JP6323128B2 - 回路基板の製造方法 - Google Patents
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ここで、接合層を構成する金属被膜については、前記Ni焼結層を形成する際にこの金属被膜に接するNi接合剤の塗布層中のNiと共晶物を形成することができる活性金属で形成されたものである必要があり、このような活性金属としては、例えばTi、Zr、Hf及びNb等を挙げることができ、これらはその1種のみを単独で用いることができるほか、2種以上を混合物として用いることもできる。そして、この金属被膜は前記絶縁基板の表面に形成されるものであり、また、絶縁基板の表面に金属被膜を形成する方法としては、絶縁基板の表面に所望の厚さの金属皮膜を形成できればよく、従来公知の方法を採用することができ、具体的には例えば、蒸着法や、スパッタリング法や、圧延加工で形成された前記活性金属の金属箔を載置して被着させる方法等を採用することができる。
そして、Ni接合剤を調製するための分散剤としては、焼結温度によって分解若しくは消失する有機物であるのがよく、好ましくは、脂肪酸からなる分散剤、又は、脂肪酸に脂肪族アミンを更に含んだ分散剤を用いるようにするのがよい。このうち、脂肪酸については、飽和又は不飽和のいずれであってもよく、直鎖状又は分岐状のものであってもよく、例えば、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸等の炭素数3〜8の飽和脂肪酸、ブテン酸(クロトン酸等)、ペンテン酸、ヘキセン酸、ヘプテン酸、オクテン酸、ソルビン酸(2,4-ヘキサジエン酸)、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、オクタデカン酸、オレイン酸等を挙げることができる。分散剤には、これらの脂肪酸が1種単独で含まれていても2種以上含まれていてもよい。一方、脂肪族アミンは、飽和又は不飽和のいずれでもよく、1級、2級、3級のいずれのアミンであってもよく、直鎖状又は分岐状のものであってもよい。このような脂肪族アミンとしては、例えば、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン等アルキルアミン、アリルアミン等のアルケニルアミン、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、オレイルアミン等を挙げることができる。分散剤には、これらの脂肪族アミンが1種単独で含まれていても2種以上含まれていてもよい。
なお、本発明において、「SEM観察で測定された平均粒径とその標準偏差値」は、以下の方法で測定用試料を調製し、また、走査型電子顕微鏡(FE-SEM)〔株式会社日立ハイテクノロジーズ、S-4800〕を使用し、以下の方法で撮影した測定用試料のSEM画像から求められたものである。
また、回路基板を調製する際に用いたNi接合剤中のNi粒子の平均粒径とその標準偏差値を測定するための試料については、いわゆる「分散法」でSEM観察用サンプルを作製し、得られたSEM観察用サンプルをSEMにより10万倍で観察し、SEM画像を取得する。すなわち、Ni接合剤中に添加するNi粒子粉末の小さじ1杯程度を10mlのスクリュー管に入れ、約9mlのエタノールを添加し、超音波洗浄を5分間行った後に十分に静置し、次いでスクリュー管の底に発生した沈殿物を取らないように液の上澄み液だけを回収する。次にこの回収した上澄み液を別のスクリュー管に入れて合計9mlになるようにエタノールを追加し、上記と同様の超音波洗浄、静置、及び上澄み液の回収の操作を2回繰り返す。その後、回収された上澄み液をカーボン支持膜に滴下し乾燥させてSEM観察用サンプルを調製する。このようにして調製されたSEM観察用サンプルについて、Ni微細粒子の場合にはSEMにより10万倍で観察し、また、Ni細粒子の場合にはSEMにより1.5千倍で観察し、それぞれSEM画像を取得する。このようにして得られたNi微細粒子のSEM画像の一例(実施例1で用いられたNi微細粒子ペースト中のNi微細粒子)を図1(A)に示す。
次いで、得られたSEM画像を画像処理が可能なソフト〔Microsoft(登録商標) Office PowerPoint(登録商標)等〕に読み込ませ、最表面に並ぶ粒子を目視にて判断し、最表面の一次粒子のエッヂ部分をなぞり書きし、粒子を1つずつ塗り潰し、併せて基準となるスケールバーを直線で書き足した。
次に、上記の画像をtif形式に書き出し、画像解析ツールImageJ 1.47V(Wayne Rasband, National Institutes of Health, USA. ImageJ is in the public domain.)に読み込ませた。そして、スケールバー付きの読み込んだ画像をグレースケール化(8bit)した上で、画像中のスケールバーの長さを測定し、測定したスケールバーの長さから、読み込んだ画像の1ピクセル当りの長さを登録した。次に、スケールバー以外の部分を選択して粒子のみの画像にし、当該粒子画像を二値化するために閾値を決めた。その際、粒子が重なっている部分(焼結後のネック部)については、幾何学処理(Watershed処理)により互いに分離して二値化した。
上記のようにして、視野角1270nm×950nmのSEM画像(10万倍)を任意に選び出し、SEM画像内の凡そ70〜100個のNi粒子について、算術平均フェレット径を算出して平均粒径とし、全てのフェレット径からエクセルにてSTDEV式を用いてその標準偏差値を算出した。
すなわち、一般に、粒子の焼結プロセスにおいては、(イ)粒子の鋭角接触、(ロ)ネック部の生成・成長、開気孔の生成、(ハ)ネック部・粒界の肥大化、開気孔の連続性(ネットワーク形成)、及び(ニ)気孔の切断・孤立、消滅の順で進行し、例えばAgナノ粒子やAuナノ粒子では、これらのプロセスが進行し易く、最終的には(ニ)のように連続孔がほとんど閉孔して隙間がなくなる(例えば、『焼結材料工学』石田恒雄著、森北出版株式会社の78頁参照)。これに対して、本発明においては、図2に示したように、(イ)Ni微細粒子の凝集による鋭角接触aから(ロ)ネック部bの成長・生成まで程度の焼結に留まり、気孔(連続孔c)が残った状態となり、焼結後のNi焼結層中においてもNi接合剤中のNi粒子の粒径が実質的に維持される。
ここで、「Ni焼結層中のNi粒子の平均粒径」は上述したNi粒子の平均粒径の求め方に従って測定した。なお、回路基板の調製に用いられたNi接合剤に含まれるNi粒子の粒径は、焼結温度400℃以下での焼結後のNi焼結層中においても、実質的に維持されるので、以下の実施例及び比較例においてはその記載を省略する。
また、「金属被膜の厚さ」及び「Ni焼結層の厚さ」については、回路基板のNi焼結層におけるNi粒子の平均粒径を測定するために調製された測定用試料を用い、この測定用試料のSEM観察用断面をSEMにより1万倍〜10万倍で観察し、スケールバーを用いて求めた。
更に、絶縁基板と金属板との間の「接合強度」については、ボンドテスター(DAGE社製万能型ボンドテスター:シリーズ4000)を用い,金属板のシェア強度をダイ・シェアモードで測定して求めた。
図3に、本発明の第1の実施形態に係る回路基板Aが模式的に記載されている。この第1の実施形態の回路基板Aは、絶縁基板1と、金属板2と、金属被膜3aと、Ni焼結層3bと、金属板2とが順に接合された積層構造になっており、前記金属被膜3aは絶縁基板1の表面に活性金属を蒸着させて形成されており、また、前記Ni焼結層3bは金属被膜3aの表面にNi粒子を含むNi接合剤を塗布し、得られた塗布層の上に金属板2を重ね合わせ、前記Ni接合剤の塗布層を焼結させて形成されており、前記絶縁基板1と金属板2とが前記金属被膜3aとNi焼結層3bとを接合層として互いに接合されている。
オレイン酸且つオレイルアミンで被覆された平均粒径115nmのNi微細粒子、平均粒径150nmのNi微細粒子、又は平均粒径3000nmのNi細粒子と、分散媒として沸点198℃の1-オクタノール、バインダーとしてアセタール樹脂をそれぞれ85質量%、10質量%、5質量%に相当する割合で混練して、Ni接合剤としてNi微細粒子ペーストを調製した。なお、Ni粒子の平均粒径は、上述した方法によりSEM観察で測定された値である。
接合信頼性○:金属板が絶縁基板から剥離していないが、冷熱サイクル試験後後に1mm以下の反りや浮き上りが認められる。
接合信頼性△:金属板が絶縁基板から剥離していないが、試験後の接合強度が1kgf/mm2以下である。
接合信頼性×:金属板が絶縁基板から剥離している。
結果を表1に示す。
これに対して、比較例1〜5の場合には、冷熱サイクル試験前又は冷熱サイクル試験後の接合強度が1kgf/mm2より低いか、冷熱サイクル試験後において金属板が剥離し易い、接合強度が1kgf/mm2より低い等の評価になった。なお、接合温度が200℃である比較例3の場合には、Ni粒子として用いたNi微細粒子が焼結せず、Ni焼結層が形成されなかった。また、接合温度が450℃である比較例4の場合には、冷熱サイクル試験前の接合強度が低く、また、冷熱サイクル試験後に剥離が発生したが、これは、接合温度から室温まで冷却する際の温度差が大きく、絶縁基板と金属板との間の熱膨張差に起因する熱応力が大きく、接合層に欠陥が生じたものと推察される。
図4に、本発明の第2の実施形態に係る回路基板Bが模式的に記載されている。この第2の実施形態の回路基板Bは、第1の実施形態の回路基板Aの場合とは異なり、接合層のNi焼結層3bを形成するためのNi接合剤として、表2に示すオレイン酸且つオレイルアミンで被覆された平均粒径115nmのNi微細粒子Sn、平均粒径150nmのNi微細粒子Sn、平均粒径1μmのNi細粒子Sm、及び平均粒径3μmのNi細粒子Smを用い、これらNi微細粒子Sn(Ni粒子)とNi細粒子Sm(Ni粒子)とを表2に示すNi微細粒子の割合〔Sn/(Sn+Sm)〕で添加されているものを用いた。なお、Ni粒子の平均粒径は、上述した方法によりSEM観察で測定された値である。
上記以外の点については第1の実施形態Aの場合と同様であり、また、接合強度の測定及び冷熱サイクル試験も同様にして行った。
結果を表2に示す。
これに対して、比較例6〜11の場合には、冷熱サイクル試験前又は冷熱サイクル試験後の接合強度が1kgf/mm2より低いか、冷熱サイクル試験後において金属板が剥離し易い、接合強度が1kgf/mm2より低い等の評価になった。なお、接合温度が200℃である比較例8の場合には、Ni粒子として用いたNi微細粒子が焼結せず、Ni焼結層が形成されなかった。また、接合温度が450℃である比較例9の場合には、冷熱サイクル試験前の接合強度が低く、また、冷熱サイクル試験後に剥離が発生したが、これは、接合温度から室温まで冷却する際の温度差が大きく、絶縁基板と金属板との間の熱膨張差に起因する熱応力が大きく、接合層に欠陥が生じたものと推察される。更に、Ni微細粒子の割合〔Sn/(Sn+Sm)〕が0.1又は0.8の比較例10及び11の場合には、冷熱サイクル試験前の接合強度及び接合信頼性が共に低いが、これは、Ni細粒子Smを添加してかえってNi粒子の充填率が低くなったこととNi粒子間の接触面積が小さくなって接合強度が低下したことに起因するものと推察される。
Claims (7)
- 絶縁基板と、前記絶縁基板の片面又は両面に接合される金属板と、これら絶縁基板と金属板との間を接合する接合層とを有し、また、前記接合層が、Niと共晶物形成可能な活性金属からなると共に前記絶縁基板の片面又は両面に形成された金属被膜と、この金属被膜と前記金属板との間に形成され、Ni粒子が焼結し互いに結合したNi焼結層とからなり、更に、前記Ni焼結層は、そのNi粒子がSEM観察で測定された平均粒径15〜150nmのNi微細粒子であると共に、その厚さが10〜200μmである回路基板の製造方法であり、
前記絶縁基板の片面又は両面にNiと共晶物形成可能な活性金属の金属被膜を形成し、
得られた金属被膜及び/又は前記金属板の表面に分散剤で保護されたNi粒子を含むNi接合剤を塗布し、
次いで前記Ni接合剤の塗布層を挟んで前記絶縁基板と金属板とを重ね合わせ、還元性雰囲気下に250℃以上400℃以下の温度で加熱して塗布層を焼結させて厚さ10〜200μmのNi焼結層を形成し、 前記絶縁基板の表面に形成された金属被膜と前記Ni焼結層とを接合層として絶縁基板と金属板との間を接合することを特徴とする回路基板の製造方法。 - 前記Ni接合剤中の分散剤で保護されたNi粒子がSEM観察で測定された平均粒径15〜150nmのNi微細粒子であり、また、前記Ni焼結層の厚さが50〜100μmである請求項1に記載の回路基板の製造方法。
- 前記Ni接合剤中の分散剤で保護されたNi微細粒子は、粒度分布の標準偏差値が20nm以下である請求項2に記載の回路基板の製造方法。
- 前記Ni接合剤中の分散剤で保護されたNi粒子が、SEM観察で測定された平均粒径15〜150nmのNi微細粒子とSEM観察で測定された平均粒径0.5〜10μmのNi細粒子との混合物であると共に、これらNi微細粒子の断面積(Sn)とNi細粒子の断面積(Sm)の合計に対するNi微細粒子の断面積(Sn)の割合〔Sn/(Sn+Sm)〕の値が0.2〜0.3であり、また、前記Ni焼結層の厚さが50〜200μmである請求項1に記載の回路基板の製造方法。
- 前記Ni焼結層のNi粒子は、Ni微細粒子の粒度分布の標準偏差値が20nm以下であり、また、Ni細粒子の粒度分布の標準偏差値が10μm以下である請求項4に記載の回路基板の製造方法。
- 前記絶縁基板が窒化物系又は炭化物系のセラミックス材料からなる請求項1〜5のいずれかに記載の回路基板の製造方法。
- 前記金属被膜がTi被膜である請求項1〜6のいずれかに記載の回路基板の製造方法。
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