以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
図1〜図3は本発明の実施によるチルドコンベヤ用作業ブースの形態の一例を示すものである。本実施例のチルドコンベヤ用作業ブース1は、図1に示す如く、内部の空気温度を0〜10℃程度(本実施例においては、約8℃)の低温に保ったチルド作業室2内に設置され、食品Fを低温に保ちながら搬送面上に載置して搬送するチルドコンベヤ3と、該チルドコンベヤ3の周囲に設置され、食品Fに対して作業者が盛り付けや加工等の作業を行うスペースである作業区画4を備えてなる。
チルド作業室2内の各所には、チルドコンベヤ用作業ブース1の他に、食品Fや具材、加工済の食品部材を収納する冷蔵庫5、具材や食品部材の計量を行う計量器6、具材や食品部材を作業区画4まで運搬するためのカート7など、種々の機械や器具類が配置されている。作業区画4の外側の空間であって、作業区画4の内側で作業する作業者から近い所定の位置には、図示しないワゴンやカート上に具材や食品部材が整列して配置されている。尚、前記図示しないワゴンやカートとしては、具材や食品部材を載置したカート7をそのまま前記所定の位置に移動させて利用するようにしても良い。
図4〜図6は、本発明の実施に用いるチルドコンベヤの形態の一例を示すものである。チルドコンベヤ3は、図4、図5に示す如く、上面に食品Fを載置し搬送する搬送面を備えたコンベヤ部8と、冷風Cを送り出す冷却ユニット9と、コンベヤ部8に沿ってコンベヤ部8の下方に位置し、冷却ユニット9から送り込まれて冷風Cをコンベヤ部8の搬送面に送り出す冷気ダクト10とを備えている。
コンベヤ部8は、図5に示す如く、モータ11を動力とし、タイミングベルト12を介してモータ11の出力軸ギヤ回転をプーリ13の軸ギヤへ伝達してプーリ13を回転駆動し、該プーリ13と連動する環状のベルト14により形成される搬送面に物品を載置して搬送する公知の仕組みのものである。
冷却ユニット9は、冷気ダクト10の一端に接続されており、その位置はコンベヤ部8の上流側端部(尾部)のさらに上流側である。本実施例における冷却ユニット9は、直膨式と呼ばれる公知の空調装置であり、内部を冷媒が流通する蛇行した配管の周囲にフィンを嵌合した直接膨張コイルである蒸発器15と、該蒸発器15に空気を送り込む冷風ファン16を筐体17内に備えてなる。図示しない膨張弁を通って絞り膨張され、低圧の湿り蒸気となった冷媒を蒸発器15に通し、該蒸発器15に対して冷風ファン16を用いて空気を送り込み、冷媒の気化熱により冷風Cを作り出す仕組みである。蒸発器15を通過する間に空気により間接的に暖められた冷媒蒸気は、次に図示しない圧縮機へ向かい、該圧縮機は冷媒を圧縮して図示しない凝縮器へ送り込む。該凝縮器で冷却された冷媒は高圧過冷却液となって再び膨張弁を通り、低圧の湿り蒸気となって蒸発器15へ戻される。尚、このような膨張弁や圧縮機、凝縮器等の構成については、後に再度詳述する。
冷却ユニット9は、こうした直膨式のものに限らず、冷風を送り出す機能を有する装置であればよい。例えば、ブラインチラーなどで低温にした不凍液等の相変化しない冷媒を外部から引き込んで空気を冷却し、冷媒を再びチラーへ戻して冷却するチラー式の装置を用いることもできる。
冷気ダクト10は、図5、図6に示す如く、コンベヤ部8の下方にコンベヤ部8の長手方向に沿って備えられ、冷却ユニット9からの冷風Cを内部に取り込む流路を形成するメインダクト部18と、該メインダクト部18の幅方向両側からコンベヤ部8の搬送面より上の高さまで立ち上がってコンベヤ部8の幅方向外側を覆うように延在し、冷風Cをメインダクト部18から分岐させて上方へ導く流路を形成する導風部19と、該導風部19の上端部分19aに備えられてコンベヤ部8の搬送面に対し冷風Cを送り出す冷風送風口20とを備えてなる。
導風部19は、図6に示す如く、上端部分19aがコンベヤ部8の搬送面より上に突出しており、その上面19bは、冷気ダクト10の幅方向中央に位置するコンベヤ部8に向かって傾斜する下り勾配を形成している。導風部19の上端部分19aにおける幅方向内側の面(内側面)19cには、コンベヤ部8の搬送面よりやや高い位置に開口部が設けられ、この開口部がコンベヤ部8の搬送面に対し冷風Cを供給する冷風送風口20として機能するようになっている。冷風送風口20は、冷風Cをコンベヤ部8の搬送面に沿って略水平方向に吐出する。尚、導風部19および冷風送風口20は、図7に示す如く冷風送風口20から冷風Cを斜め下に吐き出すよう構成したり、図8に示す如く導風部19の上面19bを水平に構成することもできるが、本実施例においては上記図6に示す構成を採用している。この構成の作用効果については後述する。
作業区画4は、図1〜図3に示す如く、天井4aと柱4b、壁4cで区切られた内部空間4dを有しており、該内部空間4dをチルドコンベヤ3のコンベヤ部8と冷気ダクト10が貫通するように配置されている。言い換えると、チルドコンベヤ3のコンベヤ部8と冷気ダクト10の一部を壁4cが取り囲むように配置されており、チルドコンベヤ3と壁4cの間には、作業者が作業を行うことができるだけの空間が空けられている。
壁4cは、例えば、ビニールシートのような可撓性を有する柔軟な素材でカーテン状に構成されていても良いし、カーボン板やアクリル板等の硬く断熱性を有する素材でパネル状に構成されていても良い。
壁4cには、所要の位置にスリットや扉等の図示しない開口が設けられている。上述の如く、作業区画4の外側の空間であって、作業区画4の内側で作業する作業者から近い所定の位置には、図示しないワゴンやカート上に具材や食品部材が整列して配置されているが、作業者は、これらのワゴンやカートに対し、前記図示しない開口からアクセスすることができる。このようにして、作業区画4への具材や食品部材、および器具類の出し入れが自由に行えるようになっている。また、作業者自身の作業区画4への出入りも自由に行えるようになっている。
また、壁4cには、上述した図示しない開口に加え、図1、図3に示す如く、下部の所要位置に矩形の開口部4eが設けられている。この開口部4eは、下端が床面と一致し、幅が冷気ダクト10の幅と略一致し、上端は床から冷気ダクト10の導風部19の上端までの高さよりやや高い位置にある。すなわち、壁4cの開口部4eは、該開口部4eにチルドコンベヤ3のコンベヤ部8及び冷気ダクト10を貫通させ、且つコンベヤ部8の搬送面を流れる食品Fが壁4cの開口部4eを自由に通過できる最小限の大きさになっている。壁4cの二箇所に設けられた開口部4eをチルドコンベヤ3の冷気ダクト10とコンベヤ部8が貫通するように配置することで、冷却ユニット9は作業区画4の外側に位置し、冷気ダクト10及びコンベヤ部8の一部が作業区画4の内側に位置することになる。
天井4aの上面には、図1〜図3に示す如く、内部空間4d内の空気を温めるための暖気ユニット21が備えられている。本実施例の暖気ユニット21は、直膨式の冷却装置である冷却ユニット9の排熱を利用して温風Wを作り出す凝縮器を内蔵している。図示しない冷媒配管により冷却ユニット9と接続され、冷却ユニット9との間で冷媒を循環させる冷媒回路を形成している。
天井4aには下面に向かって開口する温風送風口22が備えられており、該温風送風口22はフレキシブルダクト23を介して暖気ユニット21に接続され、暖気ユニット21で作り出された温風Wがフレキシブルダクト23を介して温風送風口22から作業区画4の内部空間4dへ送り出されるようになっている。
温風送風口22は、図2に示す如く、ライン型と一般に呼ばれる形式の細長い形状をしたもので、天井4aの壁4c付近の位置に、チルドコンベヤ3のコンベヤ部8の長手方向に沿って配置されている。そして、温風送風口22は、吹出し気流の中心軸が作業区域内に立つ作業者の背面へ向かうような向きで温風Wを吐出するようになっている。
壁4cの床面付近の所要位置には、図1〜図3に示す如く、吸込口4fが設けられている。吸込口4fは、還気ダクト24を介して暖気ユニット21に接続されている。還気ダクト24内の吸込口4f付近には還気ファン25が備えられており、作業区画4の内部空間4dに送り込まれた温風Wは、還気ダクト24から還気Rとして暖気ユニット21に戻されるようになっている。尚、暖気ユニット21が内蔵する送風ファンの送風圧が十分に高く、還気ファン25がなくても温風Wを還気ダクト24から還気Rとして暖気ユニット21に回収することができる場合には、還気ファン25を省略しても良い。また逆に、還気ファン25の静圧を高めることにより、暖気ユニット21に内蔵する送風ファンを省略した構成とすることもできる。
尚、作業区画4は、天井4aと柱4b、壁4cを備えた構成で説明したが、この構成に限定されない。例えば、天井4aはチルド作業室2の天井の一部とし、チルド作業室2の天井から壁4cを吊り下げるようにして作業区画4を構成しても良い。その他、チルド作業室2内に内部空間4dの空気温度を保健衛生上の許容温度(13℃〜20℃)に保った作業区画4を設置し得る構成であれば、各種の構成を採用し得る。暖気ユニット21の設置位置も、天井4aの上面に限らず様々な位置に設置し得る。例えば、暖気ユニット21を吸込口4fが設置される壁4cに沿って縦(図1〜図3に示す配置から90°回転させた向き)に配置し、還気Rを吸込口4fから暖気ユニット21へ、暖気ユニット21の内蔵する送風ファンの静圧を利用して戻しつつ、温風Wを送風するためのフレキシブルダクト23は壁4cに沿って天井4aの上面まで延設し、温風送風口22に接続することもできる。この場合、還気ファン25は省略し得る。
冷却ユニット9と暖気ユニット21の構成について、図9を参照して説明する。本実施例の冷却ユニット9と暖気ユニット21は、一般的な直膨式の空調装置と同様の仕組みである。冷却ユニット9は、上記したように、内部を冷媒が流通する蛇行した配管の周囲にフィンを嵌合した直接膨張コイルである蒸発器15と、該蒸発器15に対して空気を送る冷風ファン16を筐体17内に備えてなり、高圧の過冷却液の状態から膨張弁を通過して絞り膨張により低圧の湿り蒸気となった冷媒Gを蒸発器15内に通し、該蒸発器15の外側に冷風ファン16で空気を送り込むことで、フィン及び管壁を介して伝達される冷媒Gの気化熱により冷風Cを作り出すようになっている。一方、暖気ユニット21は、内部を冷媒が流通する蛇行した配管の周囲にフィンを嵌合した直接膨張コイルである凝縮器26と、該凝縮器26に対して空気を送る温風ファン27を備えてなり、圧縮機から高圧の乾き蒸気の状態で吐出された冷媒Gを凝縮器26内に通し、凝縮器26の外側には温風ファン27で空気を送り込むことで、フィン及び管壁を介して伝達される冷媒Gの凝縮熱を利用して温風Wを作り出すようになっている。そして、図9に示す如く、凝縮器26の出側と蒸発器15の入側が膨張弁28を介して配管で接続され、蒸発器15の出側と凝縮器26の入側が圧縮機29を介して配管で接続されている。このようにして、蒸発器15を備えた冷却ユニット9と、凝縮器26を備えた暖気ユニット21との間で、内部を冷媒Gが流通する冷媒回路が形成されている。尚、冷却ユニット9は、筐体17内にさらに圧縮機29と膨張弁28とを内蔵するように構成すると、暖気ユニット21の軽量化を図ることができる。
凝縮器26を通過して高圧の過冷却液となった冷媒Gは、蒸発器15へ到る経路の途中で膨張弁28内に備えた小径の孔を通過することによって絞り膨張され、低圧の湿り蒸気となって蒸発器15内に送られる。蒸発器15には冷風ファン16によって外から空気が当てられており、冷媒Gは空気から気化熱を奪って蒸発器15内で蒸発し、全量が相変化して気体になる。熱を奪われた空気は、冷風Cとして冷気ダクト10へ送り出される(図5参照)。
気体となって蒸発器15から送られてきた冷媒Gは、凝縮器26へ到る経路の途中で圧縮機29によって圧力をかけられ、高温高圧の乾き蒸気となって凝縮器26に送られる。凝縮器26には温風ファン27によって外側から空気が当てられており、この空気と凝縮器26内部の高温の冷媒Gとの間で熱交換を行うことにより温風Wを発生させるようになっている。凝縮器26内を通過する冷媒Gは、空気との熱交換により冷却され、湿り蒸気、飽和液を経て過冷却液の状態となって凝縮器26から再び凝縮器26に到る経路へと送り込まれる。このように、冷却ユニット9と暖気ユニット21とで冷凍サイクルを形成している。
尚、本実施例の暖気ユニット21は、上記の通り冷却ユニット9と共に冷凍サイクルを形成し、冷却ユニット9の排熱を利用して温風Wを作り出す形式のものであるが、冷却ユニットの出力や、チルド作業室2内の温度等、各条件の如何によっては冷却ユニット9の排熱だけでは十分な暖気性能が得られない場合もあり得る。その場合、暖気ユニット21内に補助ヒータとして電気式や蒸気式、あるいは温水式等のヒータを取り付け、暖気性能を上げるようにしても良い。
また、暖気ユニット21としては、上記形式に限らず、温風Wを発生させる機能を備えたものであれば種々の形式の機器を利用し得る。例えば、冷却ユニット9が低温の相変化しない冷媒を外部から引き込んで冷気を発生させるチラー式の冷却装置である場合、暖気ユニット21として冷却ユニット9の排熱を利用する形式のものは使用できないが、この場合には、暖気ユニット21は電気式のヒータやガス式のファンヒータ等、冷却ユニット9とは別に独立した熱源を備えた装置として構成すれば良い。
次に、上記した本実施例の作動を説明する。
食品Fに対する加工や盛り付けなどの作業は、図1に示す如く、チルドコンベヤ用作業ブース1の作業区画4内で行われる。作業区画4内のコンベヤ部8の傍に作業者が待機し、作業者の脇には、食品Fに盛り付ける具材や食品部材が準備される。
チルドコンベヤ3の作動により、コンベヤ部8の搬送面上を弁当等の食品Fが搬送される。上述の通り、コンベヤ部8の上流側端部(尾部)、下流側端部(頭部)は作業区画4の外に位置しているので、低温の空気中で食品Fのチルドコンベヤ3へのロード、アンロードを行うことができる。コンベヤ部8の上流側の作業区画4の外の位置でコンベヤ部8の搬送面に載置された食品Fは、壁4cの開口部4eを通って作業区画4内に流れてくる。尚、食品Fは、コンベヤ部8へのロードの時点では容器(弁当箱等)のみの状態であっても良いし、当初から一部が盛り付けられたものであっても良い。作業者は、コンベヤ部8上を流れる食品Fに対し、次々と加工や具材の盛り付け、飾り付けなどを施し、流れ作業によって食品Fを完成に近づけていく。作業区画4内の工程が終了した食品Fは、チルドコンベヤ3によってさらに下流へと搬送され、壁4cの開口部4eを通って作業区画4の外へ流れて行き、別のコンベヤに載せかえられたり、人手により取り出されたりしてチルドコンベヤ3からアンロードされ、包装や箱詰めなどの次の工程へと回される。
ここで、作業区画4の内部空間4dには、暖気ユニット21の働きにより天井4aの温風送風口22から温風Wが送風されており、内部空間4dの空気温度は保健衛生上の許容温度(13℃〜20℃)に保たれている。この空気温度は、食品Fの品質維持の観点からは好ましくないが、チルドコンベヤ3の作用により、コンベヤ部8上に載置された食品Fは温かい空気に曝露されることはなく、常時低温(約8℃)に保たれる。
チルドコンベヤ3の食品Fを低温に維持する機構を、図5、図6を参照して具体的に説明する。図5に示す如く、冷却ユニット9によって作り出された冷風Cが、コンベヤ部8の下方に設置された冷気ダクト10のメインダクト部18へ送られる。冷風Cは、メインダクト部18を通ってコンベヤ部8の下方全体に行き渡った後、図6に示す如く、導風部19を通ってコンベヤ部8の幅方向両側へ上方に向かって抜き出され、導風部19の内側面19cに備えた冷風送風口20からコンベヤ部8の搬送面に向かって吐き出される。
このとき、図6に示す如く、導風部19はコンベヤ部8の幅方向両側を覆うように配置され、且つその上端部分19aはコンベヤ部8の搬送面より高い位置に突出しているため、コンベヤ部8の搬送面に吐き出された冷風Cは、内部空間4d内の保健衛生上の許容温度の空気とすぐには混ざり合わず、導風部19の内側面19cとコンベヤ部8の搬送面で構成される空間に滞留する。低温の冷風Cは、作業区画4の内部空間4d内の保健衛生上の許容温度の空気よりも比重が高いからである。
ここで、上述の通り、導風部19の上面19bは、冷気ダクト10の幅方向中央に位置するコンベヤ部8に向かって傾斜する下り勾配を形成し、且つ、冷風Cは、冷風送風口20からコンベヤ部8の搬送面に沿って略水平方向に吐出されるようになっている。このようにすると、図7に示す如く冷風Cを斜め下に吐き出したり、図8に示す如く導風部19の上面19bを水平にした場合と比較して、冷風Cが内部空間4d内の保健衛生上の許容温度の空気と混ざり合わずにコンベヤ部8上に滞留する効果が高くなることが、本出願人の研究により明らかになっている。また、導風部19の上面19bを冷気ダクト10の幅方向中央に位置するコンベヤ部8に向かって傾斜する下り勾配とすることには、作業者にとって導風部19の上部が邪魔にならず、コンベヤ部8上の食品Fに対する作業性を確保するという効果もある。
食品Fに盛り付けるために作業者の傍に準備される具材や食品部材については、作業区画4内の保健衛生上の許容温度の空気に曝露されることになるが、こうした食品類のストックは、作業区画4の外に配置することができる(図1を参照)。すなわち、作業区画4内の空気温度は保健衛生上の許容温度であるが、チルド作業室2の作業区画4以外の空間は、上述の通り低温に保たれている。そこで、具材や食品部材の大部分は作業区画4の外に配置しておき、作業にあたり少量ずつを都度作業区画4内に運び込み、随時補充するようにすれば良い。このようにすれば、具材や食品部材が作業区画4内の保健衛生上の許容温度の空気に曝露されるとしても、温度が上がることで品質に影響が出る前に食品Fに対して盛り付けることができるので、鮮度に対する温度の影響を最小限に留めることができる。
尚、上述の通り、壁4cには図示しない所要の位置にスリットや扉等の開口が設けられているので、具材や食品部材や器具類の出し入れ、作業者の出入りを自由に行うことができる。ここで、壁4cを可撓性を有するカーテン(例えば、一枚もののビニールカーテンやスリットカーテン等)で構成した場合には、開口の設置や大きさの調整が容易で、且つ作業者自身の作業区画内外のアクセスに必要な扉等を特に設ける必要がない。一方、壁4cを断熱性を有する硬い素材で構成した場合には、内部空間4d内における結露の発生を抑えることができるという効果がある。すなわち、チルド作業室2内部の絶対湿度の低い低温の空気をそのまま加熱するのであれば結露の心配はないが、実際には作業区画4内部では作業者が作業を行っているため、作業者の呼気や汗から水分が作業区画4の内部空間4dに供給されることとなる。その結果、作業区画4の内部空間4dとその外の空間の間には温度差に加えて湿度差(絶対湿度差)が生じ、壁4cの内面等に結露が発生する虞がある。ここで、壁4cが断熱性を有する素材で構成されていれば、断熱作用により壁4cの内面の温度が露点まで下がることはなく、結露は発生しない。
暖気ユニット21からフレキシブルダクト23を介して送り出される温風Wは、図1、図3に示す如く、天井4aに備えた温風送風口22から吐き出される。このとき、壁4c付近の位置に、チルドコンベヤ3のコンベヤ部8の長手方向に沿って配置されたライン型の温風送風口22は、前述の如く、吹出し気流の中心軸が作業区域内に立つ作業者の背面へ向かうような向きで温風Wを吐出するよう調整されている。この温風Wは、作業区画4内を壁4cに沿って下方へと流れ、作業者から見ると背中側の空間を主に温めながら床付近に達する。床付近に達した温風Wは、壁4cの床付近の所要位置に備えられた吸込口4fから還気ダクト24を介し、還気Rとして暖気ユニット21に戻される。
つまり、温風Wは壁4c付近と床付近を主に流れることになるので、作業者背面近傍の空間を温める一方、コンベヤ部8の搬送面上の食品Fに直接届くことがない。これにより、上記したチルドコンベヤ3の食品Fに対する保冷の効果を確実に保つことができる。また、食品Fへの盛り付けに使われる具材や食品部材についても、チルドコンベヤ3付近に寄せて配置しておけば、温風Wが直接当たることがなく、温度上昇を抑えることができる。
また、温風Wは天井4aや壁4cによりチルド作業室2内の他の空間と隔てられた内部空間4d内を流通するので、作業区画4外の低温の空気に混ざることを防止でき、作業区画4外の空気の温度上昇を抑えるとともに、作業区画4内の空気の温度低下をも抑えることができる。且つ、温風Wは床付近で吸込口4fから回収し、還気Rとして暖気ユニット21に戻すようになっているので、温風Wが作業区画4の外に漏れてチルド作業室2内の低温の空気に混ざって温度を上昇させてしまうことをより効果的に防止することができる。しかも、暖気ユニット21においては温めた空気を還気Rとして再利用することができるので、作業区画4の外の低温の空気だけを温める場合と比較して、暖気のためのエネルギーを節約することにもなる。
尚、作業区画4にチルドコンベヤのコンベヤ部8と冷気ダクト10を通すために設けられた壁4cの開口部4eは、上述した通り、コンベヤ部8及び冷気ダクト10に壁4cを貫通させ、且つコンベヤ部8の搬送面を流れる食品Fが壁4cの開口部4eを自由に通過できる最小限の大きさになっているので、開口部4eを通した作業区画4外への温かい空気の漏出ならびに作業区画4外からの冷たい空気の流入も最低限に抑えられる。
また、開口部4eの他、壁4cには上記したように所要の位置に開口が設置されており、内部空間4dと暖気ユニット21とを循環する空気は、これらの開口や開口部4eを通して少しずつ外部のチルド作業室2の空気と入れ替わる。これにより、内部空間4d内の作業者の呼吸に資する外気は作業空間4eから少しずつ供給されると同時に、少しずつ作業空間4e外部へと排気される。入れ替わる空気量は、吸込口4fの圧力損失や、還気ファン25の圧力などを調整することで最適化できることは言うまでもない。
以上のような作業区画4は、チルド作業室1内に設置された既存のチルドコンベヤ3の周囲に簡単に追加することができる。また、追加した作業区画4に暖気ユニット21をさらに追加するにあたっては、既存のチルドコンベヤ3の冷却装置を、本実施例の如く直接膨張コイルである蒸発器15を備えた冷却ユニット9と交換すれば良く、こうすれば既存のチルドコンベヤ3に対して暖気ユニット21も簡単に追加設置することができる。このように、既存の食品製造の現場にチルドコンベヤ用作業ブース1を簡便に設置することができる。
暖気ユニット21は、上述の通り、図9に示す如く、チルドコンベヤ3の冷却ユニット9と図示しない配管で接続されて冷媒回路を形成し、冷却ユニット9における冷風Cの発生に伴う排熱を利用する仕組みとなっている。このため、温風Wの発生に要するエネルギーを節約することができる。尚、冷却ユニット9が低温の不凍液等の相変化しない冷媒を外部から引き込んで冷気を発生させるチラー式の冷却装置である場合や、暖気ユニット21が冷却ユニット9の排熱とは独立した別の熱源を利用するよう構成されている場合には、この効果は得られない。また、暖気ユニット21が冷却ユニット9の排熱を利用する仕組みであっても、冷却ユニット9の排熱だけでは十分な暖気性能が得られない場合には、上記した通り、暖気ユニット21内に補助ヒータを取り付けるようにしても良いが、この場合にも、補助ヒータの消費エネルギーに関しては節約ができないことは勿論である。
冷却ユニット9は、筐体17の内部に蒸発器15や冷風ファン16を備えた構成であるが、本実施例においては上述の通り、図4、図5に示す如く、冷気ダクト10のコンベヤ部8の上流側の一端に接続されている。このため、筐体17を例えば図1に示す如く、作業区画4に送られる前の食品Fや、食品Fのトレー等を載置する作業台として利用することができ、便利である。
尚、冷却ユニット9は、内部のレイアウトを変更することにより、筐体17の大きさや形状をある程度変更することが可能である。実施の状況によっては、例えば、コンベヤ部8の搬送面と冷却ユニット9の筐体17の上面の高さを一致させることにより、前工程からの流れ作業を作業区画4内の工程へスムーズに接続するといったことも可能である。
以上のように、本実施例のチルドコンベヤ用作業ブース1は、チルド作業室2内に設置され、冷風Cを発生させる冷却ユニット9と、食品Fを載置して搬送するコンベヤ部8と、冷却ユニット9で発生させた冷風Cをコンベヤ部8に載置した食品Fへ導く冷気ダクト10とを備えたチルドコンベヤ3と、チルド作業室2内に設置され、チルドコンベヤ3のコンベヤ部8と冷気ダクト10の一部を壁4cで取り囲み、作業者が作業可能な内部空間4dを形成する作業区画4と、該作業区画4に対して温風Wを送り込んで還気Rを温調する暖気ユニット21とを備えているので、チルドコンベヤ3により搬送される食品Fの低温を維持しながら、作業区画4内の温度を作業者にとっての保健衛生上の許容温度に保つことができ、且つ、作業区画4内の前記保健衛生上の許容温度の空気が作業区画4外に多量に漏れ出して低温の空気と混ざり合うことを抑えることができ、食品Fに追加する具材や食品部材についても、作業区画4外に置くことで低温に維持することができる。しかも、既存のチルドコンベヤ3の周囲に作業区画4を設置することで、既存の食品製造の現場にチルドコンベヤ用作業ブース1を簡便に設置することができる。
また、上記本実施例においては、暖気ユニット21は、冷却ユニット9と共に冷凍サイクルを形成し、冷却ユニット9の排熱を利用して温風Wを発生させるよう構成されているので、温風Wを発生させるためのエネルギーを節約することができる。
また、上記本実施例においては、冷気ダクト10は、コンベヤ部8の下方に該コンベヤ部8の長手方向に沿って備えられ、冷却ユニット9からの冷風Cを内部に取り込む流路を形成するメインダクト部18と、該メインダクト部18の幅方向両側からコンベヤ部8の搬送面より上の高さまで立ち上がってコンベヤ部8の幅方向機側外側を覆うように延在し、冷風Cをメインダクト部18から分岐させて上方へ導く流路を形成する導風部19と、該導風部19の上端部分19aに備えられてコンベヤ部8の搬送面の上方近傍に対し冷風Cを送り出す冷風送風口20とを備え、導風部19の上面19bは、冷気ダクト10の幅方向中央に位置するコンベヤ部8の搬送面に向かって傾斜する下り勾配を形成し、冷風送風口20は、導風部19の内側面19cからコンベヤ部8の搬送面に沿って冷風Cを吐出するよう構成されているので、導風部19の内側面19cとコンベヤ部8の搬送面で構成される空間に冷風Cを効果的に滞留させることができ、しかも、コンベヤ部8の搬送面に載置された食品Fに対する作業者の作業性をも確保することができる。
上記本実施例において、前記壁4cを可撓性を有するカーテンで構成した場合には、壁4cへの開口の設置や該開口の大きさの調整が容易で、且つ作業者の作業区画内外のアクセスに必要な扉等を特に設ける必要がない。
上記本実施例において、前記壁4cを断熱性を有する硬い素材で構成した場合には、壁4c内面の結露の発生を抑えることができる。
したがって、上記本実施例によれば、コンベヤを用いた流れ作業により作業者が盛り付け等の食品製造を行う現場において、既存の現場に設置でき、食品の低温を維持しながら、作業環境の一層の改善を図り得る。
尚、本発明のチルドコンベヤ用作業ブースは、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。