以下に、添付図面を参照して、本発明に係る硬貨処理装置及び硬貨処理方法の好適な実施例を詳細に説明する。本発明に係る硬貨処理装置は、例えば、硬貨を入出金可能なATM等の貨幣処理装置に内蔵して利用されるものである。以下では、ATMに内蔵される硬貨処理装置を例に、従来のATMの構造や動作に関する説明は省略して本発明に係る硬貨処理装置について説明する。
図1は、本実施形態に係る硬貨処理装置11の構成を説明するための側面模式図である。硬貨処理装置11は、硬貨を入出金処理する硬貨入出金機である。硬貨処理装置11の機体12の上部前側には、硬貨を入出金するための硬貨取引口13と、この硬貨取引口13の下側で硬貨を受け入れて貯留するための受皿部14とが形成されている。硬貨取引口13にはシャッター15が開閉可能に配置されている。受皿部14への硬貨の投入や受皿部14からの硬貨の抜き取りが許容されるタイミングでシャッター15が自動的に開放され、硬貨の投入や抜き取りの操作が完了するとシャッター15は自動的に閉鎖するようになっている。
受皿部14は、機体12外から硬貨取引口13に投入された入金硬貨、機体12内から硬貨取引口13に投出された出金硬貨を受け入れて貯留する。受皿部14の底面の一部は開閉可能に構成されており、底面を開放すると、受皿部14に貯留されていた硬貨が装置内で下方へ放出される。
機体12内には、硬貨を搬送する搬送路17が配設されている。この搬送路17は、機体12の前後方向(X軸方向)に設けられた第1搬送路部18と、この第1搬送路部18の上方位置で前後方向に設けられた第2搬送路部19と、これら第1搬送路部18及び第2搬送路部19の後端間を接続する第3搬送路部20とを備えている。第2搬送路部19の前端は受皿部14の上部に接続されており、第2搬送路部19の前端に搬送した硬貨を、ここから受皿部14に放出できるようになっている。
第1搬送路部18の前側には繰出部21が接続され、第2搬送路部19の前側には保留部23が接続されている。また、第1搬送路部18の繰出部21より後側(X軸負方向側)と第2搬送路部19の保留部23より後側には、金種別の収納部22が接続されている。そして、第2搬送路部19の保留部23と収納部22の間には、硬貨の金種、真偽、正損等を識別する識別部24が配設されている。繰出部21、収納部22及び保留部23は、搬送路17を搬送される硬貨を分岐して収納するとともに、収納している硬貨を1枚ずつ搬送路17に繰り出せるように構成されている。
繰出部21は受皿部14の下方に位置し、受皿部14と繰出部21との間には、受皿部14の底面を開放して放出された硬貨を繰出部21に導くシュート25が設けられている。また、機体12の前面には返却口26が設けられており、繰出部21に硬貨と一緒に投入された異物を排出して返却口26から返却できるようになっている。
また、機体12内の下部には、収納部22に収納しきれないオーバーフロー硬貨を収納するオーバーフロースタッカ29と、補充硬貨や回収硬貨を収納する硬貨カセット30とが配置されている。オーバーフロースタッカ29と硬貨カセット30の間には、これらオーバーフロースタッカ29及び硬貨カセット30から繰り出される硬貨を上方の保留部23に搬送する搬送機構31が配置されている。オーバーフロースタッカ29には、硬貨を搬送機構31に繰り出すためのベルト32と、受皿部14内の取り忘れ硬貨を回収するための回収カセット33とが配設されている。また、硬貨カセット30には、硬貨を搬送機構31に繰り出すためのベルト34と、リジェクト硬貨を回収するためのリジェクトボックス35とが配設されている。
第1搬送路部18には、オーバーフロー硬貨をオーバーフロースタッカ29に分岐する分岐部36と、取り忘れ硬貨を回収カセット33に分岐する分岐部37と、リジェクト硬貨をリジェクトボックス35に分岐する分岐部38と、回収硬貨を硬貨カセット30に分岐する分岐部39とが設けられている。
次に、受皿部14の構成について説明する。図2は、受皿部14の構成を説明するための断面模式図である。図2(a)は受皿部14の底面を閉じた状態を示し、同図(b)は受皿部14の底面を開いた状態を示している。また、図2(c)は、受皿部14の底面を閉じた状態で、受皿部14に振動を付与する際の状態を示している。
受皿部14は、前面部51と、後面部52と、前面部51及び後面部52の間で断面が凹曲面状に形成された底面部53と、左右両側の側面部54とで構成され、上方へ向けて開口されている。前面部51、後面部52、底面部53及び左右両側面部54から成る受皿本体55は、底面の一部に、開閉可能なゲート部56を有している。図2(b)に示すようにゲート部56を開放すると、放出口57から下方へ硬貨が放出されるようになっている。また、後面部52の上部側には、第2搬送路部19の前端から放出される硬貨を受け入れる図示しない受入口が形成されている。
ゲート部56の内面は受皿本体55の底面部53と連続する凹曲面状に形成され、ゲート部56の内面には、硬貨の貼り付きを防止するために、内面から所定高さで突出した複数のリブ58が前後方向に配設されている。
ゲート部56の一端である前端は支軸59によって揺動可能に支持されている。ゲート部56は、支軸59を支点として、図2(a)に示す受皿本体55の底面を閉鎖する閉鎖位置と、同図(b)に示す受皿本体55の底面を開放する開放位置との間で開閉可能とされている。ゲート部56の開閉移動する他端である後端には、ゲート部56の閉鎖位置で受皿本体55の放出口57を形成する縁部に当接する当接部60が形成されている。ゲート部56の後端外面には、ロックピン61が取り付けられている。このロックピン61は、支軸59と平行な軸によって回転自在に支持されたローラで構成されている。
受皿部14には、受皿部14内の底部に残留する硬貨を検知するための検知センサ100、110が配設されている。検知センサ100、110として、例えば、受皿本体55の両側の側面部54に形成された複数の検知孔を通じて、閉鎖位置のゲート部56の上面に沿って検知光を投受光するフォトインタラプタ等の光学センサが用いられ、検知光の透光状態に基づいて残留物の有無を検知する。受皿部14には、図2に示した以外にも受皿部14内の物体を検知するための検知センサが設けられているが、これらについての詳細は後述する。
受皿部14の後側には、ゲート部56を開閉する開閉機構66と、ゲート部56を閉鎖位置でロックするロック機構67と、ゲート部56を含む受皿部14全体に振動を付与する振動付与機構68とが配設されている。なお、ロック機構67は、開閉機構66の一部を構成するものである。
図2(a)に示すように、開閉機構66は、駆動部としてのモータ71と、このモータ71の駆動によりゲート部56を開閉させる連動部72とを有している。連動部72は、モータ71の駆動軸73に取り付けられたカム74、このカム74によって揺動するレバー75及びこのレバー75とゲート部56とを連結するリンク76を有している。カム74の側面にはカムピン77が突設されている。上端の支軸78を支点として前後方向に揺動可能なレバー75には、カムピン77が係合するカム溝79が形成されている。リンク76の一端はゲート部56の前後方向中間部に連結軸80で回転自在に連結され、リンク76の他端はレバー75の下端に連結軸81で回転可能に連結されている。モータ71の駆動により、カム74が時計回り方向に回転して、カムピン77でレバー75を時計回り方向に揺動させることにより、図2(b)に示すように、リンク76を介してゲート部56を開放させる。また、開放状態から、モータ71の駆動を逆回転して、カムピン77でレバー75を反時計回り方向に揺動させることにより、リンク76を介してゲート部56を閉鎖させる。
ロック機構67は、ゲート部56に設けられたロックピン61と、このロックピン61に接触して、閉鎖位置にあるゲート部56をロックするロック部材としてのロックレバー88とを有している。ロックレバー88は、受皿本体55の外面に突設された支持片89に支軸90で揺動可能に支持されている。ロックレバー88は、支軸90を支点として、図2(a)に示すように閉鎖位置にあるゲート部56のロックピン61に接触してゲート部56をロックするロック位置と、同図(b)に示すようにロックピン61から下方に離反してゲート部56のロックを解除するロック解錠位置との間で揺動可能とされている。支軸90には、ロックレバー88をロック位置へ向けて揺動するように付勢する付勢部材としてのねじりばね91が配置されている。
ロックレバー88の先端には、ロックピン61に接触する略L字形のロック部92が形成されている。ロックレバー88のロック位置では、ロック部92が、ねじりばね91の付勢により、ロックピン61の前側からゲート部56を閉じる方向、すなわちゲート部56の当接部60を受皿本体55に当接させる方向へ向けて、ロックピン61を押し付ける。
ロックレバー88の側部には、支軸90を支点としてロックレバー88と一体に揺動するカムレバー93が配置されている。このカムレバー93の端部がカム74の周面に対向し、カム74の回転位置に応じて揺動する。すなわち、カムレバー93の端部が回転するカム74で押され、カムレバー93が反時計回り方向に揺動することにより、ロックレバー88がねじりばね91の付勢に抗して、図2(a)に示す状態から同図(c)に示す状態となって、ロック位置からロック解除位置に移動する。また、回転するカム74がカムレバー93の端部を押すのを解除することにより、ねじりばね91の付勢によって、図2(c)に示す状態から同図(a)に示す状態となって、ロックレバー88がロック解除位置からロック位置に移動する。
ロック機構67には、ロックレバー88がロック位置にあることを検知するロック検知部94が配設されている。このロック検知部94は、カムレバー93の揺動域に対向配置されたセンサ95を有している。このセンサ95は、検知光を投受光するフォトインタラプタであり、図2(a)に示すように検知光が透光状態にあるときにロックレバー88がロック位置にあることを検知し、図2(b)及び(c)に示すようにカムレバー93で検知光が遮光状態となるときにロックレバー88がロック解除位置にあることを検知するように構成されている。
また、振動付与機構68は、ゲート部56が閉鎖位置にある状態(回転位置検知部82のセンサ84が透光状態にある状態)で、モータ71を正逆方向に回転駆動し、ロックレバー88をロック位置とロック解除位置とに交互に移動させることにより、ロックレバー88をゲート部56のロックピン61に繰り返し接離させて、受皿部14全体に振動を付与する。したがって、振動付与機構68は、ロック機構67の構成を共用している。
次に、受皿部14に設けられた検知センサの種類と配置位置について説明する。図3は、受皿部14に設けられた検知センサの種類及び設置位置と、受皿部14の動作を説明するための模式図である。なお、以下では、例えば投光部101a及び受光部101bから成る光学センサを、光学センサ101と記載する。
図3に示すように、受皿部14の底面には、受皿部14内の硬貨を検知するための硬貨検知センサ100が設けられている。硬貨検知センサ100は、投光部101a〜103a及び受光部101b〜103bから成る3つの光学センサ101〜103によって構成されている。
図4は、受皿部14の検知センサの配置位置と各センサで投光部から受光部へ照射される検知光の光路とを説明するための模式図である。図4(a)及び(b)は、それぞれ図3に示す受皿部14を、上方(Z軸正方向側)から見た図と側方(Y軸正方向側)から見た図を示している。また、図4(c)は、投光部111aから受光部111bへ至る光路に利用されるプリズムを説明する図である。図4では、検知光の光路を破線で示している。
硬貨検知センサ100では、図4(a)に示すように、受皿部14の一方の側面部54に配置された投光部101a〜103aからY軸正方向に向けて照射された検知光が、受皿部14の他方の側面部54に設けられた受光部101b〜103bで受光される。
3つの光学センサ101〜103は、硬貨処理装置11に投入される可能性がある全ての種類の硬貨について、硬貨が1枚だけ投入された場合でも、硬貨検知センサ100によって受皿部14の底面にあるこの硬貨を検知できるように、それぞれの位置を調整して配置されている。
図3に示すように、硬貨検知センサ100の上方には、過って棒金硬貨が投入された場合に、受皿部14の底面に残る棒金硬貨を異物として検知できるように、棒金硬貨検知センサ110が設けられている。棒金硬貨検知センサ110は、投光部111a及び受光部111bから成る1つの光学センサ111によって構成されている。図4(a)に示すように、受皿部14の一方の側面部54に配置された投光部111aからY軸負方向に向けて照射された検知光は、図4(c)に示すように他方の側面部54に配置されたプリズム112に入射する。図4(c)に示すように、プリズム112内で反射されて、入射方向から180度転換してY軸正方向に向けて出射された検知光は、同図(a)に示すように投光部111aと同じ側の側面部54に配置された受光部111bで受光される。このように、棒金硬貨検知センサ110では、1つの光学センサ111により、投光部111aからプリズム112へ至る光路上と、プリズム112から受光部111bへ至る光路上との2つの光路上で、検知光を遮光する棒金硬貨等の物体を検知できるようになっている。
光学センサ111は、硬貨処理装置11に投入される可能性がある全ての種類の硬貨について、棒金硬貨が1本だけ投入された場合でも、棒金硬貨検知センサ110によってこれを検知できるように位置を調整して配置されている。
図3に示すように、受皿部14の上部には、誤ってキャッシュカードやクレジットカード等のカードが投入された場合に、受皿部14に残るカードを異物として検知するためカード検知センサ121が設けられている。カード検知センサ121は、受皿部14の前面上方側に配置された投光部121aと、後面側で投光部121aよりも低い位置に配置された受光部121bとによって構成される。
図4(a)に示すように上方から見た場合には、前面部51に配置された投光部121aからX軸負方向に向けて照射された検知光が、後面部52に配置された受光部121bで受光される。また、図4(b)に示すように側方から見た場合には、投光部121aからX軸負方向側にX軸と角度を成すようにして斜め下向きに照射された検知光が受光部121bによって受光されることになる。
図5は、受皿部14に誤投入されたカード200がカード検知センサ121によって検知される場合の例を示す模式図である。このように、受皿部14に投入されたカード200によって投光部121aと受光部121bとの間で検知光が遮光されることにより、カード200の存在が検知される。カード200は、長辺がY軸と平行になるような向きで投入される場合や短辺がY軸と平行になるような向きで投入される場合がある。また、受皿部14内でのカード200の傾きも様々な角度を取り得る。カード検知センサ121は、受皿部14内でカード200が取り得る様々な位置や姿勢を考慮して、位置を調整して配置されている。
図3に示すように、受皿部14の上部には、受皿部14に投入された硬貨の量が、受皿部14に貯留可能な量を超えた場合に、これを検知するためのフル検知センサ131、132が設けられている。フル検知センサ131、132は、受皿部14の前面上方側に配置された投光部131a、132aと、後面側に配置された受光部131b、132bとによって構成される。
図4(a)に示すように上方から見た場合には、前面部51に配置された投光部131a、132aからX軸負方向に向けて照射された検知光が、後面部52に配置された受光部131b、131bで受光される。また、図4(b)に示すように側方から見た場合には、投光部131a、132aからX軸負方向に向けて照射された検知光が、受光部131b、132bによって受光されることになる。なお、図3及び図4では、フル検知センサ131、132の投光部131a、132aと受光部131b、132bとが略同じ高さに配置された例を示しているが、これは一例であって、投光部131a、132aと受光部131b、132bを配置する高さは、受皿部14に投入された硬貨の量が所定量を超えたことを検知できるように設定される。例えば、後面部52に配置された受光部131b、132bを、前面部51に配置された投光部131a、132aより低い位置に配置する場合もある。
なお、各検知センサを、硬貨検知センサ100、棒金硬貨検知センサ110、カード検知センサ121及びフル検知センサ131、132として説明したが、センサの呼称が検出対象を限定するものではない。例えば、フル検知センサ131、132は、硬貨の他に、受皿部14に投入されたカード200や紙幣等の異物を検知したり、受皿部14へ硬貨を投入する顧客の手を検知したりするためにも利用される。また、例えば、カード検知センサ121は、カード200の他に、誤って投入された紙幣、レシートや紙くずといった紙片、顧客の手、硬貨等を検知するために利用される。また、例えば、棒金硬貨検知センサ110及び硬貨検知センサ100についても、カード200、紙幣、紙片等、様々な物体を検知するために利用することができる。
各検知センサでは、受皿部14内に硬貨等の物体がある場合でも、投光部から照射されて受光部で受光される検知光が完全に遮光されない場合がある。また、対向する投光部及び受光部の間で検知光が完全に遮光された場合でも、他の検知センサの投光部から検知光を受光する場合もある。このため、硬貨処理装置11では、受光部で受光する光の変動量に基づいて物体が検知されたか否かを判定することができる。具体的には、予め設定された所定のしきい値を超えて受光量が低下した場合に、このセンサで物体が検知されたと判定される。ただし、物体の検知方法がこれに限定されるものではなく、検知光が透光状態及び遮光状態のいずれの状態にあるかに基づいて物体を検知できる場合には、遮光状態にある場合に物体が検知されたと判定する態様であっても構わない。
次に、受皿部14に設けられた硬貨検知センサ100によって受皿部14内の硬貨を検知する方法について説明する。図3に示すように、硬貨処理装置11は、硬貨有無判定部1と、この硬貨有無判定部1に接続されたシャッター開閉制御部2、ゲート部開閉制御部3、センサ信号監視部4及び振動付与機構制御部5とを有している。
シャッター開閉制御部2は、受皿部14の上方に設けられたシャッター15の開閉を制御する機能を有する。例えば、入金処理時には、受皿部14への硬貨の投入を受け付ける際にシャッター15が開放され、受皿部14に投入された硬貨を装置内へ繰り出す際に閉鎖される。また、出金処理時には、受皿部14へ投出された硬貨を抜き取る際にシャッター15が開放され、硬貨の抜き取り完了後に閉鎖される。なお、シャッター15は、硬貨処理装置11に備えられる場合の他、硬貨処理装置11を内蔵するATM本体に備えられ、シャッター15の開閉に関する情報をATM側から取得する態様であっても構わない。
ゲート部開閉制御部3は、受皿部14底面に開閉可能に設けられたゲート部56の開閉を制御する機能を有する。例えば、入金処理時には、受皿部14へ投入された硬貨を、シュート25を経て繰出部21へ落下させるために、ゲート部56が開放される。また、例えば、出金処理時に、受皿部14に残留する取り忘れ硬貨がある場合には、この取り忘れ硬貨を回収するためにゲート部56が開放される。そして、受皿部14の硬貨が落下した後、ゲート部56は閉鎖される。
センサ信号監視部4は、硬貨検知センサ100、棒金硬貨検知センサ110、カード検知センサ121及びフル検知センサ131、132と接続されており、各センサから出力される信号を監視する機能を有する。具体的には、各センサの受光部から、受光量に応じて出力される信号の変動量を監視する。センサ信号監視部4によって監視される変動量が、各センサで検知対象物毎に設定されたしきい値を超えた場合に、検知対象物が検知されたと判定される。
なお、本実施形態では、硬貨検知センサ100についてのみ、受光量の変動量を数値で監視して物体が検知されたか否かを判定する。そして、他の検知センサ110、121、131、132では、所定しきい値を超えて受光量が低下した場合に遮光されたとみなして、透光状態及び遮光状態のいずれの状態にあるかに基づいて物体が検知されたか否かを判定する。以下では、硬貨検知センサ100の受光量の変動量に基づいて硬貨の有無を検知する方法について説明するが、例えば、図5に示すように、受皿部14に投入されたカード200によって投光部121aから受光部121bへ至る検知光が遮光された場合に、カード200が検知されたと判定される。
また、センサ信号監視部4は、硬貨検知センサ100のように複数の光学センサ101〜103で構成されるセンサについては、それぞれの光学センサ101〜103で受光量の変動量を監視する。これにより、受光量が変動した光学センサの位置や数、光学センサの総数に対する受光量が変動した光学センサ数の割合等に基づいて硬貨の有無を判定することができる。
振動付与機構制御部5は、振動付与機構68を制御して受皿部14に振動を付与する機能を有する。例えば、入金処理時に、ゲート部56を開いて受皿部14の硬貨を下方の繰出部21に放出した後、受皿部14に引っ掛かるなどして残留した硬貨が無いことを確認するため、残留した硬貨があればこれが落下して底部へ移動するよう、受皿部14に振動を付与する。
硬貨有無判定部1は、シャッター開閉制御部2、ゲート部開閉制御部3、センサ信号監視部4及び振動付与機構制御部5から取得した情報を利用して、受皿部14内の硬貨の有無を判定する機能を有する。また、硬貨有無判定部1は、受皿部14内で検知した物体の情報を検知履歴として記憶する機能を有している。
図3には示していないが、硬貨有無判定部1は、硬貨処理装置11の動作を制御する制御部や硬貨処理装置11が内蔵されるATMの制御部に接続されており、硬貨処理装置11及びATMから取得した情報を利用して、硬貨処理装置11及びATMで実行中の処理内容や装置の状態等を認識する機能を有している。硬貨有無判定部1は、例えば、ATMが入金処理中又は出金処理中であるとか、入出金処理を行わない待機中である等、実行中の処理内容を認識することができる。また、例えば、判定前に行われた処理内容に基づいて、入金処理で顧客により受皿部14に硬貨が投入されるのを待っている状態にあるとか、出金処理で顧客により受皿部14から硬貨が抜き取られるのを待っている状態にある等、装置の状態を認識することができる。この他、硬貨有無判定部1は、受皿部14の硬貨を放出して硬貨処理装置11内に収納する処理を行った際に繰出部21から繰り出されて搬送路17によって搬送される硬貨の有無に関する情報等、硬貨処理装置11内で処理された硬貨に関する情報を取得する機能も有している。
また、硬貨有無判定部1は、受皿部14内の硬貨の有無を判定した判定結果を、硬貨処理装置11の制御部及びATMの制御部に送信する機能を有している。硬貨処理装置11及びATMでは、硬貨有無判定部1から判定結果を受信した制御部が、判定結果に基づいて各部を制御する。例えば、硬貨有無判定部1による判定結果から、異常が発生したことを認識すると、硬貨処理装置11やATMで実行中の処理を停止してエラーダウンする制御を行う。
図6は、硬貨有無判定部1によって受皿部14内に硬貨があると判定される場合の例を示す模式図である。硬貨検知センサ100を構成する3つの光学センサ101〜103は、図6(a)に示すように受皿部14の底面付近に硬貨201がある場合に、2つ以上のセンサの受光量が第1しきい値以上変化するように配置されている。言い換えれば、センサ信号監視部4により、3つの光学センサ101〜103のうち2つ以上の光学センサで、受光量が第1しきい値以上低下したことが検出された場合に、硬貨有無判定部1は、受皿部14で硬貨201が検知されたと判定することができる。
受皿部14はY軸方向から見た断面形状が凹曲面状に形成され、内面には硬貨の貼り付きを防止する複数のリブ58が設けられているので、多くの場合、装置外から投入された硬貨や収納部22から搬送されて投出された硬貨は、図6(a)に示すような姿勢となる。しかし、投入、投出時の状況によって、硬貨が図6(b)に示すような姿勢となる可能性もある。硬貨処理装置11では、硬貨が図6(b)に示すような姿勢となった場合でも、これを検知できるようになっている。
具体的には、硬貨検知センサ100を構成する3つの光学センサ101〜103は、図6(b)に示すように受皿部14内に硬貨201がある場合に、硬貨検知センサ100を構成する3つの光学センサ101〜103のうち1つのセンサの受光量が第2しきい値以上変化するように配置されている。言い換えれば、センサ信号監視部4により、3つの光学センサ101〜103のうち1つ以上の光学センサで、受光量が第2しきい値以上低下したことが検出された場合に、硬貨有無判定部1は、受皿部14で硬貨が検知されたと判定することができる。
なお、図6は、硬貨201があると判定される場合の一例を示したものであり、第1しきい値及び第2しきい値は、受皿部14の硬貨201が検知される様々な場合に基づいて設定される。例えば、本実施形態に係る硬貨処理装置11では、受皿部14の形状、受皿部14に配置された光学センサ101〜103の配置位置、光学センサ101〜103のセンサ特性等から、図6(a)に示す場合に比べて、同図(b)に示す場合の方が、光学センサ103の受光量の低下量が大きくなる。このため、第2しきい値として、第1しきい値より大きい値が設定される。例えば、第1しきい値が10%、第2しきい値が15%と設定されると、受皿部14内に何もない状態の各光学センサ101〜103の受光量を100%として、2つ以上のセンサで受光量が10%以上変動した場合又は1つ以上のセンサで受光量が15%以上変動した場合に、受皿部14で硬貨が検知されたと判定することができる。
光学センサ101〜103の受光量のみに基づいて、受皿部14内の硬貨の有無を判定する従来装置では、埃等の異物を硬貨であると誤判定する場合がある。図7は、受皿部14内で埃等の異物202が検知される場合の例を示す模式図である。図7に示すように、例えば、異物202によって光学センサ102の光路が遮られて、受光量が第2しきい値以上低下すると、従来装置では受皿部14で硬貨が検知されたと誤判定される。
本実施形態に係る硬貨処理装置11では、光学センサ101〜103の受光量に加えて、シャッター開閉制御部2、ゲート部開閉制御部3及び振動付与機構制御部5から取得した情報と、硬貨処理装置11の制御部及びATMの制御部から取得した情報とを利用することにより、図7に示すような状態でも、受皿部14内で検知された物体は硬貨ではなく埃等の異物202であると判定することができる。以下、硬貨検知センサ100を構成する光学センサ101〜103からの出力信号に加えて、他の情報を利用して受皿部14内の硬貨の有無を判定する方法について説明する。
まず、硬貨処理装置11が待機状態にあるときに受皿部14内の硬貨を検知する方法について説明する。図8は、硬貨処理装置11が待機中であるときに受皿部14内の硬貨の有無を判定する方法を説明するためのフローチャートである。待機中とは、入金処理や出金処理が行われていない状態を示す。例えば、入金処理や出金処理を完了した後に表示部に情報表示がされている状態や、表示部の表示を消灯するなどして消費電力を抑えた省エネルギー動作モードの状態にあるときに、待機中であるとして、図8に示す方法で硬貨の有無が判定される。
硬貨有無判定部1は、硬貨処理装置11が待機中であることを認識すると、センサ信号監視部4からの情報に基づいて、硬貨検知センサ100の出力の変動量を監視する(ステップS11)。具体的には、硬貨検知センサ100を構成するそれぞれの光学センサ101〜103の受光部で受光する受光量の変動量を監視する。
そして、硬貨検知センサ100の出力変動がなければ(ステップS11;No)、硬貨検知センサ100の監視を継続する。具体的には、硬貨検知センサ100を構成する3つの光学センサ101〜103のうち、2つ以上の光学センサの受光量が第1しきい値以上低下した場合又は1つ以上の光学センサの受光量が第2しきい値以上低下した場合に、硬貨検知センサ100の出力が変動したと判定し(ステップS11;Yes)、これらに該当しない場合には変動していないと判定する(ステップS11;No)。
硬貨検知センサ100からの出力が変動すると(ステップS11;Yes)、硬貨有無判定部1は、何個の光学センサで受皿部14内の物体が検知されたのかを確認する(ステップS12)。具体的には、硬貨検知センサ100を構成する3つの光学センサ101〜103のうち何個の光学センサで受光量の低下が所定のしきい値を超えたのかを判定する。
そして、硬貨有無判定部1は、2つ以上の光学センサで受皿部14内の物体が検知されていた場合には(ステップS12;Yes)、受皿部14に硬貨があると判定する(ステップS13)。すなわち、2つ以上の光学センサで受光量が第1しきい値以上又は第2しきい値以上低下していた場合に、検知された物体が硬貨であると判定される。
待機中で受皿部14に硬貨が投入されるはずがない状態であるにも拘わらず、受皿部14内に硬貨があると判定されると、何らかの異常が発生したものとして、硬貨処理装置11及びATMがエラーダウンする。
これに対し、2つ以上の光学センサで物体が検知されたものではない場合、すなわち1つの光学センサのみで物体が検知されていた場合には(ステップS12;No)、硬貨有無判定部1は、受皿部14には硬貨が無いと判定する(ステップS14)。1つの光学センサのみで受光量が第2しきい値以上低下していた場合に、検知された物体は硬貨ではなく埃等の異物であると判定するものである。受皿部14に硬貨が無いと判定されると、ステップS11に戻って、硬貨検知センサ100からの出力信号の監視を再開する。
待機中は、受皿部14内には硬貨が存在せず、受皿部14に硬貨が投入されることもない。待機中であるにも拘わらず硬貨検知センサ100の出力が変動するのは、例えば、受皿部14内で検知されずに残っていた残留硬貨が受皿部14に落下して検知された場合や埃等の異物が受皿部14に落下して検知された場合である。このため、硬貨有無判定部1は、検知した物体が2つ以上の光学センサで受光量が低下するほどの大きさである場合には、この物体を残留硬貨であると判定し、1つの光学センサのみで受光量が低下する程度の大きさである場合には、検知した物体は埃等の異物であり残留硬貨ではないと判定するものである。
次に、入金処理中に受皿部14内の硬貨を検知する方法について説明する。図9は、硬貨処理装置11で入金処理が行われる間に受皿部14内の硬貨の有無を判定する方法を説明するためのフローチャートである。
硬貨有無判定部1は、ATMで入金処理が開始されたことを認識すると、シャッター開閉制御部2により硬貨取引口13のシャッター15が開放されたか否かを監視する(ステップS21)。シャッター15が開放されず閉鎖されている間は(ステップS21;No)、シャッター開閉制御部2の監視を継続する。
例えば、ATMで入金処理を行う顧客が硬貨の入金を指示する操作を行うと、シャッター開閉制御部2により硬貨取引口13のシャッター15が開放されて(ステップS21;Yes)、受皿部14内に硬貨を投入できる状態となる。顧客が、硬貨取引口13から受皿部14へ硬貨を投入すると(ステップS22)、その後、シャッター15が閉鎖される(ステップS23)。
硬貨有無判定部1は、シャッター15が閉鎖された後、センサ信号監視部4からの情報に基づいて硬貨検知センサ100の出力の変動量を確認する(ステップS24)。硬貨検知センサ100を構成する3つの光学センサ101〜103のうち1つ以上の光学センサで物体が検知された場合には(ステップS24;Yes)、受皿部14に硬貨があると判定する(ステップS27)。すなわち、1つ以上の光学センサの受光量が第2しきい値以上低下していた場合又は2つ以上の光学センサの受光量が第1しきい値以上低下していた場合に、検知された物体は硬貨であると判定される。
入金処理中に受皿部14に硬貨が投入されてシャッター15が閉鎖された後の状態であることから、受皿部14の物体を検知した光学センサがあれば、光学センサの数が1つであっても、検知した物体は硬貨であると判定するものである。
一方、硬貨検知センサ100の出力が変化していない場合は(ステップS24;No)、硬貨有無判定部1は、受皿部14に硬貨が無いと判定する(ステップS25)。すなわち、3つの光学センサ101〜103の中に、受光量の変動量が所定しきい値を超えて変動し、物体を検知したと判定されるセンサが無い場合に、受皿部14内に物体は無いと判定する。
受皿部14に硬貨が無いと判定された後、振動付与機構制御部5により振動付与機構68が制御され、受皿部14に振動が付与される(ステップS26)。例えば、受皿部14内の側壁等に引っ掛かるなどして硬貨検知センサ100で検知できない硬貨がある場合でも、受皿部14に振動を付与すれば、硬貨が受皿部14の底面に落下して硬貨検知センサ100によって検知できるようになる。
硬貨有無判定部1は、振動を付与した後、再び、硬貨検知センサ100の出力の変動量を確認する(ステップS29)。受皿部14に振動を付与しても硬貨検知センサ100の出力が変化していない場合は(ステップS29;No)、硬貨有無判定部1は、受皿部14に硬貨が無いと判定し(ステップS30)、受皿部14に投入された硬貨の有無を判定する処理を完了する。
一方、受皿部14に振動を付与した後、硬貨検知センサ100を構成する3つの光学センサ101〜103のうち1つ以上の光学センサで物体が検知された場合には(ステップS29;Yes)、硬貨有無判定部1は、受皿部14に硬貨があると判定する(ステップS31)。すなわち、1つ以上の光学センサの受光量が第2しきい値以上低下していた場合又は2つ以上の光学センサの受光量が第1しきい値以上低下していた場合に、検知された物体は硬貨であると判定される。
なお、シャッター15が閉鎖された直後に硬貨検知センサ100の出力を確認して受皿部14に硬貨があると判定された場合も(ステップS27)、振動付与機構68により受皿部14に振動が付与される(ステップS28)。硬貨検知センサ100により硬貨が検知された場合でも、受皿部14の側壁等に引っ掛かるなどした硬貨が存在する可能性があるため、このような硬貨が受皿部14の底面に確実に落下するように振動を付与するものである。
受皿部14に硬貨があると判定されると(ステップS27、S31)、受皿部14内の硬貨を装置内へ繰り出して収納部22へ収納する入金動作が開始される(ステップS32)。具体的には、ゲート部開閉制御部3によって受皿部14の底面にあるゲート部56が開放されて、受皿部14内の硬貨が下方の繰出部21へ放出される。繰出部21に放出された硬貨は、繰出部21から搬送路17に繰り出されて識別部24に搬送される。そして、識別部24により金種や真偽を識別された硬貨は、識別結果に基づいて、対応する収納部22に金種別に収納される。
受皿部14の硬貨を底面のゲート部56から放出した後、ゲート部開閉制御部3は、ゲート部56を閉鎖する。ゲート部56が閉鎖された後、硬貨有無判定部1は、硬貨検知センサ100の出力の変動量を確認する(ステップS33)。
硬貨有無判定部1は、2つ以上の光学センサで物体が検知された場合には(ステップS33;Yes)、受皿部14に硬貨があると判定する(ステップS35)。すなわち、2つ以上の光学センサで受光量が第1しきい値以上又は第2しきい値以上低下していた場合には、検知された物体が硬貨であると判定される。
これに対し、2つ以上の光学センサで物体が検知されたものではない場合、すなわち1つの光学センサのみで物体が検知された場合又は物体を検知した光学センサが無い場合には(ステップS33;No)、硬貨有無判定部1は、受皿部14には硬貨が無いと判定して(ステップS34)、処理を完了する。1つの光学センサのみで受光量が第2しきい値以上低下しても、検知された物体は硬貨ではなく、埃等の異物であると判定するものである。
受皿部14に硬貨があると判定された場合には(ステップS35)、その後、受皿部14の残留硬貨を処理する動作を行って(ステップS36)、その後に処理を完了する。残留硬貨の処理として、例えば、ステップS32に戻って、再度、受皿部14底面のゲート部56を開放して硬貨を繰出部21に放出し、搬送路17に繰り出して入金する入金動作を行う。そして、入金動作を所定時間又は所定回数行っても、受皿部14に硬貨があると判定され続ける場合には、硬貨処理装置11及びATMはエラーダウンする。
また、受皿部14に硬貨があると判定されて(ステップS35)、受皿部14内の硬貨を繰出部21に放出して搬送路17に繰り出す処理(ステップS36)を行ったにも拘わらず、繰り出された硬貨が無い場合にも、何らかの異常が発生したものとして、硬貨処理装置11及びATMはエラーダウンする。
入金処理時に受皿部14に硬貨が投入されたことを確認する際には(ステップS24、S29)、受皿部14内に硬貨が存在する可能性が高い。このため、硬貨有無判定部1は、1つの光学センサのみで物体を検知した場合でも受皿部14内に硬貨があると判定し、物体を検知した光学センサが存在しない場合にのみ受皿部14内には硬貨が無いと判定する。一方、受皿部14の硬貨をゲート部56から落下させて、受皿部14内の硬貨が無くなったことを確認する際には(ステップS33)、受皿部14内に硬貨が存在しないことが前提となる。このため、硬貨有無判定部1は、検知した物体が2つの光学センサで受光量が低下するほどの大きさである場合には、この物体を残留硬貨であると判定し、1つの光学センサのみで受光量が低下する程度の大きさである場合には、検知した物体は埃等の異物であり残留硬貨ではないと判定するものである。
すなわち、3つの光学センサ101〜103のうち1つの光学センサのみで物体が検知されたという同じ状態であるにも拘わらず、その前段階で行われた処理によって、検知された物体を硬貨であると判定する場合と硬貨ではなく異物であると判定する場合がある。このように、本実施形態に係る硬貨処理装置11では、受皿部14内の硬貨の有無を判定する際に、実行中の貨幣処理の内容や判定の前段階で行われた処理内容に応じて異なる判定結果が得られる点を1つの特徴としている。
次に、出金処理中に受皿部14内の硬貨を検知する方法について説明する。 図10は、硬貨処理装置11で出金処理が行われている間に受皿部14内の硬貨の有無を判定する方法を説明するためのフローチャートである。
ATMで出金処理が開始されると、硬貨処理装置11では、硬貨取引口13のシャッター15を閉鎖したままの状態で、出金対象となる硬貨が金種別の収納部22から繰り出され、搬送路17によって搬送されて受皿部14へ投出される(ステップS41)。
硬貨有無判定部1は、出金処理が開始されて、収納部22から受皿部14へ硬貨が投出されたことを認識すると、センサ信号監視部4からの情報に基づいて硬貨検知センサ100の出力の変動量を確認する(ステップS42)。
そして、硬貨有無判定部1は、1つ以上の光学センサで物体が検知されない場合、すなわち物体を検知した光学センサが存在しない場合には(ステップS42;No)、受皿部14には硬貨が無いと判定する(ステップS43)。3つの光学センサ101〜103の中に、受光量の変動量が所定しきい値を超えて変動し、物体を検知したと判定されるセンサが無い場合に、受皿部14内に物体は無いと判定するものである。
出金処理時に、受皿部14に硬貨が投出されたことを確認する際には、受皿部14内に硬貨が存在することが前提となる。このため、硬貨有無判定部1は、1つの光学センサのみで物体を検知した場合でも受皿部14内に硬貨があると判定し、物体を検知した光学センサが存在しない場合にのみ受皿部14内には硬貨が無いと判定する。そして、受皿部14に硬貨が投出されたにも拘わらず、硬貨有無判定部1により受皿部14内に硬貨が無いと判定されると(ステップS43)、何らかの異常が発生したものとして、硬貨処理装置11及びATMはエラーダウンする。
これに対して、1つ以上の光学センサで物体が検知された場合には(ステップS42;Yes)、硬貨有無判定部1は、受皿部14に硬貨があると判定する(ステップS44)。すなわち、1つ以上の光学センサの受光量が第2しきい値以上低下していた場合又は2つ以上の光学センサの受光量が第1しきい値以上低下していた場合に、検知された物体は硬貨であると判定される。
受皿部14に投出された硬貨の存在が確認されると、シャッター開閉制御部2により硬貨取引口13のシャッター15が開放されて(ステップS45)、受皿部14からの硬貨の抜き取りを監視する処理が開始される。具体的には、硬貨有無判定部1により硬貨検知センサ100の出力の変動量を監視して(ステップS46)、受皿部14の全ての硬貨が抜き取られたか否かを判定する処理が開始される。
硬貨有無判定部1は、硬貨検知センサ100を構成する3つの光学センサ101〜103のうち1つ以上の硬貨センサで物体が検知された場合には(ステップS46;Yes)、受皿部14に残留物があると判定する(ステップS54)。すなわち、1つ以上の光学センサの受光量が第2しきい値以上低下していた場合又は2つ以上の光学センサの受光量が第1しきい値以上低下していた場合に、硬貨又は何らかの残留物が検知されたものとして、受皿部14から硬貨の抜き取り中であると判定される。
シャッター15を開放してからの時間が、予め設定された所定時間を超えていない間は(ステップS55;No)、ステップS46へ戻って硬貨検知センサ100の出力の変動量を監視する処理を継続する。
そして、物体を検知した光学センサが存在しなくなった場合に(ステップS46;No)、硬貨有無判定部1は、受皿部14に投出された全ての硬貨が抜き取られて、受皿部14の残留物が無くなったと判定する(ステップS47)。
受皿部14内の残留物が無くなったと判定されると、シャッター開閉制御部2により硬貨取引口13のシャッター15が閉鎖される(ステップS48)。そして、振動付与機構制御部5により振動付与機構68が制御され、受皿部14に振動が付与される(ステップS49)。例えば、受皿部14内の側壁等に引っ掛かるなどして硬貨検知センサ100で検知できない硬貨が残っていた場合に、受皿部14に振動を付与すれば、硬貨が受皿部14の底面に落下して硬貨検知センサ100によって検知できるようになる。
硬貨有無判定部1は、振動を付与した後、再び、硬貨検知センサ100の出力の変動を確認する(ステップS50)。そして、硬貨検知センサ100を構成する3つの光学センサ101〜103のうち、2つ以上の光学センサで物体が検知された場合に(ステップS50;Yes)、硬貨有無判定部1は、受皿部14に残留硬貨があると判定する(ステップS51)。すなわち、2つ以上の光学センサで受光量が第1しきい値以上又は第2しきい値以上低下していた場合には、検知された物体は硬貨であり、受皿部14に硬貨が残っていると判定される。
受皿部14の残留硬貨が検知されると、ATMの表示部に、受皿部14の残留硬貨の抜き取りを促す情報を表示する(ステップS52)。そして、ステップS45に戻って硬貨取引口13のシャッター15を開いて、残留硬貨の抜き取りを監視する処理を再開する。
一方、受皿部14に振動を付与した後、2つ以上の光学センサで物体が検知されない場合、すなわち1つの光学センサのみで物体が検知された場合又は物体を検知した光学センサが無い場合は(ステップS50;No)、硬貨有無判定部1は、受皿部14には硬貨が無いと判定して(ステップS53)、処理を完了する。1つの光学センサのみで受光量が第2しきい値以上低下しても、検知された物体は硬貨ではなく埃等の異物であり、受皿部14に投出された全ての硬貨が抜き取られたと判定して処理を完了するものである。
シャッター15が開放されてから所定時間を経過しても受皿部14に残留物があると判定されている場合は(ステップS54)、タイムオーバーと判定されて(ステップS55;Yes)、硬貨取引口13のシャッター15が閉鎖される(ステップS56)。
そして、振動付与機構制御部5により振動付与機構68が制御され、受皿部14に振動が付与されて(ステップS57)、その後、 硬貨有無判定部1により硬貨検知センサ100の出力の変動量が再度確認される(ステップS58)。
硬貨有無判定部1は、硬貨検知センサ100を構成する3つの光学センサ101〜103のうち2つ以上の光学センサで物体が検知された場合には(ステップS58;Yes)、受皿部14に硬貨があると判定する(ステップS60)。すなわち、2つ以上の光学センサで受光量が第1しきい値以上又は第2しきい値以上低下していた場合には、検知された物体が硬貨であると判定される。
そして、タイムオーバー後に受皿部14に残留硬貨があると判定された場合には、この残留硬貨を回収する処理を行って(ステップS61)、その後に処理を完了する。回収処理では、受皿部14底面のゲート部56を開いて残留硬貨を繰出部21に放出し、搬送路17に繰り出した残留硬貨を、取り忘れ硬貨として回収カセット33に回収する処理が行われる。
一方、2つ以上の光学センサで物体が検知されたものではない場合、すなわち1つの光学センサのみで物体が検知された場合又は物体を検知した光学センサが無い場合には(ステップS58;No)、硬貨有無判定部1は、受皿部14に硬貨が無いと判定して(ステップS59)、処理を完了する。1つの光学センサのみで受光量が第2しきい値以上低下しても、検知された物体は硬貨ではなく、埃等の異物であると判定するものである。
このように、出金処理時に、受皿部14に出金硬貨が投出されたことを確認する際には(ステップS42)、受皿部14内に硬貨が存在することを前提として、物体を検知した光学センサが1つでも存在すれば硬貨があると判定し、全ての光学センサで物体を検知できない場合には、何らかの異常が発生したと判定される。
また、硬貨取引口13のシャッター15を開いて、受皿部14の全ての硬貨が抜き取られたか否かを検知する間は(ステップS46)、硬貨の抜き取り中に、抜き取りが完了したと誤判定してシャッター15を閉じると危険である。このため、物体を検知した光学センサが1つでも存在すれば、受皿部14に硬貨が残っていると判定して、シャッター15を開いた状態が維持される。
受皿部14の全ての硬貨が抜き取られてシャッター15を閉じた後の判定では(ステップS50)、受皿部14に硬貨が無いことが前提となる。このため、検知した物体が2つの光学センサで受光量が低下するほどの大きさである場合には、この物体を残留硬貨であると判定し、1つの光学センサのみで受光量が低下する程度の大きさである場合には、検知した物体は埃等の異物であり残留硬貨ではないと判定するものである。
また、抜き取り時間として設定された時間を経過したタイムオーバー後の判定では(ステップS58)、受皿部14ある残留物が硬貨であるか否かを判定するが、この判定は、受皿部14に振動を付与して、残留硬貨があればこれを落下させた後に行われる。このため、2つ以上の光学センサで物体を検知した場合に、受皿部14で検知した残留物を硬貨であると判定する。言い換えれば、2つ以上の光学センサで検知できなければ、受皿部14にある残留物は埃等の異物であり硬貨ではないと判定するものである。
このように、3つの光学センサ101〜103のうち1つの光学センサのみで物体が検知されたという同じ状態であるにも拘わらず、硬貨があると判定される場合と硬貨が無いと判定される場合がある。本実施形態に係る硬貨処理装置11では、受皿部14内の硬貨の有無を判定する処理で、前提条件等に応じて異なる判定結果が得られる点を1つの特徴としている。
硬貨処理装置11では、入金処理や出金処理を完了した後、受皿部14に残留する硬貨が無いことを確認して次の処理を受け付け可能な状態とするために装置を初期化するイニシャル処理が行われる。以下、出金処理時にタイムオーバーとなった後に行われるイニシャル処理を例に処理内容を説明する。
図11は、イニシャル処理を説明するためのフローチャートである。出金処理時にタイムオーバーとなり、硬貨が無いと判定された後(ステップS59)又は受皿部14底面のゲート部56を開放して硬貨を回収する処理(ステップS61)を行った後は、受皿部14には硬貨が無いことが前提となる。この後、さらにイニシャル処理を開始して受皿部14底面のゲート部56から硬貨を回収する処理(ステップS71)を行ってから受皿部14に硬貨が残っているか否かを確認する際(ステップS72)、硬貨有無判定部1は、硬貨検知センサ100を構成する3つの光学センサ101〜103のうち、2つ以上の光学センサで物体が検知された場合に(ステップS72;Yes)、受皿部14に残留硬貨があると判定する(ステップS73)。
受皿部14の残留硬貨が検知されると、タイムオーバーであるか否かの判定が行われる(ステップS74)。そして、タイムオーバーであると判定されると(ステップS74;Yes)、受皿部14内の残留硬貨を繰り出せないものとして、硬貨処理装置11及びATMはエラーダウンする。なお、イニシャル処理を開始してからの時間が予め設定された所定時間に達している場合、又は受皿部14底面のゲート部56を開放して硬貨を放出する硬貨回収処理を行った回数が予め設定された所定回数に達している場合に、タイムオーバーであると判定される。
一方、タイムオーバーではないと判定されると(ステップS74;No)、ステップS71に戻り、受皿部14内の硬貨が無くなるまで硬貨を回収するための処理が繰り返される。
硬貨回収処理(ステップS71)を行った後に、2つ以上の光学センサで物体が検知されない場合、すなわち1つの光学センサのみで物体が検知された場合又は物体を検知した光学センサが無い場合は(ステップS72;No)、硬貨有無判定部1は、受皿部14には硬貨が無いと判定する(ステップS75)。
硬貨が無いと判定された後、硬貨有無判定部1は、硬貨回収処理(ステップS71)を行った際に硬貨処理装置11内に繰り出された硬貨があったか否かを確認する(ステップS76)。そして、硬貨処理装置11内に繰り出された硬貨があった場合には(ステップS76;Yes)、処理を完了する。受皿部14の残留硬貨が装置内に繰り出されて受皿部14内の硬貨が無くなり、次の貨幣処理を受け付け可能な状態になったものとして、イニシャル処理を正常終了するものである。
一方、装置内に繰り出された硬貨が無かった場合には(ステップS76;No)、硬貨有無判定部1は、イニシャル処理の直前に行われた出金処理でタイムオーバーとなってから後の処理で、2つ以上の光学センサで物体を検知した履歴が残っているか否かを確認する(ステップS77)。
そして、イニシャル処理を含め、タイムオーバーが発生してから後の処理で、2つ以上の光学センサで物体を検知した履歴が無かった場合には(ステップS77;No)、処理を完了する。タイムオーバーが発生してから一度も2つ以上の光学センサで物体が検知されていない場合には、検知された物体があっても、これは埃等の異物であり、硬貨ではなかったとみなしてイニシャル処理を正常終了するものである。
一方、2つ以上の光学センサで物体を検知した履歴があった場合には(ステップS77;Yes)、硬貨処理装置11及びATMはエラーダウンする。タイムオーバーが発生してから一度でも2つ以上の光学センサで物体を検知した履歴がある場合には、過去に受皿部14内に硬貨が存在していたとみなすことができる。このため、その後の処理で、この硬貨が受皿部14内で検知されず(ステップS75)かつ装置内に繰り出されていない(ステップS76;No)場合には、何らかの異常が発生したものとしてエラーダウンするものである。言い換えれば、ステップS77の判定では、タイムオーバーが発生した後に硬貨を検知した履歴があれば、エラーダウンする。
このように、本実施形態に係る硬貨処理装置11では、硬貨検知センサ100による物体の検知履歴を参照して、過去に受皿部14で硬貨が検知されていたか否かに基づいて、硬貨の有無に関する判定を行う点を1つの特徴としている。
図12は、図8〜図10で示した各処理での判定条件と判定結果をまとめたものである。硬貨検知センサ100を構成する光学センサ101〜103による物体の検知結果と硬貨の有無を判定した判定結果との関係を示している。
待機時に受皿部14の硬貨を確認する際(図12(a))、入金処理で受皿部14の入金硬貨を装置内へ繰り出した後に受皿部14内の残留硬貨の有無を確認する際(同図(c))、出金処理時に受皿部14の出金硬貨が抜き取られた後に受皿部14内の残留硬貨の有無を確認する際(同図(f))には、受皿部14には硬貨が存在しないはずであるから、1つのセンサで受皿部14の物体が検知されても、これは埃等の異物を検知したもので、受皿部14には硬貨は無いと判定する。
入金処理時に受皿部14に入金硬貨が投入されたことを確認する際(図12(b))、出金処理時に受皿部14に出金硬貨が投出されたことを確認する際には(図12(d))、受皿部14には硬貨があるはずであるから、1つのセンサのみで受皿部14の物体が検知された場合でも、これを硬貨であると判定する。
出金処理時に受皿部14の硬貨が抜き取られないままタイムオーバーとなって、受皿部14に振動を付与した後に、残留物が硬貨であるか否かを確認する際には(同図(g))、残留物が硬貨であれば受皿部14の底面に落下して2つ以上のセンサで検知されるはずであるから、1つのセンサで受皿部14の物体が検知されても、これは埃等の異物を検知したもので、受皿部14には硬貨は無いと判定する。
また、出金処理時に、シャッター15が開いた状態で受皿部14からの硬貨の抜き取りを監視する際には(図12(e))、センサが1つでも反応している間は、硬貨の抜き取り中である可能性がありシャッター15を閉じるのは危険であるため、受皿部14に硬貨があると判定することによりシャッター15を開いた状態を維持する。
なお、本実施形態では、受皿部14の底面にある硬貨を検知する硬貨検知センサ100が、3つの光学センサによって構成される例を示したが、硬貨検知センサ100を構成する光学センサの数がこれに限定されるものではない。図8〜11では、物体を検知したセンサ数が1個又は2個である場合を境として、受皿部14内で検知された物体が硬貨であるか否かを判定する方法を示したが、これらのセンサ個数は、硬貨検知センサ100を構成する光学センサの総数に応じて適宜設定される。また、センサ個数を境として判定する方法に限定されず、硬貨検知センサ100を構成する光学センサの総数と物体を検知した光学センサ数との比に応じて判定を行ってもよいことは言うまでもない。また、光学センサが一対の投光部及び受光部で構成される例を示したが、本実施形態がこれに限定されるものではなく、例えば、投光部の数より受光部の数が多くてもよいし、投光部の数より受光部の数が少なくてもよい。
上述してきたように、本実施形態に係る硬貨処理装置11では、受皿部14内の硬貨の有無を判定する際に、実行中の貨幣処理、判定の前段階で行われた処理内容、装置の状態等から硬貨が存在する可能性を考慮した判定がなされる。このため、光学センサによる検知結果のみに基づいて判定を行う場合に比べて、硬貨の有無を正確に判定することができる。そして、この結果、硬貨の有無が誤判定されて、硬貨処理装置11や、硬貨処理装置11を内蔵するATM等の貨幣処理装置が、エラーダウンすることを回避することができる。