しかしながら、図1に示したようにレーザアレイ光源を構成する場合、小型化したレーザアレイチップにおいては各チャネルのレーザ同士の間隔が非常に狭くなる。このため、隣接するチャネル間において、電気的クロストークおよび熱的なクロストークが大きいという問題があった。図1に示したようなレーザアレイチップにおいて、高周波信号をEA変調器(電極)3に供給するとき、隣り合うチャネルのEA変調器電極間で電磁的な結合が生じる。
図2は、レーザアレイチップ上のチャネル間で発生するクロストークを説明する図である。図2は、図1の(a)におけるEA変調器電極近傍のX−X´部分の断面図を示している。レーザアレイチップ1は、n−InP基板などの半導体基板21上にレーザ素子を形成して構成されている。半導体基板21は、基板自体で下部クラッド層を形成しており、下部クラッド層21上には、活性層として動作するコア層22およびp−InP層24a。24b、24cが構成される。p−InP層の両脇には誘電体絶縁層23a、23bが形成されている。誘電体絶縁層で挟まれたp−InP層上には、EA変調器電極3a、3bが形成されている。
隣り合うチャネルのレーザにおけるEA変調器電極同士が近接すると、高周波信号によって発生する、1つのEA変調器電極3aからの電磁波26が隣のチャネルのEA変調器電極3bにも結合する。このEA変調器電極同士の間の結合が、隣接するEA変調器にとってのクロストーク信号となる。このようにして発生したクロストーク信号が、レーザから出力される光信号の波形を劣化させる問題があった。
また、EADFBレーザの場合は、上述のEA変調器電極同士の結合と同様の理由で、同じチャネル内のEA変調器電極3とDFBレーザ電極4との間にも電磁波のカップリングが生じ、DFBレーザを変調してしまう。隣り合うチャネル間でも同様のEA変調器電極3とDFBレーザ電極4との間の結合が生じ得る。このため、レーザから出力される光信号の波形がさらに劣化する問題もあった。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、隣接する電極同士の間のクロストークによるレーザ出力信号の劣化を抑制し、高性能な多チャネルレーザアレイ光源を実現することにある。
本発明は、このような目的を達成するために、請求項1の発明は、各々が、高周波電気信号が現れる少なくとも1つの電極を有し、前記高周波電気信号を含む電気信号を光信号に変換する複数の光機能素子と、前記複数の光機能素子の隣接する2つの間に少なくともその一部がそれぞれ配置された、1つ以上のグランド電極であって、当該1つ以上のグランド電極の厚さが前記少なくとも1つの電極の厚さよりも大きいことによって前記複数の光機能素子の形成面に平行な前記光機能素子の前記少なくとも1つの電極の最上面よりも高い位置にその最上面を有する1つ以上のグランド電極とを含むレーザアレイチップを備え、前記形成面を見たとき高周波電気信号が現れる前記少なくとも1つの電極および前記1つ以上のグランド電極は重複しておらず、前記1つ以上のグランド電極は、その電極材料自体の厚みによって形成される、前記複数の光機能素子の前記形成面に垂直な側面を持ち、かつ、高周波電気信号が現れる前記少なくとも1つの電極および前記1つ以上のグランド電極の前記形成面の近傍の上方は空間であることを特徴とする多チャネルレーザアレイ光源である。好ましくは、高周波電気信号が現れる少なくとも1つの電極の最上面からのグランド電極の最上面まで高さHは、隣り合うグランド電極同士の間隔をGとするとき、概ね、H:G=1:1程度以上あれば良い。
請求項2の発明は、請求項1の多チャネルレーザアレイ光源であって、前記光機能素子の前記少なくとも1つの電極の前記最上面から前記1つ以上のグランド電極の前記最上面までの高さHは、前記1つ以上のグランド電極の隣り合う2つの間隔をGとするとき、概ねH/Gが1以上であることを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1または2の多チャネルレーザアレイ光源であって、上面にチップ搭載グランド電極が形成され、下面に前記チップ搭載グランド電極と電気的に導通したグランド電極が形成され、前記チップ搭載グランド電極上に前記レーザアレイチップが配置されたサブキャリアと、前記電気信号を導く複数の信号配線およびグランド電極を有する高周波配線板と、前記レーザアレイチップと、前記サブキャリアまたは前記高周波配線板の少なくとも一方の間を接続する電気的接続手段とをさらに備えたことを特徴とする。電気的接続手段は、限定されないがワイヤ接続とすることができる。
請求項4の発明は、請求項3の多チャネルレーザアレイ光源であって、前記サブキャリアの前記チップ搭載グランド電極と、前記レーザアレイチップの各グランド電極との間が、少なくとも1カ所以上で、電気的接続手段によって電気的に接続され、かつ、前記高周波配線板上の前記グランド電極と、前記レーザアレイチップの各グランド電極との間が、電気的接続手段によって電気的に接続されていることを特徴とする。
請求項5の発明は、請求項1乃至4いずれかの多チャネルレーザアレイ光源であって、前記光機能素子は、電界吸収型光変調器集積分布帰還(EADFB)レーザであり、前記レーザアレイチップの前記少なくとも1つの電極は、電界吸収型(EA)光変調器電極であって、前記1つ以上のグランド電極は、前記光変調器電極の全周を囲むように形成されていることを特徴とする。
請求項6の発明は、少なくとも半導体基板、下部クラッド層、コア層および上部クラッド層を含む層構造を有し、高周波電気信号が現れる少なくとも1つ電極を有し、前記高周波電気信号を含む電気信号を光信号に変換する複数の光機能素子と、前記複数の光機能素子の隣接する2つの間に少なくともその一部がそれぞれ配置された、1つ以上のグランド電極であって、前記複数の光機能素子の隣接する2つの間に、前記グランド電極の2つの部分を有し、1つの光機能素子の両脇にある前記部分が、前記1つの光機能素子の前記少なくとも1つの電極を取り囲む一体のグランド電極を構成し、前記1つの光機能素子の前記一体のグランド電極と、他の光機能素子の一体のグランド電極とは、前記複数の光機能素子の形成面上のパターンでは接続されておらず、前記形成面に平行な前記光機能素子の前記少なくとも1つの電極の最上面よりも高い位置にその最上面を有する、1つ以上のグランド電極とを含むレーザアレイチップを備えたことを特徴とする多チャネルレーザアレイ光源である。上記の1つ以上のグランド電極の形状については、限定されないが例えば、実施例2のコの字型グランド電極とすることができる。好ましくは、高周波電気信号が現れる少なくとも1つの電極の最上面からのグランド電極の最上面まで高さHは、隣り合うグランド電極同士の間隔をGとするとき、概ね、H:G=1:1程度以上あれば良い。
請求項7の発明は、請求項6の多チャネルレーザアレイ光源であって、前記層構造は、前記下部クラッド層の直下に配置された、前記半導体基板よりも低い抵抗率を有する低抵抗率層をさらに含み、前記一体のグランド電極が前記低抵抗率層に接続されていることを特徴とする。
請求項8の発明は、請求項7の多チャネルレーザアレイ光源であって、前記複数の光機能素子は、隣接する光機能素子間で前記下部クラッド層、前記コア層および前記上部クラッド層が電気的に分離されており、前記低抵抗率層も、隣接する光機能素子間で電気的に分離されていることを特徴とする。
請求項9の発明は、請求項6乃至8いずれかの多チャネルレーザアレイ光源であって、上面にチップ搭載グランド電極が形成され、下面に前記チップ搭載グランド電極と電気的に導通したグランド電極が形成され、前記チップ搭載グランド電極上に前記レーザアレイチップが配置されたサブキャリアと、前記電気信号を導く複数の信号配線およびグランド電極を有する高周波配線板と、前記レーザアレイチップと、前記サブキャリアまたは前記高周波配線板の少なくとも一方の間を接続する電気的接続手段とをさらに備えたことを特徴とする。
請求項10の発明は、請求項1乃至4または6乃至9いずれかの多チャネルレーザアレイ光源であって、前記光機能素子は半導体分布帰還型(DFB)レーザであり、前記高周波電気信号が現れる少なくとも1つの電極は、DFBレーザ電極であることを特徴とする。
好ましくは、前記レーザアレイチップ上に、各光機能素子から出力される光信号を1つの光路に合波する光合波器を形成することができる。
以上説明したように、本発明により、隣接する電極へのクロストークによる信号劣化を抑制した、高性能な多チャネルレーザアレイ光源を実現できる。
本発明のレーザアレイ光源は、レーザアレイチップ上の光機能素子の信号電極間、または、EADFBレーザの場合は、加えてEA変調器電極とDFBレーザ電極との間にも、電磁波を静電遮蔽するグランド電極を配置することによって、隣接する電極へのクロストークによる信号劣化を抑制した、高性能な多チャネルレーザアレイ光源を実現する。変調器電極またはDFBレーザ電極の上面位置に比べて、静電遮蔽するグランド電極の上面位置が高いことによって、静電遮蔽を確実にする。静電遮蔽グランド電極は、ワイヤ等の電気的接続手段によって、他の基板のグランドを接続されて、低インピーダンスのグランド経路が形成される。さらに、レーザ素子の下部に低抵抗率層を設けて、静電遮蔽グランド電極と接続することで、レーザ素子のグランド電位を安定化する。さらに、この低抵抗率層をチャネル毎に分離することで、隣接するチャネル間の共通インピーダンスによるクロストークをさらに抑える。以下、より具体的な構成とともに、本発明のレーザアレイ光源の動作を説明する。
図3は、本発明の静電遮蔽グランド電極付き合波器集積EADFBレーザアレイ光源の構成を示す図である。図3の(a)は、レーザアレイチップの上面図を、(b)はZ−Z´部の断面図を示す。また、図3の(c)はレーザアレイ光源全体の上面図であり、(d)はレーザアレイ光源の側面図を示す。
レーザアレイの各レーザ素子は、高周波電気信号が現れる少なくとも1つの電極(EA変調器電極)を有し、高周波電気信号を含む電気信号を光信号に変換する光機能素子である。したがって、レーザアレイチップ上には、複数の光機能素子が構成されている。
図3の(a)に示すように、本発明のレーザアレイ光源におけるレーザアレイチップ300は、EA変調器電極303を取り囲むように形成された静電遮蔽グランド電極305を備えるところを特徴とする。静電遮蔽グランド電極305は、少なくとも各チャネルの変調器電極3の周囲を取り囲むような形状を持つ。さらに、DFBレーザ電極304の少なくとも一部を取り囲むような形状を併せ持っていても良い。本実施例では、静電遮蔽グランド電極305は、光合波器302および光機能部である各EADFBレーザ素子の上部を覆うような櫛型様の一体のグランド電極を形成している。(a)における2つのチャネルにまたがったZ−Z´部の断面図である図3の(b)を参照して、本発明における静電遮蔽グランド電極の構造についてさらに説明する。
図3の(b)に示したレーザアレイチップ300の断面の構成において、基板30に形成されるレーザ素子の構成は、図2で示した従来技術のものと基本的に同様である。したがって、基板30の上に、EA変調器の活性層32、上部クラッド層34a、34b、34cが形成された層構造を持っている。EA変調器電極303a、303b直下の上部クラッド層は、誘電体絶縁膜33a、33bで区画されている。本発明のレーザアレイ光源において特徴的なのは、静電遮蔽グランド電極305の上面が、EA変調器電極303a、303bの上面よりも高い位置にある点にある。すなわち、複数の光機能素子(レーザ素子)の形成面に平行な、光機能素子の高周波電気信号が現れる電極の最上面よりも高い位置に、静電遮蔽グランド電極の最上面がある。
静電遮蔽グランド電極305をこのような構造とすることで、EA変調器電極で発生する電磁波は静電遮蔽グランド電極305によって静電遮蔽され、隣のチャネルのEA変調器電極や、DFBレーザの電極に結合するのを抑制することが可能となり、隣接するチャネルの電極へのクロストークを抑制することができる。
したがって、本実施例のレーザアレイ光源は、各々が、高周波電気信号が現れる少なくとも1つの電極を有し、前記高周波電気信号を含む電気信号を光信号に変換する複数の光機能素子と、前記複数の光機能素子の隣接する2つの間に少なくともその一部がそれぞれ配置された、1つ以上のグランド電極であって、前記複数の光機能素子の形成面に平行な前記光機能素子の前記少なくとも1つの電極の最上面よりも高い位置にその最上面を有する1つ以上のグランド電極とを含むレーザアレイチップを備えたことを特徴とする。
図3の(a)の静電遮蔽グランド電極305は、(b)では2つの部分から構成されている。すなわち、金などで形成された第1の電極部305bと、第1の電極部305bの上に形成された第2の電極部305aとから成る。第1の電極部305bは、例えば、蒸着によって形成できる。また、第2の電極部305aは、例えば、めっきによって形成できる。めっきによって形成することで、その高さを例えば、40〜100μm程度とすることができる。尚、第1の電極部305bとp−InP上部クラッド層34aとの間には、SiO2絶縁膜層306が形成される。
本発明のレーザアレイ光源では、チップ上の隣接するEA変調器電極の間に、静電遮蔽グランド電極305aが形成され、EA変調器電極303a、303bの最上面よりも高い位置に静電遮蔽グランド電極305aの最上面があれば良い。したがって、図3の(b)に示したように2つの部分から構成された構造は一例であり、適切な作製プロセスを用いて、一体のものとして静電遮蔽グランド電極305を構成しても良い。
EA変調器電極の最上面から静電遮蔽グランド電極305の最上面までの高さHは、例えば、隣り合う静電遮蔽グランド電極同士の間隔をGとするとき、概ね、H:G=1:1程度確保できれば、本発明の多チャネルレーザアレイ光源の静電遮蔽能力を発揮できる。
本発明のような構成の遮蔽グランド電極を用いることによって、クロストークの原因となる隣接チャネル間の、および、隣接電極間での電磁波の結合を抑制する。隣接チャネル間、および、隣接電極間のクロストークによる信号劣化を抑制し、高性能な多チャネルレーザアレイ光源を実現可能になる。
以下に本発明のより具体的な実施形態を例として、本発明のレーザアレイ光源の構成、作製工程、および動作について説明する。本実施例は、本発明の効果を示す1つの例示であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々の変更を行い得ることは言うまでもない。
図3の(a)を再び参照すれば、本実施例のレーザアレイチップ300は、合波器302を集積し、4チャネルのEADFBレーザをアレイ化した構成になっている。この実施例では各レーザのチャネル位置の中心間隔を500μmとし、合波器としてマルチモード干渉型合波器(以下、MMIカプラ)を用いる。
レーザの波長は、短波長側から1295nm、1300nm、1305nm、1310nmとし、最短波長からチャネル1、チャネル2、チャネル3、チャネル4とした。また、図3の(a)のレーザアレイチップ300上では、上方のレーザ素子から順にチャネル1、チャネル2、チャネル3、チャネル4とする。またレーザのバイアス電流はそれぞれ50mA、EA変調器のバイアス電圧はチャネル1、チャネル2、チャネル3、チャネル4において、それぞれ、−1.2V、−1.4V、1.6V、−1.8Vとし、変調信号の信号振幅は2.0Vp−pとした。
次に、隣接するチャネル間でのクロストークを抑制する原理について、図3を使いながらさらに説明する。図2に示した従来技術の構造のレーザアレイチップ1とは異なり、本発明におけるレーザアレイチップ300は、隣り合うEA変調器電極303同士の間およびEA変調器電極303とDFBレーザ電極304との間に、静電遮蔽グランド電極305が形成される。レーザアレイチップ300上の静電遮蔽グランド電極305は、図3の(c)に示したように高周波配線板313やサブキャリア310上のグランド電極311とワイヤ等を使って接続されている。このため、静電遮蔽グランド電極305は、低インピーダンスの広いグランド面と最近接で接続され、非常に安定したグランド電極となる。
また、静電遮蔽グランド電極305の最上面は、EA変調器電極の最上面よりも高い位置にある。このため、図2に示した従来技術の構造のレーザアレイチップにおけるEA変調器電極間の電磁波の結合していた部分に、静電遮蔽グランド電極305が入るような構造となる。EA変調器電極303aからの大部分の電気力線36は静電遮蔽グランド電極305の側面にて終端され、隣接するEA変調器電極303bには到達しない。すなわち、EA変調器電極303a、303bから発生する電磁波はグランド電極305によって静電遮蔽される。このため、EA変調器電極303に現れる高周波信号が、隣接するチャネルのレーザ素子のEA変調器電極またはDFBレーザ電極304にカップリングするのを抑制することが可能となる。EA変調器電極における高周波の振幅変動が、隣接する電極に生じるのを抑制し、チャネル間のクロストークを抑えることができる。
次に、本発明のレーザアレイ光源の実装工程について、図3を参照しながらさらに説明する。最初に、図3の(c)および(d)を参照すると、配線板支持部312a、312bを備えたサブキャリア310上に、合波器を集積したEADFBレーザアレイチップ300を搭載する。サブキャリア310の上面にはグランド電極311が形成されており、レーザアレイチップ300は、グランド電極311の上に金スズ合金ハンダなどによって固定される。このとき、静電遮蔽グランド電極305は、ワイヤボンディングにより3の金ワイヤを使って、グランド電極311と接続される。すなわち、静電遮蔽グランド電極305は、電気的接続手段を使って、グランド電極311と接続される。
次に、配線支持部312a、312b上に高周波配線板313を搭載する。高周波配線板313は、各チャネルのレーザ素子と接続される信号線314および終端抵抗315を備えている。図3の(d)から分かるように、サブキャリア310と高周波配線板313との間は中空となっており、後述するように、サブキャリア310および高周波配線板313は、例えば空中配線によって接続される。
最後に、高周波配線板313上の信号線314の終端部を、レーザアレイチップ300上のEA変調器電極303と接続する。さらに、高周波配線板313上のグランド電極を、レーザアレイチップ300上の静電遮蔽グランド電極305と接続する。これらの接続は、金ワイヤを使ってワイヤボンディング技術によって行われる。
尚、本実施例では、低抵抗のワイヤによって接続しているが、2つの基板のグランド電極間を接続する電気的接続手段としては、ワイヤだけに限られず他の電気的接続手段を利用できる。例えば、銀ペーストなどの導電性材料を使用して接続することも可能である。例えば、図3の(c)を参照すると、高周波配線板313のグランド面は、配線板313の端部まで形成されているので、ワイヤ317の代わりに、導電性ペーストで形成した架橋構造によって、レーザアレイチップ300のグランド電極305と接続することができる。同様に、レーザアレイチップ300の櫛型グランド電極305は、チップの端部まで形成されているので、ワイヤ316の代わりに、導電性ペーストによって、グランド電極305、チップ300の側面(端面)、およびサブキャリア310のグランド面311を一体に覆う金属接合構造を形成して、グランド電極305とグランド面311とを接続することができる。
導電性ペーストは、例えば、低温溶融金属粒子を熱硬化樹脂中に分散させたペースト状材料として知られている。半田の代替として、溶融した金属粒子が自己組織化して金属接合部分を形成し、その周囲を熱硬化樹脂が強化することにより、接続信頼性が得られる。
図4は、実施例1のレーザアレイ光源のBER特性の測定系を示す図である。レーザアレイ光源50の4つのチャネルのレーザの各々に対して、独立してBERが測定できるように、4つのBER測定系が構成されている。1つのチャネルに対して、DC電源13−1、パルス発生器11−1、バイアスT12−1が備えられ、高周波プローブ41a、41bを経由して、変調信号が高周波配線板の信号線に供給される。また、DC電源13−5〜13−8は、DFBレーザに電流を供給している。変調された光出力は、先球ファイバ43によって効率良く結合され、可変波長フィルタ17および光可変アッテネータ14を経由して、光受信器15で受光される。エラー検出器16でエラーが観測される。
図5は、比較のための、静電遮蔽型グランド電極およびグランドワイヤ接続を持たない従来技術のレーザアレイ光源のBER特性測定系を示す図である。静電遮蔽型グランド電極305および他の基板のグランド面等の間を接続するワイヤがないことを除いては、実施例1と同様の構造および工程で実装を行ったEADFBレーザアレイ光源50のBER特性を測定した。
両測定系における測定条件は、信号レートが25Gbps、31段の擬似ランダムビットシーケンス(PRBS231−1)を用い、信号振幅電圧を2.0Vpp、クロスポイントを70%、室温条件を25℃一定とした。
最初に、各チャネル独立で動作させて測定を行った。静電遮蔽型グランド電極がある本実施例のレーザアレイ光源を測定した結果、全チャネルでエラーフリー動作が確認できた。最小受光感度は、チャネル1、チャネル2、チャネル3、チャネル4で、それぞれ−14.5dBm、−13.5dBm、−15dBm、−15dBmであった。また、静電遮蔽型グランド電極がないレーザアレイ光源50でも、全チャネルでエラーフリー動作が確認できた。最小受光感度は、チャネル1、チャネル2、チャネル3、チャネル4で、それぞれ−13.5dBm、−12.5dBm、−14dBm、−14dBmであった。
次に、全てのチャネルを同時に動作させて測定を行った。静電遮蔽型グランド電極がある本実施例のレーザアレイ光源40を測定した結果、全チャネルでエラーフリー動作が確認できた。最小受光感度は、チャネル1、チャネル2、チャネル3、チャネル4で、それぞれ−14.5dBm、-13dBm、−14.5dBm、−15dBmと、1チャネル独立動作時と比べてほとんど劣化は見られなかった。また、静電遮蔽型グランド電極がないレーザアレイ光源50でも、全チャネルでエラーフリー動作が確認できたが、最小受光感度はチャネル1、チャネル2、チャネル3、チャネル4、それぞれ、−10.5dBm、−9dBm、−10dBm、−11dBmとなり、1チャネル独立動作時と比べて3〜5dBも受光感度が劣化した。
静電遮蔽型グランド電極構造のある本発明のレーザアレイ光源40では、4チャネル同時動作の場合と、1チャネル独立動作の場合との間で、最小受光感度がほとんど劣化していない。一方で、静電遮蔽型グランド電極のないレーザアレイ光源50では、全チャネル同時動作時には、1チャネル独立動作時と比較して、明らかに最小受光感度の劣化が見られた。この差異は、隣接チャネル間でのクロストークによる波形の劣化が引き起こしているものと考えられる。さらに、1チャネル独立動作時同士で比較すると、静電遮蔽型グランド電極を有しないレーザアレイ光源50は、静電遮蔽型グランド電極を有する本発明のレーザアレイ光源40に比べて、最小受光感度が若干劣化していることがわかる。これは、EA変調器電極とDFBレーザ電極との間の結合によるクロストークによって、波形の劣化が生じているものと考えられる。
上述のように、本実施例の多チャネルレーザアレイ光源で使われている、静電遮蔽型グランド電極は、隣接チャネル間、および、EA変調器電極とDFBレーザ電極との間でのクロストーク低減に有効であることが分かる。
本発明のレーザアレイ光源におけるレーザアレイチップ300は、図3の(a)に示したように、EA変調器電極303全体を取り囲むように形成された遮蔽グランド電極305を備える。さらに、DFBレーザ電極304の三方向を取り囲むような形状を併せ持っている。しかしながら、各チャネルのレーザデバイス間で静電遮蔽を実現できるものであれば、図3の形状だけに限定されない。また、本実施例の静電遮蔽型グランド電極は、不連続部分が無い一体のものを例示的に示したが、電気信号の電磁波の波長(1/4波長)よりも十分に短い電極の不連続部分、切れ目、ギャップなどがあるような形状のグランド電極の場合でも、静電遮蔽は実現可能である。
実施例1のレーザアレイ光源は、合波器を集積したEADFBレーザアレイ光源を例として示したが、本発明のレーザアレイ光源における静電遮蔽型グランド電極は、他の構成のレーザアレイ光源にも適用できる。ここでは、半絶縁基板上に形成された直接変調DFBレーザアレイの例を示す。本実施例も、本発明に特有の静電遮蔽グランド電極の効果を示す一つの例示であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々の変更を行い得ることは言うまでもない。
図6は、実施例2の半絶縁基板上直接変調DFBレーザアレイチップの構成を示す図である。図6の(a)はレーザアレイチップ600の上面図を示し、(b)は、(a)の上面図におけるY−Y´断面を見た側面図である。(a)の上面図に示したように、レーザアレイチップ600は、4つのチャネルのレーザ素子からなる。レーザ素子は、少なくとも半導体基板、下部クラッド層、コア層および上部クラッド層を含む層構造を有し、高周波電気信号が現れる少なくとも1つ電極を有し、前記高周波電気信号を含む電気信号を光信号に変換する光機能素子の一例である。レーザアレイチップ600は、複数の光機能素子を備えている。
各レーザ素子は、DFBレーザ電極603a、603bと、各レーザ電極の3辺を囲うように構成されたコの字型静電遮蔽グランド電極604a、604bとからなる。各コの字型静電遮蔽グランド電極は、上面図上ではお互いに分離した別個のものである。したがって、コの字型電遮蔽グランド電極は、複数の光機能素子の隣接する2つの間に少なくともその一部がそれぞれ配置された、グランド電極であって、複数の光機能素子の隣接する2つ(603a、603b)の間に、グランド電極の2つの部分を有する。さらに、1つの光機能素子の両脇にある前記部分が、前記1つの光機能素子の前記少なくとも1つの電極を取り囲む一体のコの字型のグランド電極を構成し、1つの光機能素子の前記一体のグランド電極(604a)と、他の光機能素子の一体のグランド電極(604b)とは、レーザアレイチップ600上の複数の光機能素子の形成面上のパターンでは接続されていない。尚、実施例1のチップの構成とは異なり、本実施例のレーザアレイチップ600には、光合波器は含まれていない。
本実施例では、直接変調DFBレーザを構成するので、実施例1のようなEA変調器電極は存在しない。しかしながら、DFBレーザ電極上には、実施例1の場合と同様に、変調信号によって高周波電気信号が現れる。本実施例のコの字型静電遮蔽グランド電極は、隣り合うチャネル間でのDFBレーザ電極同士の結合を抑え、クロストークを減らす静電遮蔽の役割を果たす。本実施例では、各レーザのチャネルのセンター間隔は、400μmである。
図6の(b)により、本実施例のレーザアレイ光源における特有の構成を説明する。レーザアレイチップ600は、1つのレーザ素子に着目すると、半絶縁InP基板60の上に、n−InP下部クラッド層62、レーザ活性(コア)層63、p−InP上部クラッド層64が順次、形成された層構造を持つ。レーザ活性(コア)層および上部クラッド層の両脇には半絶縁InP層66a、66bが形成されている。隣り合うチャネルのレーザ素子間は、誘電体絶縁膜65によって分離されている。1つのレーザ素子の両側には、レーザ素子と誘電体絶縁膜とを区画するように、コの字型静電遮蔽グランド電極604a、604bが形成される。
コの字型静電遮蔽電極604a、604bは、これに限定されないが、例えば以下のように製作できる。最初に、コの字型静電遮蔽グランド電極604a、604bの下の部分を蒸着およびリフトオフ工程を使用して形成する。次に、誘電体絶縁膜65をスピンコートおよびフォトリソグラフィなどを使用して形成する。その後、コの字型静電遮蔽グランド電極604a、604bの上の部分を蒸着およびリフトオフ工程で形成する。コの字型静電遮蔽グランド電極604a、604bの最上面の隙間は、最後のリフトオフ工程で形成される。
本実施例のレーザアレイチップ600でも、高周波電気信号が現れるDFB電極603a、603bの最上面よりも高い位置に、コの字型静電遮蔽グランド電極604a、604bの最上面があることに特徴がある。本実施例でも、コの字型静電遮蔽グランド電極の形状は、図6の(b)の図の奥行き方向に立体構造が続くメサ構造に似たものとなる。グランド電極を立体的に形成して、高周波電気信号が現れるDFB電極の周囲を囲むような構成とすることで、平面的に形成されていた従来技術よりさらに静電遮蔽効果を強くする。本実施例のように、誘電体絶縁膜65を利用することによって、DFB電極603a、603bの最上面から、コの字型静電遮蔽グランド電極604a、604bの最上面までの高さHを100μm程度まで確保することが可能となる。
したがって、本実施例のレーザアレイ光源は、少なくとも半導体基板、下部クラッド層、コア層および上部クラッド層を含む層構造を有し、高周波電気信号が現れる少なくとも1つ電極を有し、前記高周波電気信号を含む電気信号を光信号に変換する複数の光機能素子と、前記複数の光機能素子の隣接する2つの間に少なくともその一部がそれぞれ配置された、1つ以上のグランド電極であって、前記複数の光機能素子の隣接する2つの間に、前記グランド電極の2つの部分を有し、1つの光機能素子の両脇にある前記部分が、前記1つの光機能素子の前記少なくとも1つの電極を取り囲む一体のグランド電極を構成し、前記1つの光機能素子の前記一体のグランド電極と、他の光機能素子の一体のグランド電極とは、前記複数の光機能素子の形成面上のパターンでは接続されておらず、前記形成面に平行な前記光機能素子の前記少なくとも1つの電極の最上面よりも高い位置にその最上面を有する、1つ以上のグランド電極とを含み、前記層構造が、前記下部クラッド層の直下に配置された、前記半導体基板よりも低い抵抗率を有する低抵抗率層をさらに含み、前記一体のグランド電極が前記低抵抗率層に接続されているレーザアレイチップを備えたことを特徴とする。
DFB電極603a、603bの最上面から静電遮蔽グランド電極604a、604bの最上面までの高さHは、例えば、隣り合う静電遮蔽グランド電極同士の間隔をGとするとき、概ね、H:G=1:1程度確保できれば、本発明の多チャネルレーザアレイ光源の静電遮蔽能力を発揮できる。
本実施例でさらに特徴的なのは、半絶縁InP基板60と、n−InP下部クラッド層62との間に、n−InP下部クラッド層62よりも抵抗率の低いn−InGaAsP低抵抗率層61が備えられていることである。コの字型静電遮蔽グランド電極および低抵抗率層61を接続することによって、下部クラッド層62から、レーザアレイチップ600外のサブキャリア上のグラウンド電極までの電気的経路の抵抗を下げる構造になっている。したがって、本実施例のレーザアレイ光源では、レーザ素子の層構造において、下部クラッド層の直下に配置された、半導体基板よりも低い抵抗率を有する低抵抗率層をさらに含み、一体のグランド電極(コの字型静電遮蔽グランド電極)がこの低抵抗率層に接続されていることになる。
レーザのバイアス電流はそれぞれ50mA、変調信号の信号振幅は40mAppとした。レーザの波長は、短波長側から1295nm、1300nm、1305nm、1310nmとし、最短波長からチャネル1、チャネル2、チャネル3、チャネル4とした。また、レーザアレイチップ600上のレーザ素子の、上から順にチャネル1、チャネル2、チャネル3、チャネル4とした。
図7は、本発明の実施例2の静電遮蔽グランド電極付き直接変調DFBレーザアレイ光源の構成図を示す図である。レーザアレイ光源70は、サブキャリア基板71上に、平面光波回路74、レンズアレイ75、レーザアレイチップ78、高周波配線板76が順次配置されている。平面光波回路74には、光合波器が構成されており、光ファイバ73と結合される。レーザアレイチップ78から平面光波回路75への光結合は、レンズアレイ78によって行う。レーザアレイチップ78は、サブキャリア71上のグランド面72上に配置される。
図6で示したように、レーザアレイチップ78上の各レーザデバイスを包囲し静電遮蔽するように形成されたコの字型静電遮蔽グランド電極を形成し、コの字型静電遮蔽グランド電極に対して、レーザアレイ光源を構成する1つ以上の他の基板(サブキャリア71、高周波配線板76)のグランドへのワイヤ接続を形成することによって、各チャネルのレーザデバイスに電気的経路の抵抗を下げたグランド経路が形成される。より具体的には、コの字型静電遮蔽グランド電極とサブキャリア71上のグランド面72とがワイヤで接続される。さらに、コの字型静電遮蔽グランド電極と、高周波配線板76上のグランド面とがワイヤで接続される。尚、本実施例ではワイヤ接続を例としているが、電気的接続手段によって、基板間において電気的経路の抵抗を下げたグランド経路が形成されば良い。実施例1と同様に、ワイヤ接続以外の電気的接続手段を使用できる。
本実施例でも、実施例1での説明したのと同様のメカニズムによって、隣接するチャネル間での静電遮蔽効果によって、レーザ素子のチャネル間のクロストークを減らす。本実施例におけるレーザアレイチップ600は、隣り合うレーザ電極603a、603bの間に、静電遮蔽グランド電極604a、604bが形成されている。レーザアレイチップ600上の静電遮蔽グランド電極604a、604bは、図7に示したように高周波配線板76やサブキャリア71上のグランド電極72とワイヤ等を使って接続されている。このため、静電遮蔽グランド電極604a、604bは、低インピーダンスの広いグランド面と最近接で接続され、非常に安定したグランド電極となる。
既に述べたように、本実施例でも、DFBレーザ電極603a、603bの最上面の高さに比べて、静電遮蔽グランド電極604a、604bの最上面が、高い位置にあることに特徴がある。静電遮蔽グランド電極604a、604bをこのような構造とすることで、例えば、DFBレーザ電極603aで発生する電磁波は遮蔽グランド電極604a、604bによって静電遮蔽され、隣のチャネルDFBレーザ電極603bに結合するのを抑制することが可能となる。隣接するチャネルの電極へのクロストークを抑制することができる。
上述のグランドワイヤによる接続に加えて本実施例のレーザアレイチップでは、静電遮蔽グランド電極604a、604bと下部クラッド層62との間の接続のために、n−InP下部クラッド層62よりも抵抗率の低い、高濃度ドープn−InGaAsP低抵抗率層61を備えている。これによって、各レーザ素子の直下におけるグランドをより安定化する効果が得られる。各レーザ素子間のクロストークの抑制をさらに効果的にするために、チャネル間でグランドを分離している。図6の(a)の上面図からわかるように、各チャネルの静電遮蔽グランド電極は、チップ600の上面内のパターンとしては別個の分離したものになっている。
さらに、チャネル間のグランド経路の分離を進めるために、低抵抗率層61もエッチングによってチャネル間で分離し、分離した間隙は誘電体絶縁膜65によって満たされている。図6の(b)における、低抵抗率層61が、チャネルごとに誘電体絶縁膜によって分離されていることに留意されたい。上述のように、個々のレーザ素子の周辺において、チャネル間で共通するグランド経路を減らしグランド経路を分離した構成とすることによって、チャネル間のクロストークをより低減する。したがって、本実施例では、複数の光機能素子(レーザ素子)は、下部クラッド層、コア層および上部クラッド層が隣接する光機能素子間で電気的に分離されており、低抵抗率層も、隣接する光機能素子間で電気的に分離されている。
次に、図7を参照しながら、本実施例のレーザアレイ光源の実装工程を説明する。まず、サブキャリア71の7のグラウンド電極72上に、DFBレーザアレイチップ78を搭載する。このとき、コの字型静電遮蔽グランド電極は、サブキャリア71のグランド面72と金ワイヤ79bで接続する。図7で、ワイヤで接続されている箇所は例示的なものであって、図7に示した具体的な接続箇所の位置に何ら限定されるものではない。
次に、サブキャリア71上に高周波配線基板76を搭載する。レーザアレイチップ78の上面および高周波配線基板76の上面の高さは、ワイヤ接続がし易いように概ね同じ高さとなるが、コの字型静電遮蔽グランド電極604a、604bの最上面の従来技術と比べてより高い位置を考慮して、高さが異なっていても良い。そして、高周波配線基板76の信号線とレーザアレイチップ78上のDFBレーザ電極との間、および、高周波配線基板76のグランド面とレーザアレイチップ78上のコの字型静電遮蔽グランド電極との間を、それぞれ金ワイヤなどで接続する。最後に、DFBレーザの各チャネルからの光が、光合波器に最大に結合されるように、レンズアレイ75および平面光波回路74を調芯して搭載する。次に、本実施例のレーザアレイ光源の特性について説明する。
図8は、実施例2のレーザアレイ光源のBER特性の測定系を示す図である。レーザアレイ光源80の4つのチャネルのレーザの各々に対して、独立してBERが測定できるように、4つのBER測定系が構成されている。1つのチャネルに対して、DC電源13−1、パルス発生器11−1、バイアスT12−1が備えられ、高周波プローブ81a、81bを経由して、変調信号が高周波配線板の信号線に供給される。変調された光出力は、ファイバ83によって結合され、可変波長フィルタ17および光可変アッテネータ14を経由して、光受信器15で受光される。エラー検出器16でエラーが観測される。
図9は、比較のために作製した、従来技術の構成による半絶縁基板上直接変調DBFレーザアレイチップ900の断面を示す図である。チップ900は、その上面がDFB電極上面よりも高い位置にあるコの字型静電遮蔽グランド電極、高周波配線板上のグランド面とのワイヤ接続、さらに、低抵抗率層91にチャネル間分離構造がない点で、図6の(b)のチップ600と相違する。これらの相違点を除いて、図6の(b)に示した本発明のレーザアレイチップと同様の構造を持つチップを使用して、同様の工程によってレーザアレイ光源の実装を行った。
図10は、図9の断面構成を持つ、静電遮蔽構造を有しない従来技術型のDFBレーザアレイ光源のBER特性測定系を示す図である。両測定系における測定条件は、信号レートが10Gbps、31段の擬似ランダムビットシーケンス(PRBS231−1)を用い、室温条件 を25℃一定として測定を行った。
最初に、各チャネル独立で動作させて測定を行った。本発明の静電遮蔽グランド電極構造およびチャネル間のグランド分離構造を有するレーザアレイ光源80を測定した結果、全チャネルでエラーフリー動作が確認できた。最小受光感度は、チャネル1、チャネル2、チャネル3、チャネル4それぞれで、−18.5dBm、−19.0dBm、−19.0dBm、−18.5dBmであった。また、従来技術型の、コの字型静電遮蔽グランド電極、ワイヤ接続、およびチャネル間分離構造がないレーザアレイ光源110でも、全チャネルでエラーフリー動作が確認できた。最小受光感度は、チャネル1、チャネル2、チャネル3、チャネル4それぞれ、−19dBm、−19dBm、−18.5dBm、−18dBmであった。
次に、4つのチャネルを同時に動作させて測定を行った。静電遮蔽グランド電極構造およびチャネル間のグランド分離構造を有する本発明のレーザアレイ光源80を測定した結果、全チャネルでエラーフリー動作が確認できた。最小受光感度は、チャネル1、チャネル2、チャネル3、チャネル4それぞれで、−18.5dBm、−18.5dBm、−19.0dBm、−18.5dBmと、1チャネル独立動作時と比べてほとんど劣化は見られなかった。従来技術型のレーザアレイ光源110でも、全チャネルでエラーフリー動作が確認できたが、最小受光感度はチャネル1、チャネル2、チャネル3、チャネル4それぞれ、−17.0dBm、−16.5dBm、−15.5dBm、−16.5dBmとなり、1チャネル独立動作時と比べて3〜4dBにもおよぶ受光感度の劣化がみられた。
静電遮蔽グランド電極構造およびチャネル間のグランド分離構造を有する本発明のレーザアレイ光源では、4チャネル同時動作時においても、1チャネル独立動作時と比較して最小受光感度はほとんど劣化しない。一方で、従来技術型のレーザアレイ光源では、4チャネル同時動作時の場合と1チャネル独立動作の場合とを比較すると、大幅に最小受光感度が劣化している。この差異は、チャネル間の高周波信号のクロストークによる波形の劣化が引き起こしているものと考えられる。
上述のように、本実施例の多チャネルレーザアレイ光源で使われている、DBF電極の上面よりも高い上面位置を持つ静電遮蔽グランド電極構造および、レーザ素子の直下に形成されチャネル間で分離された低抵抗率層を備え、静電遮蔽グランド電極を他の基板のグランド面と接続することによって、チャネル間のクロストーク低減することができる。
本実施例のレーザアレイ光源におけるレーザアレイチップ600は、図6の(a)に示したように、DFB電極603a、603bの三方を取り囲むように形成されたコの字型のグランド電極604a、604bを備える。しかしながら、各チャネルのレーザデバイス間で静電遮蔽を実現できるものであれば、図6のコの字型の形状だけに何ら限定されない。また、本実施例の静電遮蔽型グランド電極は、不連続部分が無い一体のものを例示的に示したが、高周波電気信号の電磁波の波長(1/4波長)よりも十分に短い電極の不連続部分、切れ目、ギャップなどがあるような形状のグランド電極の場合でも、静電遮蔽は実現可能である。
以上に詳細に説明したように、本発明のレーザアレイ光源は、多チャネルレーザアレイチップ上に安定したグランド電極を提供することでチャネル間のクロストークによる信号劣化を抑制し、高性能な多チャネルレーザアレイ光源を実現することができる。