JP6325392B2 - 短絡状態から加工開始可能なワイヤ放電加工機 - Google Patents
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Description
すなわち、ワークの小径加工開始穴がワイヤ電極のワイヤ径に近い微小な場合や、図16(b)に示すように、小径加工開始穴が斜めに形成されていることが原因でワイヤ電極と小径加工開始穴が平行にならずワイヤ電極とワークの上エッジもしくは下エッジが接触している場合、図16(c)に示すように、小径加工開始穴の内面にバリがある場合、図16(d)に示すように、ワイヤ電極が斜めになっている場合などにおいては、特許文献1に記載の技術を用いたとしても短絡状態の解除が出来る可能性は少ないという問題があった。
従来のワイヤ放電加工機には、ワイヤ電極とワークが短絡状態では、断線の可能性が高い為に放電の為の電源電圧の印加や放電電流の供給を行わないように設定されていた。
しかしながら、発明者は実験を繰り返すことにより、ワイヤ電極とワークとが短絡している状態で、ワイヤ電極をワイヤ走行方向に低いワイヤ張力をかけた状態で走行させ、加工液の供給を行い、ワイヤ電極線が溶断しない程度のパルス状の高周波の電圧印加と放電電流供給を行い続けていると、ワイヤ振動やワイヤ表面に付着した油分による絶縁皮膜、その他の要因により、ワイヤ電極とワークとの間が僅か一瞬ではあるものの短絡状態が解除されることがあり、その瞬間に放電を発生させることが可能であることを立証した。
その為、加工開始時に、短絡状態においても、加工開始時の最初の一定期間のみ、特別にワイヤ電極が溶断しない程度の高周波の電圧印加及び放電電流供給を行える電源回路と制御方式と印加する機能を有し、放電除去による短絡解除を行い、加工を開始するワイヤ放電加工機を発明した。
上ガイド15と下ガイド17の間の放電加工領域には放電加工対象となる図示しないワーク2がテーブル4(図示せず)に載置され、ワイヤ電極1に加工用電源から高周波電圧が印加され放電加工がなされる。また、ワイヤ放電加工機30本体は制御装置40によって制御される。
図2(a)に示すように、ワイヤ電極1とワーク2の極間が短絡状態において、本来開放時に供給するべき通常の放電加工に用いる高電流パルスを極間に供給すると、極間抵抗が少なくワイヤ電極1に過大な電流が流れ、ジュール熱によりワイヤ電極1が溶断する。そこで、本発明においては、図2(b)に示すように、ワイヤ電極1とワーク2の極間が短絡状態である場合に、短絡状態においてもワイヤ電極1が溶断せず、なおかつ、開放状態で接近した際にワーク表面を放電除去するに十分な小電流を供給するように極間電圧、極間電流を制御する。
なお、ワイヤ電極1とワーク2の間が短絡状態であるのか、開放状態であるのかについては、図4に示すように、短絡状態と開放状態を判別するための短絡開放判定基準電圧を設定しておき、放電誘起電圧を印加した際の極間電圧の立ち上がり電圧を観察し、極間電圧が短絡開放判定基準電圧を超えたか否かで判定するようにすればよい。
また、一定期間待っても、短絡が解除しない場合には、水圧やワイヤ張力を順次変更し、ワイヤに振動を与えて、ワイヤ電極がワークに接している状態から離れる状態を作りやすくする。更に、一定期間待っても解除しない場合には、電圧印加を停止し、加工開始処理を中断しプログラムの停止処理を行い、短絡解除のアラームを表示する。
さらに、極間に放電が発生したかどうかを検出する放電検出手段57、各スイッチング素子のオン・オフを制御する制御回路58が備えられている。
図7は、従来技術において行われる加工電源回路50の第1のスイッチング素子S1と第2のスイッチング素子S2の制御について、極間電圧Vg、極間電流Igとの関係を説明するタイムチャートである。従来技術においては、はじめにS1をオンにして、放電誘起用パルス電圧を極間に印加する。その際に、極間電圧Vgがほとんど検出されない場合には、ワイヤ電極1とワーク2の極間が短絡状態になっていると判断し、一定期間後にS1をオフし、S2はオフのままで放電電流を極間に供給しないように制御する。
その後、極間の絶縁を回復するために休止時間を設け、1サイクルの放電加工が完了する。
その後極間の絶縁を回復するために休止時間を設け、1サイクルが完了する。
一方で、極間が短絡状態にある場合には、第1のスイッチング素子S1をオンにすると、極間電圧Vgは短絡開放判定基準電圧を超えないことが検出され、短絡判定S3においては、短絡状態であるという判定がなされる。
図10に示すように、従来技術におけるワイヤ放電加工機において、加工開始前にワイヤ電極1とワーク2との間で短絡状態が検出されている状態で、ワイヤ放電加工用の制御プログラムが起動すると、第1のスイッチング素子S1により短絡状態が検出された後、S1をオフした後もS2はオフのままで放電電流を極間に供給しないように制御し、このような状態が一定時間継続すると、ワイヤ放電加工が開始できないと判断し、ワイヤ放電加工用の制御プログラムを停止する。
図11に示すように、本発明の実施の形態におけるワイヤ放電加工機30において、加工開始前にワイヤ電極1とワーク2との間で短絡状態が検出されている状態で、ワイヤ放電加工用の制御プログラムが起動すると、第1のスイッチング素子S1により短絡状態が検出された後、S1をオフすると同時にS2を一定時間オンして小電流を極間に供給するように制御され、ワイヤ放電加工用の制御プログラムの動作を継続する。
図12は、従来技術におけるワイヤ放電加工機の制御処理の流れを示す図である。
図12の制御処理では、小径加工開始穴において、ワイヤとワークが短絡していた場合、短絡アラームとなりプログラムを停止している。また、短絡していなければ、放電加工のサイクルに移行する。
●[ステップSA02]第1のスイッチング素子S1をオン/オフすることで、ワイヤ電極とワークの極間に放電誘起電圧を印加する。
●[ステップSA03]ステップSA02で印加した放電誘起電圧によりワイヤ電極とワークの極間に放電が発生したか判定する。放電が発生した場合にはステップSA04へと進み、放電が発生しなかった場合にはステップSA02へと戻る。
●[ステップSA04]第2のスイッチング素子S2をオンして、ワイヤ電極とワークの極間に放電加工用の大電流を供給する。
●[ステップSA05]第2のスイッチング素子S2をオフして、ワイヤ電極とワークの極間への放電加工用の大電流の供給を停止し、ワイヤ極間の絶縁を回復するために一定時間加工を休止する。
●[ステップSA06]加工制御プログラムが終了したか否かを判定する。プログラムが終了していない場合にはステップSA02へと戻り、プログラムが終了した場合にはプログラムを終了する。
図13の制御処理では、放電加工が開始され、その途中で短絡が検出されると、大電流の供給を停止し、第1の直流電源53による放電判定を行い、短絡が所定の連続N回以上検出されれば、ワイヤ電極を制御して加工経路を逆行させてワイヤとワークの短絡を解除する後退制御に移行し、後退制御で所定距離後退しても短絡が解除しない場合、短絡アラームとして、プログラムの停止を行う。
●[ステップSB02]第1のスイッチング素子S1をオン/オフすることで、ワイヤ電極とワークの極間に放電誘起電圧を印加する。
●[ステップSB03]ステップSB02で印加した放電誘起電圧によりワイヤ電極とワークの極間に放電が発生したか判定する。放電が発生した場合にはステップSB04へと進み、放電が発生しなかった場合にはステップSB07へと進む。
●[ステップSB04]第2のスイッチング素子S2をオンして、ワイヤ電極とワークの極間に放電加工用の大電流を供給する。
●[ステップSB05]第2のスイッチング素子S2をオフして、ワイヤ電極とワークの極間への放電加工用の大電流の供給を停止し、ワイヤ極間の絶縁を回復するために一定時間加工を休止する。
●[ステップSB06]加工制御プログラムが終了したか否かを判定する。プログラムが終了していない場合にはステップSB02へと戻り、プログラムが終了した場合にはプログラムを終了する。
●[ステップSB07]放電加工開始後に短絡が検出された場合において、ステップSB03の放電判定で連続して所定回数N回以上の短絡が検出されたかを判定する。所定回数N回以上の短絡が検出された場合には、ステップSB10へと進み、所定回数N回以上の短絡が検出されていない場合には、ステップSB08へと進む。
●[ステップSB08]第2の直流電源55を制御して第2のスイッチング素子S2をオンにし、ワイヤ電極とワークの極間に中電流を供給して放電を試みる。
●[ステップSB09]第2のスイッチング素子S2をオフして、ワイヤ電極とワークの極間への中電流の供給を停止し、ステップSB06へ戻る。
●[ステップSB10]ワイヤ電極を制御して加工経路を逆行させてワイヤとワークの短絡を解除する後退制御に移行する。
●[ステップSB11]ワイヤ電極1とワークの極間の短絡判定を行う。極間が短絡状態である場合にはプログラムを停止し、開放状態である場合にはステップSB02へと進む。
図14の制御処理では、小径加工開始穴において、ワイヤとワークが短絡していた場合でも、第1の直流電源53による放電判定を行い、さらに一定時間短絡が連続した場合には短絡アラームとしてプログラムの停止を行うが、この間、S2による小電流による放電を試みるサイクルを繰り返す。この際、S1電源による放電判定で放電が確認できれば、S2による大電流供給に切り替え、本来の加工エネルギーによる放電加工を開始する。
●[ステップSC02]第1のスイッチング素子S1をオン/オフすることで、ワイヤ電極とワークの極間に放電誘起電圧を印加する。
●[ステップSC03]ステップSC02で印加した放電誘起電圧によりワイヤ電極とワークの極間に放電が発生したか判定する。放電が発生した場合にはステップSC04へと進み、放電が発生しなかった場合にはステップSC02へと戻る。
●[ステップSC04]第2のスイッチング素子S2をオンして、ワイヤ電極とワークの極間に放電加工用の大電流を供給する。
●[ステップSC05]第2のスイッチング素子S2をオフして、ワイヤ電極とワークの極間への放電加工用の大電流の供給を停止し、ワイヤ極間の絶縁を回復するために一定時間加工を休止する。
●[ステップSC06]加工制御プログラムが終了したか否かを判定する。プログラムが終了していない場合にはステップSC02へと戻り、プログラムが終了した場合にはプログラムを終了する。
●[ステップSC07]第1のスイッチング素子S1をオン/オフすることで、ワイヤ電極とワークの極間に放電誘起電圧を印加する。
●[ステップSC08]ステップSC07で印加した放電誘起電圧によりワイヤ電極とワークの極間に放電が発生したか判定する。放電が発生した場合にはステップSC04へと戻り、放電が発生しなかった場合にはステップSC09へと進む。
●[ステップSC09]ステップSC08における放電判定で一定時間短絡が連続して検出されたか否かを判定する。一定時間短絡が連続して検出された場合には短絡アラームとしてプログラムを停止し、そうでない場合にはステップSC10へと進む。
●[ステップSC10]第2の直流電源55を制御して第2のスイッチング素子S2をオンにし、ワイヤ電極とワークの極間に小電流を供給して放電を試みる。
●[ステップSC11]第2のスイッチング素子S2をオフして、ワイヤ電極とワークの極間への小電流の供給を停止する。
●[ステップSC12]加工制御プログラムが終了したか否かを判定する。プログラムが終了していない場合にはステップSC07へと戻り、プログラムが終了した場合にはプログラムを終了する。
図15の制御処理では、図14の制御処理に加えて、一定時間短絡が続いた場合、プログラムをアラーム停止させるのではなく、さらに加工条件を変更して、第1のスイッチング素子S1による放電判定を繰り返す。例えば、放電判定で短絡判定基準を下げ放電と判定しやすいような加工条件に変更したり、ワイヤ張力、加工液流量、ワイヤ送り速度を調整する。これにより、半導通状態において、放電を起こしやすくする。規定回数にわたって加工条件の変更を行っても放電判定とならない場合には、最終的にアラームによるプログラム停止とする。
●[ステップSD02]第1のスイッチング素子S1をオン/オフすることで、ワイヤ電極とワークの極間に放電誘起電圧を印加する。
●[ステップSD03]ステップSD02で印加した放電誘起電圧によりワイヤ電極とワークの極間に放電が発生したか判定する。放電が発生した場合にはステップSD04へと進み、放電が発生しなかった場合にはステップSD02へと戻る。
●[ステップSD04]第2のスイッチング素子S2をオンして、ワイヤ電極とワークの極間に放電加工用の大電流を供給する。
●[ステップSD05]第2のスイッチング素子S2をオフして、ワイヤ電極とワークの極間への放電加工用の大電流の供給を停止し、ワイヤ極間の絶縁を回復するために一定時間加工を休止する。
●[ステップSD06]加工制御プログラムが終了したか否かを判定する。プログラムが終了していない場合にはステップSD02へと戻り、プログラムが終了した場合にはプログラムを終了する。
●[ステップSD07]第1のスイッチング素子S1をオン/オフすることで、ワイヤ電極とワークの極間に放電誘起電圧を印加する。
●[ステップSD08]ステップSD07で印加した放電誘起電圧によりワイヤ電極とワークの極間に放電が発生したか判定する。放電が発生した場合にはステップSD04へと戻り、放電が発生しなかった場合にはステップSD09へと進む。
●[ステップSD09]ステップSD08における放電判定で一定時間短絡が連続して検出されたか否かを判定する。一定時間短絡が連続して検出された場合にはステップSD13へと進み、そうでない場合にはステップSD10へと進む。
●[ステップSD10]第2の直流電源55を制御して第2のスイッチング素子S2をオンにし、ワイヤ電極とワークの極間に小電流を供給して放電を試みる。
●[ステップSD11]第2のスイッチング素子S2をオフして、ワイヤ電極とワークの極間への小電流の供給を停止する。
●[ステップSD12]加工制御プログラムが終了したか否かを判定する。プログラムが終了していない場合にはステップSD07へと戻り、プログラムが終了した場合にはプログラムを終了する。
●[ステップSD13]加工条件を変更して、半導通状態において、放電を起こしやすくする。例えば、放電判定で短絡判定基準を下げ放電と判定しやすいような加工条件に変更したり、ワイヤ張力、加工液流量、ワイヤ送り速度を調整したりする。
●[ステップSD14]ステップSD13における加工条件の変更回数があらかじめ設定しておいた所定の回数を超過したか否かを判定する。超過している場合には、短絡アラームとしてプログラムを停止し、超過していない場合にはステップSD07へと戻る。
2 ワーク
10 送り出し部トルクモータ
11 ワイヤボビン
12 ブレーキモータ
13 ブレーキシュー
14 張力検出器
15 上ガイド
16 上ワイヤ支持ガイド
17 下ガイド
18 下ワイヤ支持ガイド
19 下ガイドローラ
20 ワイヤ電極回収箱
21 ピンチローラ
22 フィードローラ
30 ワイヤ放電加工機
40 制御装置
50 加工電源回路
51 放電誘起回路
52 電流供給回路
53 第1の直流電源
54 電流制限抵抗
55 第2の直流電源
56 浮遊インダクタンス
57 放電検出手段
58 制御手段
S1 第1のスイッチング素子
S2 第2のスイッチング素子
Claims (5)
- 第1の直流電源が第1のスイッチング素子と電流制限抵抗を介してワイヤ電極とワークの極間に接続される放電誘起回路と、第2の直流電源が第2のスイッチング素子を介して前記極間に接続される電流供給回路と、前記極間の電圧を検出する電圧検出回路と、前記電圧検出回路で検出された電圧に基づいて短絡状態を検出する短絡検出手段と、前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子のオン・オフを制御する制御回路を有するワイヤ放電加工機において、
加工開始時に前記短絡検出手段により短絡を検出したとき、前記制御回路は、前記極間に短絡検出用のパルス状の電圧の印加、及び、前記ワイヤ電極が前記ワークと短絡状態でも溶断せず、なおかつ、開放状態で接近した際にワーク表面を放電除去するに十分な電流の供給を繰り返し、前記繰り返しの期間内で、前記短絡検出用の電圧により前記ワイヤ電極と前記ワークが開放状態になったことが検出された時点から、予め定められた時間、前記極間に、前記短絡検出用の電圧の印加、及び、前記電流の供給を続ける、
ことを特徴とするワイヤ放電加工機。 - 前記予め定められた時間までに、前記短絡検出手段により、短絡が解除されたことを検出した時、予め設定された加工条件に変更することを特徴とする請求項1に記載のワイヤ放電加工機。
- 前記加工条件に変更した後、ワイヤ放電加工機において、加工プログラムに基づいて加工することを特徴とする請求項2に記載のワイヤ放電加工機。
- 前記予め定められた時間までに、短絡が解除されなかった場合、短絡が解除されるまで前記ワイヤ電極のワイヤ張力、加工液流量、前記ワイヤ電極のワイヤ送り速度のいずれかもしくはそれらを組み合わせた条件を変更することを特徴とする請求項1または2に記載のワイヤ放電加工機。
- 前記ワイヤ電極と前記ワークが短絡状態でも溶断しない放電電流は、前記ワイヤ電極の線径、材質および種類、加工する前記ワークのワーク材質と板厚、加工液の比抵抗値、前記ワイヤ電極を走行させるのに必要なワイヤ張力を設定した状態で実験により求めることを特徴とする請求項1記載のワイヤ放電加工機。
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