JP2014124834A - プリプレグを成形機の金型へ搬送する搬送方法 - Google Patents

プリプレグを成形機の金型へ搬送する搬送方法 Download PDF

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秀治 小池
Kiwamu Tsuji
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Abstract

【課題】嵩高い形状の金型を用いた場合であっても、プリプレグを所定の位置に正確に載置することができ、その結果プリプレグが折り返して成形されたり、裂けたりすることが無く、成形体の歩留まりを高くして製造することができるプリプレグの搬送方法を提供する。
【解決手段】糸をチャック、アンチャックできる機構を有する、2本以上の糸を含んだ搬送フレーム3であって、該搬送フレーム3を用いて、プリプレグ2を成形機の金型5へ搬送する搬送方法。
【選択図】図2

Description

本発明はプリプレグを金型へ搬送する方法に関する。
プリプレグを金型へと供給する方法についてはこれまで、様々な方法が提案されているが、いずれも、嵩高い形状を有する金型へと供給することは困難であった。
特許文献1,2には、原反周縁をチャックして金型へと供給する方法が記載されている。しかしながら、金型が嵩高い形状を有する場合、型へのフィット時に原反が裂ける恐れがある。また、キャビティに対して原反を大きくとる必要があり、ゴミが出てしまう。
特許文献3には、回転ベルトが金型内に入ってきてプリプレグを置いていく方法が記載されている。しかしながら、嵩高い形状を有する金型ではプリプレグを載置させる位置決めが困難である。また、垂直に近い角度でプリプレグが降ろされると、金型上にてプリプレグが折り曲げられ、成形不良となる恐れがある。また、プリプレグの端部をチャックすると、チャック部にて冷却固化する為、プリプレグの端部をカットしなければならず、ゴミが出てしまう。
特許文献4には、針で刺して持ち上げ、刺し込み部にて裂けるなら縫って持ち上げる方法が記載されている。しかしながら、嵩高い形状を有する金型では、凸部よりも高い位置にて針を引込めてプリプレグを落下させる為、凹部にて、大きく位置ズレを生じたり、プリプレグが折り曲げられたり、成形不良となる恐れがある。また、突出した針にプリプレグが貼り付き、針が引っ込まなくなる恐れがある。
特開平7−1456号公報 特開平11−300819号公報 特開2000−326328号公報 特開2008−254438号公報
本発明は、嵩高い形状の金型を用いた場合であっても、成形体の歩留まりを高くして製造できるプリプレグの搬送方法を提供できる事を目的とする。
本発明の構成を以下に示す。
1.糸をチャック、アンチャックできる機構を有する、2本以上の糸を含んだ搬送フレームを用いて、プリプレグを成形機の金型へ搬送する搬送方法。
2.前記1に記載の搬送方法を用いて製造する成形体の製造方法。
3.前記金型が凹凸形状を有したキャビティであって、以下(1)〜(3)の工程を含む、前記2に記載の成形体の製造方法。
(1)プリプレグを搬送装置に載せ、金型へ移動し、
(2)金型の下型からピンを突出し、プリプレグを受け、
(3)搬送フレームに含まれる糸をキャビティの外へ引き抜く。
4.前記金型におけるキャビティの高低差が50mm以上であり、水平に対して45度以上の傾斜部位を有している、前記2〜3に記載の成形体の製造方法。
5.前記プリプレグが、平均繊維長1mm以上の強化繊維と熱可塑性樹脂を含む加熱軟化シートである前記2〜4に記載の成形体の製造方法。
6.前記強化繊維が炭素繊維である、前記5に記載の成形体の製造方法。
7.前記2〜6に記載の製造方法を用いて製造した成形体であって、成形体の端点間距離の最大値が200mm以上であり、表面積が60,000mm以上である成形体。
本発明の搬送方法を用いれば、成形機の金型にプリプレグを正確に載置する事が出来、製造時の歩留まりを向上させる事が出来る。
さらに、プリプレグを正確に載置する事ができるため、金型が嵩高い形状をであっても、プリプレグが金型上で折り返して成形されて成形後に皺が発生したり、成形体が裂けたりする事がないため、ゴミを出さず、成形体の皺などの成形不良を低減することができる。
加熱機からのプリプレグ取り出しを示す模式図 金型へのプリプレグの配置を示す模式図 糸をアンチャックした状態の模式図 金型から搬送フレームの引抜いた状態の模式図 コの字形状の搬送フレームの模式図 図5に示したコの字形状の搬送フレームの動作を示す模式図 凹形状の搬送フレームの模式図 図7に示した凹形状の搬送フレームの動作を示す模式図 ワニ口形状の搬送フレームの模式図 図9に示したワニ口形状の搬送フレームの動作を示す模式図 糸のチャック機構を示す模式図 糸のチャック機構を示す模式図 糸のチャック機構を示す模式図 糸の張り方の模式図 イジェクターピン有の金型キャビティの模式図 従来の搬送フレームを用いてプリプレグを載置した状態の模式図 従来の搬送フレームを用いてプリプレグをプレスした状態の模式図 従来の搬送フレームの模式図 図18における、「A−A’」の断面図
以下に、本発明の実施の形態について順次説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
[搬送方法]
本発明における成形機の金型へプリプレグを搬送する方法は、糸をチャック、アンチャックできる機構を有する、2本以上の糸を含んだ搬送フレームを用いる。
プリプレグ2は、加熱機1から取り出され、搬送フレーム3に載る(図1)。搬送フレーム(図2の3)からプリプレグを金型に載置する際には、糸6をアンチャックして垂らす(図3)。プリプレグが金型へ載置された後には、糸6をキャビティ外へ引き抜き、糸6が自重でチャッカー側へ配置され、搬送フレーム3を回転させ糸6をチャックし、元に戻る(図4)。
[搬送フレーム]
本発明における搬送フレーム3は2本以上の糸を含み、糸をチャック、アンチャックできる機構を有する。
通常、成形機の金型下型からは、成形体を金型からとりだすためのイジェクターピン(図15の32)が突出しており、これにプリプレグを担持する。イジェクターピンにプリプレグを載置する場合、搬送フレームが平板状であった場合(図18の34)、搬送フレームから金型へ、プリプレグを落下させる必要があり、金型の定まった位置にプリプレグを載置するのは困難である。
一方、本発明における搬送フレームは、2本以上の糸を含み、ピンの位置に対応して、搬送フレームの自由な位置に糸を張ることができる。さらに、糸をアンチャックした場合、糸は金型下型から突出したイジェクターピンを通り抜けて金型まで落下し、プリプレグをイジェクターピンに直接載置する事が出来るため、載置されるプリプレグの金型上の位置は極めて正確である。また、搬送フレームに含まれる糸6はイジェクターピンを通過して金型上に落下するため、平板状の搬送フレームを用いた場合に比べて、プリプレグを高い位置から落下させる必要はない(図3の6)。
さらに、平板状の搬送フレームを用いた場合に比べて、搬送フレームの糸上に載置したプリプレグは、プリプレグと搬送フレームとの接触面積が減少し、プリプレグ中の樹脂が搬送フレームに付きにくくなる。また、接触面積を減少させる事で、プリプレグの熱が搬送フレームに奪われる事が少なくなり、プリプレグが搬送フレーム上で硬化する事が少なくなる利点がある。
[糸の材質]
糸の材質は特に限定されるものではないが、加熱温度やプリプレグ材質に合わせて選定することが好ましい。金属製や合成繊維からなるものが挙げられ、例えば、ステンレスワイヤー、鋼線、アラミド繊維、テフロン(登録商標)糸などが挙げられる。ステンレスワイヤーと鋼線は耐熱温度が高く高強度であることから特に好ましい。また、耐久性の点から、糸をロープにすることも好ましい。
[糸の張り方]
糸が張られる方向は、特に規定はなく、糸の端が順番に並べられていれば、互いに重なっていても良い。例えば、糸同士は並行であり、チャック機構に対して垂直な張り方(図14の26)、糸同士は平行であり、チャック機構に対して斜めの張り方(図14の27)、糸同士は平行でなく、チャック機構に対しても斜めの張り方(図14の28)、糸同士が一部クロスし、チャック機構に対して斜めの張り方(図14の29)、糸同士に規則性はなく、ランダムな張り方(図14の30)等が挙げられる。また、本発明の目的を阻害しない程度であれば、一部の糸がチャック機構に張られず、アンチャックされない糸を含んだ張り方(図14の31)であっても良い。
中でも、糸同士がクロスしない張り方(図14の26、図14の27、図14の28)が好ましく、糸同士が並行で、チャック機構に対して垂直な張り方(図14の26)が更に好ましい。糸同士がクロスしない場合、金型やイジェクターピンを傷つける可能性が低くなり、チャック機構に対して垂直な張り方をした場合、糸が絡まりにくいからである。
[糸の太さ]
本発明の目的を達成するものであれば、糸の太さに特に限定は無いが、直径0.5〜5mmであれば良く、1mm〜3mmであれば、プリプレグとの接着面積が適度に少なくなって好ましい。
[糸間距離と糸の本数]
糸の張り方が互いに平行である場合、糸間距離は特に限定はないが、好ましくは30mm以上400mm以下であり、より好ましくは50mm以上200mm以下である。糸間距離が400mm以下ではプリプレグの糸間からの垂れ下がりが少なく、成形時に皺などの不良を生じにくいので好ましい。また、複数本の糸でプリプレグを支えることによりプリプレグの重心バランスを取ることができ、位置精度を高めることが容易となる。反対に、糸間距離が30mm以上あれば、搬送フレームとプリプレグの接触面積が減少し、搬送フレームに熱が奪われる事が少ない。
糸の本数は2本以上であれば特に限定されるものではなく、糸間距離とプリプレグの大きさで決定される。具体的には、搬送フレームに載置したプリプレグにおいて、搬送フレームの糸と直交方向のプリプレグの長さが1000mmの時、糸の本数は2〜34本、好ましくは4〜21本となり、プリプレグの長さが2000mmの時、糸の本数は4〜67本、好ましくは9〜41本となる。
[糸へのコーティング]
プリプレグの剥離性が向上するように糸にコーティングを施すのも好ましい。コーティングの種類は特に限定されるものではないが、クロムメッキ、クロムモリブデンコート、窒化チタン焼き付け、テフロン(登録商標)コート、テフロン(登録商標)溶射などが挙げられる。
[搬送フレーム外枠形状]
糸を張るための外枠となる搬送フレーム外枠の形状に特に限定は無いが、コの字形状(図5)、凹の字形状(図7)、ワニ口形状(図9)等が挙げられる。
[搬送フレームの回転]
前記搬送フレームは、鉛直方向(糸が垂れる方向)に回転できる。回転する事で、特別な機構を設けることなく糸をチャッカーへ導くことが可能となる。
例えば、搬送フレームがコの字形状(図5)の場合、アンチャックされた状態(図6の11)で搬送フレームを鉛直方向に回転させると(図6の13)、糸がチャッカーへ導かれ、糸がチャックされる(図6の12)。
[チャック、アンチャック機構]
糸のチャック機構は特に限定は無いが、エアチャックによる挟持(図12)や、エアグリップによる握持(図13)や、糸の末端を玉縁としてチャッカーに咬持する(図11)などが挙げられる。エアチャックやエアグリップは各個独立駆動としても良いし、ラック&ピニオンなどの連動機構を設けても良い。
[金型]
本発明に用いられる金型は、上下方向に型開きをする、いわゆる縦型金型であり、プリプレグを担持する機構を備える。プリプレグを担持するイジェクターピン(図15の32)の機構としては、押し引き可能なイジェクターピン形状が好ましい。イジェクターピンは、加熱軟化シートから熱を奪うことを抑制する為に断熱コートを施しても良い。断熱コートの種類は特に限定されるものではないが、ポリイミド被膜、ポリイミド溶射、ジルコニア溶射、テフロン(登録商標)コートなどが挙げられる。
水平に対して45°以上の傾斜部位を有し、高低差が50mm以上である凹凸形状を有した金型キャビティである場合、従来の搬送方法を使用した場合には、プリプレグを正確な位置に載置する事が困難となり、多少載置する位置が異なっても成形できる大きなプリプレグを使用する必要が生ずる(図16及び図17)。
この場合、図17に示すように、プリプレグを成形すると、後に不要な部分は端材としてゴミが発生する(図17の33)。キャビティ深さが100mm以上であり、水平に対して60°以上の傾斜部位を有すると、さらに大きなゴミが発生する。
本発明における搬送方法を用いた場合には、上述のような金型キャビティであっても、プリプレグを正確に金型キャビティに載置できるため、ゴミがほとんど発生しない。
[加熱装置]
プリプレグとして、後述する加熱軟化シートを用いる場合、加熱方法としては外部ヒーターによる伝熱、輻射などが好ましい。加熱温度は熱可塑性樹脂層を構成する熱可塑性樹脂の溶融温度以上かつ分解温度以下にすることが好ましく、溶融温度+15℃以上かつ分解温度−30℃以下であることがより好ましい。
[プリプレグ]
本発明で用いるプリプレグは特に限定されるものではないが、強化繊維と熱可塑性樹脂を含む加熱軟化シートを用いる事が出来る。
[強化繊維]
加熱軟化シートに強化繊維である炭素繊維が含まれる場合、炭素繊維100重量部に対し熱可塑性樹脂が10〜1000重量部含まれているものであることが好ましい。より好ましくは、炭素繊維100重量部に対し、熱可塑性樹脂10〜400重量部、更に好ましくは、炭素繊維100重量部に対し、熱可塑性樹脂10〜100重量部である。
熱可塑性樹脂が炭素繊維100重量部に対し10重量部以上含んでいると、ドライの炭素繊維が少なく、搬送時にプリプレグが裂けて脱落しにくい。反対に、炭素繊維100重量部に対して熱可塑性樹脂が1000重量部を以下であると、熱可塑性樹脂が多すぎず、搬送時に垂れ落ちてしまうことを防止できる。
搬送に適する炭素繊維の繊維長は、好ましくは1mm以上、より好ましくは5mm以上である。繊維長が1mm以上であると、炭素繊維同士の交絡が多くなり、搬送時に垂れ落ちる事は少なくなる。また、繊維長の上限は特に無く、連続繊維であっても良い。連続繊維を用いる場合、強化繊維の最大長さはプリプレグの最大長さと一致する。一方、不連続繊維を用いる場合は、繊維長は例えば100mm以下となる。
[熱可塑性樹脂]
プリプレグに含まれる熱可塑性樹脂としては、例えばポリアミド、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、AS樹脂、ABS樹脂が挙げられる。特にコストと物性の兼ね合いからポリアミド、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィドからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。また、ポリアミド(以下、PAと略記することがあり、ナイロンとの別称を用いることもある)としては、PA6(ポリカプロアミド、ポリカプロラクタムとも言い、より正確にはポリε−カプロラクタム)、PA26(ポリエチレンアジパミド)、PA46(ポリテトラメチレンアジパミド)、PA66(ポリヘキサメチレンアジパミド)、PA69(ポリヘキサメチレンアゼパミド)、PA610(ポリヘキサメチレンセバカミド)、PA611(ポリヘキサメチレンウンデカミド)、PA612(ポリヘキサメチレンドデカミド)、PA11(ポリウンデカンアミド)、PA12(ポリドデカンアミド)、PA1212(ポリドデカメチレンドデカミド)、PA6T(ポリヘキサメチレンテレフタルアミド)、PA6I(ポリヘキサメチレンイソフタルアミド)、PA912(ポリノナメチレンドデカミド)、PA1012(ポリデカメチレンドデカミド)、PA9T(ポリノナメチレンテレフタラミド)、PA9I(ポリノナメチレンイソフタルアミド)、PA10T(ポリデカメチレンテレフタラミド)、PA10I(ポリデカメチレンイソフタルアミド)、PA11T(ポリウンデカメチレンテレフタルアミド)、PA11I(ポリウンデカメチレンイソフタルアミド)、PA12T(ポリドデカメチレンテレフタラミド)、PA12I(ポリドデカメチレンイソフタルアミド)、ポリアミドMXD6(ポリメタキシリレンアジパミド)からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
[プリプレグに含まれる強化繊維の形態]
プリプレグに強化繊維を含む場合、繊維の形態は、とくに限定されず、連続繊維からなる織物であっても、繊維を一方向に配置した一方向材であっても良い。繊維を一方向に配置する場合は、層の方向を変えて多層に積層する、例えば交互に積層することができる。また積層面を厚み方向に対称に配置することが好ましい。
また繊維の状態が不連続繊維の場合には、不連続の炭素繊維を平面上にランダムに分散して重なるように配置したものであってもよい。この場合、炭素繊維はプリプレグ中で炭素繊維束の状態で存在していてもよく、また炭素繊維束と単糸の状態が混在していても良く、完全に開繊されて単糸の状態になっていても良い。
さらに、強化繊維を含有したプリプレグを作成する際に、長繊維ペレット、すなわち溶融した樹脂を所定の粘度に調整し連続繊維の炭素繊維に含浸させた後切断するといった工程で得られるペレットを用い、射出成形機でシート形状などの所定の形状に成形してもよい。
[成形条件]
本発明の目的を達成する範囲であれば、成形する際の条件に特に限定はない。例えば、圧力条件は、賦形が可能な圧力範囲内であればよく材料にもよるが、プレス力を製品の投影面積で除した圧力が0.5MPa〜100MPaであることが好ましく、5MPa〜25MPaがより好ましい。100MPaを以下であれば成形時の残留応力による製品使用時のクラックが発生し難くなり、0.5MPa以上では外観不良やボイドが発生し難くなるので好ましい。
また、本発明に使用する金型は温度調節が可能であり、金型温度は少なくとも40℃〜200℃の範囲で調節できることが好ましい。温度調節には棒ヒーター、熱媒油、温水、蒸気などが挙げられ、特に、上記温度範囲にて安定的に温度が上げられる棒ヒーターや熱媒油が好ましい。金型温度は予備加熱温度よりも低い温度とし、プリプレグに使用されているマトリックス樹脂が結晶性樹脂の場合は融点以下とし、非晶性樹脂の場合はガラス転移温度(Tg)以下とする。
金型温度を余りに低く設定すると急冷されすぎて賦形がうまくできないため、樹脂の種類にもよるが、金型温度は最低40℃以上、好ましくは60℃以上、より好ましくは80℃以上とする。金型温度は、予備加熱温度に対して100℃〜300℃低く保持することが好ましい。
[成形体]
本発明の搬送方法により成形した成形体については、端点間距離の最大値が200mm以上であり、表面積が60,000mm以上とする事ができ、更には端点間距離の最大値が300mm以上であり、表面積が140,000mm以上とすることができる。ここで、表面積とは、製造した成形体の表面全体の面積をいい、表裏と側面を合わせた面積である。また、「端点間距離」とは、成形体の外側輪郭点で、最も距離が離れている点同士の距離をいう。
従来の方法では、金型が嵩高い形状を有する場合、金型へのプリプレグフィット時に自重や、プリプレグの金型接触部と搬送フレーム接触部との間の引張力でプリプレグが裂ける恐れがある。また、平枠型搬送フレームの場合は、金型キャビティに対して原反を大きくとる必要があり、ゴミが出てしまう。
本発明における搬送方法を用いれば、金型が嵩高い形状を有していても、プリプレグを正確に載置する事ができ、成形体の歩留まりを高くして製造できる。
金型キャビティの具体的な高低差は、基材の大きさにもよるが、50mm以上、または300mm以上であっても、本発明における搬送方法を用いれば、成形体の歩留まりを高くして製造できる。
以下、本発明を実施例に用いて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[成形体の皺評価]
成形体の皺は、目視評価にて行った。プリプレグが正確に載置される、金型上でプリプレグが折り返されて成形されると、折り返し部や、折り返された末端部にて繊維同士が交絡せず、筋状の皺となる。皺の評価は、成形体を目視で観察し、良好(○)、一部不良(△)、不良(×)で評価した。
[成形体の破れ]
成形体の破れの評価は目視で実施し、良好(○)、一部不良(△)、不良(×)で評価した。
[金型]
使用した金型は、凹凸型のキャビティであり、大きさは表1に記載があるように、幅1200mm×奥行500mmと、幅250mm×奥行250mmのものを使用した。金型キャビティの高低差は、それぞれ400mmと75mmであった。
[プリプレグ1]
炭素繊維(東邦テナックス製テナックスSTS40−24KS(繊維径7μm、引張強度4000MPa)を、ナイロン6フィルム(ユニチカ・エンブレムON25μm厚)を積層しながら、繊維方向0度、90度交互に64層積層し(炭素繊維64層でナイロン65層)、260℃、2MPa、20分加熱圧縮し、繊維が0度90度交互、対称積層、炭素繊維体積率47%(質量基準の炭素繊維含有率57%)、2mm厚のプリプレグ1を作製した。プリプレグ1の大きさは表面積が1,440,000mm、端点間距離が1,360mmであった。
[プリプレグ2]
平均繊維長16mmにカットした炭素繊維(東邦テナックス製テナックスSTS40、平均繊維径7μm)を平均目付け540g/mとなるようランダムに配置し、ユニチカKE435−POG(ナイロン6)クロス10枚の間に挟みこんで260℃、2.5MPaでプレスし、炭素繊維体積率35%(質量基準の炭素繊維含有率45%)、厚み2mmの平板のプリプレグ2を作製した。プリプレグ2の大きさは表面積が1,440,000mm、端点間距離が1,360mmであった。
[プリプレグ3]
表面積が136,000mm、端点間距離が310mmである以外は、プリプレグ2と同様にして、プリプレグ3を作製した。
[プリプレグ4]
表面積が1,660,000mm、端点間距離が1,430mmである以外は、プリプレグ2と同様にして、プリプレグ4を作製した。
[プリプレグ5]
表面積が176,000mm、端点間距離が350mmである以外は、プリプレグ2と同様にして、プリプレグ5を作製した。
[実施例1]
プリプレグ1を、IR式加熱機を用いて280℃で2分間加熱し、加熱軟化シート1とした。その後、該加熱軟化シートを、コの字形状の搬送フレーム(図5)に載せ、金型キャビティ上に移動し、下側の金型キャビティからイジェクターピンを突出し、イジェクターピン上に加熱軟化シート1を受けた。用いた搬送フレームに張られた糸の本数は12本、糸の間隔は100mmであった。この後、チャック(図5でいうと7)を回転させて糸をアンチャックしプリプレグを金型キャビティに載置し、更に、搬送フレーム先端を90度回転させて開き(図6の11)、搬送フレームを金型外へ引き下げ、成形を実施した。成形条件は、金型温度が100℃、圧力15MPaで1分間であった。
成形体には、皺などの不良が無い、良好な成形体を得ることができた。結果を表1に示す。
[実施例2]
プリプレグ2を用いた以外は実施例1と同様に成形を実施した。その結果、皺などの不良が無い、良好な成形体を得ることができた。結果を表2に示す。
[実施例3]
搬送フレームの糸の本数が5本、糸の間隔が300mmである事以外は、実施例2と同様に成形を実施した。その結果、皺の評価が若干落ちるものの、破れが無い成形体を得る事ができた。結果を表2に示す。
[実施例4]
搬送フレームの形状が凹型であること以外は、実施例2と同様に成形を実施した。その結果、皺などの不良が無い、良好な成形体を得ることができた。結果を表2に示す。
[実施例5]
プリプレグ3を用い、糸の本数を2本、糸の間隔が100mmである凹型の搬送フレームを用いた以外は、実施例1と同様に成形を実施した。その結果、皺などの不良が無い、良好な成形体を得ることができた。結果を表2に示す。
[比較例1]
糸を張った搬送フレームを用いずに、平枠型の搬送フレームを用い(図16乃至図19)、プリプレグ4を用いたこと以外は、実施例2と同様に成形を実施した。その結果、搬送フレームへ樹脂が付着し、成形体に破れと皺が見られた。また、金型上に正確にプリプレグを載置する事ができないため、実施例2に比べて大きめのプリプレグ3を使用する必要があったため(図17)、端材が発生した。結果を表2に示す。
[比較例2]
糸を張った搬送フレームを用いずに、平枠型の搬送フレームを用い(図16乃至図19)、プリプレグ5を用いたこと以外は、実施例5と同様に成形を実施した。その結果、搬送フレームへ樹脂が付着し、成形体に破れと皺が見られた。また、金型上に正確にプリプレグを載置する事ができないため、実施例5に比べて大きめのプリプレグ5を使用する必要があったため(図17)、端材が発生した。ただし、プリプレグ5の大きさがプリプレグ4よりも小さいため、破れと皺は比較例1よりは改善された。結果を表1に示す。
本発明の搬送方法は、多様な形状への適応が可能であり、熱プレス成形やSMCなど種々の成形用途に利用可能である。
1 加熱機
2 プリプレグ
3 搬送フレーム
4 金型(上)
5 金型(下)
6 糸
7 搬送フレームの回転部分
8 ロボアームの端軸
9 糸をチャックできる機構を備える搬送フレーム外枠
10 糸をアンチャックした状態
11 搬送フレームを金型から引き抜いた後、下向に糸を揃えた状態
12 搬送フレームを折り曲げて、糸をチャックした状態
13 搬送フレームを金型から引き抜いた後、下向きに糸を引きそろえていた状態の全体図
14 糸をアンチャックした状態
15 搬送フレームを金型から引き抜いた後、搬送フレームを回転し、糸をチャック側に垂らして揃えた状態
16 糸をチャックした状態
17 糸をアンチャックした状態
18 搬送フレームを金型から引き抜き、ワニ口を閉じ、搬送フレームを回転して糸をチャック側に垂らして揃えた状態
19 糸をチャックして口を開いた状態
20 アンチャックされた時の玉縁糸
21 チャックされた時の玉縁糸
22 アンチャックされた状態
23 チャックされた状態
24 アンチャックされた状態
25 チャックされた状態
26 糸同士は並行であり、チャック機構に対して垂直な張り方
27 糸同士は平行であり、チャック機構に対して斜めの張り方
28 糸同士は平行でなく、チャック機構に対しても斜めの張り方
29 糸同士が一部クロスし、チャック機構に対して斜めの張り方
30 糸同士に規則性はなく、ランダムな張り方
31 一部の糸がチャック機構に張られず、アンチャックされない糸を含んだ張り方
32 イジェクターピン
33 成形後の端材
34 プリプレグを挟み込む枠型

Claims (7)

  1. 糸をチャック、アンチャックできる機構を有する、2本以上の糸を含んだ搬送フレームを用いて、プリプレグを成形機の金型へ搬送する搬送方法。
  2. 請求項1に記載の搬送方法を用いて製造する成形体の製造方法。
  3. 前記金型が凹凸形状を有したキャビティであって、以下(1)〜(3)の工程を含む、請求項2に記載の成形体の製造方法。
    (1)プリプレグを搬送装置に載せ、金型へ移動し、
    (2)金型の下型からピンを突出し、プリプレグを受け、
    (3)搬送フレームに含まれる糸をキャビティの外へ引き抜く。
  4. 前記金型におけるキャビティの高低差が50mm以上であり、水平に対して45度以上の傾斜部位を有している、請求項2又は3に記載の成形体の製造方法。
  5. 前記プリプレグが、平均繊維長1mm以上の強化繊維と熱可塑性樹脂を含む加熱軟化シートである請求項2〜4のいずれかに記載の成形体の製造方法。
  6. 前記強化繊維が炭素繊維である、請求項5に記載の成形体の製造方法。
  7. 請求項2〜6のいずれかに記載の製造方法を用いて製造した成形体であって、成形体の端点間距離の最大値が200mm以上であり、表面積が60,000mm以上である成形体。
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