[第1の実施の形態]
図1は、第1実施形態に係るサッシの改装構造10を室外側から見た正面図であり、図2は、第1実施形態に係る改装サッシ40を室外側から見た正面図である。以下、便宜上、図示の状態を基準に各構成要素の位置関係を表現する場合がある。また、改装サッシ40を室内側又は室外側から正面視したときの奥行方向を見込方向X、見込方向Xに直交する仮想面と平行な方向を見付方向Yとして説明する。
サッシの改装構造10は、既設サッシ20と、改装サッシ30と、熱膨張性耐火材90(以下、単に耐火材90ともいう)を備える。
既設サッシ20は、既設上枠21(既設横枠)と、既設下枠23(既設横枠)と、左右の既設縦枠25を含み、これらを矩形状に枠組みして構成される。既設サッシ20は、建物の開口部の内周側に周方向に沿って設けられる。既設サッシ20は、建物の躯体11にアンカー等を介して固定される。なお、既設サッシ20の室内側には四周の側辺部に沿って既設額縁13(図1、図2では図示せず)が設置される。
改装サッシ30は、既設サッシ20の内周側を覆うように、その内周側にて既設サッシ20に取り付けられるサッシ本体40を含む。サッシ本体40には、引き違い障子として外障子と内障子(図示せず)が納められる。サッシ本体40は、改装枠体50と、複数の下地材70を備える。改装枠体50は、改装上枠51(改装横枠)と、改装下枠53(改装横枠)と、左右の改装縦枠55を有し、これらを矩形状に枠組みして構成される。下地材70は、上枠用下地材71(横枠用下地材)と、下枠用下地材73(横枠用下地材)と、左右の縦枠用下地材75を含む。改装枠体50は、複数の下地材70を介して既設サッシ20に取り付けられる。
改装上枠51、改装下枠53、改装縦枠55、下地材70は、アルミニウム等の金属材料を素材とした長尺体としての押出成形品等により形成される。改装上枠51は、上枠用下地材71より長手方向長さが長く形成される。改装上枠51は、上枠用下地材71より長手方向に長手方向両端部がはみ出てはみ出し部51aが設けられる。改装縦枠55や改装下枠53も同様に、縦枠用下地材75や下枠用下地材73より長手方向長さが長く形成される。改装縦枠55は、縦枠用下地材75より長手方向に長手方向両端部がはみ出てはみ出し部55aが設けられる。
図3(a)は図2のA−A線断面図であり、図3(b)は図2のB−B線断面図である。既設上枠21には、見込方向Xに延びる既設枠側周壁部27と、既設枠側周壁部27から見付方向Y内側に延びる複数の延出部29とが形成される。延出部29には、既設枠側周壁部27の室内側部分に形成される室内側延出部29Aが含まれる。
上枠用下地材71には、見込方向Xに延びる下地材側周壁部77と、下地材側周壁部77から見付方向Yに延びる複数の延出部79とが形成される。延出部79には、下地材側周壁部77の室内側部分から見付方向Y外側に延びる外周側下地材固定部79Aと、その室内側部分から見付方向Y内側に延びる内周側下地材固定部79Bとが含まれる。下地材側周壁部77には、見付方向Y外側に窪む凹部77aが形成される。凹部77aは上枠用下地材71の長手方向に沿って延びる溝状に形成される。
下地材側周壁部77は、凹部77aの内周側からビスSc1(図2参照)がねじ込まれ、そのビスSc1等により既設上枠21の既設枠側周壁部27に固定される。外周側下地材固定部79Aは、既設上枠21の室内側延出部29Aの室内側からビスSc2がねじ込まれ、そのビスSc2等により室内側延出部29Aに固定される。
改装上枠51には、見込方向Xに延びる改装枠側周壁部57と、改装枠側周壁部57から見付方向Yに延びる複数の延出部59とが形成される。改装枠側周壁部57は見込方向Xにかけて段状に形成される。延出部59には、改装枠側周壁部57の室内側部分から外周側に延びる改装枠固定部59Aと、改装枠側周壁部57の室外側部分から外周側に延びる既設枠シール部59Bとが含まれる。改装上枠51は、はみ出し部51aと長手方向の他の部位とが同じ形状に形成される。
改装上枠51は、その改装枠固定部59Aが上枠用下地材71の内周側下地材固定部79Bに室外側から係合される。改装枠固定部59Aは、その内周側下地材固定部79Bの室内側からビスSc3がねじ込まれ、そのビスSc3等により内周側下地材固定部79Bに固定される。改装枠側周壁部57は、その室内側からビスSc4(図2参照)がねじ込まれ、そのビスSc4等により上枠用下地材71の下地材側周壁部77に固定される。
既設枠シール部59Bは、その先端側が既設上枠21の室外側面に曲げて形成される。既設枠シール部59Bは、その先端部に気密材At1が装着され、その気密材At1は既設上枠21の室外側面に当接される。この気密材At1により改装上枠51と既設上枠21の間が室外側にて封止される。
図4(a)は図2のC−C線断面図であり、図4(b)は図2のD−D線断面図である。既設縦枠25、縦枠用下地材75、改装縦枠55は、それぞれ既設上枠21、上枠用下地材71、改装上枠51と多くの構成が共通するため、共通する構成に同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
改装縦枠55のはみ出し部55aは、改装枠側周壁部57から見付方向Y内側に延びる延出部が形成されない。このはみ出し部55aの改装枠側周壁部57には、その内周側から改装上枠51や改装下枠53の長手方向端部が当接され、ビス等により改装上枠51や改装下枠53に接続される。
図5は図2のE−E線断面図である。既設下枠23は、室内側の既設枠固定部23aと、室外側の障子支持部23bを備える。既設枠固定部23aは、既設額縁13の上面や側面に係合される。障子支持部23bには、見込方向Xに延びる既設枠側周壁部27と、既設枠側周壁部27から見付方向Yに延びる複数の延出部29とが形成される。既設枠側周壁部27は見込方向Xにかけて段状に形成される。延出部29には、障子を案内する複数(図示は2つ)の障子レール部29Cと、網戸を案内する網戸レール部29Dとが含まれる。
下枠用下地材73は、室内側の下地材固定部73aと、室外側の下地材側周壁部77を備える。下地材固定部73aは、既設下枠23の既設枠固定部23aの上面や側面に係合される。下地材固定部73aには、その上面部から室外側に突出する係合部73bが形成される。下地材側周壁部77は、下地材固定部73aの内周面より外周側にずれた位置に設けられ、見込方向Xに延びて形成される。下地材固定部73aは、その内周側からビスSc5がねじ込まれて、そのビスSc5等により既設下枠23の既設枠固定部23aと既設額縁13に固定される。
改装下枠53は、見込方向Xに延びる改装枠側周壁部57と、改装枠側周壁部57から見付方向Yに延びる複数の延出部59が形成される。改装枠側周壁部57は見込方向Xにかけて段状に形成される。延出部59には、室外側から室内側にかけて設けられる外障子レール部59Cと、内障子レール部59Dと、室外側延出部59Eとが含まれる。外障子レール部59Cは、外障子の戸車を支持して外障子を案内する。内障子レール部59Dは、内障子の戸車を支持して内障子を案内する。
改装下枠53には、改装枠側周壁部57の室外側部分の見付方向Y外側に傾斜して設けられるカバー部53aと、そのカバー部53aの下部の室内側にて見付方向Y外側に延びる改装枠固定部53bとが形成される。カバー部53aは既設下枠23を室外側から覆う。
改装下枠53は、その改装枠側周壁部57に形成されるリブ状の複数の脚部57aを介して下枠用下地材73の下地材側周壁部77に載置される。また、改装下枠53は、下枠用下地材73の係合部73bに室外側から室外側延出部59Eの室内側面が係合される。改装枠側周壁部57は、その内周側からビスSc6がねじ込まれて、そのビスSc6等により下枠用下地材73の下地材側周壁部77に固定される。改装枠固定部53bは、その室外側からビスSc7がねじ込まれて、そのビスSc7等により既設下枠23の室外側延出部29Dに固定される。
下枠用下地材73は、下地材側周壁部77の下面に気密材At2が装着され、その気密材At2は既設下枠23の既設枠固定部23aの室外側面に当接される。この気密材At2により下枠用下地材73と既設下枠23の間が室内側にて封止される。また、下枠用下地材73は、下地材側周壁部77の上面に気密材At3が装着され、その気密材At3は改装下枠53の室内側延出部59Eの室内側面に当接される。この気密材At3により下枠用下地材73と改装下枠53の間が室内側にて封止される。
改装枠体50の室内側には、既設サッシ20、サッシ本体40の室内側部分を覆うように、サッシ本体40の上側辺部、横側辺部に沿って新設額縁19が嵌め込みにより取り付けられる。
図6は図1のF−F線断面図である。改装上枠51の改装枠側周壁部57と上枠用下地材71の下地材側周壁部77の間の隙間には板状の複数のスペーサー15が介装される。図7は図1のG−G線断面図である。改装縦枠55の改装枠側周壁部57と縦枠用下地材75の下地材側周壁部77の間の隙間にも複数のスペーサー15が介装される。スペーサー15は、既設サッシ20とサッシ本体40の見付方向Yの間隔を保持し、サッシ本体40を強固に固定するために用いられる。なお、既設サッシ20とサッシ本体40の隙間は、既設サッシ20の寸法が現場によって変動し得るため、その寸法の変動に対応できるように予め設けられる。
上枠用下地材71は、その内周側下地材固定部79Bの長手方向中間部にスペーサー挿入孔80が形成され、スペーサー15は、そのスペーサー挿入孔80を通して室内側から挿入される。この内周側下地材固定部79Bには、そのスペーサー挿入孔80を塞ぐ蓋部材17(図1も参照)が当接される。蓋部材17は、その室内側からビスSc8がねじ込まれ、そのビスSc8等により内周側下地材固定部79Bと改装上枠51の改装枠固定部59Aに固定される。縦枠用下地材75の内周側下地材固定部79Bにも同様にスペーサー挿入孔80が形成される。
図3に戻り、既設サッシ20とサッシ本体40の間には中空部41が設けられる。中空部41は、既設サッシ20とサッシ本体40により囲まれて形成される。中空部41は、室外側から室内側にかけて延びるように形成される。図2では、中空部41の一部を画定する既設サッシ20の既設枠側周壁部27の内周面27aを二点鎖線で示す。中空部41は、サッシ本体40の四周の側辺部にて周方向に沿って延び、各側辺部の中空部41がサッシ本体40のコーナー部40aにて連続的につながり、全体として環状に形成される。
図3に戻り、サッシ本体40の上側辺部の中空部41は、既設上枠21と改装上枠51の間に形成され、上枠用下地材71により見付方向Yに仕切られる。この中空部41は、改装上枠51と既設上枠21の間を封止する気密材At1によりその室外側が閉塞され、その室内側が新設額縁19により閉塞される。
図4に戻り、サッシ本体40の横側辺部の中空部41は、既設縦枠25と改装縦枠55の間に形成され、縦枠用下地材75により見付方向Yに仕切られる。この中空部41は、改装縦枠55と既設縦枠25の間を封止する気密材At1によりその室外側が閉塞される。
図5に戻り、サッシ本体40の下側辺部の中空部41は、既設下枠23と改装下枠53の間に形成され、室外側において、下枠用下地材73により見込方向Xに仕切られる。この中空部41は、ビス止めされる改装下枠53の改装枠固定部53bと既設下枠23の室外側延出部29Dとによりその室外側が閉塞される。この中空部41は、改装下枠53と下枠用下地材73の間を封止する気密材At3と、下枠用下地材73と既設下枠23の間を封止する気密材At2によりその室内側が閉塞される。
改装下枠53の改装枠側周壁部57には上部水抜き孔53cが形成される。上部水抜き孔53cは、内障子より室外側にて改装下枠53の上面に貯まる水を中空部41内に導くために形成される。改装下枠53の下部には下部水抜き孔53dが形成される。下部水抜き孔53dは、図2に示すように、改装下枠53の長手方向に長い長孔として、改装下枠53の長手方向に間隔を空けて複数(図示は3つ)形成される。下部水抜き孔53dは、中空部41内の水を外部空間に導くために形成される。
以上の既設サッシ20と改装サッシ30のサッシ本体40は、火災時に高温に晒されると、気密材At1〜At3が溶融して隙間が生じたり、既設サッシ20やサッシ本体40の熱伸びによりビスSc5、Sc7(図5参照)等により固定した箇所に隙間が生じる。このような隙間が生じると、外部空間と中空部41内が連通されてしまい、その隙間から中空部41内に火炎が侵入する恐れがある。また、火災時には下部水抜き孔53dからも中空部41内に火炎が侵入する恐れがある。
また、改装サッシ30のサッシ本体40は、その熱伸びによりコーナー部40aにて隙間が特に生じ易い。このコーナー部40aでは、サッシ本体40の四周の側辺部の中空部41が連続的につながることもあり、コーナー部40aの中空部41内を通して火炎が広い範囲に侵入する恐れがある。また、本例では、例示しないが、サッシ本体40のコーナー部40aにて樹脂製のコーナー部品を用いて改装縦枠55と改装上枠51、改装下枠53を接続する場合がある(特開2012−117238号公報参照)。この場合も、コーナー部品が溶融して隙間が生じる恐れがある。
そこで、本実施形態に係る改装サッシ30では、中空部41内に熱膨張性耐火材90を配置している。この耐火材90は、加熱により膨張したとき、中空部41内を見込方向Yに通過しようとする空気を遮断するように、換言すると、火災時に中空部41内を見込方向Yに通過しようとする火炎の侵入経路を塞ぐように設けられる。このような条件を満たすように、耐火材90は、その位置、大きさ、膨張率等の少なくとも何れかが調整されて設けられる。
この火炎の侵入経路としては、火災時に中空部41内と外部空間とを連通する連通路がある。この連通路には、サッシ本体40と既設サッシ20の間を封止する気密材Atの配置箇所や、サッシ本体40と既設サッシ20のビスSc等による固定箇所が含まれる。これら連通路は、常温時には気密材At、ビスSc等により閉塞されるが、火災時には気密材Atの溶融、サッシ本体40の熱伸び等により隙間が生じる。また、この連通路には、改装下枠53の下部水抜き孔53d等の予めサッシ本体40に形成される孔部が含まれる。本実施形態に係る耐火材90は、加熱により膨張したとき、この連通路を塞ぐように設けられる。
また、他の火炎の侵入経路としては、既設サッシ20とサッシ本体40の間の中空部41内そのものがある。本実施形態に係る耐火材90は、加熱により膨張したとき、この中空部41内を少なくとも部分的に塞いでこれを見込方向Xに区画するように設けられる。以下、この詳細を説明する。
熱膨張性耐火材90は、膨張性材料と耐火材料を少なくとも含有する。膨張性材料は、たとえば、熱膨張性黒鉛、ひる石等であり、耐火材料は、ロックウール、セラミック、珪酸カルシウム、グラスウール等の無機繊維材や、ブチルゴム等の樹脂材である。熱膨張性耐火材90は、弾性を有するとともに、所定の温度(たとえば200℃)を超えると膨張する特性を有する。熱膨張性耐火材90は、このような特性を満たす公知の素材が用いられてよく、たとえば、積水化学工業株式会社の商品名「フィブロック(登録商標)」が用いられる。
本実施形態に係る耐火材90は、改装枠体50や下地材70に接着剤を用いて接着により装着される。また、耐火材90は、本実施形態において平板状に形成されるが、その形状はこれに限定されない。また、耐火材90は、加熱により膨張するとき、主として、その厚さ方向に膨張し、厚さ方向にある他の物体に接触すると、そこから側方に広がるように膨張する傾向がある。耐火材90により中空部41の一部を塞ぐうえでは、このような傾向を考慮のうえ耐火材90の位置、大きさ、膨張率等が調整される。
サッシ本体40の上側辺部の耐火材90には、図2、図3に示すように、上枠用下地材71に装着される下地材側耐火材90Aと、改装下枠53に装着される横枠側耐火材90Bとが含まれる。下地材側耐火材90Aは、上枠用下地材71の下地材側周壁部77の外周面と、その下地材側周壁部77の凹部77aの内周面とに装着される。上枠用下地材71の内周側の下地材側耐火材90Aは、下地材側周壁部77の凹部77a内に収まるように配置される。
下地材側耐火材90Aは、図8(a)に示すように、加熱により膨張したとき、上枠用下地材71の外周側、内周側の中空部41内を見込方向Xに区画するように設けられる。このために、下地材側耐火材90Aは、上枠用下地材71の下地材側周壁部77の外周面、内周面のそれぞれに装着される。また、下地材側耐火材90Aは、図2に示すように、上枠用下地材71の長手方向の略全長に亘る範囲に装着される。これにより、下地材側耐火材90Aは、加熱により膨張したとき、上枠用下地材71の長手方向の全長に亘る範囲で中空部41内を塞いで見込方向Xに区画する。
横枠側耐火材90Bは、図2、図3に示すように、改装上枠51の長手方向両側のはみ出し部51aに装着される。横枠側耐火材90Bは、図8(b)に示すように、加熱により膨張したとき、改装上枠51と見付方向Yに対向する既設上枠21との間の中空部41内を塞いで見込方向Xに区画するように設けられる。また、横枠側耐火材90Bと下地材側耐火材90Aは、加熱により膨張したとき、その改装上枠51と既設上枠21の間の中空部41内で連続的につながるように設けられる。このため、下地材側耐火材90Aと横枠側耐火材90Bは、見込方向Xの位置を合わせるように配置される。
サッシ本体40の横側辺部の耐火材90には、図2、図4に示すように、縦枠用下地材75に装着される下地材側耐火材90Cと、改装縦枠55に装着される縦枠側耐火材90Dとが含まれる。下地材側耐火材90Cは、縦枠用下地材75の下地材側周壁部77の外周面と、その下地材側周壁部77の凹部77aの内周面とに装着される。縦枠用下地材75の内周側の下地材側耐火材90Cは、下地材側周壁部77の凹部77a内に収まるように配置される。
下地材側耐火材90Cは、図9(a)に示すように、加熱により膨張したとき、縦枠用下地材75の外周側、内周側の中空部41内を塞いで見込方向Xに区画するように設けられる。また、下地材側耐火材90Cは、図2に示すように、縦枠用下地材75の長手方向の略全長に亘る範囲に装着される。
図10は、サッシ本体40のコーナー部40aを背面下側からみた斜視図である。縦枠側耐火材90Dは、図2、図4、図10に示すように、改装縦枠55の長手方向両側のはみ出し部55aに装着される。縦枠側耐火材90Dは、図9(b)に示すように、加熱により膨張したとき、改装縦枠55と見付方向に対向する既設縦枠25との間の中空部41内を塞いで見込方向Xに区画するように設けられる。また、縦枠側耐火材90Dと下地材側耐火材90Cは、加熱により膨張したとき、その改装縦枠55と既設縦枠25の間の中空部41内で連続的につながるように設けられる。
サッシ本体40の下側辺部の耐火材90には、図2、図5に示すように、下枠用下地材73に装着される下地材側耐火材90Eと、改装下枠53に装着される横枠側耐火材90Fとが含まれる。下地材側耐火材90Eは、下枠用下地材73の下地材側周壁部77の外周面と、その下地材側周壁部77の内周面とに装着される。
下地材側耐火材90Eは、改装下枠53と下枠用下地材73の間を封止する気密材At3の近傍と、既設下枠23と下枠用下地材73の間を封止する気密材At2の近傍とに装着される。これは、図11に示すように、火災時にこれら気密材At2、At3が溶融したときに形成される隙間としての連通路を下地材側耐火材90Eにより塞ぐためである。なお、図示しないが、下地材側耐火材90Eは、下枠用下地材73の長手方向の略全長に亘る範囲に装着される。
図2、図5に戻り、横枠側耐火材90Fは、改装下枠53のカバー部53aの外周面に装着される。横枠側耐火材90Fは、下部水抜き孔53dより長手方向長さが長く形成され、下部水抜き孔53dの長手方向の全長に亘る範囲で横方向位置が重なる位置に設けられる。これは、図10に示すように、火災時に連通路となる下部水抜き孔53dを横枠側耐火材90Fにより塞ぐためである。
図12(a)は図2の左上のコーナー部40aの拡大図であり、(b)は左下のコーナー部40aの拡大図である。図12(a)では、改装上枠51の横枠側耐火材90Bが膨張する範囲の一例を一点鎖線A1で示し、改装縦枠55の上側の縦枠側耐火材90Dが膨張する範囲の一例を一点鎖線A2で示す。また、図12(b)では、改装縦枠55の下側の縦枠側耐火材90Dが膨張する範囲の一例を一点鎖線A3で示す。
サッシ本体40の上側のコーナー部40aの近傍にある横枠側耐火材90Bと縦枠側耐火材90Dは、加熱により膨張したとき、そのコーナー部40aにて中空部41内で連続的につながり、コーナー部40aの中空部41内を塞いで見込方向Xに区画するように設けられる。図12(a)では、一点鎖線A1と一点鎖線A2とが重なる範囲がこの連続的につながる範囲を示す。また、サッシ本体40の下側のコーナー部40aの近傍にある縦枠側耐火材90Dは、加熱により膨張したとき、そのコーナー部40aの中空部41内を塞いで見込方向Xに区画するように設けられる。
以上の改装構造10によれば、火災時に耐火材90が膨張して中空部41が少なくとも部分的に塞がれる。よって、その中空部41を通しての火炎の侵入を防止でき、良好な遮炎性能を得られる。特に、本実施形態に係る耐火材90は、中空部41内を見込方向Xに通過しようとする空気を遮断するように加熱により膨張する。よって、火災時に中空部41内を見込方向Xに通過しようとする火炎の侵入経路が塞がれ、室内側から室外側、またはその逆側への火炎の侵入を効果的に防止できる。
また、耐火材90が改装サッシ30のサッシ本体40に装着されるため、耐火材90を装着した状態でサッシ本体40を現場に搬入でき、これらを別管理せずともよくなり、その資材管理を簡略化できる。また、施工現場での耐火材90の装着作業が不要となるため、施工性が良好となるうえ、安定した施工品質を確保できる。
また、サッシ本体40のコーナー部40aにて中空部41内が耐火材90により塞がれるため、そのコーナー部40aの中空部41内を通しての火炎の侵入を防止できる。
また、下地材側耐火材90A、90Cが上枠用下地材71や縦枠用下地材75の凹部77a内に配置される。よって、下地材70と改装枠体50の間を膨張する耐火材により塞ぐうえで、下地材70の下地材側周壁部77と改装枠体50の改装枠側周壁部57との間に耐火材を装着しなくともよくなる。よって、これらの間の間隔を耐火材のために広くする必要がなくなり、その分、改装枠体50の改装枠側周壁部57内に形成される開口の見付方向寸法を広くできる。また、下地材70の下地材側周壁部77と改装枠体50の改装枠側周壁部57との間に耐火材を配置せずともよくなるため、その間に介装されるスペーサー15と耐火材90の干渉を防止しつつ、下地材70と改装枠体50の間に長手方向に連続的に耐火材を装着できる。
次に、本実施形態に係る改装サッシ30を用いて既設サッシ20を改装する改装方法の一例を説明する。
まず、既設サッシ20に納められている既設障子を撤去する。既設サッシ20に下地材70をビス止めにより固定する。枠組みした改装枠体50を既設サッシ20の内周側に配置する。改装枠体50は、その改装下枠53を下枠用下地材73の下地材側周壁部77に載置する。このとき、改装上枠51の室外側面と既設上枠21の室内側面を挟み込むようにクランプにより仮固定する。この状態で改装下枠53の改装枠側周壁部57と下枠用下地材73の下地材側周壁部77をビス止めにより固定する。
この後、改装上枠51と上枠用下地材71の間にスペーサー挿入孔80から複数のスペーサー15を挿入し、これらの間隔が保持されるようにする。また、改装縦枠55と縦枠用下地材75の間にスペーサー挿入孔80からスペーサー15を挿入し、これらの間隔が保持されるようにする。改装上枠51と既設上枠21を挟み込むクランプを取り外し、改装上枠51と上枠用下地材71をビス止めにより固定するとともに、改装縦枠55と縦枠用下地材75をビス止めにより固定する。これにより、既設サッシ20にサッシ本体40が取り付けられる。この後、サッシ本体40に新設額縁19を嵌め込みにより取り付ける。
なお、以上の方法によれば、既設サッシ20にサッシ本体40を取り付けたとき、既設サッシ20とサッシ本体40の間の中空部41内に耐火材90が配置されることになる。この方法の他に、この中空部41内に耐火材90が配置されるように、サッシ本体40ではなく既設サッシ20に耐火材90を予め装着してもよい。この既設サッシ20への耐火材90の装着箇所は、上述にて説明したサッシ本体40への耐火材90の装着箇所から見付方向Yにずれた位置としてもよい。
[第2の実施の形態]
図13、図14は、第2実施形態に係る改装サッシ30を示す。以下、第1実施形態で説明した要素と同一の要素に同一の符号を付し、重複する説明を省略する。改装サッシ30は、第1実施形態と比較して、下枠用下地材73の構造や、耐火材90の装着方法の点で主に相違する。
下枠用下地材73には、室内側の第1下地材固定部73a、下地材側周壁部77の他に、下地材側周壁部77の室外側部分から傾斜して設けられる斜面部73cが形成される。また、下枠用下地材73には、斜面部73cの下部にて見付方向Y外側に延びる第2下地材固定部73dと、第2下地材固定部73dより室外側にて見付方向Y外側に延びる第3下地材固定部73eとが形成される。これらは、既設下枠23を室外側から覆う。
下枠用下地材73は、その第2下地材固定部73dが既設下枠23の障子レール部29Cに室外側から係合される。第2下地材固定部73dは、その障子レール部29Cに室外側からビスSc8がねじ込まれ、そのビスSc8等により障子レール部29Cに固定される。改装下枠53は、その改装枠固定部53bが下枠用下地材73の第3下地材固定部73eに室外側から係合される。改装枠固定部53bは、その第3下地材固定部73eに室外側からビスSc7がねじ込まれ、そのビスSc7等により第3下地材固定部73eに固定される。下枠用下地材73は、第1下地材固定部73aの下面に気密材At4が装着され、その気密材At4は既設下枠23の既設枠固定部23aの上面に当接される。この気密材At4により下枠用下地材73と既設下枠23の間が室内側にて封止される。
下枠用下地材73は、耐火材90を保持する保持部43を有する。保持部43は、下枠用下地材73の表面に間隔を空けて形成される一対の突起部43aを有する。一対の突起部43aには互いの開口が対向する一対の溝部が形成される。一対の溝部には板状の耐火材90の両端部が差し込まれる。一対の溝部には長手方向から耐火材90を抜き差し可能である。耐火材90は、一対の突起部43aに係合して一対の溝部内に保持され、その保持部43に脱着可能に装着される。なお、下枠用下地材73以外の縦枠用下地材75、上枠用下地材71や、改装下枠53等の改装枠体50も同様に、耐火材90を保持する保持部43を有する。
サッシ本体40の下側辺部の中空部41は、既設下枠23と改装下枠53の間に形成され、下枠用下地材73により見付方向Yに仕切られる。改装下枠53と下枠用下地材73の間の中空部41は、ビス止めされる改装下枠53の改装枠固定部53bと下枠用下地材73の第3下地材固定部73eとによりその室外側が閉塞される。この中空部41は、改装下枠53と下枠用下地材73の間を封止する気密材At3によりその室内側が閉塞される。また、下枠用下地材73と既設下枠23の間中空部41は、ビス止めされる下枠用下地材73の第2下地材固定部73dと既設下枠23の障子レール部29Cによりその室外側が閉塞される。この中空部41は、下枠用下地材73と既設下枠23の間を封止する気密材At4によりその室内側が閉塞される。
下枠用下地材73の下地材側耐火材90Eは、下枠用下地材73の下地材側周壁部77の外周面に装着される。この下地材側耐火材90Eは、加熱により膨張したとき、下枠用下地材73と見付方向Yに対向する既設下枠23との間の中空部41内を見込方向Xに区画するように設けられる。
また、下枠用下地材73の下地材側耐火材90Eは、第1下地材固定部73aの室外側面に装着される。この下地材側耐火材90Eは、改装下枠53と下枠用下地材73の間を封止する気密材At3の近傍に装着される。これは、火災時にこの気密材At3が溶融したときに形成される隙間としての連通路を下地材側耐火材90Eにより塞ぐためである。
以上の改装サッシ30によれば、サッシ本体40の保持部43により耐火材90を保持でき、たとえば、耐火材90を接着剤により装着する場合よりも、長期間に亘り品質を確保できる。また、一対の溝部に抜き差しして耐火材90を装着できるため、耐火材90を容易、かつ、しっかりと装着できるうえ、容易に装着できることから生産性が向上する。
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示すにすぎない。また、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が可能である。
上述の実施形態に係る改装サッシ40は、引き違い障子を納める引き違い窓を構成するものを説明した。改装サッシ40は、引き違い窓以外にも、滑り出し窓、倒し窓、突き出し窓等の開き窓に適用されてもよいし、FIX窓に適用されてもよい。また、既設サッシ20、改装サッシ40は、図示の形状に限定されない。
上述の実施形態に係る耐火材90は、サッシ本体40の改装枠体50、下地材70の両方に装着される場合を例示したが、何れか一方にのみ装着されてもよい。また、上述の実施形態に係る耐火材90は、加熱により膨張したとき、既設サッシ20とサッシ本体40の間の中空部41内を塞いで、これを見込方向Xに区画するように、その位置等が調整された。この他にも、この中空部41内の全体を塞ぐように、その位置等が調整されてもよい。
また、複数の耐火材90は、加熱により膨張したとき、サッシ本体40の四周の側辺部にて中空部41内で周方向に沿って直線状に延び、サッシ本体40のコーナー部40aにて連続的につながり、全体として環状に形成されるように設けられてもよい。
また、耐火材90は、加熱により膨張したとき、中空部41内を見込方向Yに通過しようとする可燃性ガスの侵入経路を塞ぐように設けられてもよい。この可燃性ガスとは、たとえば、一酸化炭素等である。