以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
第1実施形態
図1に示すように、本発明の一実施形態に係るコイル装置2は、たとえばチョークコイル、ノイズフィルタなどとして用いられ、特に好ましくは、車載用として用いられるコイル装置である。
このコイル装置2は、図2に示すように、コア部材(芯材)としてのドラムコア20を有する。ドラムコア20を構成する磁性材料としては、金属、フェライト等の軟磁性材料が挙げられるが、特に限定されない。ドラムコア20は、コイル部10を構成するワイヤ12が、コア20の軸方向に沿って巻回してある巻芯部30を有する。
ワイヤ12としては、特に限定されず、平角線、丸線、撚り線、リッツ線、編組線、AIW(ポリイミドワイヤ)、UEW(ポリウレタンワイヤ)、USTCなどの公知の巻線を用いることができる。ワイヤ12の線径は、特に限定されず、たとえば0.1〜0.5mmである。
巻芯部30の軸方向(Z軸方向)の両端部には、それぞれ第1鍔部40および第2鍔部50が一体的に形成してある。これらの第1鍔部40および第2鍔部50は、巻芯部30に対して、X−Y軸平面に突出している。なお、X軸、Y軸およびZ軸は、相互に垂直であり、Z軸は、巻き軸の軸方向に一致している。
巻芯部30の横断面(X−Y軸平面の断面)は、特に限定されず、正方形断面、長方形断面、円形断面、あるいは、その他の断面形状であっても良いが、本実施形態では、図3に示すように、略正方形または略長方形であり、対向する2辺のの中央部が外側に凸状の円弧形状となっている。
第2鍔部50は、第2軸方向外側端面52と、その反対側に位置する第2軸方向内面53とを有する。第2軸方向内面53に、コイル部10のZ軸方向上端が接触するようになっている。なお、図2では、ワイヤ12を巻芯部30の回りに一重巻きしてコイル部10が形成してあるが、巻き層数は、特に限定されず、2重巻以上に巻回してあっても良い。また、ワイヤ12の巻き方も特に限定されない。
本実施形態では、第1鍔部と第2鍔部との平面形状が、相互に異なり、第2鍔部50の外形サイズが、第1鍔部40の外形サイズよりも大きい。第2鍔部50の具体的な平面形状は、特に限定されないが、本実施形態では、図9に示すように、全体として四角形状を有し、4つの角部に、それぞれ切り欠き部54が形成してある。切り欠き部54における切り欠き形状は、特に限定されず、三角形、台形、四角形、その他の多角形、円弧形、その他の形状が例示される。
切り欠き54を含む第2鍔部50の平面形状は、図9に示すように、第2鍔部50の第2軸方向外側端面52からZ軸方向に第1鍔部40を見た場合には、第1鍔部40は第2鍔部50の内側に位置して見えなくなっている形状である。しかも、第2鍔部50の隣接する二つの角部に形成してある切り欠き部54においては、継線部の少なくとも一部のみが見えるようになっている。継線部については後述する。
図2に示すように、第1鍔部40は、第1軸方向外側端面42と、その反対側に位置する第1軸方向内面43とを有する。第1軸方向内面43に、コイル部10のZ軸方向下端が接触するようになっている。第1鍔部40の第1軸方向外側端面42には、それぞれ接着領域80の接着剤を介して、第1端子電極60および第2端子電極70が接着してある。
第1端子電極60および第2端子電極70は、それぞれX軸に対称な形状を有し、その詳細については後述するが、それらは、たとえばタフピッチ鋼、リン青銅、黄銅、鉄、ニッケルなどの導電性金属で構成してある。
第1鍔部40の具体的な平面形状は、特に限定されないが、本実施形態では、図4および図6Aに示すように、X−Y軸平面において第2鍔部50と重心位置が略同じ(巻芯部30とも略同じ)形状である。しかも、この第1鍔部40は、4つの角部において、第2鍔部50の4つの角部に形成してある切り欠き54よりもそれぞれ大きな切り欠き44を有している形状である。
図6Aに示す第1鍔部40のY軸方向の最大幅Ly1は、第2鍔部50のY軸方向の最大幅Ly2と略同一またはそれ以下であり、第1鍔部40におけるY軸方向の両側面40aは、第2鍔部50におけるY軸方向の両側面50aと略一致またはY軸方向に引っ込んでいる。また、第1鍔部40のX軸方向の最大幅Lx1は、第2鍔部50のX軸方向の最大幅Lx2と略同一またはそれ以下であり、第1鍔部40におけるX軸方向の両側面40bは、第2鍔部50におけるX軸方向の両側面50bに対して、Y軸方向の中央部以外は、ほとんどの部分で、X軸方向に引っ込んでいる。
図4に示すように、第1鍔部40におけるX軸方向の両側面40bには、Y軸方向の中央部においてX軸方向の外側に突出する円弧状の凸部が形成してある。また、各凹部44には、立上部対向平面45a,45b,46a,46bと、これらから内側に凹んでいる端子隙間用凹部47a,47b,47a,47bとが形成してある。立上部対向平面45a,45b,46a,46bと、端子隙間用凹部47a,47b,47a,47bと、端子電極60,70との関係については後述する。
図6Aおよび図6Bに示すように、第1端子電極60および第2端子電極70は、それぞれX軸方向に長いフラットな取付板部61,71を有する。これらの取付部61,71は、図2に示すように、第1鍔部40の第1軸方向外側端面42に対して各接着領域80の接着剤によりそれぞれ接着される。
図6Aおよび図6Bに示すように、取付板部61および取付板部71のX軸方向の一端には、それぞれ立上部62,72がZ軸方向に立ち上がるように一体に形成してあり、他端には、それぞれ補助立上部63,73がZ軸方向に立ち上がるように一体に形成してある。
立上部62,72は、図4に示すように、第1鍔部40の一方の側面40bに形成してある立上部対向平面45a,46aにそれぞれ面接触可能になっていると共に、端子隙間用凹部47a,48aとの間で隙間を形成する。補助立上部63,73は、図4に示すように、第1鍔部40の他方の側面40bに形成してある立上部対向平面45b,46bにそれぞれ面接触可能になっていると共に、端子隙間用凹部47b,48bとの間で隙間を形成する。
立上部対向平面45a,45bに立上部62,63がそれぞれ面接触することで、第1端子電極60は、第1鍔部40に対してX軸方向の位置決めが成される。また、第1端子電極60は、導電性金属で構成され、バネ性を有することから、立上部対向平面45a,45b間のX軸方向長さに多少の製造バラツキがあったとしても立上部62,63は、立上部対向平面45a,45bに良好に密着する。なお、立上部対向平面45a,45bと立上部62,63との間には、多少の隙間があっても良い。立上部62,63の間の距離は、金属板の折り曲げ加工により比較的に高精度であり、立上部対向平面45a,45b間の距離の製造バラツキのために多少の隙間があったとしても、第1端子電極60は、第1鍔部40に対してX軸方向に許容誤差範囲内で位置決めできる。
また同様に、立上部対向平面46a,46bに立上部72,73がそれぞれ面接触することで、第2端子電極70は、第1鍔部40に対してX軸方向の位置決めが成される。また、第2端子電極70は、導電性金属で構成され、バネ性を有することから、立上部対向平面46a,46b間のX軸方向長さに多少の製造バラツキがあったとしても立上部72,73は、立上部対向平面46a,46bに良好に密着する。なお、立上部対向平面46a,46bと立上部72,73との間には、多少の隙間があっても良い。立上部72,73の間の距離は、金属板の折り曲げ加工により比較的に高精度であり、立上部対向平面46a,46b間の距離の製造バラツキのために多少の隙間があったとしても、第2端子電極70は、第1鍔部40に対してX軸方向に許容誤差範囲内で位置決めできる。
取付板部61,71のX軸方向の一端に形成してある立上部62,72のZ軸方向の上端には、継線部としての載置部64,74がそれぞれ一体に形成してある。これらの載置部64,74は、図5に示すように、第1鍔部40の第1軸方向内面43と略面一となるように立上部62,72に対して折り曲げて形成してある。なお、図5では、立上部62と載置部64のみが図示してあるが、立上部72および載置部74に関しても同様である。
図6A,図6Bに示すように、継線部としての載置部64には、立上部62から近い順に、固定用爪部65と溶接用爪部66とが、載置部64からY軸方向の外側に伸びるように形成してある。固定用爪部65と溶接用爪部66との間には、Y軸方向に伸びるスリット67が形成してある。スリット67のX軸方向幅は、特に限定されないが、好ましくは0.1〜0.5mmである。
溶接用爪部66の先端には、その基端部よりも幅が広い幅広部68が形成してあり、その部分が主として溶接部となる。ただし、幅広部68は、必ずしも形成しなくとも良い。また、本実施形態では、固定用爪部65のX軸方向幅よりも溶接用爪部66のX軸方向幅が大きいが、ワイヤのリード部の線径などに応じて、同一であっても逆の関係になるようにしても良い。
また、同様に、載置部74には、立上部72から近い順に、固定用爪部75と溶接用爪部76とが、載置部74からY軸方向の外側に伸びるように形成してある。固定用爪部75と溶接用爪部76との間には、Y軸方向に伸びるスリット77が形成してある。スリット77のX軸方向幅は、スリット67と同様であるが、必ずしも同一である必要はなく異なっていても良い。
溶接用爪部76の先端には、その基端部よりも幅が広い幅広部78が形成してあり、その部分が主として溶接部となる。ただし、幅広部78は、必ずしも形成しなくとも良い。また、本実施形態では、固定用爪部75のX軸方向幅よりも溶接用爪部76のX軸方向幅が大きいが、ワイヤのリード部の線径などに応じて、同一であっても逆の関係になるようにしても良い。
本実施形態では、図2に示すように、第1軸方向外側端面42と各取付板部61,71とは、巻芯部30に近い内側位置に存在する接着領域80で接着され、巻芯部30から離れている鍔部外周位置には、第1軸方向外側端面42と取付板部61,71とが実質的に接着されていない非接着領域82が存在する。
すなわち、接着領域80は、巻芯部30の軸方向(Z軸方向)から見て、巻芯部30に重複する位置に形成されている。巻芯部30の軸方向(Z軸方向)から見て、接着領域80と巻芯部30とが重複する面積は、接着領域80の全体面積に比較して、好ましくは、40%以上、さらに好ましくは60%以上である。
本実施形態では、一対の端子電極60,70の取付板部61,71が並んでいる方向(Y軸方向)の内側に、それぞれ接着領域80が形成され、一対の端子電極60,70の取付板部61,71が並んでいる方向の外側に、それぞれ非接着領域82が形成してある。さらに本実施形態では、第1軸方向外側端面42と取付板部61,71との間では、図6Bに示すように、一対の端子電極60,70の取付板部61,71が並んでいる方向(Y軸方向)に垂直なX軸方向の両端部においても、副非接着領域82aが形成してあることが好ましい。なお、図2に示すように、第1軸方向外側端面42と取付板部61,71との間では、一対の端子電極60,70の取付板部61,71のY軸方向の内側端部にも、第2副非接着領域82bを形成しても良い。ただし、それぞれの第2副非接着領域82bのY軸方向幅Ly7は、小さい程好ましく、好ましくは0であり、接着領域80にある接着剤はY軸方向の内側にさらにはみ出していても良い。
接着領域80におけるY軸方向幅Ly5は、取付板部61,71のY軸方向幅Ly3に比較して、Ly5/Ly3が、好ましくは0.3〜0.7である。各非接着領域82のY軸方向幅Ly6は、取付板部61,71のY軸方向幅Ly3から第2副非接着領域82bのY軸方向幅Ly7と接着領域80のY軸方向幅Ly5を引いた値となる。
なお、取付板部61と取付板部71とでは、接着領域80のY軸方向幅Ly5は、同じであることが好ましいが、必ずしも同じで無くても良い。また、取付板部61と取付板部71とでは、それらのY軸方向幅Ly3も同じであることが好ましいが、必ずしも同じである必要はない。Y軸方向幅Ly3は、これらの取付板部61,71間のY軸方向隙間Ly4で絶縁されるように決定され、各Y軸方向幅Ly3は、図6Aに示す第1鍔部40のY軸方向の最大幅Ly1に比較して、好ましくは、Ly3/Ly1が0.2〜0.45となるように決定される。
また、図6Bに示す接着領域80のX軸方向幅Lx4は、取付板部61,71のX軸方向幅(立上部62,72と補助立上部63,73との間のX軸方向長さ)Lx3と略同じであり、Lx4/Lx3は、好ましくは0.5〜1であり、少なくともいずれかのX軸方向の端部に副非接着領域82aを形成する観点からは、好ましくは0.6〜0.8である。本実施形態では、接着領域80における接着剤層のZ軸方向厚みは、特に限定されないが、好ましくは5〜50μmである。
非接着領域82では、第1軸方向外側端面42と取付板部61,71との間には、接着領域80における接着剤層のZ軸方向厚みに対応する隙間が形成されるが、必ずしも隙間が形成されることなく一部接触していても良い。非接着領域82には、接着剤がほとんど存在していないことが好ましいが、一部において、接着剤が点在していても良い。すなわち、本実施形態において、非接着領域82とは、接着剤が存在しない領域、あるいは、多少存在していたとしても、接着領域80に存在する接着剤の充填量に対して、10%以下の密度で接着剤が多少存在する領域として定義される。
図2に示すように、本実施形態では、非接着領域82の少なくとも一部に対応する取付板部61,71の基板側面で、端子電極60,70が回路基板90のランド部94に、たとえばハンダによる接続部92で電気的に接続してある。本実施形態では、非接着領域82の少なくとも一部に対応する取付板部61,71の基板側面で、端子電極60,70が回路基板90のランド部94に接続されることで、ランド部94との接続部92とドラムコア20との接着部80とが、少なくともY軸方向に位置ズレする。このことにより、たとえば落下試験時の衝撃応力を緩和する作用を有するのではないかと考えられる。
本実施形態では、接着領域80と非接着領域82とが、第1軸方向外側端面42と略同一隙間で略平行に対向する端子電極60,70の取付板部61,71に形成してある。このように構成することで、コイル装置2の機械的強度がさらに向上する。
また、本実施形態では、接着領域80が巻芯部30に近い内側位置に存在し、非接着領域82が巻芯部30から離れている鍔部外周位置に形成してある。このように構成することでも、コイル装置2の機械的強度がさらに向上する。
接続部92またはランド部94のY軸方向長さLy8は、非接着領域82のY軸方向長さLy6よりも小さいことが好ましく、そのオフセット長さLy9(=Ly6−Ly8)は0よりも大きいことが好ましい。たとえばLy9/Ly8は、好ましくは0.1〜0.5である。ただし、接続部92またはランド部94のY軸方向長さL8は、非接着領域82のY軸方向長さLy6よりも多少大きくとも良いが、取付板部61,71のY軸方向長さLy3に対するLy8の比率(Ly8/Ly3)は、好ましくは0.7以下である。
なお、接続部92のX軸方向長さは、特に限定されず、たとえば図6Bに示す接着領域80におけるX軸方向幅Lx4、または取付板部61,71のX軸方向幅Lx3と同程度またはそれ以下でも良い。また、図2に示すランド部94のX軸方向長さは、図6Bに示す取付板部61,71のX軸方向幅Lx3よりも長くても短くても良い。
次に、図1に示すコイル装置2の製造方法について説明する。まず、図6Aおよび図6Bに示すドラムコア20を成形する。ドラムコア20の成形方法は、特に限定されないが、圧縮成形、CIM(セラミックインジェクションモールディング)成形、MIM(メタルインジェクションモールディング)成形などが考えられる。成形後に焼成されて焼結体となる。
次に、図2に示すように、ドラムコア20の第1鍔部40における第1軸方向外側端面42に、前述したような関係で、非接着領域82が形成されるように、接着領域80の接着剤で、第1端子電極60および第2端子電極70を取り付ける。なお、第1端子電極60および第2端子電極70は、一枚の金属板を打ち抜き成形および折り曲げ加工することで容易に成形が可能である。端子電極60および70をドラムコアに取り付けた後、またはその前に、図6Aに示すドラムコア20の巻芯部30にワイヤ12を巻回してコイル部10を形成する。
巻芯部30にコイル部10を形成した状態で、コイル部10を構成するワイヤの両端であるリード部12a,12bは、図7に示すように、第1端子電極60の載置部64および第2端子電極70の載置部74上に位置させる。その状態で、次に、図8に示すように、固定用爪部65および75のみを曲げて、各リード部12a,12bを挟み込み載置部64,74の上に仮固定する。
その状態では、図9に示すように、第2鍔部50の第2軸方向外側端面52からZ軸方向に第1鍔部40を見た場合には、第1鍔部40は第2鍔部50の内側に位置して見えなくなっている。しかも、第2鍔部50の隣接する二つの角部に形成してある切り欠き部54においては、継線部の少なくとも一部、すなわち、リード部12a,12bの先端部、端子電極60,70の載置部64,74の一部、固定用爪部65,75の一部、溶接用爪部66,76(幅広部68,78含む)のみが見えるようになっている。
その状態で、第2鍔部50の第2軸方向外側端面52の側から、各角部54から突出しているリード部12a,12bに向けて被覆層剥離用レーザ光を照射すれば、リード部12a,12bを構成するワイヤの外周に形成してあるポリアミドイミドなどの被覆層を剥離することができる。各角部54からは、リード部12a,12bは、必要最小限の長さで突出してあることから、被覆層が剥離される部分のリード部12a,12bの長さも必要最小限にすることができる。
リード部12a,12bの被覆層を剥離させるためのレーザ照射は、図10に示すように、第1鍔部の第1軸方向外側端部42の側から、各リード部12a、12bに向けて行っても良い。なお、ワイヤ12として、被覆層を剥がす必要がないワイヤを用いている場合には、このようなレーザ照射による被覆層の剥離工程は不要となる。
次に、図11に示すように、溶接用爪部66,76(幅広部68,78含む)を折り曲げて、載置部64,74との間にリード部12a,12bの先端部を挟み込み仮固定する。その状態で、図12に示すように、第2鍔部50の第2軸方向外側端面52からZ軸方向に第1鍔部40を見た場合には、第2鍔部50の隣接する二つの角部に形成してある切り欠き部54においては、継線部の少なくとも一部のみが見える。すなわち、リード部12a,12bの先端部、端子電極60,70の載置部64,74の一部、固定用爪部65,75の一部、溶接用爪部66,76(幅広部68,78含む)のみが見えるようになっている。
その状態で、第2鍔部50の第2軸方向外側端面52の側から、各角部54から突出しているリード部12a,12bに向けて溶接用レーザ光を照射する。その結果、図1に示すように、少なくともリード部12aの先端と溶接用爪部66(幅広部68含む)とが一体化されて溶接部68aが形成される。同様に、少なくともリード部12bの先端と溶接用爪部76(幅広部78含む)とが一体化されて溶接部68aが形成される。
なお、図1では、説明の容易化のために、リード部12a,12bの先端と溶接用爪部66,76(幅広部68,78含む)とのみが一体化されて溶接部68a,78aが形成されているように描いてある。実際には、レーザ照射の熱により、リード部12a,12bの先端と溶接用爪部66,76(幅広部68,78含む)と載置部64,74とが一体となって玉状の溶接部68a,78aとなる。また、場合によっては、固定用爪部65,75も、玉状の溶接部68a,78aに、それぞれ一体化される。
本実施形態に係るコイル装置2では、図4に示すように、第1鍔部40の側面40bには、端子電極60,70の立上部62,72に対向して継線部の位置決めを行う立上部対向平面45a,46aが形成してある。このため、端子電極60,70の継線部の一部である載置部64,74は、ドラムコアの第1鍔部40に対して、良好に位置決めされ、載置部におけるワイヤ12のリード部12a,12bをレーザ照射などにより確実に端子電極60,70に接続することができる。
また、本実施形態に係るコイル装置2では、第1鍔部40の側面40bには、立上部対向平面45a,46aから内側に凹んで立上部62,72との間に隙間を形成する端子隙間用凹部47a,48aが、立上部対向平面45a,46aと共に形成してある。このため、ワイヤ12のリード部12a,12bを端子電極60,70の継線部にレーザ溶接する際の熱衝撃が緩和され、コア20の破損、割れ、欠けなどを有効に防止することができる。また、第1鍔部40の側面40bと端子電極の立上部62,72との間に隙間があるために、端子電極60,70に作用する外力が吸収され、外力によるワイヤ12の断線やコア20の破損などを有効に防止することができる。さらに、第1鍔部40の側面40bと端子電極の立上部62,72との間に隙間があるために、継線部の放熱性にも優れている。
また本実施形態では、第2鍔部50の外形サイズが、第1鍔部40の外形サイズよりも大きいことで、第1鍔部40の角部に、端子電極60,70の立上部62,72を位置させるための凹部44(図4参照)を作りやすくなる。また、図12に示すように、第2鍔部50の角部において、継線部の少なくとも一部が見えるように、第2鍔部50の角部には切り欠き部54が形成してあることから、その切り欠き部54を通して、レーザ照射によるリード部12a,12bと継線部(少なくとも固定用爪部66,76(幅広部68,78含む))とのレーザ溶接が容易に行える。レーザ溶接により、ワイヤ12のリード部12a,12bと継線部は一体化され、溶接玉状の溶接部68a,78aが形成され、溶接部68a,78aは、切り欠き部54の内側方向に収縮する。
すなわち、本実施形態では、鍔部40,50の大きさを維持してインダクタンスを低下させることなく、第2鍔部50に対する端子金具60,70の突出量を必要最小限にすることが可能であり、コイル装置の搬送途中において、端子金具60,70や溶接部68a,78aが、実装装置などに衝突するおそれが少なくなる。
また本実施形態では、載置部64には、間にスリット67が形成してある一対の爪部65,66が形成してある。載置部74にも、間にスリット77が形成してある一対の爪部75,76が形成してある。スリット67,77が形成してあることで、放熱性が良好となる。
本実施形態では、図12に示すように、第2鍔部50の角部に形成してある切り欠き部54からは、溶接用爪部66,76(幅広部68,78含む/以下同様)が見えるようになっており、固定用爪部65,75はほとんど見えないようになっている。また、固定用爪部65,75と溶接用爪部66,76との間にスリット67,77があることで、溶接玉状の溶接部68a,78aの大きさの制御が容易であり、接続に都合の良いサイズの溶接部68a,78aを容易に形成することができる。
さらに本実施形態では、図5に示すように、ワイヤ12のリード部12aとの継線部には、第1鍔部40の軸方向内面43と面一になるように、端子電極60の載置部64が形成してある。端子電極70の載置部74も同様である。このように構成することで、ワイヤ12のリード部12a,12bを折り曲げること無く真っ直ぐに、継線部である載置部64,74に案内することが可能になり、ワイヤ12のリード部12a,12bにストレスが作用せず、溶接後の継線部の強度が向上し、特に車載用などとして好適である。
本実施形態に係るコイル装置2では、図2に示すように、第1軸方向外側端面42と取付板部61,71とは、巻芯部30に近い内側位置に存在する接着領域80で接着され、巻芯部30から離れている鍔部外周位置には、第1軸方向外側端面42と取付板部61,71とが実質的に接着されていない非接着領域82が存在する。このようなシンプルな構造を採用することのみで、本実施形態のコイル装置2では、従来のコイル装置に比較して、機械的強度が格段に向上し、より厳しい落下試験でもドラムコアの破壊などの不具合を抑制することが可能になる。ちなみに従来のコイル装置では、厳しい基準の落下試験により、端子電極が取り付けられた鍔部と巻芯部との付け根部分からドラムコアが破壊することが多かった。本実施形態では、非接着領域82は、たとえば落下試験時の衝撃応力を緩和する作用を有するのではないかと考えられる。
本実施形態では、接着領域は、巻芯部30の軸方向(Z軸方向)から見て、巻芯部30に重複する位置に形成されている。このように接着領域80を巻芯部30に重複する位置に形成することで、コイル装置2の機械的強度が向上する。
また、本実施形態では、第2鍔部50の外形サイズと第1鍔部40の外形サイズとが異なっているが、本実施形態では、機械的強度の向上が図られ、落下試験などにおいても破損するおそれを低減することができる。
さらに本実施形態では、一対の端子電極60,70の取付板部61,71が並んでいる方向(Y軸方向)の内側に、それぞれ接着領域80が形成され、一対の端子電極60,70の取付板部61,71が並んでいる方向の外側に、それぞれ非接着領域82が形成してある。このような構成の時に、さらにコイル装置2の機械的強度が向上し、落下試験時においてもドラムコア20が破壊しにくい構造を実現することができる。
さらに本実施形態では、第1軸方向外側端面42と取付板部61,71との間では、図6Bに示すように、Y軸方向に垂直なX軸方向の両端部においても、副非接着領域82aが形成してある。このような構成の時に、さらにコイル装置2の機械的強度が向上し、落下試験時においてもドラムコアが破壊しにくい構造を実現することができる。
たとえば本発明の一実施例のコイル装置では、衝撃加速度が、それぞれZ軸、X軸およびY軸方向に3000Gの場合であっても、巻芯部と第1鍔部との間の付け根部分に生じる衝撃応力を、それぞれ従来の0.4以下、0.5以下および0.6以下にすることができることが確認できた。また、実際に厳しい基準の衝撃試験においても、ドラムコアの割れが発生する割合を、従来の1/2以下にすることができることを確認できた。
なお、本実施形態では、図2に示すように、各端子電極60,70の取付板部61,71は、非接触領域60の範囲内の位置(Ly9>0)で、回路基板90のランド部94に対して、たとえばハンダによる接続部92で電気的に接続してある。このように構成することで、さらに落下衝撃に対する耐性が向上する。たとえば従来の取付板部の全面で接着して全面でランド部に接続する従来の構造に比較して、固有振動数を0.85倍以下に小さくすることができ、衝撃吸収効果が増大して、落下衝撃に対する耐性が格別に向上する。
第2実施形態
本実施形態に係るコイル装置では、図13に示す第1端子電極60aおよび第2端子電極70aが第1実施形態と異なるのみであり、その他の構成は、第1実施形態と同様であり、同様な作用効果を奏する。以下、異なる部分のみについて説明する。
本実施形態の第1端子電極60aでは、スリット66aにより隔てられた一対の爪部65a,66aの先端は、連結部69で連結してある。同様に、第2端子電極70aでは、スリット76aにより隔てられた一対の爪部75a,76aの先端は、連結部79で連結してある。
爪部65a,66aまたは爪部75a,76aの先端が連結してある場合には、ワイヤ12の被覆層を除去する必要がないワイヤ12を用いるか、あるいは、両方の爪部65a,66aまたは爪部75a,76aでワイヤ12のリード部を固定する前に、ワイヤ12の被覆層を剥離すれば良い。また、爪部65a,66aまたは爪部75a,76aの先端が連結してある場合には、より太い線径のワイヤ12に対して強い押さえ力を発揮するという利点がある。
第3実施形態
図14〜図18に示すように、本発明の第3実施形態に係るコイル装置2aでは、第1端子電極60bおよび第2端子電極70bが第1実施形態または第2実施形態と異なるのみであり、その他の構成は、第1実施形態または第2実施形態と同様であり、同様な作用効果を奏する。以下、異なる部分のみについて説明する。
図16に示すように、第1端子電極60bの取付板部61および第2端子電極70bの取付板部71のX軸方向の一端には、それぞれ立上部62b,72bがZ軸方向に立ち上がるように一体に形成してあり、他端には、それぞれ補助立上部63,73がZ軸方向に立ち上がるように一体に形成してある。
立上部62b,72bは、図14に示すように、第1鍔部40の一方の側面40bに形成してある立上部対向平面45a,46aにそれぞれ面接触可能であると共に、端子隙間用凹部47a,48aとの間で隙間を形成する。補助立上部63,73は、第1実施形態と同様に、図4に示すように、第1鍔部40の他方の側面40bに形成してある立上部対向平面45b,46bにそれぞれ面接触可能であると共に、端子隙間用凹部47b,48bとの間で隙間を形成する。
立上部対向平面45a,45bに立上部62b,63がそれぞれ面接触することで、第1端子電極60bは、第1鍔部40に対してX軸方向の位置決めが成される。また、第1端子電極60bは、導電性金属で構成され、バネ性を有することから、立上部対向平面45a,45b間のX軸方向長さに多少の製造バラツキがあったとしても立上部62b,63は、立上部対向平面45a,45bに良好に密着する。なお、立上部対向平面45a,45bと立上部62b,63との間には、多少の隙間があっても良い。立上部62b,63の間の距離は、金属板の折り曲げ加工により比較的に高精度であり、立上部対向平面45a,45b間の距離の製造バラツキのために多少の隙間があったとしても、第1端子電極60bは、第1鍔部40に対してX軸方向に許容誤差範囲内で位置決めできる。
また同様に、立上部対向平面46a,46bに立上部72b,73がそれぞれ面接触することで、第2端子電極70bは、第1鍔部40に対してX軸方向の位置決めが成される。また、第2端子電極70bは、導電性金属で構成され、バネ性を有することから、立上部対向平面46a,46b間のX軸方向長さに多少の製造バラツキがあったとしても立上部72b,73は、立上部対向平面46a,46bに良好に密着する。なお、立上部対向平面46a,46bと立上部72b,73との間には、多少の隙間があっても良い。立上部72b,73の間の距離は、金属板の折り曲げ加工により比較的に高精度であり、立上部対向平面46a,46b間の距離の製造バラツキのために多少の隙間があったとしても、第2端子電極70bは、第1鍔部40に対してX軸方向に許容誤差範囲内で位置決めできる。
取付板部61のX軸方向の一端に形成してある立上部62bのZ軸方向の上端には、継線部としての爪部65b,66bがスリット67bを介して一体に形成してある。これらの爪部65b,66bの先端は、連結部69bで連結してある。これらの爪部65b,66bは、ワイヤ12のリード部12aの線径よりも大きな曲率半径Rで半円状にZ軸方向の上側凸に曲げてある。これらの爪部65b,66bのZ軸方向の下側に、リード部12aが収容可能になっている。
また同様に、取付板部71のX軸方向の一端に形成してある立上部72bのZ軸方向の上端には、継線部としての爪部75b,76bがスリット77bを介して一体に形成してある。これらの爪部75b,76bの先端は、連結部79bで連結してある。これらの爪部75b,76bは、ワイヤ12のリード部12bの線径よりも大きな曲率半径Rで半円状にZ軸方向の上側凸に曲げてある。これらの爪部75b,76bのZ軸方向の下側に、リード部12bが収容可能になっている。
本実施形態では、図17に示すように、第2鍔部50の第2軸方向外側端面52からZ軸方向に第1鍔部40を見た場合には、第2鍔部50の隣接する二つの角部に形成してある切り欠き部54においては、継線部の少なくとも一部のみが見える。すなわち、リード部12a,12bの先端部、端子電極60b,70bの爪部65b,75bの一部、爪部66b,76bのみが見えるようになっている。
その状態で、第2鍔部50の第2軸方向外側端面52の側から、各角部54から突出しているリード部12a,12bに向けて溶接用レーザ光を照射する。その結果、少なくともリード部12aの先端と爪部66とが一体化されて溶接部が形成される。同様に、少なくともリード部12bの先端と溶接用爪部76とが一体化されて溶接部が形成される。
第4実施形態
図19に示すように、本発明の第4実施形態に係るコイル装置2bでは、接着領域80および非接着領域82の形成位置が、第1実施形態〜第3実施形態とY軸方向に沿って逆であり、その他の構成は、第1実施形態または第2実施形態と同様であり、同様な作用効果を奏する。以下、異なる部分のみについて説明する。
図19に示すように、本実施形態では、非接着領域82が、巻芯部30に近い内側に位置しており、接着領域80が、巻芯部30から遠い鍔部外周位置に接着領域80が形成してある。各端子電極60,70の取付板部61,71は、非接触領域60の範囲内の位置(Ly9>0)で、回路基板90のランド部94に対して、たとえばハンダによる接続部92で電気的に接続してある。このように構成しても、落下衝撃に対する耐性が向上する。ただし、第1〜第3実施形態のように、接着領域80が巻芯部30に近い内側に位置させた方が、さらに落下衝撃に対する耐性が向上する。
第5実施形態
図20に示すように、本発明の第5実施形態に係るコイル装置2cでは、各端子電極60c,70cの取付板部61c,71cにおけるY軸方向の途中に曲折部61ca,71caを設け、取付板部61c,71cの弾力性を向上させている。その他の構成は、第1実施形態または第2実施形態と同様であり、同様な作用効果を奏する。以下、異なる部分のみについて説明する。
図20に示すように、本実施形態では、各端子電極60c,70cの取付板部61c,71cにおけるY軸方向の途中に曲折部61ca,71caを設けてある。このため、取付板部61c,71cにおける非接着領域82の端面42とのZ軸方向隙間が、接着領域80の端面42とのZ軸方向隙間よりも大きくなっている。このように構成しても、落下衝撃に対する耐性が向上する。ただし、図19に示す第4実施形態のように、曲折部を持たないフラットな取付板部61,71を配置させた方が、さらに落下衝撃に対する耐性が向上する。
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
たとえば、切り欠き54の大きさは、特に限定されない。図17に示す実施形態の切り欠き54は、図9に示す実施形態の切り欠き54よりも多少大きくしてある。