤の少なくとも55パーセント、好適には少なくとも65パーセント、より好適には少なくとも75パーセント、最も好適には少なくとも90パーセント、特に少なくとも95パーセント、最大100パーセントの重量が、水である。本組成物は、組成物が5℃で液体であるように、一般に十分な量の液体希釈剤を含む。好適には、液体希釈剤の量は、組成物の総重量に基づいて、少なくとも50パーセント、より好適には少なくとも80パーセント、最も好適には少なくとも90パーセントである。本発明の組成物は、5℃及び10s−1の剪断速度で測定して、好適には、1.2〜10,000mPa・s、さらに好適には2.4〜8000mPa・s、さらにより好適には10〜5000mPa・s、最も好適には20〜1000mPa・sの粘度を有する。
好適には、本発明の組成物は、本明細書に記載される好適な実施形態の組み合わせである。例えば、本発明の組成物は、i)好適な等張化剤、ii)好適な液体希釈剤、iii)好適なヒドロキシアルキル基と、好適なMS(ヒドロキシ)アルキル、好適なDS(メチル)、好適なs23/s26比率、及び好適な粘度との組み合わせによって定義される好適なセルロースエーテル、ならびに任意選択で、iv)好適な生理学的活性剤及びv)1つ以上の好適な任意の補助剤の組み合わせを好適に含み、構成成分i)、ii)、iii)ならびに任意選択でiv)及びv)は、本明細書に記載されるとおり、組成物において好適な重量範囲で含まれる。
本発明の組成物は、好適には、噴霧可能な溶液もしくは懸濁液の形態、滴薬として適用される溶液もしくは懸濁液、またはシロップの形態である。本組成物は、送達装置としての役割も果たすことができる適切な容器に、例えば、噴霧剤または滴薬を生成し、続いて意図される送達部位に適用するように設計された容器に包装され得る。送達装置は、多用量または単位用量装置であり得る。
本発明の組成物は、好適には、容器中の組成物の体積が100ml以下、より好適には50ml以下、または25ml以下であるように、容器に包装される。典型的には、容器中の組成物の体積は、少なくとも0.1ml、または少なくとも1ml、または少なくとも2ml、または少なくとも5ml、または少なくとも10mlである。液体組成物の体積は、典型的には意図される用途に応じて決まる。単回用量バイアルは、多くの場合、僅か0.1〜2mlの液体組成物を含む。組成物を一滴ずつ放出するように設計されているスプレーまたはボトルは、通常、より多くの量の液体組成物、例えば5〜50mlまたは10〜25mlを含む。
本発明の組成物は、好適には1〜23℃、より好適には5〜20℃の温度で貯蔵される。本発明の組成物を個体の粘膜に適用すると、組成物の温度が上昇し、組成物の水性希釈剤に懸濁している、好適には溶解しているセルロースエーテルは、本発明の組成物の温度が粘膜の温度、すなわち、30〜37℃、典型的には30〜35℃の温度に適合すると沈殿またはゲル化する。粘膜の正確な温度は、粘膜の種類、個体、時刻、及び周囲環境の状態に応じて幾らか左右される。ヒトの場合、鼻腔内の粘膜は、典型的には30〜35℃の温度を有し、舌下の口腔粘膜は、典型的には約36.8±0.4℃の温度を有し、直腸粘膜は、典型的には約37℃の温度を有する。
組成物のゲル化は、実施例部分において記載されているように決定され得る。本発明の組成物の好適な実施形態は、鼻粘膜への適用に特に有用である。一般に、本発明の組成物は、最大37℃、好適な実施形態においては、最大35℃、別の好適な実施形態においては、最大33℃のゲル化温度を示す。
本発明の組成物に利用されるセルロースエーテルのゲル化挙動を、ある特定の経粘膜送達系の特定の必要性にある程度適応させることができる。例えば、本発明の組成物の所望の粘度増加は、組成物が、より高濃度のセルロースエーテルを有する場合、濃度がより低い場合よりも低い温度で達成され得る。さらに、0.05〜0.25または0.05〜0.20またはさらには0.05〜0.15のMS(ヒドロキシアルキル)を有する本発明の組成物において利用されるセルロースエーテルは、より高いMS(ヒドロキシアルキル)を有する比較セルロースエーテルよりも、本発明の組成物において一般的により低い温度でゲル化する。
本発明の幾つかの実施形態が、ここで、以下の実施例において詳細に記載される。
特に記述のない限り、全ての部及び百分率は重量による。実施例では以下の試験手順が使用される。
ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)のDS(メチル)及びMS(ヒドロキシプロピル)の決定
メトキシル%及びヒドロキシプロポキシル%の決定は、米国薬局方(USP35、「Hypromellose」、3467〜3469頁)に従って実施した。得られる値は、メトキシル%及びヒドロキシプロポキシル%である。続いてこれらは、メトキシル置換基の置換度(DS)及びヒドロキシプロポキシル置換基のモル置換(MS)に変換される。塩の残留量が変換の考慮に入っている。
HPMCの2%純粋水溶液の生成
HPMCの2%水溶液を得るため、(HPMCの含水量を考慮して)3gの、挽いて粉砕し乾燥させたHPMCを、147gの水道水(20〜25℃の温度)に、室温で、三翼(翼=2cm)ブレード攪拌器付きオーバーヘッド実験室攪拌器を用いて750rpmで攪拌しながら添加した。次いで、溶液を約5℃に冷ました。5℃の温度に達した後、溶液を750rpmで5時間攪拌し、冷蔵庫で一晩貯蔵した。使用または分析前に、溶液を100rpmで15分間、氷浴内で攪拌した。
HPMCの粘度の決定
2重量%HPMC水溶液の定常剪断流粘度η(20℃、10s−1、2重量%HPMC)は、Anton Paar Physica MCR 501レオメーター及びカップ及び下げ振り取付具(CC−27)で、20℃、10s−1の剪断速度で測定した。
HPMCのs23/s26の決定
セルロースエーテルにおけるエーテル置換基の決定は、一般に知られ、例えば、Bengt Lindberg、Ulf Lindquist、及びOlle Stenbergによる、Carbohydrate Research,176(1988)137−144,Elsevier Science Publishers B.V.,Amsterdam,DISTRIBUTION OF SUBSTITUENTS IN O−ETHYL−O−(2−HYDROXYETHYL)CELLULOSEに記載される。
具体的に、s23/s26の決定は以下のとおり行う。
10〜12mgのセルロースエーテルを4.0mLの乾燥した分析等級ジメチルスルホキシド(DMSO)(Merck,Darmstadt,Germany、0.3nm分子ふるいビーズ上に貯蔵)に約90℃で攪拌しながら溶解し、次いで再び室温に冷ます。完全な可溶化を確実にするため、溶液を室温で一晩攪拌したままにする。セルロースエーテルの可溶化を含む全反応は、4mLのねじ蓋バイアルにおいて乾燥窒素雰囲気を使用して行う。可溶化後、溶解したセルロースエーテルを22mLねじ蓋バイアルに移す。アンヒドログルコース単位のヒドロキシル基毎に試薬水酸化ナトリウム及びヨウ化エチルの30倍モル過剰の、粉末状の水酸化ナトリウム(すりつぶしたて、分析等級、Merck,Darmstadt,Germany)及びヨウ化エチル(合成のために銀で安定化、Merck−Schuchardt,Hohenbrunn,Germany)を添加し、この溶液を窒素下、暗中で3日間、周囲温度で勢いよく攪拌する。完全エチル化(perethylation)を、最初の試薬添加と比較して3倍量の試薬水酸化ナトリウム及びヨウ化エチルの添加、及び室温で追加の2日間のさらなる攪拌を反復する。任意選択で、反応混合物は、反応の過程での良好な混合を確実にするため、最大1.5mLのDMSOで希釈され得る。5mLの5%チオ硫酸ナトリウム水溶液を反応混合物に注ぎ入れ、次いで、得られた溶液を4mLのジクロロメタンで3回抽出する。混合した抽出物を、3回、2mLの水で洗浄する。この有機相を、無水硫酸ナトリウム(約1g)で乾燥させる。濾過後、窒素の穏やかな気流内で溶媒を除去し、試料をさらなる試料調製まで4℃で貯蔵する。
約5mgの完全エチル化した(perethylated)試料の加水分解を、窒素下、2mLねじ蓋バイアルの中で1mLの90%ギ酸溶液と共に攪拌しながら100℃で1時間行う。酸を、窒素の気流中35〜40℃で除去し、加水分解を、1mLの2Mトリフルオロ酢酸溶液で3時間、120℃で、不活性窒素雰囲気中で攪拌しながら反復する。完了後、酸を、窒素の気流中周囲温度で、共蒸留のために約1mLのトルエンを使用し、乾燥状態に除去する。
加水分解の残渣を、0.5mLの0.5M重水素化ホウ素ナトリウムを用いて、2Nアンモニア水溶液(調製したて)中で3時間、室温で攪拌しながら還元する。過剰試薬を、約200μLの濃縮酢酸の滴下添加により破壊する。得られる溶液を、窒素の気流中、約35〜40℃で乾燥状態に蒸発させ、続いて真空で15分間、室温で乾燥させる。粘性の残渣を、0.5mLのメタノール中15%の酢酸に溶解し、室温で乾燥状態に蒸発させる。これを5回行い、純粋メタノールを用いて4回反復する。最終蒸発後、試料を真空で一晩、室温で乾燥させる。
還元の残渣を、600μLの無水酢酸及び150μLのピリジンを用いて3時間、90℃でアセチル化する。冷却後、試料バイアルをトルエンで充填し、窒素の気流の中、室温で乾燥状態に蒸発させる。残渣を4mLのジクロロメタンに溶解し、2mLの水に注ぎ入れ、2mLのジクロロメタンで抽出する。抽出を、3回反復する。混合した抽出物を、4mLの水で3回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させる。乾燥させたジクロロメタン抽出物を、続いて、GC分析にかける。GCシステムの感度により、抽出物のさらなる希釈が必要であり得る。
気液(GLC)クロマトグラフ分析は、J&W毛細管カラムDB5、30m、0.25mmID、0.25μmの相層厚を備え、1.5バールヘリウムキャリアガスで作動する、Hewlett Packard5890A及び5890AシリーズII型のガスクロマトグラフで行う。ガスクロマトグラフは、60℃で1分間一定に保ち、20℃/分の速度で200℃まで加熱し、さらに4℃/分の速度で250℃まで加熱し、さらに20℃/分の速度で310℃まで加熱し、それをさらに10分間一定に保つ温度分布でプログラムした。注入温度を280℃に設定し、水素炎イオン化検出器(FID)の温度を300℃に設定する。1μLの試料を、スプリットレスモードに0.5分の弁時間で注入する。データを取得し、LabSystems Atlas作業端末で処理する。
定量的モノマー組成物データを、FID検出でGLCにより測定したピーク面積から得る。モノマーの1モル当たりの反応を、有効炭素数(ECN)概念に沿って算出したが、下記の表に記載するとおり変更する。有効炭素数(ECN)概念は、Ackman(R.G.Ackman,J.Gas Chromatogr.,2(1964)173−179及びR.F.Addison,R.G.Ackman,J.Gas Chromatogr.,6(1968)135−138)により説明され、Sweet et.al(D.P.Sweet,R.H.Shapiro,P.Albersheim,Carbohyd.Res.,40(1975)217−225)により、一部アルキル化したアルジトールアセテートの定量的分析に適用された。
[表]
Figure 0006073525
モノマーの異なる1モル当たりの反応を修正するために、ピーク面積に、2,3,6−Meモノマーと比較した反応として定義される、1モル当たりの反応要素MRFモノマーを乗算する。2,3,6−Meモノマーは、s23/s26の決定で分析されたすべての試料に存在するため、参照として選択する。
MRFモノマー=ECN2,3,6−Me/ECNモノマー
モノマーのモル分率を、以下の式に従って、修正したピーク面積を修正したピーク面積の合計で割ることにより算出する。
s23=[(23−Me+23−Me−6−HAMe+23−Me−6−HA+23−Me−6−HAHAMe+23−Me−6−HAHA]、及び
s26=[(26−Me+26−Me−3−HAMe+26−Me−3−HA+26−Me−3−HAHAMe+26−Me−3−HAHA]であり、
s23は、次の条件を満たすアンヒドログルコース単位のモル分率の合計である。
a)アンヒドログルコース単位の2位及び3位の2つのヒドロキシ基は、メチル基で置換され、6位は置換されず(=23−Me)、
b)アンヒドログルコース単位の2位及び3位の2つのヒドロキシ基は、メチル基で置換され、6位はメチル化ヒドロキシアルキル(=23−Me−6−HAMe)または2つのヒドロキシアルキル基(=23−Me−6−HAHAMe)を含むメチル化側鎖で置換され、
c)アンヒドログルコース単位の2位及び3位の2つのヒドロキシ基は、メチル基で置換され、6位はヒドロキシアルキル(=23−Me−6−HA)または2つのヒドロキシアルキル基(=23−Me−6−HAHA)を含む側鎖で置換される。
s26は、次の条件を満たすアンヒドログルコース単位のモル分率の合計である。
a)アンヒドログルコース単位の2位及び6位の2つのヒドロキシ基は、メチル基で置換され、3位は、置換されず(=26−Me)、
b)アンヒドログルコース単位の2位及び6位の2つのヒドロキシ基は、メチル基で置換され、3位は、メチル化ヒドロキシアルキル(=26−Me−3−HAMe)または2つのヒドロキシアルキル基(=26−Me−3−HAHAMe)を含むメチル化側鎖で置換され、
c)アンヒドログルコース単位の2位及び6位の2つのヒドロキシ基は、メチル基で置換され、3位は、ヒドロキシアルキル(=26−Me−3−HA)または2つのヒドロキシアルキル基(=26−Me−3−HAHA)を含む側鎖で置換される。
HAMCにおける置換基の決定の結果は、以下の表3に列挙される。HPMCのヒドロキシアルキル(HA)が、ヒドロキシプロピル(HP)である場合、メチル化ヒドロキシアルキル(HAMe)は、メチル化ヒドロキシプロピル(HPMe)である。
HPMC−Aの生成
ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を以下の方法に従って生成する。細かく粉砕した木材セルロースパルプを、ジャケット付き攪拌される反応器に充填する。酸素を除去するため、反応器を脱気し窒素でパージし、次いで再度脱気する。反応は、二段階で実施する。第1の段階において、水酸化ナトリウムの50重量パーセント水溶液を、セルロース中1モルのアンヒドログルコース単位毎に、2.0モルの量の水酸化ナトリウムをセルロースに噴霧し、温度を40℃に調整する。水酸化ナトリウム水溶液及びセルロースの混合物を、約20分間、40℃で攪拌後、1モルのアンヒドログルコース単位毎に、1.5モルのジメチルエーテル、2.5モルの塩化メチル、及び0.2モルの酸化プロプレンを反応器へ添加する。次に、反応器の内容物を、60分で80℃に加熱する。80℃に達しさせた後、第1の段階の反応を、30分間進行させる。
反応の第2の段階を、1モルのアンヒドログルコース単位毎に、2.8モル当量の塩化メチルの量の塩化メチルを添加することにより開始する。塩化メチルの追加時間は、10分である。次いで、1モルのアンヒドログルコース単位毎に、2.3モルの水酸化ナトリウムの量の水酸化ナトリウムの50重量パーセント水溶液を、90分間にわたって添加する。添加の速度は、毎分1モルのアンヒドログルコース単位毎に、0.026モルの水酸化ナトリウムである。第2の段階の添加完了後、次に、反応器の内容物を、80℃の温度で120分間維持した。
反応後、反応器を排気し約50℃まで冷ます。反応器の内容物を除去し、湯を含有する槽に移す。次いで、粗HPMCをギ酸で中和し、湯で塩化物不含に洗浄(AgNO凝集試験により評価)し、室温に冷まし、空気掃引乾燥機を用いて55℃で乾燥させる。その物質を、次いで、0.5mmスクリーンを用いてAlpine UPZ粉砕機を使用し、粉砕する。
HPMC−Bの生成
反応混合物に添加される酸化プロプレンの量が、1モルのアンヒドログルコース単位毎に0.4モルの酸化プロプレンであることを除き、実施例1を反復する。
HPMC−Cの生成
反応混合物に添加される酸化プロプレンの量が、1モルのアンヒドログルコース単位毎に0.6モルの酸化プロプレンであることを除き、実施例1を反復する。
HPMC−1、HPMC−2、HPMC−3、及びHPMC−4の生成
HPMC−A、HPMC−B、及びHPMC−Cを、粉末性試料を下記表1に列挙される時間及び温度を用いて塩化水素ガスで加熱することにより、部分的に解重合する。部分的に解重合されたヒドロキシプロピルメチルセルロースを、重炭酸ナトリウムで中和する。
Figure 0006073525
METHOCEL(商標)E4M、METHOCEL(商標)F4M、METHOCEL(商標)K4M、METHOCEL(商標)F5、及びMETHOCEL(商標)E5セルロースエーテル
METHOCEL(商標)E4M、METHOCEL(商標)F4M、METHOCEL(商標)K4M、METHOCEL(商標)F5、及びMETHOCEL(商標)E5セルロースエーテルは、The Dow Chemical Companyより市販され、E4M、F4M、K4M、F5、及びE5と略称される。
比較実施例C−20及びC−21
METHOCEL(商標)F4Mを、1gのヒドロキシプロピルメチルセルロース毎に1.5gのHClガスと、70℃の温度で50分間接触させることにより、部分的に解重合した。部分的解重合に使用されたMETHOCEL(商標)F4Mは、下記表2のF4Mと略称されるものとは異なるバッチから生じ、僅かに異なるDS及びMSを有した。続いてHCガスを、脱気によって除去した。ヒドロキシプロピルメチルセルロースを、室温に冷まし、続いて重炭酸ナトリウムで中和した。
HPMCの特性は、下記表2に列挙される。
Figure 0006073525
Figure 0006073525
Figure 0006073525
鼻粘膜への適用のための水溶液の調製
下記の表4に列挙されるとおりの濃度を有する濃縮HPMC溶液は、良好な分散を達成するため、対応する量の乾燥HPMC粉末を、磁気攪拌棒を使用して>80℃の初期温度を有する水に添加することにより調製した。HPMCの混合物及び水を、同じ速度で攪拌しながら、20分以内で5℃に冷ました。HPMCの混合物及び水が5℃の温度に達した後、混合液をこの温度で追加の1時間攪拌した。これらの溶液を、冷蔵庫で一晩貯蔵した。
Figure 0006073525
冷蔵庫からの濃縮HPMC溶液を、適切である場合そのまま使用するか、水、または等張化剤及び/もしくは冷蔵庫からの活性医薬成分(API)の濃縮水溶液のいずれかと、磁気攪拌棒の使用により、均質な溶液が達成されるまで混合した。アセトアミノフェンをAPIとして使用した。この追加の混合の際に、溶液温度は依然として冷たく、7℃を超える温度に達していなかった。濃縮水溶液における等張化剤及び/またはAPIの濃度は、選択された混合比で得られた混合物に所望の濃度を達成するように選択した。得られた混合物中、等張化剤は、脱イオン水中に0.65重量パーセントの塩化ナトリウム及び0.25重量パーセントのリン酸ナトリウムを含むpH6.5のリン酸緩衝溶液(PBS)の塩だった。例えば、実施例I−1の水溶液は、リン酸緩衝生理的食塩水(0.65%塩化ナトリウム、0.25%リン酸ナトリウム)中に5重量%のHPMC溶液を生成するために、等量の10重量%HPMC−3を含む溶液を、1.3重量%塩化ナトリウム及び0.5重量%リン酸ナトリウムを含有する溶液と混合することにより調製した。すべての実施例及び比較実施例の水溶液は、完全に可溶性の明澄な溶液であり、特性評価が行われるまで、冷蔵庫で貯蔵した。
HPMCを含む粘膜に適用する水性組成物の粘度の決定
粘膜に適用する水性組成物の粘度は、カップ及び下げ振り取付具を有するARES RFS3レオメーター(TA−Instruments)を使用し、5℃及び10s−1の剪断温度で測定した。
HPMCを含む水性組成物のゲル化温度を決定する
HPMC、及び任意に緩衝剤のような等張化剤、ならびに/または生理学的活性剤を含む水溶液のレオロジー測定は、カップ及び下げ振り取付具を有するAres RFS3レオメーター(TA−Instruments)を用いて実施した。17ミリリットルの溶液をカップ取付具に移し、隙間を5mmに設定した。試料を、2%の一定歪み、及び1秒毎5ラジアンの一定角振動数により、1分毎1℃の速度、10〜50℃の温度範囲にわたって加熱した。
振動測定により得られる貯蔵弾性率G′は、溶液の弾性特性を表す。振動測定により得られる損失弾性率G″は、溶液の粘度特性を表す。低温で、損失弾性率の値G″は、貯蔵弾性率G′よりも高く、両方の値は、温度の上昇に伴い僅かに低下する。更なる温度の上昇により、貯蔵弾性率の値が増加し、貯蔵弾性率と損失弾性率との交差を得る。G′とG″との交差は、ゲル化温度と決定される。いくつかのHPMCは、G′とG″との交差の2つの点を示す場合がある。そのような場合において、ゲル化温度は、G′/G″=1よりも1℃低い温度で、G′/G″=1及びG″>G′の温度である。
水溶液の化学組成、これらのゲル化温度、及びこれらの粘度は、下記の表5に列挙される。
Figure 0006073525
Figure 0006073525
実施例I−1とI−2との比較の一方、上記表5の比較実施例C−1は、0.29以下のs23/s26をもつヒドロキシアルキルメチルセルロースを等張化剤と組み合わせて含む組成物は、同じヒドロキシアルキルメチルセルロースを単独で含む組成物よりも低いゲル化温度を有することを例示する。比較実施例C−1の組成物は、ヒト粘膜の通常の温度を超える温度でゲル化し、したがって、実施例I−1及びI−2の組成物と同じ利点を有さない。
それぞれ実施例I−3と比較実施例C−3との間、実施例I−4と比較実施例C−4との間、及び実施例I−5と比較実施例C−6との間の比較は、上に論じられたように等張化剤との組み合わせた、0.29以下のs23/s26を有するヒドロキシアルキルメチルセルロースの同じ効果、すなわち、組成物のゲル化温度を低下させることを例示する。実施例I−8とI−9との比較の一方、比較実施例C−15は、重ねて、同じ効果を例示する。
比較実施例C−1及びC−2は、水性組成物のゲル化温度が、ヒドロキシアルキルメチルセルロースの濃度に左右されることを例示する。水性組成物におけるヒドロキシアルキルメチルセルロースの濃度が上昇すると、ゲル化温度が低下し、その逆も同様である。経済的理由で、ヒドロキシアルキルメチルセルロースの濃度をできるだけ低く保つことが望ましい。
再度、実施例I−4とI−3との間、実施例I−7とI−6との間、比較実施例C−4、C−3とC−5との間、及び比較実施例C−13、C−12とC−14との間の比較は、水性組成物におけるヒドロキシアルキルメチルセルロースの濃度が上昇すると、ゲル化温度が低下し、その逆も同様であることを例示する。等張化剤の存在に起因する低下したゲル化温度は、ヒドロキシアルキルメチルセルロースの濃度の低下を可能にする。
比較実施例C−8及びC−10は、2重量%水溶液として、20℃、10s−1の剪断速度で測定して8000mPa・s超の粘度を有するヒドロキシアルキルメチルセルロースの使用が、通常、粘膜への適用のための組成物において、s23/s26が0.29以下である場合でも、ある特定の等張化剤の存在下でおいてさえも、所望の利点を提供しないことを例示する。比較実施例C−8とC−9との間、及び比較実施例C−10とC−11との間の比較は、等張化剤としての3%NaClの使用が、より少ない量のNaClを含むリン酸緩衝溶液(PBS)よりもゲル化温度を低下させることを例示する。しかしながら、8000mPa・sを超える粘度を有するヒドロキシアルキルメチルセルロースの使用は、等張化剤の選択を過度に制限するため、不利である。比較実施例C−7〜C−11は、先行技術ではない。
比較実施例C−16〜C−20は、0.29を超えるs23/s26を有するヒドロキシアルキルメチルセルロースが、2重量%の水溶液として、20℃、10s−1の剪断速度で測定して、最大8000mPa・sの粘度を有する場合でも、かつ等張化剤として3%NaClと組み合わせて使用される場合でも、粘膜への適用のための組成物において、上述の利点を提供しないことを例示する。これらの組成物は、粘膜の温度でゲル化しない。
比較実施例C−21及びC−22は、0.29を超えるs23/s26を有するヒドロキシアルキルメチルセルロースが、等張化剤と組み合わせて使用される場合でも、ヒト粘膜の通常の温度を超える温度でゲル化することを例示する。比較実施例C−21及びC−22の溶液中のヒドロキシアルキルメチルセルロースは、C−6及びI−5の比較溶液において、0.29以下のs23/s26を有するHPMC−4の温度よりも大幅に高い温度でゲル化する。
(態様1)
粘膜に適用するための組成物であって、
i)等張化剤と、
ii)少なくとも55重量パーセントが水である液体希釈剤と、
iii)前記組成物の総重量に基づいて、0.1〜6重量パーセントのセルロースエーテルと、を含み、
前記セルロースエーテルが、2重量%水溶液として20℃、10s −1 の剪断速度で測定される、1.2〜8000mPa・sの粘度を有し、
前記セルロースエーテルが、1〜4個の結合により接合されたアンヒドログルコース単位を有し、かつアンヒドログルコース単位のヒドロキシル基が、s23/s26が0.29以下となるようにメチル基で置換されるような、置換基としてのメチル基、ヒドロキシアルキル基、及び任意選択で、メチルとは異なるアルキル基を有し、
s23は、前記アンヒドログルコース単位の2位及び3位の2つのヒドロキシル基のみがメチル基で置換されるアンヒドログルコース単位のモル分率であり、
s26は、前記アンヒドログルコース単位の2位及び6位の2つのヒドロキシル基のみがメチル基で置換されるアンヒドログルコース単位のモル分率である、前記組成物。
(態様2)
前記等張化剤は、アルカリもしくはアルカリ性土類金属ハロゲン化物、デキストロース、キシリトール、グルコース、マンニトール、またはソルビトールである、態様1に記載の前記組成物。
(態様3)
生理学的活性剤を追加的に含む、態様1または2に記載の前記組成物。
(態様4)
前記セルロースエーテルは、2重量%水溶液として20℃、10s −1 の剪断速度で測定される、1.8〜6000mPa・sの粘度を有する、態様1〜3のいずれか一項に記載の前記組成物。
(態様5)
前記セルロースエーテルは、2重量%水溶液として20℃、10s −1 の剪断速度で測定される、2.4〜1000mPa・sの粘度を有する、態様1〜4のいずれか一項に記載の前記組成物。
(態様6)
前記セルロースエーテルは、0.05〜0.35のMS(ヒドロキシアルキル)を有する、態様1〜5のいずれか一項に記載の前記組成物。
(態様7)
前記組成物の総重量に基づいて、0.1〜10重量パーセントの等張化剤を含む、態様1〜6のいずれか一項に記載の前記組成物。
(態様8)
5℃及び10s −1 の剪断速度で測定される、2.4〜8000mPa・sの粘度を有する、態様1〜7のいずれか一項に記載の前記組成物。
(態様9)
18〜37℃のゲル化温度を示す、態様1〜8のいずれか一項に記載の前記組成物。
(態様10)
鼻腔内投与のための、態様1〜9のいずれか一項に記載の前記組成物。
(態様11)
前記組成物の総重量に基づいて、0.1〜6パーセントの前記セルロースエーテル、0.1〜10パーセントの等張化剤、0〜20パーセントの生理学的活性剤、及び0〜30パーセントの1つ以上の任意の補助剤を含み、残部が前記液体希釈剤である、態様1〜10のいずれか一項に記載の前記組成物。
(態様12)
前記生理学的活性剤が、1つ以上の薬物、1つ以上の診断剤、1つ以上の精油、または美容もしくは栄養上の目的に有用である1つ以上の生理学的活性剤から選択される、態様1〜11のいずれか一項に記載の前記組成物。
(態様13)
前記精油が、メントールまたはサリチル酸メチルである、態様12に記載の前記組成物。
(態様14)
態様1〜13のいずれか一項に記載の前記組成物を含む容器であって、噴霧により、または滴薬として前記組成物を放出するように設計されている、前記容器。
(態様15)
生理学的活性剤を個体に経粘膜投与する方法であって、態様3〜13のいずれか一項に記載の前記組成物が前記個体の粘膜に適用される、前記方法。

Claims (9)

  1. 粘膜に適用するための組成物であって、
    i)前記組成物の総重量に基づいて、0.1〜10重量パーセントの等張化剤と、
    ii)少なくとも55重量パーセントが水である液体希釈剤と、
    iii)前記組成物の総重量に基づいて、0.1〜6重量パーセントのセルロースエーテルと、を含み、
    前記セルロースエーテルが、2重量%水溶液として20℃、10s−1の剪断速度で測定される、1.2〜8000mPa・sの粘度を有し、
    前記セルロースエーテルが、1〜4個の結合により接合されたアンヒドログルコース単位を有し、かつアンヒドログルコース単位のヒドロキシル基が、s23/s26が0.29以下となるようにメチル基で置換されるような、置換基としてのメチル基、ヒドロキシアルキル基、及び任意選択で、メチルとは異なるアルキル基を有し、
    s23は、前記アンヒドログルコース単位の2位及び3位の2つのヒドロキシル基のみがメチル基で置換されるアンヒドログルコース単位のモル分率であり、
    s26は、前記アンヒドログルコース単位の2位及び6位の2つのヒドロキシル基のみがメチル基で置換されるアンヒドログルコース単位のモル分率であり、そして、
    前記組成物が18〜37℃のゲル化温度を示す、前記組成物。
  2. 前記等張化剤は、アルカリもしくはアルカリ性土類金属ハロゲン化物、デキストロース、キシリトール、グルコース、マンニトール、またはソルビトールである、請求項1に記載の前記組成物。
  3. 生理学的活性剤を追加的に含む、請求項1または2に記載の前記組成物。
  4. 前記セルロースエーテルは、2重量%水溶液として20℃、10s−1の剪断速度で測定される、1.8〜6000mPa・sの粘度を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の前記組成物。
  5. 前記セルロースエーテルは、0.05〜0.35のMS(ヒドロキシアルキル)を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の前記組成物。
  6. 5℃及び10s−1の剪断速度で測定される、2.4〜8000mPa・sの粘度を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の前記組成物。
  7. 鼻腔内投与のための、請求項1〜のいずれか一項に記載の前記組成物。
  8. 前記組成物の総重量に基づいて、0.1〜6パーセントの前記セルロースエーテル、0.1〜10パーセントの等張化剤、0〜20パーセントの生理学的活性剤、及び0〜30パーセントの1つ以上の任意の補助剤を含み、残部が前記液体希釈剤である、請求項1〜のいずれか一項に記載の前記組成物。
  9. 請求項1〜のいずれか一項に記載の前記組成物を含む容器であって、噴霧により、または滴薬として前記組成物を放出するように設計されている、前記容器。
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