<第1実施形態>
以下の説明において、元画像データとは、ユーザがコンピュータ上で作成したり、スキャナ等から読み取られたり等して、コンピュータ内に予め記憶されているドキュメント、画像データ等をいう。また、印字データとは、元画像データに対してRIP処理やハーフトーン処理を行うことで得られる複数の画素の配列により構成されるデータをいう。
なお、以下の説明において、各図には方向関係を明確にするため、Z軸を鉛直方向とし、XY平面を水平面とする座標系を適宜付している。各座標系において、矢印の先端が向く方向を+(プラス)方向とし、逆の方向を−(マイナス)方向とする。
<1−1.インクジェット記録装置の構成>
図1から図6までの図面を適宜用いて、本発明に係るインクジェット記録装置の構成について説明する。図1に、本発明に係るインクジェット記録装置の概略構成を示す。
図1は、本発明に係るインクジェット記録装置1とその周辺機器の概略構成を示す模式図である。インクジェット記録装置1は、長尺シート状の記録媒体7と、記録媒体7を図1中のY方向(すなわち、記録媒体の長手方向であり、以下、適宜「搬送方向」と記載する)に移動させる移動機構2と、図1中のX方向(すなわち、記録媒体の搬送方向と直交する方向であり、以下、適宜「幅方向」と記載する)に延在し、記録媒体7にインクの微小液滴を吐出するヘッドユニット3と、移動機構2、ヘッドユニット3、およびこれらの構成を制御する制御部9を備える。
移動機構2は、X方向に延在する複数のローラ21を、Y方向に配列して備える。複数のローラ21の(−Y)側には、ロール状に記録媒体7を巻き付けて保持する供給部22が設けられ、複数のローラ21の(+Y)側には、ロール状に記録媒体7を巻き付けて保持する巻取部23が設けられる。
移動機構2のローラ21には記録媒体7のY方向の移動速度を検出するエンコーダ24が設けられ、制御部9がエンコーダ24の出力にもとづいて巻取部23のモータの回転を制御することにより、記録媒体7が(+Y)方向に一定速度にてヘッドユニット3の下を通過するように搬送される。記録媒体7の搬送時には、供給部22が有するモータ(図示省略)により、記録媒体7に対して(−Y)方向の負荷(テンション)を付与することで、複数のローラ21上の記録媒体7が波打つことなく滑らかに移動する。
ヘッドユニット3は、移動機構2に対して図1中の(+Z)側(すなわち、移動機構2の上方)に設けられる。制御部9が、後述の印字データにもとづいて、ヘッドユニット3による記録媒体7へのインクの吐出を制御することにより、記録媒体7上に画像を記録する。
本実施形態においては、複数のヘッドユニット3がインクジェット記録装置1に設けられる。図1に示すように、複数のヘッドユニット3は、Y方向に4個配列しており、(−Y)側から、C(cyan:シアン)、M(magenta:マゼンタ)、Y(yellow:イエロー)、K(black:ブラック)といった、それぞれ異なる色のインクを記録媒体7へ供給する。なお、ヘッドユニット3の構造や画像記録動作は、インクが異なる以外は、それぞれ同様であるため、以降は(+Y)側にあるKインクのヘッドユニット3を代表として説明する。
記録媒体7としては、例えば普通紙やコート紙等の用紙、ポリエチレンテレフタレート(PET)等を含む樹脂フィルム、またはアルミ板等の金属等、様々な部材を使用することができる。本実施形態では、インクジェット記録に多く用いられる普通紙を用いる。また、記録媒体7の形状としては、本実施形態では長尺シート状としているが、本発明の実施に関してはこれに限られず、枚葉紙を使用することもできる。
図2は、ヘッドユニット3の構成を示す底面図であり、Y方向を縦向きに図示している。ヘッドユニット3は、複数のヘッド31を配列して備える。複数のヘッド31は、X方向に配列することで、ヘッド列33を構成する。複数のヘッド列33を、ヘッド31が千鳥状に配列するように、Y方向に並べることで、ヘッドユニット3が構成される。なお、本実施形態では、X方向における記録媒体7の幅と略同一の幅のヘッドユニット3を用いるが、本発明の実施に関してはこれに限られず、X方向において記録媒体7の幅より短い幅のヘッドユニット3を用いることも、X方向において記録媒体7の幅より長い幅のヘッドユニット3を用いることもできる。
図3は、1つのヘッド31の構成を示す底面図であり、Y方向を縦向きに図示しており、(−Y)側(すなわち、供給部22から搬送される記録媒体7が先に到達する、搬送方向の上流側)を下側に図示している。ヘッド31は、ノズル311、312、313、314、315、316、317、318、319、320、321、322を備える。それぞれのノズルは、互いに略同一の構造を有する。
これらのノズルは、それぞれX方向に等間隔に、所定のドット密度に相当するピッチにて、(−X)側から番号順に配置される。所定のドット密度は、記録媒体7へ記録する画像に必要とされる解像度に依存し、例えば360dpi(dots per inch)や、720dpiのドット密度が用いられる。なお、本実施形態では、720dpiのドット密度を用いる。
本実施形態では、上記のように1つのヘッドに12個のノズルが設けられているが、本発明の実施に関してはこれに限られず、より多くのノズルがヘッドに設けられていてもよい。例えば、1つのヘッドにおいて、X方向に所定のピッチで配列された200個のノズルが設けられていてもよい。
また、本実施形態では、図3に示すようにノズル311、312、313、314が(−Y)側から順に配置されているが、例えば、(−Y)側から、ノズル313、311、314、312の順に配置される等、本発明の実施に関してノズルのY方向の並び順は図3に記載の順番に限られない。
図4は、図3中においてノズル311を通るA−A'線に沿った、ヘッド31の断面概略図であり、ヘッド31の内部構造の概略を示す図である。ここでは、代表的にノズル311を含むヘッド31の断面概略図を用いて説明するが、他のノズル(例えば、ノズル312)も、図4と略同様の構造を有する。
図4において、ヘッド31は、ベース341と、フレーム342と、振動板343と、圧電素子345と、流路板348と、ノズル板349と、ノズル311を備える。ベース341は、ヘッド31において固定設置されており、圧電素子345が装着される。圧電素子345は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)の圧電素子を複数積層した積層型の圧電素子である。圧電素子345は、振動を伝達する振動板343のダイヤフラム部344と島状凸部を介して接合されている。
フレーム342は、樹脂材料にて形成されており、共通液室346を形成する。共通液室346には図示しないインク供給口が設けられ、このインク供給口を介して共通液室346内にインク81が供給され、収容されている。また、流路板348と振動板343は、インクに圧力を与える圧力室347を形成する。圧力室347は共通液室346と連通しており、圧力室347には、振動板343のダイヤフラム部344が面している。
ノズル板349には、インク81を液滴83として吐出するための微細な吐出口を有するノズル311が形成されている。ノズル311は、圧力室347と連通している。
本実施形態においては、上記のように、圧電素子によってインクに圧力を与えることでノズルからインクを吐出する、いわゆるピエゾ方式のヘッドを用いるが、本発明の実施に関してはこれに限られず、他の吐出方式によるインクジェットヘッドを用いてもよい。例えば、インクを急速に加熱して気化させ、その時に発生する気泡の圧力を利用してインクを吐出する、いわゆるサーマル方式のヘッドを用いてもよい。
図5は、制御部9によるインクジェット記録装置1の機能構成を示すブロック図である。本実施形態におけるインクジェット記録装置1の動作には、制御部9、コンピュータ11、およびディスプレイ13が用いられる。
コンピュータ11は、記録媒体7に記録された元画像データからインクジェット記録用の印字データを生成し、印字データを制御部9に出力する。コンピュータ11の構成については、後述する。
制御部9は、全体制御部901と、インターフェイス(I/F)902と、吐出制御部903と、移動制御部904と、タイミング制御部905とを有する。全体制御部901は、インターフェイス(I/F)902を介してコンピュータ11から入力される印字データや、吐出制御部903、移動制御部904、およびタイミング制御部905から入力される情報にもとづいて、制御部9の全体的な制御を行う。
吐出制御部903は、全体制御部901から入力される制御信号にもとづいて、ヘッド31におけるインク吐出の制御を行う。移動制御部904は、全体制御部901から入力される制御信号にもとづいて、移動機構2の各部の制御を行う。タイミング制御部905は、エンコーダ24から入力された情報を、全体制御部901へフィードバックし、ヘッド31からのインク吐出のタイミングを制御する。
ディスプレイ13は、全体制御部901から出力される情報にもとづいて、インクジェット記録装置1の動作状況等を表示する。
図6は、コンピュータ11の内部構成を示す図である。コンピュータ11は、各種演算処理を行うCPU101、基本プログラムを記憶するROM103、および各種情報を記憶するRAM105をバスラインに接続した一般的なコンピュータシステムの構成となっている。バスラインにはさらに、後述のハーフトーン処理がなされる元画像データを記憶するメモリ109、様々な情報を記憶する固定ディスク107、コンピュータ11における各種情報の表示を行うディスプレイ111、作業者からの入力を受け付けるキーボード
113、作業者からの入力を受け付けるマウス115、磁気ディスク等のコンピュータ11が読取可能な記録媒体127からの情報の読取りや、記録媒体127への情報の書込みを行う読取/書込装置117、および制御部9と通信を行う通信部119が、適宜、インターフェイス(I/F)を介する等して接続される。
固定ディスク107は、読取/書込装置117を介して記録媒体127から読み出されたプログラム129を記憶する。また、コンピュータ11を用いてプログラム129を実行する際には、固定ディスク107からRAM105の一時記憶部125へプログラム129が、適宜、コピーされる。
RAM105は、プログラム129をCPU101が実行するためのワークエリアである。CPU101がRAM105の一時記憶部125に記憶されたプログラム129に従って演算処理を実行することにより、コンピュータ11では元画像データにもとづく印字データの生成および印字データの変更が行われる。CPU101によって上記のようにプログラム129が実行された結果、RAM105において、後述する画像データ処理部123、または印字データ処理部121の機能が実現する。
画像データ処理部123は、メモリ109に記憶された元画像データに対してRIP(Raster Image Processor)による処理(以降、単に「RIP」と記載する)、およびハーフトーン処理を行い、元画像データにもとづく印字データを生成する。画像データ処理部123によるRIP、およびハーフトーン処理は、既知の手法を使用することができる。また、生成された印字データは、メモリ109に保存される。
印字データ処理部121は、メモリ109に記憶された印字データに対して後述の補正処理を行う。印字データ処理部121により補正された印字データ等は、適宜、メモリ109へ記憶され、通信部119を介して制御部9に転送される。
<1−2.インクジェット記録装置における画像記録動作>
次に、本実施形態におけるインクジェット記録装置の画像記録動作について、図1から図18までの図面を適宜用いて説明する。図7に、本実施形態に係るインクジェット記録装置による画像記録動作をフローチャートとして示す。
図7は、図1に示すインクジェット記録装置1の画像記録動作を説明するフローチャートである。なお、本実施形態においては、ユーザは予め、例えば図6におけるコンピュータ11のキーボード113やマウス115を用いて、記録に用いる印字データに対し、本発明に係る補正処理を行う設定である補正モードの「ON」、または「OFF」をコンピュータ11へ入力している。
まず、コンピュータ11によって元画像データをRIP処理する、RIP処理工程(ステップS11)を行う。RIP処理工程が開始されると、コンピュータ11によって、元画像データから、C(cyan:シアン)、M(magenta:マゼンタ)、Y(yellow:イエロー)、K(black:ブラック)の色別の元画像データが生成される。次に、コンピュータ11によって、色別の元画像データのそれぞれから、画素により構成される色別の画像データを生成する。
ここで、色別になったC、M、Y、Kの4個の画像データが生成される。これら画像データのそれぞれに、後述する処理を同様に行うため、以降はKの画像データを代表として説明する。
次に、RIP処理工程(ステップS11)により生成された画像データをコンピュータ11によってハーフトーン処理する、ハーフトーン処理工程(ステップS12)を行う。ハーフトーン処理工程が開始されると、コンピュータ11によって、画像データから、1 bit TIFF等の形式で構成される印字データが生成される。図8に、ハーフトーン処理工程(ステップS12)において生成される印字データの一例を示す。
図8は、ハーフトーン処理工程(ステップS12)により生成される印字データ6を示す図である。図8中では、Y方向を縦向きに図示しており、後述する印刷工程では、印字データ6の上側(すなわち、(+Y)側)から、印字データ6にもとづくヘッドユニット3の制御が行われる。また、図8においてX方向を横向きに図示している。
図8中の格子状に区切られた領域1つずつが、印字データ6における画素Dを示しており、それぞれが、X方向、およびY方向の座標情報を有している。座標情報を画素Dに含めるために、以降は画素Dを、適宜、D(X,Y)として示す。また、図8では、X座標を印字データ6の下側に、Y座標を印字データ6の左側に並べて表示している。例えば、図8においてD(X,Y)により指示されている領域は、X座標が409であり、Y座標が501であるため、この画素DをD(409,501)と示す。
Y方向に配列した複数の画素Dは、後述する印刷工程において、記録媒体7上に一のノズルから搬送方向に一列に記録される画素である。ここで、便宜上、このY方向に配列した画素Dをまとめて搬送方向画素列Dyとよび、また、搬送方向画素列DyについてX座標の情報を含めて示す際にはDy(X)と示す。例えば、図8のX座標405において、Y方向に配列する画素Dをまとめて搬送方向画素列Dy(405)と示す。
X方向に並ぶ複数の搬送方向画素列Dyは、それぞれX方向において異なる位置に配列するノズルと対応する。後述する印刷工程では、搬送方向画素列Dyに含まれる画素Dが、該対応するノズルを制御する。図8と図3の例では、Dy(401)がノズル311を、Dy(402)がノズル312を、Dy(403)がノズル313を、Dy(404)がノズル314を、Dy(405)がノズル315を、Dy(406)がノズル316を、Dy(407)がノズル317を、Dy(408)がノズル318を、Dy(409)がノズル319を、Dy(410)がノズル320を、Dy(411)がノズル321を、Dy(412)がノズル322を、それぞれ制御する。
また、搬送方向画素列Dyに含まれる複数の画素Dは、Y座標の若い番号順に、対応するノズルにおける液滴の吐出を制御する。図8と図3の例では、搬送方向画素列Dy(405)にもとづくノズル315の制御は、D(405,501)、D(405,502)、D(405,503)といった順に行われる。
画素Dは、図3の各ノズルにおける液滴の吐出、または非吐出を、画素Dの印字情報により制御する。印字情報は、図8において格子内の網掛けの有無により示しており、ノズルから液滴を吐出させる情報である印字画素601を網掛けの有る格子で、ノズルから液滴を吐出させない情報である非印字画素602を網掛けの無い格子で示している。
これらの印字情報は、画素Dの座標情報と組合せた上で、コンピュータ11内のメモリ109等に記憶される。例えば、座標情報を2次元配列のインデックス、印字情報を配列の値とする。
図7のフローチャートに戻る。ハーフトーン処理工程(ステップS12)により印字データが生成されると、次に、コンピュータ11において補正モードが「ON」に設定されているか否かを判別する補正モード確認工程(ステップS13)を行う。
補正モードが「ON」に設定されていない場合、すなわち「OFF」に設定されている場合は(図7のS13においてNOの方向の矢印に対応する)、ハーフトーン処理工程(ステップS12)により生成された印字データ6を、コンピュータ11の通信部119(図6)から、インクジェット記録装置1の制御部9に転送する。そして、印字データ6にもとづいて、インクジェット記録装置1による印刷工程(ステップS15)を行う。
補正モードが「ON」に設定されている場合は(図7のS13においてYESの方向の矢印に対応する)、コンピュータ11が印字データ6を補正する、補正処理工程(ステップS14)を実行した後に、印刷工程(ステップS15)を行う。この補正処理の詳細については、後述する。
次に、補正モード確認工程(ステップS13)において、補正モードが「OFF」に設定されていると判別された後に、すなわち、印字データが補正されない状態で実行される印刷工程(ステップS15)について説明する。
印刷工程(ステップS15)が開始されると、まず、図8に示す印字データ6が、コンピュータ11の通信部119からインクジェット記録装置1の制御部9に入力される。次に、移動制御部904により、図1に示す移動機構2を駆動させ、記録媒体7がヘッドユニット3に対して搬送方向(すなわち、(+Y)方向)に移動する。そして、吐出制御部903が、制御部9に入力された印字データ6にもとづいて、各々のヘッド31からのインクの液滴の吐出を制御し、後述の図9に示すような画像を記録媒体7上に記録する。
ここで、図4および図5を用いて、ノズル311からのインク81の液滴83の吐出時のヘッド31の動作について説明する。図4のような内部構造を備えるヘッド31において、共通液室346から圧力室347にインク81を充填しつつ、吐出制御部903から圧電素子345に所定の波形の電圧を印加して、圧電素子345に積層方向(図4中のZ方向)の変位を生じさせる。この変位により、ダイヤフラム部344を介して圧力室347の内部のインク81が加圧され、液圧が上昇することで、ノズル311からインク81の微小な液滴83が吐出される。
吐出制御部903から圧電素子345に所定の波形の電圧が印加されていない場合は、インク81は、ノズル311から吐出されず、インク81のノズル311における液面は、インク81の粘度やノズル311における撥水性等に応じた形状のメニスカスを形成する。
圧電素子345への所定の波形の電圧の印加の開始および停止のタイミング、印加の周期、および印加する電圧の値は、制御部9に記憶されている駆動条件に従い、制御部9に入力される印字データにもとづいて、制御される。
図9は、図8の印字データ6にもとづいて、記録媒体7上に理想的な条件において記録された画像を説明する図である。図9では、Y方向を縦向きに図示しており、(+Y)側(すなわち、記録媒体7の搬送方向における下流側であり、先に記録が行われる側)を上側に図示している。また、図9においてX方向を横向きに図示している。
図9において、点線で示した直線の交点の1つずつは、印字データ6における各画素Dにもとづいて各ノズルから吐出される液滴83が記録媒体7上に着弾する予定の位置である、着弾予定位置Pを示している。X方向、およびY方向の座標情報を示すために、以降は着弾予定位置Pを、適宜、P(X,Y)として示す。例えば、図9において、P(X,Y)により指示されている交点は、X座標が409であり、Y座標が501であるため、この着弾予定位置PをP(409,501)と示す。
また、図9において、丸で囲んだ領域の1つずつは、印字データ6における各画素Dにもとづいて、理想的な条件のもと、各ノズルから吐出される液滴83が記録媒体7上に着弾して形成されるドットQを示している。以降、P(X,Y)を目標として記録されたドットQを、適宜、Q(X,Y)と示す。
ここで、図8に示すD(X,Y)と、図9に示すP(X,Y)と、図9に示すQ(X,Y)の座標情報は対応している。例えば、図8のD(403,503)は印字画素601であるため、印字データ6にもとづいてインクジェット記録装置1が印刷工程(ステップS15)を行うと、図9のP(403,503)を目標として、ノズル313から液滴83が吐出され、記録媒体7上においてQ(403,503)が記録される。
図9は、記録媒体7上に理想的な条件のもとで記録が行われた場合の画像を説明しており、図9に示すように、着弾予定位置Pと着弾後のドットQの位置が一致している。
しかしながら、実際には、液滴の吐出速度のばらつき等に起因し、着弾予定位置Pと、着弾予定位置Pに対応するドットQとの位置がずれることがある。液滴の吐出速度のばらつきの要因には、例えば、ノズル毎の製造時の誤差や、ノズル毎の液滴の吐出間隔の差異等が挙げられる。上記のような液滴の吐出速度のばらつきに起因する着弾予定位置PとドットQとの位置ずれの例について、適宜、図4、図10、および図11を用いて説明する。
図4において、インク81をノズル311から液滴83として吐出させるために、圧力室347へ圧電素子345から圧力を印加すると、液滴83の吐出後も圧力室347の内部には、印加された圧力のエネルギーがインク81の振動として残留する。
ノズル311において、吐出間隔が短いと(すなわち、記録媒体7上に記録する画像の印字率が高い等により、P(401,Y)とP(401,Y+N)(N:自然数)との間隔が短いと)、圧力室347の内部にインク81の強い振動が残留したまま、次の圧力が圧電素子345から印加される。反対に、ノズル311において、吐出間隔が長いと、圧力室347内に残留するインク81の振動が比較的弱い状態で、次の圧力が圧電素子345から印加される。
液滴83の吐出後に圧力室347に残留するインク81の振動が、次に印加される圧力と重畳してインク81の液圧に影響を及ぼすことで、ノズル311から吐出される液滴83の飛翔速度が変化する。この速度変化により、記録媒体7上における着弾予定位置と、実際の着弾位置との間にずれが生じるおそれがある。また、ずれが生じる場合、飛翔速度の変化が、速くなる変化か、遅くなる変化かによって、記録媒体7上に生じるずれの方向が変化する。
まず、圧力室347の内部に残留する強い振動により、飛翔速度が速くなる場合のずれを説明する。あるノズルの圧力室347において、インク81の振動が強く残留している状態であり、振動によりインク81が(−Z)側(すなわち、記録媒体7側)に変位している場合に、圧電素子345から(−Z)側への圧力が印加されると、残留した強い振動と圧電素子345からの圧力が足し合わされ、吐出間隔が長い等により残留した振動が弱い場合と比べて、ノズル311から吐出される液滴83の飛翔速度が速くなる場合がある。図10に、吐出間隔が短いために、液滴の飛翔速度が速くなった結果、記録媒体7上に記録される画像を示す。
図10は、図8の印字データ6にもとづいて、記録媒体7上に記録された画像であり、図9と同様にY方向を縦向きに図示しており、(+Y)側を上側に図示している。また、図10においてX方向を横向きに図示している。図10では、各々のノズルにおいて、ある着弾予定位置Pを目標とした液滴吐出(例えば、P(403,503))から、次の液滴吐出(P(403,505))までの、吐出間隔が長い場合(本実施形態においては、あるP(X,Y)に対して、Y方向に続く次の着弾予定位置PがP(X,Y+M)(M:2以上の自然数)である場合)には、着弾予定位置PとドットQの位置が略一致している。
すなわち、図8の印字データ6において、Y方向に印字画素601が2個以上連続しないとき、本実施形態におけるインクジェット記録装置1の記録動作では、吐出間隔が十分長くなり、圧力室347の内部の残留した振動が十分弱い状態となることで、着弾予定位置PとドットQとのずれが生じないか、あるいはずれが生じても印刷品質に影響を及ぼさない程度のずれとなる。
このように、図10において、着弾予定位置Pと位置が略一致しているドットQを一致ドット701として示す。
これに対し、P(405,504)、およびP(405,505)は、記録媒体7上において、各々の着弾予定位置Pの間の距離が比較的短いため(すなわち、各々の着弾予定位置Pと対応するD(405,504)による制御と、D(405,505)による制御との間の時間が短くなるため)、ノズル315において、P(405,505)を目標の着弾位置とする液滴83の飛翔速度が、例えばP(404,505)やP(403,505)を目標の着弾位置とする液滴の飛翔速度よりも速くなる。したがって、Q(405,505)を形成する液滴83が、理想よりも早く記録媒体7上に到達することで、図10に示すように、Q(405,505)はP(405,505)よりも、(+Y)側にずれる。
このように、図10において、着弾予定位置Pと位置が(+Y)方向にずれているドットQを、ずれドット702として示す。
上記のように、着弾予定位置PとドットQにおける位置のずれが生じると、記録媒体7上において、X方向に延びるラインにずれが生じて印刷品質が低下するおそれがある。例えば、図9におけるX座標505においてX方向に延びるラインは、図10に示すようにずれドット702により、一部ずれることで、(+Y)方向に凹んだように記録される。このようなずれが生じることにより、印刷品質が低下する。
次に、圧力室347の内部に残留する強い振動により、飛翔速度が遅くなる場合のずれを説明する。あるノズルの圧力室347において、インク81の振動が強く残留している状態であり、振動によりインク81が(+Z)側(すなわち、記録媒体7の反対側)に変位している場合に、圧電素子345から(−Z)側への圧力が印加されると、残留した強い振動と圧電素子345からの圧力とでエネルギーを打ち消し合い、吐出間隔が長い等により残留した振動が弱い場合と比べて、ノズル311から吐出される液滴83の飛翔速度が遅くなる場合がある。図11に、吐出間隔が短いために、液滴の飛翔速度が遅くなった結果、記録媒体7上に記録される画像を示す。
図11は、図8の印字データ6にもとづいて、記録媒体7上に記録された画像であり、図9と同様にY方向を縦向きに図示しており、(+Y)側を上側に図示している。また、図11においてX方向を横向きに図示している。
図11も、図10と同様に、あるP(X,Y)に対して、Y方向に続く次の着弾予定位置PがP(X,Y+M)(M:2以上の自然数)である場合には、その着弾予定位置P(X,Y+M)とQ(X,Y+M)の位置は略一致する。
すなわち、図8の印字データ6において、Y方向に印字画素601が2個以上連続しないとき、本実施形態におけるインクジェット記録装置1の記録動作では、吐出間隔が十分長くなり、圧力室347の内部の残留した振動が十分弱い状態となることで、着弾予定位置PとドットQとのずれが生じないか、あるいはずれが生じても印刷品質に影響を及ぼさない程度のずれとなる。
図11においても、図10と同様に、着弾予定位置Pと位置が略一致しているドットQを一致ドット701として示す。
これに対し、P(405,504)、およびP(405,505)は、記録媒体7上において、各々の着弾予定位置Pの間の距離が比較的短いため(すなわち、各々の着弾予定位置Pと対応するD(405,504)による制御と、D(405,505)による制御との間の時間が短くなるため)、ノズル315において、P(405,505)を目標の着弾位置とする液滴83の飛翔速度が、例えばP(404,505)やP(403,505)を目標の着弾位置とする液滴の飛翔速度よりも遅くなる。したがって、Q(405,505)を形成する液滴83が、理想よりも遅く記録媒体7上に到達することで、図11に示すように、Q(405,505)はP(405,505)よりも、(−Y)側にずれる。
このように、図11において、着弾予定位置Pと位置が(−Y)方向にずれているドットQを、ずれドット703として示す。
上記のように、着弾予定位置PとドットQにおける位置のずれが生じると、記録媒体7上において、X方向に延びるラインにずれが生じて印刷品質が低下するおそれがある。例えば、図9におけるX座標505においてX方向に延びるラインは、図11に示すようにずれドット703により、一部ずれることで、(−Y)方向に膨らんだように記録される。このようなずれが生じることにより、印刷品質が低下する。
ここで、図11において、例えばQ(405,504)とQ(405,505)など、Y方向に隣接する一致ドット701とずれドット703の間隔は、図9のような理想的な間隔と比べて広がっている。しかしながら、実際には、ドットQを形成するインク81が記録媒体7上でにじむことで、上記のように間隔が広がったことで生じる隙間は塗りつぶされるため、ドットQ間の隙間が、印刷品質に与える影響は少ない。
上記のような、各々のノズルにおける液滴の飛翔速度の差異に起因する印刷品質の低下を低減するために、本実施形態では、補正処理を行う設定である補正モードを、コンピュータ11上において予め「ON」として、以下の補正を行う。
図7において、補正モードが「ON」の場合(S13における「YES」の場合)に実行される、印字データを補正する補正処理工程(ステップS14)と、その後に行われる印刷工程(ステップS15)について、図7から図18を用いて説明する。
補正モードが「ON」であると補正モード確認工程(ステップS13)において判別されると、次に、ハーフトーン処理(ステップS12)において生成された印字データ6を補正する補正処理工程(ステップS14)が行われる。図12に、本実施形態に係る補正処理工程の内容を説明するフローチャートを示す。
図12は、図8に示す印字データ6を補正する補正処理工程(ステップS14)の内容を説明するフローチャートである。補正処理工程が開始されると、まず、印字データ6内において後述のパターン603を検出する(ステップS101)。
ステップS101では、まず、コンピュータ11において、CPU101がプログラム129に従って、メモリ109に記憶された図8に示す印字データ6から、図13に図示するパターン603の探索を行う。パターン603が発見されると、その座標情報等を印字データ処理部121に記憶する。
図13は、印字データにおける補正処理の対象となるパターン603を示す図である。図13は、図8と同様にY方向を縦向きに図示しており、(+Y)側を上側に図示している。また、図13では、図8と同様に、格子状に区切られた領域の1つずつが、パターン603における画素Dを示しており、網掛けの有る格子が印字画素601を示し、網掛けの無い格子が非印字画素602を示している。
パターン603は、Y方向に対応する方向に配列した3個の画素Dから構成されるパターンである。パターン603における各々の画素Dについて、以降、(+Y)側から順に、Da(1)、Da(2)、Da(3)と示す。パターン603の各々の画素Dにおける印字情報は、Da(1)が印字画素601であり、Da(2)が印字画素601であり、Da(3)が非印字画素602である。
すなわち、本実施形態において、パターン603は、印字画素601がY方向に2個以上連続する領域を表しており、Da(2)に相当する画素が印刷工程(ステップS15)により記録媒体7上に記録されると、Da(2)はずれドット702、またはずれドット703として記録される。なお、パターン603は、メモリ109に保存されていてもよいし、予めプログラム129内に格納されていてもよい。
印字データ6に対するパターン603の探索は、例えば、X座標の若い番号から、搬送方向画素列Dyをそれぞれ走査し、画素Dにおける印字情報をそれぞれ調べる。印字データ6において、まず、探索開始列をDy(401)に設定し、Dy(401)に含まれるD(401,501)を探索開始点に設定する。この開始点からD(401,502)、D(401,503)といった順に、D(401,501+N)(N:自然数)までを走査し、それぞれの画素Dにおける印字情報を調べる。そして、この搬送方向画素列Dyにおいて走査する領域に、パターン603に一致する領域が存在するか否かを調べる。
パターン603と一致する領域とは、印字データ6における、Y方向に画素が3個連続して配列する領域であって、各画素Dの印字情報、つまり、D(X,Y)、D(X,Y+1)、D(X,Y+2)の印字情報が、それぞれ、パターン603におけるDa(1)、Da(2)、Da(3)の印字情報と一致する領域であることを意味する。
ある座標Xにおける搬送方向画素列Dyの走査が終了すると、その座標Xの値に「1」ずつ加算して、同様の探索を印字データ6の全部、または一部の領域に対して行う。すなわち、印字データ6において、Dy(401)の走査が終了すると、続いて、Dy(402)の走査を行う。
上記のような、印字データ6に対するパターン603の探索時に、パターン603と一致する領域が見つかった場合は、当該領域の座標情報(すなわち、D(X,Y)、D(X,Y+1)、D(X,Y+2))を、パターン603に相当する領域の座標情報として、印字データ処理部121に記憶する。なお、S101において検出された当該領域を、以降は「第1検出領域」と称する。
ここで、上記の印字データ処理部121への記憶は、第1検出領域の座標情報すべて(すなわち、3画素分すべて)記憶してもよいし、いずれか1つの画素の座標情報(例えば、D(X,Y))のみを記憶してもよい。なお、本実施形態では、記憶する座標情報の量を少なくするため、Da(1)に対応するD(X,Y)の座標情報を第1検出領域の代表として記憶する。
具体的には、図8の印字データ6におけるDy(405)の走査において、D(405,504)、D(405,505)、D(405,506)が、パターン603と一致する。すなわち、印字情報において、D(405,504)がDa(1)に、D(405,505)がDa(2)に、D(405,506)がDa(3)に、それぞれ対応する。
よって、パターン603のDa(1)に対応するD(405,504)の座標情報(すなわち、X=405、Y=504)を、第1検出領域として、印字データ処理部121に記憶する。
なお、ひとつの印字データ中に複数箇所の第1検出領域が発見された場合には、各領域においてDa(1)と対応する画素Dの座標情報を印字データ処理部121に記憶する。
具体的には、図8の印字データ6において、X座標401から412までの走査が終了すると、複数の第1検出領域として、D(405,504)、D(406,504)、D(407,504)、D(408,504)、D(409,504)、D(411,504)、およびD(412,504)の座標情報が、それぞれ印字データ処理部121に記憶される。
図12のフローチャートに戻る。ステップS101が実行され、印字データ6においてパターン603に相当する領域が、第1検出領域として記憶されると、次に、印字データ6において後述のパターン604を検出する(ステップS102)。
ステップS102が開始されると、まず、コンピュータ11において、CPU101がプログラム129に従って、メモリ109に記憶された図8に示す印字データ6から、図14に図示するパターン604の探索を行う。パターン604が発見されると、その座標情報等を印字データ処理部121に記憶する。
図14は、印字データにおける補正処理のトリガーとなるパターン604を示す図である。図14は、図8と同様にY方向を縦向きに図示しており、(+Y)側を上側に図示している。また、図14では、図8と同様に、格子状に区切られた領域の1つずつが、パターン604における画素Dを示しており、網掛けの有る格子が印字画素601を示し、網掛けの無い格子が非印字画素602を示している。
パターン604は、パターン603と同様に、Y方向に対応する方向に配列した3個の画素Dから構成されるパターンである。パターン604における各々の画素Dについて、以降、(+Y)側から順に、Db(1)、Db(2)、Db(3)と示す。パターン604の各々の画素Dにおける印字情報は、Db(1)が非印字画素602であり、Db(2)が印字画素601であり、Db(3)が非印字画素602である。
すなわち、本実施形態において、パターン604は、印字画素601がY方向に2個以上連続していない領域を表しており、Db(2)に相当する画素が印刷工程(ステップS15)により記録媒体7上に記録されると、Db(2)は一致ドット701として記録される。なお、パターン604は、メモリ109に保存されていてもよいし、予めプログラム129内に格納されていてもよい。
印字データ6に対するパターン604の探索は、ステップS101におけるパターン603の探索と同様にして実行される。また、印字データ6に対するパターン604の探索時に、パターン604と一致する領域が見つかった場合は、当該領域の座標情報(すなわち、D(X,Y)、D(X,Y+1)、D(X,Y+2))を、パターン604に相当する領域の座標情報として、印字データ処理部121に記憶する。なお、S102において検出された当該領域を、以降は「第2検出領域」と称する。
ここで、上記の印字データ処理部121への記憶は、第2検出領域の座標情報すべて(すなわち、3画素分すべて)記憶してもよいし、いずれか1つの画素の座標情報(例えば、D(X,Y))のみを記憶してもよい。なお、本実施形態では、記憶する座標情報の量を少なくするため、Db(1)に対応するD(X,Y)の座標情報を第2検出領域の代表として記憶する。
具体的には、図8の印字データ6におけるDy(401)の走査において、D(401,504)、D(401,505)、D(401,506)が、パターン604と一致する。すなわち、印字情報において、D(401,504)がDb(1)に、D(401,505)がDb(2)に、D(401,506)がDb(3)に、それぞれ対応する。
よって、パターン604のDb(1)に対応するD(401,504)の座標情報(すなわち、X=401、Y=504)を、第2検出領域として、印字データ処理部121に記憶する。
なお、ひとつの印字データ中に複数箇所の第2検出領域が発見された場合には、各領域においてDb(1)と対応する画素Dの座標情報を印字データ処理部121に記憶する。
具体的には、図8の印字データ6において、X座標401から412までの走査が終了すると、複数の第2検出領域として、D(401,504)、D(402,504)、D(403,504)、D(404,504)、およびD(410,504)の座標情報が、それぞれ印字データ処理部121に記憶される。
図12のフローチャートに戻る。ステップS102において、印字データ6中のパターン604に相当する領域を第2検出領域として記憶すると、次に、第2検出領域とX方向に隣接する第1検出領域を検出し、補正予定領域として記憶する(ステップS103)。
ステップS103が開始されると、まず、コンピュータ11において、CPU101がプログラム129に従って、印字データ処理部121に記憶された第2検出領域とX方向に隣接する第1検出領域を検出し、この第1検出領域を、補正を行う予定の領域である補正予定領域として、印字データ処理部121に記憶する。
ここで、上記の印字データ処理部121への記憶は、補正予定領域として検出された第1検出領域の座標情報すべて(すなわち、3画素分すべて)記憶してもよいし、いずれか1つの画素の座標情報(例えば、D(X,Y))のみを記憶してもよい。なお、本実施形態では、記憶する座標情報の量を少なくするため、Da(1)に対応するD(X,Y)の座標情報を補正予定領域の代表として記憶する。
具体的には、図8の印字データ6において、X座標の若い番号順に、第2検出領域として記憶されている画素Dに注目し、隣接する画素Dが第1検出領域として記憶されているか否かを判別する。例えば、第2検出領域として印字データ処理部121に記憶されたD(404,504)について、X方向に隣接する画素Dが第1検出領域として記憶されているか否かを判別する。その結果、D(405,504)が補正予定領域として印字データ処理部121へ記憶される。
なお、ひとつの印字データ中に複数箇所の補正予定領域が発見された場合には、各領域においてDa(1)と対応する画素Dの座標情報を印字データ処理部121に記憶する。
図8の印字データ6において、X座標401から412までの走査が終了すると、複数の補正予定領域として、D(405,504)、D(409,504)、およびD(411,504)の座標情報が、それぞれ印字データ処理部121に記憶される。
図12のフローチャートに戻る。ステップS103において、第2検出領域とX方向に隣接する第1検出領域を補正予定領域として記憶すると、次に、補正予定領域とX方向に隣接する第1検出領域を検出し、補正予定領域として記憶する(ステップS104)。
ステップS104が開始されると、まず、コンピュータ11において、CPU101がプログラム129に従って、印字データ処理部121に記憶された補正予定領域と、第1検出領域が、X方向に隣接するか否かを判別し、隣接する場合にはこの第1検出領域を検出する。そして、ステップS103と同様に、この第1検出領域を補正予定領域として、印字データ処理部121に記憶する。さらに、判別の基礎となった補正予定領域について、判別済みの情報を付加して、印字データ処理部121に記憶する。
具体的には、図8の印字データ6において、X座標の若い番号順に、補正予定領域として記憶されている画素Dに注目し、隣接する画素Dが第1検出領域として記憶されているか否かを判別する。例えば、ステップS103により補正予定領域として印字データ処理部121に記憶されたD(405,504)について、X方向に隣接する画素Dが第1検出領域として記憶されているか否かを判別する。その結果、D(406,504)が補正予定領域として印字データ処理部121へ記憶される。そして、判別の基礎となったD(405,504)について、判別済みの情報を印字データ処理部121に記憶する。
図8の印字データ6において、X座標401から412までの走査が終了すると、複数の補正予定領域として、新たに、D(406,504)、D(407,504)、D(408,504)、およびD(412,504)の座標情報が、それぞれ印字データ処理部121に記憶される。
また、図8の印字データ6において、全ての補正予定領域について判別済みが付加されると、ステップS104が終了する。一度の走査で、全ての補正予定領域について判別済みが付加されなかった場合には、再度、X座標401から412までの走査を行い、判別済みが付加されていない補正予定領域について、X方向に第1検出領域が隣接するか否か、判別する。
図15は、ステップS103、およびステップS104を実行した結果、補正予定領域として検出された領域を説明する図である。図15では、図8の印字データ6において、補正予定領域の代表として印字データ処理部121に記憶される画素Dを「補正予定画素610」として示している。以降、1個の補正予定領域の代表として1個の画素Dを指すときは、この画素Dを「補正予定画素610」と称する。
図12のフローチャートに戻る。ステップS104が終了すると、次に、図15の印字データ6において、補正予定画素610として記憶されている印字画素601のうち、少なくとも一部の画素Dを非印字画素602に変更する(ステップS105)。
ステップS105が開始されると、コンピュータ11において、CPU101がプログラム129に従って、補正予定領域がX方向に複数個隣接する領域において、(−X)側から数えて偶数番目の補正予定領域における補正予定画素610を、非印字画素602に変更する。
具体的には、図15の印字データ6において、補正予定領域がX方向に複数個隣接する領域は、X座標405から409までの領域と、X座標411から412までの領域の2箇所存在する。これら2箇所の領域において、(−X)側から数えて偶数番目の補正予定領域における補正予定画素610は、D(406,504)、D(408,504)、およびD(412,504)であり、これらの補正予定画素610を、非印字画素602に変更する。
図16に、第1実施形態におけるステップS105により、印字データ6の一部の補正予定画素610が変更された結果として得られる印字データ61を示す。ここで、補正予定画素610から非印字画素602に変更された画素Dを、便宜上「補正後画素605」として示す。
一部の補正予定画素610が非印字画素602に変更され、新たに印字データ61が得られると、印字データ61をメモリ109に記憶し、ステップS105を終了する。
以上により、第1実施形態における補正処理工程(ステップS14)が終了する。次に、補正処理工程によって新たに得られた印字データ61にもとづいて、印刷工程(ステップS15)を行う。
補正処理工程(ステップS14)の後に実行される印刷工程(ステップS15)における、インクジェット記録装置1の動作は、前述における補正モード確認工程(ステップS13)において補正モード「OFF」の際に続いて行われる印刷工程(ステップS15)と同様である。印刷工程(ステップS15)において、図16に示す印字データ61にもとづいて、インクジェット記録が行われると、吐出間隔が短いことに起因して液滴83(図4参照)の飛翔速度が速くなる場合には図17に示すような画像が記録媒体7上に記録され、同じく吐出間隔が短いことに起因して液滴83の飛翔速度が遅くなる場合には図18に示すような画像が記録媒体7上に記録される。
まず、液滴83の飛翔速度が速くなる場合に記録される画像について説明する。図17は、図16の印字データ61にもとづいて、印刷工程(ステップS15)により記録媒体7上に記録された画像である。図17は、図10と同様に、Y方向を縦向きに図示しており、(+Y)側を上側に図示している。また、図17においてX方向を横向きに図示している。
本実施形態においては、図10のQ(403,503)とQ(403,505)のように、Y方向に配列する複数の着弾予定位置Pに対して、ドットQが2個以上連続しないとき、ドットQは一致ドット701となる。また、図17では、図10と同様に、ドットQがY方向に2個以上連続するとき、ドットQが着弾予定位置Pに対して(+Y)方向にずれることで、ドットQは、ずれドット702となる。
図16に示すように、補正処理工程により得られた印字データ61には、非印字画素602である補正後画素605が存在するため、図17の画像において、Q(406,505)、Q(408,505)、およびQ(412,505)は、一致ドット701となる。
このため、図10において、Y座標505におけるずれドット702に起因して生じていた(+Y)方向へのラインの凹みが、上記の一致ドット701によって低減されることで、該ラインが揃っているように認識されやすくなり、印刷品質の低下を抑制することができる。
ここで、図17では、図16の補正後画素605に起因して、本来、ドットQの記録により塗りつぶされているべき箇所の一部が塗りつぶされずに、記録後の画像において記録媒体7の色が見えてしまうおそれがある。しかしながら、実際には、ドットQを形成するインク81が記録媒体7上でにじむため、補正後画素605に起因して塗りつぶされなかった箇所も、まわりのドットQのインク81のにじみにより、記録媒体7の色が見えない程度に塗りつぶされることで、印刷品質は低下しない。
次に、液滴83の飛翔速度が遅くなる場合に記録される画像について説明する。図18は、図16の印字データ61にもとづいて、印刷工程(ステップS15)により記録媒体7上に記録された画像である。図18は、図11と同様に、Y方向を縦向きに図示しており、(+Y)側を上側に図示している。また、図18においてX方向を横向きに図示している。
本実施形態においては、図11のQ(403,503)とQ(403,505)のように、Y方向に配列する複数の着弾予定位置Pに対して、ドットQが2個以上連続しないとき、ドットQは一致ドット701となる。また、図18では、図11と同様に、ドットQがY方向に2個以上連続するとき、ドットQが着弾予定位置Pに対して(−Y)方向にずれることで、ドットQは、ずれドット703となる。
図16に示すように、補正処理工程により得られた印字データ61には、非印字画素602である補正後画素605が存在するため、図18の画像において、Q(406,505)、Q(408,505)、およびQ(412,505)は、一致ドット701となる。
このため、図11において、Y座標505におけるずれドット703に起因して生じていた(−Y)方向へのラインの膨らみが、上記の一致ドット701によって低減されることで、該ラインが揃っているように認識されやすくなり、印刷品質の低下を抑制することができる。
ここで、図18では、図17と同様に、図16の補正後画素605に起因して、本来、ドットQの記録により塗りつぶされているべき箇所の一部が塗りつぶされずに、記録後の画像において記録媒体7の色が見えてしまうおそれがある。しかしながら、実際には、ドットQを形成するインク81が記録媒体7上でにじむため、補正後画素605に起因して塗りつぶされなかった箇所も、まわりのドットQのインク81のにじみにより、記録媒体7の色が見えない程度に塗りつぶされることで、印刷品質は低下しない。
また、第1実施形態は、コンピュータ11におけるプログラム129等を用いて、印字データ6に対して直接、印字情報の変更を行うことで補正処理を行った。コンピュータ11において補正処理に用いるプログラム129は、読取/書込装置117を介して記録媒体127からコピーすることが可能であるため、インクジェット記録装置1自体に改造を施すことなく、第1実施形態における補正処理工程(ステップS14)を行うことができる。したがって、第1実施形態では、簡易な構成により、印刷品質の低下を抑制することができる。
なお、第1実施形態のステップS105(図12参照)では、補正予定領域がX方向に複数個隣接する領域において、(−X)側から数えて偶数番目の補正予定領域における補正予定画素610を、非印字画素602に変更する印字データ6の補正処理を行ったが、本発明の実施に関してはこのような補正処理に限定されない。すなわち、上記の補正予定領域において、補正後画素605へ変更する補正予定画素610の選び方としては、インク81の記録媒体7へのにじみやすさや、記録されるドットQの大きさ等の条件により、多様な選び方が選択される。
そこで、後述の第2実施形態、および第3実施形態において、ステップS105(図12参照)で変更を行う補正予定画素610の選び方のバリエーションを説明する。
<第2実施形態>
本発明に係る第2実施形態を説明する。第1実施形態では、図10や図11に示すように、X方向に延びるラインのずれが生じるY座標505の直前であるY座標504において、記録される予定だったドットQの一部を記録しないことにより、Y座標505上に位置する一致ドット701の数を増加させて、ラインが揃っているように認識されやすくしていた。しかしながら、ラインのずれがX方向に長く延在して生じずに、比較的X方向に短く生じている場合、第1実施形態のような補正処理工程を行わなくても、ラインのずれが認識されにくい場合がある。
そこで、第2実施形態では、補正を行わなくてもラインのずれが元より認識されにくい箇所は補正せず、補正の必要な箇所に対して選択的に補正を行えるような、補正予定画素610の選び方を実施する。
ここで、第2実施形態に用いるインクジェット記録装置、およびコンピュータの構成は、第1実施形態と同様であるため、インクジェット記録装置、およびコンピュータの構成についての説明は省略する。
また、第2実施形態に係るインクジェット記録装置における画像記録動作も、第1実施形態と略同様であり、大きく異なるのは、図12におけるステップS105の内容である。よって、第2実施形態に係るインクジェット記録装置における画像記録動作は図7を、第2実施形態に係る補正処理工程の内容は図12を参照し、以降は、ステップS105の内容を中心に説明する。
図19に、第2実施形態におけるステップS105の内容についてのフローチャートを示す。第2実施形態において、図19におけるステップS105が開始されると、CPU101がプログラム129に従って、印字データ処理部121に記憶されている補正予定領域における補正予定画素610のうち、X方向に3個以上連続して隣接する補正予定画素610を検出し、印字データ処理部121に記憶する(ステップS201)。
具体的には、図15に示す印字データ6の補正予定画素610において、D(405,504)、D(406,504)D(407,504)、D(408,504)、およびD(409,504)が検出され、X方向に3個以上連続して隣接する補正予定画素610として印字データ処理部121に記憶される。
上記の補正予定画素610が印字データ処理部121に記憶されると、次に、S201で検出した補正予定画素610のうち、少なくとも一部の画素Dを非印字画素602に変更する(S202)。
ステップS202が開始されると、コンピュータ11において、CPU101がプログラム129に従って、ステップS201で検出した補正予定画素610において、(−X)側から数えて偶数番目の補正予定領域における補正予定画素610を、非印字画素602に変更する。
具体的には、図15の印字データ6において、S201で検出したD(405,504)、D(406,504)D(407,504)、D(408,504)、およびD(409,504)のうち、(−X)側から数えて偶数番目の補正予定画素610は、D(406,504)、およびD(408,504)であり、これらの補正予定画素610を、非印字画素602に変更する。
図20に、第2実施形態におけるステップS105により、印字データ6の一部の補正予定画素610が変更された結果として得られる印字データ62を示す。ここで、補正予定画素610から非印字画素602に変更された画素Dを、第1実施形態と同様に、便宜上「補正後画素605」として示す。
一部の補正予定画素610が非印字画素602に変更され、新たに印字データ62が得られると、印字データ62をメモリ109に記憶し、ステップS202を終了し、すなわち、ステップS105を終了する。
以上により、第2実施形態における補正処理工程(ステップS14)が終了する。図20に示すように、第2実施形態では、X方向に3個以上の補正予定画素610が連続して隣接している箇所のみに対して補正を行う。これにより、ドットQのずれがX方向に比較的短く生じ(本実施形態では3画素未満)、ラインのずれが元より認識されにくい箇所には補正を行わず、補正の必要な箇所に対して選択的に補正を行うことができる。
なお、本実施形態では、X方向に3個以上の補正予定画素610が連続して隣接している箇所のみに対して補正を行い、3個未満の場合には補正の対象から除外したが、本発明の実施に関してはこれに限られない。補正から除外する画素の長さは、ラインのずれが認識されにくい程度のX方向の長さであればよく、2個を除外するか否かの境目としてもよいし、4個以上の値を境目としてもよい。
もちろん、ドットQのずれがX方向に比較的短く生じても(例えば、2画素連続するときでも)、ラインのずれが認識される場合には、第2実施形態における補正処理工程ではなく、第1実施形態における補正処理工程を選択するのが好適である。
<第3実施形態>
次に、本発明に係る第3実施形態を説明する。第1実施形態では、図10や図11に示すように、X方向に延びるラインのずれが生じるY座標505の直前であるY座標504において、記録される予定だったドットQの一部を記録しないことにより、Y座標505上に位置する一致ドット701の数を増加させて、ラインが揃っているように認識されやすくしていた。しかしながら、記録媒体7やインク81の性質等、画像を記録する条件によっては、上記のようにドットQの一部を記録しないことにより、かえって印刷品質が低下してしまうおそれがある。
第1実施形態において説明したように、例えば、図17のP(406,504)は、従来ではドットQが記録される予定であったが、補正によりドットQが記録されなくなった位置である。これにより、Y座標505におけるラインの不揃いは低減されるが、その代わりに、本来、周辺のインク81で塗りつぶされるべきP(406,504)において、記録媒体7の色が見えてしまい、印刷品質が低下するおそれがある。
特に、記録媒体7として、比較的インク81のにじみやすい普通紙ではなく、ポリエチレンテレフタレート(PET)等を含む樹脂フィルムなど、インク81がにじみにくい材料を用いる場合や、インク81自体が、記録媒体7に対してにじみにくい材料であったり、インク81の液滴83のサイズが小さかったりする場合には、P(406,504)が周辺のインク81に塗りつぶされないおそれがある。
そこで、第3実施形態では、印字データの補正により、かえって印刷品質が低下するのを防止するため、周辺のインク81による塗りつぶしが十分生じるような箇所を選択的に補正の対象の位置とするような、補正予定画素610の選び方を実施する。
ここで、第3実施形態に用いるインクジェット記録装置、およびコンピュータの構成は、第1実施形態と同様であるため、インクジェット記録装置、およびコンピュータの構成についての説明は省略する。
また、第3実施形態に係るインクジェット記録装置における画像記録動作も、第1実施形態と略同様であり、大きく異なるのは、図12におけるステップS105の内容である。よって、第3実施形態に係るインクジェット記録装置における画像記録動作は図7を、第3実施形態に係る補正処理工程の内容は図12を参照し、以降は、ステップS105の内容を中心に説明する。
図21に、第3実施形態におけるステップS105の内容についてのフローチャートを示す。第3実施形態において、図21におけるステップS105が開始されると、CPU101がプログラム129に従って、印字データ処理部121に記憶されている補正予定領域における補正予定画素610のうち、その周辺に印字画素601が所定個数以上隣接する補正予定画素610を検出し、印字データ処理部121に記憶する(ステップS301)。
図22は、注目する補正予定画素610と、その周辺の画素Dとの位置関係を説明する図である。注目する補正予定画素610には、その周辺に8個の画素Dが、それぞれX方向、Y方向、XY方向(斜め方向)に存在する。特に、図22における補正予定画素610の(+X)側、(−X)側、および(+Y)側に隣接する画素Dは、対応するドットQのインクのにじみが、補正予定画素610に対応する着弾予定位置Pを塗りつぶしやすい位置にあるため、該画素Dを、補正予定画素610の「周辺画素612」とする。
第3実施形態のS301では、図22における3個の周辺画素612のうち、2個以上が印字画素601であるとき、補正予定画素610を検出し、印字データ処理部121に記憶する。
具体的には、図15に示す印字データ6の補正予定画素610において、D(406,504)、D(407,504)、D(408,504)、およびD(411,504)が検出され、周辺に印字画素601が所定個数以上存在する補正予定画素610として印字データ処理部121に記憶される。
上記の補正予定画素610が印字データ処理部121に記憶されると、次に、S301で検出した補正予定画素610のうち、少なくとも一部の画素Dを非印字画素602に変更する(S302)。
ステップS302が開始されると、コンピュータ11において、CPU101がプログラム129に従って、ステップS301で検出した補正予定画素610を全て、非印字画素602に変更する。
具体的には、図15の印字データ6において、S301で検出したD(406,504)、D(407,504)、D(408,504)、およびD(411,504)を、非印字画素602に変更する。
しかしながら、上記の変更を行うと、D(407,504)において、周辺の印字画素601が1個となり、ステップS301で用いた検出の条件である「周辺の印字画素601が2個以上」を満たさなくなる。そこで、上記のように非印字画素602に変更するとステップS301の条件を満たさなくなる補正予定画素610がある場合、この補正予定画素610を、再度、印字画素601に変更する。
図23に、第3実施形態におけるステップS105により、印字データ6の一部の補正予定画素610が変更された結果として得られる印字データ63を示す。ここで、補正予定画素610から非印字画素602に変更された画素Dを、第1実施形態と同様に、便宜上「補正後画素605」として示す。
一部の補正予定画素610が非印字画素602に変更され、新たに印字データ63が得られると、印字データ63をメモリ109に記憶し、ステップS302を終了し、すなわち、ステップS105を終了する。
以上により、第3実施形態における補正処理工程(ステップS14)が終了する。図23に示すように、第3実施形態では、隣接する3個の周辺画素612のうち印字画素601が2個以上となる補正予定画素610に対して補正を行う。これにより、周辺のインク81による塗りつぶしが十分生じる補正予定画素610を選ぶことができる。よって、第3実施形態では、印字データの補正により、不揃いなラインが認識されにくくなり、かつ記録媒体7の色が余分に残るのを防止することで、印刷品質の低下を抑制することができる。
なお、上記の説明では、補正予定画素610に対して、図22に示すような3個の周辺画素612のうち2個以上が印字画素601か否かを、ステップS301における検出の条件としたが、本発明の実施に関してはこれに限られない。補正予定画素610の(+Y)側に隣接する1個の画素Dのみを、補正予定画素610の周辺画素612として、該画素Dが印字画素601であることを検出の条件としてもよい。
また、図24に示すように、補正予定画素610に対して、周辺画素612を7個設定し、この7個の周辺画素612のうち6個以上が印字画素601であることを、補正予定画素610の検出の条件としてもよい。もちろん、インク81の記録媒体7へのにじみやすさ等によっては、検出の条件を、上記の7個の周辺画素612のうち、5個以上が印字画素601である場合としてもよい。
<第4実施形態>
次に、本発明における第4実施形態を説明する。第1実施形態では、図3に示すように、インクジェット記録装置1における各ノズルが、それぞれX方向に等間隔に、所定のドット密度に相当するピッチにて、(−X)側から番号順に配置されていた。そして、図8に示すように、1個の搬送方向画素列Dyに対して1個のノズルが対応し、該搬送方向画素列Dyに相当する記録媒体7上のあるX座標に対しては、1個のノズルによって画像の記録が行われていた。
しかしながら、インクジェット記録装置による印刷技術において、特にワンパス方式の印刷速度をさらに高速にするべく、例えば、1個のヘッドユニット3に、Y方向に2列以上のヘッド31を設け、1個の搬送方向画素列Dyに対して2個以上のノズルを対応させることも行われている。
図25は、1個のヘッドユニット3に、Y方向にヘッド31とヘッド35を配列した様子を模式的に示す図である。図25では、便宜上、ヘッド31およびヘッド35のノズルがX方向に1次元的に配列しているように記しているが、実際には、図3のヘッド31に示すように各ノズルがY方向にも広がって、XY平面に2次元的に配置されている。
ヘッド35は、ヘッド31と略同様の構成を有し、ノズル351、352、353、354、355、356、357、358、359、360、361、362を備える。ヘッド31とヘッド35は、X方向に同一であり、Y方向に異なる位置に配置され、各ノズルが他のヘッドの各ノズルと、それぞれX方向に同一の位置に配置される。例えば、ノズル311とノズル351はX方向に同一の位置に配置される。
図25に示すようなヘッドユニット3を用いて、1個の搬送方向画素列Dyに対して2個以上のノズルを対応させて印刷を行う際には、記録媒体7を高速で(+Y)方向に搬送しつつ、ヘッド31とヘッド35から順次にインク81を吐出することで、記録媒体7の搬送方向に沿って、記録媒体7上に液滴83が着弾する位置を相互に補完する。このように、異なるノズルから記録媒体の所定の一列へ交互に液滴を着弾させて印刷を行う処理を、「インターレース処理」と称する。
図26は、図8の印字データ6にもとづいて、図25に示すようなヘッドユニット3を用いて、図7の印刷工程(ステップS15)により記録媒体7上に記録された画像を示す図である。図26では、便宜上、ヘッド31により記録されたドットQを通常の枠(すなわち、図10で示したドットQと同様の太さの枠)で示し、ここでは適宜「第1列ドット710」と称する。また、ヘッド35により記録されたドットQは太枠で示し、ここでは適宜「第2列ドット720」と称する。なお、表記上、第2列ドット720を太枠で示しているが、実際に記録される第2列ドット720の大きさや色は、第1列ドット710と略同様である。
図26に示すように、記録媒体7の搬送方向に沿って、ヘッド31とヘッド35から順次に記録が行われることで、記録媒体7上には、第1列ドット710と第2列ドット720が交互に記録されている。
ここで、例えば、ノズル313において、Q(403,503)とQ(403,505)との間の吐出間隔が短い場合、第1実施形態において説明した図10や図11と同様に、着弾予定位置PとドットQとの間にずれが生じることがある。吐出間隔が第1実施形態におけるノズルの吐出間隔と同様のまま、記録媒体7へ記録する画像の解像度を720dpiから1440dpiとするような場合に、上記のような着弾位置のずれが生じるおそれがある。ここでは図10と同様、P(403,505)よりもQ(403,505)が(+Y)側に記録される場合を説明する。
一方、図8に示す印字データ6において、D(412,504)とD(412,505)は、D(403,503)とD(403,505)よりも、各々が対応する記録媒体7上の着弾予定位置Pが近いものの、対応するノズルが異なるため、図26におけるQ(412,505)において、記録に係る吐出間隔が短いことに起因する着弾位置ずれは生じない。したがって、図25のようなヘッドユニット3を用いて、インターレース処理を行うと、図10のようにインターレース処理を行わない場合とは異なる位置でドットQのずれが生じることがある。
このような場合に、第1実施形態の補正処理工程(ステップS14)を行うと、着弾位置のずれの原因となる画素Dを正確に補正できないおそれがある。例えば、図26において、Q(411,504)の着弾位置のずれの原因が、正確には印字データ6におけるD(411,503)であるのに対して、第1実施形態の補正処理工程では、D(411,504)に対して補正を行うため、Q(411,504)の着弾位置のずれを解消できない。そこで、インターレース処理により画像を記録する場合には、検出するパターンと、補正する画素Dの位置の最適化が必要となる。
ここで、第4実施形態に係るインクジェット記録装置における画像記録動作は、第1実施形態と略同様であり、大きく異なるのは、上記のように、検出するパターンと、補正する画素Dの位置である。よって、第4実施形態に係るインクジェット記録装置における画像記録動作は図7を参照し、ここでは、第4実施形態に係る補正処理工程の内容について、図30を用いて説明する。
図30は、第4実施形態に係る補正処理工程(ステップS14)の内容を説明するフローチャートである。第4実施形態では、上記のようなインターレース処理を行う場合に、第1実施形態において用いたパターン603を、図27に示すパターン606に置換して用いる。また、第1実施形態において用いたパターン604を、図28に示すパターン607、または図29に示すパターン608に置換して用いる。
まず、第4実施形態において、補正処理工程(ステップS14)を開始すると、印字データ6から図27に示すパターン606を検出し、印字データ処理部121に記憶する(ステップS401)。パターン606の検出は、第1実施形態におけるステップS101と同様に行われる。また、図27に示すように、パターン606の最も(+Y)側に位置する画素であるDc(1)に対応する印字データ6上の画素Dを、印字データ処理部121に記憶する。
ステップS401により、印字データ処理部121へのパターン606の記憶が行われると、次に、図28に示すパターン607を検出し、印字データ処理部121に記憶する(ステップS402)。パターン607の検出は、第1実施形態におけるステップS102と同様に行われる。また、図28に示すように、パターン607の最も(+Y)側に位置する画素であるDd(1)に対応する印字データ6上の画素Dを、印字データ処理部121に記憶する。
ステップS402により、印字データ処理部121へのパターン607の記憶が行われると、次に、図29に示すパターン608を検出し、印字データ処理部121に記憶する(ステップS403)。パターン608の検出も、第1実施形態におけるステップS102と同様に行われる。また、図29に示すように、パターン608の最も(+Y)側に位置する画素であるDe(1)に対応する印字データ6上の画素Dを、印字データ処理部121に記憶する。
上記のステップS401からステップS403は、順番は上記に限られず、前後してもよい。パターン606、607、608が印字データ処理部121に記憶されると、次に、印字データ6において、パターン607、またはパターン608に相当する領域と隣接する、パターン606に相当する領域を、補正予定領域として検出し、印字データ処理部121に記憶する(ステップS404)。具体的には、該パターン606のDc(1)に相当する画素Dを、補正予定画素610として印字データ処理部121に記憶する。
次に、ステップS404において印字データ処理部121に記憶された補正予定画素610と、印字データ6において隣接するパターン606のDc(1)に相当する画素Dを、全て補正予定画素610として記憶する(ステップS405)。このステップS405は、第1実施形態におけるステップS104と同様に行われる。
図31は、ステップS404、およびステップS405を実行した結果、補正予定領域として検出された補正予定画素610を説明する図である。図31に示すように、例えば、図26においてQ(411,505)の着弾位置のずれの原因となっていた、Q(411,503)に対応するD(411,503)が、補正予定画素610として検出されている。
最後に、ステップS404およびステップS405により印字データ処理部121に記憶された補正予定画素610のうち、少なくとも一部の画素Dを、非印字画素602に変更する(ステップS406)。このステップS406は、第1実施形態におけるステップS105と同様に行われててもよいし、第2実施形態や第3実施形態におけるステップS105が採用されてもよい。
上記のように、新たに最適なパターン606、607、608を設定し、補正処理工程を実行することで、インターレース処理による記録される画像においても、着弾位置のずれが生じる場所に、正確に補正を行うことができる。
<5.変形例>
なお、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて前述したもの以外に種々の変更をすることが可能である。
<5−1.制御部の変形例>
図5において、制御部9は、外部に接続されたコンピュータ11からの入力にもとづいて、制御を行うが、本発明の実施に関してはこれに限られず、コンピュータ11におけるRAM105や、固定ディスク107に相当する処理部や記憶部が、制御部9の内部に備えられていてもよい。
図32は、変形例における制御部とその周辺の構成を示すブロック図である。図32において、制御部9は、制御部9の全体的な制御を担う全体制御部901と、インターフェイス(I/F)902を介してコンピュータ11から入力される記録対象の元画像データからインクジェット記録用の印字データを生成する画像データ処理部906と、画像データ処理部906により生成された印字データの補正処理を行う印字データ処理部907と、印字データにもとづいてヘッド31におけるインク吐出の制御を行う吐出制御部903と、移動機構2の制御を行う移動制御部904と、エンコーダ24からの信号が入力されるとともにヘッド31からのインク吐出のタイミングを制御するタイミング制御部905と、印字データ処理部907による印字データの補正処理の際に用いられるパターンデータ909を記憶する記憶部908とを備える。
ここで、画像データ処理部906は図6におけるコンピュータ11内の画像データ処理部123と同様の動作を行い、印字データ処理部907は図6におけるコンピュータ11内の印字データ処理部121と同様の動作を行い、記憶部913図6におけるコンピュータ11内の固定ディスク107等と同様の動作を行う。パターンデータ909は、補正処理に用いる各種のパターンを記憶する。
<5−2.パターンについての変形例>
次に、補正処理に用いる各種のパターンについての変形例を説明する。第1実施形態から第3実施形態においては、パターン603、604を用いて補正処理を行い、第4実施形態においてはパターン606、607、608を用いて補正処理を行ったが、本発明の実施に関してはこれに限られない。予め、記録媒体7上にテストパターンの記録を行い、Y方向に対する着弾予定位置PとドットQとの実際のずれ量を測定してから、各種のパターンを適宜設定してもよい。
パターン603の代わりに用いるパターンとしては、(+Y)側から(−Y)側へ、3画素以上の印字画素601が連続した後、非印字画素602が1画素以上後続するような検出パターンを用いてもよい。
すなわち、2画素の印字画素601がY方向に連続した際に、(−Y)側の印字画素601にもとづくドットQは、対応する着弾予定位置Pに対してほとんどずれないのに対し、3画素の印字画素601がY方向に連続した際に、(−Y)側の印字画素601にもとづくドットQが、対応する着弾予定位置Pに対して(+Y)側にずれるような場合には、パターン603を、(+Y)側から(−Y)側へ、3画素の印字画素601が連続した後、非印字画素602が1画素後続するようなパターンに代替すると、着弾予定位置Pに対してずれるドットQの位置を印字データ上でより確実に検出することができる。
<5−3.非印字画素に変更する補正予定画素の選び方の変形例>
第1実施形態のステップS105(図12参照)では、補正予定領域がX方向に複数個隣接する領域において、(−X)側から数えて偶数番目の補正予定領域における補正予定画素610(図15参照)を、非印字画素602に変更した。しかしながら、本発明の実施に関してはこれに限られず、上記の偶数番目に代えて、奇数番目の補正予定領域における補正予定画素610を、非印字画素602に変更してもよい。また、(−X)側から数えて3の倍数となる位置の補正予定領域における補正予定画素610を、非印字画素602に変更してもよいし、3の倍数とならない位置を選んで非印字画素602に変更してもよい。
上記のように、補正予定画素610のうち「少なくとも一部の画素」とは、第1実施形態における偶数列目の補正予定画素610に限られず、インク81の記録媒体7へのにじみやすさや、記録されるドットQの大きさや、使用するヘッド31の構造等の条件により、補正予定画素610のうち、どの画素を選択するかを、適宜、設定してもよい。