JP6324057B2 - 電子放出素子および電子放出装置 - Google Patents

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Description

本発明は、電子放出素子および電子放出装置に関する。
従来の電子放出素子として、スピント(Spindt)型電極、カーボンナノチューブ(CNT)型電極などが知られており、例えば、電界放出ディスプレイ(FED:Field Emission Display)の分野への応用が期待されている。このような電子放出素子は、突出した先鋭形状部に電圧を印加して約1GV/mの強電界を形成し、トンネル効果により電子を放出させる。
しかしながら、上述した2種類の電子放出素子は、電子放出部の表面近傍が強電界であるため、放出された電子は、電界により大きなエネルギーを得て気体分子を電離しやすくなる。気体分子の電離によって生じた陽イオンは、強電界によって加速し、電子放出素子の表面に衝突して、スパッタリングによる電子放出素子の破壊を生じさせるという問題があった。
また、大気中にある酸素は、電離エネルギーよりも解離エネルギーの方が低いため、イオンの発生よりも先にオゾンを発生させる。オゾンは、人体に有害である上に、強い酸化力によって様々なものを酸化することから、電子放出素子の周辺の部材にダメージを与えるという問題があった。その結果、周辺部材に耐オゾン性を有する高価な材料を用いなければならない。
上述したスパッタリングによる素子の破壊や、オゾンの発生といった問題に対する技術として、MIM(Metal Insulator Metal)型やMIS(Metal Insulator Semiconductor)型の電子放出素子が知られている。これらの電子放出素子は、内部の強電界および量子サイズ効果を利用して電子を加速し、平面状の素子表面から電子を放出させる。つまり、素子外部に強電界を形成しないため、スパッタリングやオゾンの発生といった問題を克服できる。
また、上述した問題に対し、大気中でも安定した電子を放出でき、オゾンやNOX等の有害物質の発生を抑制できる電子放出素子が開発されている。例えば、対向して設けられた電極間に、電子を加速する電子加速層を備えた電子放出素子が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
特許第4990380号
特許文献1に記載の電子放出素子101は、図8に示すように、第1電極102と、第1電極102上に形成され、開口部103aを有する絶縁層103と、絶縁層103上に形成され、開口部103aを挟んで第1電極102と対向するとともに、一部が絶縁層103と重なるように配置された第2電極105と、第1電極102と第2電極105と絶縁層103との間に配置され、絶縁性微粒子および導電性微粒子で構成された微粒子層104とを備えている。また、電子放出素子101には、第1電極102と第2電極105の上に設けられた配線電極106とに接続された電源111と、第1電極102と電源111との間に接続され接地された接地電源112とを備えている。第2電極105は、電子放出素子101の表面を覆っており、その役割は、電子を放出する領域となる電子放出電極と、素子の厚さ方向に電流を流さず電子の供給路となる給電電極とに分かれる。給電電極は、下層に絶縁層が積層された領域に相当する。
現状では、電子放出素子101の電子放出効率(電子放出に寄与しない素子内を通過する電流量に対する電子放出電流の百分率)は、初期に0.02〜0.1%程度であるが、数百時間の駆動で0.002%程度まで低下してしまう。このため、多量の電子を長期間放出する場合には、電子放出に寄与しない素子内電流は増加する傾向にあり、それに伴うジュール熱によって素子全体が大きく発熱する。例えば、20Vの電圧で駆動し、20μAの電子放出電流を得る場合、素子の消費電力量は、最大20Wに達する。
ところで、上述した電子放出素子101の絶縁層103は、第1電極102に対して垂直な端面を有する開口部103aとされている。絶縁層103の上に積層された微粒子層104は、開口部103aの端部に厚く積み上がるように成膜されている。そして、電子放出に伴うジュール熱は、構成材料、特に、微粒子層104の線膨張係数の違いから、厚く積み上がった部分を集中的に変形させる。その結果、微粒子層104の上に薄く積層された第2電極105は、微粒子層104の変形した部分の歪みに追従できず、電子放出電極と給電電極との間で断裂してしまう。このため、長期間の電子放出を維持できなくなるという問題がある。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、熱膨張による電子放出素子の破損が防止され、長時間駆動を実現することができる電子放出素子および電子放出装置を提供することを目的とする。
本発明に係る電子放出素子は、第1電極と、前記第1電極の上に形成され、開口部が設けられた絶縁層と、前記絶縁層の上に形成され、前記開口部を介して前記第1電極に接する中間層と、前記中間層の上に形成された第2電極と、前記第2電極の上に形成され、該第2電極の外周に沿って設けられた給電電極とを備え、前記第1電極と前記第2電極との間に電圧を印加することによって、前記第2電極から電子を放出させる電子放出素子であって、前記第2電極は、一部が前記絶縁層の上の領域に配置されており、前記絶縁層は、前記開口部の周縁部が開口端部に向かうに従って前記第1電極側へ傾斜した傾斜部とされ、前記給電電極は、前記開口部を囲むように形成されていることを特徴とする。
本発明に係る電子放出素子では、前記中間層は、シリコーン樹脂で形成されている構成としてもよい。
本発明に係る電子放出素子では、前記傾斜部は、前記第1電極に対して10度から50度の範囲内で傾斜している構成としてもよい。
本発明に係る電子放出素子では、前記第2電極の上に形成され、該第2電極の外周に沿って設けられた給電電極を備える構成としてもよい。
本発明に係る電子放出素子では、前記開口部は、複数設けられており、前記給電電極は、前記第2電極の外周に設けられた外周部と、前記外周部から延伸され、隣接する前記開口部の間に位置する前記絶縁層の上の領域に設けられた延伸部とを備える構成としてもよい。
本発明に係る電子放出素子では、前記絶縁層は、二酸化珪素、酸化アルミニウム、または有機ポリマーで形成されている構成としてもよい。
本発明に係る電子放出装置は、本発明に係る電子放出素子と、前記第1電極および前記第2電極に接続された電源とを備えることを特徴とする。
本発明によると、絶縁層の端部に傾斜部を設けることによって、開口部周縁の中間層の熱変形による膨張が広域に分散され、中間層の上に設けられた第2電極の断裂を抑制することができる。その結果、熱膨張による電子放出素子の破損が防止され、長時間駆動を実現することができる。
本発明の第1実施形態に係る電子放出素子の概略断面図である。 図1Aに示す電子放出素子の上面図である。 本発明の第1実施形態に係る電子放出素子の製造工程(第1工程)を示す概略断面図である。 図2Aに示す電子放出素子の製造工程を示す上面図である。 図2Aに示す電子放出素子の傾斜部近傍の拡大断面図である。 本発明の第1実施形態に係る電子放出素子の製造工程(第2工程)を示す概略断面図である。 図4Aに示す電子放出素子の製造工程を示す上面図である。 本発明の第1実施形態に係る電子放出素子の製造工程(第3工程)を示す概略断面図である。 図5Aに示す電子放出素子の製造工程を示す上面図である。 本発明の第2実施形態に係る電子放出素子の上面図である。 本発明の第3実施形態に係る電子放出素子の上面図である。 従来の電子放出素子の概略断面図である。
以下、本発明の第1実施形態に係る電子放出素子について、図面を参照して説明する。
図1Aは、本発明の第1実施形態に係る電子放出素子の概略断面図であり、図1Bは、図1Aに示す電子放出素子の上面図である。なお、図1Aは、図としての見易さを考慮して、ハッチングは省略する。
本発明の第1実施形態に係る電子放出素子1は、第1電極2と、第1電極2の上に形成され、開口部3aが設けられた絶縁層3と、絶縁層3の上に形成され、開口部3aを介して第1電極2に接する中間層4と、中間層4の上に形成された第2電極5とを備えている。第2電極5は、一部が絶縁層3の上の領域に配置されており、絶縁層3は、開口部3aの周縁部が開口端部に向かうに従って第1電極2側へ傾斜した傾斜部3bとされている。電子放出素子1は、第1電極2と第2電極5との間に電圧を印加することによって、第2電極5から電子を放出させる。
この構成によると、絶縁層3の開口端部に傾斜部3bを設けることによって、開口部3a周縁の中間層4の熱変形による膨張が広域に分散され、中間層4の上に設けられた第2電極5の断裂を抑制することができる。その結果、熱膨張による電子放出素子1の破損が防止され、長時間駆動を実現することができる。
また、電子放出素子1は、第2電極5の上に形成され、第2電極5の外周に沿って設けられた給電電極6を備えている。この構成によると、給電電極6を設けることで、第2電極5の全面に亘って均一な電圧を印加することができる。つまり、第1電極2と第2電極5との間に電圧を印加する際、電源11は、給電電極6を介して第2電極に接続されている。なお、第1電極2と電源11との間には、接地された接地電源12が接続されている。
つまり、電子放出素子1は、基板となる第1電極2の上に、絶縁層3、中間層4、第2電極5、および給電電極6が順に積層されている。そこで、電子放出素子1の製造工程に合わせて、各部の詳細を説明する。
図2Aは、本発明の第1実施形態に係る電子放出素子の製造工程(第1工程)を示す概略断面図であり、図2Bは、図2Aに示す電子放出素子の製造工程を示す上面図である。
先ず、第1電極2の表面に絶縁層3が形成される。具体的には、第1電極2は、アルミニウム基板である。なお、これに限定されず、第1電極2は、金属などの導電性を有する材料で形成されていればよい。第1電極2として、例えば、珪素、ガリウム、およびガリウム砒素等の半導体基板を用いてもよい。また、表面に金属膜が形成されたガラス基板やプラスティック基板等を用いることもできる。
絶縁層3は、アルミニウムの金属酸化膜である酸化アルミニウム(Al23)で形成され、膜厚を2〜5μmとされている。絶縁層3は、アルミニウム基板の表面に陽極酸化処理によって形成され、開口部3aを設けてパターニングし、苛性ソーダを用いてエッチング処理を行うことで、第1電極2であるアルミニウムを露出させる。そして、エッチング処理によって、傾斜部3bが形成される。本実施の形態では、上面視において、電子放出素子1の中央に設けられた矩形状の開口部3aによって第1電極2が露出され、外周に絶縁層3が設けられている。そして、絶縁層3と第1電極2との境界には傾斜部3bが設けられている。
傾斜部3bは、図3の傾斜部近傍の拡大断面図に示すように、第1電極2に対して傾斜角DAで傾斜した順テーパ形状とされている。すなわち、図8に示した従来の電子放出素子101においては、第1電極102に対して垂直な端面を有する開口部103aとされており、開口部103aと絶縁層104との境界で大きな段差ができていた。しかしながら、本願発明では、傾斜部3bを設けることで、開口部3aの端面が緩やかに傾斜し、急峻な段差を無くした構造としている。傾斜角DAは、10度から50度の範囲内とするのが望ましく、本実施の形態では、10度とされている。この構成によると、中間層4の熱膨張の抑制に最適な傾斜部3bとすることができる。つまり、傾斜部3bの傾斜を小さくすると、電子放出に関与しない傾斜部3bの面積が大きくなり、電子放出効率が低下するため、10度以上傾斜させることが望ましい。また、傾斜部3bの傾斜が50度を超えると、絶縁層3端部の変形集中が緩和されず、第2電極5に亀裂が生じてしまう。なお、図面においては、図としての見易さを考慮して、傾斜角DAを強調して図示しているが、予め設定された適切な角度とされていれば良い。
なお、絶縁層3は、感光性アクリル樹脂などの有機ポリマーや酸化珪素で形成されていてもよい。アクリル樹脂で形成した場合、絶縁層3の膜厚は、1.5〜2μm程度とするのが望ましい。つまり、上述した材料で形成することによって、絶縁層3の絶縁性を向上させることができる。
また、本実施の形態では、傾斜部3bは、直線的に傾斜した構造としたが、これに限定されず、曲線状や段階的に傾斜した構造としてもよい。なお、第1電極2と傾斜部3bとの境界近傍において、絶縁層3は、傾斜部3bが裾を引くように、非常に薄い部分が形成されることがあるが、ある程度の膜厚が確保されていないと絶縁することができない。そのため、非常に薄い部分は、絶縁層3に含まず、図示していない。
図4Aは、本発明の第1実施形態に係る電子放出素子の製造工程(第2工程)を示す概略断面図であり、図4Bは、図4Aに示す電子放出素子の製造工程を示す上面図である。
図4Aでは、図3Aに示す状態に対して、開口部3aを介して第1電極2に接する中間層4が絶縁層3の上に形成されている。中間層4は、電子放出素子1全体に積層されており、絶縁性微粒子および導電性微粒子を含んだシリコーン樹脂で形成されている。具体的には、中間層4は、絶縁性微粒子と導電性微粒子とが結着材であるシリコーン樹脂で固着されている。つまり、シリコーン樹脂を用いることによって、中間層4の機械的強度を向上させることができ、電子放出に起因する電流生成が優位に働く。中間層4は、膜厚が300〜1000nmとされている。膜厚が薄くなると、膜厚不良による電気的短絡が発生しやすい。また、膜厚が厚くなると、膜厚のばらつきによる電子放出点の偏りが生じやすくなる。
絶縁性微粒子は、二酸化珪素(SiO2)で形成された微粒子である。絶縁性微粒子の材料は、これに限らず、絶縁性を有し、かつ、電子トラップとして機能する適当な表面準位を有する材料であればよく、酸化アルミニウムおよび二酸化チタンを主成分とすればよい。絶縁性微粒子として、絶縁性が高い材料を用いることで中間層4の抵抗値を所望の値に調整することができる。また、絶縁性微粒子が有する電子トラップは、エネルギー障壁となって電界電子放出の種になると考えられるため、絶縁性微粒子の材料としては、非晶質の構造が好ましい。
絶縁性微粒子は、平均粒径が50nmである。なお、平均粒径は、電子顕微鏡で撮影した所定個数の各粒子における、円相当径の算術平均値である。絶縁性微粒子は、平均粒径が10〜1000nmであるものが好ましく、10〜200nmであるものがより好ましい。平均粒径が10nmよりも小さいと、粒子間に働く力が強いために粒子が凝集し易く、中間層4内での分散が困難になる。また、平均粒径が1000nmよりも大きいと、分散性は良いものの、中間層4は、空隙が大きくなり抵抗値の調整が困難になる。さらに、中間層4の表面の凹凸は、中間層4に形成される電界強度に不均一を生じさせる。中間層4に凹部が形成された場合、局所的な強電界の部分を形成するので、導電路が集中してしまう傾向がある。この状態が顕著になると、電子放出点が凹部に集中し、一様な電子放出を維持することができなくなる。この現象を緩和させるために、絶縁性微粒子の平均粒径を200nmより小さくすることが好ましい。絶縁性微粒子は、粒径の分散状態が平均粒径に対してブロードであってもよく、例えば、平均粒径が50nmの微粒子は、20〜100nmの範囲にその粒径が広く分布していてもよい。このような分散状態であっても、絶縁性微粒子の粒径は、上述した平均粒径の範囲を満たせばよい。
導電性微粒子は、銀から形成されているが、これに限らず、電子放出素子1が大気中で酸化して劣化するのを防ぐために、貴金属を用いて形成されるのが好ましい。導電性微粒子の材料として、例えば、金、白金、パラジウム、またはニッケルを主成分とする金属材料を適用することができる。このような導電性微粒子は、公知の微粒子製造技術であるスパッタ法や噴霧加熱法を用いて形成することができる。
導電性微粒子は、平均粒径が10nmであって、中間層4の導電性を制御するために、絶縁性微粒子よりも小さい平均粒径とされている。したがって、導電性微粒子は、平均粒径が3〜20nmであるものが好ましい。導電性微粒子は、絶縁性微粒子よりも小さい平均粒径とすることによって、中間層4内で、導電性微粒子による導電パスが形成されず、絶縁破壊が起こり難くなる。平均粒径が3nmよりも小さいと、凝集力が強すぎるため、粒径を維持することができない。また、平均粒径が20nmよりも大きいと、絶縁性微粒子との質量差によって、成膜時に導電性微粒子が沈降し、導電性微粒子の分散状態を維持することが難しくなる。
図5Aは、本発明の第1実施形態に係る電子放出素子の製造工程(第3工程)を示す概略断面図であり、図5Bは、図5Aに示す電子放出素子の製造工程を示す上面図である。
図5Aでは、図4Aに示す状態に対して、中間層4の上に第2電極5がスパッタ法で形成されている。第2電極5は、金属薄膜であって、大気中での酸化が抑制される材料で形成されていれば良く、例えば、金やパラジウムを用いることができる。第2電極5は、第1電極2と短絡しないように、中間層4よりも突出しないように積層されている。具体的には、第2電極5は、上面視において、開口部3aおよび傾斜部3bを覆い、傾斜部3b周縁の絶縁層3と重なる領域に形成されている。
第2電極5の膜厚は、15〜100nmとされており、外部へ電子を効率よく放出するための重要なパラメータである。膜厚が15nm以上であれば、電極として充分な導電性を確保できる。また、膜厚が100nmより大きいと、電子放出量が極端に減少してしまう。電子放出量は、第2電極5が電子を吸収または反射することで、電子の放出効率を低下させるために、減少すると考えられる。
その後、上述した図1Aおよび図1Bに示すように、第2電極5の上に給電電極6を形成する。給電電極6は、アルミニウムで形成され、膜厚が300〜500nmとされている。給電電極6は、上面視において(上述した図1B参照)、第2電極5の外周であって傾斜部3bと重ならない領域に設けられており、開口部3aを囲むように環状に形成された外周部6aで構成されている。また、給電電極6は、第1電極2と短絡しないように、中間層4よりも突出せず、第2電極5と中間層4との両方に重ねて積層されている。
以上の工程を経て、図1Aおよび図1Bに示す電子放出素子1が形成される。電子放出素子1では、給電電極6(第2電極5)を正極電位として、給電電極6と第1電極2との間に電圧が印加される。そして、第1電極2から供給される電子は、中間層4を通過して第1電極2へ移動する際に何らかのエネルギー(仕事関数)が与えられ、第2電極5から外部の空間へ放出される。電子放出に至る現象は、中間層4を流れる電流によるジュール熱と、中間層4内に形成される局所的な強電界領域とによって生じると予想されている。
一般的に、電子が固体内部から外部へ放出される物理機構として、熱電子放出、光電子放出、電界電子放出、および2次電子放出などが知られている。熱電子放出は、フェルミ準位と真空準位とのエネルギー障壁に相当するエネルギーを、熱により与えることで、電子を真空中に放出させる現象である。また、電界電子放出(冷電界電子放出)は、金属表面と真空との間に形成される電界強度を1×109V/m程度とし、エネルギー障壁を非常に薄くすることで、室温程度でもトンネル効果により、電子を真空中へ放出させる減少である。電子放出素子1の電子放出機構は、熱電子放出と電界電子放出とが混交した熱電界放出であると考えられている。すなわち、ジュール熱による見かけ上の仕事関数の低下と、強電界によるエネルギー障壁の低下およびトンネル現象とが合わさって、電子放出に至ると考えられる。
上述したように、中間層4は、シリコーン樹脂で形成されているが、線膨張係数が25〜30×10-5/℃であり、他の層の材料と比べて突出して大きな値となっている。例えば、第1電極2を構成するアルミニウムは2.3×10-5/℃であり、絶縁層3を構成するアクリル樹脂は5〜9×10-5/℃であり、第2電極5を構成する金は1.4×10-5/℃である。そして、電子放出素子1を駆動した際に発生するジュール熱によって熱膨張が生じるが、シリコーン樹脂で形成された中間層4の熱膨張は、他の層より突出しているため、電子放出素子1に歪みが生じる。しかしながら、本実施の形態では、傾斜部3bを設けることでこの問題を解決している。
上述した第1実施形態では、開口部3aが1つとされていたが、これに限定されず、開口部3aを複数設けた構造としてもよい。次に、複数の開口部3aを備えた第2実施形態および第3実施形態について、図面を参照して説明する。
図6は、本発明の第2実施形態に係る電子放出素子の上面図である。なお、第1実施形態と機能、構造が実質的に等しい構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
第2実施形態では、開口部3aは、複数設けられており、給電電極6は、第2電極5の外周に設けられた外周部6aと、外周部6aから延伸され、隣接する開口部3aの間に位置する絶縁層3の上の領域に設けられた延伸部6bとを備える構成とされている。この構成によると、開口部3aを複数設けることで、電子が放出される領域を分散し、広範囲に亘って均一に電子を放出することができる。また、延伸部6bを設けることで、外周部6aから離間した領域にも安定した電流を供給することができる。
具体的には、第2実施形態では、電子放出素子1は、2つの開口部3aが並べて(図では、左右に並べて)設けられており、第2電極5は、2つの開口部3aの間に設けられた絶縁層3の上の領域にも設けられている。つまり、2つの開口部3aを覆うように、第2電極5は一体に形成されている。給電電極6は、第1実施形態と同様に、環状の外周部6aが設けられており、さらに延伸部6bを備えている。延伸部6bは、並べて配置された開口部3aの間の領域を通って、外周部6aの側辺(図では、上方)と対向する他辺(図では、下方)とを接続するように設けられている。
図7は、本発明の第3実施形態に係る電子放出素子の上面図である。なお、第1実施形態および第2実施形態と機能、構造が実質的に等しい構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
第3実施形態では、第2実施形態と同様に、複数の開口部3aが設けられているが、第2実施形態より多くの開口部3aが設けられている。具体的には、開口部3aは、略マトリクス状に並べて配置されており、延伸部6bに対応する領域は、開口部3aが省かれている。なお、開口部3aの配置については、これに限定されず、第2電極5に覆われる位置であれば、適宜離散して配置することができる。延伸部6bは、並べて配置された開口部3aの間の領域を通って、外周部6aの端部(図では、右上)と対向する端部(図では、左下)とを接続する直線状に形成されている。
なお、延伸部6bは、電子の放出に影響しない絶縁層3の上の領域であれば、どのような経路を通るように設定しても良く、電子放出素子1の中央を通るように設ければ、給電電極6から大きく離間した開口部3aを無くすことができ、素子全体に安定した電流を供給することができる。また、給電電極6の形状は、適宜設定することができ、複数の延伸部6bを設けたり、分岐した延伸部6bを設けたりしてもよい。
上述した本発明の第1実施形態ないし第3実施形態に係る電子放出素子1は、第1電極2および第2電極5に電源11を接続することで、電子放出装置として機能させることができる。
なお、今回開示した実施の形態は全ての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。従って、本発明の技術的範囲は、上記した実施の形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれる。
本発明に係る電子放出素子は、長期にわたって連続して駆動できる。よって、例えば、電子写真方式の複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置の帯電装置や、電子線硬化装置、あるいは発光体と組み合わせることにより画像表示装置、または放出された電子が発生させるイオン風を利用することにより冷却装置等に、好適に適用することができる。
1 電子放出素子
2 第1電極
3 絶縁層
3a 開口部
3b 傾斜部
4 中間層
5 第2電極
6 給電電極
6a 外周部
6b 延伸部
11 電源
12 接地電源
DA 傾斜角

Claims (6)

  1. 第1電極と、
    前記第1電極の上に形成され、開口部が設けられた絶縁層と、
    前記絶縁層の上に形成され、前記開口部を介して前記第1電極に接する中間層と、
    前記中間層の上に形成された第2電極と、前記第2電極の上に形成され、該第2電極の外周に沿って設けられた給電電極とを備え、前記第1電極と前記第2電極との間に電圧を印加することによって、前記第2電極から電子を放出させる電子放出素子であって、
    前記第2電極は、一部が前記絶縁層の上の領域に配置されており、
    前記絶縁層は、前記開口部の周縁部が開口端部に向かうに従って前記第1電極側へ傾斜した傾斜部とされ
    前記給電電極は、前記開口部を囲むように形成されていること
    を特徴とする電子放出素子。
  2. 請求項1に記載の電子放出素子であって、
    前記中間層は、シリコーン樹脂で形成されていること
    を特徴とする電子放出素子。
  3. 請求項1または請求項2に記載の電子放出素子であって、
    前記傾斜部は、前記第1電極に対して10度から50度の範囲内で傾斜していること
    を特徴とする電子放出素子。
  4. 請求項1から請求項3までのいずれか1つに記載の電子放出素子であって、
    前記開口部は、複数設けられており、
    前記給電電極は、前記第2電極の外周に設けられた外周部と、前記外周部から延伸され、隣接する前記開口部の間に位置する前記絶縁層の上の領域に設けられた延伸部とを備える構成とされていること
    を特徴とする電子放出素子。
  5. 請求項1から請求項4までのいずれか1つに記載の電子放出素子であって、
    前記絶縁層は、二酸化珪素、酸化アルミニウム、または有機ポリマーで形成されていること
    を特徴とする電子放出素子。
  6. 請求項1から請求項5までのいずれか1つに記載の電子放出素子と、前記第1電極および前記第2電極に接続された電源とを備える電子放出装置。
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