近年、インターネットやIP電話、動画のダウンロードなどの利用拡大により、必要とされる通信容量が急速に高まっており、光ファイバや光通信用機器に搭載される光送信器の需要が拡大している。光送信器またはそれを構成する部品は、プラガブル(Pluggable)と呼ばれ、搭載や交換がしやすいように、仕様によるモジュール化が急速に進展している。
また、XFP(10 Gigabit Small Form Factor Pluggable)は、10ギガビット・イーサネット(10GbE)の着脱モジュールの業界標準規格の一つであり、この規格により光送信器モジュールに搭載される光源もモジュール化が進んでいる。これは、TOSA(Transmitter Optical Sub−Assembly)と呼ばれ、代表的なモジュール形態として、箱型形状のTOSAモジュールがある(非特許文献1)。
近年、光送信器の需要が増加しているが、一方で、光送信器の性能を維持しつつ低コスト化への要求も強くなっている。毎秒100ギガビット伝送用TOSAモジュールの開発や、毎秒400ギガビットの超高速化に向けた標準化活動も活発であり、TOSAに対する高性能への要求は大きくなっている。
典型的な箱型TOSAモジュールの構成について、図1および図2を参照して説明する。図1は、典型的な箱型TOSAモジュール100の外観を示す図である。図2は、図1に示した筺体のモジュール内部の実装構成を示す図である。
図1に示すように、モジュール100の筐体は、XFP準拠により、焼結セラミックまたは金属で形成されている。
モジュール100では、筺体のテラス部101から筺体内部側に向けて貫通する変調電気信号給電用配線端子102が少なくとも一つ設けられる。テラス部101にはさらに、DC給電用配線端子も設けられている。
図1において、モジュール100には、セラミック部103および金属部104が形成される。
サブキャリアと呼ばれる薄板201は、筺体と離間して設置されている。サブキャリア201には、誘電体材料に金属メッキまたは蒸着することにより配線パターンが形成される。さらに、サブキャリア201には、光半導体デバイスに必要な素子、例えばレーザダイオード202、光変調器203、抵抗204およびコンデンサ205などが搭載される。
筺体はキャリア206と呼ばれる金属性の小板に載っており、キャリア206の下には、筺体下部に接する熱電冷却素子(TEC:Thermo−Electric Cooler)207が搭載されている。このTEC207によって、サブキャリア201上の素子で発生した熱が吸熱され、筺体下部から排熱される。省電力化と部品点数削減の観点から、TEC207を用いないTOSAの開発も行われている。
筺体の側面には、レンズ218(レンズ218はキャリア206上に載せる)または光取り出し用窓が設けられ、天板とともに抵抗溶接などにより光半導体デバイスがパッケージ内に封止される。
筺体外部から内部へ貫通している変調電気信号給電用配線208とサブキャリア201は、従来、ワイヤ状金線209やリボン状金線210で導通をとっている。
図3は、TOSAモジュール100と駆動用ドライバIC301との接続例を示している。
駆動用ドライバIC301の信号またはDC電源からの給電(不図示)は、フレキシブルプリント基板302を用いて行われるのが一般的である。
フレキシブルプリント基板302は、柔軟性があり大きく変形させることが可能なプリント基板であり、フレキまたはFPC(Flexible Printed Circuits)とも呼ばれる。変調用電気信号の伝送またはDC給電は、フレキシブル基板302を介してTOSAモジュール100に対して行われる。
変調用電気信号は、駆動用ドライバIC301からフレキシブル基板302を介してTOSAモジュール100に伝送される。TOSAモジュール100では、その変調用電気信号は、変調電気信号給電用配線端子102、伝送線路208、ワイヤ209,210、およびサブキャリア上の伝送線路211を介して、光半導体素子203に伝送され、さらには終端抵抗204へ伝送される。
駆動用ドライバIC301は、出力インピーダンスが50オームで駆動波形を送出するよう設計されている。このため、伝送線路211および終端抵抗205についても、通常は50オームに設定される。こうすることでインピーダンス整合をとるのが従来技術であった。
XFP準拠のTOSA光モジュールの動作周波数は、10GHzにまで及んでおり、電気信号は波(マイクロ波)としての振る舞いが強くなる。すなわち、インピーダンス整合しない不連続点(反射点)では、そこを起点とする反射波が発生し、反射波が駆動ドライバIC301に向かって進行してしまう。このような状況から、従来は、伝送線路211と終端抵抗204との間の不連続点(反射点)をなくすことが重要であった。
図4は、EA変調器集積DFBレーザの構成を示す図であって、(a)はEA変調器集積DFBレーザの実装図、(b)はEA変調器集積DFBレーザの斜視図、(c)はEA変調器集積DFBレーザの上面図(DFBレーザの電極422、EA変調器の電極423,424)を示す。なお、図4(c)は、非特許文献2に開示されている構成を示している。
図4(a)に示したEA変調器集積DFBレーザ400では、50オームで設計された高周波配線(GSG)401が、ワイヤ403によって、EMLのEA変調器402に接続され、さらにEA変調器402から50オームの終端回路404に接続されている。
図4(b)からわかるように、EA変調器集積DFBレーザ400Aでは、DFBレーザ413とEA変調器414が、n-InP基板420上に集積される。
DFBレーザ413の活性層416とEA変調器414の光吸収層417はともに、InGaAsP/InGaAsP多重量子井戸(MQW: Multi-Quantum Well)構造からなり、バットジョイント418によって接続されている。
活性層416および光吸収層417の上には、p-InP層419があり、これがメサ状に形成されたのち、半絶縁(SI: Semi-Insulating)InP421によって埋め込まれる。
図4(b)および(c)に示すように、DFBレーザ413の電極422とEA変調器412の電極424との間には分離溝415が設けられる。
EA変調器の電極423には、ボンディングワイヤを形成するため、またはフリップチップボンディングのためのパット電極424が設けられる。DFBレーザ413の長さは450μm、EA変調器414の長さは150μmである。
なお、図4に示した例では、高周波配線401のグランドGに接続されるn電極(n-InP基板420の下部)とシグナルSに接続される電極424は、それぞれ、EMLの異なる面にある場合を示している。
一方、図5に示すように、グランドGとシグナルSとに接続される各電極が同一の面に設けられるEMLも知られている。
図5(a)および(b)は、フリップチップボンディングによる高周波配線とEMLとの接続態様であって、グランドGおよびシグナルSに接続される各電極231,240が同一の面に設けられる場合について示している。 図5(a)では、n−InP基板213の上に、n−コンタクト層238、n−InP237、光吸収層235、p−InP234およびpコンタクト層233を有し、半絶縁(SI: Semi-Insulating)InP236により、メサが埋め込まれている。シグナルSに接続されるp電極231、およびグランドGに接続されるn電極240は、絶縁膜(例えばSiO2)232の上に形成される。すなわち、n電極240とp電極231はともに、同一の面に設けられる。
なお、各電極231,240上には、Auバンプ215が形成され、EMLは、Auバンプ215、金錫ハンダ(バンプ)218および電極パッド217を介して、高周波配線板201と接続される。
最近では、毎秒100ギガビットや毎秒400ギガビットといった超高速化の送信器の需要が高まりつつある。
図6は、従来の多チャネル光送信器500の構成であって、(a)は多チャネル光送信器500の全体構成、(b)は1チャンネルの構成、(c)は4チャネルの出力の概要、を示す。なお、多チャネル光送信器500は、非特許文献3に開示されている。
多チャネル光送信器500は、25Gb/sで動作するEMLが4つ設けられており、100Gb/sで動作するようになっている。
EMLは、DFBレーザ(LD)と、DFBレーザからの出力光を25Gb/sで変調するためのEA変調器(EAM)と、LDの出力光をモニタするためのモニタPD(MPD)とからなる。図6(b)は図4(c)に対応しており、図6(b)において、DFBレーザの電極422とEA変調器の電極423,424と、MPD(モニタPD:Photo Diode)425とが示されている。
4つのEMLからの出力光の波長はそれぞれ異なり、それをMMI(Multi−Mode Inteference)型の光カプラで合波する。合波するための光カプラとして、波長カプラや偏波カプラを使うこともある。
図7は、4チャネルのEMLと高周波配線との接続形態を示す図であって、(a)は従来のワイヤによる接続形態、(b)は(a)の等価回路、(c)は金バンプによる接続形態、(d)は(c)の等価回路、(e)は2つの接続形態の各高周波特性、を示す。なお、図7(e)において、t1は図7(c)に示した接続形態の高周波特性を、t2は図7(a)に示した接続形態の高周波特性を、それぞれ示す。
図6に示した4チャネルのEMLと高周波配線とをワイヤで接続するには、例えば図7(a)のような構造になる。すなわち、図7(a)において、EMLのEA変調器(EAM)と配線板604とは、ボンディングワイヤ601によって接続される。
図7(a)において、多チャネル光送信器600は、信号線602、EADFBレーザアレイ603、サブキャリア605、EAMパッド607およびスペーサ606を備える。
この図7(a)の多チャネル光送信器600の等価回路は、図7(b)に示すような回路になる。配線板604は、コイル(ボンディングワイヤに対応)6048を介してEAM6046と接続されるとともに、コイル(ボンディングワイヤに対応)6049を介して50オーム終端6050と接続される。
なお、図7(b)において、Rpクラッド6041、Cパッド6042、Cアクティブ6043、Rアクティブ6044、Rnクラッド6045およびアクティブレイヤ(光吸収層)6047が示されている。
上述したRpクラッド6041は図4(b)に示したクラッド層419の抵抗に、Cパッド6042は図4(b)に示したパッド424の容量に、Cアクティブ6043は図4(b)に示した光吸収層417の容量に、それぞれ対応する。また、Rアクティブ6044は図4(b)に示した光吸収層417の抵抗に、Rnクラッド6045は図4(b)に示した基板420の抵抗に、それぞれ対応する。
なお、EMLの動作帯域をあげるために、上述したボンディングワイヤを使用せずに、図5に示したフリップチップボンディングによって、EAMの電極607と配線板604とを金バンプ(図5に示した例では、Auバンプ215)で直接接続する方法がある。
図7(c)は図5と同様のフリップチップボンディングの接続態様であり、図7(d)はその接続態様の等価回路である。
図7(c)において、EMLのEA変調器(EAM)と配線板614とは、金バンプ613によって接続される。
図7(c)において、多チャネル光送信器600Aは、上層信号線610、下層信号線611、RFビア612、高周波回路板614、サブキャリア615を備える。
図7(d)において、配線板614は、EAM6046Aおよび50オーム終端6050Aとそれぞれ接続される。
なお、図7(d)において、アクティブレイヤ(光吸収層)6047Aが示されている。
上述したフリップチップボンディングは、実装基板上にチップを実装する方法の1つであり、チップ表面と基板とを電気的に接続する際、ワイヤボンディングのようにワイヤによって接続するのではなく、アレイ状に並んだ金バンプによって接続する。これによりワイヤボンディングに比べてチップと配線基板との間の距離が短いため、配線が短くなる。このため、図7(e)に示すように、フリップチップボンディングの場合の高周波特性t1は、ワイヤボンディングの場合の高周波特性t2よりも良くなる。
これは、フリップチップボンディングの場合は、周波数が増加するにつれ高周波特性が徐々に劣化していくのに対し、ワイヤボンディングの場合は、ワイヤボンディングの持つ寄生インダクタンスの影響で周波数応答特性がピーキングを持ち、さらに高周波側では急速に高周波特性が劣化する傾向にあるからである。
寄生インダクタンスを減らすことで、高周波特性を改善することを重要視している。
上述した配線板は、例えば図8(a)のようなマイクロストリップラインで形成される。図8(a)の誘電体基板において、長さがWの上面導体701aは伝送線路になり、下面導体701bはGNDになる。導体701a,701b間には、誘電体702が形成される。
伝送線路の特性インピーダンスは、図8(b)に示すように、基板の比誘電率、厚さ、導体の厚さおよび幅などによって決まる。比誘電率の高い基板を使用すれば、回路を小型化することができる。一般に、次のような基板材料が使われることが知られている。ガラスエポキシ基板(比誘電率 εr=4.8)、テフロン基板(比誘電率 εr=2.6)、セラミック基板(比誘電率 εr=10.0)。
配線板は、例えば図8(c)のようなコプレーナ・ラインで形成される。図8(c)では、厚さ=h、比誘電率=εr の誘電体基板の片面を導体面とし、その導体面に幅=Sの2本のスロットが間隔Wで設けられている。誘電体基板は通常、両側の導体面がGND、中央の導体がシグナルという、いわゆるGSG構造となる。図8(d)は、w/h=1.0の配線板におけるs/hの値に応じた特性インピーダンスを示してある。
図9は、フリップチップボンディングを用いた従来のEMLの終端回路パターン800の概略を示している。
図9(a)に示す回路パターン800において、EMLのEA変調器(EAM)804に信号を送るための高周波線路S(801)も、終端抵抗803の直前の高周波線路801も同じ50オーム設計である。図9(a)は、EAMの信号用電極も、GND電極G(802)も同一面にある場合の例を示しており、EAMの信号用電極は配線板の高周波線路Sに、EAMのGND電極は配線板のグランド線路Gに、それぞれフリップチップボンディングされる。
50オームの終端抵抗803は、チップ抵抗を配線板に半田づけしてもいいし、配線板に作りこんでもいい。配線板に作りこむ場合、終端抵抗803も50オームになるように設定する。終端抵抗803は、寄生容量を少なくするため、なるべく短くなるようにする。終端抵抗803とその右側のグランド線路Gとの間には隙間を設けずに両者を直結して、寄生成分が含まないようにする。
なお、EAMのGND電極が信号用電極の反対側(裏面)にある場合には、図9(b)のように、信号用電極と配線板の高周波線路801とだけがフリップチップボンディングされる。この場合、裏面の電極およびグランドは、ボンディングワイヤ、または、ビアなどの方法で接続される。
図10および図11は、EAMのGND電極が信号用電極の反対側(裏面)にある場合のEAMのGND電極とグランドとのビア接続形態を示している。図10および図11に示した接続形態は、図9(b)の回路パターン800に対応している。
図10において、フリップチップボンディング813によって、高周波配線板830とサブキャリア820上のEAM804とが接続される。また、フリップチップボンディング815によって、高周波配線板830と配線引き回し用の高周波配線板831とが接続される。図10の接続例では、電流パスIは、フリップチップボンディング813→EAM804の底面→サブキャリア820→高周波配線板831という経路になる。
図11に示すように、EAM804のシングルSにフリップチップボンディング813が施され、サブキャリア820上には、例えば半田によってEAM804が搭載される。一般に、EAM804の厚みは150μm程度であり、高周波配線板831よりも薄いので、サブキャリア820には図11に示すような段差が設けられる。
なお、図11において、2つのAu電極816a,816bは、接続されている。
Au電極816bと高周波配線板831のグランドGとはビア833によって接続され、2つの高周波配線板830,831はフリップチップボンディング815によって接続される。
上記高周波配線板によって伝送線路801の特性インピーダンスおよび終端抵抗803をそれぞれ50オームに設定することでインピーダンス整合をとる構造は従来から存在するが、導体線路幅と、導体線路とグランド線路とのギャップ幅とを調整することにより特性インピーダンスを可変する高周波伝送線路も存在する(特許文献1)。
以下、本発明の高周波伝送線路1の実施形態について説明する。この高周波伝送線路1は、EMLに信号を伝送するように構成される。
[高周波伝送線路の構成]
まず、高周波伝送線路1の構成について、図12および図13を参照して説明する。図12は、終端抵抗を含む高周波伝送線路1の構成例を示す模式図である。図13は、高周波伝送線路1を示す斜視図である。
図12に示すように、高周波伝送線路1は、第1導体線路11と、この第1導体線路11の終端抵抗14と、終端抵抗14と接続される第2導体線路15と、第1導体線路11、終端抵抗14および第2導体線路15に対して、所定の距離を隔てて対向配置されるとともに、第2導体線路15と接続されるグランド線路12とを備える。終端抵抗14の一端は第1導体線路11の一端に接続され、終端抵抗14の他端はグランド線路12の一端に接続される。
なお、本実施形態では、終端抵抗14の長さは、「l」とする。「l」の値は、寄生インダクタンスを大きくなるように設定される。
導体線路11,15は、例えば高周波配線板である。第1導体線路11の特性インピーダンスは、例えば50Ωに設定される。
図12において、EMLのEAM16は、導体線路11とグランド線路12との間に接続される。この実施形態では、EAM16の信号用電極およびグランド用電極はともにEAMの同一面に構成されるようになっているので、EAM16の信号用電極は導体線路11に、EAM16のグランド電極はグランド線路12に、それぞれフリップチップボンディングされる。フリップチップボンディングの接続形態は例えば図5で示したものと同じである。
第1導体線路11は、終端抵抗14側の端面において、内側に曲がる折り曲げ形状13c,13dを有する。図12の例では、折り曲げ形状13c,13dは、例えば、線路幅が狭くなるテーパ形状となっている。
グランド線路12は、上述した各折り曲げ形状13c,13dに対応する位置において、外側に曲がる折り曲げ形状13b,13aを有する。図12の例では、折り曲げ形状13a,13bは、例えば、GND電極幅が狭くなるテーパ形状となっている。
これにより、折り曲げ形状13a〜13dの部分の特性インピーダンスは、終端抵抗14側に向かって、50Ωよりも大きくなるように変化する。この部分は、図13に示すインピーダンス遷移部32を構成する。
図12に示した終端抵抗14およびそれと対向するグランド線路12の部分は、特性インピーダンスが50Ωよりも大きくなる。この部分は、図13に示す第1の高インピーダンス部33を構成する。
第2導体線路15の一端は終端抵抗14と接続され、他端はグランド線路12と接続される。つまり、終端抵抗14は、グランド線路12と直接接続されない。なお、第2導体線路15は、対応するグランド線路12との組み合わせによって、図13に示す第2の高インピーダンス線路部34を構成する。この第2の高インピーダンス線路部34は、スタブとして機能し、これにより、後述する周波数のピーキング量が調整されるようになっている。
なお、図13において、50Ω線路31は、インピーダンス特性が50Ωの導体線路11の部分に対応する。
次に、この終端装置1と組み合わせられるEA変調器集積DFBレーザ(以下、「DFBレーザ」と略す。)20について、図14を参照して説明する。図14は、DFBレーザ20の一例を示す斜視図である。
図14に示すように、DFBレーザ20は、DFBレーザ電極21と、金バンプ22と、EAMの信号用電極23と、レーザチップ24と、サブキャリア25とを備える。
図15は、高周波伝送線路1とDFBレーザ20とが組み合わせられた光回路の一例を示す斜視図である。
この例では、高周波伝送線路1は、金バンプ22を介して、DFBレーザ20と接続されるようになっている。
なお図15では、DFBレーザ20と高周波伝送路1が直角に交わるような形態になっているが、DFBレーザ20と高周波伝送路1が同一方向から重なり合うように配置しても構わない。特にDFBレーザ20が単体でなく、アレイ構造の場合には、DFBレーザ20と高周波伝送路1とを同一方向に配置するのが好ましい。
図16は、高周波伝送線路1の等価回路40である。
この等価回路40は、50Ω線路41と、インピーダンス調整部42とを備える。インピーダンス調整部42は、50Ω線路41と直列接続されるインピーダンス遷移部421と、第1の高インピーダンス線路422と、第2の高インピーダンス線路423とを有する。EA部424の一端は、50Ω線路41とインピーダンス遷移部421との間に接続され、EA部424の他端は接地される。なお、図16に示す回路要素41,421,422,423はそれぞれ、図13に示した50Ω線路31,インピーダンス遷移部32,第1の高インピーダンス線路部33と、第2の高インピーダンス線路部34に対応する。
[シミュレーションの概要]
次に、本実施形態の高周波伝送線路1について、三次元電磁解析シミュレータを利用して、終端抵抗14の長さl、終端抵抗14とグランド線路12との間隔、および、第2の高インピーダンス線路部34の長さを変えて、光出力強度を計算した。このときの等価回路を図17に示す。
図17は、シミュレーションにより得られた回路要素41,421,422,423,424を含む等価回路とコントローラ50とを示している。図17の例では、R1=50Ω、L1=0.003nH、C1=0.038pF、R2=24.8Ω、R3=98Ω、R4=2Ω、C2=0.058pFを示している。
なお、図4を参照すると、R2はEAMのクラッド層419の抵抗に、C1はパッド424の容量に、C2は光吸収層417の容量に、それぞれ対応する。また、R3は光吸収層417の抵抗に、R4は基板420の抵抗に、それぞれ対応する。
図17において、バイアスティー(バイアスT)52には、高周波信号発生源であるACと、DC電圧の発生源であるコントローラ50とが接続される。バイアスT52は、高周波信号とDC電圧とを合成して回路要素41に出力する。
コントローラ(制御部)50は、DC電圧を印加するとともにその時にコントローラ50に流れる電流501の光が出力されている時とされていない時の差分を、EAMに流れる受光電流としてモニタする。これは、EAM424に流れる受光電流は、回路要素421,422,423に流れる電流が一定の値であるため、レーザ21に電流を流す前と後での電流501の差分の値がEAMに流れる受光電流に相当するからである。なお、構成によっては、回路要素421,422,423に流れる電流をより小さくするために、容量成分を付与することもできる。
なお、回路要素421〜422に流れる電流は、EAM回路424に流れる電流よりも大きくなるが、抵抗体の値は一定であるため、一定電圧である限り、回路要素421〜422に流れる電流も一定となるため、上記のような検出を採用した。
ここで、コントローラ50は、変調信号とDC電源からのDC電圧とを光変調器に印加する電気回路としても機能する。
コントローラ50は、電流501に応じて、終端抵抗を含む第1の高インピーダンス線路部422の特性インピーダンスを変化させる。
なお、コントローラ50は、第1の高インピーダンス422だけでなく、第1の高インピーダンス線路部422と第2の高インピーダンス線路部423の両方の特性インピーダンスを変化させるようにすることもできる。また、コントローラ50は、第1の高インピーダンス線路部422または/および第2の高インピーダンス線路部423の特性インピーダンスの変化に追従するよう、インピーダンス遷移部421の特性インピーダンスも変化させることができる。
図17では、コントローラ50は、上述したモニタする電流値501に対応する、第1の高インピーダンス線路部422に対する電圧値(制御信号)502を含むテーブル51を備えており、このテーブル51を参照して、モニタ電流値に対応する電圧値を抽出する。そして、コントローラ50は、この電圧値を、第1の高インピーダンス線路部421の導体線路11とグランド線路12との間に印加する。 例えばKTN(タンタル酸ニオブ酸カリウム)または液晶を用いた高周波伝送線路1の特性インピーダンスは、導体線路11の幅、高周波伝送線路1の誘電率・厚さ、および、各線路11,12間のギャップにより決まる。したがって、例えば、高周波伝送線路1への印加電圧が変わる場合には、高周波伝送線路1の誘電率が変化することで、終端抵抗14の特性インピーダンスが可変する。これにより、EAMを含むインピーダンス整合を正確に行いつつ、周波数特性を向上させることができる。
なお、DFBレーザ20の光出力の変化によって受光電流が変化し、これは、図17の等価回路において、抵抗R3の値の変化として表れる。本実施形態のコントローラ50は、抵抗R3の変化に応じて、終端抵抗14の特性インピーダンスを制御するようになっている。
図17では、コントローラ50が受光電流に対応する電圧値を高周波伝送線路1に印加する場合について説明した。これとは別に、可動機構としてのMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)によって、特性インピーダンスを可変するようにしてもよい。
図18は、MEMS71によって高周波伝送線路1のグランド線路12をシグナル線路に近づけたり、遠ざけたりすることで、特性インピーダンスを可変する処理を示している。図18に示す例において、MEMS71とグランド線路12との間のカップリング量を制御して特性インピーダンスを可変させる。この場合、コントローラ50は、終端抵抗14の特性インピーダンスを変化させるための指示を、高周波伝送線路1のシグナル線路とグランド線路との間の距離を可動させるMEMS71に行う。
なお、特性インピーダンスを変える方法は、上述した例に限定されるものではない。例えばインピーダンスを変えることのできるトランジスタ回路や液晶等を設けておき、受光電流に応じて、トランジスタ回路や液晶等によって特性インピーダンスを変えることも可能である。
また、本実施形態では、コントローラ50は、コントローラがDC電圧を印加するときの電流(EAMに流れる受光電流)をモニタし、その受光電流(モニタ電流)に応じて特性インピーダンスを可変する場合について説明するが、MPD(図6(b)を参照)を流れる受光電流をモニタし、その受光電流(モニタ電流)に応じて特性インピーダンスを可変することもできる。
図19は、終端抵抗14の長さlを変えたときにシミュレーションにより得られる強度を示している。強度S11は、図17に示したものを表し、S12は、従来の図9(a)に示したものを表している。図19に示すように、「l」の値が25μmから100μmになることで、S11で示される帯域幅が改善する。
図20は、終端抵抗14とグランド線路12との間隔を変えたときにシミュレーションにより得られる強度を示している。強度S21は、図18に示したものを表し、S22は、従来の図9(a)に示したものを表している。強度S21,S22に示すように、上記間隔が20μmから100μmに変化することで、40GHz付近でピーキングが生じ、これにより、S21で示される帯域幅が改善する。
図21は、第2の高インピーダンス線路部34の長さを変えたときにシミュレーションにより得られる強度を示している。強度S31,S32,S33は、それぞれ、第2の高インピーダンス線路部34の長さが150μm,100μm,50μmのものを表し、S34は、従来の図9(a)に示したもの(すなわち、高インピーダンス線路部34の長さが0μm)を表している。強度S31〜S34に示すように、第2の高インピーダンス線路部34が長くなることで、40GHz付近でピーキングが生じ、これにより、帯域幅が改善する。
なお、上記シミュレーションでは、第2の高インピーダンス線路部34の長さを変えることにより帯域が改善することがわかったが、この第2の高インピーダンス線路部34の長さは、フォトリソグラフィにより±5μm以下の精度でパターン作製することができるので、所望のピーキング量とすることができる。
以上説明したように、本実施形態の高周波伝送線路1によると、第1導体線路11およびグラウンド線路12は、それぞれ、終端抵抗14側に向かって、線路幅が狭くなるように形成される。この場合、終端抵抗14および第2導体線路15では、グランド線路12との組み合わせによって特性インピーダンスを第1導体線路11の特性インピーダンスよりも高くなる。これにより、周波数特性が向上する。
以上、実施形態について詳述してきたが、具体的な構成は本実施形態に限られるものではなく、変更するようにしてもよい。
以上では、EMLのEAM804は、導体線路801とグランド線路802との間に接続される場合について説明した。しかしながら、EAM804の信号用電極とグランド用電極とが異なる面に構成される場合も考えられる。例えば図22では、かかる場合について、高周波伝送線路1Aが、EAMの信号用電極およびグランド電極がともに、第1導体線路11でフリップチップボンディングされる態様を例示している。
上述した高周波伝送線路1,1Aは、様々な改変が可能である。例えば図23は、終端抵抗13Bと接続され、所定の特性インピーダンスを有する導体線路11と、導体線路11および終端抵抗13Bに対して、所定の距離を隔てて対向配置されるとともに導体線路11と接続されるグランド線路12とを備える高周波伝送線路1Bを示している。この場合にも、EAM16は、信号入力用電極とグランド用電極とを有しており、信号入力用電極が導体線路11に接続される。このようにしても上記実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
また、上述した折り曲げ形状(テーパ形状)13a〜13dは、特性インピーダンスが例えば50Ωより高くなるものであればよく、他の様々な代替の形状によっても実施することができる。例えば、かかる形状として、段階的に、または曲面状に連続的に、変化するようにしてもよい。
図12および図22に示したものにおいて、テーパ形状は、第1導体線路11のみに形成し、グランド線路12は形成しないようにしてもよい。
上記実施形態および変形例等は、任意に組み合わせて実施することができる。