上記の成形方法では、金型を閉じる際に、繊維強化樹脂シートの周縁部位と、内側部位との間の周縁寄り部位が、周縁部位及び内側部位に比して先に、キャビティ形成面と接触して、金型に挟持されることがある。この場合、型締めの途中で、周縁寄り部位がキャビティ形成面に対して位置決め固定される。従って、以降の型締めにおいて、内側部位をキャビティ形成面と接触させて成形するときに、繊維強化樹脂シートの周縁部位側をキャビティ内に引き込むことが困難になる。その結果、キャビティに繊維強化樹脂シートを十分に充填することができず、一部の材料を引き伸ばすことになり、キャビティ内が材料不足(薄肉)となるため、内側部位に金型による所定の加圧力を付与することが困難となる。
繊維強化樹脂シートでは、加熱されることによって、強化繊維を拘束していた樹脂が溶融すると、強化繊維の拘束が解放されてスプリングバックが生じる。このため、上記のように、繊維強化樹脂シートの成形時に金型によって所定の加圧力を付与できない場合、その部位の見た目は金型通りの厚さになったとしても、材料(強化繊維)が不足していることとなり、成形品に材料のスプリングバックが残ったままになってしまう。この場合、材料密度や、強化樹脂と繊維との結びつき等が低下するため、成形品の物性の低下を招く懸念がある。
また、上記の成形方法では、金型を型締めする際に、上型との接触によって繊維強化樹脂シートの熱が奪われることについて十分に考慮されていない。特に、繊維強化樹脂シートがカーボン等の熱伝導性が大きい材料を含む場合には、その影響が顕著となり、所望の形状や良好な物性の成形品を得られない懸念がある。
さらに、上記の成形方法で凹部や凸部を有する成形品を得る場合、金型のキャビティ形成面には、成形品の形状に応じた凸部や凹部が設けられる。すなわち、図12Aに示すように、下金型1のキャビティ形成面2は、凸部2aや凹部2b等が設けられた凹凸形状となっている。この場合、先ず、キャビティ形成面2から複数のホールドピン3を突出させ、水平方向位置が互いに揃えられた上端面に繊維強化樹脂シート4を載置する。
次いで、複数のホールドピン3を同時に下降させつつ金型を閉じていく。このとき、図12Bに示すように、凸部2aでは、キャビティ形成面2の他の部位よりも先に、ホールドピン3が下金型1内に収納され繊維強化樹脂シート4と接触する。さらにホールドピン3が下降し、図12Cに示すように、全て下金型1内に収納されると、上金型5のキャビティ形成面6に設けられた凸部6a等、キャビティ形成面2、6に設けられた各凸部が先行して繊維強化樹脂シート4に接触する。
このように、さらに金型が閉じられると、上記の凸部2a、6a等の各凸部が、対応する凹部6b、2b等の各凹部内に向かって繊維強化樹脂シート4を押圧する。これによって、キャビティ形成面2、6の全体に繊維強化樹脂シート4を接触させてキャビティ内に充填するべく、金型の型締めによる加圧力が付与される。
従って、上記の成形方法では、繊維強化樹脂シート4に対して、キャビティ形成面2、6の各凸部が先行して接触し、その後各凹部が接触するまでに時間差が生じる。このため、各凸部が先行して接触した繊維強化樹脂シート4の接触部位4aでは、他部位に比して冷却固化が進行し易い。
これによって、型締め時に、接触部位4aの流動性が低下すると、他部位の流動量(変形量)が過剰に大きくなってしまう懸念がある。また、上記の加圧力が付与される前に、接触部位4aが最終製品厚よりも大きい厚さで固化してしまうこと等によって、金型を十分に型締めすることが困難になると、他部位に付与される加圧力が不足する懸念がある。結局、上記の成形方法では、凹凸形状のキャビティ形成面を備える金型を用いる場合に、繊維強化樹脂シート4の成形性が低下することを回避し難く、成形品に強化繊維の配向乱れや樹脂含有量のばらつき等が生じ易い。すなわち、所望の形状や良好な物性の成形品を高精度に得ることが困難である。
本発明は上記した問題を解決するためになされたもので、凹凸形状のキャビティ形成面を備える金型を用いても、繊維強化樹脂シートの全体に十分な加圧力を付与して、所望の形状及び良好な物性の成形品を高精度に得ることが可能な成形方法及び成形装置を提供することを目的とする。
前記の目的を達成するために、本発明は、軟化させた繊維強化樹脂シートを下金型及び上金型に当接させて成形する成形方法であって、前記下金型に対して昇降可能に設けられた複数の載置ピンの上端面を、前記下金型のキャビティ形成面から突出させ、前記繊維強化樹脂シートが前記キャビティ形成面に接触しない載置位置で、前記上端面に前記繊維強化樹脂シートを載置し、前記上端面を前記キャビティ形成面と面一になる成形位置まで下降させるとともに前記下金型及び前記上金型を閉じる工程を有し、前記繊維強化樹脂シートを載置した後の前記上端面が前記成形位置に到達するより前に、前記上端面同士が前記キャビティ形成面の凹凸形状に応じた高低差となるように、前記複数の載置ピンの下降速度を調整すること、又は選択的に前記複数の載置ピンの上端面を上昇させることで、前記複数の載置ピン同士の突出長さの比を調整して、前記繊維強化樹脂シートの予備成形を行うことを特徴とする。
この成形方法では、載置位置まで突出させた載置ピンの上端面に繊維強化樹脂シートを載置することで、下金型及び上金型(金型)の型締めに先立って、繊維強化樹脂シートがキャビティ形成面に接触し、冷却されることを抑制できる。すなわち、繊維強化樹脂シートの成形性が低下してしまうことを抑制できる。
なお、載置位置にある上端面に繊維強化樹脂シートを載置する際、繊維強化樹脂シートの全ての部位において、キャビティ形成面との接触が回避されている必要はない。すなわち、流動性が大きく悪化しない程度に、繊維強化樹脂シートの一部がキャビティ形成面に接触していてもよい。
また、上端面が成形位置に到達する前に、上端面同士がキャビティ形成面の凹凸形状に応じた高低差で配置されるように、複数の載置ピンの突出長さの比を調整する。このように高低差が設けられた上端面に載置することで、繊維強化樹脂シートの一部が自重によって流動して変形する。これによって、例えば、繊維強化樹脂シートの周縁寄り部位が金型に挟持される前に、予め、周縁部位側をキャビティ内に引き込んで、キャビティ形成面に沿う形状に繊維強化樹脂シートを予備成形することができる。従って、型締めの際に、繊維強化樹脂シートの材料の一部が引き伸ばされて、キャビティ内が材料不足となることを効果的に抑制できる。
さらに、キャビティ形成面が凹凸形状からなる場合であっても、該凹凸形状に応じて、予備成形された後の繊維強化樹脂シートを金型に当接させることができる。つまり、繊維強化樹脂シートの部位によって、キャビティ形成面と接触するタイミングに差が生じてしまうことを抑制できる。これによって、繊維強化樹脂シートに加圧力が付与される前に流動性が低下する部位が生じることを抑制でき、繊維強化樹脂シートの全体の流動性を良好に維持した状態で型締めを行うことができる。
以上から、この成形方法では、繊維強化樹脂シートの全体に対して十分な大きさの加圧力を略均等に付与して型締めすることができる。このため、繊維強化樹脂シートが加熱されてスプリングバックが生じても、該スプリングバックが成形品に残ったままになることを効果的に抑制でき、成形品の高品質化を図ることができる。つまり、所望の形状及び良好な物性を示す成形品を高精度に得ることが可能になる。
上記の成形方法において、前記載置位置では、前記上端面を水平方向に揃えて配置することが好ましい。この場合、繊維強化樹脂シートを載置した後に、上端面同士に高低差を生じさせる。換言すると、繊維強化樹脂シートの載置時には、上端面同士に高低差が生じていない。これによって、上端面上の所望の位置に、繊維強化樹脂シートを容易且つ高精度に載置して、効率的に成形を行うことが可能になる。
上記の成形方法において、前記上端面同士に前記キャビティ形成面の凹凸形状に応じた高低差を設ける前に、前記キャビティ形成面の水平方向の中央側に比して、端部側から突出する前記載置ピンの前記上端面の高さを高くすることが好ましい。この場合、高低差を形成する上端面のうち、高く配置される上端面同士の間隔を大きくすることができる。これによって、上端面に載置された繊維強化樹脂シートの中央側で流動が起こり易くなり、繊維強化樹脂シートの周縁部位側をより効果的にキャビティ内に引き込みながら、自重による変形を効率的に生じさせることが可能になる。従って、繊維強化樹脂シートが、例えば、変形し難い高硬度材料からなる場合であっても、良好且つ効率的に予備成形することが可能になる。
上記の成形方法において、前記繊維強化樹脂シートの複数箇所を複数の保持部材で保持し、前記複数の保持部材同士の距離を調整することで、前記キャビティ形成面の形状に応じて前記繊維強化樹脂シートを予備成形した後に、前記上端面に載置することが好ましい。この場合、保持部材によって、予備成形した繊維強化樹脂シートをさらに、上記の通り複数の載置ピンの上端面同士の高低差によって予備成形するため、一層高精度に成形された成形品を得ることが可能になる。
上記の成形方法において、前記上金型から前記下金型に向かって突出可能に設けられる押圧ピンによって、前記繊維強化樹脂シートが載置された前記上端面が前記成形位置に到達するより前に、前記繊維強化樹脂シートを押圧して予備成形することが好ましい。この場合、下金型のキャビティ形成面に設けられた凹部の深さが大きい場合であっても、該凹部の内部に向かって、押圧ピンによって繊維強化樹脂シートを押圧することができる。これによって、繊維強化樹脂シートの周縁部位側をより積極的にキャビティ内に引き込んで一層高精度に予備成形することができる。また、繊維強化樹脂シートの部位によって、キャビティ形成面と接触するタイミングに差が生じてしまうことを効果的に抑制できる。その結果、繊維強化樹脂シートの全体の流動性を良好に維持し、十分な加圧力を略均等に付与して型締めすることができ、所望の形状及び良好な物性の成形品を高精度に得ることが可能になる。
上記の成形方法において、前記複数の載置ピンの少なくとも一つの上端面に、位置決め部材によって位置決め固定した前記繊維強化樹脂シートの部位を位置決め部位とし、前記キャビティ形成面に対する前記位置決め部位の相対位置を固定した状態で、前記下金型及び前記上金型を閉じることが好ましい。このように位置決め部位を基準として設けることで、金型を閉じる際に、繊維強化樹脂シートがキャビティ内に引き込まれる方向を規制することが可能になる。これによって、キャビティ内に繊維強化樹脂シートを良好且つ容易に充填することができ、一層高精度に成形された成形品を得ることが可能になる。
なお、上記した成形方法が適用された成形装置もこの発明に含まれる。すなわち、本発明は、軟化させた繊維強化樹脂シートに下金型及び上金型を当接させて成形する成形装置であって、上端面が、前記下金型のキャビティ形成面と面一となる成形位置と、前記成形位置から突出し、該上端面に載置された前記繊維強化樹脂シートが前記キャビティ形成面に接触しない載置位置との間を移動するように、前記下金型に対して昇降可能に設けられる複数の載置ピンを備え、前記載置位置から前記成形位置まで前記上端面を下降させるとともに、前記下金型及び前記上金型を閉じ、前記繊維強化樹脂シートを載置した後の前記上端面が前記成形位置に到達するより前に、前記複数の載置ピンの下降速度を調整すること、又は選択的に前記複数の載置ピンの上端面を上昇させることで、前記複数の載置ピン同士の突出長さの比を調整して、前記上端面同士を前記キャビティ形成面の凹凸形状に応じた高低差とすることを特徴とする。
この成形装置では、型締め前に、予め、周縁部位側をキャビティ内に引き込んで、キャビティ形成面に沿う形状に繊維強化樹脂シートを予備成形することができる。これによって、型締めの際に、繊維強化樹脂シートの材料の一部が引き伸ばされることを抑制でき、キャビティ内が材料不足となることを効果的に抑制できる。
また、予備成形された繊維強化樹脂シートに対して金型のキャビティ形成面を当接させることができるため、繊維強化樹脂シートの部位によって、キャビティ形成面と接触するタイミングに差が生じてしまうことを抑制できる。すなわち、型締め時に、繊維強化樹脂シートの流動性が部分的に低下してしまうことを抑制できる。
従って、この成形装置では、繊維強化樹脂シートの全体に十分な加圧力を略均等に付与して型締めを行うことができるため、所望の形状及び良好な物性の成形品を高精度に得ることが可能になる。
上記の成形装置において、前記載置位置では、前記上端面が水平方向に揃って配置することが好ましい。この場合、上端面上の所望の位置に、繊維強化樹脂シートを容易且つ高精度に載置して、効率的に成形を行うことが可能になる。
上記の成形装置において、前記上端面同士に前記キャビティ形成面の凹凸形状に応じた高低差を設ける前に、前記キャビティ形成面の水平方向の中央側に比して、端部側から突出する前記載置ピンの前記上端面の高さを高くすることが好ましい。この場合、繊維強化樹脂シートの周縁部位側をより効果的にキャビティ内に引き込みながら、自重による変形を効率的に生じさせることが可能になる。従って、繊維強化樹脂シートが、例えば、変形し難い高硬度材料からなる場合であっても、良好に予備成形することが可能になる。
上記の成形装置において、前記上端面に載置する前の前記繊維強化樹脂シートの複数箇所を保持することが可能な複数の保持部材をさらに備え、前記保持部材は、前記繊維強化樹脂シートを保持した状態で、互いの距離を調整することで、前記キャビティ形成面の形状に応じて予備成形した前記繊維強化樹脂シートを前記上端面に載置して、前記繊維強化樹脂シートの保持を解放することが好ましい。この場合、一層高精度に成形された成形品を得ることが可能になる。
上記の成形装置において、前記上金型から前記下金型に向かって突出可能に設けられる押圧ピンをさらに備えることが好ましい。この場合、繊維強化樹脂シートの周縁部位側をより積極的にキャビティ内に引き込んで、一層高精度に予備成形することができる。また、繊維強化樹脂シートの部位によって、キャビティ形成面と接触するタイミングに差が生じてしまうことを効果的に抑制できる。その結果、繊維強化樹脂シートの全体の流動性を良好に維持して、十分な加圧力を略均等に付与することができ、所望の形状及び良好な物性の成形品を高精度に得ることが可能になる。
上記の成形装置において、前記複数の載置ピンの少なくとも一つの上端面に、前記繊維強化樹脂シートを位置決め固定する位置決め部材をさらに備え、前記位置決め部材によって位置決め固定した前記繊維強化樹脂シートの部位を位置決め部位とし、前記キャビティ形成面に対する前記位置決め部位の相対位置を固定した状態で、前記下金型及び前記上金型を閉じることが好ましい。この場合、キャビティ内に繊維強化樹脂シートを良好且つ容易に充填することができ、一層高精度に成形された成形品を得ることが可能になる。
本発明では、載置位置まで突出させた載置ピンの上端面に繊維強化樹脂シートを載置することで、金型の型締めに先立って、繊維強化樹脂シートがキャビティ形成面に接触して冷却されることを抑制できる。
また、繊維強化樹脂シートを配置した上端面をキャビティ形成面の凹凸形状に応じた高低差となるように配置することで、繊維強化樹脂シートを自重によって変形させる。これによって、型締め前に、予め、周縁部位側をキャビティ内に引き込んで、キャビティ形成面に沿う形状に繊維強化樹脂シートを予備成形することができる。従って、型締めの際に、繊維強化樹脂シートの材料の一部が引き伸ばされることを抑制でき、キャビティ内が材料不足となることを効果的に抑制できる。さらに、このように予備成形した繊維強化樹脂シートを金型に当接させて成形するため、繊維強化樹脂シートの部位によって、キャビティ形成面と接触するタイミングに差が生じてしまうことを抑制できる。
その結果、型締め時に、繊維強化樹脂シートの全体の流動性を良好に維持して、十分な加圧力を略均等に付与することが可能になり、所望の形状及び良好な物性の成形品を高精度に得ることができる。
以下、本発明に係る成形方法につき、その成形装置との関係で好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
本発明に係る成形方法では、軟化させた繊維強化樹脂シートを下金型及び上金型に当接させてプレス成形することで、所望の形状の成形品を得る。繊維強化樹脂シートとしては、例えば、強化繊維をシート状にした繊維基材に熱可塑性樹脂を含浸させたものを採用することができる。この繊維基材は、1枚であっても複数枚が積層されていてもよい。
<第1実施形態>
図1〜図4を参照しつつ、本発明の第1実施形態に係る成形方法について、該成形方法を実施するための成形装置10との関係で説明する。成形装置10は、下金型12及び上金型14からなる金型と、下金型12に対して昇降可能に設けられる複数の載置ピン16a、16b、16cとを備えている。なお、図1及び図2では、上金型14の図示を省略している。
下金型12は固定型であり、可動型である上金型14が、鉛直方向に沿って下金型12に接近することで、金型が閉じられる。これによって、下金型12のキャビティ形成面18と、上金型14のキャビティ形成面20との間にキャビティが形成される。このキャビティ内に繊維強化樹脂シート22を充填するように金型の型締めが行われることで、該繊維強化樹脂シート22が所望の形状に成形される。すなわち、キャビティ形成面18、20のそれぞれは、繊維強化樹脂シート22を成形して得られる成形品の形状に応じた凹凸形状となっている。
具体的には、下金型12のキャビティ形成面18の凸形状としては、最下面18aからの突出する高さが大きい順に、第1凸部24a、第2凸部26a、第3凸部28aが設けられている。これらの凸形状にそれぞれ対応する凹形状として、上金型14のキャビティ形成面20には、第1凹部24b、第2凹部26b、第3凹部28bが設けられている(図3及び図4を参照)。また、上金型14のキャビティ形成面20に設けられた第4凸部30aに対応して、下金型12のキャビティ形成面18には、第4凹部30bが設けられている。
載置ピン16a、16b、16cのそれぞれは、下金型12のキャビティ形成面18の第1凸部24a、第2凸部26a、第3凸部28aに対応する位置に設けられている。また、載置ピン16a〜16cは、それぞれの上端面が成形位置と載置位置との間を移動するように、下金型12に対して互いに独立に昇降可能となっている。これらの載置ピン16a〜16cは、下金型12及び上金型14よりも熱伝導性が小さい材料からなることが好ましく、例えば、陶磁器等のセラミックを好適に採用することができる。
成形位置では、載置ピン16a〜16cのそれぞれの上端面(以下、単に上端面ともいう)がキャビティ形成面18と面一になる(図4を参照)。この成形位置から、下金型12に対して載置ピン16a〜16cを上昇させると、換言すると、キャビティ形成面18から突出する載置ピン16a〜16cの長さ(突出長さ)を大きくすると、上端面が載置位置に達する(図1を参照)。この載置位置では、上端面に繊維強化樹脂シート22を載置した場合に、該繊維強化樹脂シート22とキャビティ形成面18とが接触しないように突出長さが設定されている。また、載置位置では、上端面が水平方向に揃って配置される。
なお、ここでは、キャビティ形成面18、20が上記の凹凸形状から形成される場合を例に挙げて説明するが、勿論これらに限定されるものではない。キャビティ形成面18、20は、所望の形状の成形品を得ることが可能な形状に適宜設定されればよく、キャビティ形成面の形状に応じて複数の載置ピンが設けられればよい。このような場合であっても、本実施形態と同様の効果を奏することが可能である。
基本的には以上のように構成される成形装置10を用いて、繊維強化樹脂シート22を成形する成形方法について説明する。
先ず、図1に示すように、載置ピン16a〜16cの突出長さを調整し、載置位置まで突出させた上端面に繊維強化樹脂シート22を載置する。これによって、金型を型締めすることに先立ち、下金型12と上金型14との間に、繊維強化樹脂シート22を金型に接触させずに配置することができる。すなわち、繊維強化樹脂シート22の熱が金型に奪われて冷却固化されることを回避できるため、金型の型締め前に繊維強化樹脂シート22の流動性が低下してしまうことを抑制できる。また、上記の通り、上端面を水平方向に沿って配置させることで、該上端面に繊維強化樹脂シート22を容易且つ高精度に載置することができる。
この際、上記の通り、載置ピン16a〜16cを、金型よりも熱伝導性が小さい材料から構成することで、軟化させた繊維強化樹脂シート22の熱が載置ピン16a〜16cに奪われることを抑制できる。これによって、繊維強化樹脂シート22の流動性を良好に維持することができる。なお、繊維強化樹脂シート22の流動性を一層効果的に維持するためには、図示しないヒータ等によって載置ピン16a〜16cを加熱してもよい。
次に、図2に示すように、上端面同士がキャビティ形成面18の形状に応じた高低差となるように、載置ピン16a〜16cのそれぞれの突出長さを調整する。すなわち、キャビティ形成面18の第1凸部24a、第2凸部26a、第3凸部28aのそれぞれの高さに対応して、上端面が配置されるように、載置ピン16a〜16cの突出長さを調整する。
載置ピン16a〜16cの突出長さは、例えば、載置ピン16a〜16cを下降させる際のそれぞれの下降速度を設定することで調整できる。例えば、第1凸部24aよりも高さが低い第2凸部26aに設けられる載置ピン16bの下降速度を、該第1凸部24aに設けられる載置ピン16aに比して大きくすればよい。同様に、載置ピン16cの下降速度を、載置ピン16bに比して大きくすればよい。なお、載置ピン16a〜16cの突出長さの調整は、上記のように下降速度を設定することに限られるものではなく、例えば、載置ピン16cよりも突出長さが大きくなるように載置ピン16a、16bの上端面を上昇させてもよい。
これによって、上端面に載置された繊維強化樹脂シート22が自重によって載置ピン16a〜16c同士の間に垂下する。このため、繊維強化樹脂シート22を、その周縁部位側をキャビティ内に引き込んで、キャビティ形成面18の形状に近づけるように予備成形することができる。すなわち、載置ピン16a〜16c同士の間隔や高低差は、例えば、キャビティ形成面18の第4凹部30bに対し、繊維強化樹脂シート22が垂下して接近するように調整されている。
そして、図3に示すように、上記の上端面の高低差を維持した状態で、換言すると、互いの突出長さの比を維持した状態で、載置ピン16a〜16cを下降させつつ、下金型12に対して上金型14を接近させる。すなわち、例えば、上記のように載置ピン16a〜16cの下降速度をそれぞれ設定して突出長さを調整した後に、これらの下降速度を互いに一致させることで、上記の高低差を維持しつつ上端面を成形位置まで下降させることができる。なお、載置ピン16a〜16cのそれぞれは、下金型12の内部に収容されながら下降する。
従って、上端面の高低差によって、繊維強化樹脂シート22を予備成形しつつ、金型を閉じることができる。このため、例えば、繊維強化樹脂シート22の周縁寄り部位が金型に挟持される前に、周縁部位側をキャビティ内に引き込んでおくことができる。
また、例えば、上金型14のキャビティ形成面20から突出する第4凸部30aが、繊維強化樹脂シート22に接近しても、互いが接触することを効果的に抑制することができる。つまり、繊維強化樹脂シート22の熱が上金型14に奪われることを回避でき、繊維強化樹脂シート22の成形性(流動性)が低下してしまうことを効果的に抑制できる。
さらに、載置ピン16a〜16cを下降させつつ、下金型12に上金型14を接近させ、上金型14のキャビティ形成面20が繊維強化樹脂シート22に接する直前で載置ピン16a〜16cの上端面を成形位置まで下降させる。これによって、図4に示すように、下金型12及び上金型14に繊維強化樹脂シート22を当接させ、下金型12と上金型14のクリアランスが最終製品厚になるまで型締めを行う。その結果、繊維強化樹脂シート22がキャビティ内に充填され、プレス成形が行われる。
以上から、この成形方法では、繊維強化樹脂シート22の周縁部位側をキャビティ内に引き込みながら、キャビティ形成面18、20の凹凸形状に応じて、繊維強化樹脂シート22を予備成形する。そして、このようにして予備成形された後の繊維強化樹脂シート22を金型に当接させる。
これによって、型締めの際に、繊維強化樹脂シート22の材料の一部が引き伸ばされることを抑制できるため、キャビティ内が材料不足となることを効果的に抑制できる。また、繊維強化樹脂シート22の部位ごとにキャビティ形成面18、20と接触するタイミングに差が生じてしまうことを抑制できるため、繊維強化樹脂シート22の全体の流動性を良好に維持した状態で型締めを行うことができる。
その結果、繊維強化樹脂シート22の全体に対して十分な大きさの加圧力を略均等に付与して型締めすることができる。すなわち、このように型締めした状態で、繊維強化樹脂シート22を冷却した後、金型を開放することで、所望の形状及び良好な物性を示す成形品を高精度に得ることが可能になる。
<第2実施形態>
次に、図1〜図5を参照しつつ本発明の第2実施形態に係る成形方法について、該成形方法を実施するための成形装置32との関係で説明する。なお、図5に示す構成要素のうち、図1〜図4に示す構成要素と同一又は同様の機能及び効果を奏するものに対しては同一の参照符号を付し、詳細な説明を省略する。
成形装置32は、基本的には上記の成形装置10と同様に構成される。この成形装置32を用いて、繊維強化樹脂シート22を成形する成形方法について説明する。
先ず、図1に示すように、上記の成形装置10を用いた成形方法と同様に、載置ピン16a〜16cの突出長さを調整し、載置位置まで突出させた上端面に繊維強化樹脂シート22を載置する。
次に、図5に示すように、水平方向の両端部側から突出する載置ピン16a、16cの上端面が、中央側の載置ピン16bの上端面よりも高くなるように配置する。ここで、載置ピン16aから載置ピン16c間での距離をL1、載置ピン16aから載置ピン16b間での距離をL2、載置ピン16bから載置ピン16c間での距離をL3とする。このとき、上記のように載置ピン16a〜16cの上端面の高さを設定した場合、高い位置にある上端面同士の間隔はL1である。一方、仮に、中央部の載置ピン16bの上端面を最高位置としたときには、高い位置にある上端面同士の間隔はL2又はL3となり、L1よりも小さくなる。
繊維強化樹脂シート22は、高い位置にある上端面同士の間隔が大きくなるほど、中央側が自重によって垂下し易くなる。すなわち、図5に示すようにして、載置ピン16a、16cの上端面の高さを、載置ピン16bの上端面の高さよりも大きくすることで、繊維強化樹脂シート22の周縁部位側をより効果的にキャビティ内に引き込みながら、繊維強化樹脂シート22を効率的に予備成形することができる。すなわち、第2実施形態に係る成形方法では、繊維強化樹脂シート22が、例えば、変形し難い高硬度材料からなる場合であっても、良好且つ効率的に予備成形することが可能になる。
このようにして繊維強化樹脂シート22を予備成形した後は、図2〜図4に示すように、上記の成形装置10を用いた成形方法と同様の工程を経て成形品を得ることができる。すなわち、第2実施形態に係る成形方法においても、繊維強化樹脂シート22全体の流動性を良好に維持し、略均等に加圧力を付与するように型締めを行って、高精度に成形された成形品を得ることができる。
<第3実施形態>
次に、図2〜図4、図6、図7を参照しつつ本発明の第3実施形態に係る成形方法について、該成形方法が適用された成形装置34との関係で説明する。なお、図6、図7に示す構成要素のうち、図1〜図5に示す構成要素と同一又は同様の機能及び効果を奏するものに対しては同一の参照符号を付し、詳細な説明を省略する。
成形装置34は、上記の成形装置10の構成に加えて、繊維強化樹脂シート22の複数箇所を保持することが可能な複数の保持部材36a、36b、36cをさらに備えている(図6及び図7を参照)。保持部材36a〜36cのそれぞれは、互いに同様に構成することができ、刺通ピン38を備えている。なお、このような保持部材36a〜36cとしては、例えば、特開平5−228952号公報の段落[0008]〜[0013]に記載されるピンを備える移送装置等を採用することができる。従って、保持部材36a〜36cの構成についての詳細な説明は省略する。
この成形装置34を用いて、繊維強化樹脂シート22を成形する成形方法について説明する。先ず、図6に示すように、保持部材36a〜36cによって、載置ピン16a〜16cの上端面に載置する前の繊維強化樹脂シート22の複数箇所を保持する。
次に、図7に示すように、保持部材36a〜36c同士の距離を調整することで、キャビティ形成面18の形状に応じて繊維強化樹脂シート22を予備成形する。すなわち、例えば、上記の通り繊維強化樹脂シート22の複数箇所を保持した状態で、保持部材36a、36b同士を接近させることで、該保持部材36a、36b同士の間の繊維強化樹脂シート22を垂下させることができる。例えば、第4凹部30b等のキャビティ形成面18に設けられた凹部形状に対応する、繊維強化樹脂シート22の部位を垂下させる。これによって、繊維強化樹脂シート22をキャビティ形成面18の形状に合わせて予備成形することができる。
上記のように保持部材36a〜36cを用いて予備成形した後の繊維強化樹脂シート22を、キャビティ形成面18の形状に応じた高低差を予め設けた載置ピン16a〜16cの上端面に載置して、図2に示す状態とする。このため、第3実施形態に係る成形方法では、一層高精度に繊維強化樹脂シート22を予備成形することが可能になる。
その後、図3及び図4に示すように、上記の成形装置10を用いた成形方法と同様の工程を経て、金型の型締めを行うことで、成形品を得ることができる。その結果、第3実施形態に係る成形方法においても、繊維強化樹脂シート22全体の流動性を良好に維持し、略均等に加圧力を付与するように型締めを行って、高精度に成形された成形品を得ることができる。
<第4実施形態>
次に、図1、図4、図8、図9を参照しつつ本発明の第4実施形態に係る成形方法について、該成形方法が適用された成形装置40との関係で説明する。なお、図8、図9に示す構成要素のうち、図1〜図7に示す構成要素と同一又は同様の機能及び効果を奏するものに対しては同一の参照符号を付し、詳細な説明を省略する。
成形装置40は、上記の成形装置10の構成に加えて、上金型14から下金型12に向かって突出可能に設けられる押圧ピン42をさらに備えている(図8及び図9を参照)。押圧ピン42は、下金型12に上金型14を接近させる際、第4凸部30aから第4凹部30bに向かって突出して、載置ピン16a〜16cの上端面に載置された繊維強化樹脂シート22を押圧する。この押圧ピン42は、金型が閉じるにつれて、突出長さが小さくなるように、上金型14の内部に基端側から収容されることが可能になっている。
この成形装置40を用いて、繊維強化樹脂シート22を成形する成形方法について説明する。先ず、図1に示すように、上記の成形装置10を用いた成形方法と同様に、載置ピン16a〜16cの突出長さを調整し、載置位置まで突出させた上端面に繊維強化樹脂シート22を載置する。
次に、図8に示すように、上端面同士の間にキャビティ形成面18の形状に応じた高低差を設けつつ、下金型12に上金型14を接近させる。この際、押圧ピン42を突出させて、その先端面を繊維強化樹脂シート22に当接させる。これによって、繊維強化樹脂シート22を第4凹部30b側に向かって押圧することができる。このため、上端面の高低差に加え、押圧ピン42の押圧力によって、繊維強化樹脂シート22の周縁部位を一層積極的にキャビティ内に引き込んで、該繊維強化樹脂シート22をキャビティ形成面18の形状に近づくように予備成形できる。
さらに、図9に示すように、上記の上端面の高低差と、押圧ピン42による押圧を維持するべく、載置ピン16a〜16c及び押圧ピン42の互いの突出長さの比を維持しつつ金型を閉じていく。
その後、図4に示すように、上記の成形装置10を用いた成形方法と同様の工程を経て、金型の型締めを行うことで、成形品を得ることができる。なお、押圧ピン42は、第4凹部30bが繊維強化樹脂シート22に接する直前で、先端面と第4凸部30aとが面一となるように、上金型14内に収容されればよい。
すなわち、第4実施形態に係る成形方法では、下金型12のキャビティ形成面18に設けられた凹部形状の深さが大きい場合であっても、繊維強化樹脂シート22を高精度に予備成形することができる。これによって、繊維強化樹脂シート22の部位によって、キャビティ形成面と接触するタイミングに差が生じてしまうことを効果的に抑制できる。すなわち、繊維強化樹脂シート22全体の流動性を良好に維持して、略均等に加圧力を付与するように型締めを行うことができる。その結果、所望の形状となるように一層高精度に成形された成形品を得ることができる。
なお、上記の第4実施形態では、繊維強化樹脂シート22に対して、押圧ピン42による押圧を維持したまま、金型を閉じることとしたが、特に、これに限定されるものではない。例えば、繊維強化樹脂シート22の弾性が比較的小さい場合等は、金型を閉じている間に、押圧ピン42による押圧を解放してもよい。すなわち、載置ピン16a〜16cの上端面に繊維強化樹脂シート22を載置してから、該上端面が成形位置に到達するまでの何れかの期間に、押圧ピン42による押圧が付与されればよい。このようにして予備成形を行うことで、上記と同様の作用効果を得ることができる。
<第5実施形態>
次に、図1、図4、図10、図11を参照しつつ本発明の第5実施形態に係る成形方法について、該成形方法が適用された成形装置44との関係で説明する。なお、図10、図11に示す構成要素のうち、図1〜図9に示す構成要素と同一又は同様の機能及び効果を奏するものに対しては同一の参照符号を付し、詳細な説明を省略する。
成形装置44は、上記の成形装置40の構成に加えて、載置ピン16a〜16cの少なくとも一つの上端面に、繊維強化樹脂シート22を位置決め固定する位置決め部材46をさらに備えている(図10及び図11を参照)。
図10及び図11の例示では、位置決め部材46は、載置ピン16aの上端面に向かって突出可能なピンから構成されている。すなわち、位置決め部材46は、上金型14に対して昇降可能に設けられ、下金型12から突出した載置ピン16aの上端面との間に、繊維強化樹脂シート22を挟持する。この挟持によって、繊維強化樹脂シート22に対して、載置ピン16aの上端面に位置決め固定された位置決め部位を設けることができる。すなわち、キャビティ形成面18、20に対する位置決め部位の相対位置を固定した状態で、金型を閉じることが可能になる。
なお、位置決め部材46も、上記の押圧ピン42と同様に、金型が閉じるにつれて、突出長さが小さくなるように、上金型14の内部に基端側から収容されることが可能になっている。
この成形装置44を用いて、繊維強化樹脂シート22を成形する成形方法について説明する。先ず、図1に示すように、上記の成形装置10を用いた成形方法と同様に、載置ピン16a〜16cの突出長さを調整し、載置位置まで突出させた上端面に繊維強化樹脂シート22を載置する。
次に、図10に示すように、載置ピン16aの上端面に向かって上金型14から位置決め部材46を突出させ、該上端面と位置決め部材46の下端面とで挟持する。このようにして、載置ピン16aの上端面に対する繊維強化樹脂シート22の位置決め固定を行うことで、該繊維強化樹脂シート22に位置決め部位を設ける。この状態で、載置ピン16a〜16cの上端面同士の間にキャビティ形成面18の形状に応じた高低差を設けつつ、下金型12に上金型14を接近させるとともに、押圧ピン42の先端面を繊維強化樹脂シート22に当接させる。
これによって、上記の上端面の高低差に加え、押圧ピン42の押圧力によって、繊維強化樹脂シート22を予備成形しつつ金型を閉じることができる。この際、位置決め部位が載置ピン16aの上端面上から移動しないため、繊維強化樹脂シート22がキャビティ内に引き込まれる方向を規制することができる。
さらに、図11に示すように、上記の上端面の高低差と、押圧ピン42による押圧と、位置決め部材46による位置決め固定とを維持するべく、載置ピン16a〜16c、押圧ピン42、位置決め部材46の互いの突出長さの比を維持しつつ金型を閉じていく。これによって、第5実施形態に係る成形方法では、キャビティ内に繊維強化樹脂シート22を良好且つ容易に充填しつつ、金型を閉じることができる。
その後、図4に示すように、上記の成形装置10を用いた成形方法と同様の工程を経て、金型の型締めを行うことで、成形品を得ることができる。なお、位置決め部材46は、載置ピン16aが下金型12内に収容されるのと略同じタイミングで、上金型14内に収容されればよい。
その結果、繊維強化樹脂シート22全体の流動性を良好に維持し、略均等に加圧力を付与するように型締めを行って、一層高精度に成形された成形品を得ることができる。
なお、本発明は、上記した実施形態に特に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であることは勿論である。
例えば、上記の実施形態では、載置位置にある載置ピン16a〜16cの上端面が水平方向に揃うように配置されることとしたが、特にこれに限定されるものではない。例えば、上記の上端面は、予めキャビティ形成面18、20に沿った高低差が形成されるように配置されていてもよく、繊維強化樹脂シート22や成形品の形状等に応じて、上端面に繊維強化樹脂シート22を載置し易いように配置されていてもよい。
また、上記の第5実施形態に係る成形装置44は、押圧ピン42を備えていなくてもよい。
さらに、上記の第5実施形態では、位置決め部材46が、載置ピン16aの上端面に向かって突出可能なピンから構成されていることとした。しかしながら、位置決め部材46は、載置ピン16a以外の載置ピン16b、16cの上端面との間に繊維強化樹脂シート22を挟持してもよく、複数の上端面との間に繊維強化樹脂シート22を挟持するべく複数設けられていてもよい。
また、位置決め部材46は、載置ピン16a〜16cの少なくとも一つの上端面に繊維強化樹脂シート22を固定することが可能な構成であればよく、上記のピンから構成されていなくてもよい。例えば、上記の上端面から突出して、繊維強化樹脂シート22に刺通される突起等から位置決め部材を構成することができる。
さらに、位置決め部材46は、載置ピン16a〜16cの少なくとも一つの上端面に繊維強化樹脂シート22を固定する構成に限られない。例えば、位置決め部材46は、下金型12のキャビティ形成面18との間に繊維強化樹脂シート22を挟持するべく、該キャビティ形成面18に向かって突出可能に設けられていてもよい。
上記の第2実施形態では、載置ピン16a〜16cの上端面を載置位置として繊維強化樹脂シート22を載置した後、中央側の載置ピン16bに比して、水平方向の両端部側の載置ピン16a、16cの上端面の高さを高くした。しかしながら、特にこれに限定されるものではない。例えば、中央側の載置ピン16bの上端面が、両端部側の載置ピン16a、16cの上端面よりも高くなるように配置してもよい。これによって、型締めを行う前に、予め、繊維強化樹脂シート22のうち、周縁部位をキャビティ内に引き込んでおくことができる。
従って、その後、載置ピン16a〜16cの上端面同士をキャビティ形成面18の形状に応じた高低差とし、該高低差を維持しつつ、型締めを行う際、キャビティに繊維強化樹脂シート22を十分に充填することができる。つまり、上記の通り、予め、周縁部位がキャビティ内に引き込まれていた分、キャビティ内が材料不足(薄肉)になることを回避できるため、内側部位に金型による所定の加圧力を良好に付与することが可能になる。これによって、繊維強化樹脂シート22のスプリングバックを抑制でき、得られる成形品の単位体積あたりの強化繊維の含有率が低下することを抑制できる。その結果、成形品の強度や剛性等の物性が低下することを効果的に回避することが可能になる。
また、上記のように、載置ピン16bの上端面が、載置ピン16a、16cの上端面よりも高くなるように配置した後、例えば、位置決め部材46をキャビティ形成面18等に向かって突出させてもよい。すなわち、キャビティ形成面18等と位置決め部材46とで繊維強化樹脂シート22の周縁部位を挟持し、該上端面に対する繊維強化樹脂シート22の位置決め固定を行ってもよい。この状態で型締めを行うことで、引き込んだ繊維強化樹脂シート22の周縁部位が元に戻ることを効果的に抑制できる。このため、キャビティ内に一層良好に充填された繊維強化樹脂シート22に対して、金型による所定の加圧力を良好に付与することが可能になる。
ところで、型締めを行って、キャビティ形成面18の凹部内に繊維強化樹脂シート22を収容する際、該凹部を形成する側面と繊維強化樹脂シート22とが接触して摩擦が生じ易い。この摩擦の影響によって、キャビティ形成面18の凹部付近では、繊維強化樹脂シート22の薄肉化が生じ易くなっている。
そこで、上記のように、上端面の高さを高くする中央側の載置ピン16bが、キャビティ形成面18の凹部内から突出可能となるように設けられることが好ましい。この場合、型締め前に、繊維強化樹脂シート22のうち、凹部に収容されることになる部位を中心にキャビティ内に引き込んでおくことができる。その結果、凹部内にも良好に繊維強化樹脂シート22を収容することが可能になり、上記の薄肉化を効果的に抑制することができる。
本発明に係る成形方法及び成形装置10、32、34、40、44では、載置位置にある上端面に繊維強化樹脂シート22を載置する際、繊維強化樹脂シート22の全ての部位において、キャビティ形成面18との接触が回避されている必要はない。すなわち、流動性が大きく悪化しない程度に、繊維強化樹脂シート22の一部がキャビティ形成面18、20に接触していてもよい。