JP6327077B2 - オーステナイト系ステンレス鋼 - Google Patents

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Description

本発明は、ステンレス鋼に関し、さらに詳しくは、オーステナイト系ステンレス鋼に関する。
近年、地球温暖化等の環境問題への関心が高まっている。そのため、発電プラントは、操業時のCO排出量の低減を求められている。CO排出量を低減するため、たとえば、石炭火力発電プラントでは、蒸気を高温化及び高圧化することにより、発電効率を高めている。
発電プラントのボイラの過熱器管及び再熱器管には、ボイラ用鋼管が使用される。蒸気の高温化及び高圧化に伴い、ボイラ用鋼管には、高温強度だけでなく、水蒸気による高温酸化への耐性(耐水蒸気酸化性)が求められる。
鋼管の耐水蒸気酸化性を高める技術は、次のとおり提案されている。
(A)鋼組織を細粒化する技術
特開昭58−133352号公報(特許文献1)に開示されたオーステナイトステンレス鋼管は、鋼管の平均結晶粒度番号がNo.6以下の粗粒組織と、内面鋼の結晶粒度番号がNo.7以上の細粒組織とを有する。細粒層部のC+Nは0.15%以上である。
(B)表層に吹き付け加工を施す技術
特開昭49−135822号公報(特許文献2)に開示されたオーステナイトステンレス鋼の酸化の防止法は、製造工程中の最終熱処理後あるいは熱間仕上げによる製造工程の熱間圧延後、オーステナイトステンレス鋼の表面に流体による粒子吹き付けピーニング加工を実施する。
特開昭52−8930号公報(特許文献3)に開示されたオーステナイトステンレス鋼の酸化の防止方法は、製造工程の最終熱処理後あるいは熱間仕上げによる製造工程の熱間圧延後、炭素鋼、合金鋼あるいはステンレス鋼からなる粒子を用いて、所定の吹き付け圧力及び吹き付け量で、流体による吹き付けピーニング加工を実施する。
特開昭63−54598号公報(特許文献4)に開示されたステンレス管体処理方法は、既設ボイラから取り出したステンレス管体に対し、溶体化熱処理を施した後、内面脱スケールを目的とした化学洗浄を施す。その後、管体内面に対し、脱スケールと冷間加工層形成を目的としたショットブラスト加工とを施す。
(C)高加工度の冷間加工を付与する技術
特開2004−132437号公報(特許文献5)に開示されたボイラ用鋼管の製造方法では、質量%で5〜30%のCrを含有するフェライト系耐熱鋼管の内表面に超音波衝撃処理を施す。
特開2009−68079号公報(特許文献6)に開示された鋼管は、質量%で、Crを8〜28%含有し、鋼管内表面からの深さが20μmの位置におけるビッカース硬度が、t/2(t:鋼管の肉厚)の位置におけるビッカース硬度の1.5倍以上となるような高い加工層を有する。
(D)フェライト系耐熱鋼の耐水蒸気酸化を改善する技術
特開2002−285236号公報(特許文献7)に開示されたフェライト系耐熱鋼の加工方法では、質量%で、9.5〜15%のCrを含有するフェライト系耐熱鋼を、900℃以上の温度で焼きならし処理し、A変態点以下の温度で焼きもどし処理した後、鋼表面に粒子を吹き付けてショット加工層を形成する。
特開昭58−133352号公報 特開昭49−135822号公報 特開昭52−8930号公報 特開昭63−54598号公報 特開2004−132437号公報 特開2009−68079号公報 特開2002−285236号公報
しかしながら、特許文献1に開示された細粒鋼では、700℃以上の高温環境において、耐水蒸気酸化性が低くなる場合がある。特許文献2〜6に開示された方法で製造された鋼も同様に、700℃以上の高温環境において、耐水蒸気酸化性が低くなる場合がある。特許文献7に開示されたフェライト鋼は高温強度が低いため、700℃以上の高温環境では使用しにくい。
発電プラントでは、さらなる発電効率の向上を目的として、将来、800℃程度での操業も予想される。したがって、発電プラント用途に用いられる鋼には、700℃以上の高温環境下においても優れた耐水蒸気酸化性が要求される。
本発明の目的は、700℃以上の高温環境においても優れた耐水蒸気酸化性を有するオーステナイト系ステンレス鋼を提供することである。
本実施形態によるオーステナイト系ステンレス鋼は、質量%で、Cr:15〜20%未満、Ni:25〜45%未満、Nb:2.3〜5.0%、及び、Mo+W/2:4.0〜8.0%を含有し、残部はFe及び不純物からなる化学組成を有する。不純物のうち、C、Si、Mn、P、S及びN含有量はそれぞれ、C:0.02%未満、Si:1.0%未満、Mn:1.0%未満、P:0.020%未満、S:0.010%未満、及び、N:0.030%未満である。上記化学組成はさらに、式(1)及び式(2)を満たす。
8.0≦Nb+Mo+W/2≦12.0 (1)
1.0≦(Mo+W/2)/Nb≦4.0 (2)
ここで、式中の元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
本実施形態によるオーステナイト系ステンレス鋼は、700℃以上の高温環境においても優れた耐水蒸気酸化性を有する。
本発明者らは、700℃以上の高温での水蒸気酸化雰囲気におけるオーステナイト系ステンレス鋼の耐水蒸気酸化性について調査及び検討を行い、次の知見を得た。
ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)及びタングステン(W)を含有するオーステナイト系ステンレス鋼は、これらの元素を含有しないオーステナイト系ステンレス鋼に比べ、優れた耐水蒸気酸化性を有する。Nb、Mo及びWは、鋼の表面に均一なクロミア(Cr)皮膜を形成する。そのため、優れた耐水蒸気酸化性が得られる。
Nb、Mo及びWを含有することにより耐水蒸気酸化性が高まるのは、次の理由によると考えられる。Nb、Mo及びWは、鋼中でFeM型のLaves相の析出を促進する。ここで、金属「M」はNb及びWに相当する。Laves相の析出が促進されれば、鋼中の化学組成が変化し、Cr活量勾配が増加する。Cr活量勾配が増加することにより、Crの外方流束(鋼の内部から表面へのCrの移動)が増加する。その結果、鋼の表面においてクロミア(Cr)が均一に形成されやすくなる。鋼中のNb、Mo及びWの総含有量が式(1)を満たす場合、Cr活量勾配が十分に増大し、鋼の表面にクロミアが均一に形成される。その結果、700℃以上の高温環境下においても、優れた耐水蒸気酸化性が得られる。
8.0≦Nb+Mo+W/2≦12.0 (1)
式(1)中の各元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
Mo及び/又はWを含有するだけでなく、Nbも含有すれば、Mo及び/又はWのみを含有する場合と比較して、耐水蒸気酸化性が高まる。Nbの含有により、Mo及び/又はWを含有するLaves相の析出量が増加するためと考えられる。つまり、Laves相の析出量には、Mo及び/又はWの含有量と、Nbの含有量との比が関係する。鋼中のNb、Mo及びW含有量が式(2)を満たせば、Nb含有量と、Mo及び/又はWの含有量との比が適切であり、Laves相が十分に析出する。そのため、700℃以上の高温環境での耐水蒸気酸化性が高まる。
1.0≦(Mo+W/2)/Nb≦4.0 (2)
以上の知見に基づいて完成した本実施形態によるオーステナイト系ステンレス鋼は、質量%で、Cr:15〜20%未満、Ni:25〜45%未満、Nb:2.3〜5.0%、及び、Mo+W/2:4.0〜8.0%を含有し、残部はFe及び不純物からなる。不純物のうち、C、Si、Mn、P、S及びN含有量はそれぞれ、C:0.02%未満、Si:1.0%未満、Mn:1.0%未満、P:0.020%未満、S:0.010%未満、及び、N:0.030%未満である。上記化学組成は式(1)及び式(2)を満たす。
8.0≦Nb+Mo+W/2≦12.0 (1)
1.0≦(Mo+W/2)/Nb≦4.0 (2)
式中の元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
上記オーステナイト系ステンレス鋼は、10μm以上の深さの硬化層を表層に備えてもよい。
この場合、加工層内ではCrが拡散しやすい。そのため、表面にクロミア皮膜が形成されやすい。
本実施形態のオーステナイト系ステンレス鋼管は、上記オーステナイト系ステンレス鋼から製造される。
以下、本実施形態のオーステナイト系ステンレス鋼について詳述する。
[化学組成]
本実施形態のオーステナイト系ステンレス鋼は、次の化学組成を有する。
Cr:15〜20%未満
クロム(Cr)は、鋼の耐水蒸気酸化性及び耐食性を高める。700℃以上の高温環境において、Crは、鋼の表面近傍にクロミア(Cr)皮膜を形成する。鋼の表面に均一なクロミア皮膜が形成されることにより、鋼の耐水蒸気酸化性が高まる。Cr含有量が低すぎれば、上記効果が得られない。一方、Cr含有量が高すぎれば、組織の安定性が低下してクリープ強度が低下する。したがって、Cr含有量は15〜20%未満である。本実施形態では、Nb、Mo及びWを含有することにより、20%未満のCr含有量であっても均一なクロミア皮膜の形成が可能であり、耐水蒸気酸化性が高まる。Cr含有量の好ましい下限は15%よりも高く、さらに好ましくは16%であり、さらに好ましくは17%である。Cr含有量の好ましい上限は19.5%であり、さらに好ましくは19%である。
Ni:25〜45%未満
ニッケル(Ni)は、オーステナイトを安定化する。Niはさらに、鋼の耐水蒸気酸化性及び耐食性を高める。Ni含有量が低すぎれば、上記効果が得られない。一方、Ni含有量が高すぎれば、鋼のクリープ強度が低下する。Ni含有量が高すぎればさらに、製造コストが高くなる。したがって、Ni含有量は25〜45%未満である。Ni含有量の好ましい下限は25%よりも高く、さらに好ましくは26%であり、さらに好ましくは28%である。Ni含有量の好ましい上限は40%であり、さらに好ましくは35%である。
Nb:2.3〜5.0%
ニオブ(Nb)は、Niと結合してNiNbを形成する。Nbはさらに、Feと結合してFeNbを形成する。これらの析出物は、高温クリープ特性を高める。
Nbはさらに、鋼の耐水蒸気酸化性を高める。NbはFeと結合してFeNbを形成する。Nbはさらに、σ相であるFeMo及びLaves相であるFeWの析出量を増加する。σ相及びLaves相の析出量の増加により、母相の化学組成が変化して、Cr活量勾配が増加する。その結果、Crが鋼の内部から表面に移動しやすくなり、鋼表面に均一なクロミア(Cr)皮膜が形成されやすくなる。以上の結果、鋼の耐水蒸気酸化性が高まる。Nb含有量が低すぎれば、上記効果が得られない。一方、Nb含有量が高すぎれば、鋼の靭性及び熱間加工性が低下する。したがって、Nb含有量は2.3〜5.0%である。Nb含有量の好ましい下限は2.3%よりも高く、さらに好ましくは2.5%であり、さらに好ましくは2.8%である。Nb含有量の好ましい上限は5.0%未満であり、さらに好ましくは4.8%であり、さらに好ましくは4.5%である。
Mo+W/2:4.0〜8.0%
モリブデン(Mo)及びタングステン(W)は、Feと結合してσ相(FeMo)及びLaves相(FeW)を形成する。Laves相の形成により、母相の化学組成が変化する。その結果、表層へのCr流束が増加して、鋼表面に均一なクロミア皮膜が形成される。その結果、鋼の耐水蒸気酸化性が高まる。Mo及び/又はW含有量が低すぎれば、上記効果が得られない。一方、Mo及びW含有量が高すぎれば、鋼の靭性及び熱間加工性が低下する。したがって、Mo+W/2含有量は4.0〜8.0%である。Mo+W/2は、Mo及び/又はWの総含有量を意味する。Mo及びWのいずれか一方が含有されていてもよいし、Mo及びWが含有されていてもよい。
Mo+W/2の好ましい下限は4.0%よりも高く、さらに好ましくは4.2%であり、さらに好ましくは4.5%である。Mo+W/2の好ましい上限は8.0%未満であり、さらに好ましくは7.5%であり、さらに好ましくは7.0%である。
本実施形態のオーステナイト系ステンレス鋼の残部は、Fe及び不純物である。ここで、不純物とは、鋼を工業的に製造する際に、原料としての鉱石、スクラップ、または製造環境などから混入されるものであって、本実施形態のオーステナイト系ステンレス鋼に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
本実施形態のオーステナイト系ステンレス鋼の不純物のうち、C、Si、Mn、P、S及びNの含有量は次の通りである。
C:0.02%未満
炭素(C)は不純物である。耐熱鋼において、一般的に、Cは炭化物を形成し、クリープ強度を高める。しかしながら本実施形態では、CはNi、Nb及びCrと結合して炭化物を形成し、Laves相に代表される金属間化合物の析出量を低減する。さらに、炭化物は高温で長時間加熱されると凝集して粗大化する。粗大な炭化物は結晶粒内及び粒界の強度を低下する。したがって、C含有量は0.02%未満である。好ましいC含有量は0.01%以下である。C含有量はなるべく低い方が好ましい。
Si:1.0%未満
シリコン(Si)は不純物である。SiはNiと結合して金属間化合物であるシリサイドを形成する。シリサイドは非常に脆く、鋼の熱間加工性を低下する。したがって、Si含有量は1.0%未満である。好ましいSi含有量は0.8%以下である。Si含有量はなるべく低い方が好ましい。
Mn:1.0%未満
マンガン(Mn)は不純物である。一般的に、MnはSと結合してMnSを形成し、鋼の熱間加工性を高める。しかしながら、S含有量が低い本実施形態のオーステナイト系ステンレス鋼では、Mnはシグマ(σ)相の生成を促進して鋼の熱間加工性を低下する。したがって、Mn含有量は1.0%未満である。好ましいMn含有量は0.5%以下である。Mn含有量はなるべく低い方が好ましい。
P:0.020%未満
燐(P)は不純物である。Pは鋼の熱間加工性及び延性を低下する。したがって、P含有量は0.020%未満である。好ましいP含有量は0.010%以下である。P含有量はなるべく低い方が好ましい。
S:0.010%未満
硫黄(S)は不純物である。Sは鋼の熱間加工性を低下する。したがって、S含有量は0.010%未満である。好ましいS含有量は0.008%以下である。S含有量はなるべく低い方が好ましい。
N:0.030%未満
窒素(N)は不純物である。Nは、Nbと結合して窒化物を形成する。そのため、Nb含有金属間化合物の析出量が減少する。さらに、窒化物は高温で長時間加熱されると凝集して粗大化する。粗大な窒化物は鋼のクリープ強度を低下する。したがって、N含有量は0.030%未満である。好ましいN含有量は0.010%以下である。N含有量はなるべく低い方が好ましい。
[式(1)及び式(2)について]
本実施形態のオーステナイト系ステンレス鋼の化学組成はさらに、式(1)及び式(2)を満たす。
8.0≦Nb+Mo+W/2≦12.0 (1)
1.0≦(Mo+W/2)/Nb≦4.0 (2)
式中の元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
[式(1)について]
上述のとおり、Nb、Mo及びWは、Feを含む金属間化合物を形成する。これにより、鋼中のCrが鋼の表面に移動しやすくなり、表面に均一なクロミア皮膜が形成されやすくなる。その結果、鋼の耐水蒸気酸化性が高まる。
F1=Nb+Mo+W/2と定義する。F1が低すぎれば、上述の金属間化合物の析出量が少なすぎる。その結果、鋼の耐水蒸気酸化性が低くなる。一方、F1が高すぎれば、鋼の靭性及び熱間加工性が低下する。F1が8.0以上であれば、優れた鋼の耐水蒸気酸化性が得られる。さらに、F1が12.0以下であれば、高い靱性及び熱間加工性が得られる。
F1の好ましい下限は8.0よりも高く、さらに好ましくは8.2%であり、さらに好ましくは8.5%である。
[式(2)について]
Nb含有量に対する、Mo及びW含有量が適切な範囲であれば、NbがFeMo及びFeWの析出を促進し、その結果、鋼の耐水蒸気酸化性が高まる。F2=(Mo+W/2)/Nbと定義する。F2が低すぎたり、高すぎたりする場合、つまり、Nb含有量に対するMo及びW含有量が低すぎたり、高すぎたりする場合、鋼の耐水蒸気酸化性が低くなる。F2が1.0〜4.0である場合、Nb含有量に対するMo及びW含有量が適切であり、鋼の耐水蒸気酸化性が高まる。
F2の好ましい下限は1.0よりも高く、さらに好ましくは1.2%であり、さらに好ましくは1.5%である。F2の好ましい上限は4.0%未満であり、さらに好ましくは3.5%であり、さらに好ましくは3.0%である。
[製造方法]
本実施形態のオーステナイト系ステンレス鋼の製造方法について説明する。
上述の化学組成を有する溶鋼を製造する。製造された溶鋼に対して、必要に応じて周知の脱ガス処理を実施する。
次に、溶鋼を連続鋳造法により連続鋳造材にする。連続鋳造材はたとえば、スラブ、ブルーム、ビレット等である。溶鋼を造塊法によりインゴットにしてもよい。連続鋳造材又はインゴットを周知の方法により熱間加工して、オーステナイト系ステンレス鋼材にする。オーステナイト系ステンレス鋼材はたとえば、鋼管、鋼板、棒鋼、線材、鍛鋼等である。
オーステナイト系ステンレス鋼管はたとえば、ユジーン・セジュルネ法による熱間押出加工により製造される。
製造されたオーステナイト系ステンレス鋼材に対して溶体化処理を実施する。溶体化処理は周知の方法により実施される。溶体化処理の温度(溶体化温度)はたとえば、1000〜1300℃である。溶体化処理の時間はたとえば、0.1時間〜2時間である。溶体化処理されたオーステナイト系ステンレス鋼材に対して、周知の時効処理を実施してもよい。以上の工程により、オーステナイト系ステンレス鋼が製造される。
溶体化処理されたオーステナイト系ステンレス鋼材の表層に10μm以上の加工層を形成してもよい。加工層はたとえば、粒子(投射材)をオーステナイト系ステンレス鋼材に吹き付けることにより、形成される。吹き付け方法はたとえば、公知のショットピーニング、ショットブラスト、ショット加工、サンドブラスト、サンド加工、エアーブラスト、ウォータージェット等である。粒子(投射材)はたとえば、鋼、鋳鋼、ステンレス鋼、ガラス、珪砂、アルミナ、アモルファス等である。粒子の形状はたとえば、球形、カットワイヤ、グリッド等である。粒子は、圧縮空気、羽根車(インペラ式)による遠心力、高圧水、超音波等により吹き付けてもよい。粒子を液体に混ぜ、圧縮空気等で吹き付けてもよい(液体ホーニング)。
加工層はさらに、研磨加工、ボールミル加工、グラインダー加工、ホーニング加工や超音波による衝撃加工等によっても形成してもよい。
加工層内では、Crが容易に拡散しやすい。そのため、オーステナイト系ステンレス鋼材が表層に加工層を有すれば、クロミアの形成が促進され、耐水蒸気酸化性がさらに高まる。
高温で長時間の耐水蒸気酸化性を安定して確保するためには、上述の吹き付け法により加工層を形成するのが好ましい。オーステナイト系ステンレス鋼材の表層全体に渡って均一に加工が可能なためである。
[試験方法]
表1に示す試験番号1〜18の化学組成を有する溶鋼を、真空溶解炉を用いて製造した。
Figure 0006327077
表1中のF1には、F1=Nb+Mo+W/2の値が記載されている。表1中のF2には、F2=(Mo+W/2)/Nbの値が記載されている。各試験番号の溶鋼を用いて、インゴットを製造した。インゴットを熱間加工してオーステナイト系ステンレス鋼板を製造した。
製造されたステンレス鋼板に対して溶体化処理を実施した。溶体化温度は1120℃であり、溶体化処理時間は1時間であった。
溶体化処理後のステンレス鋼板から、2mm×10mm×25mmの試験片を採取した。試験番号1〜17のステンレス鋼板については、採取された試験片の表面を湿式ペーパで研磨して仕上げた。その後、試験片の表面に対して電解研磨を実施して、試験片の表面歪みを除去した。
試験番号18のステンレス鋼板については、採取された試験片の表面を湿式ペーパで研磨して仕上げた後、スチールショットを実施して加工層を形成した。スチールショット球の直径は0.6mmであった。加工層の平均厚さは150μmであった。試験番号1〜17のステンレス鋼板については、加工層を形成しなかった。
電解研磨後の試験片を治具に吊り下げて保持したまま、横型管状加熱炉に挿入した。そして、800℃で2000時間、溶存酸素量100ppbの水蒸気雰囲気中で水蒸気酸化試験を実施した。
試験後、各試験片を切断した。その後、樹脂に埋め込み、断面を鏡面研磨した。鏡面研磨された断面を300倍で光学顕微鏡観察した。さらに、試験片の酸化スケールの平均厚さを求めた。具体的には、500倍の光学顕微鏡観察において、試験片の表面近傍の任意の10視野(各視野における試験片の表面の幅は1000μm)において、内層酸化スケールの厚さを測定した。ここで、内層酸化スケールとは、元の試験片表面より内部に形成された酸化物を意味する。測定された内層酸化スケールの厚さの平均値を酸化スケールの平均厚さと定義した。
[試験結果]
表1に酸化スケールの平均厚さを示す。表1を参照して、試験番号1〜10及び18の鋼の化学組成は適切であり、式(1)及び式(2)を満たした。そのため、酸化スケールの厚さが10μm未満であった。
特に、試験番号18のステンレス鋼板は加工層を有したため、酸化スケールの厚さが試験番号1〜10よりも薄かった。
一方、試験番号11及び14では、Nb含有量が低すぎた。さらに試験番号11では、F2が高すぎた。そのため、酸化スケール厚さが10μmを超えた。試験番号12、13及び16では、Mo+W/2含有量が低すぎた。そのため、酸化スケール厚さが10μmを超えた。
試験番号15では、F1が式(1)の下限未満であった。そのため、酸化スケール厚さが10μmを超えた。試験番号17ではF2が式(2)の下限未満であった。その結果、酸化スケール厚さが10μmを超えた。
以上、本発明の実施の形態を説明した。しかしながら、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。したがって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変更して実施することができる。

Claims (3)

  1. 質量%で、
    Cr:15〜20%未満、
    Ni:25〜45%未満、
    Nb:2.3〜5.0%、及び、
    Mo+W/2:4.0〜8.0%を含有し、残部はFe及び不純物からなり、
    前記不純物のうち、C、Si、Mn、P、S及びN含有量はそれぞれ、
    C:0.02%未満、
    Si:1.0%未満、
    Mn:1.0%未満、
    P:0.020%未満、
    S:0.010%未満、及び、
    N:0.030%未満であり、
    式(1)及び式(2)を満たす化学組成を有するオーステナイト系ステンレス鋼。
    8.0≦Nb+Mo+W/2≦12.0 (1)
    1.0≦(Mo+W/2)/Nb≦4.0 (2)
    式中の元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
  2. 請求項1に記載のオーステナイト系ステンレス鋼であって、
    10μm以上の深さの加工層を表層に備える、オーステナイト系ステンレス鋼。
  3. 請求項1又は請求項2に記載のオーステナイト系ステンレス鋼からなるオーステナイト系ステンレス鋼管。
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