JP2018069530A - 画像形成装置及び印字補正方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】局所的に広がり率を変更することができ、印字速度の向上を達成し得る画像形成装置及び印字補正方法を提供する。【解決手段】本開示の一態様による画像形成装置は、透明インクを吐出する透明インク吐出手段と、色材を含有した色インクを吐出する色インク吐出手段と、印字領域内の一部である補正対象領域を特定する補正対象領域特定手段と、補正対象領域に属する画像位置に対して透明インク吐出手段から透明インクを打滴し、かつ、透明インクと、色インク吐出手段から打滴した色インクとを重ね合わせることにより、補正対象領域の印字補正を行う印字補正手段と、を備える。【選択図】図10

Description

本発明は、画像形成装置及び印字補正方法に係り、特に、インクジェット方式によって印字を行う画像形成装置における印字画像の欠陥を補正する画像補正技術に関する。
画像形成装置の一種であるインクジェット印刷装置においては、一般的に、インクジェットヘッドのノズルの吐出不良に起因する白スジ又は濃いスジ等のバンディングの発生を抑制することが求められる。特に、シングルパスのインクジェット印刷装置では、1つのノズルの不良によって簡単にスジが発生してしまうため、より精細な印字補正が要求される。
不良ノズルに起因するスジを補正する技術は、例えば、特許文献1に示されているように、不良ノズルを事前にマスク化し、近接ノズルを用いて欠陥箇所の印字を補うことが一般的である。ノズルの吐出不良には、不吐出、飛行曲がり、又は、滴量異常などがありうる。不吐出、飛行曲がり、或いは滴量異常などは、ノズルの吐出特性の一例である。
特許文献2では、1つの色系につき、濃度の異なるインクをそれぞれのノズルから吐出する構成を採用しており、記録用紙上にドットを形成する際に、飛行曲がりを生じるノズルが存在する場合には、この飛行曲がりを生ずるノズルがドットを形成する画素を、他の種類のインクを吐出するノズルによって代替してドットを形成する技術が開示されている。特許文献2の記録用紙は、本明細書でいう記録媒体に相当し得る。
特許文献3には、濃インクを用いて記録したベタ画像において発生した白スジを、後打ちしたライト系のインクによって補正する技術が開示されている。
特許文献4には、シャトル方式の印字走査において、最終の走査前の画像を読み取り、その画像データから補正を淡インクによって行う手法が開示されている。淡インクはライト系のインクと同義である。
特開2008−179092号公報 特開2007−083727号公報 特開2002−331694号公報 特開2004−181940号公報
特許文献1に示されているような、不良ノズルの近接ノズルを用いてスジの補正を行う場合、近接ノズルによって通常の印字よりも大きなドットを形成する必要がある。吐出エネルギーを発生させる手段として圧電素子を用いるピエゾ方式を利用したインクジェットヘッドにおいては、大ドットを形成するために、複数の吐出用パルスを含んだ駆動波形を印加して大滴量を吐出させることが一般的である(図8参照)。
しかし、複数の吐出用パルスを連続的に印加して大滴量を吐出させる構成の場合、1画素当たりの駆動波形の時間が長くなってしまうという課題がある。つまり、この大滴量を吐出するための駆動波形の時間によって最大吐出可能周波数が決定され、記録媒体の最大搬送速度が決まってしまう。すなわち、1画素当たりの駆動波形の時間によって、最大印字速度が制限される。
近年のシングルパスの産業用インクジェット分野の動向として、より高い生産性が求められている。生産性向上の観点から、印字速度の向上が必要である。
印字補正のためにドット径を大きくする手段としては、1ドット当たりの滴量を大きくすること、及び広がり率を上げることが主な解となる。広がり率は、記録媒体の材質など、基材の影響を直接受けるため、不良ノズルに起因する欠陥の補正といった局所的な変更を行うことが従来技術では困難であった。
特許文献2に記載の印字補正方法では、1つの色系に対して濃インクと淡インクの各々を吐出する複数のラインヘッドを使用することになるため、一般的なCMYKの4色構成の場合、各色系について濃淡2種類のインクをそれぞれ吐出する合計8本のラインヘッドが必要となる。このため、装置を大型化させなければならない。
特許文献3及び特許文献4の各々に記載の技術も特許文献2に記載の技術と同様に、装置が大型化するという課題がある。
本開示は、このような事情に鑑みてなされたもので、上述した複数の課題の少なくとも1つの課題を解決し、局所的に広がり率を変更することができ、印字速度の向上を達成し得る画像形成装置及び印字補正方法を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、次の発明態様を提供する。
第1態様に係る画像形成装置は、透明インクを吐出する透明インク吐出手段と、色材を含有した色インクを吐出する色インク吐出手段と、印字領域内の一部である補正対象領域を特定する補正対象領域特定手段と、補正対象領域に属する画像位置に対して透明インク吐出手段から透明インクを打滴し、かつ、透明インクと、色インク吐出手段から打滴した色インクとを重ね合わせることにより、補正対象領域の印字補正を行う印字補正手段と、を備える画像形成装置である。
第1態様によれば、透明インクを用いて局所的に色インクの広がりを大きくすることができる。第1態様によれば、大滴量の色インクの吐出を行うことなく、印字補正に必要なドットの広がりを実現できるため、印字速度の向上を図ることができる。
第2態様として、第1態様の画像形成装置において、透明インクを打滴した後に、色インクを打滴することにより、透明インクの上に色インクを重ね合わせて印字補正を行う構成とすることができる。
第2態様によれば、後打ちの色インクを効率よく広げることができる。
第3態様として、第1態様又は第2態様の画像形成装置において、印字補正手段は、補正対象領域の透明インクを打滴する位置を決定する透明インク打滴位置決定手段と、透明インク打滴位置決定手段の決定に従い、透明インク吐出手段の吐出動作を制御する透明インク吐出制御手段と、を含む構成とすることができる。
第4態様として、第1態様から第3態様のいずれか一態様の画像形成装置において、印字補正には、色インク吐出手段の不吐ノズルに起因する画像欠陥を補正する不吐補正が含まれる構成とすることができる。
第5態様として、第4態様の画像形成装置において、印字補正手段は、不吐ノズルによって印字不良となる不良画素に隣接した周辺画素に透明インクを打滴する構成とすることができる。
第6態様として、第4態様又は第5態様の画像形成装置において、印字補正手段は、不吐ノズルによって印字不良となる不良画素を含む周辺3画素の領域に透明インクを打滴する構成とすることができる。
第7態様として、第1態様から第6態様のいずれか一態様の画像形成装置において、印字補正には、色インク吐出手段における色インクの吐出に使用されるノズルの吐出特性に起因するスジを補正するスジ補正が含まれる構成とすることができる。
第8態様として、第1態様から第7態様のいずれか一態様の画像形成装置において、印字補正手段は、補正対象領域における印字不良の箇所に対応する不良画素、及び不良画素に隣接した周辺画素の少なくとも一方の画像位置に透明インクを付与する構成とすることができる。
第9態様として、第1態様から第8態様のいずれか一態様の画像形成装置において、印字補正には、色インクの抜けの割合が領域によって異なることに起因するムラを補正するムラ補正が含まれる構成とすることができる。
第10態様として、第9態様の画像形成装置において、印字補正手段は、単位面積当たりに付与する透明インクの量を変えることによって印字濃度を調整する構成とすることができる。
第11態様として、第1態様から第10態様のいずれか一態様の画像形成装置において、透明インク吐出手段と色インク吐出手段の各々は、ライン型のインクジェットヘッドを用いて構成され、シングルパス方式により印字を行う構成とすることができる。
第12態様として、第11態様の画像形成装置において、複数色の色インクの色ごとに色インク吐出手段が設けられ、透明インク吐出手段と、色ごとに設けられた複数の色インク吐出手段のうち、透明インク吐出手段が、記録媒体の搬送方向の最も上流側の位置に配置される構成とすることができる。
第13態様として、第1態様から第12態様のいずれか一態様の画像形成装置において、色インクを付着させる記録媒体に、色材を凝集させる酸を含む処理液を付与する処理液付与手段を備え、記録媒体に処理液が付与された後に、透明インクが打滴される構成とすることができる。
第14態様として、第1態様から第13態様のいずれか一態様の画像形成装置において、色インク吐出手段から吐出して透明インクと重ね合わせる1ドット当たりの色インクの滴量が、補正対象領域に非該当の非補正対象領域の印字に用いる1ドット当たりの色インクの滴量の最大値以下である構成とすることができる。
第15態様として、第1態様から第14態様のいずれか一態様の画像形成装置において、透明インク吐出手段から吐出する1ドット当たりの透明インクの滴量が、色インク吐出手段から吐出される1ドット当たりの色インクの滴量と同等以下である構成とすることができる。
第16態様に係る印字補正方法は、透明インクを吐出する透明インク吐出手段と、色材を含有した色インクを吐出する色インク吐出手段と、を備える画像形成装置によって実施される印字補正方法であって、印字領域内の一部である補正対象領域を特定するステップと、補正対象領域に属する画像位置に対して透明インク吐出手段から透明インクを打滴するステップと、色インク吐出手段から色インクを打滴するステップと、を含み、透明インク吐出手段から打滴した透明インクと、色インク吐出手段から打滴した色インクとを重ね合わせることにより、補正対象領域の印字補正を行う印字補正方法である。
本発明によれば、透明インクを用いて局所的に広がり率を変更することができ、1画素当たりの駆動波形の時間を長くすることなく、大きなドットを形成して印字補正を行うことができる。これにより、印字速度の向上を達成し得る。
図1は、シングルパス方式のインクジェット印刷装置によって記録されるドットの配列パターンの例を示す模式図である。 図2は、不吐ノズルが発生した場合のドットの配列パターンの例を示す模式図である。 図3は、図2に示したドットの配列パターンによる印字結果の例を示した模式図である。 図4は、不吐ノズルに起因する画像欠陥を、近隣のノズルを用いて補正する場合の例を示した模式図である。 図5は、図4中の直角三角形ABCの拡大図である。 図6は、小ドットを形成する小滴吐出用の駆動波形の例を示す波形図である。 図7は、中ドットを形成する中滴吐出用の駆動波形の例を示す波形図である。 図8は、大ドットを形成する中滴吐出用の駆動波形の例を示す波形図である。 図9は、透明インクを使用せずに色インクを用いてドットを形成する様子を示した模式図である。 図10は、透明インクと色インクとを重ね合わせてドットを形成する様子を示した模式図である。 図11は、広がり率の定義を示す説明図である。 図12は、広がり率とドット径の関係を示すグラフである。 図13は、不良ノズルのない正常な印字状態の例を示す模式図である。 図14は、不吐化によって画像欠陥が発生した印字状態の例を示す模式図である。 図15は、本実施形態による印字補正後の印字状態の例を示す模式図である。 図16は、補正ドットを形成する位置と同じ位置に透明インクを打滴した例を示す模式図である。 図17は、補正ドットの形成方法を模式的に示した説明図である。 図18は、不吐ノズルの位置に対応する不良領域に透明インクを打滴した例を示す模式図である。 図19は、補正ドットを空隙側に引き寄せる様子を模式的に示した説明図である。 図20は、高濃度画像でのムラ発生の様子を例示した画像例である。 図21は、インクジェット印刷装置における階調操作のイメージ図である。 図22は、粒状性が良好な理想的な階調操作のイメージ図である。 図23は、実施形態に係るインクジェット印刷装置の例を示す全体構成図である。 図24は、インクジェット印刷装置の制御系の要部構成を示すブロック図である。 図25は、制御装置における画像記録制御に関する機能を示したブロック図である。 図26は、インクジェットヘッドの斜視図である。 図27は、インクジェットヘッドをノズル面側から見た部分拡大図である。 図28は、ヘッドモジュールのノズル面を吐出側から見た平面図である。 図29は、ヘッドモジュールにおけるイジェクタの立体的構造を示す縦断面図である。
以下、添付図面に従って本発明の実施の形態について詳説する。
《インクジェット印刷装置における画像欠陥の例について》
図1は、ラインヘッドを備えるシングルパス方式のインクジェット印刷装置によって記録されるドットの配列パターンの例を示す模式図である。図1には、3×3画素の範囲の各画素にドット2が形成されている様子が示されている。図1において各画素の位置を示す格子点の上に描いた円は、着弾液滴によって形成されるドット2を模式的に表している。図1では、ドット2の配列パターンを分かり易く表示するために、ドット2のサイズを実際の縮尺比率よりも小さく描いている。
図1の縦方向が用紙搬送方向である。用紙搬送方向をY方向とする。Y方向に直交する用紙幅方向をX方向とする。X方向は、インクジェット印刷装置に搭載されるラインヘッドにおけるノズルの並び方向に相当する。X方向に並ぶ画素の位置は、ラインヘッドにおける各ノズルの位置に対応している。各画素の位置はXY直交座標系による座標を用いて表すことができる。
図2は、ラインヘッドのノズル列における1つのノズルが不吐ノズルとなった場合のドットの配列パターンを示している。図2では、X方向に並ぶ3画素のうち、左から2列目の画素の記録を担うノズルが不吐ノズルとなった場合に、記録されるドットの配列パターンが示されている。
不吐ノズルには、ノズル詰まりや、圧電素子の故障などによって不吐出となったノズルの他、不吐化によって不吐出となったノズルが含まれる。不吐化とは、ノズルを強制的に使用禁止状態にする処理をいう。不吐化されたノズルは液滴を吐出することができない状態となり、不吐ノズルとなる。不吐化は、不吐出化、吐出不能化、不使用化、或いはマスク化と言い換えることができる。不吐化の処理は、ノズルのマスク処理とも呼ばれる。
例えば、飛行曲がりの曲がり量が許容範囲を超えて大きい不良ノズルや、吐出液滴の滴量が許容範囲から外れて小さい又は大きい滴量異常の不良ノズルについて不吐化が行われる。
図3は、図2に示したドットの配列パターンによる印字結果の例を示した模式図である。図3に示すように、一般に、着弾液滴によって形成されるドット2の直径は、画素間の距離よりも大きい。
図3に示すように、不吐化したノズルの位置に対応する記録媒体上の印字位置にY方向に伸びるスジ状の画像欠陥が発生する。スジ状の画像欠陥をスジという。スジには、連続的なスジの他、断続的なスジも含まれる。
《近隣ノズルを用いて補正する際の必要ドット径》
図4は、不吐ノズルに起因する画像欠陥を、近隣のノズルを用いて補正する場合の例を示した模式図である。不吐ノズルに対応する位置に発生する画像欠陥を、近隣のノズルからの打滴によって補正するためには、近隣ノズルから打滴するドットのドット径を大きくし、近隣ノズルから打滴したドット4によって白抜け部分を埋めることが必要となる。図4の場合、補正に用いる近隣ノズルは、不吐化したノズルによって印字できなくなる不吐画素に隣接した隣接画素の記録を担うノズルである。
近隣ノズルを用いて補正する際に必要とされるドット径の条件として、図4に示した直角三角形ABCの長辺CAがドット4によって被覆されることである。画素間の距離を1ピクセル[pixel]という長さの単位として用いると、辺ABの長さは1ピクセル[pixel]であり、辺BCの長さは0.5ピクセル[pixel]であり、長辺CAの長さは(51/2)/2ピクセル[pixel]である。
図5は、直角三角形ABCの拡大図である。近隣ノズルからの打滴によって形成するドット4を、通常よりも大きなドット径のドットとし、長辺CAがドット4によって埋まれば白抜けは発生しない。
〈1ドット当たりの滴量を変えてドットの大きさを変更する場合の駆動波形の例〉
図6から図8は、ピエゾ方式を利用したインクジェットヘッドにおける吐出用の駆動波形の例である。ここでは、小滴、中滴、大滴、及び吐出無しの4段階の吐出制御が可能なインクジェット印刷装置に用いられる駆動波形の例が示されている。
図6は、小ドットを形成する小滴吐出用の駆動波形の例である。図7は、中ドットを形成する中滴吐出用の駆動波形の例である。図8は、大ドットを形成する大滴吐出用の駆動波形の例である。図6から図8の各図において横軸は時間を表し、縦軸は電圧を表す。時間の単位はマイクロ秒[μs]であり、電圧の単位はボルト[V]である。
図8に示す大滴吐出用の駆動波形10は、記録媒体上における1画素のドット記録を担う一記録周期内に複数の吐出用パルスが連続する駆動波形である。図8では、第1パルス11、第2パルス12、第3パルス13、第4パルス14及び第5パルス15が連続する5発連射タイプの例が示されている。第1パルス11から第5パルスの各吐出用パルスは、いわゆる引き‐押し(pull-push)型の波形であり、1パルスの印加につき一発の吐出動作が行われる。
また、図8に示す駆動波形10は、最終の吐出用パルスである第5パルス15の後に続いて、メニスカス残響振動を抑制させる残響抑制パルス16が加えられている。なお、「一記録周期」という用語は、「一印字周期」或いは「一印刷周期」と呼ばれる場合がある。
駆動波形10における先頭の吐出用パルスである第1パルス11は、ノズルに連通する圧力室の体積を拡張させる方向に圧電素子を変形させる「引き(pull)」動作の駆動を行う第1信号要素11aと、その引き動作で圧力室を拡張させた状態を維持(保持)する第2信号要素11bと、圧力室を収縮させる方向に圧電素子を変形させる「押し(push)」動作の駆動を行う第3信号要素11cと、を含んで構成される。
第1信号要素11aは基準電位から電位を下げる立ち下がり波形部である。第2信号要素11bは第1信号要素11aで下降した電位Vを維持する波形部、第3信号要素11cは第2信号要素11bの電位(V)を基準電位に上昇させる立ち上がり波形部である。
第1パルス11に続く、第2パルス12、第3パルス13、第4パルス14、第5パルス15についても、同様に、「引き」、「維持」、「押し」の各動作に対応した信号要素を有している。
第1パルス11から第5パルス15の各吐出用パルスのパルス幅は、共振周期Tcの2分の1とすることが好ましく、パルス間隔は共振周期Tcとすることが好ましい。このように、パルス幅及びパルス間隔を共振周期Tcに対応させてメニスカスの共振現象を利用すると、効率のよい液滴吐出を行うことができる。
パルス幅とは、パルスの始端から立ち下がり波形部の始端までの時間をいう。パルス間隔とは、先のパルスの始端から次のパルスの始端までの時間をいう。
共振周期Tcは、インクジェットヘッドのヘルムホルツ固有振動周期であり、インク流路系、音響要素としてのインク、圧電素子の寸法、材料、物性値等から定まる振動系全体の固有周期である。共振周期Tcは、インクジェットヘッドの設計値から計算によって求めることができる。インクジェットヘッドの設計値には、使用するインクの物性値が含まれる。
また、共振周期Tcは、インクジェットヘッドの設計値から推定する方法に限らず、実験によってTcを測定する方法もある。例えば、駆動波形として単純な矩形波を用いて、矩形波のパルス幅を徐々に変化させて滴速度と滴量を調べて、共振周期Tcを把握することができる。
図8に示した大滴吐出用の駆動波形10は、小滴吐出用の駆動波形と、中滴吐出用の駆動波形とを内包した波形となっている。図6に示した小滴吐出用の駆動波形は、図8に示した大滴吐出用の駆動波形10の中の第5パルス15と残響抑制パルス16のみを選択したものとなっている。
また、図7に示した中滴吐出用の駆動波形は、図8に示した大滴吐出用の駆動波形10の中の第3パルス13、第4パルス14、第5パルス15及び残響抑制パルス16のみを選択したものとなっている。中滴吐出用の駆動波形は、小滴吐出用の駆動波形を内包した波形となっている。
ピエゾ方式を利用したインクジェットヘッドの場合、図6から図8に例示したように、複数の吐出用パルスを組み合わせることで大きな滴量を吐出させることができる。
《課題の整理》
[課題1]図6から図8に示したように、吐出用パルスの数を増加させることによって大きな滴量を吐出させる構成を採用する場合、1画素当たりの駆動波形時間が長くなるという課題がある。1画素当たりの駆動波形時間によって、最大吐出可能周波数が決まるため、用紙の最大搬送速度が駆動波形時間によって制限される。印刷の生産性を向上させるためには、1画素当たりの駆動波形時間を短くすることが望まれる。
[課題2]特許文献2から特許文献4に記載の技術では、装置が大型化するという課題がある。
[課題3]また、特許文献2には、印字補正の際の濃インクと淡インクの打滴順に関する概念の記載がなく、印字補正にとって最も効率的と思われる構成になっていない。特許文献3及び特許文献4の各文献では、濃インクの打滴後に、淡インクを後打ちすることによって印字補正を行っているが、このような構成は、後打ちした淡インクのドットが先打ちの濃インクと接触してドット径が広がる形となるため、スジなどの欠陥を補う印字補正の観点から必ずしも最適な構成とは言えない。
《本実施形態の概要》
本開示の技術は、透明インクを用いて局所的に色インクの広がりを促進させ、不吐部分やスジ部分、白抜けなどの画像欠陥を埋める、若しくは、色インクを滲ませることにより、不吐補正、スジ補正、及びムラ補正の少なくとも1種の印字補正を達成する。つまり、透明インクと通常の描画用インクである色インクとを重ね合わせることにより、大ドットを形成し、不吐補正、スジ補正、及びムラ補正のうち少なくとも1種の補正を行う。
通常の描画用インクとは、例えば、CMYK4色系の場合、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、及びブラックインクの各々の色インクを指す。特許文献2から特許文献4の各文献に記載の濃インクは、通常の描画用インクに相当する。
透明インクと色インクとを「重ね合わせる」とは、少なくとも一部を重ね合わせることを意味しており、透明インクの液滴によって形成される透明インクのドットと、色インクの液滴によって形成される色インクのドットとを少なくとも一部が重なるように接触させることをいう。
従来、ドットの広がり率は、局所的に変化させることが困難であった。本開示の技術によれば、透明インクを用いて広がり率を局所的に変化させることにより、大ドットを形成することができる。
透明インクは、クリアインクと同義である。透明インクの一例として、描画用インクから色材成分を抜いた液体等があげられる。
図9は、透明インクを使用せずに色インクを用いてドットを形成する様子を示した模式図である。図示されないノズルから吐出された色インクの液滴20が記録媒体24に着弾した場合、記録媒体24上に形成されるドット26は、ある一定のドット径Dにまでしか広がらない。
図10は、透明インクと色インクとを重ね合わせてドットを形成する様子を示した模式図である。図10では、透明インクを先に打滴し、その後に色インクを打滴する様子が描かれている。記録媒体24上に先行して打滴された透明インクの上に、色インクが重なるように打滴される。記録媒体24上に先打ちの透明インクのドット30が存在していることによって、後打ちの色インクの液滴20が着弾した際に、透明インクのドット30と接触し、色インクのドット32は、図9のDよりも大きく広がる。図10に示した色インクのドット32のドット径Dは、図9に示した色インクのドット26のドット径Dよりも大きい。
すなわち、透明インクを用いることにより、擬似的に広がり率が大きくなったような基材状態にすることができる。基材状態とは、記録媒体24における記録面の状態をいう。記録媒体24上の透明インクを付与する位置を選択することにより、局所的に広がり率を制御することができる。また、記録媒体24上に付与する透明インクの量を調整することにより、広がり率を制御することができる。
このように透明インクと色インクとを組み合わせた2液の重ね合わせ方式を採用することにより、特許文献2〜4のように1つの色系に複数個のラインヘッドを用意する必要はなくなり、すべての描画色に対して、1種類の透明インクを追加的に用いるだけで、大滴量の打滴を使わずに、補正できるようになる。その結果、装置の極端な大型化を防ぐことができ、かつ、高生産性を達成することができる。
本開示の技術を実施するに際して、透明インクを先打ち、後打ちそのどちらでも色インクの広がりを促進させドット径を拡大することが可能であるが、透明インクを先打ちすることによって記録媒体の記録面の表面状態を変化させてから、その後に色インクを打滴する手法の方が印字補正にとってはより効果的である。
〈広がり率について〉
図11は、広がり率の定義を示す説明図である。図示されないノズルから吐出された液滴量を球形近似した場合の液滴直径をDとし、着弾液滴によって形成されるドットの直径をDとする場合に、広がり率は、D/Dによって定義される。
インクジェット印刷の分野では、インクジェットヘッドによる印字前に、記録媒体の記録面に処理液を付与するプレコート処理を行うシステムが知られている。処理液は、前処理液、或いはプレコート液とも呼ばれる。インク中の成分を凝集させる凝集成分として酸を含む処理液を用いた系においては、その広がり率は、単独滴では広がり率2程度であるのに対し、透明インクの先打ちを用いることで広がり率2.4程度にまでドットを拡大することができる。透明インクの材料及び物性を調整することにより、この広がり率拡大の効果はより大きなものになると考えられる。
参考までに広がり率とドット径の関係を図12に示す。図12の横軸は液滴の体積を表し、単位はピコリットル[pl]である。図12の縦軸は、ドット径を表し、単位はマイクロメートル[μm]である。
図12には、広がり率が2.0のグラフと、広がり率が2.3のグラフとが示されている。これらのグラフから明らかなように、広がり率を大きくすることにより、ドット径を大幅に拡大することが可能である。
〈応用例〉
本開示による透明インクを用いて局所的に広がり率を変化させる特性を利用することにより、不良ノズルに対する欠陥の補正だけでなく、ベタ部分の白抜けを効率的に埋めることでムラ及び粒状性を改善させることにも応用することができる。
本開示の技術では、隣接ドットが互いにオーバーラップし合うような高濃度部分において、効果を見込むものである。そのため、透明インクは、完全に無色透明のインクである場合に限らず、高濃度部分において実質的に他の色インクの色再現性に影響を与えない程度の極薄いライト系のインクを用いた場合も同様の効果が期待できる。
よって、本開示でいう透明インクには、一般的なライト系のインクの色材濃度(質量%)である1%よりも色材濃度が低い極ライト系のインクであってもよい。透明インクにおける色材の含有量は少ないほど好ましく、色材を含んでいない透明インクである形態が最も好ましい。透明インクにおいて、許容し得る色材の含有量としては、例えば、質量%で1質量%未満であり、好ましくは、0.8質量%以下、さらに好ましくは、0.6質量%以下である。
以下に各種の印字補正に関して具体的な適用例を示す。
《第1例:不吐補正への適用》
インクジェット印刷装置を用いて画像形成を行う場合、高濃部分では複数種類の滴量種(例えば小滴及び中滴など)が互いにオーバーラップしあった状態で定着する。不良ノズルのない理想的な状態では、記録媒体の印字領域に隙間なくインク滴を配置することができるが、シングルパス方式のインクジェット印刷装置では不良ノズルが発生した場合、簡単にスジとして認識されてしまう。このため、不良ノズルを不吐化し、近接ノズルによって、より大きなドットを形成することで、不吐ノズルに起因して発生した空隙を埋める不吐補正が行われる。不吐ノズルに近接するノズルであって補正に用いる近接ノズルを「補正ノズル」という場合がある。
図13は、不良ノズルのない正常な印字状態の例を示す模式図である。図14は、不吐化によって画像欠陥が発生した印字状態の例を示す模式図である。
本実施形態では、印字速度を向上させることを目的の1つとする観点から、補正に用いる大ドットを、透明インクを利用することによって形成する。すなわち、本実施形態は、補正対象色のインクジェットヘッドそのものが大滴量のインク滴を吐出しなくても、透明インクを利用して、小滴又は中滴といった通常の描画に用いる滴量の色インクと透明インクとを重ね合わせて大ドットを形成するものである。
図15は、本実施形態による印字補正後の印字状態の例を示す模式図である。図15と図14を比較すると明らかなように、図15に示された補正ドット40は、図14に示されたドット42よりもドット径が大きくなっており、不吐化によって発生した空隙が補正ドット40によって覆われる。
透明インクを利用して大ドットを形成する方法として、不良近接領域に透明インクを打滴する第1の方法と、不良領域に透明インクを打滴する第2の方法とが考えられる。不良近接領域は、不吐ノズルによって印字不良となる不良画素の近接領域である。つまり、第1の方法は、不吐ノズルの近接ノズルによって打滴する補正ドットと同じ位置に透明インクを打滴する方法である。
不良領域は、不吐ノズルによって印字不良となる不良画素の領域である。つまり、第2の方法は、不吐ノズルによって空隙ができる領域へ透明インクを打滴して、隣接する補正ドットを空隙側へ引き寄せる方法である。
図16は、第1の方法により、補正ドットと同じ位置に透明インクを打滴した例を示す模式図である。図16に示すように、不良近接領域の画素に透明インクを打滴して透明インクのドット44を形成し、かつ、図14に示すように、色インクの打滴を行うことにより、図15に示すような補正ドット40を形成することができる。
図16において、透明インクのドット44を形成した画素が不良画素に隣接した周辺画素の一例に相当する。
図17は、第1の方法による補正ドットの形成方法を模式的に示した説明図である。第1の方法の場合、透明インクのドット44は、不良近接領域に形成される。不吐ノズルの近接ノズルから不良近接領域に色インクの液滴46が打滴され、補正ドット40が形成される。
印字速度向上の観点から透明インクについても大滴量の吐出を行わないようにするため、透明インクの1ドット当たりの滴量についても、小滴又は中滴とし、描画用の色インクの1ドット当たりの滴量と同等以下とする。
また、透明インクと重ね合わせる1ドット当たりの色インクの滴量は、補正対象領域に非該当である非補正対象領域の印字に用いる1ドット当たりの色インクの滴量の最大値以下とする。つまり、小滴又は中滴といった通常の印字に用いる滴量の色インクを打滴して補正ドット40を形成する。小滴と中滴による2種類の滴種を吐出可能な構成の場合、1ドット当たりの色インクの滴量の最大値は、中滴の滴量に相当する。
図18は、第2の方法により、不吐ノズルの位置に対応する不良領域に透明インクを打滴した例を示す模式図である。図18に示すように、不良領域である不吐画素に透明インクを打滴して透明インクのドット44を形成し、かつ、図14に示すように、色インクの打滴を行うことにより、図15に示すような補正ドット40を形成することができる。
図19は、第2の方法によって、補正ドットを空隙側に引き寄せる様子を模式的に示した説明図である。第2の方法の場合、透明インクのドット44は、不良領域に形成される。不吐ノズルの近接ノズルから不良近接領域に色インクの液滴46が打滴され、補正ドット40が形成される。
また、上述した第1の方法及び第2の方法の両方の方法を用いて不吐ノズルに起因する画像欠陥を補正することもできる。つまり、不吐ノズルによって印字不良となる不良画素を含む周辺3画素の領域に透明インクを打滴して印字補正を行ってもよい。
補正に用いるノズルの範囲は、不吐ノズルの両側に隣接する2ノズルに限らない。例えば、2ノズルに隣接する更に外側の2ノズルを加えた4ノズルを用いて補正を行う構成や、4ノズルの更に外側に隣接する2ノズルを加えた6ノズルを用いて補正を行う構成などもありうる。
透明インクの打滴量、打滴率を調整することで補正強度を簡単に調整することができるようになる。透明インクの打滴量や打滴率、どの画素に透明インクを打滴するかは、描画方式やインク滴量、及びインク物性によって、より効果的な組み合わせを採用することが好ましい形態である。不吐補正に効果的な透明インクの打滴量、打滴率、及び打滴位置を調整するには、打滴量、打滴率、及び打滴位置の各パラメータの組み合わせを変えてテスト印字を行い、スキャナを用いて、或いは、目視によって、スジの視認性の低減効果を確認して、必要な打滴量、打滴率及び打滴位置のパラメータの最適化調整を行えばよい。
《第2例:スジ補正への適用》
第1例にて説明した不吐補正の場合は、補正対象が不吐化したノズルであったが、例えば、1200dpiの記録解像度を有するラインヘッドにおいて、着弾位置のずれ量がX方向に5マイクロメートル[μm]程度の軽微な飛行曲がりによってもスジが発生する場合がある。その際に、かかる軽微な飛行曲がりが発生している対象の不良ノズルを不吐化するのではなく、吐出を維持したまま、透明インクによって着弾位置を着弾干渉によって補正することができる。「dpi」は、dot per inch を意味し、1インチ当たりのドット(点)の数を表す単位表記である。1インチは、25.4ミリメートル[mm]である。
軽微な飛行曲がりが発生している状況は、図19で説明した例と同様に、透明インクの打滴位置と色インクの打滴位置の軸がずれている場合を考えればよく、飛行曲がりによって着弾位置が設計上の理想位置からずれる色インクを透明インク側に引き寄せることができる。このようなスジ補正の場合、不良領域に透明インクを打滴する形態が好ましい。
飛行曲がりとは、液滴の吐出方向が逸れ、ドットが形成されるべき理想的位置に対して実際にドットが形成される位置がずれる現象である。ドットが形成されるべき理想的位置は、設計上の目標位置であり、正常なノズルが液滴を吐出した場合に想定されるドット形成位置を指す。飛行曲がりは、吐出曲がりとも呼ばれる。
《第3例:ムラ補正への適用》
ムラ補正に関しては、既述した不吐補正やスジ補正とは考え方が異なる。インクジェット印刷システムにおいて、濃度ムラの原因として一般的なものは、ドットの重ね合わせによって形成したベタ印字面の空隙の割合が領域によって異なることが挙げられる。ここでいう「空隙」は印字の「抜け」と同義である。
図20は、高濃度画像でのムラ発生の様子を例示した画像例である。図20には、ブラックのベタ画像を印字した際に発生し得る抜けの分布の一例が示されている。図20の例では、画像の中央部分の領域における抜けの割合が周囲部分の領域における抜けの割合よりも大きくなっている。このように、領域に依存する抜けの割合の差異がムラとして視認される。つまり、図20の例では、画像の中央部分の濃度が薄く、X方向の両端部分の濃度が濃くなっており、かかる濃度差がムラとなって視認される。
本開示の技術により、図17及び図19で説明したように透明インクを用いて広がり率を局所的に拡大することができる。つまり、抜けが発生している箇所及び/又はその近接領域に透明インクを打滴することで、透明インクと重なり合う色インクのドット径を大きくし、抜けを埋めることができる。
しかし、一般的に、抜けの発生場所は、極微小な飛行曲がりや、ノズル毎の滴量の差、記録媒体である基材の不均一性など、複数の要因の組み合わせに絡んで発生するものであるため、抜けの発生場所を正確に特定することは困難であることが多い。
そこで、ムラ補正に対しては、特定のノズルに合わせた透明インクの打滴調整を行うのではなく、単位面積当たりの透明インクの打滴率及び/又は打滴量を調整することで抜けの発生確率をコントロールすることが有効な手段である。
なお、上述の第1例、第2例及び第3例で説明した各印字補正方法は、それぞれ単独で用いてもよいし、適宜組み合わせて用いてもよい。
《第4例:粒状性改善》
本実施形態に示した技術は、粒状性の向上に対しても有効な手段である。インクジェット印刷装置において、淡インクを搭載しない構成の場合、濃度の階調表現は、抜けの割合によって行う。
図21は、インクジェット印刷装置における階調操作のイメージ図である。図21には、ブラックのインクを用いた高濃度画像の階調操作の例が示されている。例えば、CMYKの4色系のインクで、黒から灰色に移り変わっているところは、図21に示すように、空隙の量の多寡によって、最高濃度のベタから灰色までの濃度階調を表現する。
その一方でオフセット印刷などの印刷装置の場合、インクの膜厚調整、及び/又は、インクそのものの濃淡を切り替えることによって画像濃度を調整し、印刷領域の全面をインクで埋めることが可能である。そのため、オフセット印刷はインクジェット印刷に比べて粒状性が優れる。
図22は、理想的な階調操作のイメージ図である。図22に示すように、理想的には、インクの抜けがなく、濃度自体が変化する状態が粒状感の無いもっとも好ましい状態である。
これに対し、インクジェット印刷は、ドットのON/OFFによって階調を表現する形態であり、空隙(抜け)の発生が前提となっているため、どうしても粒状性が低下してしまう(図21参照)。
この点、実施形態に係るインクジェット印刷装置によれば、透明インクを使って抜けを少なくさせ、かつ、色インクを滲ませることにより、印字濃度を下げることで理想的な粒状性の状態に近づけることができる。
粒状性改善の方法は、第3例で説明したムラ補正の場合と同様に、単位面積当たりの透明インクの打滴率及び/又は打滴量を、濃いエリアでは少なく、薄いエリアでは多く打滴するように調整することで、抜けの発生確率をコントロールすることが有効な手段である。つまり、透明インクの量を調整することにより、印字濃度を調整することができる。
《補正対象領域を特定する方法について》
不吐補正の場合の補正対象領域は、不良ノズルの情報から特定することができる。インクジェット印刷装置は、インクジェットヘッドにおける各ノズルの吐出状態を検査するノズル検査機能を有し、ノズル検査機能により特定した不良ノズルの情報を記憶するメモリ若しくはハードディスクなどの記憶部を備えている。
ノズル検査機能は、例えば、ラダーパターンと呼ばれるテストチャートを出力し、その出力結果を画像解析して不良ノズルを特定する機能であってよい。ラダーパターンは、インクジェットヘッドのノズル列について、いわゆる「1オンnオフ」の吐出制御によって各ノズルが連続吐出動作を行うことで形成されるノズルごとの描画ラインが並ぶラインパターンである。不良ノズルを特定する技術は、テストチャートを利用する方法に限らず、ノズルから吐出される液滴の飛翔状況をカメラで撮像するなどの方法もある。
補正対象領域は、例えば、不良ノズルの記録担当画素と、補正ノズルである近接ノズルの記録担当画素とを含む画素領域と定めることができる。
スジ補正の場合の補正対象領域については、例えば、高濃度画像のテストチャートの印字結果などからスジの発生位置を特定し、スジの位置情報を基に特定することができる。
ムラ補正の場合の補正対象領域については、例えば、高濃度画像のテストチャートの印字結果などから濃度のムラを検出し、低濃度領域を補正対象領域として特定することができる。
《インクジェット印刷装置の構成例》
図23は、実施形態に係るインクジェット印刷装置101の例を示す全体構成図である。インクジェット印刷装置101は、描画部140のプリントヘッドとしてライン型のインクジェットヘッド146C、146M、146Y、146Kを備え、枚葉紙である用紙Pにシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、及びブラック(K)の4色のインクを使用して、所望の画像をシングルパス方式で印刷するシングルパスインクジェット方式のカラーデジタル印刷装置である。
本例では描画用の色インクとして水性インクが用いられる。水性インクとは、水及び水に可溶な溶媒に顔料や染料などの色材を溶解又は分散させたインクをいう。
インクジェット印刷装置101は、CMYKの各色の色インクを吐出するインクジェットヘッド146C、146M、146Y、146Kに加え、透明インクを吐出するインクジェットヘッド146CLを備える。
インクジェット印刷装置101は、給紙部110と、処理液塗布部120と、処理液乾燥部130と、描画部140と、インク乾燥部150と、集積部160と、を備える。
給紙部110は、用紙Pを1枚ずつ給紙する。給紙部110は、給紙装置112と、フィーダボード114と、給紙ドラム116と、を備える。用紙Pは、多数枚が積み重ねられた束の状態で給紙台112Aに載置される。用紙Pの種類は、特に限定されないが、例えば、上質紙、コート紙、アート紙などのセルロースを主体とする印刷用紙を用いることができる。用紙Pは、画像が記録される記録媒体の一例である。
給紙装置112は、給紙台112Aにセットされた束の状態の用紙Pを上から順に1枚ずつ取り出して、フィーダボード114に給紙する。フィーダボード114は、給紙装置112から受け取った用紙Pを給紙ドラム116へと搬送する。
給紙ドラム116は、フィーダボード114から給紙される用紙Pを受け取り、受け取った用紙Pを処理液塗布部120へと搬送する。
処理液塗布部120は、用紙Pに処理液を塗布する。処理液は、インク中の色材成分を凝集、若しくは不溶化又は増粘させる機能を備えた液体である。処理液塗布部120は、処理液塗布ドラム122と、処理液塗布装置124と、を備える。
処理液塗布ドラム122は、給紙ドラム116から用紙Pを受け取り、受け取った用紙Pを処理液乾燥部130へと搬送する。処理液塗布ドラム122は、周面にグリッパ123を備え、グリッパ123で用紙Pの先端部を把持して回転することにより、用紙Pを周面に巻き付けて搬送する。
処理液塗布装置124は、処理液塗布ドラム122によって搬送される用紙Pに処理液を塗布する。処理液はローラによって塗布される。ここで説明された処理液塗布装置124の構成はあくまでも一例であり、処理液塗布装置124には他の方式が適用されてもよい。処理液塗布装置124の他の方式の例として、ブレードを用いた塗布、インクジェット方式による吐出、又はスプレー方式による噴霧などが挙げられる。処理液塗布装置124は処理液付与手段の一例である。
処理液乾燥部130は、処理液が塗布された用紙Pを乾燥処理する。処理液乾燥部130は、処理液乾燥ドラム132と、温風送風機134と、を備える。処理液乾燥ドラム132は、処理液塗布ドラム122から用紙Pを受け取り、受け取った用紙Pを描画部140へと搬送する。処理液乾燥ドラム132は、周面にグリッパ133を備える。処理液乾燥ドラム132は、グリッパ133で用紙Pの先端部を把持して回転することにより、用紙Pを搬送する。
温風送風機134は、処理液乾燥ドラム132の内部に設置される。温風送風機134は、処理液乾燥ドラム132によって搬送される用紙Pに温風を吹き当てて、処理液を乾燥させる。
描画部140は、描画ドラム142と、ヘッドユニット144と、画像読取装置148と、を備える。描画ドラム142は、処理液乾燥ドラム132から用紙Pを受け取り、受け取った用紙Pをインク乾燥部150へと搬送する。描画ドラム142は、周面にグリッパ143を備え、グリッパ143で用紙Pの先端を把持して回転することにより、用紙Pを周面に巻き付けて搬送する。描画ドラム142は、図示しない吸着機構を備え、周面に巻き付けられた用紙Pを周面に吸着させて搬送する。吸着には、負圧が利用される。描画ドラム142は、周面に多数の吸着穴を備え、この吸着穴を介して描画ドラム142の内部から吸引することにより、用紙Pを描画ドラム142の周面に吸着させる。
ヘッドユニット144は、インクジェットヘッド146CL、146C、146M、146Y、146Kを含んで構成される。インクジェットヘッド146CLは、透明インクの液滴を吐出する透明液吐出ヘッドである。インクジェットヘッド146Cは、シアン(C)のインクの液滴を吐出する記録ヘッドである。インクジェットヘッド146Mは、マゼンタ(M)のインクの液滴を吐出する記録ヘッドである。インクジェットヘッド146Yは、イエロー(Y)のインクの液滴を吐出する記録ヘッドである。インクジェットヘッド146Kは、ブラック(K)のインクの液滴を吐出する記録ヘッドである。インクジェットヘッド146C、146M、146Y、146Kのそれぞれには、対応する色のインク供給源である不図示のインクタンクから不図示の配管経路を介して、インクが供給される。インクジェットヘッド146CLには、透明インクのインク供給源である不図示のインクタンクから不図示の配管経路を介して、透明インクが供給される。
インクジェットヘッド146CL、146C、146M、146Y、146Kの各々は、描画ドラム142によって搬送される用紙Pに対して1回の走査によって、つまりシングルパス方式によって、印字可能なラインヘッドで構成される。インクジェットヘッド146CL、146C、146M、146Y、146Kは、各々のノズル面が描画ドラム142の周面に対向して配置される。インクジェットヘッド146CL、146C、146M、146Y、146Kは、描画ドラム142による用紙Pの搬送経路に沿って一定の間隔をもって配置される。
図23には示さないが、インクジェットヘッド146CL、146C、146M、146Y、146Kの各々のノズル面には、インクの吐出口である複数個のノズルが二次元配列されている。「ノズル面」とは、ノズルが形成されている吐出面をいい、「インク吐出面」或いは「ノズル形成面」などの用語と同義である。二次元配列された複数個のノズルのノズル配列を「二次元ノズル配列」という。
インクジェットヘッド146CL、146C、146M、146Y、146Kの各々は、複数個のヘッドモジュールを用紙幅方向に繋ぎ合わせて構成することができる。ここでいう用紙幅は、用紙Pの搬送方向と直交する方向の用紙幅を指す。インクジェットヘッド146CL、146C、146M、146Y、146Kの各々は、用紙Pの搬送方向と直交する用紙幅方向に関して用紙Pの全記録領域を1回の走査で規定の記録解像度による画像記録が可能なノズル列を有するライン型の記録ヘッドである。このような記録ヘッドは「フルライン型の記録ヘッド」或いは「ページワイドヘッド」とも呼ばれる。
規定の記録解像度とは、インクジェット印刷装置101によって予め定められた記録解像度であってもよいし、ユーザの選択により、若しくは、印刷モードに応じたプログラムによる自動選択により設定される記録解像度であってもよい。記録解像度として、例えば、1200dpiとすることができる。用紙Pの搬送方向と直交する用紙幅方向をラインヘッドのノズル列方向と呼び、用紙Pの搬送方向をノズル列垂直方向と呼ぶ場合がある。
二次元ノズル配列を有するインクジェットヘッドの場合、二次元ノズル配列における各ノズルをノズル列方向に沿って並ぶように投影(正射影)した投影ノズル列は、ノズル列方向について、最大の記録解像度を達成するノズル密度で各ノズルが概ね等間隔で並ぶ一列のノズル列と等価なものと考えることができる。「概ね等間隔」とは、インクジェット印刷装置で記録可能な打滴点として実質的に等間隔であることを意味している。
例えば、製造上の誤差及び/又は着弾干渉による媒体上での液滴の移動を考慮して僅かに間隔を異ならせたものなどが含まれている場合も「等間隔」の概念に含まれる。投影ノズル列は実質的なノズル列に相当する。投影ノズル列を考慮すると、ノズル列方向に沿って並ぶ投影ノズルの並び順に、各ノズルにノズル位置を表すノズル番号を対応付けることができる。
インクジェットヘッド146CL、146C、146M、146Y、146Kの各々におけるノズルの配列形態は限定されず、様々なノズル配列の形態を採用することができる。例えば、マトリクス状の二次元配列の形態に代えて、一列の直線配列、V字状のノズル配列、V字状配列を繰り返し単位とするW字状などのような折れ線状のノズル配列なども可能である。
描画ドラム142によって搬送される用紙Pに向けて、インクジェットヘッド146CL、146C、146M、146Y、146Kのうち少なくとも1つのヘッドからインクの液滴が吐出され、吐出された液滴が用紙Pに付着することにより、用紙Pに画像が記録される。
描画ドラム142は、インクジェットヘッド146CL、146C、146M、146Y、146Kと用紙Pとを相対移動させる手段として機能している。描画ドラム142は、インクジェットヘッド146CL、146C、146M、146Y、146Kに対して用紙Pを相対的に移動させる相対移動手段の一形態に相当する。インクジェットヘッド146CL、146C、146M、146Y、146Kのそれぞれの吐出タイミングは、描画ドラム142に設置されたロータリエンコーダから得られるロータリエンコーダ信号に同期させる。図23においてロータリエンコーダの図示は省略されており、図24においてロータリエンコーダ412として記載されている。吐出タイミングとは、インクの液滴を吐出するタイミングであり、打滴タイミングと同義である。
なお、本例では、CMYKの4色のインクを用いる構成を例示したが、インク色及び色数の組み合わせについては本実施形態に限定されず、必要に応じて特色インクなどを追加してもよい。例えば、緑色若しくはオレンジ色などの特色のインクを吐出するインクジェットヘッドを追加する構成なども可能である。また、各色のインクジェットヘッドの配置順序も特に限定はない。ヘッドユニット144において、透明インクを吐出するインクジェットヘッド146CLは、用紙搬送方向の最も上流側に配置されることが好ましい。
画像読取装置148は、インクジェットヘッド146CL、146C、146M、146Y、146Kによって用紙Pに記録された画像を光学的に読み取り、その読取画像を示す電子画像データを生成する装置である。画像読取装置148は、用紙P上に記録された画像を撮像して画像情報を示す電気信号に変換する撮像デバイスを含む。画像読取装置148は、撮像デバイスの他、読み取り対象を照明する照明光学系及び撮像デバイスから得られる信号を処理してデジタル画像データを生成する信号処理回路を含んでよい。
画像読取装置148は、カラー画像の読み取りが可能な構成であることが好ましい。本例の画像読取装置148は、例えば、撮像デバイスとしてカラーCCDリニアイメージセンサが用いられる。CCDは、Charge-Coupled Deviceの略語であり、電荷結合素子を指す。カラーCCDリニアイメージセンサはR(赤),G(緑),B(青)各色のカラーフィルタを備えた受光素子が直線状に配列したイメージセンサである。なお、カラーCCDリニアイメージセンサに代えて、カラーCMOSリニアイメージセンサを用いることもできる。CMOSは、Complementary Metal Oxide Semiconductorの略語であり、相補型金属酸化膜半導体を指す。
画像読取装置148は、描画ドラム142による用紙Pの搬送中に用紙P上の画像の読み取りを行う。このように用紙搬送経路に設置される画像読取装置は「インラインスキャナ」又は「インラインセンサ」と呼ばれる場合がある。また、画像読取装置148はカメラであってもよい。
インクジェットヘッド146CL、146C、146M、146Y、146Kの少なくとも1つを用いて画像が記録された用紙Pは、画像読取装置148の読取領域を通過する際に、用紙P上の画像が読み取られる。用紙Pに記録される画像としては、印刷ジョブで指定される印刷対象のユーザ画像の他、ノズルごとの吐出状態を検査するための不良ノズル検知パターン、印字濃度補正用テストパターン、印字濃度ムラ補正用テストパターン、その他の各種のテストパターンが含まれ得る。
画像読取装置148によって読み取られた読取画像のデータを基に、印字画像の検査が行われ、画質異常の有無が判断される。また、画像読取装置148によって読み取られた読取画像のデータを基に、画像の濃度やインクジェットヘッド146C、146M、146Y、146Kの吐出不良などの情報が得られる。
インク乾燥部150は、描画部140で画像が記録された用紙Pを乾燥処理する。インク乾燥部150は、チェーングリッパ170と、用紙ガイド180と、温風送風ユニット190と、を備える。
チェーングリッパ170は、描画ドラム142から用紙Pを受け取り、受け取った用紙Pを集積部160へと搬送する。チェーングリッパ170は、規定の走行経路を走行する一対の無端状のチェーン172を備え、その一対のチェーン172に備えられたグリッパ174によって用紙Pの先端部を把持した状態で用紙Pを規定の搬送経路に沿って搬送する。グリッパ174は、チェーン172に一定の間隔で複数備えられる。
用紙ガイド180は、チェーングリッパ170による用紙Pの搬送をガイドする部材である。用紙ガイド180は、第1用紙ガイド182と第2用紙ガイド184を含んで構成される。第1用紙ガイド182はチェーングリッパ170の第1搬送区間を搬送される用紙Pをガイドする。第2用紙ガイド184は、第1搬送区間の後段の第2搬送区間を搬送される用紙をガイドする。温風送風ユニット190は、チェーングリッパ170によって搬送される用紙Pに温風を吹き当てる。
集積部160は、チェーングリッパ170によってインク乾燥部150から搬送されてくる用紙Pを受け取り、集積する集積装置162を備える。チェーングリッパ170は、所定の集積位置で用紙Pをリリースする。集積装置162は集積トレイ162Aを備え、チェーングリッパ170からリリースされた用紙Pを受け取り、集積トレイ162Aの上に束状に集積する。集積部160は排紙部に相当する。
図23に示したインクジェットヘッド146CLは透明インク吐出手段の一例である。インクジェットヘッド146C、146M、146Y、146Kの各々は色インク吐出手段の一例である。
《システム構成の概要》
図24は、インクジェット印刷装置101の制御系の要部構成を示すブロック図である。インクジェット印刷装置101は、制御装置300によって制御される。図24において、図23で説明した構成の要素と対応する要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。制御装置300は、コンピュータのハードウェアとソフトウェアの組み合わせによって実現し得る。ソフトウェアは「プログラム」と同義である。制御装置300は、システムコントローラ302と、通信部304と、画像データ取得部306と、メモリ308と、プログラム格納部310と、テストパターン生成部312と、表示部314と、操作部316と、を備える。
システムコントローラ302は、インクジェット印刷装置101の各部を統括制御する制御手段として機能し、かつ、各種演算処理を行う演算手段として機能する。システムコントローラ302は、中央処理装置(CPU;Central Processing Unit)及びその周辺回路等から構成され、制御プログラムにしたがって動作する。
プログラム格納部310には、システムコントローラ302が実行する制御プログラムや、制御に必要な各種データが格納されている。
通信部304は、所要の通信インターフェースを備える。制御装置300は、通信部304を介してホストコンピュータ502と接続され、ホストコンピュータ502との間でデータの送受信を行うことができる。ここでいう「接続」には、有線接続、無線接続、又はこれらの組み合わせが含まれる。通信部304には、通信を高速化するためのバッファメモリを搭載してもよい。
画像データ取得部306は、印刷対象の画像を表す画像データを取得するインターフェース部である。画像データのデータ形式は特に限定されない。例えば、画像データとして、R(赤)、G(緑)、B(青)の各色それぞれ8ビット(256階調)のRGB画像を用いることができる。RGB画像に限らず、CMYK画像などでもよい。また、信号の階調数(ビット数)についてもこの例に限らない。
画像データ取得部306は、外部又は装置内の他の信号処理部から画像を取り込むデータ入力端子で構成することができる。画像データ取得部306として、有線又は無線の通信インターフェース部を採用してもよいし、メモリカードなどの可搬型の外部記憶媒体の読み書きを行うメディアインターフェース部を採用してもよく、若しくは、これら態様の適宜の組み合わせであってもよい。通信部304が画像データ取得部306の役割を担うことができる。
メモリ308は、画像データ取得部306から取り込まれた画像データを含む各種のデータの一時記憶手段として機能する。
テストパターン生成部312は、ラダーパターンや濃度補正用テストパターンなど、各種テストパターンのデータを生成する。テストパターン生成部312は、予め定められたテストパターンのデータを記憶している構成であってもよいし、適応的にテストパターンのデータを生成する構成であってもよい。
表示部314と操作部316はユーザインターフェースを構成する。操作部316は、キーボード、マウス、タッチパネル、トラックボールなど、各種の入力装置を採用することができ、これらの適宜の組み合わせであってもよい。なお、表示部314の画面上にタッチパネルを配置した構成のように、表示部314と操作部316とが一体的に構成されている形態も可能である。
オペレータは、表示部314の画面に表示される内容を見ながら操作部316を使って印刷条件の入力や、画質モードの選択、付属情報の入力/編集、情報の検索など各種情報の入力を行うことができる。また、オペレータは、入力内容その他の各種情報を表示部314の表示を通じて確認することができる。
制御装置300は、画像補正処理部318と、色インクハーフトーン処理部320と、透明インク打滴位置決定部322と、を備える。
画像補正処理部318は、画像データに対する各種の変換処理や補正処理を行う。画像データに対する変換処理には、画素数変換、階調変換、色変換などが含まれる。補正処理には、インクジェットヘッド146CMYKの特性に合わせた濃度補正や、不吐ノズルによる画像欠陥の視認性を抑制するための不吐補正などの印字補正に必要な信号処理が含まれる。インクジェットヘッド146CMYKのブロックは、図23で説明した色インク吐出ヘッドであるインクジェットヘッド146C、146M、146Y、146Kを代表して示したものである。
色インクハーフトーン処理部320は、CMYKの各色のインク量データに相当するCMYKの各色の画像データから2値又は多値のドット画像のデータに変換するハーフトーン処理を行う。ハーフトーン処理の手法としては、ディザ法や誤差拡散法など、公知の手法を用いることができる。ハーフトーン処理は、一般的には、m値(mは3以上の整数)の多階調画像データを量子化して記録ヘッドで記録可能なn値(nは2以上m未満の整数)のデータに変換する処理である。インクジェット印刷装置101のインクジェットヘッド146CMYKにおいて、小滴と中滴の2種類の滴サイズ(ドットサイズ)を打ち分けることができるものとすると、この場合、色インクハーフトーン処理部320は、多階調(例えば256階調)の各色の分版画像データから、「中滴を吐出する」、「小滴を吐出する」、「吐出しない(滴なし)」の3値の信号に変換する。中滴の吐出によって用紙P上に中ドットが形成され、小滴の吐出によって小ドットが形成される。
透明インク打滴位置決定部322は、画像補正処理部318による印字補正処理の適用箇所を示す補正処理情報、及び/又は色インクハーフトーン処理部320の処理結果を基に透明インクの打滴位置を決定する処理を行う。透明インク打滴位置決定部322は、ハーフトーン処理部を含んでいてもよい。
制御装置300は、給紙制御部330と、処理液付与制御部332と、搬送制御部334と、画像記録制御部336と、透明インク吐出制御部338と、乾燥制御部340と、を備える。
給紙制御部330は、システムコントローラ302からの指令に応じて給紙部110の給紙動作を制御する。
処理液付与制御部332は、システムコントローラ302からの指令に応じて処理液塗布部120の処理液塗布装置124(図23参照)などの駆動を制御する。
搬送制御部334は、システムコントローラ302からの指令に応じて用紙搬送部410の各部の駆動を制御する。用紙搬送部410には、図23で説明した給紙ドラム116、処理液塗布ドラム122、描画ドラム142、及びチェーングリッパ170が含まれる。また、用紙搬送部410には、図示せぬ動力源としてのモータ及びモータ駆動回路などの駆動部が含まれる。
インクジェット印刷装置101は、ロータリエンコーダ412、及び、各種のセンサ414を備えている。ロータリエンコーダ412は、用紙搬送部410の描画ドラム142(図23参照)に設けられている。ロータリエンコーダ412の検出信号に基づいて吐出トリガー信号が発せされる。吐出トリガー信号は、画素トリガー信号とも呼ばれる。インクジェットヘッド146CL及びインクジェットヘッド146CMYKの各ヘッドの吐出タイミングは、ロータリエンコーダ412の検出信号に同期させる。これにより、高精度に着弾位置を決定することができる。
センサ414には、図示せぬ用紙浮きセンサの他、図示せぬ用紙検出センサ、温度センサ、湿度センナ、圧力センサなどが含まれる。システムコントローラ302はセンサ414から得られる情報を基に、所要の制御を行う。
画像記録制御部336は、システムコントローラ302からの指令に応じてインクジェットヘッド146CMYKの駆動を制御する。画像記録制御部336は、色インクハーフトーン処理部320のハーフトーン処理を経て生成された各インク色のドットデータに基づき、描画ドラム142上の用紙Pに画像を記録するように、インクジェットヘッド146CMYKの吐出動作を制御する。
透明インク吐出制御部338は、システムコントローラ302からの指令に応じて透明インク吐出用のインクジェットヘッド146CLの駆動を制御する。
乾燥制御部340は、システムコントローラ302からの指令に応じてインク乾燥部150の乾燥処理動作を制御する。
画像読取装置148によって取得された読取画像のデータは、画像補正処理部318に送られ、印字補正のための補正対象領域の特定処理や補正量の決定処理、並びに信号値の変換処理など、各種の演算に用いられる。
制御装置300は、1台又は複数台のコンピュータによって実現することが可能である。制御装置300の処理部は、1つ又は複数のCPU(Central Processing Unit)を用いて構成され、制御装置300の内部に備えられたプログラム格納部310に保存されているプログラムがCPUにロードされることにより動作する。また、制御装置300の処理機能の一部又は全部は、DSP(digital signal processor)やFPGA(field-programmable gate array)に代表される集積回路を用いて実現してもよい。
《制御装置300の画像記録制御機能に関するブロック図》
図25は、制御装置300における画像記録制御に関する機能を示したブロック図である。制御装置300は、着弾誤差測定演算部510と、不良ノズル情報記憶部512と、濃度補正係数算出部514と、濃度補正係数記憶部516と、濃度データ生成部518と、補正処理部520と、色インク吐出データ生成部522と、駆動波形生成部524、534と、ヘッドドライバ526、536と、透明インク吐出データ生成部532と、を含む。
着弾誤差測定演算部510は、画像読取装置148から読み込んだテストチャートの読取データから、不吐ノズルの位置や着弾位置誤差のデータ、濃度分布を示すデータ(濃度データ)等を生成する演算処理を行う。着弾誤差測定演算部510は、着弾位置誤差のデータを基に、着弾位置誤差が許容値よりも大きいノズルを飛行曲がりの不良ノズルと判定し、不吐出化の対象とする。テストチャートの読取データから検出された不吐ノズルについても不良ノズルとして不吐化の処理が行われる。また、許容範囲から外れる滴量異常のノズルについても不良ノズルとして不吐化の処理が行われる。
着弾誤差測定演算部510の演算結果を基に特定された不良ノズルの情報は、不良ノズル情報記憶部512に記憶される。
濃度補正係数算出部514は、測定された着弾位置誤差の情報や濃度情報から濃度補正係数を算出する。なお、着弾誤差測定演算部510及び濃度補正係数算出部514の処理機能は集積回路やソフトウェア又はこれらの適宜の組み合わせによって実現可能である。
着弾誤差測定演算部510及び濃度補正係数算出部514における具体的な処理の内容は例えば、特開2012−71474号公報に示されている処理を採用し得る。
濃度データ生成部518は、入力画像540のデータからインク色別の初期の濃度データを生成する信号処理手段であり、濃度変換処理及び必要な場合には画素数変換処理を行う。濃度変換処理には、下色処理や色変換処理が含まれる。
補正処理部520は、濃度補正係数記憶部516に格納されている濃度補正係数を用いて濃度補正の演算を行う処理部であり、不良ノズルに対する補正処理を行う。補正処理部520は、不良ノズル情報記憶部512に記憶されている不良ノズル情報を用い、不吐補正のための画像信号の補正処理を行う。不良ノズル情報は、補正対象領域を特定するための情報としてされ得る。また補正処理部520は、不吐補正の他、スジ補正やムラ補正などの印字補正のための画像信号の補正処理を行う。補正処理部520は、図24で説明した画像補正処理部318に含まれる。
図25に示した色インク吐出データ生成部522は、補正処理部520にて生成された補正後の画像データから2値又は多値のドット画像データに変換するハーフトーン処理手段を含む信号処理手段である。色インク吐出データ生成部522はドット画像データから色インクの吐出を制御するための色インク吐出データを生成する。色インク吐出データ生成部522は、図24で説明した色インクハーフトーン処理部320を含む。
色インク吐出データ生成部522によって生成された色インク吐出データはヘッドドライバ526に与えられ、インクジェットヘッド146CMYKのインク吐出動作が制御される。図25では簡略化して示されているが、実際には、CMYKの色ごとに、ドット画像データが生成され、各色のインクジェットヘッドのインク吐出動作が制御される。
駆動波形生成部524は、インクジェットヘッド146CMYKの各ノズルに対応した吐出エネルギー発生素子を駆動するための駆動信号波形を生成する手段である。吐出エネルギー発生素子は、例えば、圧電素子である。駆動波形生成部524によって生成された駆動波形の信号は、ヘッドドライバ526に供給される。駆動波形生成部524から出力される信号は、デジタル波形データであってもよいし、アナログ電圧信号であってもよい。
本実施形態では、例えば、図8で説明したような大滴の吐出が不要になるため、小滴と中滴の吐出が可能な中滴吐出用の駆動波形が生成される。
図25に示したヘッドドライバ526は、アンプ回路を含み、インク吐出データ及び駆動波形の信号に基づき、描画内容に応じてインクジェットヘッド146CMYKの各ノズルに対応する圧電素子を駆動するための駆動信号を出力する。ヘッドドライバ526にはヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
こうして、ヘッドドライバ526から出力された駆動信号がインクジェットヘッド146CMYKに加えられることによって、該当するノズルからインクが吐出される。用紙Pの搬送速度に同期してインクジェットヘッド146CMYKからのインク吐出を制御することにより、用紙P上に画像が形成される。
透明インク吐出データ生成部532は、補正処理部520及び/又は色インク吐出データ生成部522と連携して、透明インクの吐出を制御するための透明インク吐出データを生成する。透明インク吐出データ生成部532は、図24で説明した透明インク打滴位置決定部322を含む。
駆動波形生成部534は、インクジェットヘッド146CLの各ノズルに対応した吐出エネルギー発生素子を駆動するための駆動信号波形を生成する手段である。駆動波形生成部534は、色インク吐出用の駆動波形生成部524が兼ねてもよい。駆動波形生成部534によって生成された駆動波形の信号は、ヘッドドライバ536に供給される。
ヘッドドライバ536は、アンプ回路を含み、透明インク吐出データ及び駆動波形の信号に基づき、インクジェットヘッド146CLの各ノズルに対応する圧電素子を駆動するための駆動信号を出力する。ヘッドドライバ536にはヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
上記のように、補正処理部520による処理を含む所要の信号処理を経て生成された色インク吐出データ、透明インク吐出データ及び駆動信号波形に基づき、ヘッドドライバ526、536を介して各ノズルからのインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。
本実施形態では、補正処理部520は、ハーフトーン処理前の画像データに対して、印字不良を補正するために必要な信号値の補正を行っているが、補正処理はハーフトーン処理後の画像データに対して実施してもよい。
また、本実施形態では、印刷に用いる出力用の画像データを補正する補正処理の形態を説明したが、吐出駆動用の信号を補正する補正処理の形態を採用してもよい。
補正処理部520が不良ノズル情報を基に補正対象領域を特定する処理を行う構成が補正対象領域特定手段の一例に相当する。
画像補正処理部318、補正処理部520、色インクハーフトーン処理部320、透明インク打滴位置決定部322、画像記録制御部336及び透明インク吐出制御部338の組み合わせが印字補正手段の一例に相当する。
透明インク打滴位置決定部322は、透明インク打滴位置決定手段の一例に相当する。透明インク吐出制御部338は、透明インク吐出制御手段の一例に相当する。
制御装置300は、画像読取装置148から得られる読取画像データを基に、印字領域内から印字補正を必要とする補正対象領域を特定する処理を行う。この処理ステップは補正対象領域を特定するステップの一例に相当する。
透明インク吐出制御部338の制御に従いインクジェットヘッド146CLから透明インクを打滴するステップが、補正対象領域に属する画像位置に対して透明インク吐出手段から透明インクを打滴するステップの一例に相当する。
画像記録制御部336の制御に従い、透明インクと重ね合わせるようにインクジェットヘッド146CMYKから色インクを打滴するステップが、色インクを打滴するステップの一例に相当する。
《インクジェットヘッドの構造例》
次に、インクジェットヘッド146CL、146C、146M、146Y、146Kの各ヘッドとして用いることができるインクジェットヘッド210の構造例を説明する。透明インク吐出用のインクジェットヘッド146CL、並びに、色インク吐出用のインクジェットヘッド146C、146M、146Y、146Kは、共通の構造とすることができる。
図26は、インクジェットヘッド210の斜視図である。図26では、インクジェットヘッド210の斜め下方向からノズル面を見上げた様子が図示されている。インクジェットヘッド210は、複数個のヘッドモジュール212を用紙幅方向に並べて長尺化したフルライン型のラインヘッドとなっている。
図26では17個のヘッドモジュール212を繋ぎ合わせた例を示しているが、ヘッドモジュール212の構造やヘッドモジュール212の個数及び配列形態については、図示の例に限定されない。図中の符号214は、複数個のヘッドモジュール212をバー状に連結固定するための枠体となるベースフレームである。符号216は、各ヘッドモジュール212に接続されたフレキシブル基板である。複数個のヘッドモジュール212は、ベースフレーム214に取り付けられて一体化され、一本のバー状のインクジェットヘッド210が構成される。
図27は、インクジェットヘッド210をノズル面側から見た部分拡大図である。ヘッドモジュール212は、インクジェットヘッド210の短手方向である図27の上下方向の両側からモジュール支持部材218Bによって支持され、モジュール支持部材218Bを介してベースフレーム214に取り付けられる。また、インクジェットヘッド210の長手方向における両端部はヘッド保護部材218Dによって支持されている。
図27では個々のノズルを図示しないが、符号224Aを付して図示した斜めの実線は、複数個のノズルが一列に並べられたノズル列を表している。
図28はヘッドモジュール212のノズル面212Aを吐出側から見た平面図である。図28は図示の便宜上、ノズル数を減して描いているが、1個のヘッドモジュール212のノズル面212Aには、例えば、32×64個のノズル220が二次元配列されている。「ノズル面」とは、ノズル220が形成されている吐出面をいい、「ノズル形成面」と同義である。二次元配列された複数個のノズル220のノズル配列を「二次元ノズル配列」という。
図28のY方向が用紙搬送方向であり、Y方向に直交するX方向が用紙幅方向である。ヘッドモジュール212は、X方向に対して角度γの傾きを有するV方向に沿った長辺側の端面と、Y方向に対して角度αの傾きを持つW方向に沿った短辺側の端面とを有し、平面視で平行四辺形の形状となっている。
このようなヘッドモジュール212をX方向に複数個繋ぎ合わせることにより(図27参照)、X方向について用紙Pの全描画範囲をカバーするノズル列が形成され、1回の描画走査で規定の記録解像度による画像記録が可能なラインヘッドが構成される。
図29は、ヘッドモジュール212における1つのイジェクタ222の立体的構造を示す縦断面図である。イジェクタ222は、ノズル220と、ノズル220に通じる圧力室250と、圧電素子252とを備える。ノズル220は、ノズル流路254を介して圧力室250と通じている。圧力室250は個別供給路224を介して供給側共通流路226に通じている。
圧力室250の天面を構成する振動板256は、圧電素子252の下部電極に相当する共通電極として機能する導電層(不図示)を有する。圧力室250その他の流路部分の壁部や振動板256などはシリコンによって作製することができる。振動板256の材質はシリコンに限らず、樹脂などの非導電性材料によって形成する態様も可能である。振動板部材の表面に導電材料による導電層が形成される。なお、振動板256自体をステンレス鋼などの金属材料によって構成し、共通電極を兼ねる振動板としてもよい。
振動板256に圧電素子252が積層された構造により、圧電ユニモルフアクチュエータが構成される。圧電素子252の上部電極である個別電極258に駆動電圧を印加することによって圧電体260を変形させ、振動板256を撓ませることで圧力室250の容積を変化させる。この容積変化に伴う圧力変化により、ノズル220からインクが吐出される。インク吐出後に圧電素子252が元の状態に戻る際に、供給側共通流路226から個別供給路224を通って新しいインクが圧力室250に充填される。圧力室250にインクが充填される動作を「リフィル」という。本例では圧電体260のd31モードの歪み変形を利用して振動板256を撓ませる構成を例示しているが、d33モードを利用する形態やシェアモード(せん断変形)を利用して吐出を行う形態も可能である。
圧力室250の平面視形状については、特に限定はなく、四角形その他の多角形、円形、或いは楕円形など、様々な形態があり得る。
また、本例のヘッドモジュール212は、回収側共通流路280を備え、各イジェクタ222のノズル流路254に個別回収路282が接続されている。個別回収路282は回収側共通流路280に接続されている。
図29における符号266はカバープレートである。カバープレート266は圧電素子252の可動空間268を保し、かつ、圧電素子252の周囲を封止する部材である。カバープレート266の上方には、不図示の供給側インク室及び回収側インク室が形成されている。供給側インク室は、不図示の連通路を介して供給側共通流路226に連結されている。回収側インク室は、図示せぬ連通路を介して回収側共通流路280に連結されている。供給側共通流路226から個別供給路224を介して圧力室250に供給されたインクは、ノズル流路254を通ってノズル220から吐出される。また、吐出に使用されないインクは、ノズル流路254から個別回収路282を介して回収側共通流路280に回収される。
供給側共通流路226の圧力と回収側共通流路280の圧力とに圧力差があり、イジェクタ222からインクを吐出しない状態において、個別供給路224から圧力室250と個別回収路282を通って回収側共通流路280へとインクが流れる。
このようなインク循環構造を採用することにより、圧力室250内のインクの増粘が防止され、吐出安定性を高めることができる。イジェクタ222からインクの吐出を行った場合のリフィルの際には、供給側共通流路226から個別供給路224を介して圧力室250にインクが供給され、かつ、回収側共通流路280から個別回収路282を介して圧力室250にインクが供給される。つまり、回収側共通流路280は、イジェクタ222からインクを回収する役割を果たすだけでなく、リフィルの際にはイジェクタ222にインクを供給する役割も果たし得る。
《インクジェットヘッドの記録解像度について》
透明インクを吐出するインクジェットヘッド146CLの記録解像度は、描画用の色インクを吐出するインクジェットヘッド146CMYKの記録解像度と必ずしも同等である必要はない。透明インクを吐出するインクジェットヘッド146CLの記録解像度は、色インク吐出用のインクジェットヘッド146CMYKの記録解像度及び求められる補正レベルに応じて決定される。例えば、透明インク吐出用のインクジェットヘッド146CLの記録解像度は、色インク吐出用のインクジェットヘッド146CMYKの記録解像度よりも低解像度の構成とすることができる。具体的な例として、色インク吐出用のインクジェットヘッド146CMYKの記録解像度が1200dpiである場合に、透明インク吐出用のインクジェットヘッド146CLの記録解像度は、600dpi程度まで下げることができる。透明インク吐出用のインクジェットヘッド146CLの記録解像度は、色インク吐出用のインクジェットヘッド146CMYKの記録解像度の概ね1/2程度まで下げることができる。
《インクジェットヘッドの吐出方式について》
インクジェットヘッドのノズルから液滴を吐出させる吐出方式に関して、吐出エネルギーを発生させる手段は、圧電素子に限らず、発熱素子や静電アクチュエータなど、様々な吐出エネルギー発生素子を適用し得る。例えば、発熱素子による液体の加熱による膜沸騰の圧力を利用して液滴を吐出させる方式を採用することができる。液体吐出ヘッドの吐出方式に応じて、相応の吐出エネルギー発生素子が流路構造体に設けられる。
《処理液について》
処理液は、色インクのインク組成物中の成分を凝集させる凝集剤を少なくとも含み、必要に応じて、さらに他の成分を用いて構成することができる。インク組成物と共に処理液を用いることで、インクジェット記録を高速化でき、高速記録しても濃度、解像度の高い描画性、例えば細線や微細部分の再現性に優れた画像が得られる。
凝集剤としては、インク組成物のpHを変化させることができる化合物であっても、多価金属塩であっても、ポリアリルアミン類であってもよい。本発明においては、インク組成物の凝集性の観点から、インク組成物のpHを変化させることができる化合物が好ましく、インク組成物のpHを低下させ得る化合物がより好ましい。
本実施形態に用いる凝集剤としては、水溶性の高い酸性物質が好ましく、凝集性を高め、インク全体を固定化させる点で、有機酸が好ましく、2価以上の有機酸がより好ましく、2価以上3価以下の酸性物質が特に好ましい。2価以上の有機酸としては、その第1pKa(酸解離定数)が3.5以下の有機酸が好ましく、より好ましくは3.0以下の有機酸である。具体的には、例えば、リン酸、シュウ酸、マロン酸、クエン酸などが好適に挙げられる。凝集剤は、1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
インク組成物を凝集させる凝集剤の処理液中における含有量としては、1〜50質量%が好ましく、より好ましくは3〜45質量%であり、更に好ましくは5〜40質量%の範囲である。
処理液は、目的の凝集効果を損なわない範囲内で、更にその他の成分として他の添加剤を含有することができる。他の添加剤としては、例えば、乾燥防止剤(湿潤剤)、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤等の公知の添加剤が挙げられる。
《実施形態の利点》
[1]上述した実施形態によれば、透明インクを用いて局所的に広がり率を変更することができる。これにより、大滴量の吐出を行わずに印字補正を行うことができ、印字速度の向上を達成し得る。
[2]上述した実施形態によれば、描画に用いるCMYK4色の色インクについて、1種類の透明インクを共通に使用して印字補正を行うことができる。すなわち、CMYKの各色インクを吐出するためのインクジェットヘッドに加え、透明インクを吐出するためのインクジェットヘッドを1つ追加するだけで、各色の印字補正が可能であり、特許文献2から特許文献4の各文献に記載の補正技術と比較して、装置の大型化を抑制することができる。
[3]透明インクの先打ちを行い、その後、色インクを打滴する構成を採用することにより、効果的に後打ちの色インクを広げることができる。
《変形例1》
上述の実施形態では、シングルパス方式の走査方向であるY方向を第1方向とし、第1方向に直交するノズル列方向であるX方向を第2方向の一例として説明したが、第2方向は第1方向と交差する方向であればよい。本明細書における「直交」又は「垂直」という用語には、90°未満の角度、又は90°を超える角度をなして交差する態様のうち、実質的に90°の角度をなして交差する場合と同様の作用効果を発生させる態様が含まれる。
《変形例2》
上述した実施形態では、記録媒体の全幅に対応する長さのノズル列を有するページワイドのフルライン型ヘッドを用いたインクジェット印刷装置101を説明したが、本発明の適用範囲はこれに限定されず、シリアル型(シャトルスキャン型)ヘッドなど、短尺の記録ヘッドを移動させながら、複数回のヘッド走査により画像記録を行うインクジェット印刷装置についても本発明を適用できる。
《変形例3》
インクジェットヘッドと記録媒体とを相対移動させる手段について、上述の実施形態では、停止したインクジェットヘッドに対して記録媒体を搬送する構成を例示したが、本発明の実施に際しては、停止した記録媒体に対してインクジェットヘッドを移動させる構成も可能であり、また、両者を移動させる構成も可能である。
《記録媒体について》
「記録媒体」は、画像の記録に用いられる記録媒体或いは媒体という用語は、用紙、記録用紙、印刷用紙、印刷媒体、印刷媒体、被印刷媒体、画像形成媒体、被画像形成媒体、受像媒体、被吐出媒体など様々な用語で呼ばれるものの総称である。記録媒体の材質や形状等は、特に限定されず、シール用紙、樹脂シート、フィルム、布、不織布、その他材質や形状を問わず、様々なシート体を用いることができる。記録媒体は枚葉の媒体に限らず、連続紙などの連続媒体であってもよい。
また、枚葉の記録媒体は、予め規定のサイズに整えられたカット紙に限らず、連続媒体から随時、規定のサイズに裁断して得られるものであってもよい。
《記録媒体の搬送手段について》
記録媒体を搬送する搬送手段は、図23に例示したドラム搬送方式に限らず、ベルト搬送方式、ニップ搬送方式、チェーン搬送方式、パレット搬送方式など、各種形態を採用することができ、これら方式を適宜組み合わせることができる。
《用語について》
「印刷装置」という用語は、印刷機、プリンタ、印字装置、画像記録装置、画像形成装置、画像出力装置、或いは、描画装置などの用語と同義である。
「画像」は広義に解釈するものとし、カラー画像、白黒画像、単一色画像、グラデーション画像、均一濃度(ベタ)画像なども含まれる。「画像」は、写真画像に限らず、図柄、文字、記号、線画、モザイクパターン、色の塗り分け模様、その他の各種パターン、若しくはこれらの適宜の組み合わせを含む包括的な用語として用いる。また、「画像」という用語は、デジタル画像を示す場合がある。
「画像の記録」は、画像の形成、印刷、印字、描画、及びプリントなどの用語の概念を含む。「印字」は、画像記録、画像形成、並びに描画などの用語の概念を含む。「印字」には、デジタルデータに基づくデジタル印刷の概念が含まれる。
《実施形態及び変形例等の組み合わせについて》
上述の実施形態で説明した構成や変形例で説明した事項は、適宜組み合わせて用いることができ、また、一部の事項を置き換えることもできる。
以上説明した本発明の実施形態は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜構成要件を変更、追加、又は削除することが可能である。本発明は以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で同等関連分野の通常の知識を有するものにより、多くの変形が可能である。
2、4 ドット
10 駆動波形
11 第1パルス
11a 第1信号要素
11b 第2信号要素
11c 第3信号要素
12 第2パルス
13 第3パルス
14 第4パルス
15 第5パルス
16 残響抑制パルス
20 液滴
24 記録媒体
26、30、32 ドット
40 補正ドット
42、44 ドット
46 液滴
101 インクジェット印刷装置
110 給紙部
112 給紙装置
112A 給紙台
114 フィーダボード
116 給紙ドラム
120 処理液塗布部
122 処理液塗布ドラム
123 グリッパ
124 処理液塗布装置
130 処理液乾燥部
132 処理液乾燥ドラム
133 グリッパ
134 温風送風機
140 描画部
142 描画ドラム
143 グリッパ
144 ヘッドユニット
146C、146M、146Y、146K インクジェットヘッド
146CL インクジェットヘッド
146CMYK インクジェットヘッド
148 画像読取装置
150 インク乾燥部
160 集積部
162 集積装置
162A 集積トレイ
170 チェーングリッパ
172 チェーン
174 グリッパ
180 用紙ガイド
182 第1用紙ガイド
184 第2用紙ガイド
190 温風送風ユニット
210 インクジェットヘッド
212 ヘッドモジュール
212A ノズル面
214 ベースフレーム
216 フレキシブル基板
218B モジュール支持部材
218D ヘッド保護部材
220 ノズル
222 イジェクタ
224 個別供給路
224A ノズル列
226 供給側共通流路
250 圧力室
252 圧電素子
254 ノズル流路
256 振動板
258 個別電極
260 圧電体
266 カバープレート
268 可動空間
280 回収側共通流路
282 個別回収路
300 制御装置
302 システムコントローラ
304 通信部
306 画像データ取得部
308 メモリ
310 プログラム格納部
312 テストパターン生成部
314 表示部
316 操作部
318 画像補正処理部
320 色インクハーフトーン処理部
322 透明インク打滴位置決定部
330 給紙制御部
332 処理液付与制御部
334 搬送制御部
336 画像記録制御部
338 透明インク吐出制御部
340 乾燥制御部
410 用紙搬送部
412 ロータリエンコーダ
414 センサ
502 ホストコンピュータ
510 着弾誤差測定演算部
512 不良ノズル情報記憶部
514 濃度補正係数算出部
516 濃度補正係数記憶部
518 濃度データ生成部
520 補正処理部
522 色インク吐出データ生成部
524、534 駆動波形生成部
526、536 ヘッドドライバ
532 透明インク吐出データ生成部
540 入力画像
P 用紙

Claims (16)

  1. 透明インクを吐出する透明インク吐出手段と、
    色材を含有した色インクを吐出する色インク吐出手段と、
    印字領域内の一部である補正対象領域を特定する補正対象領域特定手段と、
    前記補正対象領域に属する画像位置に対して前記透明インク吐出手段から前記透明インクを打滴し、かつ、前記透明インクと、前記色インク吐出手段から打滴した前記色インクとを重ね合わせることにより、前記補正対象領域の印字補正を行う印字補正手段と、
    を備える画像形成装置。
  2. 前記透明インクを打滴した後に、前記色インクを打滴することにより、前記透明インクの上に前記色インクを重ね合わせて前記印字補正を行う請求項1に記載の画像形成装置。
  3. 前記印字補正手段は、
    前記補正対象領域の前記透明インクを打滴する位置を決定する透明インク打滴位置決定手段と、
    前記透明インク打滴位置決定手段の決定に従い、前記透明インク吐出手段の吐出動作を制御する透明インク吐出制御手段と、
    を含む請求項1又は2に記載の画像形成装置。
  4. 前記印字補正には、前記色インク吐出手段の不吐ノズルに起因する画像欠陥を補正する不吐補正が含まれる請求項1から3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
  5. 前記印字補正手段は、前記不吐ノズルによって印字不良となる不良画素に隣接した周辺画素に前記透明インクを打滴する請求項4に記載の画像形成装置。
  6. 前記印字補正手段は、前記不吐ノズルによって印字不良となる不良画素を含む周辺3画素の領域に前記透明インクを打滴する請求項4又は5に記載の画像形成装置。
  7. 前記印字補正には、前記色インク吐出手段における前記色インクの吐出に使用されるノズルの吐出特性に起因するスジを補正するスジ補正が含まれる請求項1から6のいずれか一項に記載の画像形成装置。
  8. 前記印字補正手段は、前記補正対象領域における印字不良の箇所に対応する不良画素、及び前記不良画素に隣接した周辺画素の少なくとも一方の画像位置に前記透明インクを付与する請求項1から7のいずれか一項に記載の画像形成装置。
  9. 前記印字補正には、前記色インクの抜けの割合が領域によって異なることに起因するムラを補正するムラ補正が含まれる請求項1から8のいずれか一項に記載の画像形成装置。
  10. 前記印字補正手段は、単位面積当たりに付与する前記透明インクの量を変えることによって印字濃度を調整する請求項9に記載の画像形成装置。
  11. 前記透明インク吐出手段と前記色インク吐出手段の各々は、ライン型のインクジェットヘッドを用いて構成され、
    シングルパス方式により印字を行う請求項1から10のいずれか一項に記載の画像形成装置。
  12. 複数色の前記色インクの色ごとに前記色インク吐出手段が設けられ、
    前記透明インク吐出手段と、
    前記色ごとに設けられた複数の前記色インク吐出手段のうち、
    前記透明インク吐出手段が、記録媒体の搬送方向の最も上流側の位置に配置される請求項11に記載の画像形成装置。
  13. 前記色インクを付着させる記録媒体に、前記色材を凝集させる酸を含む処理液を付与する処理液付与手段を備え、
    前記記録媒体に前記処理液が付与された後に、前記透明インクが打滴される請求項1から12のいずれか一項に記載の画像形成装置。
  14. 前記色インク吐出手段から吐出して前記透明インクと重ね合わせる1ドット当たりの前記色インクの滴量が、前記補正対象領域に非該当の非補正対象領域の印字に用いる1ドット当たりの前記色インクの滴量の最大値以下である請求項1から13のいずれか一項に記載の画像形成装置。
  15. 前記透明インク吐出手段から吐出する1ドット当たりの前記透明インクの滴量が、前記色インク吐出手段から吐出される1ドット当たりの前記色インクの滴量と同等以下である請求項1から14のいずれか一項に記載の画像形成装置。
  16. 透明インクを吐出する透明インク吐出手段と、色材を含有した色インクを吐出する色インク吐出手段と、を備える画像形成装置によって実施される印字補正方法であって、
    印字領域内の一部である補正対象領域を特定するステップと、
    前記補正対象領域に属する画像位置に対して前記透明インク吐出手段から前記透明インクを打滴するステップと、
    前記色インク吐出手段から前記色インクを打滴するステップと、を含み、
    前記透明インク吐出手段から打滴した前記透明インクと、前記色インク吐出手段から打滴した前記色インクとを重ね合わせることにより、前記補正対象領域の印字補正を行う印字補正方法。
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