JP6346817B2 - 繊維強化複合体、及び、繊維強化複合体の製造方法 - Google Patents
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Description
この繊維強化樹脂層を形成させるための繊維強化樹脂材としては、樹脂と短繊維とのコンポジット材をシート状に成形したもの(以下、「コンポジットシート」ともいう)が知られている。
近年、このようなコンポジットシートに比べて繊維強化複合体に優れた強度を発揮させ易い点において、アラミド繊維や無機繊維で出来た基布にエポキシ樹脂などを含浸担持させたプリプレグシートが繊維強化樹脂層の形成材料として採用されるようになってきている(下記特許文献1参照)。
この内、ビーズ発泡成形体は、その原材料となる複数の樹脂ビーズを収容するための空間と、前記樹脂ビーズを加熱する加圧水蒸気を前記空間に導入させるための通気孔とを備えた金型によって形成されている。
該ビーズ発泡成形体は、金型内の空間に対応した立体的な形状を備えさせることが容易で、押出発泡シートよりも高い強度を発揮させることが容易であるという利点を有する。
従って、繊維強化複合体は、ビーズ発泡成形体をその芯材として採用することで優れた強度が発揮され得る。
なお、前記繊維強化樹脂層は、繊維強化複合体に優れた強度を発揮させる目的以外にも繊維強化複合体に硬質で平滑性に優れた表面性状を付与する目的で繊維強化複合体に設けられている。
また、本発明者は、繊維強化樹脂層を複層構造として個々の層にそれぞれ特定の機能を発揮させることで上記課題を解決し得ることを見出して本発明を完成させるに至った。
ここでは、図を参照しつつ繊維強化複合体が板状である場合について説明する。
図1は、本実施形態の繊維強化複合体の断面構造を示したもので、この図にも示されているように本実施形態の繊維強化複合体Aは、板状の樹脂発泡体からなる芯材A1の両面にシート状の繊維強化樹脂材が貼り合わされて形成されており、前記繊維強化樹脂材からなる繊維強化樹脂層A2が板状芯材A1の両面に備えられている。
即ち、芯材A1は、発泡剤を含んだ複数の樹脂ビーズが金型内で加熱され、該加熱によって前記樹脂ビーズの体積が膨張されて該樹脂ビーズどうしが融着されてなる樹脂発泡体である。
また、本実施形態においては、このようにして形成されたビーズ発泡成形体が型内成形された状態のまま、切削加工などの外形加工が施されることなく前記芯材A1として使用されている。
即ち、板状の前記芯材A1は、金型の成形面の性状が表面に反映されたものとなっている。
また、図4は、この図3に示した箇所に対応した繊維強化複合体Aの断面を示したものである。
これらの図に示されているように本実施形態の繊維強化複合体Aの芯材A1として利用されている樹脂発泡体10は、複数の発泡樹脂粒子100どうしが熱融着されて形成されたもので、その表面10aを構成する発泡樹脂粒子100aの一部が突出されて突起11が備えられている。
より具体的には、本実施形態の樹脂発泡体10は、表面に線状突起11を有しており、複数本の前記線状突起11が並行している円形の領域11xを複数個所に備えている。
また、本実施形態の樹脂発泡体10は、複数の前記円形領域11xを、その表面全域に略等間隔に配置させている。
また、前記円形領域11xは、通常、3mm〜20mmの直径を有する大きさに形成され、隣接する別の円形領域との間の距離(中心間距離)が20mm〜100mmとなるようにして樹脂発泡体10に備えられている。
即ち、前記繊維強化樹脂層A2は、前記樹脂発泡体10の表面に接する状態で樹脂発泡体10を覆う第1被覆層21と、前記樹脂発泡体10と接する側とは反対面において前記第1被覆層21に接し、繊維強化複合体Aの表面を成す第2被覆層22とを有している。
なお、本実施形態における前記繊維強化複合体Aは、樹脂発泡体10の一面側の繊維強化樹脂層A2aと他面側の繊維強化樹脂層A2bとで層数等を共通させる必要はない。
また、本実施形態の繊維強化複合体Aは、場所によって層数が異なる繊維強化樹脂層A2を有していてもよい。
さらに、前記第1被覆層21と前記第2被覆層22とは、材質を共通させる必要はなく、互いに異なる材質のものであっても良い。
本実施形態の繊維強化複合体Aは、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、ボロン繊維などの無機繊維や、アラミド繊維、ポリエーテルエーテルケトン繊維などの有機繊維などからなる糸を用いて織成されてなる織布、前記糸が編成されてなる編地、前記無機繊維や前記有機繊維などによる不織布といった基布に樹脂を含浸担持させたシート状の繊維強化樹脂材(繊維強化樹脂シート)によって第1被覆層21や第2被覆層22を形成させることができる。
また、本実施形態の繊維強化複合体Aは、このようなものの他に、樹脂と短繊維とを含むコンポジット材からなるシート状の繊維強化樹脂材(繊維強化樹脂シート)によっても第1被覆層21や第2被覆層22を形成させることができる。
そして、前記第1被覆層21には、通常、樹脂発泡体への優れた接着性を有することが求められている。
そのため前記第1被覆層21は、樹脂発泡体の表面に対する優れた追従性を有することが好ましい。
従って、前記第1被覆層21は、コンポジットシートや、柔軟性に優れた基布を有する繊維強化樹脂シートなどによって構成させることが好ましい。
基布に樹脂を含浸担持させたタイプの繊維強化樹脂シートは、熱プレスなどにより、樹脂単体の硬質で平滑な被膜を表面に形成させることができる。
そのため、このタイプの繊維強化樹脂シートは、前記第2被覆層22の形成材料として適していると言える。
このような点において、前記繊維強化樹脂シートは、基布に樹脂を含浸担持させたタイプのものであれば、例えば、炭素繊維又はガラス繊維のマルチフィラメント糸を平織、綾織、又は繻子織することによって得られた基布にエポキシ樹脂や不飽和ポリエステル樹脂などの反応硬化性を有する樹脂を含浸担持させたものが好ましい。
また、前記第1被覆層21や前記第2被覆層22を形成させるための繊維強化樹脂シートは、コンポジットシートであれば、ガラス繊維や炭素繊維をエポキシ樹脂や不飽和ポリエステル樹脂に分散させたタイプのものが好ましい。
この内、 “炭素繊維強化プラスチックス(CFRP)シート”などと呼ばれる炭素繊維からなる基布を備えた繊維強化樹脂シートで、且つ、0.1mm〜3mmの厚みを有するものが前記第1被覆層21や前記第2被覆層22を形成させるための繊維強化樹脂シートとして特に好適である。
なかでも、前記樹脂発泡体の主成分たる樹脂は、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂などのポリエステル系樹脂であることが好ましく、とりわけ、ポリエチレンテレフタレート樹脂であることが好ましい。
なお、ここで“主成分たる樹脂”とは、樹脂発泡体に最も多くの質量割合で含まれている樹脂を意味している。
A)炭化水素や二酸化炭素などの発泡剤を含むポリエステル系樹脂粒子を型内成形して芯材A1となる樹脂発泡体10を作製する芯材作製工程。
B)前記芯材作製工程で得られた樹脂発泡体10を2枚重ねのCFRPシートで覆って予備成形体を作製する予備成形体作製工程。
C)前記予備成形体を熱プレスやオートクレーブによって加熱・加圧して樹脂発泡体10と2枚のCFRPシートとを接着一体化させ繊維強化複合体を得る複合化工程。
また、第1被覆層21をコンポジットシートによって形成させる場合は、CFRPシートを2枚重ねにしたものに代えて、コンポジットシートとCFRPシートとを重ね合わせたものを用い、且つ、コンポジットシートが内側となるようにして樹脂発泡体10を覆って予備成形体を作製し、この予備成形体を上記のように加熱・加圧して繊維強化複合体を作製すればよい。
前記雄型及び前記雌型は、通常、成形空間の内壁面となる部位に通気孔を開口させており、前記成形空間に加圧水蒸気などの高温気体を導入し得るように形成されている。
そして、前記芯材A1となる樹脂発泡体は、通常、このような成形空間と、前記成形空間に加圧水蒸気などを導入させるための通気孔とを備えた金型を用いて作製される。
より具体的に説明すると、本実施形態の樹脂発泡体10は、前記金型として、例えば、中空ボディーの内壁に円形孔を複数有し、該円形孔にスリット状の部材が装着されて線状の通気孔が複数箇所に備えられたものを利用して以下のa1)〜a3)のような工程により作製され得る。
a2)前記予備発泡粒子(樹脂ビーズ)を金型の成形空間に充填し、該予備発泡粒子を軟化させるのに十分な温度を有する気体を前記通気孔を通じて前記成形空間に導入し、前記予備発泡粒子を二次発泡させてビーズ発泡成形体を得る二次発泡工程。
a3)前記二次発泡工程で作製されたビーズ発泡成形体を冷却し、金型を開放してビーズ発泡成形体を金型から取り出す取出工程。
また、前記成形空間に収容させた複数の予備発泡粒子は、前記二次発泡工程において、成形空間に充満されることになり、この成形空間の形状に対応したビーズ発泡成形体とされる。
二次発泡工程をそのような条件下で実施して樹脂発泡体を作製すると、樹脂発泡体10の表面10aを構成する発泡樹脂粒子100の表皮110一部が通気孔に侵入し易くなり、作製される樹脂発泡体10は、表面に複数の突起11を有することになる。
即ち、樹脂発泡体がポリプロピレン系樹脂のような軟質なものである場合、CFRPシートを積層する際の圧力によって突起がある程度押し潰されることを期待できるもののポリエステル樹脂製の樹脂発泡体では、このような期待をすることが難しい。
しかし、コンポジットシートは、CFRPシートのような繊維の連続性を有していないことから、CFRPシートに比べると繊維強化樹脂層に優れた強度を発揮させることが難しい。
また、コンポジットシートは、CFRPシートのように繊維の配置が固定されているわけではないのでCFRPシートに比べると繊維強化樹脂層の表面に繊維を露出させ易く、CFRPシートに比べると表面平滑な繊維強化樹脂層を形成させることが難しい。
即ち、本実施形態の繊維強化複合体は、強度と表面性状とに優れているばかりでなく、生産効率の観点においても有利な効果を有するものである。
なお、突起11の影響が繊維強化複合体Aの表面に及ぶのをさらに抑制させるべく、第1被覆層21をCFRPシートではなく、コンポジットシートによって形成させることもできる。
なお、繊維強化樹脂層を形成する各層の厚みは、通常、3mm以下であり、1mm以下であることが好ましい。
また、第1被覆層21を構成する炭素繊維の目付は、小さすぎると突起11の影響が繊維強化複合体Aの表面に及ぶのを緩和し難くなるため、100g/m2以上が好ましく、150g/m2以上がより好ましい。
該炭素繊維の目付は、通常、400g/m2以下であり、300g/m2以下であることが好ましい。
このことについて、例えば、本実施形態においては、繊維強化複合体を単純な板状のものとして例示しているが、本発明の繊維強化複合体は、複雑な形状に賦形されたものでもよい。
さらに、繊維強化複合体やその製造方法などに関し、従来公知となっている事柄については、本発明の効果が著しく損なわれない範囲において適宜採用可能である。
11 突起
21 第1被覆層
22 第2被覆層
100 発泡樹脂粒子
A 繊維強化複合体
A1 芯材(樹脂発泡体)
A2 繊維強化樹脂層(繊維強化樹脂材)
Claims (3)
- 樹脂発泡体と、
該樹脂発泡体の表面の一部又は全部を覆う繊維強化樹脂層とを有する繊維強化複合体であって、
前記樹脂発泡体がビーズ発泡成形体で、発泡剤を含んだ複数の樹脂ビーズが金型内で加熱されて該樹脂ビーズどうしが融着されたものであり、
前記金型が、前記樹脂ビーズを収容する空間と、前記樹脂ビーズを加熱する気体を前記空間に導入するための複数の通気孔とを有し、
前記ビーズ発泡成形体が、前記通気孔に前記樹脂ビーズの一部を侵入させることによって形成された複数の突起を表面に有しており、
該突起を有する箇所における前記繊維強化樹脂層は、前記ビーズ発泡成形体に接する第1被覆層と、前記ビーズ発泡成形体に接する側とは反対面において前記第1被覆層に接する第2被覆層とを含む2層以上の積層数を有する複層構造となっており、少なくとも前記第1被覆層が短繊維と樹脂とのコンポジット材によるシートによって形成されており、前記第2被覆層が基布に樹脂を含浸担持させた繊維強化樹脂シートによって形成されている繊維強化複合体。 - 前記樹脂ビーズの主成分がポリエステル系樹脂である請求項1記載の繊維強化複合体。
- 樹脂発泡体と、前記樹脂発泡体の表面の一部又は全部を覆う繊維強化樹脂層とを有する繊維強化複合体を製造する繊維強化複合体の製造方法であって、
発泡剤を含んだ複数の樹脂ビーズを収容するための空間と、
前記樹脂ビーズを加熱する気体を前記空間に導入させるための複数の通気孔とを備えた金型を用い、
前記空間内に複数の前記樹脂ビーズを収容し、
該空間内に前記気体を導入して前記樹脂ビーズを加熱し、
該加熱によって前記樹脂ビーズの体積を膨張させるとともに樹脂ビーズどうしを融着させる型内成形を実施し、
前記型内成形では、前記空間に対応した形状を有し、且つ、前記通気孔に樹脂ビーズの一部を侵入させてなる複数の突起を表面に有する樹脂発泡体を作製し、
樹脂及び繊維を含む繊維強化樹脂材を前記樹脂発泡体の表面に積層して前記繊維強化樹脂層を形成させ、
前記突起を有する箇所には前記樹脂発泡体に接する第1被覆層と、前記樹脂発泡体に接する側とは反対面において前記第1被覆層に接する第2被覆層とを含む2層以上の積層数を有する複層構造の繊維強化樹脂層を形成させ、且つ、少なくとも前記第1被覆層を短繊維と樹脂とのコンポジット材によるシートによって形成させ、前記第2被覆層を基布に樹脂を含浸担持させた繊維強化樹脂シートによって形成させる繊維強化複合体の製造方法。
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