JP6298748B2 - ポリアミド潜在捲縮糸及びその製造方法 - Google Patents
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また、捲縮糸として、弾性のあるポリマーを用いて、伸縮性を得て伸縮性の高い布帛を得る方法もあるが、例えばポリウレタン弾性糸単独では染色性・耐光性が悪いといったことや糸同士が膠着しやすい等の問題が生じるため、通常、ポリアミドなどをカバリングして用いるのが現状である。
また特許文献1には、弾性のあるポリマーとして、ナイロン12エラストマーを用いて、ポリアミドやポリエステルをサイドバイサイド型や芯鞘型に複合した繊維が開示されている。
一方、2種類の異なる汎用的なポリマーを複合した繊維を捲縮糸として、繊維に伸縮性を付与する方法も種々検討されている。例えば、ポリエステルとポリアミドなどの異なる樹脂同士を組み合わせて複合繊維として捲縮糸とすることや粘度差のある同じ樹脂同士を組み合わせた複合繊維として捲縮糸とする方法が挙げられる。
そして、特許文献2は、高粘度ポリマーにポリメタキシレンアジパミドを特定量ブレンドし、高粘度ポリマーと低粘度ポリマーの粘度をコントロールした高い捲縮性をポリアミド潜在捲縮糸が記載されている。
また汎用的なポリエステルやポリアミドなどの異なるポリマーを組み合わせて複合繊維としたものは、捲縮を得るためのコストは低くて済むが、紡糸・延撚や後加工での樹脂同士の剥離が生じやすい。
また、同種の樹脂で粘度差が異なる樹脂同士を組み合わせた場合は、十分な捲縮が得られず、繊維自体の伸縮性も十分ではなく、高い伸縮性のある布帛を得るのは難しい。
さらに、特許文献2記載の潜在捲縮糸では、ある程度良好な捲縮率を有するものが得られているものの、いまだ十分伸縮性を得られるものではない。
したがって、本発明は上記の課題を解決し、カバリング加工や特殊な共重合体を用いずとも、十分捲縮性の優れたポリアミド潜在捲縮糸を得ることを目的とする。
(1) 捲縮率が50%を超える
(2) 捲縮糸1cmあたりのクリンプ数が150個以上210個以下
また、上記ポリアミド潜在捲縮糸において、成分1の樹脂組成物の相対粘度が2.6から3.0であることを満足するポリアミド潜在捲縮糸を第二の要旨とする。
また、上記ポリアミド潜在捲縮糸を製造する方法が、紡糸速度が2500m/min〜3000m/minであり、延伸工程での熱セット温度が120℃より低い温度であることを満足するポリアミド潜在捲縮糸を第三の要旨とする。
また、特殊なポリアミドエラストマーなどの共重合体を用いずとも高い収縮性を得ることができるため、コスト的にも有利となる。
本発明は、ポリメタキシレンアジパミドとポリアミド6からなる樹脂組成物(成分1)とポリアミド樹脂(成分2)で構成される2種のポリアミド成分で構成された貼り合わせ型の潜在捲縮糸である。
なお、捲縮率を高く保持する点からは、成分2の樹脂の相対粘度は、2.1〜3.5であることが好ましく、2.3〜3.0であることがより好ましい。
本発明のポリアミド潜在捲縮糸は、例えば紡糸と延撚の二工程法(コンベンショナル法)や紡糸直接延伸法などにより得ることができる。
まず、成分1のポリメタキシレンアジパミドとポリアミド6を準備する。両者を混練等により混合して、樹脂組成物(成分1)を得る。次に、(成分2)の樹脂を準備する。
成分1と成分2を溶融混練して、口金パックに導き、所定の横断面となるようにノズルから吐出し、溶融紡糸する。次いで、冷却して、巻き取った後、延伸して、延伸糸を得る。
コンベンショナル法や紡糸直接延伸法などの場合、ノズルから吐出された糸条が最初に捲かれるゴデットロールの速度(紡糸速度)が、1200〜4000m/minであることが好ましい。このような速度とすることにより、ポリアミド捲縮糸の伸長率を50%以上にでき、布帛としたとき、伸縮性のあるものを得たり、高密度化ができる。
なお、紡糸速度を速くすると、吐出量が多くなることによりノズル孔部のせん断速度が高くなる。これによりノズル直下での繊維内の分子鎖配向させ、繊維内の歪みを高くした状態で巻き取る。この歪みをもった繊維をさらに延伸することによって、さらに分子鎖配向を加え繊維内歪みを蓄えさせることにより、捲縮率が高く、高度な捲縮を与えることができ、伸縮性のある高収縮性ポリアミド潜在捲縮糸を得ることができると推測される。この点から、紡糸速度は、1200m/min以上が好ましく、2500m/min〜3000m/minの範囲が特に好ましい。
過程での熱セット温度を低めにコントロールする等により両成分を貼り合わせた複合繊維等の潜在捲縮糸とすることで、強伸度に優れ、かつ高い捲縮を発現させることのできる伸縮性に優れた高収縮のポリアミド潜在捲縮糸を得ることができる。
A. 相対粘度の測定
柴山科学機械製作所製の自動粘度測定装置(SS−600−L1型)を用いて測定する。溶媒に95.8%濃硫酸を用いて、ポリマーを1g/dlの濃度で溶解させて、恒温槽25℃にて測定する。
JISL1013に準じ、島津製作所製のAGS−1KNGオートグラフ引張試験機を用い、試料糸長20cm、定速引張試験20cm/minの条件で測定する。荷重−伸び曲線での荷重の最高値を繊度で除した値を破断強度(cN/dtex)とし、そのときの伸び率を破断伸度(%)とする。
浅野機械株式会社製の検尺器にて、5回転のかせを作成し2重に束ねる。その後1/6000g/dのおもりを掛け沸水バス投入し、バスに30min浸漬させた後取り出し、その状態で30min風乾しつつ、その後1/500g/dのおもりを掛け30秒後の長さ(A)を計測し、さらに1/20g/dのおもりを掛け30秒後の長さ(B)を測定し、次の式で捲縮率を算出した。
捲縮率(%)=((B−A)/B)×100
試料糸を沸水バスに投入し、バスに30min浸漬させた後、そのままの状態で30min風乾した後に光学顕微鏡にて1cmあたりのクリンプ数を計測した。
幅50mm、長さ300mmの試験片を用意し、引張試験機又はこれと同等の性能を持つ装置に一端の幅をセットし、生地がたるまないよう下側のもう一端の幅に初荷重を加える。200mmの間隔(A)に印を付け14.7Nの荷重を加える。1時間保持後の印間の長さ(B)を測定した。その後、荷重を取り除き、30秒後に初荷重を加えて印間の長さ(C)を測定し、次式によって伸長回復率(%)を求めた。
伸長回復率(%)=((B−C)/(B−A))×100
得られた結果を以下の基準により判定した。
○:伸長回復率が30%以上
△:伸長回復率が20%以上30%未満
×:伸長回復率が20%未満
成分1の相対粘度2.9のポリアミド(ポリメタキシレンアジパミドとポリアミド6を質量比率50:50になるようブレンダーで混合)チップと、成分2(ポリアミド6)の相対粘度2.4のチップをコンベンショナル法にて紡糸ノズルを用いて、紡糸温度280℃、捲取速度(紡糸速度)2750m/minで成分1:成分2が質量比率1:1になるよう溶融紡糸して繊維横断面がサイドバイサイドに貼り合わせた落花生型である潜在捲縮糸を得た。
未延伸糸を一日エージングさせ、延伸速度800m/min、スピンドル回転数7500rpm、プレートヒーター温度100℃、延伸倍率1.7倍で延伸し、潜在捲縮糸を得た。
成分1と成分2の質量比率および得られたポリアミド潜在捲縮糸の物性を測定した結果を表1に示す。
成分1のポリアミド(ポリメタキシレンアジパミドとポリアミド6を質量比率50:50になるようブレンダーで混合)の相対粘度を3.0、2.7、2.6に変更する以外は、実施例1と同様に潜在捲縮糸を得た。その結果を表1に示す。
成分2のポリアミド(ポリアミド6)の相対粘度を3.0に、紡糸速度を2770m/minに、プレートヒーター温度を150℃に変更する以外は、実施例1と同様に潜在捲縮糸を得た。その結果を表1に示す。
また実施例1〜4および比較例1から得られた潜在捲縮糸を布帛化し、生地伸長性能を評価したところ、実施例1〜4から得られたものは伸縮性能に優れる結果となり、比較例1から得られたものは伸縮性能が劣る結果となった。
また実施例1〜4から得られた潜在捲縮糸を用いて製織、染色したところ、伸縮性に優れ、かさ高で風合いがよい織物となったが、比較例1から得られた潜在捲縮糸を用いて製織、染色したところ伸縮性、かさ高性ともに劣る織物となった。
Claims (3)
- ポリメタキシレンアジパミドとポリアミド6からなる樹脂組成物(成分1)とポリアミド樹脂(成分2)で構成される貼り合わせ型の潜在捲縮糸であって、以下の(1) 〜(2)の要件を満足するポリアミド潜在捲縮糸。
(1)捲縮率が50%を超える
(2)捲縮糸1cmあたりのクリンプ数が150個以上210個以下 - 成分1の樹脂組成物の相対粘度が2.6〜3.0である請求項1記載のポリアミド潜在捲縮糸。
- ポリメタキシレンアジパミドとポリアミド6からなる樹脂組成物(成分1)とポリアミド樹脂(成分2)との2種のポリアミド成分を貼り合わせて、溶融複合紡糸にて得られる潜在捲縮糸を製造する方法であって、紡糸速度が2500〜3000m/minであり、延伸工程での熱セット温度が120℃より低い温度である請求項1又は2記載のポリアミド潜在捲縮糸の製造方法。
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