JP6328456B2 - エネルギー分散型x線分析装置及びエネルギー分散型x線分析方法 - Google Patents

エネルギー分散型x線分析装置及びエネルギー分散型x線分析方法 Download PDF

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Description

本発明は、走査型電子顕微鏡に装着するエネルギー分散型X線分析装置及びエネルギー分散型X線分析方法に関する。
走査型電子顕微鏡に装着するエネルギー分散型X線分析装置では、加速電子線の試料照射により発生するX線をエネルギー分散型X線分析装置で取得し、微小部の定性・定量分析を行う他に、加速電子線を二次元的に走査し、発生するX線取り込みを同期させることで、走査電子顕微鏡像と共にX線強度の二次元像を得ている。
従来、例えば特許文献1には、電子プローブマイクロアナライザによる任意形状試料の面分析法が記載されている。この技術は、包埋材に包埋された試料からなる試料包埋体に対するEPMA (Electron Probe Micro Analyzer)による面分析法であって、試料包埋体の分析領域を設定し、該設定された分析領域を複数の細分割領域に分割するステップと、細分割領域から試料を含む細分割領域を選択設定するステップと、選択設定された細分割領域について順次分析測定を行い、各細分割領域から得られる分析結果をつなぎ合わせるステップとで任意形状試料の面分析を行っている。
また、特許文献2には、薄膜試料で基板と薄膜とにおいて同一元素が含まれている場合で、基板及び薄膜元素が既知のとき、EPMAのようなX線分光的方法により定量分析と膜厚測定とを併せて行う方法が記載されている。この分析方法は、標準試料を用いた厚み測定である。すなわち、この分析方法は、ある適当な加速電圧で加速した電子ビームで励起された構成元素既知の薄膜試料から放射される成分元素の特性X線強度と、上記と同じ加速電子ビームで励起された成分元素の単体標準試料から放射される特性X線強度との比(X線強度比)を、それを実測的に求め得る元素において実測的に求めておき、X線強度比が実測的に求め得ない元素のX線強度比を、上記で求めた他の元素のX線強度比と、測定不能元素と他の元素との化学結合形態から求め、全成分の上記X線強度比から特定な式によって薄膜の厚さを算定し、また、上記X線強度比の比から試料の薄膜の各成分元素濃度を算定するものである。
特開2000−214108号公報 特開平5−26826号公報
上記従来の技術には、以下の課題が残されている。
すなわち、上記従来の技術では、X線強度の二次元像を観察することで平面方向での元素分布を観察することができるが、深さ方向の分布状態を判断することは出来なかった。
また、特許文献2に記載の技術は、標準試料を用いた厚み測定であって、深さ方向の分布を判別することができない。
なお、深さ方向の分布が均一か否かを判断するため、試料の断面を作成し、その断面を測定することで深さ方向の分布状態を把握する方法もあるが、着目領域の断面を観察するには専用の設備が必要であり、且つ断面作成作業のため時間をかけて初めて深さ方向の分布状態を判断できることから、時間と手間がかかってしまう不都合があった。
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、走査型電子顕微鏡に装着されるものであって、非破壊で測定元素が深さ方向に均一に分布しているか否かを簡便に判断することができるエネルギー分散型X線分析装置及びエネルギー分散型X線分析方法を提供することを目的とする。
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、第1の発明に係るエネルギー分散型X線分析装置は、走査型電子顕微鏡に装着されるエネルギー分散型X線分析装置であって、前記走査型電子顕微鏡による試料に対する電子線の走査を制御するSEM制御部と、電子線が照射された前記試料から発生するX線を検出する検出器と、前記検出器から出力される電気信号パルスを処理するEDS制御部と、前記電気信号パルスに基づいてX線マッピング像を取得しディスプレイ部に表示するデータ処理部とを備え、前記SEM制御部が前記走査型電子顕微鏡に第1の加速電圧条件で電子線を前記試料に照射させると共に前記データ処理部が第1のX線マッピング像を取得し、前記SEM制御部が前記走査型電子顕微鏡に前記第1の加速電圧条件と異なる第2の加速電圧条件で電子線を試料に照射させると共に前記データ処理部が第2のX線マッピング像を取得し、前記データ処理部が、前記第1の加速電圧条件と前記第2の加速電圧条件とで異なるX線励起効率による測定強度変化率に基づいて記第2のX線マッピング像加速電圧条件変化に依存しない画像に補正し、前記試料の深さ方向の測定元素の均一分布判断するために、前記補正を行っていない前記第1のX線マッピング像と前記補正を行った前記第2のX線マッピング像との差分像を前記ディスプレイ部に表示することを特徴とする。
このエネルギー分散型X線分析装置では、データ処理部が、第1の加速電圧条件と第2の加速電圧条件とで異なるX線励起効率による測定強度変化率に基づいて第2のX線マッピング像加速電圧条件変化に依存しない画像に補正し、試料の深さ方向の測定元素の均一分布判断するために、補正を行っていない第1のX線マッピング像と補正を行った第2のX線マッピング像との差分像を前記ディスプレイ部に表示するので、差分像によって元素の深さ方向の分布状態も検出することができる。
すなわち、異なる加速電圧条件の2つの線強度の分布像(補正されていない第1及び補正された第2のX線マッピング像)がほぼ同等の数値となる場合は、差分像における補正差分値がゼロに近い値となり、元素が深さ方向で均一に分布していると判断される。また、差分像における補正差分値の数値に差がある場合は、補正差分値の正負によって元素が表面付近に分布しているか下層付近に分布しているかが判別可能になる。
第2の発明に係るエネルギー分散型X線分析装置は、第1の発明において、前記データ処理部が、前記差分像と共に前記走査型電子顕微鏡で取得した走査電子顕微鏡像も同時に前記ディスプレイ部に表示可能であることを特徴とする。
すなわち、このエネルギー分散型X線分析装置では、データ処理部が、差分像と共に走査型電子顕微鏡で取得した走査電子顕微鏡像も同時にディスプレイ部に表示可能であるので、差分像と二次電子像等の走査電子顕微鏡とを同時表示させることで、その区別を視覚的に行うことが可能になる。
第3の発明に係るエネルギー分散型X線分析装置は、第1又は第2の発明において、前記データ処理部が、深さ方向の元素分布が均一な領域で予め取得した前記第1のX線マッピング像と前記第2のX線マッピング像とによって算出した前記測定強度変化率に基づいて前記補正を行うことを特徴とする。
すなわち、このエネルギー分散型X線分析装置では、データ処理部が、深さ方向の元素分布が均一な領域で予め取得した第1のX線マッピング像と第2のX線マッピング像とによって算出した測定強度変化率に基づいて前記補正を行うので、組成既知試料による補正値データベースの作成が不要になると共に、定量分析法と試料電流補正とにより補正値を決定する必要もなくなる。したがって、測定試料において深さ方向の分布が均一な領域があることがわかっているときに、この領域を着目領域として指定して補正値(測定強度変化率)を決定することで、補正された第1のX線マッピング像及び第2のX線マッピング像を簡便に作成することができ、実用性を向上させることができる。
第4の発明に係るエネルギー分散型X線分析装置は、第1から第3の発明のいずれかにおいて、前記EDS制御部が、前記差分像について、補正後のX線強度を強度に応じて色分け表示すると共に補正差分値を凹凸で表示した分布像を前記ディスプレイ部に三次元面グラフとして表示可能であることを特徴とする。
すなわち、このエネルギー分散型X線分析装置では、EDS制御部が、差分像について、補正後のX線強度を強度に応じて色分け表示すると共に補正差分値を凹凸で表示した分布像をディスプレイ部に三次元面グラフとして表示可能であるので、立体的な表示方法によって補正後のX線強度の分布と深さ方向の分布との判断をより視覚的に行うことができる。
第5の発明に係るエネルギー分散型X線分析方法は、走査型電子顕微鏡に装着されたエネルギー分散型X線分析装置による分析方法であって、前記エネルギー分散型X線分析装置が、前記走査型電子顕微鏡による試料に対する電子線の走査を制御するSEM制御部と、電子線が照射された前記試料から発生するX線を検出する検出器と、前記検出器から出力される電気信号パルスを処理するEDS制御部と、前記電気信号パルスに基づいてX線マッピング像を取得しディスプレイ部に表示するデータ処理部とを備え、前記SEM制御部が前記走査型電子顕微鏡に第1の加速電圧条件で電子線を前記試料に照射させると共に前記データ処理部が第1のX線マッピング像を取得する過程と、前記SEM制御部が前記走査型電子顕微鏡に前記第1の加速電圧条件と異なる第2の加速電圧条件で電子線を試料に照射させると共に前記データ処理部が第2のX線マッピング像を取得する過程と、前記データ処理部が、前記第1の加速電圧条件と前記第2の加速電圧条件とで異なるX線励起効率による測定強度変化率に基づいて記第2のX線マッピング像加速電圧条件変化に依存しない画像に補正し、前記試料の深さ方向の元素分布を判断するために、前記補正を行っていない前記第1のX線マッピング像と前記補正を行った前記第2のX線マッピング像との差分像を前記ディスプレイ部に表示する過程とを有していることを特徴とする。
本発明によれば、以下の効果を奏する。
すなわち、本発明に係るエネルギー分散型X線分析装置及びエネルギー分散型X線分析方法によれば、第1の加速電圧条件と第2の加速電圧条件とで異なるX線励起効率による測定強度変化率に基づいて第2のX線マッピング像加速電圧条件変化に依存しない画像に補正し、試料の深さ方向の元素分布を判断するために、補正を行っていない第1のX線マッピング像と補正を行った第2のX線マッピング像との差分像をディスプレイ部に表示するので、差分像によって元素の深さ方向の分布状態も検出することができる。したがって、本発明では、非破壊で測定元素の深さ方向の均一分布判断を簡便に行うことが可能になる。
本発明に係るエネルギー分散型X線分析装置及びエネルギー分散型X線分析方法の一実施形態を示す概略的な全体構成図である。 本実施形態において、第1のX線マッピング像と第2のX線マッピング像と差分像とを示すディスプレイ部の表示例である。 本実施形態において、走査電子顕微鏡像と差分像とを示すディスプレイ部の表示例である。 本実施形態において、立体的に表示させた分布像を示すディスプレイ部の表示例である。
以下、本発明に係るエネルギー分散型X線分析装置及びエネルギー分散型X線分析方法の一実施形態を、図1から図4を参照しながら説明する。
本実施形態のエネルギー分散型X線分析装置1は、図1に示すように、走査型電子顕微鏡2に装着されるエネルギー分散型X線分析装置であって、走査型電子顕微鏡2による試料Sに対する電子線eの走査を制御するSEM制御部3と、電子線eが照射された試料Sから発生するX線Xを検出する検出器4と、検出器4から出力される電気信号パルスを処理するEDS制御部5と、前記電気信号パルスに基づいてX線マッピング像を取得しディスプレイ部6に表示するデータ処理部7とを備えている。
上記SEM制御部3が、走査型電子顕微鏡2に第1の加速電圧条件で電子線eを試料Sに照射させると共に、図2に示すように、データ処理部7は、第1のX線マッピング像M1を取得する機能を有している。
また、SEM制御部3が、走査型電子顕微鏡2に第1の加速電圧条件と異なる第2の加速電圧条件で電子線eを試料Sに照射させると共に、データ処理部7は、第2のX線マッピング像M2を取得する機能を有している。
例えば、試料がシリコンの場合に第1の加速電圧条件を5kVとすると、SiのX線発生領域は0.3μmの深さまでになり、第2の加速電圧条件を10kVとすると、深さ1.0μmまでX線発生領域が広がる。したがって、加速電圧条件が高いほど深く電子線eが侵入し、その深さに応じたX線が発生する。
さらに、データ処理部7は、第1の加速電圧条件と第2の加速電圧条件とで異なるX線励起効率による測定強度変化率に基づいて第2のX線マッピング像M1加速電圧条件変化に依存しない画像に補正し、図2に示すように、試料の深さ方向の元素分布を判断するために、補正を行っていない第1のX線マッピング像M1と補正を行った第2のX線マッピング像M2との差分像M3をディスプレイ部6に表示する機能を有している。
また、データ処理部7は、図3に示すように、差分像M3と共に走査型電子顕微鏡2で取得した走査電子顕微鏡像SEMも同時にディスプレイ部6に表示可能である。
なお、データ処理部7は、深さ方向の元素分布が均一な領域で予め取得した第1のX線マッピング像M1と第2のX線マッピング像M2とによって算出した測定強度変化率に基づいて前記補正を行う機能も有している。
上記EDS制御部5は、差分像M3について、図4に示すように、補正後のX線強度を強度に応じて色分け表示すると共に補正差分値を凹凸で表示した分布像M4をディスプレイ部6に三次元面グラフとして表示可能である。
上記走査型電子顕微鏡2は、電子線eを加速させて試料Sに照射するSEM鏡筒2aと、試料Sを載置する試料ステージ8と、該試料ステージ8を収納する試料室9とを備えている。
上記検出器4は、電子線eが照射された試料Sから発生したX線Xを検出し、電気信号パルスを発生する。すなわち、この検出器4は、X線入射窓に設置されている半導体検出素子(例えば、pin構造ダイオードであるSi(シリコン)素子)(図示略)を備え、X線光子1個が入射すると、このX線光子1個に対応する電流パルス(電気信号パルス)が発生するものである。この電流パルスの瞬間的な電流値が、入射した特性X線のエネルギーに比例している。また、検出器4は、半導体検出素子で発生した電流パルスを電圧パルスに変換、増幅し、信号として出力するように設定されている。
上記EDS制御部5は、X線マッピング像を取得するために走査型電子顕微鏡2の電子線eを走査するスキャン走査信号を発生させてSEM制御部3に送るスキャン信号処理部5aと、検出器4からX線検出時の電気信号パルス列を受け取り、電気信号パルス高さからX線のエネルギースペクトルとなるヒストグラムを作成するシグナル処理部5bとを備えている。すなわち、シグナル処理部5bは、検出器4からの信号を分析する分析器であって、上記信号から電圧パルスの波高を得てエネルギースペクトルを生成する波高分析器(マルチチャンネルパルスハイトアナライザー)である。
上記スキャン信号処理部5aは、スキャン走査信号をSEM制御部3に送ることでSEM鏡筒2aにより電子線eが試料Sに対して走査され、図3に示すように、走査電子顕微鏡像SEMをディスプレイ部6に表示させることができる。
また、スキャン信号処理部5aは、一画素分の走査量毎にクロックをシグナル処理部5bに送ることでシグナル処理部5bにおいて一画素分のX線計測データが保存され、最終的にX線マッピング像のデータが作成される。通常はシグナル処理部5bが持つメモリー容量の制限のため、1ライン分のX線計測データを保持し、このデータをデータ処理部7に送る。データ処理部7では、送られたデータをX線マッピング像データとして蓄積し、ディスプレイ部6にX線マッピング像を表示する。
上記シグナル処理部5bは、X線マッピング像生成のために、スキャン信号処理部5aからクロックを受け取りX線計測データを1画素相当データとして保存して、次の画素相当のX線計測データ収集を開始する機能を有している。シグナル処理部5bは、このような動作を続け、X線計測データ列を作成することでX線マッピング像が作成される。
上記データ処理部7は、EDS制御部5と接続され、走査電子顕微鏡像SEM、X線スペクトル、X線スペクトルから定量分析を行った定量結果、上記各X線マッピング像M1,M2及び差分像M3等をディスプレイ部6に表示可能である。
このデータ処理部7は、CPU等で構成されたコンピュータである。
次に、本実施形態のエネルギー分散型X線分析装置1を用いた分析方法について説明する。
本実施形態の分析方法は、SEM制御部3が走査型電子顕微鏡2に第1の加速電圧条件で電子線eを試料Sに照射させると共にデータ処理部7が第1のX線マッピング像M1を取得する過程と、SEM制御部3が走査型電子顕微鏡2に第1の加速電圧条件と異なる第2の加速電圧条件で電子線eを試料Sに照射させると共にデータ処理部7が第2のX線マッピング像M2を取得する過程と、データ処理部7が、第1の加速電圧条件と第2の加速電圧条件とで異なるX線励起効率による測定強度変化率に基づいて第2のX線マッピング像M1加速電圧条件変化に依存しない画像に補正し、試料の深さ方向の元素分布を判断するために、補正を行っていない第1のX線マッピング像M1と補正を行った第2のX線マッピング像M2との差分像M3をディスプレイ部6に表示する過程とを有している。
上記差分像M3作成の過程をより詳細に説明すると、第1の加速電圧条件で第1のX線マッピング像M1を取得し、さらに第2の加速電圧条件で第2のX線マッピング像M2を取得した際、データ処理部7において以下の3つのケースによって差分像M3を作成する。
(1)「各点を定量計算して差分像を求める場合」
まず、X線マッピング像の各点で以下の計算を実施する。ここで、電子線eの第1の加速電圧aでの元素nの測定強度をIa(n)、第2の加速電圧bでの測定強度をIb(n)とする。
第1の加速電圧aのX線スペクトルを使い定量計算を実施し、濃度組成を求める。
次に、求められた濃度組成を使い、第1の加速電圧aから第2の加速電圧bに変更したときの測定強度変化率を理論計算する。
このとき、求められた測定強度変化率をk(n)とすると、もし深さ方向に元素が均一に分布している場合は理論計算通りで、以下の式(1)が成り立つ。
k(n)=Ib(n)/Ia(n) ・・・式(1)
元素が均一分布していなくて表面付近の重量比率が大きい分布では、以下の式(2)となる。
Ia(n)>Ib(n)/k(n) ・・・式(2)
また、重量比率が深いところで大きくなる分布では、以下の式(3)となる。
Ia(n)<Ib(n)/k(n) ・・・式(3)
よって、補正差分値Diff(n)を以下の式(4)とすると、深さ方向に均一に分布しているかどうかの指標になる。
Diff(n)=Ia(n)−Ib(n)/k(n) ・・・式(4)
この補正差分値の計算を、取得したX線マッピング像の全画素にわたり処理を実施することで、元素nの差分像M3を得ることができる。この一連の処理を、表示する元素毎に実施する。
(2)「各元素毎に測定強度の電圧依存性を標準試料を使って求める場合」
まず、事前準備について説明する。
標準試料を試料ステージ8に載置し、第1の加速電圧aで電子線eを標準試料に照射してX線測定し、X線スペクトル「XSPECa」を保存する。次に、第2の加速電圧bで電子線eを標準試料に照射してX線測定し、X線スペクトル「XPECb」を保存する。
なお、ここでは第1の加速電圧aと第2の加速電圧bとの2条件での測定としているが、事前準備としては他の加速電圧でもX線スペクトル測定をしておくと、準備レベルが上がり、試料測定での準備不足確率を下げることができる。
次に、データ処理部7による差分像M3の計算について説明する。
X線マッピング像の各点で以下の計算を実施する。
第1の加速電圧aでの標準試料における元素nの測定強度SIa(n)をX線スペクトル「XSPECa」から計算する。また、第2の加速電圧bでの標準試料における元素nの測定強度SIb(n)をX線スペクトル「XSPECb」から計算する。
ここから、電子線eの加速電圧を変更したときの測定強度変化率k(n)を以下の式(5)とする。
k(n)=SIb(n)/SIa(n) ・・・式(5)
第1の加速電圧aでの元素nの測定強度をIa(n)とし、第2の加速電圧bでの元素nの測定強度をIb(n)とすると、補正差分値Diff(n)は以下の式(6)となる。
Diff(n)=Ia(n)−Ib(n)/k(n) ・・・式(6)
この補正差分値の計算を、取得したX線マッピング像の全画素にわたり処理を実施することで、元素nの差分像M3を得ることができる。この一連の処理を、表示する元素毎に実施する。
(3)「均一分布領域を指定して差分像を求める場合」
次に、深さ方向の元素分布が均一な領域で予め取得した第1のX線マッピング像M1と第2のX線マッピング像M2とによって算出した測定強度変化率に基づいて前記補正を行う方法について説明する。
まず、予め元素nの深さ方向の分布が均一である領域を指定して第1のX線マッピング像M1と第2のX線マッピング像M2とを取得する。
上記の指定された均一分布領域で、第1のX線マッピング像M1から元素nの領域積分強度RIa(n)と、第2のX線マッピング像M2から元素nの領域積分強度RIb(n)とを計算する。
ここから、電子線eの加速電圧を変更したときの測定強度変化率k(n)を以下の式(7)とする。
k(n)=RIb(n)/RIa(n) ・・・式(7)
次に、X線マッピング像の各点で以下の計算を実施する。
第1の加速電圧aでの元素nの測定強度をIa(n)とし、第2の加速電圧bでの測定強度をIb(n)とすると、補正差分値Diff(n)は以下の式(8)となる。
Diff(n)=Ia(n)−Ib(n)/k(n) ・・・式(8)
この補正差分値の計算を、取得したX線マッピング像の全画素にわたり処理を実施することで、元素nの差分像M3を得ることができる。この一連の処理を、表示する元素毎に実施する。
なお、本実施形態では、図4に示すように、EDS制御部5が、差分像M3について、補正後のX線強度(以下、絶対X線強度とも称す)を強度に応じて色分け表示すると共に補正差分値を凹凸で表示した分布像M4をディスプレイ部6に三次元面グラフとして表示可能である。例えば、絶対X線強度が高い部分は赤色で表示し、絶対X線強度が低い部分は青色で表示する。上記分布像M4は、画像に奥行きを持たせ、補正差分値を高さ方向(Z軸)の凹凸として立体的に表示する三次元(3D)効果付きの面グラフ(3D面グラフ)である。
なお、上記差分像M3について補正差分値を凹凸で表示した分布像M4だけでなく、走査電子顕微鏡像SEMに対して凹凸量として元素nの補正差分値を選択したデータを3D面グラフとして表示しても構わない。また、走査電子顕微鏡像SEMに対して凹凸量として元素nの第1のX線マッピング像M1の測定値を選択したデータを3D面グラフとして表示しても構わない。
このように本実施形態のエネルギー分散型X線分析装置1は、データ処理部7が、第1の加速電圧条件と第2の加速電圧条件とで異なるX線励起効率による測定強度変化率に基づいて第2のX線マッピング像M1加速電圧条件変化に依存しない画像に補正し、試料の深さ方向の元素分布を判断するために、補正を行っていない第1のX線マッピング像M1と補正を行った第2のX線マッピング像M2との差分像M3をディスプレイ部6に表示するので、差分像M3によって元素の深さ方向の分布状態も検出することができる。
すなわち、異なる加速電圧条件の2つの補正X線強度の分布像(補正された第1及び第2のX線マッピング像M1,M2)がほぼ同等の数値となる場合は、差分像M3における補正差分値がゼロに近い値となり、元素が深さ方向で均一に分布していると判断される。また、差分像M3における補正差分値の数値に差がある場合は、補正差分値の正負によって元素が表面付近に分布しているか下層付近に分布しているかが判別可能になる。
なお、測定する特性X線を励起可能な最低加速電圧以上であれば測定が可能であるので、深さ方向の均一分布判断の厚みを薄くしたいときは、電子線eの加速電圧を最低電圧に比較的近い2種類の加速電圧条件を選択する。また、深さ方向の均一分布判断の厚みを深くしたいときは、電子線eの加速電圧をさらに大きい2種類の加速電圧条件を選択する。このように均一分布判断の厚みに依存して電子線eの加速電圧を選択することが可能である。
また、データ処理部7が、差分像M3と共に走査型電子顕微鏡2で取得した走査電子顕微鏡像SEMも同時にディスプレイ部6に表示可能であるので、差分像M3と二次電子像等の走査電子顕微鏡像SEMとを同時表示させることで、その区別を視覚的に行うことが可能になる。
さらに、データ処理部7が、深さ方向の元素分布が均一な領域で予め取得した第1のX線マッピング像M1と第2のX線マッピング像M2とによって算出した測定強度変化率に基づいて前記補正を行うので、組成既知試料による補正値データベースの作成が不要になると共に、定量分析法と試料電流補正とにより補正値を決定する必要もなくなる。したがって、測定試料において深さ方向の分布が均一な領域があることがわかっているときに、この領域を着目領域として指定して補正値(測定強度変化率)を決定することで、補正された第1のX線マッピング像M1及び第2のX線マッピング像M2を簡便に作成することができ、実用性を向上させることができる。
例えば、半導体デバイス等におけるSiOの厚い領域を上記着目領域に設定することで、SiOが薄い領域の判断に本実施形態の分析方法を用いることが可能である。
また、EDS制御部5が、差分像M3について、補正後のX線強度を強度に応じて色分け表示すると共に補正差分値を凹凸で表示した分布像をディスプレイ部6に三次元面グラフとして表示可能であるので、立体的な表示方法によって補正後のX線強度の分布と深さ方向の分布との判断をより視覚的に行うことができる。
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
1…エネルギー分散型X線分析装置、2…走査型電子顕微鏡、3…SEM制御部、4…検出器、5…EDS制御部、6…ディスプレイ部、7…データ処理部、e…電子線、M1…第1のX線マッピング像、M2…第2のX線マッピング像、M3…差分像、M4…分布像、S…試料、SEM…走査電子顕微鏡像、X…発生X線

Claims (5)

  1. 走査型電子顕微鏡に装着されるエネルギー分散型X線分析装置であって、
    前記走査型電子顕微鏡による試料に対する電子線の走査を制御するSEM制御部と、
    電子線が照射された前記試料から発生するX線を検出する検出器と、
    前記検出器から出力される電気信号パルスを処理するEDS制御部と、
    前記電気信号パルスに基づいてX線マッピング像を取得しディスプレイ部に表示するデータ処理部とを備え、
    前記SEM制御部が前記走査型電子顕微鏡に第1の加速電圧条件で電子線を前記試料に照射させると共に前記データ処理部が第1のX線マッピング像を取得し、
    前記SEM制御部が前記走査型電子顕微鏡に前記第1の加速電圧条件と異なる第2の加速電圧条件で電子線を試料に照射させると共に前記データ処理部が第2のX線マッピング像を取得し、
    前記データ処理部が、前記第1の加速電圧条件と前記第2の加速電圧条件とで異なるX線励起効率による測定強度変化率に基づいて記第2のX線マッピング像加速電圧条件変化に依存しない画像に補正し、前記試料の深さ方向の測定元素の均一分布判断するために、前記補正を行っていない前記第1のX線マッピング像と前記補正を行った前記第2のX線マッピング像との差分像を前記ディスプレイ部に表示することを特徴とするエネルギー分散型X線分析装置。
  2. 請求項1に記載のエネルギー分散型X線分析装置において、
    前記データ処理部が、前記差分像と共に前記走査型電子顕微鏡で取得した走査電子顕微鏡像も同時に前記ディスプレイ部に表示可能であることを特徴とするエネルギー分散型X線分析装置。
  3. 請求項1又は2に記載のエネルギー分散型X線分析装置において、
    前記データ処理部が、深さ方向の元素分布が均一な領域で予め取得した前記第1のX線マッピング像と前記第2のX線マッピング像とによって算出した前記測定強度変化率に基づいて前記補正を行うことを特徴とするエネルギー分散型X線分析装置。
  4. 請求項1から3のいずれか一項に記載のエネルギー分散型X線分析装置において、
    前記EDS制御部が、前記差分像について、補正後のX線強度を強度に応じて色分け表示すると共に補正差分値を凹凸で表示した分布像を前記ディスプレイ部に三次元面グラフとして表示可能であることを特徴とするエネルギー分散型X線分析装置。
  5. 走査型電子顕微鏡に装着されたエネルギー分散型X線分析装置による分析方法であって、
    前記エネルギー分散型X線分析装置が、前記走査型電子顕微鏡による試料に対する電子線の走査を制御するSEM制御部と、
    電子線が照射された前記試料から発生するX線を検出する検出器と、
    前記検出器から出力される電気信号パルスを処理するEDS制御部と、
    前記電気信号パルスに基づいてX線マッピング像を取得しディスプレイ部に表示するデータ処理部とを備え、
    前記SEM制御部が前記走査型電子顕微鏡に第1の加速電圧条件で電子線を前記試料に照射させると共に前記データ処理部が第1のX線マッピング像を取得する過程と、
    前記SEM制御部が前記走査型電子顕微鏡に前記第1の加速電圧条件と異なる第2の加速電圧条件で電子線を試料に照射させると共に前記データ処理部が第2のX線マッピング像を取得する過程と、
    前記データ処理部が、前記第1の加速電圧条件と前記第2の加速電圧条件とで異なるX線励起効率による測定強度変化率に基づいて記第2のX線マッピング像加速電圧条件変化に依存しない画像に補正し、前記試料の深さ方向の元素分布を判断するために、前記補正を行っていない前記第1のX線マッピング像と前記補正を行った前記第2のX線マッピング像との差分像を前記ディスプレイ部に表示する過程とを有していることを特徴とするエネルギー分散型X線分析方法。
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