JP6327077B2 - オーステナイト系ステンレス鋼 - Google Patents
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Description
特開昭58−133352号公報(特許文献1)に開示されたオーステナイトステンレス鋼管は、鋼管の平均結晶粒度番号がNo.6以下の粗粒組織と、内面鋼の結晶粒度番号がNo.7以上の細粒組織とを有する。細粒層部のC+Nは0.15%以上である。
特開昭49−135822号公報(特許文献2)に開示されたオーステナイトステンレス鋼の酸化の防止法は、製造工程中の最終熱処理後あるいは熱間仕上げによる製造工程の熱間圧延後、オーステナイトステンレス鋼の表面に流体による粒子吹き付けピーニング加工を実施する。
特開2004−132437号公報(特許文献5)に開示されたボイラ用鋼管の製造方法では、質量%で5〜30%のCrを含有するフェライト系耐熱鋼管の内表面に超音波衝撃処理を施す。
特開2002−285236号公報(特許文献7)に開示されたフェライト系耐熱鋼の加工方法では、質量%で、9.5〜15%のCrを含有するフェライト系耐熱鋼を、900℃以上の温度で焼きならし処理し、A1変態点以下の温度で焼きもどし処理した後、鋼表面に粒子を吹き付けてショット加工層を形成する。
8.0≦Nb+Mo+W/2≦12.0 (1)
1.0≦(Mo+W/2)/Nb≦4.0 (2)
ここで、式中の元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
8.0≦Nb+Mo+W/2≦12.0 (1)
式(1)中の各元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
1.0≦(Mo+W/2)/Nb≦4.0 (2)
8.0≦Nb+Mo+W/2≦12.0 (1)
1.0≦(Mo+W/2)/Nb≦4.0 (2)
式中の元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
本実施形態のオーステナイト系ステンレス鋼は、次の化学組成を有する。
クロム(Cr)は、鋼の耐水蒸気酸化性及び耐食性を高める。700℃以上の高温環境において、Crは、鋼の表面近傍にクロミア(Cr2O3)皮膜を形成する。鋼の表面に均一なクロミア皮膜が形成されることにより、鋼の耐水蒸気酸化性が高まる。Cr含有量が低すぎれば、上記効果が得られない。一方、Cr含有量が高すぎれば、組織の安定性が低下してクリープ強度が低下する。したがって、Cr含有量は15〜20%未満である。本実施形態では、Nb、Mo及びWを含有することにより、20%未満のCr含有量であっても均一なクロミア皮膜の形成が可能であり、耐水蒸気酸化性が高まる。Cr含有量の好ましい下限は15%よりも高く、さらに好ましくは16%であり、さらに好ましくは17%である。Cr含有量の好ましい上限は19.5%であり、さらに好ましくは19%である。
ニッケル(Ni)は、オーステナイトを安定化する。Niはさらに、鋼の耐水蒸気酸化性及び耐食性を高める。Ni含有量が低すぎれば、上記効果が得られない。一方、Ni含有量が高すぎれば、鋼のクリープ強度が低下する。Ni含有量が高すぎればさらに、製造コストが高くなる。したがって、Ni含有量は25〜45%未満である。Ni含有量の好ましい下限は25%よりも高く、さらに好ましくは26%であり、さらに好ましくは28%である。Ni含有量の好ましい上限は40%であり、さらに好ましくは35%である。
ニオブ(Nb)は、Niと結合してNi3Nbを形成する。Nbはさらに、Feと結合してFe2Nbを形成する。これらの析出物は、高温クリープ特性を高める。
Nbはさらに、鋼の耐水蒸気酸化性を高める。NbはFeと結合してFe2Nbを形成する。Nbはさらに、σ相であるFeMo及びLaves相であるFe2Wの析出量を増加する。σ相及びLaves相の析出量の増加により、母相の化学組成が変化して、Cr活量勾配が増加する。その結果、Crが鋼の内部から表面に移動しやすくなり、鋼表面に均一なクロミア(Cr2O3)皮膜が形成されやすくなる。以上の結果、鋼の耐水蒸気酸化性が高まる。Nb含有量が低すぎれば、上記効果が得られない。一方、Nb含有量が高すぎれば、鋼の靭性及び熱間加工性が低下する。したがって、Nb含有量は2.3〜5.0%である。Nb含有量の好ましい下限は2.3%よりも高く、さらに好ましくは2.5%であり、さらに好ましくは2.8%である。Nb含有量の好ましい上限は5.0%未満であり、さらに好ましくは4.8%であり、さらに好ましくは4.5%である。
モリブデン(Mo)及びタングステン(W)は、Feと結合してσ相(FeMo)及びLaves相(Fe2W)を形成する。Laves相の形成により、母相の化学組成が変化する。その結果、表層へのCr流束が増加して、鋼表面に均一なクロミア皮膜が形成される。その結果、鋼の耐水蒸気酸化性が高まる。Mo及び/又はW含有量が低すぎれば、上記効果が得られない。一方、Mo及びW含有量が高すぎれば、鋼の靭性及び熱間加工性が低下する。したがって、Mo+W/2含有量は4.0〜8.0%である。Mo+W/2は、Mo及び/又はWの総含有量を意味する。Mo及びWのいずれか一方が含有されていてもよいし、Mo及びWが含有されていてもよい。
炭素(C)は不純物である。耐熱鋼において、一般的に、Cは炭化物を形成し、クリープ強度を高める。しかしながら本実施形態では、CはNi、Nb及びCrと結合して炭化物を形成し、Laves相に代表される金属間化合物の析出量を低減する。さらに、炭化物は高温で長時間加熱されると凝集して粗大化する。粗大な炭化物は結晶粒内及び粒界の強度を低下する。したがって、C含有量は0.02%未満である。好ましいC含有量は0.01%以下である。C含有量はなるべく低い方が好ましい。
シリコン(Si)は不純物である。SiはNiと結合して金属間化合物であるシリサイドを形成する。シリサイドは非常に脆く、鋼の熱間加工性を低下する。したがって、Si含有量は1.0%未満である。好ましいSi含有量は0.8%以下である。Si含有量はなるべく低い方が好ましい。
マンガン(Mn)は不純物である。一般的に、MnはSと結合してMnSを形成し、鋼の熱間加工性を高める。しかしながら、S含有量が低い本実施形態のオーステナイト系ステンレス鋼では、Mnはシグマ(σ)相の生成を促進して鋼の熱間加工性を低下する。したがって、Mn含有量は1.0%未満である。好ましいMn含有量は0.5%以下である。Mn含有量はなるべく低い方が好ましい。
燐(P)は不純物である。Pは鋼の熱間加工性及び延性を低下する。したがって、P含有量は0.020%未満である。好ましいP含有量は0.010%以下である。P含有量はなるべく低い方が好ましい。
硫黄(S)は不純物である。Sは鋼の熱間加工性を低下する。したがって、S含有量は0.010%未満である。好ましいS含有量は0.008%以下である。S含有量はなるべく低い方が好ましい。
窒素(N)は不純物である。Nは、Nbと結合して窒化物を形成する。そのため、Nb含有金属間化合物の析出量が減少する。さらに、窒化物は高温で長時間加熱されると凝集して粗大化する。粗大な窒化物は鋼のクリープ強度を低下する。したがって、N含有量は0.030%未満である。好ましいN含有量は0.010%以下である。N含有量はなるべく低い方が好ましい。
本実施形態のオーステナイト系ステンレス鋼の化学組成はさらに、式(1)及び式(2)を満たす。
8.0≦Nb+Mo+W/2≦12.0 (1)
1.0≦(Mo+W/2)/Nb≦4.0 (2)
式中の元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
上述のとおり、Nb、Mo及びWは、Feを含む金属間化合物を形成する。これにより、鋼中のCrが鋼の表面に移動しやすくなり、表面に均一なクロミア皮膜が形成されやすくなる。その結果、鋼の耐水蒸気酸化性が高まる。
Nb含有量に対する、Mo及びW含有量が適切な範囲であれば、NbがFeMo及びFe2Wの析出を促進し、その結果、鋼の耐水蒸気酸化性が高まる。F2=(Mo+W/2)/Nbと定義する。F2が低すぎたり、高すぎたりする場合、つまり、Nb含有量に対するMo及びW含有量が低すぎたり、高すぎたりする場合、鋼の耐水蒸気酸化性が低くなる。F2が1.0〜4.0である場合、Nb含有量に対するMo及びW含有量が適切であり、鋼の耐水蒸気酸化性が高まる。
本実施形態のオーステナイト系ステンレス鋼の製造方法について説明する。
表1に示す試験番号1〜18の化学組成を有する溶鋼を、真空溶解炉を用いて製造した。
表1に酸化スケールの平均厚さを示す。表1を参照して、試験番号1〜10及び18の鋼の化学組成は適切であり、式(1)及び式(2)を満たした。そのため、酸化スケールの厚さが10μm未満であった。
Claims (3)
- 質量%で、
Cr:15〜20%未満、
Ni:25〜45%未満、
Nb:2.3〜5.0%、及び、
Mo+W/2:4.0〜8.0%を含有し、残部はFe及び不純物からなり、
前記不純物のうち、C、Si、Mn、P、S及びN含有量はそれぞれ、
C:0.02%未満、
Si:1.0%未満、
Mn:1.0%未満、
P:0.020%未満、
S:0.010%未満、及び、
N:0.030%未満であり、
式(1)及び式(2)を満たす化学組成を有するオーステナイト系ステンレス鋼。
8.0≦Nb+Mo+W/2≦12.0 (1)
1.0≦(Mo+W/2)/Nb≦4.0 (2)
式中の元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。 - 請求項1に記載のオーステナイト系ステンレス鋼であって、
10μm以上の深さの加工層を表層に備える、オーステナイト系ステンレス鋼。 - 請求項1又は請求項2に記載のオーステナイト系ステンレス鋼からなるオーステナイト系ステンレス鋼管。
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