JP6347512B2 - 自硬性材料の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、メカノケミカル処理を施したフライアッシュを原料とする自硬性材料の製造方法に関する。
セメントーペースト、モルタル、及びコンクリート等の自硬性材料として、普通ポルトランドセメント等のセメント系材料が広く普及している。このセメント系材料では、硬化時の水和反応によって水酸化カルシウムが生成される。このため、貯蔵設備等の地下設備の構築にセメント系材料を用いると、硬化体に接触した水はアルカリ性を示す。ここで、止水性材料としてベントナイトを用いると、アルカリ環境下での変質が懸念される。またに、周囲岩盤についても同様の懸念がある。
そこで、セメント系材料に代えてフライアッシュを母材とする自硬性材料の開発がなされている。例えば、特許文献1には、フライアッシュを結合材とし、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムをアルカリ活性化剤とするジオポリマー複合体超高性能コンクリートが開示されている。
特表2013−545714号公報
特許文献1のジオポリマー複合体超高性能コンクリートでは、段落0043〜48に記載されているように、大量のアルミノケイ酸アルカリゲル、ケイ酸カルシウム水和物ゲル、及びアルミノケイ酸カルシウム水和物ゲルを生成させ、これらのゲルを硬化させることで強度を確保している。このように、強い反応性を有する大量のゲルを生成させていることから、フライアッシュの周囲に多量のゲルが存在していると解される。このため、緻密性に欠けると共に、材料の硬化時に収縮が生じる可能性がある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、フライアッシュを母材とする緻密性の高い自硬性材料を製造することにある。
前述の目的を達成するため、本発明に係る自硬性材料の製造方法は、フライアッシュにメカノケミカル処理を施し、表面を活性化させる第1工程と、強アルカリ溶液とケイ素微粉末とを混ぜ合わせ、前記強アルカリ溶液にケイ素成分が溶出されたケイ素混合物を作製する第2工程と、表面が活性化された前記フライアッシュと前記ケイ素混合物とを混ぜ合わせる第3工程からなることを特徴とする。
本発明によれば、にメカノケミカル処理で表面が活性化されたフライアッシュ同士を、強アルカリ溶液に溶出されたケイ素成分が結合することで自硬性が発現される。すなわち、フライアッシュ表面のSiと強アルカリ溶液に溶出されたSiとがOを介して結合され、Siの重合体が生成される。これにより、フライアッシュを母材とする緻密な自硬性材料を製造できる。
前述の製造方法において、前記強アルカリ溶液は、水酸化カリウム溶液であることが好ましく、前記第2工程では、前記水酸化カリウム溶液と前記ケイ素微粉末とを少なくとも3時間以上混ぜ合わせることが好ましい。これらの製造方法によれば、自硬性材料を容易に製造できる。
前述の製造方法において、前記第3工程では、前記フライアッシュと前記ケイ素混合物を減水剤と共に混ぜ合わせることが好ましい。この製造方法によれば、硬化時間を調整することができる。
本発明によれば、フライアッシュを母材とする緻密な自硬性材料を製造できる。
使用材料を説明する図である。 (a)はメカノケミカル処理前のフライアッシュを750倍で撮影した顕微鏡写真であり、(b)は同じく3000倍で撮影した顕微鏡写真である。 メカノケミカル処理前のフライアッシュの粒度分布を示す図である。 硬化体作製試験での配合と圧縮強度を説明する図である。 (a)はメカノケミカル処理を施したフライアッシュを750倍で撮影した顕微鏡写真であり、(b)は同じく3000倍で撮影した顕微鏡写真である。 メカノケミカル処理を施したフライアッシュの粒度分布を示す図である。 (a)は作製した硬化体を5000倍で撮影した写真であり、(b)は同じ硬化体の別の部位を5000倍で撮影した写真である。 作製した硬化体に対するX線回折の分析結果を示すチャートである。 作製した硬化体に対する長期浸漬試験でのpHを示す図である。 同じく長期浸漬試験でのナトリウム濃度を示す図である。 同じく長期浸漬試験でのカリウム濃度を示す図である。 同じく長期浸漬試験でのカルシウム濃度を示す図である。 強度向上試験での配合と圧縮強度を説明する図である。 基本ケースと24時間混合ケースの供試体における圧縮強度のグラフである。 基本ケースの供試体に対するFT−IR分析結果を示すチャートである。 (a),(b)は、混合条件変更試験での配合と圧縮強度(最大点試験力、最大点応力)を説明する図である。 1時間混合の結果を説明する図であり、(a)は最大点応力のグラフ、(b)は歪み応力曲線を示す。 3時間混合の結果を説明する図であり、(a)は最大点応力のグラフ、(b)は歪み応力曲線を示す。 5時間混合の結果を説明する図であり、(a)は最大点応力のグラフ、(b)は歪み応力曲線を示す。 7時間混合の結果を説明する図であり、(a)は最大点応力のグラフ、(b)は歪み応力曲線を示す。 18時間混合の結果を説明する図であり、(a)は最大点応力のグラフ、(b)は歪み応力曲線を示す。 24時間混合の結果を説明する図であり、(a)は最大点応力のグラフ、(b)は歪み応力曲線を示す。 減水剤添加試験での配合と圧縮強度(最大点試験力、最大点応力)を説明する図である。 (a)は減水剤を0%及び1%添加した場合の最大点応力のグラフであり、(b)減水剤を3%及び5%添加した場合の最大点応力のグラフである。 (a)は減水剤を0%及び1%添加した場合の歪み応力曲線のグラフであり、(b)減水剤を3%及び5%添加した場合の歪み応力曲線のグラフである。 減水剤の添加濃度と供試体の硬さを時系列で説明するグラフである。 自硬性材料の製造方法を説明するフローチャートである。
以下、本発明の実施の形態について説明する。本発明者等は、フライアッシュを母材とする自硬性材料の作製に際し、メカノケミカル処理を施すことでフライアッシュの表面を活性化させることを着想した。すなわち、アルカリ溶液を作用させることで、活性化された表面を溶解し、この表面同士を結合させることを着想した。
この着想を具現化するため、(1)硬化体作製試験、(2)長期浸漬試験、(3)強度向上試験、(4)混合条件変更試験、(5)減水剤添加試験の各試験を行った。
硬化体作製試験では、メカノケミカル処理を施して表面を活性化させたフライアッシュに対し、ケイ素微粉末及び強アルカリ溶液を混合することで硬化体を作製した。そして、強度と硬化メカニズムを確認すべく、作製された硬化体に対し、圧縮強度の測定とX線回折分析を行った。長期浸漬試験では、長期安定性を確認する観点から、作製された硬化体を水中に浸漬し、pHの測定と、ナトリウム、カリウム、カルシウムの溶出濃度の測定を行った。
強度向上試験では、硬化体の強度を向上させる観点から、ケイ素微粉末と強アルカリ溶液を所定時間に亘って事前に混ぜ合わせ、その後フライアッシュに混合する方法で硬化体を作製した。そして、強度と硬化メカニズムを確認すべく、作製された硬化体に対し、圧縮強度の測定とFT−IR分析を行った。混合条件変更試験では、ケイ素微粉末と強アルカリ溶液の混合条件を最適化すべく、混合条件を変更した複数種類の硬化体を作製し、圧縮強度の測定を行った。
減水剤添加試験では、硬化時間を調整すべく、減水剤の添加濃度を変更した複数種類の硬化体を作製し、圧縮強度の測定を行った。
まず、図1を参照し、使用材料について説明する。なお、図1では、各試験で用いられる材料をまとめて記載している。図1に示すように、材料は、大きく主材と混和剤とから構成される。
主材は、自硬性材料の大半を占めるフライアッシュであり、略号FAで記載する。本実施形態では、ジェイペック社製のJIS−2種のフライアッシュを用いた。このフライアッシュの比表面積は3000cm/gであった。図2に示すように、フライアッシュは粒径の異なる表面のなめらかな球形のものが多く含まれており、図3に示すように、粒径は500nm以上1100nm未満であった。そして、粒径800nm前後のものが最も多く含まれていた。
混和剤は、主材を硬化させたり、硬化時間を調整させたりするために添加されるものである。本実施形態では、ケイ素微粉末、強アルカリ溶液、及び減水剤を用いた。これらのうちケイ素微粉末と強アルカリ溶液は、フライアッシュ同士を結合させるためのものであり、減水剤は硬化時間を調整するためのものである。
ケイ素微粉末は2種類用いた。1種類目は龍森社製の商品名fuselex X(fuseleは登録商標)であり、略号SiO(X)で記載する。このfuselex Xは、高純度石英を電気溶融法で石英ガラス化した無定形高純度石英ガラスフィラーであり、平均粒径は3μmである。また、6μmのふるい通過分が83.2%、12μmのふるい通過分が98.3%である。2種類目はエルケムジャパン社製の商品名マイクロシリカ(登録商標)でありであり、略号SiO(EL)で記載する。このマイクロシリカは、シリカフュームとして市販されているものであり、比表面積が200000cm/g、最大粒径が1μm、平均粒径が0.15μm程度の極めて小さな球形粒子である。
強アルカリ溶液は2種類用いた。1種類目は水酸化カリウムと水酸化ナトリウムのそれぞれを上水1Lあたり3molずつ溶解させたものであり、略号W1で記載する。2種類目は水酸化カリウムをイオン交換水1Lあたり3mol溶解させたものであり、略号W2で記載する。そして、強アルカリ溶液としては、後述するように、ケイ素微粉末からケイ素イオンを溶出させられる程度のアルカリ性の溶液であることができ、例えばアルカリ金属の水酸化物の水溶液を用いることができる。好適なpHとしては、pH14.0程度である。
減水剤は、BASFポゾリス社製の減水剤、グレニウム(登録商標)ACE390であり、略号WRで記載する。この減水剤は界面活性剤を主成分とし、コンクリート製品用に最適化されたものを流用している。なお、他の種類の減水剤であっても同様の作用効果が得られると考えられる。
図4に、硬化体作製試験における供試体の配合を示す。この試験では、フライアッシュを729.6g、fuselex Xを191.52g、水酸化カリウムと水酸化ナトリウムの混合系で作製した強アルカリ溶液を310.08g使用した。W/Bは、流動性や充填性を確保すべく33.7%に調整した。
フライアッシュは、メカノケミカル処理を施して表面を活性化させたものを用いた。メカノケミカル処理は、遊星型ボ−ルミルを用いて乾式で行った。遊星型ボ−ルミルは、fritsch社のP−5タイプを用いた。ポットは、ジルコニア製の容量500mLのものを用い、ボールはジルコニアの直径10mmのものを10個用いた。回転速度は300rpm、刺激時間は3時間とした。この刺激により、図5に示すように、フライアッシュの形状が小さくなり、球状を保つものが減少していた。また、図6に示すように、粒径は500nm以上950nm未満であった。そして、粒径700nm程度のものが最も多く含まれていた。
そして、表面を活性化させたフライアッシュにケイ素微粉末及び強アルカリ溶液を投入し、ミキサーで混合してスラリー状の供試体を作製した。スラリー状の供試体を、直径5cm×高さ10cmの円筒型枠に打設し、24時間の封かん養生後に脱型して硬化体を得た。得られた硬化体を用いて、圧縮強度測定、SEM観察、及びX線回折分析を行った。なお、X線回折分析には、メタノールで水分を除去した硬化体を真空乾燥し、粉砕したものを用いた。
図4に示すように、硬化体の圧縮強度は4.5N/mmであった。建設材料として使用するためには20N/mm程度の圧縮強度が必要であることを考慮すると、強度は不足しているが、強度を向上させることで使用の可能性が認められた。
図7(a),(b)にSEM観察写真を示す。なお、図7(a)と図7(b)は、同じ硬化体の異なる部位を、倍率5000倍で撮影したものである。何れの部位においても、フライアッシュの表面が溶解するような形態で互いに結び合っている様子が観察された。このことから、緻密性の高い硬化体が作製されていることが理解できた。
図8にX線回折結果を示す。同図に符号Qで示したピークはSiO、符号Mで示したピークはムライト(AlSi13)、Maで示したピークはマグネタイト(Fe)のものであり、何れの鉱物も母材であるフライアッシュ由来と考えられる。このように、新しい鉱物の生成は見られなかったことから、普通ポルトランドセメントとは異なるメカニズムで硬化していると考えられた。すなわち、セメント水和物のような新しい鉱物の生成により硬化しているのではないと考えられた。
次に、長期浸漬試験について説明する。この長期浸漬試験では、硬化体を1辺が10mmの立方体形状に加工するともに、1面を除きエポキシでシールしたものを試料とした。そして、液固比が5:1となるように、6個の試料を密閉型カラム容器に水と共に封入した。その際、炭酸ガスを排除するため、カラム内はアルゴンガスで満たした。3日ごとに水の交換を行い、試料からの可溶成分の溶出を促進させた。交換で排出された浸漬液に対し、pHの測定と、ナトリウム、カリウム、カルシウムの溶出濃度の測定を行った。
図9にpHの測定結果を、図10にナトリウムの溶出濃度を示す。図11にカリウムの溶出濃度を、図12にカルシウムの溶出濃度を示す。
pHに関しては、全期間に亘って10.5を上回ることはなかった。止水性材料であるベントナイトに関し、pH11.0以下であれば影響を与えないという知見がある。このことを考慮すると、ベントナイトとの併用に対して有効であると考えられた。特に、70日以降においてpHの低下傾向が確認されたことから、本実施形態の自硬性材料では低アルカリ性が発揮されていることが確認された。
ナトリウム、カリウム、カルシウムに関し、ナトリウムやカリウムの溶出は確認されたが、カルシウムの溶出は確認されなかった。これらから、アルカリ性の由来は、ナトリウムイオンやカリウムイオンと解される。ここで、ベントナイトや岩盤(花崗岩)に対しては、カルシウムイオンが悪影響を及ぼすといわれている。このことから、本実施形態の自硬性材料は、ベントナイトや花崗岩に対して化学的な安定をもたらすと考えられた。
前述したように、硬化体作製試験で作製された硬化体は、圧縮強度が4.5N/mmであり、建設材料として使用するためには強度が不足していた。この点に関し、鋭意検討を重ねた結果、強アルカリ溶液とケイ素微粉末とを混ぜ合わせてケイ素混合物を事前に作製し、メカノケミカル処理を施したフライアッシュに混ぜ合わせることで強度向上が図れるとの考えに至り、強度向上試験を行った。
図13に、強度向上試験における供試体の配合を示す。この試験では、メカノケミカル処理を施したフライアッシュを72.96g、ケイ素微粉末(fuselex X)を18.24g、水酸化カリウムで作製した強アルカリ溶液を37.5g使用した。なお、W/Bは41.1に調整した。
基本ケースでは、フライアッシュにケイ素微粉末と強アルカリ溶液を投入し、人力で混合してスラリー状の供試体を作製した。スラリー状の供試体を直方体の型枠に打設し、40℃の乾燥機内で2日間養生後、乾燥させて硬化体を得た。
また、KOH−24hで示す事前混合ケースでは、ケイ素微粉末と強アルカリ溶液を事前に24時間混合してケイ素混合物を作製した。この混合はポットミルを用いて行った。そして、回転速度を300rpmに設定し、24時間に亘って混合した。そして、フライアッシュにケイ素混合物を投入し、人力で混合してスラリー状の供試体を作製した。スラリー状の供試体を直方体の型枠に打設し、40℃の乾燥機内で2日間養生後、乾燥させて硬化体を得た。
なお、硬化体に関し、各ケースについて2種類のサンプルSP1,SP2を作製した。サンプルSP1は、20mm×20mm×17mmの角柱形状のものとした。サンプルSP2は、16mm×16mm×32mmの角柱形状のものとした。
図13及び図14に、各ケースの硬化体における圧縮強度の測定結果を示す。これらの図に示すように、事前混合を行わなかった基本ケースでは圧縮強度が1.1N/mm,1.5N/mmであった。これに対し、事前混合ケースでは、圧縮強度が25.9N/mm,25.5N/mmであり、建設材料として使用可能な強度が得られることが確認された。
図15にFT−IRの分析結果を示す。同図において、横軸は波数(波長の逆数)、縦軸は赤外線の強度を表している。そして、結合が確認された波長では、赤外線の吸収、すなわち強度の低下が見られる。具体的には、波数3000〜3700のピークP1がO−Hの伸縮振動に相当する。また、波数900〜1300のピークP2がSi−Oの伸縮振動に相当し、波数800付近の微小なピークP3がSi−Oの角度振動に相当する。この結果は、フライアッシュ同士がSiOの網目構造で結合されていることを示している。
この強度向上試験により、ケイ素微粉末と強アルカリ溶液を事前に混合し、メカノケミカル処理を施したフライアッシュに混合すると、高い強度の硬化体を作製できることが確認された。そして、本実施形態の自硬性材料では、フライアッシュ同士がSiOの網目結合で結合されていると解される。また、事前混合を行うと、ケイ素微粉末に含有されているケイ素成分が強アルカリ溶液中にイオンの状態で溶出され、強アルカリ溶液中のケイ素イオンがフライアッシュ表面の結合手と結合し、Si−SiやSi−Oなどの強固な網目構造を速やかに形成したと考えられる。
次に、ケイ素微粉末と強アルカリ溶液の混合条件を最適化すべく、混合条件変更試験を行った。図16に、混合条件変更試験における配合、事前混合処理での攪拌時間(混合時間)、圧縮強度(最大点試験力、最大点応力)を示す。この試験では、メカノケミカル処理を施したフライアッシュを72.96g、ケイ素微粉末(fuselex X,940U)を18.24g、水酸化カリウムで作製した強アルカリ溶液を37.5g使用した。そして、攪拌時間を1h,3h,5h,7h,18h,24hの6通り設定した。また、各攪拌時間について3つのサンプルを作製した。作製された各サンプルについて圧縮強度の測定を行った。
なお、サンプルの作製は、強度向上試験と同様にして行った。すなわち、スラリー状の供試体を直方体の型枠に打設し、40℃の乾燥機内で2日間養生後、乾燥させて硬化体を得た。
図16〜図22に圧縮強度の測定結果を示す。まず、ケイ素微粉末としてfuselex Xを用いた場合について説明する。図16(a)及び図17〜図22に示すように、ケイ素微粉末としてfuselex Xを用いた場合、攪拌時間を1hにすると、最も強いサンプルであっても圧縮強度が10.5N/mm程度であり、建設材料として使用するには強度が不足していた。しかしながら、攪拌時間を3h以上にすると、圧縮強度が20N/mm以上になり、建設材料として使用可能な強度を確保できることが確認された。特に、攪拌時間を5h以上にすると、圧縮強度が23〜25N/mm程度になり、建設材料として十分な強度を確保できることが確認された。
次に、ケイ素微粉末として940Uを用いた場合について説明する。図16(b)及び図17〜図22に示すように、ケイ素微粉末として940Uを用いた場合、攪拌時間を18hにしても、最大の圧縮強度が11.2N/mm程度であり、建設材料として使用するには強度が不足していた。そして、攪拌時間を24hまで延ばすと、圧縮強度が18〜22N/mm程度まで上昇し、建設材料として必要な強度を確保できることが確認された。
この混合条件変更試験の結果より、fuselex Xのような高純度の石英ガラスフィラーをケイ素微粉末として用いた場合には、攪拌時間を3時間以上に設定することで、得られた硬化体は十分な圧縮強度を有することが確認できた。一方、マイクロシリカのようなシリカフュームをケイ素微粉末として用いた場合には、攪拌時間を24時間以上と十分に長く設定しないと、硬化体の必要強度が確保できないことも確認できた。
このように、攪拌時間に差が生じた理由としては、強アルカリ溶液に対する溶解度の違いがあると解される。fuselex Xは、水酸化カリウム溶液や水酸化ナトリウム溶液に対する溶解量が非常に大きい。例えば、濃度10%、温度90℃の水酸化カリウム溶液に対し、83.35%溶解し、同じ濃度及び温度の水酸化ナトリウム溶液に対し、98.34%溶解する。このように高い溶解度であるため、強アルカリ溶液中のケイ素イオン濃度が高まり、ケイ素イオンがフライアッシュ表面の結合手と結合しやすくなったと解される。
次に、減水剤添加試験について説明する。前述したように、この減水剤添加試験は、自硬性材料における硬化時間の調整を目的に行ったものである。図23に、減水剤添加試験における供試体の配合を示す。この試験では、メカノケミカル処理を施したフライアッシュを72.96g、ケイ素微粉末(fuselex X)を18.24g、水酸化カリウムで作製した強アルカリ溶液を37.5g使用した。
そして、減水剤を添加しない(WRの0%)ケースと、0.375g(同1%)を添加したケースと、1.125g(同3%)を添加したケースと、1.875g(同5%)を添加したケースについて試験を行った。各ケースについてサンプルを3つずつ作製した。
サンプルは次の手順で作製した。まず、ケイ素微粉末と強アルカリ溶液とをボールミルで20時間攪拌し、ケイ素混合物を得た。なお、ボールミル、ポット、ボール、及び回転速度は前述した通りであるため、説明は省略する。そして、前述のメカノケミカル処理を行ったフライアッシュをケイ素混合物に投入して人力で混ぜ合わせた。その後、所定濃度の混和剤を添加及び混合してスラリー状の自硬性材料を得た。この自硬性材料を型に充填し、40℃に調整された乾燥機内で2日間養生後、乾燥させて硬化体を得た。また、養生開始から8時間に亘り、各サンプルの硬さを30分毎に測定した。
図23〜図25に2日間養生した各サンプルの圧縮強度の測定結果を示す。また、図26に各サンプルにおける硬さの経時変化を示す。減水剤の添加量が3%以上になると、圧縮強度(最大点応力)が20N/mm未満になるサンプルが確認されたが、全体的には何れの試験ケースでも圧縮強度は20N/mm以上であり、十分な強度が確保できているといえる。そして、図26に示すように、減水剤を添加することで硬化時間を遅らせることができること、及び、減水剤の添加量を増やすほど硬化時間の遅れ幅を大きくできることが確認できた。
ここで、硬化時間を遅らせることができた理由について検討すると、メカノケミカル処理によってフライアッシュ表面に現れた結合手に対し、界面活性剤が電気的に引き寄せられ、その後、時間の経過に伴って界面活性剤に変わってケイ素イオンが結合手に結合したと考えられる。そして、フライアッシュ表面に現れた結合手は電荷を帯びていると考えられることから、イオン性の界面活性剤であれば有効に機能すると考えられる。
以上の試験結果に基づき、次のことが判った。
すなわち、図27に示すように、材料準備処理(S1)において、フライアッシュにメカノケミカル処理を施し、表面を活性化させるメカノケミカル処理(第1工程,S11)と、強アルカリ溶液とケイ素微粉末とを混ぜ合わせ、強アルカリ溶液にケイ素成分が溶出されたケイ素混合物を作製する事前混合処理(第2工程,S12)とを行い、各材料の混合処理(S2)において、表面が活性化されたフライアッシュとケイ素混合物とを混ぜ合わせてスラリー状の自硬性材料を作製する第3工程を行い、充填・養生処理(S3)において、スラリー状の自硬性材料を型枠に充填して養生することで、フライアッシュを母材とする緻密な自硬性材料を製造できることが確認できた。これは、強アルカリ溶液中のケイ素イオンがフライアッシュ表面の結合手と結合し、Si−SiやSi−Oなどの強固な網目構造を速やかに形成したからと考えられる。
そして、強アルカリ溶液として水酸化カリウム溶液(濃度3mol/L)を用い、第2工程では、この水酸化カリウム溶液とケイ素微粉末とを少なくとも3時間以上混ぜ合わせることで、自硬性材料を容易に製造できることが判った。
加えて、第3工程にて、フライアッシュとケイ素混合物を減水剤と共に混ぜ合わせるとことで、硬化時間を調整できることが判った。
以上の実施形態の説明は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に本発明にはその等価物が含まれる。例えば、次のように構成してもよい。
メカノケミカル処理に関し、前述の実施形態ではボールミルを用いた処理を例示したが、フライアッシュの表面を活性化できれば、この処理に限定されるものではない。
事前混合処理に関し、前述の実施形態ではボールミルを用いた処理を例示したが、ケイ素微粉末に含まれるケイ素成分をイオンの状態で強アルカリ溶液に溶出できれば、他の方法であってもよい。例えば、スターラーによる攪拌としてもよい。そして、前述の実施形態のように、ボールミルを用いた攪拌によって事前混合処理を行った場合には、単にスターラーで攪拌するよりも短期間でケイ素イオンを強アルカリ溶液に溶出させられる。
また、強アルカリ溶液に関し、水酸化ナトリウムを水に溶解した水酸化ナトリウム溶液であってもよい。また、強アルカリ溶液の濃度も3mol/Lに限定されない。
さらに、自硬性材料に関し、細骨材を加えてモルタルとしてもよいし、細骨材及び粗骨材を加えてコンクリートとしてもよい。

Claims (5)

  1. フライアッシュにメカノケミカル処理を施し、表面を活性化させる第1工程と、
    強アルカリ溶液とケイ素微粉末とを混ぜ合わせ、前記強アルカリ溶液にケイ素成分が溶出されたケイ素混合物を作製する第2工程と、
    表面が活性化された前記フライアッシュと前記ケイ素混合物とを混ぜ合わせる第3工程からなることを特徴とする自硬性材料の製造方法。
  2. 前記強アルカリ溶液は、水酸化カリウム溶液であることを特徴とする請求項1に記載の自硬性材料の製造方法。
  3. 前記第2工程では、前記水酸化カリウム溶液と前記ケイ素微粉末とを少なくとも3時間以上混ぜ合わせることを特徴とする請求項2に記載の自硬性材料の製造方法。
  4. 前記第3工程では、前記フライアッシュと前記ケイ素混合物を減水剤と共に混ぜ合わせることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の自硬性材料の製造方法。
  5. 請求項1から4の何れか1項に記載の自硬性材料を硬化させてなる硬化体の強度が20N/mm 以上であることを特徴とする、自硬性材料の製造方法。
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