JP6328415B2 - 糖質低減清酒の製造方法 - Google Patents

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本発明は、醪を仕込む仕込み工程と、醪を発酵させる発酵工程と、を包含する糖質低減清酒の製造方法に関する。
近年、健康志向の高まりから、肥満の改善又は予防を目的として、糖質や脂質等を低減した飲料や食品の開発が行われている。このような流れの中、アルコール飲料においても、糖質を抑えた商品の需要が高まっている。例えば、ビール風味飲料である発泡酒や、リキュール(発泡性)等では、糖質をカットした商品や、糖質ゼロの商品等が開発されている。
一方、清酒は、ビールやワイン等の他の醸造酒と比べて糖質を多く含有するイメージがある。そこで、清酒においても糖質を抑えた商品の開発が求められている。しかし、清酒は、酒税法において、使用できる原料が、米、米麹、醸造アルコール、酵素、及び水等に限定されているため、ビール風味飲料等と同様の方法によって糖類を低減することは困難である。このため、清酒の糖類を低減する方法として、清酒に特化した糖質の低減方法が開発されている。ここで、糖質は、例えば、健康増進法の栄養表示基準(平成15年厚生労働省告示第176号)に定義されており、食品の全重量から、タンパク質、脂質、食物繊維、灰分、エタノール、及び水分の合計重量を控除して算定したものである。糖質には、グルコース等の単糖類の他に、二糖類、三糖類等を含むオリゴ糖類、多糖類、糖アルコール、糖エステル、グリセロール、有機酸等が含まれる。
例えば、特許文献1には、醪を仕込む際にα−グルコシダーゼ等の酵素を添加し、醪中のオリゴ糖類、多糖類等を酵母が資化できるグルコースにまで分解することにより、醪の発酵を促進させて清酒の糖質を低減する方法が開示されている。
特開2006−61153号公報
特許文献1に記載の醸造方法は、α−グルコシダーゼ等の酵素を用いることから、ある程度まで糖質を低減することができると考えられる。しかし、醪の発酵が十分ではないため、清酒の糖質を十分低減することができない虞がある。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、醪の発酵を促進させることにより、清酒の糖質を低減した糖質低減清酒の製造方法を提供することを目的とする。
即ち、本発明は以下の発明を含む。
[発明1]
醪を仕込む仕込み工程と、醪を発酵させる発酵工程と、を包含する糖質低減清酒の製造方法であって、
前記発酵工程において、前記醪を強制的且つ高頻度に撹拌する糖質低減清酒の製造方法。
[発明2]
前記発酵工程における撹拌に撹拌羽根を用いる場合において、
前記撹拌羽根の先端周速度を0.4〜0.8m/sに設定する発明1に記載の糖質低減清酒の製造方法。
[発明3]
前記発酵工程において、前記醪を醪日数4日目まで常時撹拌する発明1又は2に記載の糖質低減清酒の製造方法。
[発明4]
前記仕込み工程における総米に対する汲水歩合は、150%以上である発明1〜3の何れか一項に記載の糖質低減清酒の製造方法。
本構成の糖質低減清酒の製造方法は、醪を強制的且つ高頻度に撹拌することにより、酵母が活性化して醪の発酵が促進され、清酒の糖質を十分に低減することが可能となる。
図1は、醪日数と醪中のアルコール濃度との関係を示したグラフである。
一般の清酒の製造方法では、原料米を蒸した蒸米に、米麹、酒母、及び汲水を添加して醪を仕込み、この醪を発酵させた後、清酒と酒粕とに分離する。この醪を発酵させる過程では、醪を仕込んで数時間が経過すると、酵母のアルコール発酵により醪の上部に二酸化炭素からなる気泡による層が形成され、次いで醪に含まれる酵母、蒸米、麹由来の成分などの複合成分が当該気泡と混ざり合って山状に盛り上がった状態になる。そこで、醪を均一にするために、汲掛器を使用して、汲掛器内部に溜まった液を醪の上部の固形物にかける汲掛けや、醪に櫂棒を入れて固形物と液部とを混ぜる荒櫂を行っている。これらは、醪の固形物を潰さないように醪をかき混ぜる方法であり、醪の固形物を潰して酵母の活性を上げ過ぎると、酵母の発酵が早くなり過ぎて、早湧き等が生じ、その結果清酒の風味が悪くなる虞があるため当該手法が使用されている。しかし、糖質低減清酒を製造するためには、酵母の活性を上げて、清酒中の糖質を減少させる必要がある。そこで、本発明者らは、醪を発酵させる際に、醪を強制的且つ高頻度に撹拌して糖質低減清酒を製造することを試みた。その結果、清酒の風味を維持しながら、清酒の糖質を十分低減することができるという新しい知見を得た。
以下、本発明に係る糖質低減清酒の製造方法に関する実施形態を図1に基づいて説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施形態や図面に記載される構成に限定されることを意図しない。
[清酒の製造方法]
本発明の低糖含量清酒の製造方法は、掛米、米麹、及び酒母を製造する準備工程と、準備工程で得られた掛米、米麹、及び酒母に汲水を添加して醪を仕込む仕込み工程と、仕込み工程で得られた醪を強制的且つ高頻度に撹拌して酵母を活性化させる発酵工程と、醪から酒粕を除去し、清酒画分を回収する固液分離工程と、を包含している。
清酒においては、グルコースを含む単糖類、二糖類、三糖類、オリゴ糖類、多糖類等の他に、エチル−α−D−グルコシド、α−D−グルコシルグリセロール、グリセロール、及び乳酸をはじめとする有機酸等が糖質として多く含まれている。
(準備工程)
準備工程は、掛米、米麹、及び酒母を製造する工程である。掛米は、清酒の醪の仕込みに使用される米のことであり、米麹は、麹米に麹菌を繁殖させたものであり、酒母は、清酒酵母を大量培養したものである。ここで、本明細書中で用いられる「麹米」とは、米麹に使用される米のことを意味する。仕込みに使用する掛米には、掛米を液化した融米を使用してもよい。融米を使用する仕込みは、液化仕込みといわれ、清酒中の糖質をさらに低減することができる。掛米及び麹米の重量は洗米をする前の白米の重量である。また、本明細書中で用いられる「総米」とは、醪の仕込みに用いられる洗米をする前の白米の総重量を意味し、掛米及び麹米の合計重量が総米となる。掛米に融米を使用する場合、総米における融米の比率は、例えば、融米の調製に使用した掛米として換算することができる。
融米は、例えば、掛米に相当する白米や粉砕白米に、仕込み水及び耐熱性酵素であるα−アミラーゼを添加し、60〜90℃で液化することにより得られる。掛米の液化条件としては、例えば、白米に対して約150〜170重量%の水をゆっくり攪拌しながら投入し、次に、白米の約5000分の1重量の耐熱性α−アミラーゼ剤を添加して、常温で約30〜40分間保持し、吸水を進める。次に、攪拌速度を上げて米を砕きながら約70〜75℃まで昇温して、約10〜15分間保持し、更に約85〜90℃まで昇温し、約10〜15分間保持して液化を進行させる。液化終了後、約15℃付近まで冷却して、発酵タンクへ仕込む。また、液化だけでなく糖化まで行う場合には、液化終了後60℃付近まで冷却した時点で、白米の3000分の1重量の糖化酵素剤(グルコアミラーゼ)を添加して約50〜55℃付近で約4〜6時間糖化させた後、冷却して発酵タンクへ仕込む。
清酒の製造に使用される原料米の種類としては、例えば、コシヒカリ、ヒノヒカリ、ひとめぼれ、あきたこまち、キヌヒカリ、はえぬき、キララ397、七つ星、星の夢、つがるロマン(登録商標)、ゆめぴりか(登録商標)等の一般米でもよいが、好ましくは、山田錦、五百万石、美山錦、雄町、八反錦、吟風、日本晴、祝等の酒造好適米である。精米歩合は、30〜85%であり、好ましくは50〜75%であり、より好ましくは60〜70%である。
酒母は、酒母用の掛米及び米麹に汲水を加えて酵母を大量に増殖させたものである。使用する酵母としては、清酒の醸造に使用できる酵母であればよいが、その殆どが出芽酵母のSaccharomyces cerevisiaeである。その中でも特に醸造特性の高い株として、公益財団法人日本醸造協会から頒布されている泡あり酵母のきょうかい酵母1号、2号、3号、4号、5号、6号、7号、8号、9号、10号、11号、12号、13号、14号、15号;泡なし酵母のきょうかい酵母601号、701号、901号、1001号、1401号、1501号、1601号、1701号、1801号、KT901号;尿素非生産のKArg7号、KArg9号、KArg10号等が挙げられる。また、他の酵母としては、例えば、株式会社秋田今野商店の取り扱い酵母である、清酒用No.2、No.4、No.4A、No.5、No.9A、No.12、No.17、No.24、No.25、No.32、No.35;各県工業総合研究センターが開発した、まほろば華酵母、吟醸2号、宮城マイ酵母、愛美酵母、泡なし宮城マイ酵母、秋田流・花酵母、秋田純米酵母、こまち酵母、秋田流・雅酵母;学校法人東京農業大学が開発した花酵母等が挙げられる。また、上記酵母を変異導入・交配などの技術で、育種あるいは改良した酵母でもよい。酒母は、酒母用の掛米及び米麹に汲水を加えて酵母を大量に増殖させたものであるため、酒母の代わりに上記酵母を純粋培養したものを添加することも可能である。この際には、乳酸を添加する必要がある。
米麹は、蒸した米に麹菌(Aspergillus oryzae)を繁殖させて作られる。清酒の製造に使用する米麹は、平成元年11月22日 国税庁告示第8号「清酒の製法品質表示基準を定める件[1]」において、「米こうじとは、白米にこうじ菌を繁殖させたもので、白米のでんぷんを糖化させることができるものをいい、特定名称の清酒は、こうじ米の使用割合(白米の重量に対するこうじ米の重量の割合をいう。以下同じ)が、15%以上のものに限るものとする。」と定められている。使用する麹菌としては、清酒の製造に使用できるものであればよく、例えば、株式会社ビオックの大吟醸、酒母用、醪用、機械製麹用、純米吟醸用、純米酒用、本醸造用、経済酒用、良い香り、液化仕込み用や、樋口松之助商店のひかみ吟醸用、ハイ・G、ダイヤモンド印、もと立用、醪用、ひかみ醪用20号、ひかみ醪用30号、ひかみ特選粉状A、エースヒグチ、ヒグチ粉状菌、白峯、かおり、強力糖化菌、液化仕込み用等があげられる。総米は、掛米及び米麹に使用される麹米の合計である。総米重量に対する麹米の重量の百分率(麹歩合)は、例えば、5〜100%であり、好ましくは、15〜50%である。
(仕込み工程)
仕込みは、上記のように調製した掛米、米麹、及び酒母を発酵タンクに投入して行う。仕込みでは、一段で掛米、米麹、及び汲水を全て添加してもよいが、酵母濃度が薄まらないように、三段仕込みが好ましい。三段仕込みは、醪造りにおいて、酒母に米麹及び掛米を三段階に分けて添加する方法であり、酵母に与える環境の変化を最小限にして、酵母の活性を損なわないようにする方法である。三段仕込みは、第一段を初添、第二段を仲添、第三段を留添と呼ぶ。仕込みにおいては、グルコアミラーゼ又はトランスグルコシダーゼを適宜添加してもよい。これにより、清酒中の糖質をさらに低減することができる。仕込み工程において液化仕込みを行う場合は、掛米に使用する蒸米に代えて、原料米を液化した融米を使用する。液化仕込みを用いると、融米の糖化と酵母の発酵とがバランス良く進行するため、良質な清酒を容易に製造することができる。
掛米及び麹米の合計重量(kg)に対する汲水の合計容量(L)の百分率(%)を、汲水歩合という。本発明に係る糖質低減清酒の製造方法では、使用した掛米及び麹米の合計重量に対する使用した汲水の合計容量の汲水歩合は、50%以上であり、好ましくは100%〜400%であり、より好ましくは150%〜300%である。これにより、醪の発酵が促進されるため、清酒の糖質を効率よく低減することができる。汲水は、例えば、三段仕込みの場合、使用した掛米及び麹米の合計重量に対する使用した汲水の合計容量の汲水歩合が150%以上となるように添加する。この場合、初添のときに汲水を多く添加してもよいし、仲添のときに汲水を多く添加してもよいし、留添のときに汲水を多く添加してもよいが、初添、仲添、及び留添に添加する夫々の汲水の汲水歩合が同じ値(150%以上)となるように添加することが好ましい。
トランスグルコシダーゼ(EC3.2.1.20)はα−グルコシダーゼであり、基質の非還元末端から加水分解によりグルコースを遊離する作用を有し、基質濃度が高いときは、グルコースを転移させる作用を有する。トランスグルコシダーゼの起源は、植物、動物、又は微生物が挙げられる。好ましくは糸状菌由来、より好ましくはアスペルギルス属糸状菌由来、さらに好ましくはアスペルギルス・ニガー由来のトランスグルコシダーゼが使用される。
トランスグルコシダーゼの使用量は、白米1g当たり、約50U〜約100Uが好ましく、約60U〜約100Uがより好ましく、約70U〜約100Uがさらに好ましい。トランスグルコシダーゼの使用量を、白米1g当たり、50Uより低く添加すると、グルコースにまで十分に分解されず、清酒中の糖質を十分に低下させる効果が得られない虞がある。一方、白米1g当たり、100Uを超えて添加しても、清酒に含まれる糖質を低下させる効果はそれ以上顕著に向上せず、経済的にも不利である。白米量は、使用した白米(掛け米や麹米などを含む)の全量を意味する。また、トランスグルコシダーゼを何回かに分けて添加する場合においても、トランスグルコシダーゼの使用量は、トランスグルコシダーゼの総使用量を意味する。
(発酵工程)
一般の清酒の製造方法では、醪を発酵させる過程において、櫂棒等を用いて醪を強制的且つ高頻度に撹拌することは行わず、汲掛けや荒櫂が行われる。発酵の過程では、醪を仕込んで数時間が経過すると、水を吸収した蒸米及び麹により形成される固形物が、酵母のアルコール発酵により発生する二酸化炭素により醪の上部に山状に盛り上がった状態になる。汲掛けや荒櫂は、固形物を潰さないように固形物と液部とを混ぜるために行われる操作である。これに対して、本発明に係る糖質低減清酒の製造方法では、発酵工程において、醪を強制的且つ高頻度に撹拌して酵母の発酵を促進させている。これにより、清酒に含まれる糖質を低減することができる。醪を強制的且つ高頻度に撹拌する条件は、醪全体を少なくとも4時間おきに15分以上撹拌する。
醪の撹拌方法としては、従来の櫂棒を用いて醪を撹拌することもできるが、好ましくは撹拌装置を用いて醪を撹拌することである。撹拌装置を用いることで、醪全体を容易に撹拌することができる。撹拌装置を用いた醪の撹拌方法としては、撹拌羽根による撹拌、スタティックミキサーによる攪拌、曝気装置による撹拌、振とう機による攪拌、発酵タンク下部からの強制通気撹拌等を挙げることができるが、撹拌羽根による撹拌が好ましい。撹拌羽根を用いて攪拌を行うと、醪の泡の発生を抑えることができる。撹拌羽根は、例えば、ピッチドパドル、アンカー翼、プロペラ、リボン翼、鋸歯ディスクタービン、ピッチドタービン等を使用することができる。
醪の発酵期間が30日の場合、仕込み工程終了後の醪の発酵の経過日数、いわゆる醪日数(三段仕込みの場合、留添を1日目とする)の少なくとも4日目まで、醪全体を常時撹拌することが好ましい。これにより、酵母の活性を効率的に向上させることができる。醪の状態が液状になると、常時撹拌から適宜撹拌に切り替え、醪を均一にする。これにより、清酒に含まれる糖質を確実に低減することができる。
醪を撹拌する撹拌羽根の先端周速度は、0.4〜0.8m/sに設定することが好ましい。撹拌羽根の先端周速度を0.4m/sより遅く設定すると、醪を均一に撹拌することができず、清酒に含まれる糖質を十分に下げることができない虞がある。一方、撹拌羽根の先端周速度を0.8m/sより速く設定しても、清酒に含まれる糖質を低下させる効果はそれ以上は顕著に向上せず、経済的にも不利である。撹拌羽根の先端周速度は、撹拌羽根の回転速度を変更して調整してもよいし、撹拌羽根のサイズを変更して調整してもよい。
撹拌羽根の回転径は、発酵タンクの内径の0.1〜0.8倍程度であるのが好ましく、0.2〜0.4倍であるのがより好ましい。撹拌羽根の回転径が、発酵タンクの内径の0.1倍より小さいと、醪を均一に撹拌することができない虞がある。一方、撹拌羽根の回転径が、発酵タンクの内径の0.8倍を超えると、撹拌羽根の先端と発酵タンクの内壁との間が狭くなり過ぎて、その間に存在する醪が撹拌羽根の回転により大きな剪断力を受けることになる。その結果、醪の発酵が低下する虞がある。
醪の発酵温度は、例えば、約5〜25℃であり、好ましくは約10〜20℃である。醪の発酵温度を5℃より低く設定すると、清酒に含まれる糖質を十分下げることができない虞がある。一方、25℃を超えて設定しても、清酒に含まれる糖質を効率よく低下させることができず、雑味が多くなり、良好な清酒を製造することができない虞がある。醪の発酵温度は、一定の温度で発酵を行ってもよいが、醪の発酵初期段階において、発酵温度を低温に維持し、発酵が進むにつれて徐々に昇温するようにしてもよい。これにより、吟醸香であるカプロン酸エチルの生成量が増加する。醪の発酵期間は、例えば、約20〜40日間であり、約20〜30日間が好ましい。
(固液分離工程)
固液分離工程では、発酵が終了した醪から、酒粕を除去し、清酒画分を回収する。固液分離を、上槽ともいい、例えば、圧搾、ろ過等により、酒粕と清酒画分(上槽酒)とに分離される。得られた上槽酒は、さらに必要に応じて、ろ過処理、活性炭処理、加熱処理等が行われる。
[糖質低減清酒の製造方法の評価]
本発明の糖質低減清酒の製造方法による清酒の糖質低減効果を確認するために、試験醸造を行って、清酒中に含まれるグルコース濃度及び糖質濃度を評価した。
(試験醸造)
実施例1、実施例2、及び比較例は、以下の表1に示す配合で、汲み水200%、総米2.5kgの液化液の三段仕込みにより試験醸造を行った。醪の仕込みにおける酒母の醪日数は−8日目、初添の醪日数は−2日目、仲添の醪日数は0日目、留添の醪日数は1日目である。
Figure 0006328415
掛け米及び麹米は、精米した日本晴を使用した。掛米の液化は、白米に対して150%の水を攪拌しながら投入し、白米1kg当たり0.2gの耐熱性α−アミラーゼ(天野エンザイム株式会社)を添加して常温で40分間保持し、吸水を進めた。次いで、攪拌速度を上げて米を砕きながら75℃まで昇温して15分間保持し、更に90℃まで昇温して15分間保持して米を液化させ、約15℃まで冷却して融米を調製した。酒母を入れた発酵タンクに、上記の融米及び米麹を、初添、仲添、留添の3回に分けて添加した。仕込み温度(仕込み後の糖化、発酵温度)は15℃の一定とした。酵母は、きょうかい酵母901号を使用し、麹菌は、清酒用種麹の液化仕込み用(株式会社樋口松之助商店)を使用した。
(攪拌条件)
〔実施例1〕
実施例1は、醪日数4日目まで常時撹拌を行い、それ以降4時間おきに15分間撹拌を行った。発酵タンクは、円筒形のステンレスタンク(直径24cm×高さ34cm)を使用し、撹拌羽根は、プロペラ型撹拌羽根(4枚羽根、型番:No.0000741000、IKAジャパン株式会社製)を使用して先端周速度を0.4m/s(回転径:5cm、回転数:150rpm)に設定した。
〔実施例2〕
実施例2は、醪日数4日目まで常時撹拌を行い、それ以降4時間おきに15分間撹拌を行った。発酵タンクは、円筒形のステンレスタンク(直径31cm×高さ30cm)を使用し、撹拌羽根は、プロペラ型撹拌羽根(4枚羽根、型番:No.0000741300、IKAジャパン株式会社製)を使用して先端周速度を0.8m/s(回転径:10cm、回転数:150rpm)に設定した。
〔比較例〕
比較例は、発酵タンクとして円筒形のステンレスタンク(直径24cm×高さ34cm)を使用し、撹拌は行わなかった。
(グルコース濃度及び糖質濃度)
表2及び表3に、実施例1、実施例2、及び比較例の醪日数4日目以降のグルコース濃度、及び醪日数14日目以降の糖質濃度の分析結果を示す。グルコース濃度及び糖質濃度の分析方法は、以下の方法である。
(1)グルコース濃度:全自動グルコース測定装置(型番GA−1152、アークレイ株式会社製)を用いて測定した。
(2)糖質濃度:糖質重量は、食品の重量から、タンパク質、脂質、食物繊維、灰分、及び水分の各重量を控除して算出した。タンパク質はケルダール法、脂質はソックスレー抽出法、食物繊維は酵素−重量法、灰分は直接灰化法、水分は加熱乾燥法を用いて測定した。
Figure 0006328415
Figure 0006328415
実施例1及び2は、表2に示すように、グルコース濃度が、醪日数9日目には0.05(g/dl)未満に低下し、醪日数23日目には0.01(g/dl)程度まで低下した。実施例1より撹拌羽根の先端周速度を上げた実施例2は、さらにグルコース濃度が低下し、醪日数18日目には0.01(g/dl)未満にまで低下した。実施例1及び2の製造方法は、非常に優れた糖質低減清酒の製造方法であることが示されている。これに対し、比較例の醸造方法は、液化仕込みを使用しているため、清酒中の糖質をある程度まで低減することは可能であるが、グルコース濃度は実施例1に比べて5.5倍、実施例2に比べて9倍であり、十分に低下できているとは言えなかった。糖質濃度の関しても、表3に示すように、実施例1及び2は比較例と比べて糖質濃度が低減しており、糖質低減清酒を製造するのに有効な方法であることが示された。
(アルコールの生産性)
図1は、醪日数と醪中のアルコール濃度との関係を示したグラフであり、アルコール濃度の経時変化を表している。アルコール濃度は、蒸留−密度(比重)法である振動式密度計法を用いて測定した。また、各検体に関して生産性を確認するために、酒化率(L/t)を算出した。酒化率は、1トンの白米から生成されるアルコール量(L)の割合を百分率で表したものである。以下の表4に各上槽酒の分析結果を示す。
Figure 0006328415
実施例1及び実施例2のアルコール生産性は、比較例と比べて、略同等のアルコールの生産性を備えていた。従って、本発明の糖質低減清酒の製造方法は、十分に実用に耐えるものであることが示された。
(官能試験)
官能試験は、熟練した8人のパネリストで、上槽酒の味わいについてフリーコメントを記載する形式で実施した。その結果、実施例1の上槽酒に関しては、比較例の上槽酒と比較して、「比較例の風味に似ているが、よりすっきりした味わいになっている」とのコメントが多く得られた。実施例2の上槽酒に関しては、「非常に淡麗で飲みやすい」等のコメントが多く得られた。実施例1及び実施例2の上槽酒は、清酒中の糖質が減少したため、すっきりとした味わいになったと考えられる。
本発明に係る糖質低減清酒の製造方法は、清酒の製造において利用可能であり、本醸造、純米酒、吟醸酒、純米吟醸酒の製造に利用することができる。

Claims (4)

  1. 醪を仕込む仕込み工程と、醪を発酵させる発酵工程と、を包含する糖質低減清酒の製造方法であって、
    前記仕込み工程において、掛米を液化した融米を使用した液化仕込みによって前記醪を仕込み、
    前記発酵工程において、前記醪を強制的且つ高頻度に撹拌する糖質低減清酒の製造方法。
  2. 前記発酵工程における撹拌に撹拌羽根を用いる場合において、
    前記撹拌羽根の先端周速度を0.4〜0.8m/sに設定する請求項1に記載の糖質低減清酒の製造方法。
  3. 前記発酵工程において、前記醪を醪日数4日目まで常時撹拌する請求項1又は2に記載の糖質低減清酒の製造方法。
  4. 前記仕込み工程における総米に対する汲水歩合は、150%以上である請求項1〜3の何れか一項に記載の糖質低減清酒の製造方法。
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