JP6317493B1 - 鉄筋コンクリート梁の貫通管およびその施工方法 - Google Patents

鉄筋コンクリート梁の貫通管およびその施工方法 Download PDF

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Abstract

【課題】型枠に鉄筋組体を設置した後から、鉄筋組体に貫通管を配設することができ、作業効率が向上できる鉄筋コンクリート梁の貫通管およびその施工方法の提供。【解決手段】鉄筋組体Tを型枠K内に組み入れたのち、鉄筋組体Tの中に貫通管1を埋設してコンクリート打設することで貫通穴を形成する鉄筋コンクリート梁の貫通管であって、矩形状の弾性平板材を丸めて部分円弧状に成形して開口スリットRを備えた筒状体10と、この筒状体10の両端の周方向に配設され、型枠Kに釘止め固定する固定具13と、筒状体10の開口スリットRを構成する互いの係合辺1B、1Cを連結する係合手段とから構成され、筒状対10は鉄筋組体Tの上面の配筋隙間から開口スリットRを拡開して差込み反転させて、型枠Kの内部の所定の位置Sに設置固定される。【選択図】図4

Description

本発明は、鉄筋コンクリート製の建造物の梁に貫通穴を形成するため、コンクリート打設時に埋設して使用する貫通管、およびその施工方法に関する。
図10に示すように、鉄筋コンクリート製の建造物の床下には、柱Pと柱Pを連結する鉄筋コンクリート製の梁Hが、床Fと一体に成形される(特許文献1参照)。そして、この梁Hには、電気、ガス、水道などの配線、配管のために、複数の貫通穴Aが所定の位置に、所定の穴径と間隔にて形成される。この貫通穴Aは、梁H、および床Fを施工する際の型枠K(図2参照)内の所定位置に設置される貫通管1を埋設して形成される。
鉄筋コンクリート製の梁Hの施工、および貫通管1の設置作業は、次のような手順で実施される。
(1)型枠Kの真上で鉄筋を組み立てて梁の鉄筋組体Tを形成する(図12(a))。
(2)鉄筋組体Tの側面の所定位置から貫通管1を挿入し仮設置する(図12(b))。
(3)鉄筋組体Tを降下させ、型枠K内の設定位置に落し込む(図13(c))。
(4)貫通管1の向きを直交方向に直し、両端を型枠Kの内壁の所定位置に釘止め固定する(図13(d))。
(5)型枠K内にコンクリートCを打設し(図14(e))、凝固後、型枠Kを取り外す(図14(f))。
鉄筋組体Tは、図12に示すように、梁Hの長手方向に、かつ、梁断面の上下面に配筋される主筋14と、主筋群の外周を囲む副筋15とからなる。主筋14は、所定数(図では上側4本、下側4本)が梁Hの長手方向に所定の間隔で配される。副筋15は、両上端が内側にフック状に曲げられたU字形のスターラップ筋16と、両端が下側に曲げられたI字形の幅止め筋17とからなる。これら主筋14、副筋15の配筋ピッチは、梁の厚みや強度要求に応じて決められる。
スターラップ筋16は、フック状部が上側かつ外側の主筋14、14に引っ掛けて吊され、主筋群の側面および底面を囲み、主筋14に結束線(番線)で締結される。幅止め筋は、上側主筋群の上面の主筋14にスターラップ筋16と同一の間隔で上側主筋14と直交的に配され、主筋14に番線で締結される。
従来の貫通管100の体格は、鉄筋組体Tの上側主筋14の隙間、または鉄筋組体Tと型枠Kとの隙間(かぶりと呼ぶこともある)より大きいので、鉄筋組体Tの外部から内部に貫通管100を挿入、設置することは困難である。従って、貫通管100が所定の位置に設置され、型枠Kに釘止め固定するのに貫通管100が配筋と干渉しないよう鉄筋組体Tの側面のスターラップ筋16の配筋間隔を拡げるか、あるいは2、3本のスターラップ筋16を取り除いて設けた開口部Qがあらかじめ形成されている。
この側面に形成された開口部Qは、鉄筋組体Tを型枠K内に落し込む前であれば貫通管100を挿入するための開口部Qとして利用可能であり、従来の貫通管100の挿入作業は、鉄筋組体Tの側面の開口部Qから内部に挿入して仮配置することが行われていた。そして、この挿入の開口部Qの強度低下、およびコンクリートCのひび割れを防止するために環状の補強筋18をスターラップ筋16の内側に配置する施工が行われていた。
このような施工法の鉄筋組体Tの中に挿入する従来の貫通管100は、一本の円筒管、あるいは二本の円筒管を互いに差し込んだ二重円筒管が利用されていた。図11に示すように、薄肉の鉄管110と鉄管120とからなり、両者は、内側端部が同軸的にスライド可能に連結されている。そして、両者のそれぞれの外側端部には、型枠Kに釘止め固定するための釘止め固定具13が周方向に90度間隔で接合されている。
従来の施工方法では、このような構成の貫通管100を鉄筋組体T内へ側面の開口部Qから直交方向に挿入し、その後、向きを長手方向に変えて仮配置する。そして、仮配置した貫通管100とともに鉄筋組体Tを型枠K内に落し込む。落し込み後は、鉄筋組体Tの側面の開口部Qは型枠Kで塞がれるので、仮配置された貫通管100の向きを直交方向に直しながら墨入れされた所定の位置Sに合わせて型枠Kに釘止め固定する。このとき、作業は上面の配筋隙間から両手を差し込み、狭いスペースの中で金槌にて釘止め固定するのが一般的であった。
この従来の施工法では、現場作業を行う上で大きな問題が2つあった。
ひとつは、鉄筋組体を作る作業と、作って後、それを型枠内に落し込む作業は配筋業者の担当であり、また、鉄筋組体を落し込む前に貫通管を内部に挿入し、落し込まれて後、所定の位置に配設して釘止め固定するのは配管業者の担当であった。つまり、担当する作業が互いに分断し合う分担となっており一連の連続した作業として実施できない。このため、日程通りに作業が進まない場合に、現場に出向いて前工程が終了するのを待機して見守る必要がある。待機してもその日に担当の作業が実施できればまだ良いが、翌日に作業が持ち越されることもあり、大きなムダ時間が生じてしまうことになる。
もうひとつは、鉄筋組体への貫通管の挿入タイミングの問題である。貫通管の挿入後に鉄筋組体を型枠に落し込む作業は、仮配置された貫通管が振動や傾きによってズレ出し、ズレが生じたまま落し込まれて貫通管が変形したり損傷を受けたりして、正常な貫通穴ができなくなる危険性が高い、という問題がある。これを鉄筋組体の落し込み後に貫通管を挿入し、鉄筋組体の中に収納するようすれば危険性は大幅に下げることが可能である。
これら問題はともに、貫通管の作業の手順の問題であり、作業効率が極めて低いという問題になっている。
特許第3146923号公報
この発明の目的は、鉄筋組体を型枠内に設置した後、貫通管を鉄筋組体内に設置することが簡単、かつ確実にでき、作業効率が向上できる鉄筋コンクリート梁の貫通管およびその施工方法の提供にある。
(請求項1について)
請求項1に記載の貫通管は、
・複数の主筋と、これら主筋と直交に複数の副筋を配筋して鉄筋組体を形成する配筋工程と、
・鉄筋組体を型枠の中に設置する鉄筋組体の型枠内落し込み工程と、
・鉄筋組体内に貫通管を挿入する貫通管挿入工程と、
・所定の径の貫通管に組立て嵌合自在に連結する貫通管組立工程と、
・型枠内の所定の位置に貫通管を設置固定する貫通管設置固定工程と、
・型枠内にコンクリートを打設するコンクリート打設工程と、
・前記コンクリートの凝固後、型枠を取り外す型枠はずし工程と、
からなる一連の工程順に施工される鉄筋コンクリート梁の貫通管の施工方法に使用されるものであって、
矩形状の弾性平板材を丸めて部分円弧状に成形して開口スリットを備えた筒状体で形成され、軸方向に所定の長さを有し、型枠に固定可能な一端部を有する第1筒状体と、軸方向に所定の長さを有し、型枠に固定可能な一端部を有する第2筒状体とをそれぞれ他端部で嵌合伸縮自在に連結した構造を有している。
0015
これにより、まず、鉄筋組体を型枠の中に落し込む鉄筋組体の型枠内落し込み工程が配筋工程に続いて実施できるのは、配筋業者の作業としてやり易く、また、鉄筋組体を型枠の中に落し込み後に貫通管を挿入する貫通管挿入工程と、設置固定する貫通管設置固定工程の順序は配管業者が続けて作業できるため、お互いに作業ロスが省け、効率的である。
また、鉄筋組体を型枠の中に落し込むに際し、従来のような貫通管が傾いたりズレが生じたりすることはあり得ない(貫通管は未挿入)ので、落下して貫通管に変形や損傷が生じる危険性も全くない。従って、正常な貫通穴ができずに再度、貫通穴を作り直すという手直し作業は生じることなく、従来の課題は完全に解消できる。この結果、作業生産性が向上する。
貫通管は、軸方向の開口スリットを有する筒状体で形成されている。この筒状体は、矩形状の弾性平板材を部分円弧状に丸めて成形したもので、円弧の一端と他端との間に重ならない隙間、つまり開口スリットが形成される。この筒状体を外側から押圧すれば円弧は縮径し、逆に内側から押し拡げれば拡径して開口スリットが拡開する。この構成により、筒状体の開口スリットを拡開して、鉄筋組体の配筋隙間の大小に拘わらず、上面から容易に筒状体を鉄筋組体の中に挿入することが簡単にできる。
さらに、貫通管が、部分円弧状に成形して開口スリットを備えた筒状体で形成されているので、鉄筋組体の配筋隙間の大小に拘わらず、上面から容易に筒状体を鉄筋組体の中に挿入できる。そして、挿入して後、筒状体は鉄筋組体の内部で所定の直径の貫通管に仕上げられ、対向して互いに嵌合伸縮自在に組み立てできるので、嵌合伸縮量を多くすれば、二重構造の筒状体の軸方向長さは小さくでき、鉄筋組体の中で直交方向に向きを変える転向や取り扱いが楽にできる。つまり、型枠間の所定の位置に、直交に設置し固定することが非常に簡単、かつ確実に実施でき、作業効率が向上できる。
(請求項2について)
請求項2の貫通管は、
・複数の主筋と、これら主筋と直交に複数の副筋を配筋して鉄筋組体を形成する配筋工程と、
・鉄筋組体を型枠の中に設置する鉄筋組体の型枠内落し込み工程と、
・鉄筋組体内に貫通管を挿入する貫通管挿入工程と、
・所定の径の貫通管に組立て嵌合自在に連結する貫通管組立工程と、
・型枠内の所定の位置に前記貫通管を設置固定する貫通管設置固定工程と、
・型枠内にコンクリートを打設するコンクリート打設工程と、
・コンクリートの凝固後、型枠を取り外す型枠はずし工程と、
からなる一連の工程順に施工される鉄筋コンクリート梁の貫通管の施工方法に使用されるものであって、
貫通管は、矩形状の弾性平板材を丸めて部分円弧状に成形して開口スリットを備えた筒状体で形成され、軸方向に所定の長さを有し、型枠に固定可能な一端部を有する第1筒状体と、軸方向に所定の長さを有し、型枠に固定可能な一端部を有する第2筒状体と、さらに、軸方向に所定の長さを有する中間筒状体とからなり、この中間筒状体の両端のそれぞれと第1筒状体と第2筒状体の他端部とを嵌合自在に連結した構造を有している。
これにより、請求項1と同様に、工程順序を変更したことによる効果、つまり、配筋業者、および配管業者それぞれの作業効率が向上し、また、やり直し作業の解消により作業生産性が向上する。
また、軸方向に所定の長さを有し、型枠に固定可能な一端部を有する第1筒状体と、軸方向に所定の長さを有し、型枠に固定可能な一端部を有する第2筒状体と、さらに、軸方向に所定の長さを有する中間筒状体とからなり、この中間筒状体の両端のそれぞれと第1筒状体と第2筒状体の他端部とを嵌合自在に連結した構造を有している。
よって、第1筒状体と第2筒状体の軸方向の長さを、例えば、主筋の配筋間隔より小さくしておけば、鉄筋組体の主筋の隙間または鉄筋組体と型枠との隙間から鉄筋組体内に筒状体を挿入することが簡単にできる。もっとも、筒状体の軸方向の長さが大きくても、筒状体の開口スリットを拡開して隙間から差し込み、反転させて挿入することが簡単にできる。他方、中間筒状体も同様に、開口スリットを拡開して隙間から差し込み、反転させて挿入することが簡単にできる。
そして、鉄筋組体の中に簡単に挿入できたそれぞれの筒状体を、型枠の所定の位置に設置固定するのも、まず、長さの小さい第1、第2筒状体を型枠の両側に釘止め固定し、その2つの固定した第1、第2筒状体を基準に中間筒状体を外側から開口スリットを拡開して押し込むだけの作業で簡単に組み付けできる。押し込めば弾性復元力で径が締まるが、所定の径にするには外力を加えればよい。
このとき、第1、第2筒状体の径に密着するまで押せば所定の有効径が一義的に設定される。そして、弾性復元力で径が拡がらないように、外周を粘着テープ等で固定し、必要があればさらに両端をタップねじで締結する。この作業も、簡単に実施できる。
(請求項3について)
請求項3に記載の発明では、鉄筋組体内に貫通管を挿入する貫通管挿入工程において、軸方向に所定の長さを有するそれぞれの筒状体は、軸方向長さが鉄筋組体の上面の配筋隙間より小さい場合には、配筋隙間からそのまま落とし入れ動作により挿入し、軸方向長さが配筋隙間より大きい場合には、それぞれの筒状体の開口スリットを拡開して、鉄筋組体の上面の配筋隙間から差し込み、つづいて反転し、そして落下させる動作による挿入方法を採用している。
これにより、配筋隙間の大小に拘わらず、また、筒状体の軸方向長さの長短に拘わらず、開口スリットを拡開することで筒状体の配筋組体内への挿入が簡単、かつ確実に実施できる。
(請求項4について)
請求項4に記載の発明では、 所定の径の貫通管に組立て嵌合自在に連結する貫通管組立工程において、
矩形状の弾性平板材を丸めて部分円弧状に成形して開口スリットを備えた筒状体は、丸めた際に形成した開口スリットの2つの縁辺の一辺に係止部、他辺にこの係止部に係合する係合部を備えており、鉄筋組体内に貫通管を挿入した後、貫通管の係合部を係合して所定の径の貫通管に組立て、その後、それぞれに軸方向に嵌合自在に連結する組立方法を採用している。
これにより、開口スリットを拡開して鉄筋組体内に挿入した各筒状体の開口スリットを閉じて所定の直径に仕上げることが簡単に、かつ確実にできる。さらに、嵌合自在に互いに嵌り合う2つの筒状体の直径差も、係止部と係合部との係合具合、つまり係合片の折り曲げ高さや角度、および力加減で自在に調整が可能である。この作業が機械や道具を使用せずに、両手で簡単にできる特徴がある。
貫通管の作成過程を示す斜視図である(実施例1)。 貫通管を鉄筋組体内に挿入する貫通管挿入工程を示す斜視図である(実施例1)。 貫通管の挿入の要領を示す斜視図である(実施例1)。 二重管方式の貫通管の組立て要領を示す斜視図である(実施例1)。 貫通管を鉄筋組体内で組み立てる貫通管組立工程を示す斜視図である(実施例1)。 貫通管を型枠内に設置固定する貫通管設置固定工程を示す斜視図である(実施例1)。 貫通管の作成過程を示す斜視図である(実施例2)。 貫通管の作成過程を示す斜視図である(実施例3)。 貫通管の作成過程を示す斜視図である(実施例4)。 鉄筋コンクリート製の建造物の梁、床、柱の構成を示す斜視図である。 貫通管の構成を示す斜視図である(従来例)。 貫通管の施工工程図であり、(a)は配筋工程を、(b)は貫通管挿入工程を示す斜視図である(従来例)。 貫通管の施工工程図であり、(c)は鉄筋組体の落し込み工程を、(d)は連通管設置固定工程を示す断面図である(従来例)。 貫通管の施工工程図であり、(e)はコンクリート打設工程を、(f)は型枠はずし工程を示す断面図である(従来例)。
鉄筋組体を型枠内に組み入れたのち、鉄筋組体の中に貫通管を埋設してコンクリート打設することで貫通穴を形成する鉄筋コンクリート梁の貫通管、およびその施工方法について、以下実施例で説明する。
本実施例を図1〜図6とともに説明する。貫通管1は、図1(a)に示すように、矩形状でその四隅に所定の幅と深さの切り込みを有する鉄板(弾性板材)1Aを、図1(b)に示すように、部分円弧を形成するように丸めて成形した筒状体10からなる。部分円弧を形成することで、円弧の始端および終端との間に、幅方向に繋がる開口スリットRが形成されている。この開口スリットRの初期寸法値は任意であり、円弧の外側から力を加えれば円弧が縮径して開口スリットRは重なり、円弧の内側から力を加えれば円弧が拡径して開口スリットQは拡がる。そして、力を取り除けば、元の形に戻る弾性復元性を有している。
さらに、貫通管1は、図1(c)に示すように、筒状体10の軸方向一端には、釘止め固定具13が3個接合されている。釘止め固定具13は周知のもので、釘の太さに等しい穴部を形成した板金材で構成され、筒状体10に、例えば、スポット溶接等で固定されている。
そして、筒状体10が縮径して開口スリットRが重なる部位を接合辺1B、1Cと名付けたとき、一方の接合辺1Bの両側の係合片1D、1Dと、他方の接合辺1Cの両側の係合スリット1E、1Eを係合させることで所定の径を有する貫通管1が形成される。
このとき、係合の組付け手順は以下のように行われる。係合片1D、1Dを略90度折り曲げておき、係合スリット1E、1Eの中に差し込む。つづいて、さらに略90度折り曲げると図1(d)に示すように、所定の径の筒状体10が形成される。この組み付けは筒状体10が薄板構成であるため手作業でも可能で簡単である。このとき、一回目の略90度折り曲げを少し緩く、つまり90度折り曲げの立ち上がり寸法が短くなるよう折り曲げれば、係合後の有効径が少し大きく設定できる。つまり、対をなす二重筒状体の直径差が自在に、かつ簡単に作れる特徴を有している。
次に、上記した筒状体10および貫通管1の組み立てが型枠K内に鉄筋組体Tを落とし込んだ後に鉄筋組体T内でなされる組み立て手順を説明する。
貫通管1の体格では、配筋隙間からの一度の挿入は難しく、ために構成部材単位で挿入しておいて、全部揃ったら型枠K内で組み立てて貫通管1を形成して所定の位置に設置する方法である。
この筒状体10は、図2に示すように、型枠K内に設置した鉄筋組体Tの上面から挿入できることが特徴であり、予め設定箇所の副筋が取り除かれて形成された側面の開口部Qの幅止め筋17を2,3本ずらして、もしくは取り外して隙間の大きい設定隙間Lを作成しておく。そして、この大きな設定隙間Lに図示するように、筒状体10を挿入する。筒状体10の挿入要領を、図3に基き詳しく説明する。まず、主筋14、14の間から、筒状体10を拡開状態で主筋14に差し込み(図3(a))、そして主筋14の周りに略180度反転させて主筋14から筒状体10の開口スリットRを下方に抜き、鉄筋組体T内に入れ込む(図3(b))。そして、筒状体10を鉄筋組体Tの底面に落下させ仮置きする(図3(c))。
つづいて、もう一つの対をなす筒状体10を、同様に、主筋14に差し込み、そして主筋14の周りに略180度反転させて主筋14から鉄筋組体Tの底面に落下させる。そして、図4に示すように、それぞれの筒状体10を鉄筋組体Tの上面から両手で拾い、まず、一方の筒状体10の係合部の係合片1Dをさらに略90度折り曲げる(図4(a))。その後、他方の筒状体10の係合部の係合片1Dをさらに略90度折り曲げるのであるが、二重管構成となすために、一方の筒状体10の上に他方の筒状体10を被せ、互いにスライド可能な隙間を形成して最後の略90度折り曲げを実施することでいとも簡単に二重管構成が実現できる(図4(b)、(c))。
図5示すように、二重管構成で組み立てた貫通管1はその中心軸が長手方向に配置されて鉄筋組体T内に収納される。このような手順は、筒状体10を、鉄筋組体Tを型枠K内に設置した後であっても、鉄筋組体T内に簡単に挿入でき、しかも鉄筋組体T内での二重管の組み立ても簡単に実施できる。
次に、この組み立て方法による二重管はその軸方向が梁の長手方向と一致して配置されているため、図6に示すように、梁Hの長手方向に直交する方向に向きを変え(転向)、墨入れされた所定の位置Sに中心を合わせ、釘止め固定をする。このとき、二重管構造は互いに奥までスライドすることで全長が縮小することから、転向作業が簡単に、かつ確実に実施できる。
その上で、型枠Kに釘止め固定する。釘止め固定は3箇所であり、必要にして十分な数と位置を採用している。従来例のように、複数箇所であったとしても貫通管1の裏側に隠れた釘は、打ち込むことができずムダが生じる。仮に、打つことができたとしても型枠はずし工程で釘抜き作業にムダ時間がかかることになる。
そして、二重管構造の貫通管1が直交方向に配設固定されたのち、組み立ての初期段階にて外された幅寄せ筋17を等間隔に配筋し直し、番線で締結するとともに、所定の位置Sのスターラップ筋16の周りの補強筋21も同様に配筋して番線で締結し、正規の配筋に戻しておく。
実施例1は、2つの筒状体10を互いに差し込んで組み合わせる二重管構成の貫通管1であったが、本実施例は、3つの筒状体10を組み合わせる貫通管1であることが特徴である。図7とともに、本実施例を説明する。
貫通管1は、横幅の小さい矩形状の鉄板(弾性板材)を部分円弧を形成するように丸めて成形した短尺筒状体2の2個使用と、同様に、横幅の大きい矩形状の鉄板(弾性板材)を部分円弧を形成するように丸めて成形した長尺筒状体3の1個使用の計3個の筒状体からなる。
短尺筒状体2と長尺筒状体3は、それぞれ、周方向の一方の接合辺2B、3Bに係合片2D、2Dおよび3D、3Dを有し、他方の接合辺2C、3Cに、係合スリット2E、2Eおよび3E、3Eを有する。係合片2Dと係合スリット2E、および係合片3Dと係合スリット3Eとを係合させることにより、所定の径を有する短尺筒状体2、長尺筒状体3を形成する。
短尺筒状体2の一端には、実施例1と同様な釘止め固定具13が周方向に3箇所、90度間隔で接合されている。ただし、長尺筒状体3には、この釘止め固定具13は接合していない。
次に、この2個の短尺筒状体2と1個の長尺筒状体3から1個の貫通管1に組立てる組立て手順を説明する。
2個の短尺筒状体2,2は、型枠K内に設置した鉄筋組体Tの配筋隙間より厚み(幅)が小さく仕立ててあり、短尺筒状体2が係合片2Dと係合スリット2Eとを係合させた後の円筒状の構造であっても、容易に配筋隙間やかぶりから挿入でき、鉄筋組体Tの底面に落下させることができる。
また、仮に、鉄筋組体Tの配筋隙間より厚み(幅)が大きく、配筋隙間から挿入できない場合は、短尺筒状体2は、係合片2Dと係合スリット2Eとを係合させる前に、実施例1と同様に、短尺筒状体2の開口スリットRを拡張した状態で主筋14と主筋14との間の隙間に差し込み、そして180度反転させて鉄筋組体Tの底面に落下させることができる。
他方、長尺筒状体3は軸方向の寸法、つまり長さが長いので、配筋隙間からの挿入はできず、従って、鉄筋組体Tの上面の幅止め筋の2、3本をずらしたり、あるいは取り除いたりして配筋隙間を広げておいて、この位置より長尺筒状体3の挿入を実施例1と同様に、行うことで鉄筋組体Tの底面に落下させることができる。
このように、挿入工程は実施例1と同様に、簡単にしかも迅速に施工できる。つづいて設置固定工程を説明する。
まず、鉄筋組体Tの底面に落下した短尺筒状体2を上面から両手で拾って、型枠Kの墨入れされた所定の位置Sに中心を合わせ釘止め固定する。このとき、挿入前から係合片2Dと係合スリット2Eとを係合させた円筒状の短尺筒状体2であれば、そのまま3箇所の釘止め固定具13に釘打ちすればよい。
また、互いに係合せずに落下させた短尺筒状体2であれば、釘止め固定する前に、短尺筒状体2を互いに係合させて後、同じように釘止め固定してもよい。あるいは、短尺筒状体2を互いに係合させずに弾性復元力を外側から押し込むように押さえ、所定の位置Sにその中心と外形寸法とを一致させてから釘止め固定することもできる。
この2つの短尺筒状体2をいずれかの手順で型枠の両側面のそれぞれ所定の位置Sに固定したのち、つづいて、長尺筒状体3の嵌入組付け作業がある。鉄筋組体Tの底面に落下した長尺筒状体3を上面から両手で拾って、互いの係合辺B、Cが拡張するように内側から力をかけて拡げ、適度に拡がったならばそのまま固定された短尺筒状体2に押し込む。そして、手を離して力を緩めると弾性復元力で元の形状に戻る。
次に、両手で外側から力をかけ押し込むと、長尺筒状体3の互いの係合辺3B、3Cが接触し、それぞれの係合片3D、および係合スリット3Eを係合させ、さらに係合片3Dを略90度折り曲げることで短尺筒状体2に確実に嵌め込んだ貫通管1が作成できる。
本実施例は、2個の短尺筒状体4,4と2個の長尺筒状体5,5との計4個の筒状体を組み合わせた貫通管1であることが特徴である。図8とともに、本実施例を説明する。
貫通管1は、横幅の小さい矩形状の鉄板(弾性板材)を部分円弧を形成するように丸めて成形した2個の短尺筒状体4,4と、同様に、横幅の大きい矩形状の鉄板(弾性板材)を部分円弧を形成するように丸めて成形した2個の長尺筒状体5,5の計4個の筒状体からなる。
短尺筒状体4,4は、実施例2と同じ形状で組立作業も同じである。他方、長尺筒状体5,5は、実施例2で説明した長尺筒状体3を長手方向(軸方向)に2分割して形成した筒状体と見做すことができる。つまり、図8(a)に示すように、所定の横幅を有する矩形状の鉄板(弾性板材)を部分円弧を形成するように丸めて成形した長尺筒状体5,5で、図示するように、開口スリットRが略直径以上に開き、逆に、円弧状の高さ(又は幅)は直径の半分以下と薄くなる。
そして、接合辺5B、5Cのそれぞれ両端には、係合可能な係合片5Dと係合スリット5Eが形成されている(実施例1、2と同様)。次に、この2個の筒状体4、4と2個の筒状体5、5から1個の貫通管1に組立てる組立て手順を説明する。
2個の短尺筒状体4,4は、実施例2で説明したように、短尺筒状体4の幅が小さければそのまま配筋隙間から挿入でき、また、その幅が配筋隙間より大きくても、係合しない状態で挿入することができる。他方、長尺筒状体5もその円弧状の高さ(又は幅)が配筋隙間より小さければ、そのまま配筋隙間から挿入可能であり、その高さが配筋隙間より大きくても、実施例2のように、主筋14に差し込んで略180度反転して底面に落とせばよい。
そして、挿入できた2個の長尺筒状体5,5は、図8(b)に示すように、互いに対向させて係合させる。このとき、既に、型枠Kに釘止め固定された短尺筒状体4,4の上から2個の長尺筒状体5,5を被せるように押し付けるとともに係合させて、係合片5Dを略90度さらに折り曲げれば確実な固定が簡単に実現できる。
本実施例は、2個の短尺筒状体6,6と1個の長尺筒状体7との計3個の筒状体を組み合わせる貫通管1であり、主たる特徴は、2個の短尺筒状体6,6は短尺の円筒管から構成されることである。図9とともに、本実施例を説明する。
図9(a)に示すように、2個の短尺筒状体6,6は、同形、同寸法の全く同じものである。構造は、市販の鉄管、または鉄パイプを所定の長さに切断し、その軸方向の一端に市販の釘止め固定具13を、例えば、溶接接合している。
また、長尺筒状体7は、矩形状でその四隅に切り込みを持たない鉄板(弾性板材)を部分円弧を形成するように丸めて成形した筒状体である。部分円弧を形成することで、円弧の始端および終端との間に、幅方向に繋がる開口スリットRが形成されている。
次に、形状である短尺筒状体6,6および長尺筒状体7の鉄筋組体T内への挿入作業について説明する。短尺筒状体6は短尺円筒管であることは前述している。つまり、円筒管の軸方向長さを配筋隙間より小さくすることで簡単に挿入できるようになっている。他方、長尺筒状体7も同様に、円弧状に丸めた両端部の開口スリットRを設けている。従って、実施例1〜3で示したと同じ要領、つまり主筋14に差し込み、略180度反転することで、鉄筋組体T内への挿入できる。
そして、次に、貫通管1を設置固定するには、図9(b)に示すように、短尺筒状体6を型枠Kに墨入れされた所定の位置Sに中心を合わせて釘止めする。そして、長尺筒状体7をこの両短尺筒状体6に被せるように拡げて差し込む。そして、手を離せば長尺筒状体7は元の形状に復元し、復元して後さらに外側から力を加えて短尺筒状体6に嵌め込み(図9(c))、ズレが生じないように粘着テープ21等で仮止めする。その上で、長尺筒状体7の両端にタップねじ22で固定する(図9(d))。これで貫通管1が実現できる。
なお、粘着テープ21での仮止めはなしに、直接、長尺筒状体7の両端にタップねじ22で固定してもよい。逆に、粘着テープ21のみの固定であってもよい。
この発明では、貫通管は、軸方向の開口スリットを有する2つの筒状体を対向して連結するか、または、軸方向の開口スリットを有する2つの短尺筒状体と軸方向の長さの長い長尺筒状体を設け、その両端に軸方向の長さの小さい短尺筒状体と連結して形成している。このため、型枠内に鉄筋組体を設置した後であっても、貫通管の挿入と設置固定が簡単、確実、かつ迅速に実施できるので、作業効率が向上し、コストダウンが期待できる。
H 鉄筋コンクリート製の梁
T 鉄筋組体
K 型枠
Q 開口部
R 開口スリット
1 貫通管
・ 短尺筒状体
3、5、7 長尺筒状体
10 筒状体
14 主筋
15 副筋
16 スターラック筋
17 幅止め筋
18 補強筋
21 粘着テープ
22 タップねじ

Claims (2)

  1. 複数の主筋と、これら主筋と直交に複数の副筋を配筋して鉄筋組体を形成する配筋工程と、
    前記鉄筋組体を型枠の中に設置する鉄筋組体の型枠内落し込み工程と、
    前記鉄筋組体内に貫通管を挿入する貫通管挿入工程と、
    所定の径の前記貫通管に組立て嵌合自在に連結する貫通管組立工程と、
    前記型枠内の所定位置に前記貫通管を設置固定する貫通管設置固定工程と、
    前記型枠内にコンクリートを打設するコンクリート打設工程と、
    前記コンクリートの凝固後、前記型枠を取り外す型枠はずし工程と、
    からなる工程順に施工される鉄筋コンクリート梁の貫通孔の施工方法であって、
    矩形状の弾性平板材を丸めて部分円弧状に成形して開口スリットを備えた筒状体で形成され、軸方向に所定の長さを有し、前記型枠に固定可能な一端部を有する第1筒状体と、軸方向に所定の長さを有し、前記型枠に固定可能な一端部を有する第2筒状体とをそれぞれ他端部で嵌合伸縮自在に連結した鉄筋コンクリート梁の貫通管を用いる鉄筋コンクリート梁の貫通孔の施工方法において、
    それぞれの前記筒状体の前記開口スリットを拡開して、前記鉄筋組体の上面の前記配筋隙間から差し込み、つづいて反転し、そして落下させる動作による挿入方法を採用したことを特徴とする鉄筋コンクリート梁の貫通孔の施工方法。
  2. 複数の主筋と、これら主筋と直交に複数の副筋を配筋して鉄筋組体を形成する配筋工程と、
    前記鉄筋組体を型枠の中に設置する鉄筋組体の型枠内落し込み工程と、
    前記鉄筋組体内に貫通管を挿入する貫通管挿入工程と、
    所定の径の前記貫通管に組立て嵌合自在に連結する貫通管組立工程と、
    前記型枠内の所定位置に前記貫通管を設置固定する貫通管設置固定工程と、
    前記型枠内にコンクリートを打設するコンクリート打設工程と、
    前記コンクリートの凝固後、前記型枠を取り外す型枠はずし工程と、
    からなる工程順に施工される鉄筋コンクリート梁の貫通孔の施工方法であって、
    矩形状の弾性平板を丸めて部分円弧状に成形して開口スリットを備えた筒状体で形成され、軸方向に所定の長さを有し、前記型枠に固定可能な一端部を有する第1筒状体と、
    軸方向に所定の長さを有し、前記型枠に固定可能な一端部を有する第2筒状体と、
    さらに、軸方向に所定の長さを有する中間筒状体とからなり、この中間筒状体の両端のそれぞれに前記第1筒状体と前記第2筒状体とを嵌合自在に連結した鉄筋コンクリート梁の貫通管を用いる鉄筋コンクリート梁の貫通孔の施工方法において、
    それぞれの前記筒状体の前記開口スリットを拡開して、前記鉄筋組体の上面の前記配筋隙間から差し込み、つづいて反転し、そして落下させる動作による挿入方法を採用したことを特徴とする鉄筋コンクリート梁の貫通孔の施工方法。
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