JP6335009B2 - トナー用結着樹脂組成物の水系分散体の製造方法 - Google Patents

トナー用結着樹脂組成物の水系分散体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、トナー用結着樹脂組成物の水系分散体の製造方法、及び該水系分散体を用い
る静電荷像現像用トナーの製造方法に関する。
電子写真の分野においては、電子写真システムの発展に伴い、高画質化及び高速化に対
応した電子写真用のトナーの開発が要求されている。
高画質化に対応して、粒径分布が狭く、小粒径のトナーを得る方法として、微細な樹脂
粒子等を水系媒体中で凝集、融着させてトナーを得る、凝集合一法(乳化凝集法又は凝集
融着法ともいう)によるトナーの製造が行われている。バインダー樹脂には、スチレンア
クリル樹脂や、低温定着性に優れたポリエステル樹脂が用いられ、複数の性能を同時に満
たすために、複数の樹脂の複合化等も検討されている。
例えば、特許文献1には、耐加水分解性、低温定着性、耐ホットオフセット性、保存性及び耐久性を目的として、結着樹脂を含む原料を水系媒体中で粒子化する工程を含む方法により得られる電子写真用トナーであって、前記結着樹脂が、縮重合系樹脂とスチレン系樹脂とを含む複合樹脂を含有してなり、前記縮重合系樹脂が、水酸基が結合した第二級炭素原子を2つ以上有する脂肪族多価アルコールを含有するアルコール成分とカルボン酸成分とを縮重合させて得られる樹脂である、電子写真用トナーが開示されている。
特開2010−107675号公報
ワックスをトナーに含有させることで、オイルレス定着を実現でき、定着性が向上する。しかしながら、ポリエステル樹脂とワックスとは極性が大きく異なるため混じりにくく、特にせん断力をかけられない乳化凝集法でのトナーの製造ではワックスの分散不良は顕著となり、その結果、耐フィルミング性及び耐ドキュメントオフセット性に優れるトナーを得ることが困難である。
本発明の課題は、耐フィルミング性及び耐ドキュメントオフセット性に優れるトナーを得ることができるトナー用結着樹脂組成物の水系分散体の製造方法と、耐フィルミング性及び耐ドキュメントオフセット性に優れるトナーの製造方法を提供することにある。
本発明者は、耐フィルミング性及び耐ドキュメントオフセット性を左右する要因は、樹脂の構造と結着樹脂組成物の水系分散体を製造する際の条件にあると考え、検討を行ったところ、特定のポリエステル樹脂セグメント及び特定のビニル系樹脂セグメントを含む複合樹脂とワックスとの混合物に水系媒体を添加し、転相させることにより、耐フィルミング性及び耐ドキュメントオフセット性に優れたトナーを得ることができる、結着樹脂組成物の水系分散体が得られることを見出した。
すなわち、本発明は、以下の〔1〕及び〔2〕を提供する。
〔1〕下記工程1及び2を含む、トナー用結着樹脂組成物の水系分散体の製造方法。
工程1:アルコール成分中、第二級炭素原子に結合した水酸基を有するアルコールを70モル%以上含有するアルコール成分とカルボン酸成分とを縮合させて得られる、ポリエステル樹脂セグメント(A)、及びスチレン化合物由来の構成単位を含有するビニル系樹脂セグメント(B)を含む複合樹脂と、ワックスとを含む混合物を得る工程
工程2:前記混合物に、水系媒体を添加し、転相させて水系分散体を得る工程
〔2〕下記工程A及びCを含む、静電荷像現像用トナーの製造方法。
工程A:〔1〕の製造方法で得られたトナー用結着樹脂組成物の水系分散体を凝集させて
凝集粒子の水系分散体を得る工程
工程C:前記凝集粒子を融着させる工程
本発明によれば、耐フィルミング性及び耐ドキュメントオフセット性に優れるトナーを得ることができるトナー用結着樹脂組成物の水系分散体の製造方法と、耐フィルミング性及び耐ドキュメントオフセット性に優れるトナーの製造方法とを提供することができる。
本発明のトナー用結着樹脂組成物の水系分散体の製造方法は、下記工程1及び2を含む。
工程1:アルコール成分中、第二級炭素原子に結合した水酸基を有するアルコールを70モル%以上含有するアルコール成分とカルボン酸成分とを縮合させて得られる、ポリエステル樹脂セグメント(A)、及びスチレン化合物由来の構成単位を含有するビニル系樹脂セグメント(B)を含む複合樹脂と、ワックスとを含む混合物を得る工程
工程2:前記混合物に、水系媒体を添加し、転相させて水系分散体を得る工程
本発明の結着樹脂組成物の水系分散体を用いて得られた静電荷像現像用トナーが、耐フィルミング性及び耐ドキュメントオフセット性に優れる理由は定かではないが、次のように考えられる。
本発明の結着樹脂組成物の水系分散体の製造方法においては、1分子中にポリエステル樹脂セグメント(A)及び特定のビニル系樹脂セグメント(B)を含む複合樹脂と、ワックスとを含む混合物を得、この混合物に水系媒体を添加して転相させる。
この複合樹脂のビニル系樹脂セグメント(B)は、ワックスとの親和性が高い。そのため、上記混合物中において、ワックスが複合樹脂中に分散するものと考えられる。
更に、この混合物に水系媒体を添加して水系分散体を得る際、上記のとおり複合樹脂のビニル系樹脂セグメント(B)はワックスとの親和性が高く、かつ複合樹脂のポリエステル樹脂セグメント(A)は親水的なエステル結合を有するため、複合樹脂のビニル系樹脂セグメント(B)がワックスに配向し易くなり、ワックスを取り囲むようにワックスの表面に樹脂層が形成されると考えられる。これによって、本発明の製造方法で得られた結着樹脂組成物の水系分散体は、複合樹脂内にワックスが内包されてなる結着樹脂組成物粒子が、水系媒体中に良好に分散することになる。更に、本発明では、ポリエステル樹脂セグメント(A)の原料アルコール成分として、第二級炭素原子に結合した水酸基を有するアルコールを70モル%以上含有するアルコール成分を用いているため、得られる樹脂のガラス転移温度が高く、転写時に、ワックスの漏出をより抑制することができる。
従って、この分散体を用いて得られたトナーは、感光体へのワックスの付着を抑制することができ、耐フィルミング性に優れるものと考えられる。
更に、定着時には、第二級炭素原子に結合した水酸基を有するアルコールを70モル%以上含有するアルコール成分を有するポリエステル樹脂セグメント(A)が紙への親和性が高く、紙側に配向し易くなり、ワックスは画像表面側に露出して配向し易くなる。これにより画像表面にワックス層が形成し易くなり、耐ドキュメントオフセット性が改善すると考えられる。
以下、本発明について説明する。
[トナー用結着樹脂組成物の水系分散体の製造方法]
本発明に係るトナー用結着樹脂組成物の水系分散体の製造方法は、前述の工程1及び2を含む。次に、各工程について説明する。
<工程1>
工程1は、アルコール成分中、第二級炭素原子に結合した水酸基を有するアルコールを70モル%以上含有するアルコール成分とカルボン酸成分とを縮合させて得られる、ポリエステル樹脂セグメント(A)、及びスチレン化合物由来の構成単位を含有するビニル系樹脂セグメント(B)を含む複合樹脂と、ワックスとを含む混合物を得る工程である。
先ず、複合樹脂、複合樹脂の製造方法、及びワックスについて説明し、次いで、混合物及びその製造方法について説明する。
(複合樹脂)
複合樹脂は、ポリエステル樹脂セグメント(A)、及びスチレン化合物由来の構成単位を含有するビニル系樹脂セグメント(B)を含む。この複合樹脂のポリエステル樹脂セグメント(A)は、アルコール成分中、第二級炭素原子に結合した水酸基を有するアルコールを70モル%以上含有するアルコール成分と、カルボン酸成分とを縮合させて得られるものである。
なお、この複合樹脂は、当該ポリエステル樹脂セグメント(A)及びビニル系樹脂セグメント(B)と、これらポリエステル樹脂セグメント(A)及びビニル系樹脂セグメント(B)のいずれとも反応し得る両反応性モノマーに由来する構成部分の3つの構成部分を含むことが好ましい。なお、本発明の目的を阻害しない範囲内でこれら3つの構成部分以外の構成分を含んでいてもよいが、3つの構成部分以外の構成部分を含んでいないことが好ましい。
≪ポリエステル樹脂セグメント(A)≫
ポリエステル樹脂セグメント(A)を構成するポリエステル樹脂は、アルコール成分中、第二級炭素原子に結合した水酸基を有するアルコールを70モル%以上含有するアルコール成分とカルボン酸成分とを縮合させて得られる。
〔アルコール成分〕
ポリエステル樹脂セグメント(A)を構成するポリエステル樹脂の原料モノマーであるアルコール成分は、第二級炭素原子に結合した水酸基を有するアルコールを70モル%以上含有する。ポリエステル樹脂の原料モノマーであるアルコール成分中における、この第二級炭素原子に結合した水酸基を有するアルコールの含有量が70モル%未満であると、得られる樹脂のガラス転移温度が低くなり、ワックスの漏出を十分に抑制することができず、その結果、耐フィルミング性及び耐ドキュメントオフセット性に優れるトナーの製造方法とを提供することができない。当該観点から、当該含有量は、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上である。
この第二級炭素原子に結合した水酸基を有するアルコールは、ガラス転移点を向上させ、トナーの耐フィルミング性及び耐ドキュメントオフセット性を向上させる観点からは、好ましくは炭素数3以上であり、また、好ましくは炭素数14以下、より好ましくは炭素数6以下、更に好ましくは4以下である。この第二級炭素原子に結合した水酸基を有するアルコールは、同様の観点から、脂肪族ジオールであることが好ましい。この第二級炭素原子に結合した水酸基を有するアルコールは、好ましくは1,2−プロパンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−-ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、2,3−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール等であり、より好ましくは1,2−プロパンジオール及び2,3−ブタンジオールの少なくとも1種であり、更に好ましくは、トナーの耐フィルミング性の観点から、2,3−ブタンジオール及び1,2−プロパンジオールの少なくとも1種であり、より好ましくは1,2−プロパンジオールである。
ポリエステル樹脂セグメント(A)を構成するポリエステル樹脂の原料モノマーであるアルコール成分としては、上記の第二級炭素原子に結合した水酸基を有するアルコールの他に、脂肪族ジオール、芳香族ジオール、3価以上の多価アルコール等を含んでいてもよい。ただし、これらのアルコール成分の含有量は、アルコール成分中30モル%未満である。これらのアルコール成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
第二級炭素原子に結合した水酸基を有するアルコール以外の脂肪族ジオールは、トナーの耐フィルミング性及び耐ドキュメントオフセット性を向上させる観点からは、好ましくは炭素数3以上であり、また、好ましくは炭素数14以下、より好ましくは炭素数6以下、更に好ましくは4以下である。当該脂肪族ジオールは、好ましくは1,3−プロパンジオールである。
〔カルボン酸成分〕
ポリエステル樹脂セグメント(A)を構成するポリエステル樹脂の原料モノマーであるカルボン酸成分としては、脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、3価以上の多価カルボン酸、並びにそれらの酸無水物及びそれらのアルキル(炭素数1以上3以下)エステル等が挙げられる。これらのカルボン酸成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
脂肪族ジカルボン酸の主鎖の炭素数は、ワックスの漏出を抑制すると共に、紙への親和性を高めることで、トナーの耐フィルミング性及び耐ドキュメントオフセット性を向上させる観点から、好ましくは4以上、好ましくは10以下、より好ましくは8以下、更に好ましくは6以下であり、具体例としては、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,10−デカンジカルボン酸、ドデカン二酸が挙げられる。また、脂肪族ジカルボン酸の例には、ドデシルコハク酸、ドデセニルコハク酸、オクテニルコハク酸等の炭素数1以上20以下のアルキル基又は炭素数2以上20以下のアルケニル基で置換されたコハク酸も含まれる。これらの中でも、トナーの耐フィルミング性及び耐ドキュメントオフセット性の向上の観点から、フマル酸、ドデセニルコハク酸、オクテニルコハク酸が好ましく、フマル酸がより好ましい。
芳香族ジカルボン酸は、帯電性及びガラス転移点を向上させる観点から好ましく、具体例としては、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸が挙げられる。これらの中でも、トナーの耐フィルミング性及び耐ドキュメントオフセット性の向上の観点から、テレフタル酸が好ましい。
脂肪族ジカルボン酸の含有量は、トナーの耐フィルミング性及び耐ドキュメントオフセット性の向上の観点から、カルボン酸成分中、好ましくは10モル%以上、より好ましくは15モル%以上、更に好ましくは20モル%以上であり、また、好ましくは50モル%以下、より好ましくは40モル%以下、更に好ましくは30モル%以下である。
また、芳香族ジカルボン酸の含有量は、同様の観点から、カルボン酸成分中、好ましくは40モル%以上、より好ましくは50モル%以上、更に好ましくは60モル%以上であり、また、好ましくは90モル%以下、より好ましくは80モル%以下、更に好ましくは75モル%以下である。
脂肪族ジカルボン酸と芳香族ジカルボン酸のモル比〔脂肪族ジカルボン酸/芳香族ジカルボン酸〕は、前記と同様の観点から、好ましくは10/90〜60/40、より好ましくは20/80〜50/50、更に好ましくは30/70〜40/60である。
カルボン酸成分中における、脂肪族ジカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸の総量は、同様の観点から、好ましくは80モル%以上、より好ましくは85モル%以上、更に好ましくは90モル%以上である。
3価以上の多価カルボン酸の具体例としては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸(ピロメリット酸)が挙げられ、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)がより好ましい。
3価以上の多価カルボン酸を用いる場合、その含有量は、トナーの耐フィルミング性及び耐ドキュメントオフセット性の向上の観点から、ポリエステル樹脂のカルボン酸成分中、好ましくは0.1モル%以上、より好ましくは1モル%以上、更に好ましくは3モル%以上であり、また、好ましくは30モル%以下、より好ましくは20モル%以下、更に好ましくは10モル%以下である。
なお、物性調整の観点から、アルコール成分には1価のアルコールが適宜含有されていてもよく、カルボン酸成分には1価のカルボン酸化合物が適宜含有されていてもよい。
〔ポリエステル樹脂セグメント(A)における、アルコール成分に対するカルボン酸成分のモル比〕
縮重合反応の原料モノマーであるアルコール成分に対するカルボン酸成分のモル比(カルボン酸成分/アルコール成分)は、反応性及び物性調整の観点から、好ましくは0.4以上、より好ましくは0.5以上、更に好ましくは0.7以上、より更に好ましくは0.85以上であり、また、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.3以下、更に好ましくは1.15以下である。
≪ビニル系樹脂セグメント(B)≫
ビニル系樹脂セグメント(B)は、スチレン化合物由来の構成単位を含有し、更に炭素数4〜30のアルキル基を有するビニル系モノマー由来の構成単位を含有することが好ましい。すなわち、このビニル系樹脂セグメント(B)の原料ビニル系モノマーは、スチレン化合物を含み、更に炭素数4〜30のアルキル基を有するビニル系モノマーを含むことが好ましい。このように、ビニル系樹脂セグメント(B)は、芳香環と、好ましくは炭素数4〜30の疎水的なアルキル基を有するため、ワックスとの親和性が高く、従って、ワックスは、このビニル系樹脂セグメント(B)を含む複合樹脂中に良好に分散する。
スチレン化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレンが挙げられ、スチレンが好ましい。
ビニル系樹脂セグメント(B)の由来成分である原料ビニル系モノマー中における、スチレン化合物の含有量は、同様の観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、より更に好ましくは75質量%以上である。また、当該含有量は、工程2の転相乳化時における乳化性の向上、トナーの耐フィルミング性及び耐ドキュメントオフセット性を向上させる観点から、好ましくは99質量%以下、より好ましくは95質量%以下、更に好ましくは90質量%以下、より更に好ましくは85質量%以下である。
ワックスとの親和性を向上させ、トナーの耐フィルミング性、耐ドキュメントオフセット性に優れる観点から、ビニル系樹脂セグメント(B)の原料ビニル系モノマーが、好ましくは炭素数4以上、より好ましくは8以上、更に好ましくは12以上、より更に好ましくは16以上の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を有することが好ましく、複合樹脂の乳化性を向上させ、水系分散体を小粒径化し、ワックスを微分散することで、耐フィルミング性、耐ドキュメントオフセット性を向上させる観点から、好ましくは炭素数30以下、好ましくは25以下、より好ましくは22以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を有することが好ましい。
この炭素数4〜30のアルキル基を有するビニル系モノマーは、好ましくは(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ラウリル、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート及びn−ブチルアクリレートの少なくとも1種であり、より好ましくは(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ラウリル及び2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートの少なくとも1種であり、更に好ましくは(メタ)アクリル酸ステアリル及び(メタ)アクリル酸ラウリルの少なくとも1種であり、より更に好ましくは(メタ)アクリル酸ステアリルである。
ビニル系樹脂セグメント(B)の由来成分である原料ビニル系モノマー中における、炭素数4〜30のアルキル基を有するビニル系モノマーの含有量は、ワックスとの親和性を向上させ、トナーの耐フィルミング性、耐ドキュメントオフセット性に優れる観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、より更に好ましくは15質量%以上であり、また、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、より更に好ましくは25質量%以下である。
このビニル系樹脂セグメント(B)の原料ビニル系モノマーとしては、更に、他のビニルモノマーを用いることができる。
当該他のビニル系モノマーとしては、エチレン、プロピレン等のエチレン性不飽和モノオレフィン類;ブタジエン等のジオレフィン類;塩化ビニル等のハロビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類等のエチレン性モノカルボン酸のエステル;ビニルメチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニリデンクロリド等のビニリデンハロゲン化物;N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物類等が挙げられる。
複合樹脂中における、前記ビニル系樹脂セグメント(B)含有量は、トナーの耐フィルミング性及び耐ドキュメントオフセット性を向上させる観点から、15質量%以上80質量%以下である。すなわち、当該含有量は、ワックスとの親和性を向上させてワックスを複合樹脂中に良好に分散させ、もってトナーの耐フィルミング性及び耐ドキュメントオフセット性を向上させる観点から、好ましくは15質量%以上、より好ましくは25質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、より更に好ましくは35質量%以上である。また、当該含有量は、工程2の転相乳化時における複合樹脂の乳化性を向上させ、水系分散体を小粒径化し、ワックスを微分散することで、耐フィルミング性、耐ドキュメントオフセット性を向上させる観点から、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは60質量%以下、より更に好ましくは50質量%以下である。
尚、ビニル系樹脂セグメント(B)量には、開始剤量を含む。
≪両反応性モノマー≫
複合樹脂は、更に、両反応性モノマー由来の構成単位を含むことが好ましい。
複合樹脂の原料モノマーとして両反応性モノマーを用いると、当該両反応性モノマーがポリエステル樹脂セグメント(A)とビニル系樹脂セグメント(B)との両方と反応することにより、複合樹脂を良好に製造することができる。
すなわち、本発明の複合樹脂は、ポリエステル樹脂セグメント(A)の原料モノマー及びビニル系樹脂セグメント(B)の原料モノマーを重合させて複合樹脂を得る際に、縮重合反応及び/又は付加重合反応は、両反応性モノマーの存在下で行うことが好ましい。これにより、複合樹脂は、両反応性モノマー由来の構成単位を介してポリエステル樹脂セグメント(A)とビニル系樹脂セグメント(B)とが結合した樹脂となり、ポリエステル樹脂セグメント(A)とビニル系樹脂セグメント(B)とが均一に分散したものとなり、耐フィルミング性、耐ドキュメントオフセット性が良好なものとなる。
両反応性モノマーとしては、分子内に、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、第1級アミノ基及び第2級アミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する化合物と、エチレン性不飽和結合とを有する化合物が挙げられる。これらの中でも、反応性の観点から、好ましくは水酸基及び/又はカルボキシル基を有する化合物がより好ましく、カルボキシル基とエチレン性不飽和結合とを有する化合物が更に好ましい。
具体的には、両反応性モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸及び無水マレイン酸等が挙げられる。縮重合反応及び付加重合反応の反応性の観点から、アクリル酸及びメタクリル酸がより好ましい。
両反応性モノマーの使用量は、ビニル系樹脂セグメント(B)を、ポリエステル樹脂セグメント(A)中に、微分散することで、ワックスの分散性を向上させ、トナーの耐フィルミング性、耐ドキュメントオフセット性を向上させる観点から、前記ビニル系樹脂セグメント(B)の原料であるビニル系モノマー100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、更に好ましくは3質量部以上であり、また、複合樹脂の乳化性を向上させ、水系分散体を小粒径化し、ワックスを微分散することで、耐フィルミング性、耐ドキュメントオフセット性を向上させる観点から、好ましくは25質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは15質量部以下、より更に好ましくは10質量部以下、更により好ましくは7質量部以下である。
≪複合樹脂の物性≫
本発明に用いられる複合樹脂の軟化点は、耐フィルミング性、耐ドキュメントオフセット性を向上させる観点から、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上、更に好ましくは95℃以上、より更に好ましくは100℃以上、より更に好ましくは102℃以上であり、また、好ましくは130℃以下、より好ましくは125℃以下、更に好ましくは120℃以下、より更に好ましくは115℃以下、より更に好ましくは113℃以下である。
また、本発明に用いられる複合樹脂のガラス転移温度は、同様の観点から、好ましくは40℃以上、より好ましくは45℃以上、更に好ましくは47℃以上、より更に好ましくは50℃以上であり、また、好ましくは65℃以下、より好ましくは60℃以下、更に好ましくは58℃以下である。
複合樹脂の酸価は、耐フィルミング性、耐ドキュメントオフセット性を向上させる観点から、好ましくは1mgKOH/g以上、より好ましくは5mgKOH/g以上、更に好ましくは10mgKOH/g以上、より更に好ましくは12mgKOH/g以上であり、また、好ましくは40mgKOH/g以下、より好ましくは35mgKOH/g以下、更に好ましくは25mgKOH/g以下、より更に好ましくは22mgKOH/g以下である。
なお、軟化点、ガラス転移温度、及び酸価は、原料モノマー組成、分子量、触媒量等の調整又は反応条件の選択により容易に調整することができる。
複合樹脂中における、ポリエステル樹脂セグメント(A)、ビニル系樹脂セグメント(B)及び両反応性樹脂セグメントの含有量の合計は、好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上、更に好ましくは99モル%以上、より更に好ましくは100モル%である。
(複合樹脂の製造方法)
複合樹脂は、以下の(1)〜(3)のいずれかの方法により製造することが好ましい。なお、両反応性モノマーは、反応性の観点から、ビニル系樹脂成分の原料モノマーと共に反応系に供給されることが好ましい。また、反応性の観点から、エステル化触媒、エステル化助触媒等の触媒を用いてもよく、更に重合開始剤及び重合禁止剤を用いてもよい。
(1)アルコール成分及びカルボン酸成分による縮重合反応の工程(A)の後に、ビニル系樹脂成分の原料モノマー(ビニル系モノマー)及び必要に応じて両反応性モノマーによる付加重合反応の工程(B)を行う方法。
なお、工程(A)において、カルボン酸成分の一部を縮重合反応に供し、次いで工程(B)を実施した後に、再度反応温度を上昇させ、カルボン酸成分の残部を重合系に添加し、工程(A)の縮重合反応及び必要に応じて両反応性モノマーとの反応をさらに進める方法がより好ましい。
(2)ビニル系樹脂成分の原料モノマー及び両反応性モノマーによる付加重合反応の工程(B)の後に、ポリエステル樹脂成分の原料モノマーによる縮重合反応の工程(A)を行う方法。
アルコール成分及びカルボン酸成分については、付加重合反応時に反応系内に存在させておき、縮重合反応に適した温度でエステル化触媒及び必要に応じて更にエステル化助触媒を添加させることにより縮重合反応を開始することもできるし、縮重合反応に適した温度条件下で反応系内に後からアルコール成分及びカルボン酸成分を添加することにより縮重合反応を開始することもできる。前者の場合は、縮重合反応に適した温度でエステル化触媒及び必要に応じて更にエステル化助触媒を添加することで分子量及び分子量分布が調節できる。
(3)アルコール成分及びカルボン酸成分による縮重合反応の工程(A)とビニル系樹脂成分の原料モノマー及び両反応性モノマーによる付加重合反応の工程(B)とを並行して行う方法。
この方法では、付加重合反応に適した反応温度条件下で工程(A)と工程(B)とを行い、反応温度を上昇させ、縮重合反応に適した温度条件下で、必要に応じて、ポリエステル樹脂成分の3価以上の原料モノマー等を架橋剤として重合系に添加し、更に工程(A)の縮重合反応を行うことが好ましい。その際、縮重合反応に適した温度条件下では、ラジカル重合禁止剤を添加して縮重合反応だけを進めることもできる。両反応性モノマーは付加重合反応と共に縮重合反応にも関与する。
以上の中でも、方法(1)が、縮重合反応の反応温度の自由度が高いという点から好ましい。
また、方法(1)〜(3)、好ましくは(1)において、複合樹脂は、ワックスの存在下で、ビニル系モノマーを重合する工程を含む製造方法で得られることが好ましい。これにより、ワックスと複合樹脂との親和性を向上させ、ワックスを微分散し、トナーの耐フィルミング性、耐ドキュメントオフセット性を向上させることができる。
上記(1)〜(3)の方法は、同一容器内で行うことが好ましい。
縮重合反応の温度は、好ましくは120℃以上、より好ましくは145℃以上、更に好ましくは150℃以上であり、また、好ましくは230℃以下、より好ましくは225℃以下である。
付加重合反応の温度は、好ましくは120℃以上であり、より好ましくは140℃以上であり、更に好ましくは160℃以上であり、また、好ましくは230℃以下であり、より好ましくは225℃以下であり、更に好ましくは210℃以下である。
また、重合の後半に反応系を減圧することにより、反応を促進させることが好ましい。
≪エステル化触媒≫
上記縮重合に好適に用いられるエステル化触媒としては、チタン化合物及びSn−C結合を有していない錫(II)化合物が挙げられ、これらは1種又は2種以上を併せて使用することができる。
チタン化合物としては、Ti−O結合を有するチタン化合物が好ましく、総炭素数1〜28のアルコキシ基、アルケニルオキシ基又はアシルオキシ基を有する化合物がより好ましい。
Sn−C結合を有していない錫(II)化合物としては、Sn−O結合を有する錫(II)化合物、Sn−X(Xはハロゲン原子を示す)結合を有する錫(II)化合物等が好ましく挙げられ、Sn−O結合を有する錫(II)化合物がより好ましく、中でも、反応性、分子量調整及び樹脂の物性調整の観点から、ジ(2−エチルヘキサン酸)錫(II)が更に好ましい。
上記エステル化触媒の存在量は、反応性、分子量調整及び樹脂の物性調整の観点から、アルコール成分とカルボン酸成分との総量100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、更に好ましくは0.2質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは2質量部以下である。
≪エステル化助触媒≫
エステル化助触媒としては、ピガロール化合物が好ましい。このピロガロール化合物は、互いに隣接する3個の水素原子が水酸基で置換されたベンゼン環を有するものであり、ピロガロール、没食子酸、没食子酸エステル、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,3,4−テトラヒドロキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体、エピガロカテキン、エピガロカテキンガレート等のカテキン誘導体等が挙げられ、反応性の観点から、没食子酸が好ましい。
縮重合反応におけるエステル化助触媒の存在量は、反応性の観点から、縮重合反応に供されるアルコール成分とカルボン酸成分との総量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上、更に好ましくは0.1質量部以上であり、また、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.8質量部以下、更に好ましくは0.6質量部以下である。ここで、エステル化助触媒の存在量とは、縮重合反応に供したエステル化助触媒の全配合量を意味する。
エステル化助触媒とエステル化触媒との質量比(エステル化助触媒/エステル化触媒)は、反応性の観点から、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.01以上、更に好ましくは0.05以上であり、また、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.3以下、更に好ましくは0.2以下である。
≪重合開始剤≫
重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤が好適に用いられる。このラジカル重合開始剤としては、パーオキサイド系ラジカル重合開始剤が好ましく、ジブチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、クメンヒドロパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、2,2−ビス−(4,4−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、トリス−(t−ブチルパーオキシ)トリアジンの少なくとも1種がより好ましく、ジブチルパーオキサイドが更に好ましい。
≪重合禁止剤≫
重合禁止剤としては、tert−ブチルカテコール等が挙げられる。
(ワックス)
ワックスとしては、エステル系ワックス、炭化水素ワックス、シリコーンワックス、脂肪酸アミド等を用いることができる。なかでも、トナーの耐フィルミング性及び耐ドキュメントオフセット性を向上させる観点から、炭化水素ワックス及びエステル系ワックスが好ましい。
エステル系ワックスは、エステル結合を有するワックスであり、好ましくは酸価が1mgKOH/g以上10mgKOH/g以下であるワックスである。
エステル系ワックスの酸価は、トナーの耐フィルミング性及び耐ドキュメントオフセット性を向上させる観点から、1mgKOH/g以上であり、好ましくは2mgKOH/g以上、より好ましくは3mgKOH/g以上であり、また、10mgKOH/g以下であり、好ましくは8mgKOH/g以下、より好ましくは7mgKOH/g以下である。
エステル系ワックスとしては、合成エステルワックス及び天然エステルワックスが挙げられる。合成エステルワックスとしては、長鎖アルコールと脂肪酸からなるエステルが挙げられ、好ましくはベヘニン酸ベヘニル、ステアリン酸ステアリル、及びペンタエリスリトールの脂肪酸エステルの少なくとも1種である。天然エステルワックスとしては、好ましくはカルナウバワックス及びライスワックスの少なくとも1種である。これらのうち、トナーの耐フィルミング性及び耐ドキュメントオフセット性を向上させる観点から、合成エステルワックスが好ましく、長鎖アルコールと脂肪酸からなるエステルがより好ましく、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステルが更に好ましく、ペンタエリスリトールベヘン酸エステルが更に好ましい。
炭化水素ワックスの具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類;オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の鉱物・石油系ワックスが挙げられ、好ましくはパラフィンワックスである。
ワックスの混合量は、トナーの耐フィルミング性及び耐ドキュメントオフセット性を向上させる観点から、複合樹脂100質量部に対して、好ましくは2〜70質量部である。すなわち、当該ワックスの混合量は、トナーの耐フィルミング性、耐ドキュメントオフセット性の観点から、好ましくは2質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上、より更に好ましくは8質量部以上であり、また、トナーの耐フィルミング性の観点から、好ましくは70質量部以下、より好ましくは50質量部以下、更に好ましくは40質量部以下、より更に好ましくは30質量部以下、より更に好ましくは20質量部以下である。
(混合物)
混合物は、前述の複合樹脂と、前述のワックスとを含む。この混合物中における、複合樹脂とワックスの含有量は、トナーの耐フィルミング性、耐ドキュメントオフセット性を向上させる観点から、好ましくは60質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、より更に好ましくは95質量%以上である。
本発明に用いられる混合物の軟化点は、耐フィルミング性、耐ドキュメントオフセット性を向上させる観点から、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上、更に好ましくは95℃以上、より更に好ましくは100℃以上、より更に好ましくは102℃以上であり、また、好ましくは130℃以下、より好ましくは125℃以下、更に好ましくは120℃以下、より更に好ましくは115℃以下、より更に好ましくは113℃以下である。
また、本発明に用いられる混合物のガラス転移温度は、同様の観点から、好ましくは40℃以上、より好ましくは45℃以上、更に好ましくは47℃以上、より更に好ましくは50℃以上であり、また、好ましくは65℃以下、より好ましくは60℃以下、更に好ましくは58℃以下である。
混合物の酸価は、耐フィルミング性、耐ドキュメントオフセット性を向上させる観点から、好ましくは1mgKOH/g以上、より好ましくは5mgKOH/g以上、更に好ましくは10mgKOH/g以上、より更に好ましくは12mgKOH/g以上であり、また、好ましくは40mgKOH/g以下、より好ましくは35mgKOH/g以下、更に好ましくは25mgKOH/g以下、より更に好ましくは22mgKOH/g以下である。
なお、混合物の軟化点、ガラス転移温度、及び酸価は、原料モノマー組成、分子量、触媒量等の調整又は反応条件の選択により容易に調整することができる。
(混合物の製造方法)
この混合物の製造方法は特に限定されない。例えば、複合樹脂の製造工程中に、複合樹脂の原料とワックスとを混合して混合物を得てもよく、また、製造後の複合樹脂とワックスとを混合して混合物を得てもよいが、ワックスと複合樹脂との親和性を向上させ、ワックスを微分散し、トナーの耐フィルミング性、耐ドキュメントオフセット性を向上させる観点からは、複合樹脂の製造工程中に、複合樹脂の原料とワックスとを混合して混合物を得るのが好ましい。
また、複合樹脂の製造工程中に、複合樹脂の原料にワックスを混合する場合、当該ワックスを混合するタイミングは特に限定されない。例えば、ポリエステル樹脂セグメント(A)の原料モノマーであるカルボン酸成分とアルコール成分との重合前に、当該原料モノマーにワックスを混合してもよい。また、ポリエステル樹脂セグメント(A)を由来するポリエステル樹脂と、ビニル系樹脂セグメント(B)の原料ビニル系モノマーとを混合する際に、これら原料ビニル系モノマーと共にワックスを混合してもよい。ただし、ワックスと複合樹脂との親和性を向上させ、ワックスを微分散し、トナーの耐フィルミング性、耐ドキュメントオフセット性をより向上させる観点からは、ポリエステル樹脂と、ビニル系樹脂セグメント(B)の原料ビニル系モノマーとを混合する際に、これら原料ビニル系モノマーと共にワックスを混合するのがより好ましい。
これにより、前述の通り、ワックスの存在下で、ビニル系モノマーを重合する工程を含む製造方法で複合樹脂を得ることができる。
<工程2>
工程2は、前記混合物に、水系媒体を添加し、転相させて水系分散体を得る工程である。これにより、複合樹脂及びワックスを含むトナー用結着樹脂組成物の粒子が水系媒体に分散してなるトナー用結着樹脂組成物の分散体を得ることができる。
尚、本明細書において、水系分散体とは、水系媒体を含む溶媒中に、前記複合樹脂が分散状態で存在していればよい。分散体は、25℃で24時間、分層せずに存在していることが好ましい。
水系分散体には、水系媒体以外の有機溶媒が存在していてもよいが、水系媒体と水系媒体と有機溶媒との合計量との質量比[水系媒体×100/(水系媒体と有機溶媒との合計量)]は、好ましくは50以上であり、より好ましくは70以上、更に好ましくは80以上、より更に好ましくは85以上である。
前記混合物に、水系媒体を添加し、水系分散体とする工程では、転相乳化が行われる。この転相乳化工程では、前記混合物に、水系媒体を添加することで、まず最初にW/O相が形成され、次に、O/W相に転相される。転相しているかどうかは、例えば、目視や導電率などで確認することができる。
転相工程は、後述するような、水系媒体の添加速度や量によって、調整することができる。
この工程2においては、混合物に、有機溶媒及び中和剤の少なくとも1種を含むことが好ましく、中和剤を含むことがより好ましく、有機溶媒及び中和剤を含むことが更に好ましい。また、必要に応じて界面活性剤を添加してもよい。
(有機溶媒)
有機溶媒としては、複合樹脂の分散性を向上する観点から、溶解性パラメータ(SP値:POLYMER HANDBOOK THIRD EDITION 1989 by John Wiley & Sons,Inc)で表したとき、好ましくは15.0MPa1/2以上、より好ましくは16.0MPa1/2以上、更に好ましくは17.0MPa1/2以上であり、また、好ましくは26.0MPa1/2以下、より好ましくは24.0MPa1/2以下、更に好ましくは22.0MPa1/2以下である。
具体例としては、次の有機溶媒が挙げられる。なお、次の有機溶媒の名称の右側のカッコ内はSP値であり、単位はMPa1/2である。すなわち、具体例としては、エタノール(26.0)、イソプロパノール(23.5)、及びイソブタノール(21.5)等のアルコール系溶媒;アセトン(20.3)、メチルエチルケトン(19.0)、メチルイソブチルケトン(17.2)、及びジエチルケトン(18.0)等のケトン系溶媒;ジブチルエーテル(16.5)、テトラヒドロフラン(18.6)、及びジオキサン(20.5)等のエーテル系溶媒;酢酸エチル(18.6)、酢酸イソプロピル(17.4)等の酢酸エステル系溶媒が挙げられる。これらの中では、トナーの耐フィルミング性及び耐ドキュメントオフセット性を向上させる観点から、ケトン系溶媒及び酢酸エステル系溶媒が好ましく、メチルエチルケトン、酢酸エチル及び酢酸イソプロピルからなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましく、ケトン系溶媒が更に好ましく、メチルエチルケトンがより更に好ましい。
有機溶媒と複合樹脂との質量比(有機溶媒/複合樹脂)は、トナーの耐フィルミング性、耐ドキュメントオフセット性を向上させる観点から、好ましくは0.03以上、より好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.1以上であり、また、好ましくは5以下、より好ましくは1.5以下、更に好ましくは1以下、より更に好ましくは0.8以下、より更に好ましくは0.6以下である。
(中和剤)
本発明に用いられる中和剤としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、及び水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;アンモニア、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、及びトリブチルアミン等の有機塩基が挙げられる。これらの中でも、トナーの耐フィルミング性、耐ドキュメントオフセット性を向上させる観点から、水酸化ナトリウムが好ましい。
中和剤としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、及び水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;アンモニア、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、及びトリブチルアミン等の有機塩基が挙げられる。これらの中でも、トナーの耐フィルミング性、耐ドキュメントオフセット性を向上させる観点から、水酸化ナトリウムが好ましい。
中和剤を添加して中和するときの温度は、好ましくは30℃以上、より好ましくは50℃以上、更に好ましくは60℃以上であり、また、好ましくは90℃以上、より好ましくは85℃以上、更に好ましくは80℃以下である。
複合樹脂の中和剤による中和度は、同様の観点から、好ましくは60モル%以上、より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは80モル%以上、より更に好ましくは90モル%以上、より更に好ましくは95モル%以上であり、より更に好ましくは99モル%以上であり、好ましくは150モル%以下である。なお、樹脂の中和度(モル%)は、下記式によって求めることができる。
中和度={[中和剤の質量(g)/中和剤の当量]/〔[樹脂の酸価(mgKOH/g)×樹脂の質量(g)]/(56×1000)〕}×100
(水系媒体)
水系媒体としては水を主成分とするものが好ましい。
水以外の成分としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等の炭素数1〜5の脂肪族アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等のジアルキル(炭素数1〜3)ケトン;テトラヒドロフラン等の環状エーテル等の水に溶解する有機溶媒が挙げられる。これらのなかでは、トナーへの混入を防止する観点から、樹脂を溶解しない有機溶媒である、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール系有機溶媒がより好適に使用できる。
水系媒体中の水の含有量は、樹脂の乳化安定性を向上させる観点から、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上が更に好ましく、100質量%が更に好ましい。水は、脱イオン水又は蒸留水が好ましい。
水系媒体を添加する際の温度は、樹脂の乳化安定性を向上させる観点から、好ましくは0℃以上、より好ましくは10℃以上、更に好ましくは20℃以上、より更に好ましくは25℃以上であり、また、好ましくは50℃以下、より好ましくは45℃以下、更に好ましくは40℃以下である。
水系媒体の添加速度は、小粒径の樹脂組成物粒子を得る観点及び転相させる観点から、転相が終了するまでは、複合樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部/分以上、より好ましくは0.5質量部/分以上、更に好ましくは1質量部/分以上、より更に好ましくは3質量部/分以上、より更に好ましくは4質量部/分以上であり、また、好ましくは50質量部/分以下、より好ましくは30質量部/分以下、更に好ましくは20質量部/分以下、より更に好ましくは10質量部/分以下、より更に好ましくは8質量部/分以下である。転相後の水系媒体の添加速度には制限はない。
水系媒体の使用量は、後の凝集工程で均一な凝集粒子を得る観点から、複合樹脂100質量部に対して、好ましくは100質量部以上、より好ましくは150質量部以上、更に好ましくは200質量部以上、より更に好ましくは300質量部以上、より更に好ましくは400質量部以上であり、また、好ましくは2000質量部以下、より好ましくは1500質量部以下、更に好ましくは1000質量部以下、より更に好ましくは700質量部以下、より更に好ましくは500質量部以下である。
また、工程(1)で得られた混合物が有機溶媒を含んでいる場合には、後の凝集工程で均一な凝集粒子を得る観点から、水系媒体と前記有機溶媒との質量比(水系媒体/有機溶媒)が70/30〜98/2になるように前記水系媒体を添加することが好ましい。当該観点から、より好ましくは80/20以上、更に好ましくは85/15以上であり、また、より好ましくは95/15以下、更に好ましくは90/10以下である。
(界面活性剤)
界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤が挙げられる。なかでも、複合樹脂の分散性の観点から、非イオン性界面活性剤及び/又はアニオン性界面活性剤が好ましく、アニオン性界面活性剤がより好ましい。
非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類あるいはポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールモノオレエート等のポリオキシエチレン脂肪酸エステル類、オキシエチレン/オキシプロピレンブロックコポリマー等が挙げられ、これらの中でも樹脂の乳化安定性の観点から、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類が好ましい。
アニオン性界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸ナトリウム等のアルキルエーテル硫酸塩等が挙げられ、これらの中でも樹脂の乳化安定性の観点から、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルエーテル硫酸塩が好ましく、アルキルエーテル硫酸塩がより好ましい。
カチオン性界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、ジアルキルジメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
複合樹脂の分散性と樹脂の乳化安定性の観点から、界面活性剤のなかでも、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類及びアルキルエーテル硫酸塩が好ましく、アルキルエーテル硫酸塩がより好ましい。
(トナー用結着樹脂組成物の粒子)
得られたトナー用結着樹脂組成物の水系分散液中における、トナー用結着樹脂組成物の粒子の体積中位粒子径(D50)は、トナーの生産性の観点から、好ましくは50nm以上、より好ましくは100nm以上、更に好ましくは120nm以上、より更に好ましくは140nm以上、より更に好ましくは150nm以上であり、また、好ましくは400nm以下、より好ましくは350nm以下、更に好ましくは300nm以下、より更に好ましくは250nm以下、より更に好ましくは240nm以下である。
<工程3>
工程3として、工程2の後に、工程2で得られた分散体から有機溶媒を除去する工程を有していてもよい。
有機溶媒の除去方法は、特に限定されず、任意の方法を用いることができるが、水と溶解しているため蒸留するのが好ましい。また、有機溶媒は、完全に除去されず水系分散体中に残留していてもよい。この場合、有機溶媒の残存量は、水系分散体中、1質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下がより更に好ましく、実質的に0%が更に好ましい。
蒸留によって有機溶媒の除去を行う場合、撹拌を行いながら、使用する有機溶媒の沸点以上の温度に昇温して留去するのが好ましい。また、複合樹脂の分散安定性を維持する観点から、減圧下で、その圧力における使用する有機溶媒の沸点以上の温度に昇温して留去するのがより好ましい。なお、減圧した後昇温しても、昇温した後減圧してもよい。複合樹脂の分散安定性を維持する観点から、温度及び圧力を一定にして留去するのが好ましい。
<工程4>
工程4として、工程2又は工程3の後に、工程2又は工程3で得られた水系分散体に界面活性剤を混合する工程を有していてもよい。
工程4において添加する界面活性剤の量は、トナーの耐フィルミング性及び耐ドキュメントオフセット性を向上させる観点から、工程1〜4で添加する界面活性剤の総添加量の、好ましくは50質量%以上100質量%以下、より好ましくは60質量%以上100質量%以下、更に好ましくは70質量%以上100質量%以下、より更に好ましくは80質量%以上100質量%以下、より更に好ましくは90質量%以上100質量%以下である。
また、工程4において添加する界面活性剤の量は、トナーの耐フィルミング性及び耐ドキュメントオフセット性を向上させる観点から、複合樹脂100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、であり、また、好ましくは25質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは15質量部以下である。
界面活性剤添加時は、アンカー翼等の一般的に用いられる混合撹拌装置、外部循環撹拌装置等で撹拌することが好ましい。
アンカー翼等の混合撹拌装置を用いた場合、撹拌の周速は、分散性の観点から、好ましくは20m/分以上、より好ましくは40m/分以上、更に好ましくは60m/分以上、より更に好ましくは80m/分以上であり、また、好ましくは200m/分以下、より好ましくは150m/分以下、更に好ましくは100m/分以下である。
工程4の界面活性剤添加時の温度は、界面活性剤の水への分散性などの観点から、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上、更に好ましくは20℃以上であり、また、好ましくは50℃以下、好ましくは40℃以下、好ましくは35℃以下である。
工程1〜工程4を含む水系分散体の製造工程を経て得られる水系分散体の固形分濃度は、分散体の安定性及び取扱い容易性等の観点から、適宜水を加えることにより、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、また、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは25質量%以下である。
[静電荷像現像用トナーの製造方法]
本発明に係る静電荷像現像用トナーの製造方法は、下記工程A及びCを含む。
工程A:前述の製造方法で得られたトナー用結着樹脂組成物の水系分散体を凝集させて凝集粒子の水系分散体を得る工程
工程C:前記凝集粒子を融着させる工程
また、本発明に係る静電荷像現像用トナーの製造方法は、下記工程Bを含み、かつ工程Cでは工程Bで得られた凝集粒子を融着させてもよい。すなわち、本発明に係る静電荷像現像用トナーの製造方法は、下記工程A、B及びCを含んでもよい。
工程A:前述の製造方法で得られたトナー用結着樹脂組成物の水系分散体を凝集させて凝集粒子を得る工程
工程B:工程Aで得られた分散体に、ポリエステル樹脂の水系分散体及びスチレンアクリル樹脂の水系分散体の少なくとも1種を混合し、凝集させて凝集粒子の水系分散体を得る工程
工程C:工程Bで得られた前記凝集粒子を融着させる工程
以下、工程A〜Cについて説明する。
<工程A>
工程Aは、前述の製造方法で得られたトナー用結着樹脂組成物の水系分散体を凝集させて凝集粒子の水系分散体を得る工程である。
工程Aでは、凝集を効率的に行うために凝集剤を添加することが好ましい。また、工程Aでは、着色剤、荷電制御剤、離型剤、導電性調整剤、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、及び老化防止剤等の添加剤を添加してから凝集させてもよい。該添加剤は、水系分散体としてから使用することもできる。
(凝集剤)
凝集剤は、第四級塩のカチオン性界面活性剤、ポリエチレンイミン等の有機系凝集剤;無機金属塩、無機アンモニウム塩等の無機系凝集剤が用いられる。トナーの粒径分布、トナーの耐フィルミング性及び耐ドキュメントオフセット性を向上させる観点から、無機系凝集剤が好ましく、なかでも無機金属塩が好ましい。
無機金属塩としては、例えば、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム等が挙げられる。無機金属塩の中心金属の価数は、トナーの粒径分布、トナーの耐フィルミング性及び耐ドキュメントオフセット性を向上させる観点から、2価以上であることが好ましい。
凝集剤を添加する場合、その添加量は、トナーの耐フィルミング性及び耐ドキュメントオフセット性を向上させる観点から、複合樹脂100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.005質量部以上、更に好ましくは0.01質量部以上、より更に好ましくは0.1質量部以上、より更に好ましくは0.2質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは7質量部以下、更に好ましくは1質量部以下、より更に好ましくは0.8質量部以下、より更に好ましくは0.5質量部以下である。
凝集剤は、水系媒体に溶解させて添加することが好ましく、凝集剤の添加時及び添加終了後は十分撹拌することが好ましい。
凝集工程において、系内の固形分濃度は、均一な凝集を起こさせるために、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、また、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。
凝集工程において、凝集剤を均一に分散し、均一な凝集を起こさせる観点から、凝集剤の添加時の温度は、好ましくは10℃以上、より好ましくは15℃以上、更に好ましくは18℃以上であり、また、好ましくは40℃以下、より好ましくは35℃以下、更に好ましくは30℃以下である。凝集剤を添加した後の保持温度は、好ましくは40℃以上、より好ましくは45℃以上、更に好ましくは47℃以上であり、また、好ましくは65℃以下、より好ましくは60℃以下、更に好ましくは55℃以下である。
(着色剤)
着色剤としては、特に制限はなく公知の着色剤が挙げられ、目的に応じて適宜選択することができる。具体的には、カーボンブラック、無機系複合酸化物、クロムイエロー、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、スレンイエロー、キノリンイエロー、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ウオッチヤングレッド、パーマネントレッド、ブリリアンカーミン3B、ブリリアンカーミン6B、デュポンオイルレッド、ピラゾロンレッド、リソールレッド、ローダミンBレーキ、レーキレッドC、ベンガル、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコオイルブルー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、及びマラカイトグリーンオクサレート等の種々の顔料;アクリジン系、キサンテン系、アゾ系、ベンゾキノン系、アジン系、アントラキノン系、インジコ系、チオインジコ系、フタロシアニン系、アニリンブラック系、ポリメチン系、トリフェニルメタン系、ジフェニルメタン系、チアジン系、及びチアゾール系等の各種染料が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
着色剤の添加量は、画像品質を向上する観点から、複合樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは1.0質量部以上、より更に好ましくは2.0質量部以上であり、また、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは8質量部以下、より更に好ましくは5質量部以下である。
この着色剤は、着色剤微粒子を含有する着色剤分散液として添加してもよい。この着色剤微粒子の体積中位粒径(D50)は、好ましくは50nm以上、より好ましくは100nm以上であり、また、好ましくは200nm以下、より好ましくは150nm以下である。
(荷電制御剤)
荷電制御剤としては、クロム系アゾ染料、鉄系アゾ染料、アルミニウムアゾ染料、及びサリチル酸金属錯体等が挙げられる。各種荷電制御剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
荷電制御剤を添加する場合、その添加量は、画像品質を向上する観点から、複合樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上、更に好ましくは0.5質量部以上、より更に好ましくは0.6質量部以上であり、また、好ましくは8質量部以下、より好ましくは7質量部以下、更に好ましくは5質量部以下、より更に好ましくは2質量部以下である。
この荷電制御剤は、荷電制御剤微粒子を含有する荷電制御剤分散液として添加してもよい。この荷電制御剤微粒子の体積中位粒径(D50)は、好ましくは100nm以上、より好ましくは300nm以上であり、また、好ましくは800nm以下、より好ましくは500nm以下である。
また、着色剤、荷電制御剤等の添加剤は、樹脂粒子を調製する際に複合樹脂に予め混合してもよく、別途各添加剤を水等の分散媒中に分散させた分散液を調製して、複合樹脂の水系分散体と混合し、凝集工程に供してもよい。
樹脂粒子を調製する際に複合樹脂に添加剤を予め混合する場合には、予め複合樹脂と添加剤とを溶融混練することが好ましい。
溶融混練には、オープンロール型二軸混練機を使用することが好ましい。オープンロール型二軸混練機は、2本のロールが平行に近接して配設された混練機であり、各ロールに熱媒体を通すことにより、加熱機能又は冷却機能を付与することができる。したがって、オープンロール型二軸混練機は、溶融混練する部分がオープン型であり、また加熱ロールと冷却ロールを備えていることから、通常の二軸混練機と異なり、溶融混練の際に発生する混練熱を容易に放熱することができる。
また、各添加剤の水系分散液は、各添加剤、界面活性剤及び水を混合し、分散機で分散処理することによって得られる。
<工程B>
工程Bは、工程Aで得られた分散体に、ポリエステル樹脂の水系分散体及びスチレンアクリル樹脂の水系分散体の少なくとも1種を混合し、凝集させて凝集粒子を得る工程である。
これにより、更に後述する工程Cを経て、コアシェル型のトナーを得ることができる。すなわち、工程Aで得られた凝集体部分が主にコア部を構成し、工程Bで凝集させた部分が主にシェル部を構成する。
トナーの耐フィルミング性及び耐ドキュメントオフセット性を向上させる観点から、上記のポリエステル樹脂の水系分散体及びスチレンアクリル樹脂の水系分散体のうち、少なくともポリエステル樹脂の水系分散体を混合するのが好ましく、ポリエステル樹脂の水系分散体のみを混合するのがより好ましい。
なお、「工程Aで得られた分散体」とは、前述のトナー用結着樹脂組成物の水系分散体を凝集させて得られた、当該凝集粒子が媒体中に分散してなる分散体のことを意味する。
工程Aで用いられる複合樹脂と工程Bで用いられるポリエステル樹脂とスチレンアクリル樹脂との質量比[複合樹脂/(ポリエステル樹脂とスチレンアクリル樹脂との合計量)]は、トナーの耐フィルミング性及び耐ドキュメントオフセット性を向上させる観点から、好ましくは50/50以上、より好ましくは70/30以上、更に好ましくは75/25以上であり、トナーの耐熱保存性、耐久性、耐フィルミング性及び耐ドキュメントオフセット性の観点から、好ましくは90/10以下、更に好ましくは85/15以下である。
(ポリエステル樹脂の水系分散体)
ポリエステル樹脂の水系分散体を構成するポリエステル樹脂は、一般的にトナー用として用いられる物性等を有するトナー用ポリエステル樹脂であれば特に限定されるものではないが、アルコール成分とカルボン酸成分とを縮重合して得られる。
ポリエステル樹脂セグメント(A)を構成するポリエステル樹脂は、一般的にトナー用として用いられる物性等を有するトナー用ポリエステル樹脂であれば特に限定されるものではないが、アルコール成分とカルボン酸成分とを縮重合して得られる。
〔アルコール成分〕
ポリエステル樹脂セグメント(A)を構成するポリエステル樹脂の原料モノマーであるアルコール成分としては、脂肪族ジオール、芳香族ジオール、3価以上の多価アルコール等が挙げられる。これらのアルコール成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
ポリエステル樹脂の原料モノマーであるアルコール成分は、トナーの耐熱保存性、耐久性、耐フィルミング性、低温定着性及び耐ドキュメントオフセット性を向上させる観点から、下記式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を含有することが好ましい。
Figure 0006335009
(式中、Rは、炭素数2又は3のアルキレン基を示す。x及びyはアルキレンオキシ基の平均付加モル数であり、正の数を示し、xとyの和は、好ましくは1以上、より好ましくは1.5以上、更に好ましくは2以上であり、また、好ましくは16以下、より好ましくは5以下、更に好ましくは3以下である。)
前記式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物として、具体的には、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのポリオキシプロピレン付加物、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのポリオキシエチレン付加物等が挙げられる。
前記式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物は、耐熱保存性、耐久性及び低温定着性に優れたトナーを得る観点から、アルコール成分中、好ましくは70モル%以上100モル%以下、より好ましくは80モル%以上100モル%以下、更に好ましくは90モル%以上100モル%以下含有される。
ポリエステル樹脂のアルコール成分が脂肪族ジオールを含有する場合、脂肪族ジオールの含有量は、トナーの低温定着性、耐久性及び耐熱保存性を高める観点から、ポリエステル樹脂のアルコール成分中、好ましくは0.1モル%以上、より好ましくは1モル%以上、更に好ましくは5モル%以上であり、また、好ましくは30モル%以下、より好ましくは20モル%以下、更に好ましくは10モル%以下である。
また、トナーの耐フィルミング性及び耐ドキュメントオフセット性を向上させる観点から、3価以上のアルコールを用いてもよい。
3価以上のアルコールとして、具体的には、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等が挙げられ、反応性及び分子量調整の観点から、グリセリンが好ましい。
ポリエステル樹脂のアルコール成分が3価以上のアルコールを含有する場合、3価以上のアルコールの含有量は、同様の観点から、ポリエステル樹脂のアルコール成分中、好ましくは0.1モル%以上、より好ましくは1モル%以上、更に好ましくは5モル%以上であり、また、好ましくは30モル%以下、より好ましくは20モル%以下、更に好ましくは10モル%以下である。
〔カルボン酸成分〕
ポリエステル樹脂セグメント(A)を構成するポリエステル樹脂の原料モノマーであるカルボン酸成分としては、脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、3価以上の多価カルボン酸、並びにそれらの酸無水物及びそれらのアルキル(炭素数1以上3以下)エステル等が挙げられる。これらのカルボン酸成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
脂肪族ジカルボン酸の具体例としては、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,10−デカンジカルボン酸、ドデカン二酸が挙げられる。また、脂肪族ジカルボン酸の例には、ドデシルコハク酸、ドデセニルコハク酸、オクテニルコハク酸等の炭素数1以上20以下のアルキル基又は炭素数2以上20以下のアルケニル基で置換されたコハク酸も含まれる。これらの中でも、トナーの耐フィルミング性及び耐ドキュメントオフセット性を向上させる観点から、フマル酸、ドデセニルコハク酸、オクテニルコハク酸が好ましく、フマル酸がより好ましい。
芳香族ジカルボン酸の具体例としては、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸が挙げられる。これらの中でも、同様の観点から、テレフタル酸が好ましい。
カルボン酸成分中における、脂肪族ジカルボン酸の含有量は、トナーのシェル部の耐熱保存性をコア部よりも高くして、トナーの耐フィルミング性及び耐ドキュメントオフセット性を向上させる観点から、前述の複合樹脂のポリエステル樹脂セグメント(A)の原料カルボン酸成分中における脂肪族ジカルボン酸の含有量よりも少ないことが好ましい。当該含有量は、当該観点から、カルボン酸成分中、好ましくは5モル%以上、より好ましくは8モル%以上、更に好ましくは10モル%以上であり、また、好ましくは25モル%以下、より好ましくは20モル%以下、更に好ましくは15モル%以下である。
また、カルボン酸成分中における、芳香族ジカルボン酸の含有量は、トナーのシェル部の耐熱性をコア部よりも高くして、トナーの耐フィルミング性及び耐ドキュメントオフセット性を向上させる観点から、前述の複合樹脂のポリエステル樹脂セグメント(A)の原料カルボン酸成分中における芳香族ジカルボン酸の含有量よりも多いことが好ましい。当該含有量は、当該観点から、カルボン酸成分中、好ましくは75モル%以上、より好ましくは80モル%以上、更に好ましくは85モル%以上であり、また、好ましくは98モル%以下、より好ましくは95モル%以下、更に好ましくは90モル%以下である。
3価以上の多価カルボン酸の具体例としては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸(ピロメリット酸)が挙げられる。
3価以上の多価カルボン酸を用いる場合、その含有量は、トナーの耐フィルミング性及び耐ドキュメントオフセット性を向上させる観点から、ポリエステル樹脂のカルボン酸成分中、好ましくは0.1モル%以上、より好ましくは1モル%以上、更に好ましくは5モル%以上であり、また、好ましくは30モル%以下である。
なお、物性調整の観点から、アルコール成分には1価のアルコールが適宜含有されていてもよく、カルボン酸成分には1価のカルボン酸化合物が適宜含有されていてもよい。
〔アルコール成分に対するカルボン酸成分のモル比〕
縮重合反応の原料モノマーであるアルコール成分に対するカルボン酸成分のモル比(カルボン酸成分/アルコール成分)は、反応性及び物性調整の観点から、好ましくは0.4以上、より好ましくは0.5以上、更に好ましくは0.7以上、より更に好ましくは0.85以上であり、また、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.3以下、更に好ましくは1.15以下である。
トナーのシェル部の耐熱性をコア部よりも高くして、トナーの耐フィルミング性及び耐ドキュメントオフセット性を向上させる観点から、ポリエステル樹脂の軟化点は、複合樹脂の軟化点よりも高いことが好ましい。当該観点から、このポリエステル樹脂と複合樹脂の軟化点の温度差は、好ましくは2℃以上、より好ましくは4℃以上、更に好ましくは5℃以上、より更に好ましくは8℃以上であり、また、好ましくは35℃以下、より好ましくは30℃以下、更に好ましくは25℃以下、より更に好ましくは20℃以下である。
このポリエステル樹脂の水系分散体を構成するポリエステル樹脂の軟化点は、好ましくは95℃以上、より好ましくは100℃以上、更に好ましくは105℃以上、より更に好ましくは110℃以上、より更に好ましくは115℃以上であり、また、好ましくは140℃以下、より好ましくは135℃以下、更に好ましくは130℃以下、より更に好ましくは125℃以下、より更に好ましくは123℃以下である。
また、このポリエステル樹脂の水系分散体を構成するポリエステル樹脂のガラス転移温度は、トナーの耐フィルミング性及び耐ドキュメントオフセット性を向上させる観点から、好ましくは45℃以上、より好ましくは50℃以上、更に好ましくは55℃以上、より更に好ましくは60℃以上であり、また、好ましくは85℃以下、より好ましくは80℃以下、更に好ましくは75℃以下、より更に好ましくは70℃以下である。
このポリエステル樹脂の水系分散体を構成するポリエステル樹脂の酸価は、トナーの耐フィルミング性及び耐ドキュメントオフセット性を向上させる観点から、好ましくは1mgKOH/g以上、より好ましくは5mgKOH/g以上、更に好ましくは10mgKOH/g以上、より更に好ましくは12mgKOH/g以上であり、また、好ましくは40mgKOH/g以下、より好ましくは35mgKOH/g以下、更に好ましくは20mgKOH/g以下、より更に好ましくは18mgKOH/g以下である。
なお、軟化点、ガラス転移温度、数平均分子量、重量平均分子量、酸価及び水酸基価は、原料モノマー組成、分子量、触媒量等の調整又は反応条件の選択により容易に調整することができる。
この水系分散体中における、ポリエステル樹脂の粒子の体積中位粒子径(D50)は、トナーの生産性の観点から、好ましくは50nm以上、より好ましくは70nm以上、また、好ましくは400nm以下、より好ましくは350nm以下、更に好ましくは300nm以下、より更に好ましくは250nm以下、より更に好ましくは200nm以下である。
(凝集粒子)
得られた凝集粒子の体積中位粒子径(D50)は、トナーの耐フィルミング性及び耐ドキュメントオフセット性を向上させる観点から、好ましく3.0μm以上、より好ましくは3.5μm以上、更に好ましくは4.0μm以上、より更に好ましくは4.5μm以上であり、また、好ましくは8.5μm以下、より好ましくは8.0μm以下、更に好ましくは7.5μm以下、より更に好ましくは7.0μm以下、より更に好ましくは6.5μm以下である。
<工程C>
工程Cでは、工程A又は工程Bで得られた凝集粒子の水系分散体に必要に応じて凝集停止剤を加えた後、必要に応じて、加熱することにより融着粒子を得る。
融着工程における系内の温度は、目的とするトナーの粒径、粒度分布、形状制御及び粒子の融着性の観点、トナーの耐フィルミング性及び耐ドキュメントオフセット性を向上させる観点から、複合樹脂の軟化点−50℃以上が好ましく、軟化点−45℃以上がより好ましく、軟化点−40℃以上が更に好ましく、また、軟化点+10℃以下が好ましく、軟化点以下がより好ましく、軟化点−10℃以下が好ましく、軟化点−15℃以下が好ましく、軟化点−20℃以下が好ましい。
具体的には、好ましくは70℃以上、より好ましくは75℃以上であり、また、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下である。また、撹拌速度は、凝集粒子が沈降しない速度が好ましい。
なお、凝集停止剤を用いる場合、凝集停止剤として界面活性剤を用いることが好ましく、アニオン性界面活性剤を用いることがより好ましい。アニオン性界面活性剤のうち、アルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、及び直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることがより好ましく、アルキルエーテル硫酸塩を用いることが更に好ましい。
〔後工程〕
前記工程Cにより得られた融着粒子を、適宜、ろ過等の固液分離工程、洗浄工程、乾燥工程に供することにより、本発明の静電荷像現像用トナーを好適に得ることができる。
洗浄工程では、添加した非イオン性界面活性剤も洗浄により完全に除去することが好ましく、非イオン性界面活性剤の曇点以下での水系溶液での洗浄が好ましい。洗浄は複数回行うことが好ましい。
また、乾燥工程では、振動型流動乾燥法、スプレードライ法、冷凍乾燥法、フラッシュジェット法等、任意の方法を採用することができる。トナーの乾燥後の水分含量は、帯電性の観点から、好ましくは1.5質量%以下、更には1.0質量%以下に調整することが好ましい。
更に流動性を向上する等の目的のために外添剤を添加しても良い。外添剤としては、表面を疎水化処理したシリカ微粒子、酸化チタン微粒子、アルミナ微粒子、酸化セリウム微粒子、及びカーボンブラック等の無機微粒子;ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、及びシリコーン樹脂等のポリマー微粒子等、公知の微粒子が使用できる。
外添剤の個数平均粒子径は、トナーの流動性の観点から、好ましくは4〜200nm、より好ましくは8〜50nmである。
外添剤を添加する場合、その添加量は、トナーの流動性、帯電度の環境安定性、トナーの耐フィルミング性及び耐ドキュメントオフセット性を向上させる観点から、外添剤による処理前のトナー100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上、更に好ましくは0.5質量部以上、より更に好ましくは1質量部以上であり、また、好ましくは5質量部以下、より好ましくは4質量部以下、更に好ましくは3質量部以下、より更に好ましくは2.5質量部以下である。
トナーの体積中位粒子径(D50)は、トナーの耐熱保存性、耐久性及び低温定着性の観点から、好ましく3.0μm以上、より好ましくは3.5μm以上、更に好ましくは4.0μm以上、より更に好ましくは4.5μm以上であり、また、好ましくは8.5μm以下、より好ましくは8.0μm以下、更に好ましくは7.5μm以下、より更に好ましくは7.0μm以下、より更に好ましくは6.5μm以下である。
樹脂、樹脂粒子、トナー等の各性状等については次の方法により測定、評価した。
[樹脂等(樹脂及び樹脂とワックスとを含む混合物)の酸価]
樹脂等の酸価は、JIS K 0070の方法に基づき測定した。ただし、測定溶媒のみJIS K 0070の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更した。
[樹脂等の軟化点、吸熱の最大ピーク温度及びガラス転移温度]
(1)軟化点
フローテスター「CFT−500D」((株)島津製作所製)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出した。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とした。
(2)吸熱の最大ピーク温度
示差走査熱量計「Q−100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製)を用いて、室温(20℃)から降温速度10℃/分で0℃まで冷却した試料をそのまま1分間静止させ、その後、昇温速度10℃/分で180℃まで昇温しながら測定した。観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度を吸熱の最大ピーク温度とした。
(3)ガラス転移温度
示差走査熱量計「Q−100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で0℃まで冷却した。次に昇温速度10℃/分で150℃まで昇温しながら測定した。吸熱の最大ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とした。
[凝集粒子の体積中位粒径(D50)]
凝集粒子の体積中位粒径は以下の通り測定した。
・測定機:「コールターマルチサイザーIII」(ベックマンコールター社製)
・アパチャー径:50μm
・解析ソフト:「マルチサイザーIIIバージョン3.51」(ベックマンコールター社製)
・電解液:「アイソトンII」(ベックマンコールター社製)
・分散液:ポリオキシエチレンラウリルエーテル「エマルゲン109P」(花王(株)製、HLB:13.6)を前記電解液に溶解させ、濃度5質量%の分散液を得た。
・分散条件:前記分散液5mLに試料10mg(固形分換算)を添加し、超音波分散機にて1分間分散させ、その後、電解液25mLを添加し、更に、超音波分散機にて1分間分散させて、試料分散液を作製した。
・測定条件:前記試料分散液を前記電解液100mLに加えることにより、3万個の粒子の粒径を20秒で測定できる濃度に調整した後、3万個の粒子を測定し、その粒度分布から体積中位粒径(D50)を求めた。
[樹脂粒子、結着樹脂組成物粒子、着色剤微粒子、荷電制御剤微粒子、離型剤粒子の体積中位粒径(D50)]
(1)測定装置:レーザー回折型粒径測定機「LA−920」((株)堀場製作所製)
(2)測定条件:測定用セルに蒸留水を加え、吸光度が適正範囲になる濃度で体積中位粒径(D50)を測定した。
[着色剤分散液、荷電制御剤分散液、離型剤分散液、シェル用水系分散体、結着樹脂組成物の水系分散体の固形分濃度]
赤外線水分計「FD−230」((株)ケツト科学研究所製)を用いて、試料5gを乾燥温度150℃、測定モード96(監視時間2.5分/変動幅0.05%)の条件にて乾燥させ、試料の水分(質量%)を測定した。固形分は下記式に従って算出した。
固形分濃度(質量%)=100−M
M:水分量(質量%)
[トナーの耐フィルミング性]
非磁性一成分現像方式プリンター「OKI Microline 18」((株)沖データ製)にトナーを実装し、温度30℃ 、湿度80%の条件下にて、黒化率5.5%の斜めストライプのパターンの耐刷を行った。途中、500枚ごとにベタ画像を印字し、画像上のスジを確認した。画像上にスジが目視にて観察された時点までの印字枚数を耐刷枚数とした。耐刷枚数が大きいものほど、トナーの耐フィルミング性に優れる。
[印刷物の耐ドキュメントオフセット性]
複写機「AR−505」(商品名、シャープ株式会社製)にトナーを実装し、未定着で画像出しを行った(印字面積:2cm×12cm、付着量:0.5mg/cm2)。前記複写機の定着機にて、160℃、400mm/secの条件で印字媒体に未定着画像を定着させた。なお、印字媒体にJ紙(商品名、富士ゼロックス(株)製)を用いた。該定着画像と、印刷していないJ紙を重ね合わせて、80g/cm2の加重下、温度80℃ 、湿度50%の条件下にて、5日間放置し、5日後に引きはがした時のドキュメントオフセットの有無を目視で確認した。得られた結果を下記基準で評価した。
A:ドキュメントオフセットが確認できない。
B:定着画像側に白抜けは確認できないが、印刷していないJ紙側への移行が見られる。
C:定着画像側にわずかの白抜けが確認できるが、実使用可能レベルである。
D:定着画像側に白抜けがはっきりと確認できる。
E:定着画像側にかなりの白抜けが確認できる。
F:紙同士が固着しており、引きはがすと紙が破損する。
[複合樹脂とワックスとを含む混合物の製造]
製造例1〜10、12、15
(複合樹脂とワックスとを含む混合物A〜J、L、Oの製造)
表1、2に示すフマル酸及びトリメリット酸無水物以外のポリエステル樹脂の原料モノマー、エステル化触媒及びエステル化助触媒を、温度計、ステンレス製撹拌棒、25℃の水を通水した還流冷却管を上部に装備し、下部に98℃の温水を通水した分留管、脱水管、及び窒素導入管を装備した10リットルの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、160℃で2時間縮重合反応させた後、10時間かけて220℃まで昇温を行った。その後220℃にて反応率が95%に到達したのを確認し、ワックス(パラフィンワックス、「HNP-9」(日本精蝋(株)製、融点:77℃)を投入した後、160℃に冷却し、表1,2に示すビニル系樹脂の原料モノマー、両反応性モノマー及びラジカル重合開始剤の混合溶液を1時間かけて滴下した。その後、30分間160℃に保持したのち、200℃まで1時間かけて昇温し、更に8kPaの減圧下で1時間反応させた。その後190℃に冷却した後、フマル酸、及びトリメリット酸無水物及びラジカル重合禁止剤(4−t−ブチルカテコール)を入れ、210℃まで3時間かけて昇温し、210℃、8kPaにて表1、2に記載の軟化点に達するまで反応を行って、樹脂を得た。このようにして、複合樹脂A〜J、Lとワックスとを含む混合物を得た。物性を表1、2に示す。なお、反応率とは、生成反応水量(mol)/理論生成水量(mol)×100の値をいう。
[複合樹脂とワックスとを含む混合物の製造]
製造例11
(複合樹脂Kの製造)
表2に示すフマル酸、トリメリット酸無水物以外のポリエステル樹脂の原料モノマー、エステル化触媒及びエステル化助触媒を、温度計、ステンレス製撹拌棒、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した10リットルの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、235℃まで2時間かけて昇温を行った。その後235℃にて反応率が95%以上に到達したのを確認し、ワックス(パラフィンワックス、「HNP-9」(日本精蝋(株)製、融点:77℃)を投入した後、160℃まで冷却し、表2に示すビニル系樹脂の原料モノマー、両反応性モノマー及びラジカル重合開始剤の混合溶液を1時間かけて滴下した。その後、30分間160℃に保持したのち、200℃まで昇温し、更に8kPaの減圧下で1時間反応させた後、180℃まで冷却した。その後、トリメリット酸無水物、ラジカル重合禁止剤(4−t−ブチルカテコール)及びフマル酸を加え、2時間かけて210℃まで昇温した。その後、210℃にて1時間反応後、8kPaにて表2に記載の軟化点に達するまで反応を行って、複合樹脂Kを得た。このようにして、複合樹脂Kとワックスとを含む混合物を得た。物性を表2に示す。なお、本発明における反応率とは、生成反応水量(mol)/理論生成水量(mol)×100の値をいう。
[ポリエステル樹脂とワックスとを含む混合物の製造]
製造例13
(ポリエステル樹脂とワックスとを含む混合物Mの製造)
表2に示すフマル酸、トリメリット酸無水物以外のポリエステル樹脂の原料モノマー、エステル化触媒及びエステル化助触媒を、温度計、ステンレス製撹拌棒、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した10リットルの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、235℃まで2時間かけて昇温を行った。その後235℃にて反応率が95%以上に到達したのを確認したのを確認し、ワックス(パラフィンワックス、「HNP-9」(日本精蝋(株)製、融点:77℃)を投入した後、180℃まで冷却し、トリメリット酸無水物、ラジカル重合禁止剤(4−t−ブチルカテコール)及びフマル酸を加え、2時間かけて210℃まで昇温した。その後、210℃にて1時間反応後、8kPaにて表2に記載の軟化点に達するまで反応を行って、ポリエステル樹脂Mを得た。このようにして、ポリエステル樹脂とワックスとを含む混合物を得た。物性を表2に示す。
[複合樹脂の製造]
製造例14
(複合樹脂Nの製造)
製造例1において、樹脂合成中にワックスを投入しなかった以外は、製造例1と同様に反応を行って、複合樹脂Nを得た。
[ポリエステル樹脂の製造]
製造例16
(ポリエステル樹脂Pの製造)
表3に示すフマル酸以外のポリエステル樹脂の原料モノマー、エステル化触媒及びエステル化助触媒を、温度計、ステンレス製撹拌棒、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した5リットルの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、235℃まで2時間かけて昇温を行った。その後235℃にて反応率が95%以上に到達したのを確認した。その後180℃まで冷却し、4−t−ブチルカテコール及びフマル酸を加え、2時間かけて210℃まで昇温した。その後、210℃にて1時間反応後、8kPaにて表3に記載の軟化点に達するまで反応を行って、ポリエステル樹脂Pを得た。
Figure 0006335009
Figure 0006335009
Figure 0006335009
[結着樹脂組成物の水系分散体の製造]
製造例17〜30、34
(結着樹脂組成物の水系分散体a〜oの製造)
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート、温度計及び窒素導入管を備えた3L容の容器に、表4、5に示す樹脂(複合樹脂とワックスとの混合物、ポリエステル樹脂とワックスとの混合物、複合樹脂、又はポリエステル樹脂)150g、メチルエチルケトン75gを仕込み、73℃にて2時間かけて溶解させた。得られた溶液に、5%水酸化ナトリウム水溶液を樹脂の酸価に対して中和度100モル%になるように添加して中和し、30分撹拌した。その後30℃に保持したままで280r/分(周速88m/分)の撹拌を行いながら、イオン交換水675gを77分かけて添加(製造例16〜28、33の水系媒体の添加速度:複合樹脂100質量部に対して6.4質量部/分、製造例29の水系媒体の添加速度:複合樹脂100質量部に対して5.8質量部/分)し、転相させて、水系分散体を得た。ついで30分かけて50℃に昇温させた後、メチルエチルケトンを減圧下で留去した。その後、250r/分(周速88m/分)の撹拌を行いながら水系分散体を30℃に冷却した後、アニオン性界面活性剤「エマールE27C」(ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、固形分28%、花王(株)製)を16.7g混合し、完全に溶解させた。その後分散液の固形分濃度を測定し、20質量%になるようにイオン交換水を加えて、結着樹脂組成物粒子が水に分散した、結着樹脂組成物の水系分散体を得た。水系分散体の体積中位粒径を表4に示す。
[結着樹脂組成物の水系分散体の製造]
製造例31
(結着樹脂組成物の水系分散体n−2の製造)
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート、温度計及び窒素導入管を備えた3L容の容器に、表5に示すポリエステル樹脂150g、メチルエチルケトン75g、ワックス(HNP−9) 15gを仕込み、73℃にて2時間かけて溶解させた。得られた溶液に、5%水酸化ナトリウム水溶液を樹脂の酸価に対して中和度100モル%になるように添加して中和し、30分撹拌した。その後30℃に保持したままで280r/分(周速88m/分)の撹拌を行いながら、イオン交換水675gを77分かけて添加し(水系媒体の添加速度:複合樹脂100質量部に対して:5.8質量部)、転相させて、水系分散体を得た。ついで30分かけて50℃に昇温させた後、メチルエチルケトンを減圧下で留去した。その後、250r/分(周速88m/分)の撹拌を行いながら水系分散体を30℃に冷却した後、アニオン性界面活性剤「エマールE27C」(ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、花王(株)製)を16.7g混合し、完全に溶解させた。その後分散液の固形分濃度を測定し、20質量%になるようにイオン交換水を加えて結着樹脂組成物の水系分散体を得た。水系分散体の体積中位粒径を表4に示す。
[結着樹脂組成物の水系分散体の製造]
製造例32
(結着樹脂組成物の水系分散体n−3の製造)
製造例31において、HNP−9をWEP−8(日油(株)製、エステルワックス、融点:80℃)に変更した以外は同様にして結着樹脂組成物の水系分散体を得た。水系分散体の体積中位粒径を表4に示す。
[結着樹脂組成物の水系分散体の製造]
製造例33
(結着樹脂組成物の水系分散体a−2の製造)
複合樹脂とワックスとの混合物A 150g、酢酸エチル75g、アニオン性界面活性剤(花王(株)製、商品名:「エマールE27C」)を16.7gを25℃にて溶解させ、73℃にて2時間かけて溶解させた。得られた溶液に、5%水酸化ナトリウム水溶液を、樹脂の酸価に対して中和度70モル%になるように添加して、その後、イオン交換水600gを1分以内で添加(水系媒体の添加速度:複合樹脂100質量部に対して440質量部以上)したが、2層に分離した。得られた分離液を、超音波ホモジナイザー(ドクターヒールッシャー(株)製、商品名:「UP−400S」)を用いて出力350Wで30分散処理した。その後73℃にて、酢酸エチルを減圧留去し、その後分散液の固形分濃度を測定し、20質量%になるようにイオン交換水を加えて、結着樹脂組成物の水系分散体を得た。水系分散体の体積中位粒径を表4に示す。
[結着樹脂組成物の水系分散体の製造]
製造例35
(結着樹脂組成物の水系分散体pの製造)
製造例17において、複合樹脂とワックスとの混合物Aに代えて、ポリエステル樹脂Pに変更した以外は製造例17と同様にして、結着樹脂組成物の水系分散体を得た。水系分散体の体積中位粒径を表5に示す。
Figure 0006335009
Figure 0006335009
[着色剤分散液の製造]
製造例36
銅フタロシアニン「ECB−301」(大日精化工業(株)製)50g、非イオン性界面活性剤「エマルゲン150」(ポリオキシエチレンラウリルエーテル、花王(株)製)5g及びイオン交換水200gを混合し、ホモジナイザーを用いて10分間分散させて、着色剤微粒子を含有する着色剤分散液を得た。着色剤微粒子の体積中位粒径(D50)は120nmであり、固形分濃度は22質量%であった。
[荷電制御剤分散液の製造]
製造例37
荷電制御剤としてサリチル酸系化合物「ボントロンE−84」(オリエント化学工業(株)製)50g、非イオン性界面活性剤として「エマルゲン150」(花王(株)製)5g及びイオン交換水200gを混合し、ガラスビーズを使用し、サンドグラインダーを用いて10分間分散させて、荷電制御剤微粒子を含有する荷電制御剤分散液を得た。荷電制御剤微粒子の体積中位粒径(D50)は400nmであり、固形分濃度は22質量%であった。
〔離型剤分散液の調製〕
製造例38
ワックス(HNP−9)50g、カチオン性界面活性剤(サニゾールB50、花王(株)製)5g及びイオン交換水200gを95℃に加熱して、ホモジナイザーを用いて、ワックスを分散させた後、圧力吐出型ホモジナイザーで分散処理し、パラフィンワックスが平均粒径550nmで分散した離型剤分散液を得た。固形分濃度は20質量%であった。
[静電荷像現像用トナーの製造]
実施例1
製造例17で得られたトナー用結着樹脂組成物の水系分散体aを300g、着色剤分散液8g、荷電制御剤分散液2g及び脱イオン水52gを2L容の容器に入れ、アンカー型の撹拌機で100r/分(周速31m/分)の撹拌下、20℃で0.1質量%塩化カルシウム水溶液150gを30分かけて滴下した。その後、撹拌しながら50℃まで昇温した。体積中位粒径が5μmになるまで50℃で保持した。3時間たった時点で体積中位粒径が5μmに達した。その後、表5にトナーのシェルとして示すシェル用水系分散体pを75g加え、撹拌して分散させた。その後、凝集停止剤としてアニオン性界面活性剤「エマールE27C」(花王(株)製、固形分28質量%)4.2gを脱イオン水37gで希釈した希釈液を添加した。次いで80℃まで昇温し、80℃になった時点から1時間80℃を保持した後、加熱を終了した。これにより融着粒子を形成させた後、20℃まで徐冷し、150メッシュ(目開き150マイクロメートル)の金網でろ過した後、吸引ろ過を行い、洗浄、乾燥工程を経てトナー粒子を得た。
(外添工程)
上記トナー粒子100質量部に対して、疎水性シリカ「NAX−50」(日本アエロジル(株)製、個数平均粒子径40nm)1.0質量部、疎水性シリカ「R972」(日本アエロジル(株)製、個数平均粒子径16nm)0.6質量部、酸化チタン「JMT−150IB」(テイカ(株)製、個数平均粒子径15nm)0.5質量部を、ST、Ao撹拌羽根を装着した10Lヘンシェルミキサー(三井鉱山(株)製)に投入し、3000rpmにて2分間撹拌して、トナーを得た。トナーの評価結果を表6に示す。
実施例2〜13及び比較例1〜3、5
(静電荷像現像用トナーの製造)
実施例1において、トナー用結着樹脂組成物の水系分散体を表6のように変更した以外は、実施例1と同様にして、トナーを得た。トナーの評価結果を表6に示す。
比較例4
(静電荷像現像用トナーの製造)
製造例30で得られたトナー用結着樹脂組成物の水系分散体nを300g、着色剤分散液8g、荷電制御剤分散液2g、離型剤分散液30g及び脱イオン水52gを2L容の容器に入れたこと以外は、実施例1と同様にして、トナーを得た。トナーの評価結果を表6に示す。
Figure 0006335009
[結果]
実施例1〜13のトナーは、耐フィルミング性及び耐ドキュメントオフセット性が優れる。
一方、比較例4では、水系分散体製造時にワックスを用いておらず、耐ドキュメントオフセット性は低下する。
比較例1では、耐フィルミング性、耐ドキュメントオフセット性が低下する。これは、複合樹脂のポリエステル樹脂が、第二級炭素原子に結合した水酸基を有するアルコールではなく、ビスフェノール系樹脂であるため、ワックスとの親和性が高く、複合樹脂のビニル系樹脂セグメント(B)のワックスへの配向性が低下し、ワックスの内包化が困難となり、感光体にワックスが付着し易なるとともに、定着時にワックスは画像表面側への配向性が低下するためと考えられる。
比較例2では、アルコール成分中、第二級炭素原子に結合した水酸基を有するアルコールが60モル%であり、複合樹脂のガラス転移点が低くなるとともに、定着時にワックスは画像表面側への配向性が低下すると考えられるため、耐フィルミング性、耐ドキュメントオフセット性が低下する。
比較例3では、結着樹脂が、ビニル系樹脂セグメント(B)を有しておらず、ワックスとの親和性が低く、転相乳化の際にワックスを粒子中に安定して取り込むことが困難であり、耐フィルミング性、耐ドキュメントオフセット性が低下する。
比較例5では、転相乳化ではなく、超音波により乳化して得られた結着樹脂を用いているため、ワックスの結着樹脂中に安定して取り込むことが困難であり、耐フィルミング性、耐ホットオフセット性及び低温定着性が低下する。
実施例2〜4では、炭素数がやや短い炭化水素基を有するビニル系樹脂セグメント(B)を用いるものであり、実施例1と比較して、ワックスとの親和性がやや低下するため、転相乳化の際にワックスを粒子中に安定して取り込み性がやや低下して、耐フィルミング性、耐ドキュメントオフセット性がやや低下する。
実施例5では、ワックス量がやや少ないため、実施例1と比較して耐ドキュメントオフセット性がやや低下し、実施例6では、ワックス量がやや多いため、実施例1と比較して耐フィルミング性がやや低下する。
実施例7では、ビニル系樹脂セグメント(B)量がやや低いため、ワックスとの親和性が低下し、トナーの耐フィルミング性、耐ドキュメントオフセット性が実施例1と比較してやや低下し、実施例8では、ビニル系樹脂セグメント(B)量がやや多いため、複合樹脂の乳化性がやや低下し、ワックスの分散性がやや低下するため、耐フィルミング性、耐ドキュメントオフセット性が実施例1と比較してやや低下する。
実施例9では、複合樹脂中の両反応性モノマー由来の構成単位が、やや少なく、ビニル系樹脂セグメント(B)を、ポリエステル樹脂セグメント(A)中に、微分散し難くなり、ワックスの分散性がやや低下し、トナーの耐フィルミング性、耐ドキュメントオフセット性も実施例1と比較してやや低下する。実施例10では、複合樹脂中の両反応性モノマー由来の構成単位が、やや多く、複合樹脂の乳化性が低下し、水系分散体を小粒径化し、ワックスを微分散し難くなるため、耐フィルミング性、耐ドキュメントオフセット性が実施例1と比較してやや低下する。
実施例11、実施例12では、結着樹脂の重合時にワックスを存在させず、結着樹脂の乳化時に、ワックスを添加しているため、耐フィルミング性、耐ドキュメントオフセット性が実施例1と比較してやや低下する。
本発明の製造方法により得られるトナー用結着樹脂組成物の水系分散体を用いた静電荷像現像用トナーは、耐フィルミング性及び耐ドキュメントオフセット性に優れるため、電子写真法に用いられるトナーとして好適に使用できる。

Claims (7)

  1. 下記工程1及び2を含む、トナー用結着樹脂組成物の水系分散体の製造方法。
    工程1:アルコール成分中、第二級炭素原子に結合した水酸基を有するアルコールを70モル%以上含有するアルコール成分とカルボン酸成分とを縮合させて得られる、ポリエステル樹脂セグメント(A)、及び30質量%以上60質量%以下のスチレン化合物由来の構成単位及び炭素数16〜30のアルキル基を有するビニル系モノマー由来の構成単位を含有するビニル系樹脂セグメント(B)を含む複合樹脂と、ワックスとを含む混合物を得る工程
    工程2:前記混合物に、水系媒体を添加し、転相させて水系分散体を得る工程
  2. 前記複合樹脂中の前記ビニル系樹脂セグメント(B)の含有量が35質量%以上60質量%以下である、請求項1に記載のトナー用結着樹脂組成物の水系分散体の製造方法。
  3. 前記複合樹脂100質量部に対して、前記ワックスを2〜70質量部混合する、請求項1又は2に記載のトナー用結着樹脂組成物の水系分散体の製造方法。
  4. 前記複合樹脂が、前記ワックスの存在下で、前記ビニル系モノマーを重合する工程を含む製造方法で得られる樹脂である、請求項1〜のいずれかに記載のトナー用結着樹脂組成物の水系分散体の製造方法。
  5. 前記複合樹脂が、更に、両反応性モノマー由来の構成単位を含む、請求項1〜のいずれかに記載のトナー用結着樹脂組成物の水系分散体の製造方法。
  6. 下記工程A及びCを含む、静電荷像現像用トナーの製造方法。
    工程A:請求項1〜のいずれかに記載の製造方法で得られたトナー用結着樹脂組成物の水系分散体を凝集させて凝集粒子の水系分散体を得る工程
    工程C:前記凝集粒子を融着させる工程
  7. 下記工程Bを含み、かつ工程Cでは工程Bで得られた凝集粒子を融着させる、請求項に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
    工程B:工程Aで得られた分散体に、ポリエステル樹脂の水系分散体及びスチレンアクリル樹脂の水系分散体の少なくとも1種を混合し、凝集させて凝集粒子を得る工程
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