JP6314275B1 - 地山斜面の擁壁構築工法および擁壁 - Google Patents
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Abstract
Description
また、籠枠の代わりに、土留め籠枠の底部から後方にシート状の補強材料を取り付け、土留め籠枠の中および土留め籠枠の後方に土砂を土留め籠枠の高さまで積み上げ、締固める作業を繰り返し行い、多段の盛土構造が築造される工法も知られている(例えば、特許文献1参照。)。
また、前記土留め籠枠は壁面と補強材の一体性について十分に考慮されておらず、壁面が豪雨や地震により変形しやすいという問題があった。
さらに、排水用骨材材料を充填する領域と補強用骨材材料を締固めする領域とを区分けしているため、ふとん籠の内部に充填される排水用骨材材料と補強材の上に締固めされる補強用骨材材料とを簡便に使い分けることができる。
また、補強用骨材材料の締固め度を排水用骨材材料の締固め度より大きくして、補強材の上に締固めた補強用骨材材料の単位体積当たりの重量をふとん籠の内部に充填した排水用骨材材料の単位体積当たりの重量より大きくすることにより、補強材一体ふとん籠の重心が、地山斜面側に位置することになるため、補強材一体ふとん籠の上に構造物を安定して配置することができる。
そして、ふとん籠と補強材とが一体となって地山斜面から生じる土圧に抵抗するため、ふとん籠のはらみ出しと称する、ふとん籠の前方への変形や膨出を抑制することができる。
また、ふとん籠内と補強材内の排水性が優れたものとなるため、地山斜面からの地下水や浸透水を擁壁から外側の地表面に放出して余分な水分の蓄積を早期に防止し、豪雨時や地震発生の際、地山斜面の変形や円弧すべりさせようとする力が発生した場合であっても、擁壁を保持することができる。
また、この地山斜面については、地山切り取り後の傾斜面であっても良いし、あるいは、豪雨や地震により発生した地山斜面の斜面崩壊、がけ崩れや土砂崩れにより発生した復旧作業地であっても良い。
そして、本発明で用いる補強材一体ふとん籠については、補強材一体ふとん籠設置作業が行われる現場にて組み立てられても良く、補強材一体ふとん籠設置作業の現場から離れた場所にて組み立てられた後に補強材一体ふとん籠設置作業の現場に搬入されても良い。
また、上述したふとん籠に充填する排水用骨材材料については、ぐり石であっても良いし、単粒度材であっても良い。
他方、上述したふとん籠の補強材の上に敷設される補強用骨材材料については、排水用骨材材料よりも締固めしやすく、排水用骨材材料よりも粒径の小さいものを含むのが良く、例えば、クラッシャランやレキ質材であり、特に、クラッシャランを用いるのが良い。
なお、ここで、本発明で意味する「締固め」とは、実際の工事現場で締め固めた骨材材料を測定する湿潤密度と、基準の締固め試験の最大乾燥密度との比であって、本発明で意味する「締固めしやすい」とは、具体的には、締固め度が90%以上の状態となるクラッシャランやレキ質材などの骨材材料である。
さらに、本発明の擁壁構築工法により構築する擁壁の高さについては、擁壁設計上の「擁壁工指針」で一般的高さとして規定されているような8m以下であるのが好ましいが、8m以上としても何ら差し支えない。
図1は、本発明の擁壁構築工法を適用する地山斜面の地形断面図である。
ここで、図1に示すように、本発明の擁壁構築工法が適用される地山斜面Kは、斜面下方に位置する地面Pと地面Pより上方に位置する地面Tとにより挟まれ、傾斜を有している。
このような掘削領域Hは、地山斜面Kの法尻下方を地山斜面Kの遠端側に向けて地面Pを掘削し、地山斜面Kの法尻下方に沿って形成される溝として形成される。
したがって、図3の補強材一体ふとん籠110の設置状態で示すように、前述した掘削領域Hにおいて地面Pを掘削する深さについては、補強材一体ふとん籠110の一部を構成するふとん籠111の高さの半分程度とする。
また、地面Pを地山斜面Kの遠端側に向けて掘削する掘削幅(掘削領域Hの図2に対する左右の長さ)については、後に示すように、補強材一体ふとん籠110の補強材112を地山斜面Kに向け、ふとん籠111を地山斜面Kの遠端側に向けて掘削領域Hの底面に設置するのに十分な幅とする。
さらに、掘削領域Hの底面は、水平面とし、必要に応じて、振動ローラ、ハンドガイドローラ、タンパ、ランマ、プレートコンパクタなどを用いて締め固めるのが好ましい。
また、掘削領域Hの底面は、地耐力を有していなければならない。
図4に示すように、補強材一体ふとん籠110の一部を構成するふとん籠111は、直方体形状の籠網体を構成する6つの保形面、すなわち、ふとん籠111の上面に配置する網目状蓋部111aと、この網目状蓋部111aに連続して順次形成される網目状前方保形面111b、網目状底保形面111c、網目状後方保形面111dと、これらに連結される2つの網目状側方保形面111e、111eを備え、これらの6つの保形面で内部空間S1を画成している。
このようにして得られたふとん籠111の開閉自在な網目状蓋部111aを開くことにより、ふとん籠111の内部空間S1には、排水用骨材材料120が充填される。
なお、ふとん籠111の内部には、ふとん籠111の内部空間S1を複数の内部空間に仕切る仕切り保形部材が配置されていてもよい。
図4では、ふとん籠111の内部空間S1は、1つの仕切り保形部材により2つの内部空間に仕切られている。
したがって、補強材112は、ふとん籠111の網目状底保形面111cと面一状態で、前述した掘削領域Hに敷設することができるばかりでなく、補強材一体ふとん籠110のふとん籠111と補強材112との相互間で不要な緩みが生じること無く、補強材一体ふとん籠110の設置形態を長期に亘って安定させることができる。
さらに、補強材一体ふとん籠110のふとん籠111と補強材112とが一体となって地山斜面から生じる土圧に抵抗するため、ふとん籠のはらみ出しと称する、ふとん籠111の網目状前方保形面111bの前方への変形や膨出を抑制することができる。
これにより、樹脂からなる外部被覆が、耐候性や耐酸性・耐アルカリ性があるとともに、塩害被害を防止するので、鋼線112aの摩耗や腐食による性能劣化を抑制して擁壁100の剛性が長期的に保持される。
このような鋼線112aを編むことにより、例えば、ふとん籠111および補強材112の網目内寸法が80mm、120mmとなる亀甲型網目状に形成する。
この亀甲型網目により、補強材一体ふとん籠110は、外力に対する保形性を発揮するとともに通水性を発揮する。
また、補強材一体ふとん籠110の排水性が向上することにより、地山中の水分が補強材一体ふとん籠110を介して排水され易くなり、補強材一体ふとん籠110および地山の内部における地下水や浸透水を擁壁100から外側に放出して余分な水分の蓄積による水位の上昇を早期に防止し、豪雨時や地震発生の際に、地山斜面Kの変形や円弧すべりさせようとする力が発生した場合であっても、擁壁100によって壁面の形状を保持する。
補強材一体ふとん籠110は、図4に示すように、ふとん籠111が直方体形状などの立体的な構造を常時有している必要はなく、図5(A)のように、平面的な形状を有した状態で運搬自在とし、この補強材一体ふとん籠110の設置現場やこのような設置現場とは異なる場所にて組み立てても良い。
図5(A)に示すように、補強材一体ふとん籠110は、ふとん籠111の四角筒形状の網目状蓋部111a、網目状前方保形面111b、網目状底保形面111c、網目状後方保形面111dが連続している。
そして、網目状前方保形面111bおよび網目状底保形面111cは、補強材112と強固に連続した構造となっている。
次に、図5(B)に示すように、網目状後方保形面111dを、網目状底保形面111cおよび補強材112が連結されている一辺を中心軸として90度回転させ起立させる。
また、網目状後方保形面111dを起立させる際には、2つの網目状側方保形面111e、111eを、網目状後方保形面111dを回転させる方向に90度回転させる。
これにより、図5(c)に示すように、ふとん籠111の内部空間S1が形成され、排水用骨材材料120を充填自在となる。
図5(c)に示すように、網目状蓋部111aは、ふとん籠111の上面として使用されることになり、排水用骨材材料120を充填した後、保形面111aを、網目状前方保形面111bが連結する辺を中心軸として90度回転させる。
なお、組み立て後の補強材一体ふとん籠110において、網目状前方保形面111bを、補強材一体ふとん籠110の前面と称する場合がある。
排水用骨材材料120については、ぐり石や単粒度材などの比較的大きな粒径を有する材料を使用している。
ここで言う、比較的とは、後に、補強材112の上に敷設される補強用骨材材料130の粒径と比較した場合を意味している。
排水用骨材材料120は、人手によってふとん籠111の内部空間S1に充填されてもよいし、掘削領域Hに重機を隣接させ、その重機を用いてふとん籠111の内部空間S1に充填させてもよい。
補強用骨材材料130としては、ふとん籠111の内部空間S1に充填された排水用骨材材料120よりも小さな粒径を含む材料を使用する。
例えば、補強用骨材材料130として、クラッシャランやレキ質材を使用することができる。
上述したように、排水用骨材材料120の粒径は、補強用骨材材料130の粒径よりも大きい。
このため、ふとん籠111の内部空間S1に充填した排水用骨材材料120と、補強材112の上の補強空間S2に締固めた補強用骨材材料130とは、締固め度が異なり、補強材112の上の補強空間S2に締固めた補強用骨材材料130のほうが、ふとん籠111の内部空間S1に充填した排水用骨材材料120よりも締固め度が大きくなる。
これにより、補強材112の上の補強空間S2に締固めた補強用骨材材料130の単位体積当たりの重量を、ふとん籠111の内部空間S1に充填した排水用骨材材料120の単位体積当たりの重量よりも大きくすることができる。
また、補強材112は、ふとん籠111の底面となる網目状底保形面111cの長さより長くしている。
これにより、ふとん籠111の内部に充填した排水用骨材材料120の総重量よりも、補強材112の上に締固めた補強用骨材材料130の総重量が大きくなり、掘削領域Hに設置された補強材一体ふとん籠110の重心は、地山斜面K側に位置することになる。
したがって、掘削領域Hに設置された補強材一体ふとん籠110の上に構造物を安定して配置することができる。
なお、補強材112の上の補強空間S2に補強用骨材材料130を締固めする際、その補強空間S2の締固め度を上げるために、ローラRなどを用いてさらに締固めることも可能である。
上述したように、補強材一体ふとん籠110を設置する作業とこれに続いて実行する補強材一体ふとん籠110に排水用骨材材料120を充填するとともに補強用骨材材料130を締固めする作業とで構成されるふとん籠補強層造成工事を1回行なうことにより、地山斜面Kの遠端側となる掘削領域Hに1層目のふとん籠補強層が造成される。
このような場合には、補強材112の上に補強用骨材材料130を締固めしながら、補強材112により覆われていない部分には、土砂を締固めしてもよい。
土砂を敷設することにより、現地発生土の有効利用やコストを削減することができる。
なお、補強材112により覆われていない部分にも、補強材112の上に敷設される補強用骨材材料130を敷設してもよい。
すなわち、1層目のふとん籠補強層の上に、補強材一体ふとん籠110Bを載置し、補強材一体ふとん籠110Bの内部空間S1に排水用骨材材料120を充填するとともに、補強材一体ふとん籠110Bの補強材の上に形成された補強空間S2に補強用骨材材料130を締固めした状態を示す。
すなわち、補強材一体ふとん籠110Bは、補強材一体ふとん籠110Aよりも、地山斜面Kの側に距離iだけ水平方向に移動させてある。
この距離iについては、上層側のふとん籠と下層側のふとん籠の重複部分がとれるところまで設定可能である。
また、0<iの場合には、iの上限を、ふとん籠111の高さの0.1倍として、ふとん籠補強層造成工事を繰り返し行なうことにより、擁壁100が、擁壁100の高さに対して天面を地山斜面Kの方向に後退させる割合が1:0.1より緩くなり、急勾配の壁面を構築することができる。
また、0<iの場合には、iの上限を、網目状蓋部111aの幅(ふとん籠111の前面と前面に対向する面との距離)より小さくすることにより、下層側のふとん籠111と上層側のふとん籠111との一部が重複される。
この場合、下層のふとん籠補強層の網目状蓋部111aの全てまたは一部が、上層のふとん籠補強層により覆われ、下層のふとん籠補強層の網目状蓋部111aが開かないようにすることができる。
また、0<iの場合には、iの上限を、網目状蓋部111aの幅より小さくすることにより、下層のふとん籠補強層の上面となる網目状蓋部111aおよび上層のふとん籠補強層の底面となる網目部111eを介して、下層のふとん籠補強層に充填された排水用骨材材料120と上層のふとん籠補強層に充填された排水用骨材材料120の表面同士が相互に接触し、排水用骨材材料120の凹部と凸部とが噛み合うことにより、下層のふとん籠補強層と上層のふとん籠補強層を一体化する。
この隙間空間S3には、任意の材料を配置することができ、例えば、補強用骨材材料130と同じものを配置することもできる。
あるいは、この隙間空間S3には、補強用骨材材料130よりも粒径が幅広い土砂を配置することもでき、現地発生土の有効利用やコストの削減が可能である。
すなわち、1層目のふとん籠補強層から5層目のふとん籠補強層のふとん籠111により形成される壁面の傾斜は、壁面の高さhに対して天面を地山斜面Kの方向にL後退させたことになる。
このとき、L=(5−1)×iとなる。
また、Iに対するiの大きさの割合を、1:0.1より緩くすることにより、急勾配の擁壁
100を形成することができる。
この一体化は、排水用骨材材料120を充填する内部空間S1と補強用骨材材料130を締固めする補強空間S2とを区分けしているため、より一層強化される。
ここで、図11に示すように、本発明の擁壁構築工法が適用される地山斜面Kは、豪雨や地震により発生したがけ崩れや土砂崩落の復旧作業として、仮想線Mで示すような崩落前の地形から崩落した土砂を取り除いた後に形成された斜面である。
したがって、仮想線で示すような崩落前の土砂を取り除いた後は、上述した本発明の擁壁構築工法が上述したような工法手順で適用できることは言うまでもなく、その効果も上述のとおりである。
110 ・・・補強材一体ふとん籠
110A・・・補強材一体ふとん籠
110B・・・補強材一体ふとん籠
110C・・・補強材一体ふとん籠
110D・・・補強材一体ふとん籠
110E・・・補強材一体ふとん籠
111 ・・・ふとん籠
111a・・・網目状蓋部
111b・・・網目状前方保形面
111c・・・網目状底保形面
111d・・・網目状後方保形面
111e・・・網目状側方保形面
112 ・・・補強材
120 ・・・排水用骨材材料
130 ・・・補強骨材材料
S1・・・内部空間
S2・・・補強空間
S3・・・隙間空間
H ・・・掘削領域
I ・・・上方向の距離
K ・・・地山斜面
L ・・・水平距離
P ・・・地面
R ・・・ローラ
T ・・・地面
h ・・・擁壁の高さ
i ・・・水平方向に移動する距離
M ・・・崩落前の地形
Claims (7)
- 地山斜面に対して離間配置されるふとん籠と該ふとん籠の底面から連続する補強材とで構成された複数の補強材一体ふとん籠を前記地山斜面の山際に沿って設置した後、前記ふとん籠の内部に排水用骨材材料を充填するとともに前記補強材の上に補強用骨材材料を締固めてふとん籠補強層を造成し、該ふとん籠補強層を上下方向に積層して一体化した擁壁を構築する地山斜面の擁壁構築工法であって、
前記排水用骨材材料が、ぐり石や単粒度砕石であり、
前記補強骨材材料が、前記排水用骨材材料よりも小さい粒径材を含むクラッシャランであり、
前記補強用骨材材料の締固め度を前記排水用骨材材料の締固め度より大きくして、前記補強材の上に締固めた補強用骨材材料の単位体積当たりの重量を前記ふとん籠の内部に充填した排水用骨材材料の単位体積当たりの重量より大きくし、
前記擁壁の上下方向にそれぞれ積層するふとん籠が、下層側と上層側とで少なくとも一部を重複配置させて急勾配な壁面を構築することを特徴とする地山斜面の擁壁構築工法。 - 前記排水用骨材材料よりも小さい網目寸法を有するふとん籠と補強材とが、相互に一体に連結されていることを特徴とする、請求項1に記載の地山斜面の擁壁構築工法。
- 前記ふとん籠と前記補強材が、亀甲型網目構造を備えていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の地山斜面の擁壁構築工法。
- 前記ふとん籠と前記補強材の素材となる線材が、メッキ被覆された鋼線からなる芯材層と該芯材層を被覆する樹脂からなる被覆層とで構成されていることを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の地山斜面の擁壁構築工法。
- 前記補強用骨材材料が、前記補強材の上で敷均されて締固められることを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載の地山斜面の擁壁構築工法。
- 前記擁壁の壁面が、該擁壁の高さに対して天面を地山斜面の方向に後退させる割合を1:0.1より緩い傾斜角度の勾配をなすように構築されること、さらに垂直壁で構築することを特徴とする、請求項1乃至請求項5のいずれか1つに記載の地山斜面の擁壁構築工法。
- 請求項1乃至請求項6のいずれか1つに記載の地山斜面の擁壁構築工法によって構築された地山斜面の擁壁。
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