JP6345938B2 - 熱接着性長繊維 - Google Patents

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Description

本発明は、ポリアミド系の熱接着性繊維に関するものである。
土木資材分野や産業資材分野においては、バインダーとしても機能する熱接着性繊維として、高強度であることからポリエステル系のものが好適に用いられている。例えば、土木資材や産業資材用途に用いられるメッシュシートには、特許文献1に記載されるように、ポリエステル系の芯鞘型の熱接着性繊維を構成繊維とするマルチフィラメント糸を用いて製編織し、熱処理により、複合繊維の鞘成分を溶融固着させて、織編物の交点を熱接着固定している。このメッシュシートは、交点部以外の織編物全体においても、鞘成分が溶融固化しているため、シート全体が硬く剛直であるという特徴がある。
一方、ポリエステル系以外の熱接着性繊維としては、例えば、特許文献2に記載されているようなポリアミド系の熱接着性繊維が挙げられる。繊維を構成するポリマーがポリアミド系であるため、上記したポリエステル系の熱接着繊維ほどの硬さはなく適度な柔軟性を有するものであるが、ポリエステル系熱接着繊維と比較すると強度が劣るものであり、産業資材用途に適用しようとした場合は、用途が限定される。
特開2001−271245号広報 特開2004−149971号広報
本発明は、従来のポリエステル系熱接着性繊維のように、熱処理後に硬く剛直になり過ぎず、適度な柔軟性を有しながら、様々な産業資材用途や土木資材用途にも適用可能な強度を有する熱接着性繊維であって、かつ生産効率が良好なものを提供することを課題とする。
本発明は、上記課題を達するものであって、芯成分がポリアミド6、鞘成分が芯成分よりも低融点の共重合ポリアミドで構成された芯鞘型複合長繊維であり、
温度270℃、せん断速度1000(1/秒)時の溶融粘度〔ηmelt〕が、芯成分が1000〜3000dPa・s、鞘成分が1000〜2000dPa・sであり、かつ芯成分の溶融粘度の値が鞘成分の溶融粘度の値よりも大きく、
前記複合長繊維における芯鞘比(芯成分と鞘成分との質量比率)が芯/鞘=1/1〜4/1、単繊維繊度が5デシテックス以上であることを特徴とする熱接着性長繊維を要旨とするものである。



以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の芯鞘型複合長繊維は、繊維の長手方向に対して垂直に切断した横断面形状において、芯鞘型の複合形状を呈しているものであればよい。芯部は1つであることが好ましいが、2〜5個程度の複数個ある多芯型であってもよい。また、同心型のものがよいが、偏芯型のものであってもよい。また、横断面形状は芯鞘型であれば、円形断面形状のもののみならず、多角形等の異形のものであってもよい。
芯鞘型複合長繊維を構成する芯成分はポリアミド6、鞘成分は低融点の共重合ポリアミドで構成される。芯成分に配されるポリアミド6は、融点が225℃程度であり耐熱性にも優れるため、様々な使用環境を考慮すると実用的である。また、芯成分は、熱接着処理の際の熱の影響を受けることなく、繊維形態を保持し、熱処理後も機械的強度を維持して、形態保持等の機能を担う。鞘成分は、熱接着成分として機能するため、芯成分よりも低融点のポリマーが配される。
鞘成分を構成する低融点の共重合ポリアミドは、芯成分であるポリアミド6の融点よりも、50℃以上低い融点を有するものが好ましい。熱接着処理の際に、芯成分が熱の影響を受けることなく、繊維形態を良好に維持できるためである。なお、融点差の上限は80℃とする。繊維を得る際の熱延伸工程での熱処理温度は、鞘成分が溶融しない温度に設定する必要があり、融点差が80℃を超えると、熱延伸処理時の設定温度が制限されることになり、十分に熱延伸ができない場合があり、そうすると得られる繊維が熱収縮しやすいものとなるからである。なお、鞘成分の融点は、140℃以上であることが好ましく、より好ましくは150℃以上である。鞘成分の融点を140℃以上とすることにより、実用的な耐熱性が付与され、熱接着後に高温雰囲気下に晒された場合であっても、良好に熱接着成分として機能し、熱接着成分が軟化して接着固定してなる形態が変形する等の恐れがない。共重合ポリアミドとしては、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12等のポリアミドが適宜の量で共重合してなる共重合体が挙げられる。
芯鞘型複合長繊維を構成する芯鞘成分は、温度270℃、せん断速度1000(1/秒)時の溶融粘度〔ηmelt〕が、芯成分が1000〜3000dPa・s、鞘成分が1000〜2000dPa・sであり、かつ、芯成分の溶融粘度の値が鞘成分の溶融粘度の値よりも大きい。芯成分のポリアミド6の溶融粘度〔ηmelt〕を1000dPa・s以上とすることにより、産業資材用途に適した高強度の繊維を得ることができる。一方、3000dPa・s以下とすることにより、繊維の製造工程における延伸工程において、設定温度が制限されることなく、良好に延伸可能で熱収縮性を制御した繊維を得ることができる。すなわち、粘度の高いポリマーは、一般に加熱により収縮しやすい傾向がより大きいため、繊維製造工程における延伸工程で、十分に熱延伸を行うことによって得られる繊維の熱収縮を抑える必要があり、3000dPa・sを超える粘度のポリマーでは、より大きな熱量を付与することを要するが、その一方で、熱延伸工程での大量の熱付与によって鞘成分が溶融しないことも考慮する必要がある。芯成分の溶融粘度を3000dPa・s以下とすることにより、鞘成分が溶融する等の影響を恐れなく温度設定が可能であり、良好に熱延伸ができ、熱接着処理時に熱収縮等を発生することなく、加工性が良好で品位の高い繊維を得ることができるのである。また、鞘成分の共重合ポリアミドの溶融粘度〔ηmelt〕を1000dPa・s以上とすることにより曳糸性が低下せず、良好に紡糸できる。一方、2000dPa・s以下とすることにより、紡糸時にせん断発熱を発生することなく、安定して紡糸が行えるため、生産性に優れる。さらに、芯成分の溶融粘度の値が鞘成分の溶融粘度の値よりも大きいものを選定することにより、紡糸性が安定し、かつ得られる複合長繊維においては産業資材用途に適した高強度のものとなる。
なお、芯成分および鞘成分において、温度270℃、せん断速度1000(1/秒)時の溶融粘度〔ηmelt〕を特定の値とした理由は以下にある。すなわち、溶融紡糸工程における溶融したポリマーの粘性を考慮したのである。まず、温度条件については、溶融紡糸の際の設定温度(紡糸温度)が、高融点成分である芯成分の融点が225℃程度であるため、270℃程度に設定することにある。次に、せん断速度についてであるが、溶融紡糸の際にポリマーが供給される導入部においては、せん断速度は10(1/秒)オーダーであるが、ノズル孔に分配され、溶融した芯成分のポリマーと鞘成分のポリマーとが合流して芯鞘形態となって押し出されるノズルにおいては10(1/秒)程度に達する。したがって、芯成分と鞘成分とが合流して芯鞘形態となって押し出される際に、良好に繊維形態を保持しながら押し出すことができ、紡糸性が良好で、かつ産業資材用途に適用可能な強度を有する熱接着性複合繊維を得ることを考慮し、せん断速度は、10(1/秒)時とした。よって、温度270℃、せん断速度10(1/秒)における芯成分および鞘成分の溶融粘度に着目し、本発明に至ったのである。
なお、本発明の複合繊維を構成する芯成分および鞘成分のポリマーには、本発明の目的を損なわない範囲で、他の成分等を含有させてもよく、例えば、各種添加剤や原着繊維とするために着色顔料等、あるいは他の共重合成分を少量含有するものであってもよい。
芯鞘複合長繊維において、芯鞘複合比(芯/鞘の質量比率)は、1/1〜4/1である。また、好ましくは2/1〜4/1である。芯成分の比率が大きい方が、強度の高い繊維を得られるが、4/1より大きくなると、複合形態が単糸間で不均一になりやすく、延伸性が劣る傾向となる。一方、芯部が1/1より小さくなると、切断伸度が低下する傾向となる。
本発明の芯鞘複合型長繊維は、上記の構成であることから、切断強度が3.5cN/dtex以上である。また、より好ましくは4.0cN/dtex以上である。該切断強度が3.5cN/dtex未満であると、一般的な産業資材用途として使用するには強度が不足し、使用する用途が限られる。
強度以外の物性については、特に限定しないが、切断伸度が低いと、巻き締まり等巻き姿が劣るようになることから、切断伸度は20〜70%の範囲が好ましい。
本発明において、長繊維の切断強度および切断伸度は、JIS L−1013 引張強さ及び伸び率の標準時試験に準じて、島津製作所製オートグラフDSS−500を用い、つかみ間隔25cm、引張速度30cm/分で測定したものである。
本発明の芯鞘型複合長繊維の単繊維繊度は、5デシテックス以上とする。産業資材用途に適するためである。上限は、特に限定されないが、2000デシテックス適度がよい。
本発明の芯鞘型複合長繊維は、多数の長繊維を集束させてマルチフィラメント糸としてもよく、また、モノフィラメント糸としてもよい。マルチフィラメント糸の場合、マルチフィラメント糸を構成する繊維数、単繊維繊度、総繊度は特に限定するものではないが、繊維数が20〜250本、単繊維繊度が5〜30デシテックス、総繊度が150〜2000デシテックスの範囲がよい。一方、モノフィラメント糸の場合は、繊度150〜2000dtexの範囲がよい。また、マルチフィラメント糸とする際は、本発明の熱接着性長繊維のみを構成繊維としてもよいし、また、他の繊維を混合して混繊糸としてもよい。
本発明の芯鞘型複合長繊維の製造方法について説明する。まず、芯成分および鞘成分のチップをそれぞれ供給して、常用の複合紡糸装置を用いて、溶融紡糸する。次いで、未延伸糸を一旦巻き取り、その後延伸を行う2工程法でもよいが、一旦巻き取らずに連続して延伸を行うスピンドロー法が生産性やコスト面において好ましい。延伸方法は加熱ローラーのみで行うローラー延伸または加熱ローラー間にスチーム熱処理装置を設けて行う方法を採用することができる。巻き取り速度は1500〜4000m/分程度が好ましく、巻き取り速度がこの範囲より遅いと生産性が劣り、速いと高強度が得られ難く延伸性が劣る。
本発明の芯鞘型複合長繊維である熱接着性長繊維は、織編物の構成繊維として使用し、熱処理により、鞘成分を溶融接着させて形態保持性に優れる織編物としたり、また、ロープ、紐、合撚糸等の繊維製品としたり、布帛等の一部に使用して、繊維同士や布帛同士を接着する等、様々な形態で用いることができる。
本発明によれば、熱処理後に硬く剛直になり過ぎず、適度な柔軟性とフレキシブル性を有しながら、様々な産業資材用途や土木資材用途にも適用可能な強度を有する熱接着性繊維を提供することができる。また、ポリアミドによって構成されているため、ポリエステルやポリアミド以外の他の素材との良好な接着性が期待できるとともに、素材の特徴である耐薬品性も有するため、様々な産業資材用途等に適用可能となる。
次に、本発明について、実施例によって具体的に説明する。なお、実施例における各物性値は、次の方法で測定した。
(1)ポリアミドの溶融粘度〔ηmelt〕
1.3kPa以下、100℃の加熱減圧条件下で12時間乾燥を行った後、島津製作所製フローテスターCFT−500型を使用し、予熱時間180秒、ノズル0.5φ×2.0mm、測定温度270℃で測定した。
(2)切断強度、切断伸度
JIS L−1013 引張強さ及び伸び率の標準時試験に準じて、島津製作所製オートグラフDSS−500を用い、つかみ間隔25cm、引張速度30cm/分で測定した。
(3)融点(℃)
パーキンエルマー社製の示差走査型熱量計DSC−7型を使用し、昇温速度20℃/分で測定した。
実施例1
芯成分に融点225℃、溶融粘度〔ηmelt〕2000dPa・s(せん断速度1000(1/秒)時)のポリアミド6を用いた。一方、鞘成分に融点155℃、溶融粘度〔ηmelt〕1800dPa・s(せん断速度1000(1/秒)時)の共重合ポリアミド(アルケマ株式会社製、Platamid M1425F)を用いた。
常用の複合溶融紡糸装置を用いて、孔径0.5mm、ホール数192個の芯鞘型複合紡糸口金を装着し、口金温度270℃、芯鞘質量比3/1として紡出した。紡糸口金直下に設けた温度250℃、長さ15cmの加熱筒内を通過させた後、長さ20cmの環状吹付装置で、冷却温度15℃、速度0.7m/秒で冷却した。
次に、油剤を付着して非加熱の1ローラーに引き取り、連続して温度100℃の2ローラーで1.02倍に引き揃えを行い、その後、温度130℃の3ローラーで3.0倍の延伸を行い、温度110℃の4ローラーで4%の弛緩処理を行って、1%のリラックスを掛けて速度2500m/分のワインダーに巻き取り、円形断面形状(芯部と鞘部が略同心に配置された)の芯鞘型複合形態の熱接着性長繊維からなる1400dtex/192フィラメントのマルチフィラメント糸を得た。
実施例2
芯鞘質量比を1/1に変更した以外は、実施例1と同様に行った。
比較例1
芯鞘重量比を1/3に変更した以外は、実施例1と同様に行った。
比較例2
鞘成分として、融点145℃、溶融粘度〔ηmelt〕940dPa・s(せん断速度1000(1/秒)時)の共重合ポリアミド(アルケマ社製、Platamid M995F)を用いたこと以外は、実施例1と同様に実施しようとしたが、溶融紡糸の際、紡糸口金直下でクリープ現象が生じて紡出させることができず、紡糸不可能となって繊維を得ることができなかった。
実施例1、2、比較例1で得られた繊維の物性を表1に示す。
表1から明らかなように、実施例1、2は強度が高く、適度な伸度を有するものであり、産業資材用途に適したものであった。
一方、比較例1は、強度が劣るものであった。
得られた実施例1、2のマルチフィラメント糸を用いて、実施例1、2の筒編地を作成した。また、参考例として、芯成分がポリエチレンテレフタレート、鞘成分が融点160℃の共重合ポリエステルからなる芯鞘型のポリエステル系熱接着性長繊維により構成されるマルチフィラメント糸(ユニチカ製 商品名:メルセット 1400デシテックス/192フィラメント 切断強度4.3cN/dtex)を用いて、同様に筒編地を作成した。次いで、得られた3種の筒編地を180℃の乾熱ヒーターで2分間熱処理をした。
実施例1、2の筒編地は、熱処理により、繊維同士が熱接着固定され、形態安定性に優れたものであった。また、編地自体は、硬すぎず、ある程度の柔軟性を有するものであった。
一方、参考例のポリエステル系熱接着性長繊維により構成される筒編地は、熱処理により、繊維同士が熱接着固定され形態安定性に優れるものであり、編地全体は、非常に剛直で硬いものであった。

Claims (2)

  1. 芯成分がポリアミド6、鞘成分が芯成分よりも低融点の共重合ポリアミドで構成された芯鞘型複合長繊維であり、
    温度270℃、せん断速度1000(1/秒)時の溶融粘度〔ηmelt〕が、芯成分が1000〜3000dPa・s、鞘成分が1000〜2000dPa・sであり、かつ芯成分の溶融粘度の値が鞘成分の溶融粘度の値よりも大きく、
    前記複合長繊維における芯鞘比(芯成分と鞘成分との質量比率)が芯/鞘=1/1〜4/1、単繊維繊度が5デシテックス以上であることを特徴とする熱接着性長繊維。
  2. 請求項1記載の熱接着性長繊維が複数本集束してなることを特徴とする熱接着性マルチフィラメント。

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