以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、現実のものとは異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
また、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
図1は、本発明の実施の形態に係るインクジェット印刷装置の構成を示すブロック図である。図2は、図1に示すインクジェット印刷装置の制御部の構成を示すブロック図である。図3は、図1に示すインクジェット印刷装置の印刷部および圧力付与部の概略構成図である。なお、以下の説明における上下方向は鉛直方向であり、図3における紙面の上下を上下方向とする。
図1に示すように、本実施の形態に係るインクジェット印刷装置1は、4つの印刷部2と、圧力付与部3と、搬送部4と、操作パネル5と、制御部6とを備える。
印刷部2は、インクを循環させつつ、搬送部4により搬送される用紙にインクを吐出して画像を印刷する。4つの印刷部2は、それぞれ異なる色(例えば、ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー)のインクを吐出する。4つの印刷部2は、吐出するインクの色が異なる以外は、同様の構成を有する。
図3に示すように、印刷部2は、インクジェットヘッド11と、インク循環部12と、インク補給部13とを備える。
インクジェットヘッド11は、インク循環部12により供給されるインクを吐出する。インクジェットヘッド11は、複数のヘッドモジュール16からなる。
ヘッドモジュール16は、インクを貯留するインクチャンバ(図示せず)と、インクを吐出する複数のノズル(図示せず)とを有する。インクチャンバ内には、ピエゾ素子(図示せず)が配置されている。ピエゾ素子の駆動により、ノズルからインクが吐出される。
インク循環部12は、インクを循環させつつインクジェットヘッド11にインクを供給する。インク循環部12は、加圧タンク21と、分配器22と、集合器23と、負圧タンク24と、インクポンプ(請求項のインク送液部に相当)25と、インク温度調整部26と、インク温度センサ27と、配管28〜30とを備える。
加圧タンク21は、インクジェットヘッド11に供給するインクを貯留する。加圧タンク21のインクは、配管28および分配器22を介してインクジェットヘッド11に供給される。加圧タンク21内には、インクの液面上に空気層が形成されている。加圧タンク21は、後述の配管63を介して、後述の加圧共通気室51に接続されている。加圧タンク21は、インクジェットヘッド11より低い位置(下方)に配置されている。
加圧タンク21は、インクジェットヘッド11のノズルのメニスカスが破壊されて分配器22および配管28の内部のインクが加圧タンク21に落下しても、それを受け入れるだけの容量を有する。ただし、加圧タンク21が大きすぎると装置の大型化を招く。このため、加圧タンク21は、分配器22および配管28の内部のインクがすべて加圧タンク21に落下したときに満杯になる程度の容量を有する。
加圧タンク21には、加圧タンク基準液面センサ31と、加圧タンク満杯センサ32と、インクフィルタ33とが設けられている。
加圧タンク基準液面センサ31は、加圧タンク21内のインクの液面高さが基準高さに達しているか否かを検出するためのものである。基準高さは、加圧タンク21の上端から所定距離だけ下方にある。加圧タンク基準液面センサ31は、加圧タンク21内の液面高さが基準高さ以上である場合に「オン」を示す信号を出力し、基準高さ未満である場合に「オフ」を示す信号を出力する。
加圧タンク満杯センサ32は、加圧タンク21がインクで満杯であるか否かを検出するためのものである。加圧タンク満杯センサ32は、加圧タンク21が満杯である場合に「オン」を示す信号を出力し、満杯でない場合に「オフ」を示す信号を出力する。なお、加圧タンク満杯センサ32および後述の負圧タンク満杯センサ37が、請求項のインク落下検出部に相当する。
インクフィルタ33は、インク内のゴミ等を除去する。
分配器22は、配管28を介して加圧タンク21から供給されるインクを、インクジェットヘッド11の各ヘッドモジュール16に分配する。
集合器23は、インクジェットヘッド11で消費されなかったインクを各ヘッドモジュール16から集める。集合器23により集められたインクは、配管29を介して負圧タンク24へと流れる。
負圧タンク24は、インクジェットヘッド11で消費されなかったインクを集合器23から受け取って貯留する。また、負圧タンク24は、後述するインク補給部13のインクカートリッジ46から供給されるインクを貯留する。負圧タンク24内には、インクの液面上に空気層が形成されている。負圧タンク24は、後述の配管64を介して、後述の負圧共通気室56に接続されている。負圧タンク24は、加圧タンク21と同じ高さに配置されている。
負圧タンク24は、インクジェットヘッド11のノズルのメニスカスが破壊されてインクジェットヘッド11、集合器23、および配管29の内部のインクが負圧タンク24に落下しても、それを受け入れるだけの容量を有する。ただし、負圧タンク24が大きすぎると装置の大型化を招く。このため、負圧タンク24は、インクジェットヘッド11、集合器23および配管29の内部のインクがすべて負圧タンク24に落下したときに満杯になる程度の容量を有する。
負圧タンク24には、負圧タンク基準液面センサ36と、負圧タンク満杯センサ37とが設けられている。
負圧タンク基準液面センサ36は、負圧タンク24内のインクの液面高さが基準高さに達しているか否かを検出するためのものである。基準高さは、負圧タンク24の上端から所定距離だけ下方にある。負圧タンク基準液面センサ36は、負圧タンク24内の液面高さが基準高さ以上である場合に「オン」を示す信号を出力し、基準高さ未満である場合に「オフ」を示す信号を出力する。
負圧タンク満杯センサ37は、負圧タンク24がインクで満杯であるか否かを検出するためのものである。負圧タンク満杯センサ37は、負圧タンク24が満杯である場合に「オン」を示す信号を出力し、満杯でない場合に「オフ」を示す信号を出力する。
インクポンプ25は、負圧タンク24から加圧タンク21へインクを送液する。インクポンプ25は、配管30の途中に設けられている。
インク温度調整部26は、インク循環部12におけるインクの温度を調整する。インク温度調整部26は、配管28の途中に設けられている。インク温度調整部26は、ヒータ41と、ヒータ温度センサ42と、ヒートシンク43と、冷却ファン44とを備える。
ヒータ41は、配管28内のインクを加熱する。ヒータ温度センサ42は、ヒータ41の温度を検出する。ヒートシンク43は、放熱により配管28内のインクを冷却する。冷却ファン44は、ヒートシンク43に冷却風を送る。
インク温度センサ27は、インク循環部12におけるインクの温度を検出する。インク温度センサ27は、配管28の途中に設けられている。
配管28は、加圧タンク21と分配器22とを接続する。配管28の一部は、ヒータ41を経由する部分とヒートシンク43を経由する部分とに分岐している。配管28には、加圧タンク21から分配器22に向かってインクが流れる。配管29は、集合器23と負圧タンク24とを接続する。配管29には、集合器23から負圧タンク24に向かってインクが流れる。配管30は、負圧タンク24と加圧タンク21とを接続する。配管30には、負圧タンク24から加圧タンク21に向かってインクが流れる。配管28〜30と分配器22と集合器23とにより、加圧タンク21とインクジェットヘッド11と負圧タンク24との間でインクを循環させる循環経路が構成される。
インク補給部13は、インク循環部12にインクを補給する。インク補給部13は、インクカートリッジ46と、インク補給弁47と、配管48とを備える。
インクカートリッジ46は、印刷部2で印刷に用いるインクを収容している。インクカートリッジ46内のインクは、配管48を介して負圧タンク24に供給される。
インク補給弁47は、配管48内のインクの流路を開閉する。負圧タンク24へインクを補給する際、インク補給弁47が開かれる。
配管48は、インクカートリッジ46と負圧タンク24とを接続する。配管48には、インクカートリッジ46から負圧タンク24に向かってインクが流れる。
圧力付与部3は、加圧タンク21に正圧を付与し、負圧タンク24に負圧および正圧を選択的に付与する。圧力付与部3は、すべての印刷部2に共通のものである。圧力付与部3は、加圧共通気室51と、4つの加圧側連通弁52と、加圧側圧力調整弁53と、加圧側大気開放弁54と、加圧側圧力センサ55と、負圧共通気室56と、4つの負圧側連通弁57と、負圧側圧力調整弁58と、負圧側大気開放弁59と、負圧側圧力センサ60と、エアポンプ61と、負圧側加圧用切替弁62と、4本の配管63と、4本の配管64と、配管65〜73と、エアフィルタ74と、オーバーフローパン75とを備える。なお、加圧側連通弁52および負圧側連通弁57が、請求項の切断部に相当する。
加圧共通気室51は、複数の印刷部2の加圧タンク21の圧力を等しくするための気室である。加圧共通気室51は、4本の配管63により4つの印刷部2の加圧タンク21の空気層に接続されている。
加圧側連通弁52は、配管63内の空気の流路を開閉する。4つの加圧側連通弁52は、各印刷部2に1つずつ対応して設けられている。加圧側連通弁52は、配管63の途中に配置されている。加圧側連通弁52が開かれているとき、当該加圧側連通弁52に対応する印刷部2の加圧タンク21の空気層と加圧共通気室51とが連通される。これにより、対応する加圧側連通弁52が開かれている各印刷部2の加圧タンク21どうしが、加圧共通気室51および配管63を介して連通される。加圧側連通弁52が閉じられているとき、当該加圧側連通弁52に対応する印刷部2の加圧タンク21と加圧共通気室51との接続が切断される。
加圧側圧力調整弁53は、加圧共通気室51および加圧タンク21の圧力を調整するために、配管69内の空気の流路を開閉する。加圧側圧力調整弁53は、配管69の途中に設けられている。
加圧側大気開放弁54は、加圧共通気室51および加圧タンク21を密閉状態(大気から遮断した状態)と大気開放状態(大気に通じた状態)との間で切り替えるために、配管70内の空気の流路を開閉する。加圧側大気開放弁54は、配管70の途中に設けられている。
加圧側圧力センサ55は、加圧共通気室51内の圧力を検出する。加圧共通気室51内の圧力は、開かれている加圧側連通弁52に対応する印刷部2の加圧タンク21内の圧力と等しい。開かれている加圧側連通弁52に対応する印刷部2の加圧タンク21の空気層と加圧共通気室51とが連通されるためである。
負圧共通気室56は、複数の印刷部2の負圧タンク24の圧力を等しくするための気室である。負圧共通気室56は、4本の配管64により4つの印刷部2の負圧タンク24の空気層に接続されている。
負圧側連通弁57は、配管64内の空気の流路を開閉する。4つの負圧側連通弁57は、各印刷部2に1つずつ対応して設けられている。負圧側連通弁57は、配管64の途中に配置されている。負圧側連通弁57が開かれているとき、当該負圧側連通弁57に対応する印刷部2の負圧タンク24の空気層と負圧共通気室56とが連通される。これにより、対応する負圧側連通弁57が開かれている各印刷部2の負圧タンク24どうしが、負圧共通気室56および配管64を介して連通される。負圧側連通弁57が閉じられているとき、当該負圧側連通弁57に対応する印刷部2の負圧タンク24と負圧共通気室56との接続が切断される。加圧側連通弁52と負圧側連通弁57とを閉じることで、印刷部2の圧力付与部3との接続を個別に切断できる。
負圧側圧力調整弁58は、負圧共通気室56および負圧タンク24の圧力を調整するために、配管71内の空気の流路を開閉する。負圧側圧力調整弁58は、配管71の途中に設けられている。
負圧側大気開放弁59は、負圧共通気室56および負圧タンク24を密閉状態と大気開放状態との間で切り替えるために、配管72内の空気の流路を開閉する。負圧側大気開放弁59は、配管72の途中に設けられている。
負圧側圧力センサ60は、負圧共通気室56内の圧力を検出する。負圧共通気室56内の圧力は、開かれている負圧側連通弁57に対応する印刷部2の負圧タンク24内の圧力と等しい。開かれている負圧側連通弁57に対応する印刷部2の負圧タンク24の空気層と負圧共通気室56とが連通されるためである。
エアポンプ61は、負圧側加圧用切替弁62から加圧共通気室51へ向けて空気を送る。エアポンプ61は、配管65の途中に設けられている。
負圧側加圧用切替弁62は、エアポンプ61の駆動により負圧共通気室56に付与される圧力を正圧と負圧との間で切り替える。負圧側加圧用切替弁62は、四方弁からなる。負圧側加圧用切替弁62は、第1ポート81a、第2ポート81b、第3ポート81c、第4ポート81d、および第5ポート81eを有する。第1ポート81aには配管65が接続されている。第2ポート81bには配管66が接続されている。第4ポート81dには配管67が接続されている。第5ポート81eには配管68が接続されている。第3ポート81cは、キャップ82により封止されている。
負圧側加圧用切替弁62は、内部の弁体(図示せず)の駆動により、図4(a)に示す設定と、図4(b)に示す設定との間で各ポートの接続関係を切り替えることができる。
図4(a)に示す設定では、第1ポート81aと第4ポート81dとが接続され、第2ポート81bと第3ポート81cとが接続される。このとき、第5ポート81eは、負圧側加圧用切替弁62の内部の弁体により閉鎖される。図4(a)に示す設定では、エアポンプ61の駆動により、負圧共通気室56から空気が吸引されて負圧共通気室56が減圧されるとともに、加圧共通気室51に空気が流入して加圧共通気室51が加圧される。すなわち、負圧共通気室56に負圧が付与され、加圧共通気室51に正圧が付与される。なお、第3ポート81cはキャップ82により封止されているため、外部の空気が第3ポート81c、第2ポート81bを通過して配管66に流入することはない。図4(a)に示す設定を、負圧側減圧設定とよぶ。
図4(b)に示す設定では、第1ポート81aと第2ポート81bとが接続され、第4ポート81dと第5ポート81eとが接続される。このとき、第3ポート81cは、負圧側加圧用切替弁62の内部の弁体により閉鎖される。図4(b)に示す設定では、エアポンプ61の駆動により、配管65から加圧共通気室51に空気が流入して加圧共通気室51が加圧される。また、加圧共通気室51から配管68、負圧側加圧用切替弁62、配管67を介して負圧共通気室56に空気が送られて負圧共通気室56も加圧される。すなわち、加圧共通気室51および負圧共通気室56に正圧が付与される。図4(b)に示す設定を、負圧側加圧設定とよぶ。
配管63は、加圧共通気室51と印刷部2の加圧タンク21とを接続する。4本の配管63は、各印刷部2に1本ずつ対応して設けられている。配管63は、一端が加圧共通気室51に接続され、他端が加圧タンク21の空気層に接続されている。
配管64は、負圧共通気室56と印刷部2の負圧タンク24とを接続する。4本の配管64は、各印刷部2に1本ずつ対応して設けられている。配管64は、一端が負圧共通気室56に接続され、他端が負圧タンク24の空気層に接続されている。
配管65は、負圧側加圧用切替弁62の第1ポート81aと加圧共通気室51とを接続する。配管65には、エアポンプ61が配置されている。
配管66は、負圧側加圧用切替弁62の第2ポート81bと配管73とを接続する。配管67は、負圧側加圧用切替弁62の第4ポート81dと負圧共通気室56とを接続する。配管68は、負圧側加圧用切替弁62の第5ポート81eと加圧共通気室51とを接続する。
配管69,70は、それぞれ一端が加圧共通気室51に接続され、他端が配管73に接続されている。配管71,72は、それぞれ一端が負圧共通気室56に接続され、他端が配管73に接続されている。配管73は、一端(上端)がエアフィルタ74を介して大気に通じ、他端がオーバーフローパン75に接続されている。
エアフィルタ74は、配管73の上端に設けられ、空気中のゴミ等の進入を防止するものである。
オーバーフローパン75は、例えばインク補給弁47の異常により、加圧タンク21、負圧タンク24からインクが溢れ、さらに加圧共通気室51、負圧共通気室56からもインクが溢れ出た場合に、配管73を流れてくるインクを受け取る。
オーバーフローパン75には、オーバーフローボール86が設けられている。オーバーフローボール86は、オーバーフローパン75にインクがない場合に、オーバーフローパン75の底面に開口する配管73の他端を閉鎖し、配管73への外部の空気の流入を防ぐものである。配管73からオーバーフローパン75へインクが流れてくると、オーバーフローボール86は浮き上がり、オーバーフローパン75にインクが流入できる。
また、オーバーフローパン75には、オーバーフロー液面センサ87が設けられている。オーバーフロー液面センサ87は、オーバーフローパン75内のインクの液面高さが所定高さに達しているか否かを検出するためのものである。
オーバーフローパン75は、廃液タンク(図示せず)に接続されており、オーバーフロー液面センサ87で液面が検出されると、廃液タンクへインクが排出されるようになっている。
搬送部4は、給紙台(図示せず)から用紙を取り出し、その用紙を搬送経路に沿って搬送する。搬送部4は、用紙を搬送するためのローラ、ローラを駆動させるモータ(いずれも図示せず)等を有する。
操作パネル5は、各種の入力画面等を表示するとともに、ユーザによる入力操作を受け付ける。操作パネル5は、各種の操作キー、タッチパネル等を有する入力部と、液晶表示パネル等を有する表示部(いずれも図示せず)とを備える。
制御部6は、インクジェット印刷装置1全体の動作を制御する。図2に示すように、制御部6は、主コントローラ91と、メカコントローラ92とを備える。
主コントローラ91は、インクジェット印刷装置1全体の制御を司る。主コントローラ91は、CPU(Central Processing Unit)101と、メモリ102と、HDD(Hard Disk Drive)103と、外部I/F(インタフェース)104と、メカコントローラI/F105と、ユーザI/F106と、ヘッドI/F107とを備える。
CPU101は、演算処理を実行する。メモリ102は、一時的なデータの保存や演算時におけるCPU101のワークエリアとして使用されるものである。HDD103は、各種のプログラム等を記憶する。
外部I/F104は、ネットワークを介して外部の装置との間でデータの送受信を行う。メカコントローラI/F105は、主コントローラ91にメカコントローラ92を接続する。ユーザI/F106は、主コントローラ91に操作パネル5を接続する。ヘッドI/F107は、主コントローラ91にインクジェットヘッド11を接続する。
メカコントローラ92は、印刷部2におけるインク循環およびインク補給の制御、圧力付与部3による圧力制御、および搬送部4による用紙搬送の制御を行う。メカコントローラ92は、CPU111と、メモリ112と、センサI/F113と、主コントローラI/F114と、アクチュエータI/F115と、ドライバユニット116とを備える。
CPU111は、演算処理を実行する。メモリ112は、一時的なデータの保存や演算時におけるCPU111のワークエリアとして使用されるものである。
センサI/F113は、メカコントローラ92に加圧タンク基準液面センサ31等の各種センサを接続する。主コントローラI/F114は、メカコントローラ92を主コントローラ91に接続する。アクチュエータI/F115は、ドライバユニット116に制御信号を送信する。
ドライバユニット116は、インクポンプ25、エアポンプ61、搬送部4のモータ等のそれぞれを駆動させる各種ドライバを有する。
制御部6は、印刷ジョブに基づき印刷処理を実行する。インク循環部12におけるインクの落下が発生している印刷部2がある場合は、制御部6は、印刷処理を開始する前に、事前処理を実行する。
印刷処理は、インク循環動作を行いつつ、インクジェットヘッド11からインクを吐出して印刷を行うものである。インク循環動作は、圧力付与部3により加圧タンク21に正圧を付与し、負圧タンク24に負圧を付与するとともに、加圧タンク21および負圧タンク24の液面高さに応じてインクポンプ25の駆動を制御することで、循環経路に沿ってインクを循環させる動作である。
インク循環部12におけるインクの落下とは、インクジェットヘッド11およびインクジェットヘッド11を経由する加圧タンク21から負圧タンク24までの経路の内部のインクが、加圧タンク21および負圧タンク24に流れ落ちることである。インクジェットヘッド11を経由する加圧タンク21から負圧タンク24までの経路は、配管28、分配器22、集合器23、配管29からなる。以降において、この経路を、ヘッド側インク経路と呼ぶことがある。
インク循環部12におけるインクの落下は、例えば、振動によりインクジェットヘッド11のノズルのメニスカスが破壊されることにより発生する。ノズルのメニスカスを破壊する振動としては、例えば、インクジェット印刷装置1の移動時に生じる振動がある。インクジェットヘッド11のノズルのメニスカスが破壊されると、インクジェットヘッド11がノズルから空気を吸い込む。これにより、分配器22および配管28の内部のインクが加圧タンク21に流れ落ち、インクジェットヘッド11、集合器23、および配管29の内部のインクが負圧タンク24に流れ落ちる。
事前処理は、インクジェットヘッド11およびヘッド側インク経路にインクが充填された状態とするための処理である。事前処理において、制御部6は、圧力付与部3により加圧タンク21および負圧タンク24に正圧を付与するとともにインクポンプ25を駆動させて加圧タンク21および負圧タンク24からインクジェットヘッド11に向かう互いに逆方向のインクの流れを形成する処理を行う。
次に、インクジェット印刷装置1の動作について説明する。
図5は、インクジェット印刷装置1の動作を説明するためのフローチャートである。図5のフローチャートの処理は、インクジェット印刷装置1に印刷ジョブが入力されることにより開始となる。
図5のステップS1において、メカコントローラ92のCPU111は、インク循環部12におけるインクの落下が発生している印刷部2があるか否かを判断する。ここで、CPU111は、加圧タンク満杯センサ32および負圧タンク満杯センサ37のうちの少なくともいずれか一方がオンになっている印刷部2は、インクの落下が発生していると判断する。
インク循環部12におけるインクの落下が発生している印刷部2があると判断した場合(ステップS1:YES)、ステップS2において、CPU111は、事前処理を実行する。事前処理の詳細は後述する。
次いで、ステップS3において、主コントローラ91のCPU101およびメカコントローラ92のCPU111は、印刷処理を実行する。印刷処理の詳細は後述する。
ステップS1において、インク循環部12におけるインクの落下が発生している印刷部2はないとCPU111が判断した場合(ステップS1:NO)、ステップS2の事前処理が省略され、ステップS3の印刷処理が実行される。
次に、上述した図5のステップS2の事前処理について説明する。図6〜図8は、事前処理のフローチャートである。
図6のステップS11において、CPU111は、インク循環部12におけるインクの落下が発生していない印刷部2があるか否かを判断する。
インクの落下が発生していない印刷部2があると判断した場合(ステップS11:YES)、ステップS12において、CPU111は、事前処理の処理対象ではない印刷部2に対応する加圧側連通弁52および負圧側連通弁57を閉じる。ここで、インクの落下が発生している印刷部2が、事前処理の処理対象の印刷部2である。すなわち、事前処理の処理対象ではない印刷部2は、インクの落下が発生していない印刷部2である。事前処理の処理対象ではない印刷部2に対応する加圧側連通弁52および負圧側連通弁57が閉じられることで、その印刷部2と圧力付与部3との接続が切断される。なお、インクジェット印刷装置1が印刷を行わない待機中は、各印刷部2に対応する加圧側連通弁52および負圧側連通弁57は開かれている。
次いで、ステップS13において、CPU111は、加圧側大気開放弁54および負圧側大気開放弁59を閉じる。加圧側大気開放弁54を閉じることにより、加圧共通気室51を介して処理対象の印刷部2の加圧タンク21が密閉状態となる。また、負圧側大気開放弁59を閉じることにより、負圧共通気室56を介して処理対象の印刷部2の負圧タンク24が密閉状態となる。なお、インクジェット印刷装置1の待機中は、加圧側大気開放弁54および負圧側大気開放弁59は開かれている。加圧側圧力調整弁53および負圧側圧力調整弁58は待機中から閉じられている。
ステップS11において、すべての印刷部2でインクの落下が発生していると判断した場合(ステップS11:NO)、CPU111は、ステップS12を省略してステップS13の処理を行う。
ステップS13に続いて、ステップS14において、CPU111は、負圧側加圧用切替弁62を負圧側加圧設定とする。なお、インクジェット印刷装置1の待機中は、負圧側加圧用切替弁62は負圧側減圧設定になっている。
次いで、ステップS15において、CPU111は、エアポンプ61を起動する。これにより、加圧共通気室51および処理対象の印刷部2の加圧タンク21が加圧されるとともに、負圧共通気室56および処理対象の印刷部2の負圧タンク24も加圧される。
次いで、ステップS16において、CPU111は、処理対象の印刷部2のインクポンプ25を起動する。これにより、負圧タンク24から加圧タンク21へインクが送られる。加圧タンク21は、このインクの流入によっても加圧される。
このように、エアポンプ61およびインクポンプ25が駆動されて加圧タンク21および負圧タンク24に正圧が付与されることで、加圧タンク21および負圧タンク24からインクジェットヘッド11に向かう互いに逆方向のインクの流れが形成される。これにより、インクジェットヘッド11およびヘッド側インク経路に対し、加圧タンク21および負圧タンク24の両側からインクが充填されていく。なお、この際、インクジェットヘッドおよびヘッド側インク経路内の空気は、インクジェットヘッド11のノズルから抜ける。
次いで、ステップS17において、CPU111は、処理対象の印刷部2の少なくともいずれかで負圧タンク基準液面センサ36がオンからオフに変化したか否かを判断する。負圧タンク基準液面センサ36がオンからオフに変化した印刷部2がないと判断した場合(ステップS17:NO)、CPU111は、ステップS17を繰り返す。
処理対象の印刷部2の少なくともいずれかで負圧タンク基準液面センサ36がオンからオフに変化したと判断した場合(ステップS17:YES)、ステップS18において、CPU111は、その印刷部2に対応する加圧側連通弁52および負圧側連通弁57を閉じる。また、CPU111は、その印刷部2のインクポンプ25を停止する。これにより、その印刷部2と圧力付与部3との接続が切断されるとともに、加圧タンク21および負圧タンク24からインクジェットヘッド11へ向かうインクの流れが止まる。
次いで、ステップS19において、CPU111は、すべての処理対象の印刷部2の負圧タンク基準液面センサ36がオフであるか否かを判断する。処理対象の印刷部2のなかに負圧タンク基準液面センサ36がオンの印刷部2があると判断した場合(ステップS19:NO)、CPU111は、ステップS17に戻る。
すべての処理対象の印刷部2の負圧タンク基準液面センサ36がオフであると判断した場合(ステップS19:YES)、ステップS20において、CPU111は、エアポンプ61を停止する。
次いで、図7のステップS21において、CPU111は、最後に負圧タンク基準液面センサ36がオフになった処理対象の印刷部2のインクポンプ25を停止する。
これにより、最後に負圧タンク基準液面センサ36がオフになった処理対象の印刷部2における加圧タンク21および負圧タンク24からインクジェットヘッド11へ向かうインクの流れが止まる。この結果、すべての処理対象の印刷部2において、負圧タンク24内のインクの液面が基準高さにまで下がった状態となる。
次いで、ステップS22において、CPU111は、処理対象の印刷部2に対応する加圧側連通弁52および負圧側連通弁57を開く。ここで、最後に負圧タンク基準液面センサ36がオフになった処理対象の印刷部2に対応する加圧側連通弁52および負圧側連通弁57は閉じられていないため、開状態を維持する。
次いで、ステップS23において、CPU111は、負圧側加圧用切替弁62を負圧側減圧設定に切り替える。
次いで、ステップS24において、CPU111は、エアポンプ61を起動する。これにより、加圧共通気室51および処理対象の印刷部2の加圧タンク21が加圧されるとともに、負圧共通気室56および処理対象の印刷部2の負圧タンク24が減圧される。
次いで、ステップS25において、CPU111は、処理対象の印刷部2のインクポンプ25を起動する。これにより、負圧タンク24から加圧タンク21へインクが送られる。加圧タンク21は、このインクの流入によっても加圧される。
このように、加圧タンク21に正圧が付与され、負圧タンク24に負圧が付与されることで、加圧タンク21からインクジェットヘッド11へ向かってインクが流れる。
次いで、ステップS26において、CPU111は、処理対象の印刷部2の少なくともいずれかで加圧タンク基準液面センサ31がオンからオフに変化したか否かを判断する。加圧タンク基準液面センサ31がオンからオフに変化した印刷部2がないと判断した場合(ステップS26:NO)、CPU111は、ステップS26を繰り返す。
処理対象の印刷部2の少なくともいずれかで加圧タンク基準液面センサ31がオンからオフに変化したと判断した場合(ステップS26:YES)、ステップS27において、CPU111は、その印刷部2に対応する加圧側連通弁52および負圧側連通弁57を閉じる。また、CPU111は、その印刷部2のインクポンプ25を停止する。これにより、その印刷部2と圧力付与部3との接続が切断されるとともに、加圧タンク21からインクジェットヘッド11へ向かうインクの流れが止まる。
次いで、ステップS28において、CPU111は、すべての処理対象の印刷部2の加圧タンク基準液面センサ31がオフであるか否かを判断する。処理対象の印刷部2のなかに加圧タンク基準液面センサ31がオンの印刷部2があると判断した場合(ステップS28:NO)、CPU111は、ステップS26に戻る。
すべての処理対象の印刷部2の加圧タンク基準液面センサ31がオフであると判断した場合(ステップS28:NO)、ステップS29において、CPU111は、エアポンプ61を停止する。
次いで、ステップS30において、CPU111は、最後に加圧タンク基準液面センサ31がオフになった処理対象の印刷部2のインクポンプ25を停止する。
これにより、最後に加圧タンク基準液面センサ31がオフになった処理対象の印刷部2における加圧タンク21からインクジェットヘッド11へ向かうインクの流れが止まる。この結果、すべての処理対象の印刷部2において、加圧タンク21内のインクの液面が基準高さにまで下がった状態となる。
次いで、図8のステップS31において、CPU111は、閉じられている加圧側連通弁52および負圧側連通弁57を開く。
次いで、ステップS32において、CPU111は、加圧側大気開放弁54および負圧側大気開放弁59を開く。これにより、各印刷部2の加圧タンク21が加圧共通気室51を介して大気開放状態となり、負圧タンク24が負圧共通気室56を介して大気開放状態となる。これにより、事前処理が終了となる。
後述するように、インクジェット印刷装置1では、加圧タンク21および負圧タンク24の液面を基準高さ付近に維持するよう制御される。このため、インクジェット印刷装置1の待機中において、インク循環部12におけるインクの落下が発生する前は、加圧タンク21および負圧タンク24の液面は基準高さ付近になっている。また、インクジェットヘッド11およびヘッド側インク経路にはインクが充満している。
インク循環部12におけるインクの落下が発生すると、加圧タンク21および負圧タンク24が満杯になる。インクジェットヘッド11およびヘッド側インク経路からはインクが流れ落ちている。これに対し、上述の事前処理では、加圧タンク21および負圧タンク24の液面を基準高さにまで下げることで、インクジェットヘッド11およびヘッド側インク経路にインクが充填された状態とすることができる。
次に、上述した図5のステップS3の印刷処理について説明する。図9は、印刷処理のフローチャートである。
図9のステップS41において、メカコントローラ92のCPU111は、各印刷部2の液面維持制御を開始する。液面維持制御は、加圧タンク21および負圧タンク24の液面を基準高さ付近に維持するための、加圧タンク21および負圧タンク24の液面高さに応じたインクポンプ25およびインク補給弁47の制御である。
具体的には、図10に示すように、加圧タンク基準液面センサ31および負圧タンク基準液面センサ36がともにオンの状態では、CPU111は、インクポンプ25をオフ、インク補給弁47を閉とする。加圧タンク基準液面センサ31がオンで負圧タンク基準液面センサ36がオフの状態でも同様に、CPU111は、インクポンプ25をオフ、インク補給弁47を閉とする。
加圧タンク基準液面センサ31がオフで負圧タンク基準液面センサ36がオンの状態では、CPU111は、インクポンプ25をオン、インク補給弁47を閉とする。
加圧タンク基準液面センサ31および負圧タンク基準液面センサ36がともにオフの状態では、CPU111は、インクポンプ25をオフ、インク補給弁47を開とする。
図9に戻り、ステップS41に続いて、ステップS42において、CPU111は、加圧側大気開放弁54および負圧側大気開放弁59を閉じる。これにより、各印刷部2の加圧タンク21が加圧共通気室51を介して密閉状態となり、負圧タンク24が負圧共通気室56を介して密閉状態となる。
なお、加圧側圧力調整弁53および負圧側圧力調整弁58は待機中から閉じられている。また、加圧側連通弁52および負圧側連通弁57は待機中からすべて開かれている。また、負圧側加圧用切替弁62は負圧側減圧設定になっている。
次いで、ステップS43において、CPU111は、圧力制御を開始する。圧力制御は、加圧タンク21、負圧タンク24にそれぞれ規定値の正圧、負圧を付与し、それらを維持するための、エアポンプ61、加圧側圧力調整弁53、および負圧側圧力調整弁58の制御である。
具体的には、CPU111は、圧力制御を開始すると、エアポンプ61を起動する。これにより、負圧共通気室56から加圧共通気室51へ空気が送られることで、負圧共通気室56および負圧タンク24が減圧され、加圧共通気室51および加圧タンク21が加圧される。これにより、加圧タンク21からインクジェットヘッド11へ向けてインクが流れる。
CPU111は、加圧側圧力センサ55の検出値(加圧側圧力)、負圧側圧力センサ60の検出値(負圧側圧力)が、それぞれ加圧側圧力の規定値、負圧側圧力の規定値になると、エアポンプ61を停止する。加圧側圧力および負圧側圧力の規定値は、インクを循環させつつ、インクジェットヘッド11のノズル圧を適正範囲内にするための値として予め設定された値である。ここで、CPU111は、加圧側圧力および負圧側圧力を規定値にするために、加圧側圧力センサ55および負圧側圧力センサ60の検出値に応じて加圧側圧力調整弁53および負圧側圧力調整弁58の開閉を制御し、加圧側圧力および負圧側圧力を調整する。
また、圧力制御の開始後は、一度加圧側圧力および負圧側圧力が規定値になった後も、それを維持するように、CPU111は、加圧側圧力センサ55および負圧側圧力センサ60の検出値に応じて、エアポンプ61の駆動、加圧側圧力調整弁53および負圧側圧力調整弁58の開閉を適宜行う。
圧力制御の開始後、ステップS44において、CPU111は、加圧側圧力および負圧側圧力がそれぞれの規定値になったか否かを判断する。加圧側圧力および負圧側圧力がそれぞれ規定値になっていないと判断した場合(ステップS44:NO)、CPU111は、ステップS44を繰り返す。
加圧側圧力および負圧側圧力がそれぞれの規定値になったとCPU111が判断した場合(ステップS44:YES)、ステップS45において、CPU101,111は、印刷ジョブの実行を開始する。
具体的には、主コントローラ91のCPU101は、印刷ジョブを画像データとジョブデータとに分割し、ジョブデータをメカコントローラ92へ送信する。ジョブデータは、印刷枚数、用紙種類等を示す情報を含むものである。そして、メカコントローラ92のCPU111は、ジョブデータに基づき、搬送部4により用紙を搬送させる。また、主コントローラ91のCPU101は、画像データに基づき、搬送される用紙にインクジェットヘッド11からインクを吐出させる。これにより、用紙に画像が印刷される。
印刷ジョブの実行中は、加圧タンク21からインクジェットヘッド11へインクが供給され、インクジェットヘッド11で消費されなかったインクが負圧タンク24に回収される。液面維持制御により、加圧タンク基準液面センサ31がオフで負圧タンク基準液面センサ36がオンの状態になると、インクポンプ25が負圧タンク24から加圧タンク21へインクを送る。このようにしてインクが循環されつつ、印刷が行われる。
また、CPU111は、インク循環時には、インク温度センサ27の検出温度が適正温度範囲内を維持するように、インク温度調整部26を制御してインク温度の調整を行う。
印刷ジョブの実行開始後、ステップS46において、CPU111は、印刷ジョブが終了したか否かを判断する。印刷ジョブが終了していないと判断した場合(ステップS46:NO)、CPU111は、ステップS46を繰り返す。
印刷ジョブが終了したと判断した場合(ステップS46:YES)、ステップS47において、CPU111は、圧力制御を終了する。ここで、加圧側圧力調整弁53、負圧側圧力調整弁58が開いている場合、CPU111は、それらを閉じる。
次いで、ステップS48において、CPU111は、加圧側大気開放弁54および負圧側大気開放弁59を開く。これにより、各印刷部2の加圧タンク21が加圧共通気室51を介して大気開放状態となり、負圧タンク24が負圧共通気室56を介して大気開放状態となる。
次いで、ステップS49において、CPU111は、液面維持制御を終了する。これにより印刷処理が終了する。
以上説明したように、インクジェット印刷装置1では、インク循環部12におけるインクの落下が発生している印刷部2がある場合、制御部6は、印刷処理を開始する前に事前処理を行う。この際、制御部6は、インク循環部12におけるインクの落下は発生していない印刷部2と圧力付与部3との接続を切断し、インクの落下が発生している印刷部2を処理対象として事前処理を行う。
事前処理において、制御部6は、圧力付与部3により加圧タンク21および負圧タンク24に正圧を付与するとともにインクポンプ25を駆動させて加圧タンク21および負圧タンク24からインクジェットヘッド11に向かう互いに逆方向のインクの流れを形成する処理を行う。これにより、印刷処理時のインク循環方向と同じ方向の加圧タンク21からのインクの流れに加えて、それとは逆方向の負圧タンク24からのインクの流れによっても、インクジェットヘッド11およびヘッド側インク経路へのインクの充填が行われる。
このため、印刷処理時のインク循環方向のインクの流れのみによりインクジェットヘッド11およびヘッド側インク経路へのインクの充填が行われる場合に比べて、インクの充填に要する時間を短縮できる。したがって、印刷開始の遅延を軽減できる。
また、インクの落下が発生していない印刷部2と圧力付与部3との接続を切断しているため、インクの落下が発生していない印刷部2の加圧タンク21と負圧タンク24とが加圧されてインクジェットヘッド11のノズルからインクが押し出されることを防止できる。これにより、インクの無駄を抑制できる。
なお、上記実施の形態では、4つの印刷部2を有するインクジェット印刷装置1について説明したが、印刷部2の数はこれに限らない。
印刷部2が1つの構成の場合では、無条件で事前処理を行うようにしてもよい。また、操作パネル5に対する操作によるユーザの指示に応じて、事前処理を行うようにしてもよい。このような場合、インク循環部12におけるインクの落下が発生していなくても、事前処理が行われることがある。この場合、もともとインクジェットヘッド11およびヘッド側インク経路にインクが充填された状態であるため、インクがほとんど移動しないまま事前処理が終了し、インクジェットヘッド11およびヘッド側インク経路にインクが充填された状態が維持される。
本発明は上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。