実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による移動手摺表面膨れ検知装置23を示す断面図、図2はその側面図である。また、図12は、図1及び図2に示す移動手摺表面膨れ検知装置23が設けられた乗客コンベアの全体側面図である。図12に示すように、乗客コンベアは、構造体10と、無端状に形成されて乗客を乗せて循環移動する踏板(図示せず)と、同じく無端状に形成されて、踏板と同期移動する移動手摺1と、踏板および移動手摺1を駆動する駆動装置(図示せず)とから構成されている。構造体10は、移動手摺1をガイドするために踏板の左右に設けられた欄干と、駆動装置が内部に設けられた機械室とを備えている。また、移動手摺1は、踏板とともに循環移動するときに、帰路側の乗降口に設けられた移動手摺入り込み口であるインレット24から構造体10内部に入り込み、構造体10内部を走行する。その後、行路側の乗降口に設けられたインレット24から構造体10外部に出て、そのまま循環移動を続ける。従って、移動手摺1は、行路側のインレット24から帰路側のインレット24までの間は、構造体10外部を走行し、帰路側のインレット24から行路側のインレット24までの間は、構造体10外部を走行する。移動手摺1は、構造体10内部を走行している間は、図1に示すように、外側表面が下向きになっており、内側表面が上向きになっている。
本実施の形態に係る移動手摺表面膨れ検知装置23は、図12に示すように、2つのインレット24間の構造体10内部に設置されている。移動手摺表面膨れ検知装置23には、図12に示すように、制御装置25が接続されている。
以下、移動手摺1および移動手摺表面膨れ検知装置23の構成について説明する。
図1の断面図及び図2の側面図に示すように、移動手摺1は、移動手摺1の本体となるゴム層2と、ゴム層2の内部に設けられて、移動手摺1の引っ張り力を保持するための抗張体3と、ゴム層2の内側表面に張り付けられた帆布4とから構成されている。ゴム層2は、長手方向に無端状に形成されており、幅方向(短手方向)は図1の断面図に示されるようにU字型の曲面形状になっている。従って、移動手摺1の外側表面は、曲面表面になっている。また、抗張体3は、帯状のスチールテープもしくは複数本のワイヤーから構成されている。
移動手摺表面膨れ検知装置23は、移動手摺1に対して設置され、移動手摺1に発生する表面膨れを検知するための複数のスイッチ5と、当該複数のスイッチ5が載置されたプレート12とから構成されている。プレート12は、移動手摺1の表面曲面に応じて、全てのスイッチ5の作動距離(すなわち、スイッチ5と移動手摺1の表面との距離)が同じになるように、各スイッチ5ごとに、スイッチ5を設置する取り付け面の高さが調整されている。すなわち、図1に示すように、移動手摺1の表面形状は、外側に向けて凸型の曲面となっており、中央部分が端部よりも緩やかに突出している。そのため、プレート12の表面形状を、この移動手摺1の曲面表面形状に合わせると、図1に示すように、中央部分が最も低く、端部に向けて段階的に(階段式に)高くなっている。こうすることで、全てのスイッチ5の作動距離が同じになり、スイッチ5が移動手摺1を押す作動力は、全てのスイッチ5で同じとなる。また、スイッチ5として、同型のものが使用できるため、製造コストも抑えることができる。なお、プレート12は、図1に示すように、L字型断面を有する取り付けブラケット11に固定されている。また、取り付けブラケット11は、乗客コンベアの構造体10に固設されている。
次に、各スイッチ5の構成について説明する。各スイッチ5は、図2に示すように、プレート12上に設けられた筺体6と、筺体6に対して片持ち式に一端が固定された例えばL字型のレバー9と、レバー9の他端である自由端上に設けられ、移動手摺1の進行方向に対して自在に回転するローラ8と、ローラ8の下部に設けられた検出部7とから構成されている。レバー9は可撓性を有しており、ローラ8の動きに合わせて撓む構成となっている。また、ローラ8は下方に(すなわち、移動手摺1の反対方向に)一定量以上移動すると、検出部7を押す構成となっている。検出部7はローラ8が下方に一定量以上移動してローラ8に押された場合に「検知」と判定し、制御部25に対して検出信号を送信する。一方、ローラ8の下方への移動量が一定量未満でローラ8に押されていない場合には「非検知」と判定し、検出信号は送信しない。従って、検出部7の検知/非検知の基準となるローラ8の下方への移動量の上記一定量を以下では「表面膨れ検出基準値δ」と呼びこととする。
図1に示すように、複数のスイッチ5は、プレート12上に、移動手摺1の幅方向に並んで配置されている。スイッチ5の先端には、上述したように、移動手摺1の進行方向に対して自在に回転するローラ8がレバー9を介して取り付けられている。このとき、移動手摺1の表面に、図2の破線で示す膨れ100が発生し、且つ、膨れ100の膨れ量が表面膨れ検出基準値δ以上であった場合に、当該膨れ100でローラ8が押されることで、スイッチ5の検出部7が押されて、当該膨れ100が検知される。上述したように、移動手摺1の幅方向に複数配置されたスイッチ5は、移動手摺1の表面の曲面に応じてスイッチ5の作動距離すなわちローラ8と移動手摺1の表面の距離が同じになるように、筺体6の取り付け面の高さを調整したプレート12を介して取り付けられているため、スイッチ5が設けられている範囲においては、移動手摺1の幅方向(正確には、後述のように抗張体3の設置幅)のいかなる場所で膨れ100が発生していても、確実に検知することができる。
上述したように、移動手摺1に膨れ100が発生する要因としては、抗張体3の破損や抗張体3とゴム層2との間の層間剥離が挙げられ、抗張体3に起因することが明らかであるため、本実施の形態1では抗張体3の幅に注目した構成としている。すなわち、移動手摺1の抗張体3の幅方向のいかなる場所で膨れが発生しても確実に検知することができるように、移動手摺1の抗張体3の幅(図1の抗張体幅(A))よりも、複数のスイッチ5で構成する検知可能となる幅(図1のローラ設置幅(B))の方が広くなるように、スイッチ5の設置個数および設置位置が調整されている((A)<(B))。このように、複数のスイッチ5で構成する検知可能となる幅を、抗張体3の幅よりも大きくすることで、移動手摺1の表面膨れの原因となる抗張体3のいかなる場所で表面膨れが発生しても、当該表面膨れを検知可能となる。また、取り付けブラケット11は、図2に示すように、ボルト13により乗客コンベアの構造体10に固定されているが、移動手摺1に対する取り付け高さを調整できるように、取り付けブラケット11のボルト13の取り付け穴は長穴となっている。このように、スイッチ5と移動手摺1との間の距離をボルト13により調整できるようにしたので、スイッチ5と移動手摺1との距離が近すぎる結果、スイッチ5の作動力が強くなりすぎて、スイッチ5の押圧力で膨れがつぶしてしまうので正確に膨れが検知できない、あるいは、スイッチ5と移動手摺1との距離が遠すぎる結果、スイッチ5のローラ8が移動手摺1の表面に密着できず、膨れが発生していても、それを検知できない、等の問題を回避することができ、良好な検知作業を行うことができる。
なお、図1ではスイッチ5全てが鉛直上向きに並べられているが、移動手摺1の曲面に応じてローラ8と移動手摺1の表面の距離が同じになるように円弧状で配置しても良い。さらに、スイッチ5全てが移動手摺1の走行方向に対して同じ位置に設置されているが、周辺装置との関係を考えて移動手摺1の走行方向に適宜移動(例えば千鳥配置)して配置することでも良い。
次に、スイッチ5の作動力について説明する。図8は、スイッチ5の作動力FSと移動手摺1の表面膨れ検出量xとの関係を示したグラフである。横軸がスイッチ5の作動力FSであり、縦軸が移動手摺1の表面膨れ検出量xである。スイッチ5は、上述したとおり、ローラ8が押されることでスイッチ5の検出部7が押されて膨れを検知する。このとき、図8に示すように、実際の移動手摺1の表面膨れ量xがXLであったとすると、スイッチ5の作動力FSが作動力閾値FL以下の間は、移動手摺1の表面膨れ量xが、検知すべき膨れ検出基準値δに到達しているか否かを確実に検出することができるが、スイッチ5の作動力FSが作動力閾値FLよりも大きくなった場合、移動手摺1の表面膨れがスイッチ5で押されて凹んでしまうことから、移動手摺1の表面膨れ量xが、検知すべき膨れ検出基準値δに到達しているか否かを確実に検出することが困難になる。そのため、スイッチ5の作動力FSは、移動手摺1の表面膨れが凹まない範囲の最大値である作動力閾値FL以下となるように設定(FS≦FL)する。従って、図8に示すように、スイッチ5の作動力FSが作動力閾値FL以下の範囲が、表面膨れ検知可能範囲となる。なお、表面膨れが凹まない作動力閾値FLは、ゴム層2の材質にもよるが、0.5[N]以下に設定することが望ましい。
また、表面膨れ検出基準値δは、移動手摺1の外側表面とインレット24の内壁との間の隙間をδ0とすると、当該δ0よりも小さい値になるように設定する(δ<δ0)。その理由を説明する。移動手摺1の表面に膨れ100が発生することで懸念される問題として、図12に示すように、移動手摺1はインレット24から構造体10内部に入り込む。移動手摺1の外側表面とインレット24の内壁との間には隙間δ0が設けられており、移動手摺1の表面に膨れ100が発生していなければ、移動手摺1はインレット24の内壁に接触することなく、インレット24から構造体10内に入っていく。しかしながら、このとき、移動手摺1の表面に表面膨れ検出基準値δより大きい膨れ量の膨れ100が発生していると、インレット24にある安全装置(図示せず)が作動し、乗客コンベアが急停止する。乗客コンベアが急停止した場合、乗客コンベアに乗車中の乗客が転倒する可能性が考えられるため、乗客コンベアの不要な急停止は避けることが望ましい。そのため、検出すべき表面膨れ量の表面膨れ基準値δは、隙間δ0よりも小さく、且つ、安全装置が作動しない範囲に設定しておく。こうすることで、表面膨れ検出基準値δ以上の膨れを確実に検出して、当該膨れを修復しておけば、インレット24に設けられた安全装置が不要に作動することを未然に防ぐことができ、乗客コンベアの急停止の発生を抑えることができる。
次に、スイッチ5が作動したときの処理について説明する。図9に示すように移動手摺1の表面膨れ量や状態によって、スイッチ5の作動状態が変化する。なお、スイッチ5の作動/非作動の判断は、電圧レベルが電圧閾値VS以上でスイッチ5がOFFとしてスイッチ5が非動作、電圧レベルが電圧閾値VS以下でスイッチ5がONしたとして、スイッチ5が作動したと判定する。そして、作動したスイッチ5の個数に応じて検知レベルを区分する。例えば、図1に示すように、表面膨れ検知装置23に5個のスイッチ5が設けられている場合を例にすると、1個のみ作動したときを検知レベルA、2〜4個作動したときを検知レベルB、5個全て作動したときを検知レベルCと区別し、検知レベルに応じて乗客コンベアの運転状態を変更する。この検知レベルによる乗客コンベアの運転状態の変更は、乗客コンベアの設置場所や環境、管理者の意向に応じて変更することが可能となっている。一例として、図10に示すように、移動手摺1の表面膨れが徐々に大きくなることを考えると、検知レベルAでは膨れ量(小)、検知レベルBでは膨れ量(大)、検知レベルCでは膨れ量(特大)として発報し、特に膨れ量(特大)となった場合は、インレット24の安全装置が不要動作する危険性が高まるため、ステップS4に示すように乗客コンベアを事前に停止させる処置を行っても良い。なお、これらの検知レベルの発報は乗客コンベアに対して表示または報知するほかに、移動手摺1の表面膨れ検知装置23の制御装置25(図12参照)に通信部を設けておき、当該通信部により公衆回線を通じて保守センターに通報して、保守センサーで常時監視することで、検知レベルの推移によって早期に移動手摺1の表面膨れを判断することができる、必要に応じて、保守員を効率的に手配することも可能となる。
図10のフローチャートについて簡単に説明する。図10のフローチャートは、スイッチ5による膨れの検知が行われ、当該検知結果が制御装置25に入力された場合の、制御装置25の処理の流れを示している。制御装置25は、まず、ステップS1で、検知レベルがCであるか否かを判定する。検知レベルがCであった場合には、ステップS4に進み、乗客コンベアを停止させる。一方、検知レベルがCでない場合には、ステップS2に進む。ステップS2では、検知レベルがBか否かを判定する。検知レベルがBであった場合には、ステップS5に進み、乗客及び/又は保守センターへ膨れ発生を報知する。一方、検知レベルがBでなかった場合には、ステップS3に進む。ステップS3では、検知レベルがAか否かを判定する。検知レベルがAであった場合には、ステップS5に進み、乗客及び/又は保守センターへ膨れ発生を報知する。一方、検知レベルがAでなかった場合には、ステップS1の処理に戻る。なお、図10では、ステップS2で検知レベルがBであった場合とステップS3で検知レベルがAだった場合の後の処理がいずれもステップS5となっているが、これは、異なる処理としてもよい。具体的には、ステップS2で検知レベルがBであった場合には、乗客及び/又は保守センターへ膨れ発生を報知するとともに、保守作業員の派遣を保守センターへ依頼し、ステップS3で検知レベルがAだった場合には、保守センターへ膨れ発生を報知するだけにし、乗客への報知および保守作業員の派遣の要請は行わないようにする等、検知レベルA,Bに応じて異なる処理としてもよい。
このように、本実施の形態では、移動手摺1の表面膨れの起因となっている抗張体3の幅(A)よりも広い幅に表面膨れを検知するスイッチ5を設置することにより、移動手摺1の抗張体3が設けられている範囲のいかなる場所が膨れたとしても確実に検出することが可能となる。また、スイッチ5の検知状態を常時監視することで早期に移動手摺1の表面膨れを判断することができ、乗客コンベアが不要停止する前に保守員を手配して対応することが可能となる。
以上のように、本実施の形態に係る移動手摺表面膨れ検知装置23においては、乗客コンベアの移動手摺1の表面側に配置された複数のスイッチ5と、各スイッチ5を載置したプレート12とを備え、スイッチ5は、移動手摺1の表面に膨れが発生していた場合に、当該膨れに押されて作動するものであって、スイッチ5は、移動手摺1の幅方向に並んで配置され、それらのスイッチ全体の幅方向の設置幅(A)は、移動手摺1の内部に設けられている抗張体3の幅(B)よりも広く、プレート12は、各スイッチ5と移動手摺1の表面との距離が同じになるように、移動手摺1の表面の曲面形状に合わせて各スイッチ5の取り付け面の高さが調整されている。この構成により、移動手摺1の表面膨れの起因となる抗張体3のいかなる場所で表面膨れが発生しても、当該表面膨れが検知可能となる。
また、本実施の形態においては、スイッチ5の作動力に対して、移動手摺1の表面に発生している膨れが凹まない範囲の作動力の最大値を閾値FLとして予め設定しておき、移動手摺1の膨れの検出時にはスイッチ5の作動力を閾値FL以下に設定するようにしたので、移動手摺1に発生した膨れが凹むことなく、移動手摺1の表面膨れを確実に検知することが可能となる。
また、本実施の形態においては、各スイッチ5のうち、作動したスイッチ5の個数に基づく1以上の検知レベルを予め設定しておき、当該検知レベルに応じて乗客コンベアの運転/停止を決定する制御装置25をさらに備えるようにしたので、移動手摺1の表面膨れにより乗客コンベアの不要な停止を防止することが可能となる。
また、本実施の形態においては、移動手摺1に発生した膨れが検出された場合に、当該移動手摺の表面膨れの検知結果を保守センターに通知する通知部をさらに備えるようにしたので、保守員を効率的に手配することが可能となる。
実施の形態2.
図3は本発明の実施の形態2による移動手摺1の表面膨れ検知装置を示す断面図、図4はその側面図である。乗客コンベアおよび移動手摺1の構成は、上述の実施の形態1と同じ構成であるため、ここではそれらの説明を省略する。
本実施の形態に係る移動手摺表面膨れ検知装置23Aは、移動手摺1に対して設置され、移動手摺1の表面膨れを検知するための、単一の凹型の中央くびれ型ローラ14(逆太鼓型ローラ)を備えている。中央くびれ型ローラ14は、後述する回転軸15が通る中央部分は貫通穴になっており、従って、基本的には円筒形を有しているが、図3の断面図に示されるように、僅差ではあるが中央部の外径が両端部よりも小さく、その表面は凹型の曲面表面となっている。当該凹型の曲面表面は、移動手摺1の凸型の曲面表面に対して合致するように相補形になるように形成されている。移動手摺表面膨れ検知装置23Aは、中央くびれ型ローラ14の他に、中央くびれ型ローラ14を移動手摺1の走行方向に回転自在に保持する回転軸15と、中央くびれ型ローラ14を内部に収容するとともに回転軸15を支持するホルダ16と、ホルダ16を介して中央くびれ型ローラ14を移動手摺1の表面に押し付けるばね18と、ばね18の押付力を検知する荷重測定器19と、ばね18及び荷重測定器19を収容するばねホルダ17とを備えている。なお、ばねホルダ17は、図3に示すように、L字型断面を有する取り付けアングル20にボルト21により固定されている。また、取り付けアングル20は、乗客コンベアの構造体10に固設されている。
本実施の形態に係る移動手摺表面膨れ検知装置23Aにおいては、移動手摺1の表面の曲面に合致する中央くびれ型ローラ14が、回転軸15を介して、ホルダ16に対して、移動手摺1の走行方向に自在に回転するように固定されている。ホルダ16の下部には、ばねホルダ17が設けられている。ばねホルダ17内にはばね18と荷重測定器19とが挿入されている。荷重測定器19は、例えば、ロードセルから構成される。ばね18は、取り付けアングル20に取り付けられたボルト21により高さ方向の位置を調整することで、押付力を調整することができる。すなわち、ボルト21は上下方向のスライド機構(図示せず)を備えているため、当該スライド機構に応じて、ホルダ16を移動手摺1に対して近付けるまたは遠ざけることが可能となる。
ここで、本実施の形態においても、移動手摺1の抗張体3の幅方向のいかなる場所で膨れ100(図2参照)が発生しても確実に検知できるようにするために、移動手摺1の幅方向において、移動手摺1の抗張体3の幅(A)よりも中央くびれ型ローラ14の幅(B)の方が広くなっている((A)<(B))。このように、中央くびれ型ローラ14で構成する検知可能となる幅を、抗張体3の幅よりも大きくすることで、移動手摺1の表面膨れの原因となる抗張体3のいかなる場所で表面膨れが発生しても検知可能となる。また、取り付けアングル20は、図4に示すように、ボルト13により、乗客コンベアの構造体10に固定されるが、移動手摺1との取り付け高さを調整できるように、取り付けアングル20のボルト13の取り付け穴は長穴となっている。このように、スイッチ5と移動手摺1との間の距離をボルト13により調整できるようにしたので、スイッチ5と移動手摺1との距離が近すぎる結果、スイッチ5の作動力が強くなりすぎて、スイッチ5の押圧力で膨れがつぶしてしまうので正確に膨れが検知できない、あるいは、スイッチ5と移動手摺1との距離が遠すぎる結果、スイッチ5のローラ8が移動手摺1の表面に密着できず、膨れが発生していても、それを検知できない、等の問題を回避することができ、良好な検知作業を行うことができる。
次に、移動手摺1の表面膨れ検知について説明する。移動手摺1の表面膨れ検知は、図11に示すように、中央くびれ型ローラ14の作動力FSの初期値をF0とすると、中央くびれ型ローラ14の動きに応じて作動力FSは変化する。この作動力FSが検出閾値であるFTを超えたときに、表面膨れが発生しているとして検知する。この検出閾値FTは、表面膨れ検出基準値をδとし、ばね18のばね定数をkとしたとき、FT=δ×kとなる。ここで、表面膨れ検出基準値δは、移動手摺1の外側表面とインレット24の内壁との間の隙間をδ0とすると、当該δ0よりも小さい値になるように設定する(δ<δ0)。その理由は、実施の形態1で説明した通りであるが、移動手摺1の表面が膨れることで懸念される問題として、図12に示す移動手摺1がインレット24から構造体10内部に入り込むが、移動手摺1に膨れ100が発生していて、当該膨れ100の膨れ量が表面膨れ検出基準値δよりも大きくなると、インレット24にある安全装置が動作し、乗客コンベアが急停止することから、膨れ量に対する表面膨れ検出基準値δは、隙間δ0よりも小さく、且つ、安全装置が作動しない範囲に設定する(δ<δ0)。
本実施の形態においては、上述したとおり、中央くびれ型ローラ14が押されることで、膨れを検知する。このとき、図8に示すように、実際の移動手摺1の表面膨れ量xがXLであったとすると、中央くびれ型ローラ14の作動力FSが作動力閾値FL以下の間は、移動手摺1の表面膨れ量xが、検知すべき膨れ検出基準値δに到達しているか否かを確実に検出することができるが、中央くびれ型ローラ14の作動力FSが作動力閾値FLよりも大きくなった場合、移動手摺1の表面膨れが中央くびれ型ローラ14で押されて凹んでしまうことから、移動手摺1の表面膨れ量xが、検知すべき膨れ検出基準値δに到達しているか否かを確実に検出することが困難になる。そのため、中央くびれ型ローラ14の作動力FSは、移動手摺1の表面膨れが凹まない作動力閾値FL以下となるように設定(FS≦FL)する。従って、作動力FSが、検出閾値FT以上で、且つ、作動力閾値FL以下の範囲が、表面膨れ検知可能範囲となる(FT≦FS≦FL)。
よって、ばね18のばね定数kは、初期の押付力F0としたとき、k≦(FL−F0)/δと設定する必要がある。ここで、作動力閾値FLは0.5[N]程度以下が望ましい。なお、中央くびれ型ローラ14の変位を作動力FSの変化で検知しているが、中央くびれ型ローラ14の変位を直接検知しても構わない。さらに、ばね18の代わりに、中央くびれ型ローラ14が表面膨れ検出基準値δだけ移動したときに作動するスイッチをホルダ16の下部に設置しても良い。
このように、移動手摺1の表面膨れの起因となっている抗張体3の幅(A)よりも広い幅に表面膨れを検知する中央くびれ型ローラ14を設置することにより、移動手摺1のいかなる場所が膨れたとしても確実に検出することが可能となる。
以上のように、本実施の形態に係る移動手摺表面膨れ検知装置23Aにおいては、乗客コンベアの移動手摺1の表面の曲面形状に合致する相補形の表面形状を有し、相補形の表面を移動手摺1の表面に合致させて配置される中央くびれ型ローラ14と、中央くびれ型ローラ14を移動手摺1の走行方向に回転自在に保持する回転軸15と、回転軸15を支持するホルダ16と、ホルダ16を介して中央くびれ型ローラ14を移動手摺1の表面に押し付けるばね18と、ばね18を収納するばねホルダ17と、ばね18の押付力を検知することで移動手摺1に発生している膨れを検出する荷重測定器19とを備え、移動手摺1の幅方向において、中央くびれ型ローラ14の幅は、移動手摺1の内部に設けられている抗張体3の幅よりも大きい。この構成により、移動手摺1の表面膨れの起因となる抗張体3のいかなる場所で表面膨れが発生しても検知可能となる。
また、本実施の形態においては、移動手摺1の表面に発生している膨れが凹まない範囲のばね18の押付力の最大値を閾値FLとして予め設定しておき、移動手摺1の膨れの検出時には、ばね18の押付力は閾値FL以下に設定される。この構成により、移動手摺1の表面膨れを確実に検知することが可能となる。
また、本実施の形態においては、荷重測定器19は、移動手摺1に発生する膨れの検出すべき膨れ量の表面膨れ検出基準値をδとし、ばね18のばね定数をkとしたとき、ばね18の押付力が初期値F0から表面膨れ検出基準値δとばね定数kとの積k×δが増加したときに、移動手摺1の膨れを検知したと判定する。この構成により、移動手摺1の表面膨れを荷重値で検出することが可能となる。
また、本実施の形態において、移動手摺1に発生した膨れが検出された場合に、当該移動手摺1の表面膨れの検知結果を保守センターに通知する通知部をさらに備えるようにすれば、保守員を効率的に手配することが可能となる。
実施の形態3.
図5は本発明の実施の形態3による移動手摺の表面膨れ検知装置を示す断面図、図6はその側面図、図7は上面から見た図である。乗客コンベアおよび移動手摺1の構成は、上述の実施の形態1と同じ構成であるため、ここではそれらの説明を省略する。
本実施の形態に係る移動手摺表面膨れ検知装置23Bは、移動手摺1に対して設置され、移動手摺1の表面膨れを検知するための凸型の中央ふくれ型ローラ22(太鼓型ローラ)を複数個備えている。中央ふくれ型ローラ22は、後述する回転軸15が通る中央部分は貫通穴になっており、従って、基本的には円筒形を有しているが、図5の断面図に示されるように、僅差ではあるが中央部の外径が両端部よりも大きく、その表面は凸型の曲面表面となっている。移動手摺表面膨れ検知装置23Bは、さらに、中央ふくれ型ローラ22を移動手摺1の走行方向に回転自在に保持する回転軸15と、中央ふくれ型ローラ22を内部に収容するとともに回転軸15を支持するホルダ16と、ホルダ16を介して中央ふくれ型ローラ22を移動手摺1の表面に押し付けるばね18と、ばね18の押付力を検知する荷重測定器19と、ばね18及び荷重測定器19を収容するばねホルダ17とを備えている。なお、ばねホルダ17は、図5に示すように、L字型断面を有する取り付けアングル20にボルト21により固定されている。また、取り付けアングル20は、乗客コンベアの構造体10に固設されている。
本実施の形態においては、図6および図7に示されるように、回転軸15が複数個設けられている(これらの図では、回転軸15は4本)。移動手摺1の表面膨れ検知装置23Bにおいては、複数の中央ふくれ型ローラ22が移動手摺1の幅方向に配置され、これらの中央ふくれ型ローラ22は、複数の回転軸15のうちのいずれか1つを介して、移動手摺1の走行方向に自在に回転するように、ホルダ16に固定されている。複数の中央ふくれ型ローラ22の移動手摺1の表面に対する配置は、移動手摺1の抗張体3の幅方向のいかなる場所で膨れが発生しても確実に検知することができるようにするため、中央ふくれ型ローラ22と移動手摺1の表面の隙間が全て同じとなるように、ホルダ16に対する各々の回転軸15の高さが異なるように配置されている。すなわち、図5に示すように、移動手摺1の表面形状は、外側に向けて凸面の曲面表面となっており、従って、中央部分が端部によりも突出している。そのため、回転軸15の取り付け位置を、この移動手摺1の表面形状に合わせて、中央部分が最も低く、端部に向けて、段階的に(階段式に)、高くなっている。こうすることで、中央ふくれ型ローラ22の作動距離が同じになり、中央ふくれ型ローラ22が移動手摺1を押す作動力は、全ての中央ふくれ型ローラ22で同じとなる。また、中央ふくれ型ローラ22として、同型のものが使用できるため、製造コストも抑えることができる。なお、このように回転軸15の取り付け位置を変化させる場合に限らず、ホルダ16に対する各々の回転軸15の高さは同じとし、各々の中央ふくれ型ローラ22の直径を変更することでも構わない。
また、複数の中央ふくれ型ローラ22の移動手摺1の走行方向に対する配置は、各々の中央ふくれ型ローラ22が互いに干渉しないように、図7に示す通り、千鳥配置にしている。これにより、移動手摺表面膨れ検知装置23Bの小型化が図れる。ただし、中央ふくれ型ローラ22の配置は、図7に示すものに限定されることなく、周辺機器との関係を考えて適宜変更しても構わない。図7の配置について説明すると、移動手摺1の幅方向に4つの回転軸15が架け渡されている。それらの回転軸15に対して、1または2つの中央ふくれ型ローラ22が配設されている。各中央ふくれ型ローラ22の配置位置は、移動手摺1の幅方向および進行方向の両方において、互いに完全に重なることがないように、シフトして、ずらして配置されている。ただし、図7に示すように、中央ふくれ型ローラ22同志が、幅方向または進行方向のいずかにおいて完全に重なることがなければよく、互いに干渉しないのであれば、若干の重なりが発生していることが望ましい。その理由は、幅方向または進行方向のいずかにおいて、中央ふくれ型ローラ22のいずれもが接触しない位置があると、その位置で発生した膨れに関しては検出できなくなるからである。従って、中央ふくれ型ローラ22は、移動手摺1の抗張体3の幅を網羅するように互いに少しずつ重なりあいながら、且つ、互いに干渉しないように、千鳥配置されている。このように、本実施の形態においても、移動手摺1の抗張体3の幅方向のいかなる場所で膨れが発生しても確実に検知できるようにするため、移動手摺1の抗張体3の幅(A)よりも、複数の中央くびれ型ローラ22の設置幅(B)の方が広くなっている。
上述したように、ホルダ16の下部には、ばねホルダ17があり、ばねホルダ17内には、ばね18とその押付力を検知する荷重測定器19とが挿入されている。また、ばね18は、取り付けアングル20に取り付けられたボルト21の上下方向のスライド機構(図示せず)により、その位置を調整することで、押付力が調整できる。ボルト21は上下方向にスライドできるため、ホルダ16を移動手摺1に対して近付けたりあるいは遠ざけたりすることができる。さらに、取り付けアングル20は、図6に示すように、ボルト13により、乗客コンベアの構造体10に固定されるが、移動手摺1との取り付け高さを調整できるように、取り付けアングル20のボルト13の取り付け穴は長穴となっている。このように、中央ふくれ型ローラ22と移動手摺1との間の距離をボルト13により調整できるようにしたので、中央ふくれ型ローラ22と移動手摺1との距離が近すぎる結果、中央ふくれ型ローラ22を配置したホルダ16の作動力が強くなりすぎて、中央ふくれ型ローラ22を配置したホルダ16の押圧力で膨れがつぶしてしまうので正確に膨れが検知できない、あるいは、中央ふくれ型ローラ22と移動手摺1との距離が遠すぎる結果、中央ふくれ型ローラ22が移動手摺1の表面に密着できず、膨れが発生していても、それを検知できない、等の問題を回避することができ、良好な検知作業を行うことができる。
次に、移動手摺1の表面膨れ検知について説明する。移動手摺1の表面膨れ検知は、図11に示すように、中央ふくれ型ローラ22を配置したホルダ16の作動力FSの初期値をF0とすると、中央ふくれ型ローラ22の動きに応じて作動力FSは変化する。この作動力FSが検出閾値であるFTを超えたときに、表面膨れが発生しているとして検知する。この検出閾値FTは、表面膨れ検出基準値δ、ばね18のばね定数kとしたとき、FT=δ×kとなる。ここで、表面膨れ検出基準値δは、移動手摺1の外側表面とインレット24の内壁との間の隙間をδ0とすると、当該δ0よりも小さい値になるように設定する(δ<δ0)。その理由は、実施の形態1で説明した通りであるが、移動手摺1の表面が膨れることで懸念される問題として、図12に示す移動手摺1がインレット24から構造体10内部に入り込むときに、移動手摺1に膨れ100が発生していて、当該膨れ100の膨れ量がインレット24との隙間δ0よりも大きくなると、インレット24にある安全装置が動作し、乗客コンベアが急停止することから、膨れ量に対する表面膨れ検出基準値δは、隙間δ0よりも小さく、且つ、安全装置が作動しない範囲に設定する(δ<δ0)。
本実施の形態においては、上述したとおり、中央ふくれ型ローラ22が押されることで、膨れを検知する。このとき、図8に示すように、実際の移動手摺1の表面膨れ量xがXLであったとすると、中央ふくれ型ローラ22を配置したホルダ16の作動力FSが作動力閾値FL以下の間は、移動手摺1の表面膨れ量xが、検知すべき膨れ検出基準値δに到達しているか否かを確実に検出することができるが、中央ふくれ型ローラ22を配置したホルダ16の作動力FSが作動力閾値FLよりも大きくなった場合、移動手摺1の表面膨れが中央ふくれ型ローラ22で押されて凹んでしまうことから、移動手摺1の表面膨れ量xが、検知すべき膨れ検出基準値δに到達しているか否かを確実に検出することが困難になる。そのため、中央ふくれ型ローラ22を配置したホルダ16の作動力FSは、移動手摺1の表面膨れが凹まない作動力閾値FL以下となるように設定(FS≦FL)する。従って、作動力FSが、検出閾値FT以上で、且つ、作動力閾値FL以下の範囲が、表面膨れ検知可能範囲となる(FT≦FS≦FL)。
よって、ばね18のばね定数kは、移動手摺1と接触する中央ふくれ型ローラ22が1個となる場合を考慮して、初期の押付力F0としたとき、k≦(FL−F0)/δと設定する必要がある。ここで、作動力閾値FLは0.5[N]程度以下が望ましい。なお、中央ふくれ型ローラ22を配置したホルダ16の変位を作動力FSの変化で検知しているが、ホルダ16の変位を直接検知しても構わない。さらに、ばね18の代わりに、ホルダ16が表面膨れ検出基準値δだけ移動したときに作動するスイッチをホルダ16の下部に設置しても良い。
このように、移動手摺1の表面膨れの起因となっている抗張体3の幅(A)よりも広い幅に表面膨れを検知する中央ふくれ型ローラ22を設置することにより、移動手摺1のいかなる場所が膨れたとしても確実に検出することが可能となる。
以上のように、本実施の形態に係る移動手摺表面膨れ検知装置23Bにおいては、乗客コンベアの移動手摺1の表面側に配置された複数の中央ふくれ型ローラ22と、中央ふくれ型ローラ22を移動手摺1の走行方向に回転自在に保持する複数の回転軸15と、回転軸15を支持するホルダ16と、ホルダ16を介して中央ふくれ型ローラ22を移動手摺1の表面に押し付けるばね18と、ばね18を収納するばねホルダ17と、ばね18の押付力を検知することで移動手摺1の表面に発生している膨れを検知する荷重測定器19とを備え、移動手摺1の幅方向において、中央ふくれ型ローラ22全体の設置幅(B)は、移動手摺1の内部に設けられている抗張体3の幅(A)よりも大きく、ホルダ16は、中央ふくれ型ローラ22と移動手摺1の表面との距離が同じになるように、移動手摺1の表面の曲面形状に合わせて、回転軸15の取り付け位置の高さが調整されている。この構成により、移動手摺1の表面膨れの起因となる抗張体3のいかなる場所で表面膨れが発生しても検知可能となる。
また、本実施の形態によれば、移動手摺1の表面に発生している膨れが凹まない範囲のばね18の押付力の最大値を閾値FLとして予め設定しておき、移動手摺1の膨れの検出時には、ばね18の押付力は閾値FL以下に設定される。この構成により、移動手摺1の表面膨れを確実に検知することが可能となる。
また、本実施の形態によれば、荷重測定器19は、移動手摺1に発生する膨れの検出すべき膨れ量に対する表面膨れ検出基準値をδとし、ばね18のばね定数をkとしたとき、ばね18の押付力が初期値F0から表面膨れ検出基準値δとばね定数kとの積k×δが増加したときに、移動手摺1の膨れを検知したと判定する。この構成により、移動手摺1の表面膨れを荷重値で検出することが可能となる。
また、本実施の形態において、移動手摺1に発生した膨れが検出された場合に、当該移動手摺1の表面膨れの検知結果を保守センターに通知する通知部をさらに備えるようにすれば、この構成により、保守員を効率的に手配することが可能となる。
なお、上記の実施の形態1〜3においては、乗客コンベアとして、エスカレータを例に挙げて説明しているが、その場合に限らず、この発明は、移動歩道などの移動手摺を有する他の乗客コンベアにも適用可能であることは言うまでもない。