JP6313684B2 - 放射線遮蔽用樹脂組成物と、放射線遮蔽用樹脂材料、及び放射線遮蔽用樹脂成形物 - Google Patents

放射線遮蔽用樹脂組成物と、放射線遮蔽用樹脂材料、及び放射線遮蔽用樹脂成形物 Download PDF

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Description

本願発明は、放射線遮蔽用樹脂組成物と、放射線遮蔽用樹脂材料、及び放射線遮蔽用樹脂成形物に係り、詳しくは、優れたガンマ(γ)線遮蔽性を有し、常温での作業性が良好な放射線遮蔽用樹脂組成物と、この放射線遮蔽用樹脂組成物を得るために用いられる二液型の放射線遮蔽用樹脂材料、及びこの放射線遮蔽用樹脂組成物を用いて成形した放射線遮蔽用樹脂成形物に関する。
2011年3月に発生した東日本大震災とこれに伴う津波により、東京電力福島第一原子力発電所は全電源を失い、放射性廃棄物の大量放出事故が起きた。その後、原子力建屋とタービン棟を中心とした高放射線量(主にγ線)を有する地域での事故処理作業の検討を続けているが、放射線量が非常に高く、作業員に対する被爆防止措置と共に、放射性廃棄物の安全な処分が必須となっている。
また、我が国における放射性廃棄物の扱いは原子力基本法に規定されており、たとえば、原子力発電所や核燃料の加工工場などの操業、解体や、上記事故処理作業に伴って発生する低レベル放射性廃棄物は、放射能レベルに応じて処分するとされている。
具体的には、低レベル放射性廃棄物のうち、放射能濃度の比較的低いものは、ドラム缶などの放射性廃棄物用容器の中に収納し、地下数メートル(m)に設けたコ ンクリーピット(コンクリートの囲い)へ埋設する「浅地中ピット処分」か、素堀のトレンチへ埋設する「浅地中トレンチ処分」がなされている。一方、低レベル放射性廃棄物のうち、炉内構造物(制御棒)など比較的放射能レベルの高いものは、たとえば50〜100m程度の地中に埋設する「余裕深度処分」がなされるとされている(ただし、現在のところ、低レベル放射性廃棄物のうち、比較的放射能レベルの高いものは、原子力発電所内に保管されている)。
ここで放射線、特に、アルファ(α)線やベータ(β)線など他の放射線と比較して遮蔽が難しいとされているγ線について説明すると、γ線は波長がおよそ10pmよりも短い電磁波であり、波長領域はエックス(X)線と一部が重なっている。詳しくは、原子核内のエネルギー準位の遷移を起源とするものをγ線と呼び、軌道電子の遷移を起源とするものをX線と呼ぶ。このγ線は、粒子線であるα線やβ線に比べると、透過能力は高いが電離作用は比較的弱い。ところが、この電離作用によりDNAが傷付けられ、γ線には発ガン作用などがあるとされている。しかも、γ線は飛程が長い上、電荷を持たないので、電磁気力を使用して方向を変えるができず、他の放射線と比較して防護が難しい。
このようなγ線の遮蔽は、一般的に、金属鉛や鉄、コンクリートなど比重の大きい物質を用いた遮蔽材によって行われている。すなわち、γ線遮蔽能力は主に遮蔽材の密度の大きさによって決まることが知られているので、比重の大きい物質を高濃度に充填した遮蔽材が使用されている。たとえば、金属鉛は比重11.3g/cm を有し、10cmの厚さでγ線の透過量を1/100(1/100価層)以下に減衰させることができる。
ところが、金属鉛は毒性と蓄積性を有するため、長期にわたる自然環境への利用には問題がある。すなわち、金属鉛で遮蔽材を成形するに当たり、鉛そのものを加熱溶融させてから型内へ流し込む必要があるが、成形時(350℃以上)には有毒ガスが発生する。ゆえに、金属鉛は取り扱い作業性に難があり、人体への吸入防止や、作業員の定期的な健康管理など高度な環境管理が必要となる。
また、鉄も比較的比重が大きいが、非常に高い成形時温度が要求されるとともに、沿岸部などでは錆発生の問題がある。ゆえに、環境に応じて定期的に錆を防止する塗装が必要になるなど、適用箇所が制限されるものである。
さらに、常温で流動性を有し、かつ、常温で固化させることが可能なコンクリートもγ線遮蔽材として広く利用されているが、コンクリートは成形時間が長く、経年変化で割れ(クラック)が生ずることがある。ゆえに、定期的なメンテナンスが必要になり、安定したγ線遮蔽材として使用するには適用箇所が制限されるものである。
したがって、屋外などを含む一般的な環境で対人被爆防止を目的として使用されるγ線遮蔽材としては、有害な金属鉛を代替した上で、より鉛の遮蔽能力に近づけた優れたγ線遮蔽性を有するものが望まれる。
そこで、熱硬化性樹脂と、比較的毒性の低い一酸化鉛やタングステン等の高密度無機物質とを組み合わせた樹脂組成物を用いた放射線遮蔽材が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
この放射線遮蔽材は、比重が3g/cm強を有し、良好なγ線遮蔽性を有するとともに、熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を用いた場合、一般のプラスチック・ゴム類と比較して良好な耐熱性と電気絶縁性を有する。しかも、成形前の樹脂組成物は、常温で液状であるため流し込みによる成形が可能であり、作業性に優れていることから自由な形状に成形させることができる。
しかしながら、東京電力福島第一原子力発電所における事故現場、特に原子炉建屋やタービン棟、及びその周辺地域では非常に高い放射線(γ線)が発生しているため、比重3強を有する放射線遮蔽材では、相当大きな厚みを有する成形物としなければ被爆を防止することが困難である。しかも、瓦礫等が散乱していて放射線遮蔽材の設置領域や、放射線遮蔽材を設置するための作業領域に制限がある福島原発の事故現場において、相当大きな厚みを有する放射線遮蔽材を用いることは、スペース的に確保することが難しいばかりか、施工作業の面でも現実的ではない。
さらに、上記特許文献1に記載の技術では、より高い放射線遮蔽性を有する放射線遮蔽材を提供することを目的として、樹脂中に高密度無機物質をより多く充填したものとすると、樹脂組成物が高粘度となって流動性を失い、所望の放射線遮蔽用樹脂成形物を成形することができないものとなる。
以上のように、これまで比重4g/cmを超える優れた放射線遮蔽性を有する放射線遮蔽材は提供されていないが、福島原発の事故現場など、強いγ線に対する人体への被爆防止を目的として、より高い優れたγ線遮蔽性を有し、常温での作業性が良好な放射線遮蔽用樹脂組成物による放射線遮蔽材の開発要請が市場で叫ばれている。
しかも、稼働が停止している原子炉の中には、今後廃炉に向けての解体作業も見込まれることから、より小さい厚みで優れた放射線遮蔽機能を有する放射線遮蔽材がますます求められる傾向にある。
特開平6−180389号公報
本発明は、上記事情に鑑みて成されたものであり、比重4を超える優れた放射線遮蔽性を有し、常温での作業性が良好な放射線遮蔽用樹脂組成物と、この放射線遮蔽用樹脂組成物を得るために用いられる二液型の放射線遮蔽用樹脂材料、及びこの放射線遮蔽用樹脂組成物を用いて成形したパネルやブロック、シート、放射性廃棄物用容器といった放射線遮蔽用樹脂成形物を提供することを目的とする。
本発明の放射線遮蔽用樹脂組成物は、液状のエポキシ樹脂と、その硬化剤、及び放射線遮蔽物質を少なくとも含むエポキシ樹脂組成物であって、前記エポキシ樹脂と前記硬化剤とを混合した樹脂中に、前記放射線遮蔽物質として少なくとも1.5μm〜16μmの粒径範囲、望ましくは4μm〜8μmの粒径範囲にあるタングステン粉が、常温で混合物の流動性を失わない範囲の分量であり、比重が4g/cm 以上となるように配合されていることを特徴とする。
すなわち本発明は、これまでの技術常識に基づいて、単に、放射線遮蔽物質としてより比重の大きな高密度無機物質を選択し、これをより多く樹脂中に充填するようにしただけでは、上述したように、高密度無機物質の充填量の増加に伴って樹脂組成物の粘度が高くなり流動性を失ってしまうという作業性に関する問題が生じ、結果的に、比重が3強を超えるような従来品に比して優れた放射線遮蔽性を有する放射線遮蔽用樹脂組成物を得ることができないという課題に基づき鋭意研究したものである。
その結果、本発明は、比重が大きく、所定の粒径をした高密度無機物質を用いることで、高密度無機物質の充填量の増加に伴う樹脂組成物の粘度の上昇を抑制し、この高密度無機物質を、常温で混合物の流動性を失わない範囲の分量用いることで、従来品に比して優れた放射線遮蔽性を有する比重の大きな樹脂組成物を提供できることを見出したものである。具体的には、高密度無機物質としてタングステン粉を選択し、その粒径は1.5μm〜16μmの粒径範囲にあることが良いことを見出したものである。
また、本発明の放射線遮蔽用樹脂組成物においては、前記タングステン粉は、4μm〜8μmの粒径範囲にある細粒体と共に、10μm〜40μmの粒径範囲にある粗粒体を含むものとすると好ましく、このように粒径の異なるタングステン粉を用いる場合、タングステン粉は、細粒体と粗粒体とが概ね3:1の重量比で配合されたものであると望ましい。
また、本発明の放射線遮蔽用樹脂組成物においては、前記エポキシ樹脂は、ビスフェノール型の液状樹脂であると好ましく、このようなビスフェノール型液状樹脂を用いる場合、エポキシ樹脂は、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン系エポキシ樹脂とすると望ましい。
また、本発明の放射線遮蔽用樹脂組成物においては、前記エポキシ樹脂は、希釈剤を含むものとすると良い。
また、本発明の放射線遮蔽用樹脂組成物において、前記硬化剤は、脂肪族アミン、脂環式アミン、複素環式アミン、ポリアミドアミン、及びこれらの変性物の群から選択された1種以上とすることができる。
また、本発明の放射線遮蔽用樹脂組成物においては、シランカップリング剤をさらに含むものとすると良い。すなわち、シランカップリング剤は、エポキシ樹脂及び硬化剤からなる樹脂分の一部を置き換えて用いることができる。
また、本発明の放射線遮蔽用樹脂組成物においては、アルカノールアミンをさらに含むものとすると良い。すなわち、アルカノールアミンは、前記シランカップリング剤と同様に、エポキシ樹脂及び硬化剤からなる樹脂分の一部を置き換えて用いることができるものであり、シランカップリング剤を加えた後の樹脂分の一部を置き換えて用いることができる。
また、本発明の放射線遮蔽用樹脂組成物においては、消泡剤をさらに含むものとすると良い。
また、本発明の放射線遮蔽用樹脂組成物においては、可撓性付与剤をさらに含むものとすると良い。
また、本発明の放射線遮蔽用樹脂材料は、上述した何れかの放射線遮蔽用樹脂組成物を得るための、エポキシ樹脂を主成分とするA液と、その硬化剤を主成分とするB液とから構成される二液型の樹脂材料であって、前記A液と前記B液とを混合した樹脂組成物中に含まれることとなる放射線遮蔽物質が、予め前記A液側と前記B液側とに振り分けて配合されていることを特徴とする。
さらに、本発明の放射線遮蔽用樹脂成形物は、上述した何れかの放射線遮蔽用樹脂組成物を所定形状に硬化成形することや、上述した何れかの放射線遮蔽用樹脂組成物を容器の内面に被覆して硬化させたことを特徴とする。
本発明の放射線遮蔽用樹脂組成物は、放射線遮蔽材として既に知られている比重の大きな無機材料を単に樹脂中に配合したものでなく、少なくとも1.5μm〜16μmの粒径範囲、望ましくは4μm〜8μmの粒径範囲にあるタングステン粉を放射線遮蔽材として用いている。ゆえに、樹脂中にタングステン粉を、常温で混合物の流動性を失わない範囲の分量であって、比重が4g/cm 以上となるように配合したものとすることができる。
したがって、優れた放射線遮蔽性を有し、常温での作業性が良好な放射線遮蔽用樹脂組成物を提供することができる。しかも、金属鉛を用いないので、安全性が高いものとすることができて身体上、環境上望ましいものとすることができる。さらに、放射線遮蔽材を薄膜化(又は薄肉化)することができ、限られたスペースを有効に活用することができる。
本発明に係る放射線遮蔽用樹脂組成物の製造方法を説明する概略図である。 本発明に係る放射線遮蔽用樹脂組成物の他の製造方法を説明する概略図である。 本発明に係る放射線遮蔽用樹脂組成物を硬化した放射線遮蔽用樹脂成形物(遮蔽材)の遮蔽能を測定する方法を説明する図であり、(A)線源と測定装置との間に遮蔽材がない場合の測定状態を示す全体概略図、(B)線源と測定装置との間に全体の厚さが6mmとした遮蔽材が有る場合の測定状態を示す部分概略図、(C)線源と測定装置との間に全体の厚さが54mmとした遮蔽材が有る場合の測定状態を示す部分概略図である。 各種γ線に対する価層(1/価層)と、放射線遮蔽用樹脂成形物(遮蔽材)の厚みとの関係を示す図である。
以下、本発明における実施の形態の一例について説明する。
本発明の放射線遮蔽用樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」という場合がある。)は、液状のエポキシ樹脂と、その硬化剤、及び放射線遮蔽物質を少なくとも含むものであって、エポキシ樹脂と硬化剤とを均一に混合した樹脂中に、放射線遮蔽物質として少なくともタングステン粉が配合され、該タングステン粉が特定の粒径範囲にある大きさをしたものであることを基本的な構成とする。
エポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する常温で液状を示すものであれば任意のものを使用することができる。このようなエポキシ樹脂としては、たとえば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、含ブロムエポキシ樹脂、シクロヘキシル環含有型エポキシ樹脂、プロピレングリコールジグリシジルエーテルなどの脂肪族エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂等が挙げられ、これらのエポキシ樹脂は2種以上混合して用いても良い。
本発明においてエポキシ樹脂は、これらの中でもビスフェノール型であることが望ましい。特に、具体的には、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン系エポキシ樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂)であることが望ましい。
ここで、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン系エポキシ樹脂とは、ビスフェノールAを原料とするビスフェノールA由来のエポキシ樹脂をいう。
本エポキシ樹脂は、γ線遮蔽材向けのエポキシ樹脂としてスタンダードであり、汎用性が高く供給安定性があると共に、硬化物の物性が高く安定しているものである。
また、ビスフェノール型エポキシ樹脂の中でも2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン系エポキシ樹脂は、大量に配合しても硬化反応が穏やかなので、可使時間(ポットライフ)が長くなり、作業がし易いものとすることができる。すなわち、エポキシ樹脂の可使時間は、温度に比例して短くなるほか、一度に配合するエポキシ樹脂と硬化剤の数量が多くなると極端に短くなり、ある量を超えると爆発的に反応が進み制御することができなくなる。ゆえに、数kg〜数百kgのエポキシ樹脂組成物を得るために大量に配合するような条件下でも爆発反応を引き起こさないようなエポキシ樹脂を選定することが重要である。また、後述する硬化剤においても、エポキシ樹脂を考慮して穏やかな反応となるような硬化剤を選定することが重要である。
また、エポキシ樹脂は、粘度調整のために希釈剤を含むものとしても良い。すなわち、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の場合、25℃で12,000〜15,000mPa・sと粘度が高く、たとえば、ポリアミド系などの粘度の高い硬化剤と配合した場合、非常に高粘度となり作業性に問題がある。そこで各種の希釈剤を用いることで、作業に適した粘度に調整することが望ましい。
希釈剤は非反応性のものと反応性のものとに分けることができる。反応性の希釈剤は分子内にエポキシ基を持つことにより、硬化剤と反応して硬化物の一部となる。一方、非反応性の希釈剤としては溶剤や可塑剤などが一般的に用いられている。
反応性希釈剤としては、たとえば、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、脂肪族アルコールのグリシジルエーテルなどのようなグリシジルエーテル化合物を挙げることができる。また、非反応性希釈剤としては、たとえば、ベンジルアルコール、トルエン、メチルエチルケトン(MEK)などの有機溶剤を挙げることができる。
この希釈剤は、エポキシ樹脂の粘度を低下させることができるものであれば、反応性希釈剤でも非反応性希釈剤でも特に限定されない。しかしながら、反応性希釈剤の場合、エポキシ樹脂を大量に用いた場合に硬化反応が制御できないおそれがあり、一方、非反応性希釈剤の場合、反応性が落ち過ぎるおそれがある。ゆえに、本発明において希釈剤としては、反応性及び非反応性希釈剤を併用したものを用いることが望ましい。このような二官能性希釈剤を用いることで、エポキシ樹脂の粘度を低下させることができると共に、エポキシ樹脂を大量に用いた場合にも反応性を落とさずに硬化反応を抑制させることができる。
また、希釈剤は、たとえば、エポキシ樹脂として2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン系エポキシ樹脂を用いた場合、希釈剤の添加量が10質量%以下であると、粘度がやや高く反応性もやや早いものとなり、一方、20質量%以上であると、物理的特性(強度)の低下が起こる。ゆえに、エポキシ樹脂80〜90質量%に対し、10〜20質量%含むことが望ましい。
なお、福島原発のような施設では、遮蔽すべき放射線としてγ線と中性子線とが混在しており、γ線遮蔽能と共に中性子遮蔽能を効果的に得るためには、ハロゲンイオンなどの構造的な不純物が比較的少なく、かつ水素含有量が比較的多いエポキシ樹脂が有利である。すなわち、水素原子は中性子と衝突することで減速させることができるので、水素含有量の多いエポキシ樹脂は、中性子を遮蔽することを可能とする。ゆえに、本発明の樹脂組成物を用いた放射線遮蔽材は、γ線と中性子とが混在する放射線を効率良く遮蔽することができる。
硬化剤は、常温(15〜40℃)においてエポキシ樹脂と硬化反応するものであり、通常10分ないし数時間のポットライフを与え、数10分ないし10日前後の硬化時間を要するエポキシ樹脂硬化剤であって特に限定されない。このような硬化剤としては、たとえば、脂肪族アミン、脂環式アミン、複素環式アミン、ポリアミドアミン、及びこれらの変性物の群から選択された1種又は2種以上とすることができる。
これらの硬化剤は、常温で硬化が可能となると共に、常温で液状を保つことができるので、施工現場での作業が可能となり、作業性が良いものとすることができる。
したがって、たとえば、比較的放射線レベルの高い廃棄物の貯蔵を予定している場所の周囲にコンクリートで二重壁を建設した後、このコンクリート壁の隙間に現地で樹脂組成物を流し込むことができる。これにより、地盤の不等沈下などの理由によってコンクリートに構造的なクラックが入ったとしても、放射線の遮蔽性を担保することができる。
脂肪族アミンとしては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ヘキサメチレンジアミン、ポリオキシエチレンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミン等を挙げることができる。
脂環式アミンとしては、メタセンジアミン、イソホロンジアミン、メタキシレンジアミン、N−アミノエチルピペラジン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、ビス(4−アミノ−3−メチルヘキシル)メタン、ビス(4−アミノヘキシル)メタン、ノルボルネンジアミン、パラアミノジシクロヘキシルアミン、1,2−ジアミノシクロヘキサン等を挙げることができる。
複素環式アミンとしては、1,4―ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、ビス(2−モルホリノエチル)エーテル等が挙げることができる。
ポリアミドアミンとしては、合成ダイマー酸と、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、キシリレンジアミン等のポリアミンとの縮合反応によって製造されるものを挙げることができる。
かかる常温硬化型エポキシ樹脂硬化剤の配合量は、使用する硬化剤の種類によって適宣選択されるが、通常、エポキシ樹脂100重量部に対して硬化剤10〜200重量部、好ましくは20〜100重量部配合する。
また、本発明においては、硬化速度の調整として硬化促進剤を用いることもできる。硬化促進剤としては、通常エポキシ樹脂の硬化促進剤として使用されるものであれば特に制限されるものではなく、イミダゾール類や三級アミン類、フェノール類等を用いることができる。
放射線遮蔽物質としてのタングステン(W)は、比重が19.25g/cm と大きく、γ線遮蔽用の金属のひとつとして知られており、本発明においてタングステン粉は、特定の粒径範囲として1.5μm〜16μmの大きさを有し、比重が4g/cm 以上となるように、常温で混合物の流動性を失わない範囲の分量が配合されている。
また、本発明においてタングステン粉は、大きさが4μm〜8μmの粒径範囲にあると、樹脂組成物の粘度が上がるのを抑制しつつ、樹脂硬化物の密度を上げることができることとなるので望ましい。すなわち、タングステン粉が余りに細か過ぎると、吸油性が高く樹脂組成物の粘度が上がり、かつ、樹脂硬化物の密度を上げることに難がある。
ゆえに、このような4μm〜8μmの粒径範囲にあるタングステン粉を用いることで、粘度を上げ過ぎることなく、比重4〜7g/cm強の硬化物を得ることができる。
また、本発明においてタングステン粉は、大きさが4μm〜8μmの粒径範囲にある細粒体と共に、10μm〜40μmの粒径範囲にある粗粒体を含むものであると望ましい。すなわち、タングステン粉の細粒体だけでは、粘度が上がるだけで流動性を失うことになるが、タングステン粉の細粒体と共に粗粒体を用いることで、タングステン粉が細密充填状態となって流れ性が向上し、混合物の粘度を低く抑えながら多くのタングステン粉の配合を可能とすることができる。
ゆえに、このように大きさが10μm〜40μmの粒径範囲にある粗粒体のタングステン粉を用いることで、4μm〜8μmの粒径範囲にある細粒体のタングステン粉だけの場合よりも流れ性が向上し、樹脂組成物の粘度の増加を抑えてタングステン粉をより多く配合することができる。
また、タングステン粉は、上述のように細粒体と共に粗粒体を用いた場合、細粒体と粗粒体の重量比が概ね3:1で配合されたものであると一層望ましい。
すなわち、このような配合比率とすることにより、混合物の粘度を一番低くすることができることを見出した。
本発明では、たとえば、図1に示すように、主剤となる液状エポキシ樹脂1とその硬化剤2を均一に混合して混合物10を得た後、放射線遮蔽物質として所定の大きさをしたタングステン粉3を配合し、さらに混練することで放射線遮蔽用樹脂組成物20を製造することができる。
また、本発明では、たとえば、図2に示すように、主剤となる液状エポキシ樹脂1とその硬化剤2とに所定の大きさをしたタングステン粉3(3a,3b)を振り分けてそれぞれ配合し混練してタングステン粉入り液状エポキシ樹脂(A液)11とタングステン粉入り硬化剤樹脂(B液)12とを得た後、これらを均一に混合することでも放射線遮蔽用樹脂組成物20を製造することができる。
すなわち、この製造方法では、エポキシ樹脂を主成分とするタングステン粉入りの放射線遮蔽用樹脂材料(A液)11と、その硬化剤を主成分とするタングステン粉入りの放射線遮蔽用樹脂材料(B液)12とを、二液型の放射線遮蔽用樹脂材料として事前に準備しておき、これらを所望の場所で所望の時期に混合して放射線遮蔽用樹脂成形物を得るようにしたものである。
この製造方法の場合、エポキシ樹脂とその硬化剤との硬化反応を伴わないで予備的にタングステン粉を樹脂中に混練することができるので、放射線遮蔽用樹脂成形物を現場において製造する場合に好都合である。
以上のような放射線遮蔽用樹脂組成物は、常温で流動性を有することができるので、施工現場での流し込みが可能となり、作業性が向上するものとなる。しかも、金属鉛を用いないので、安全性が高いものとすることができて健康上も、環境上も望ましいものとすることができる。
また、この樹脂組成物を硬化処理した硬化物は、比重が4g/cm 以上であるので、比重3強を有する従来の放射線遮蔽材に比して高い放射遮蔽能力を備えるものとすることができる。ゆえに、同じ放射線遮蔽能力を備える場合、放射線遮蔽材を薄膜化(又は薄肉化)することができ、限られたスペースを有効に活用することができる。
また、本発明の放射線遮蔽用樹脂組成物は、上述した液状のエポキシ樹脂、硬化剤、放射線遮蔽物質を必須とするが、さらにシランカップリング剤やアルカノールアミン類、消泡剤等を添加配合することで、粘度の低下による作業性や、放射線遮蔽能、物性に優れたより望ましいものとすることができる。
シランカップリング剤は、無機材料の表面のヌレ性を良くし、有機材料(エポキシ樹脂及び硬化剤)との馴染みを良くして密着性を向上させることができる。すなわち、シランカップリング剤は、樹脂と放射線遮蔽物質との複合化において混合時の分散性を高めることができる。このようなシランカップリング剤としては、たとえば、エポキシシラン系カップリング剤、アミノシラン系カップリング剤などから選択された1種又は2種以上とすることができる。
このようにシランカップリング剤は、樹脂組成物製造時の混合物の粘度を低下させて作業性に支障を与えることなく放射線遮蔽物質の更なる配合を可能とするので、曲げ強度や引張り強度、圧縮強度といった物理的特性を向上させることができる。
したがって、樹脂分の一部をシランカップリング剤に置き換えることで、作業性が良好な放射線遮蔽能に優れた放射線遮蔽用樹脂組成物を得ることができる。
また、このシランカップリング剤は、樹脂分の20質量%以下の範囲で置き換えて含まれていることが望ましい。すなわち、シランカップリング剤の置き換え率が、樹脂分の25質量%に近づくと、その硬化物は硬く脆い傾向となり、表面に曇りが発生してしまうものとなる。ゆえに、上記範囲とすることで、物理的特性(硬さと脆さのバランス)や外観(表面に曇りがない)が良いものとなる。
アルカノールアミン類は、シランカップリング剤と同様に、無機材料の表面のヌレ性等を良くするので、粘度を低下させて作業性を向上させると共に、物理的物性を向上させることができる。ゆえに、シランカップリング剤と併用すること、すなわち、シランカップリング剤を加えた後の残った樹脂の一部を、二級又は三級アミンであるアルカノールアミンに置き換えることで、作業性が良好な放射線遮蔽能に優れた放射線遮蔽用樹脂組成物を得ることができる。
このようなアルカノールアミンとしては、たとえば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミンなどから選択された1種又は2種以上とすることができる。
また、アルカノールアミンは、シランカップリング剤配合後の残った樹脂の6〜7質量%を置き換えて含まれていることが望ましい。アルカノールアミンの置き換えはこの範囲とすることで、常温で良好な流動性を有するものとすることができる。
消泡剤は、樹脂組成物中の気泡を除去し、硬化物の放射線遮蔽能力や物理的特性を低下させることを防ぐことができるので、さらに含むことが望ましい。すなわち、最終的な硬化物(放射線遮蔽用樹脂成形物)に気泡が存在すると、γ線遮蔽能力に直結する比重(密度)の低下が生じてしまう。そのため、エポキシ樹脂と硬化剤との混合直後に樹脂混合物は真空下で脱泡処理を行うことを要するが、このとき、脱泡剤の有無によって脱泡時間に大きな差が生じ、可使時間内での作業に支障が生じてしまうおそれがあるため、消泡剤をさらに含むものとすることが望ましい。
ただし、消泡剤は、エポキシ樹脂や硬化剤といった樹脂組成物を構成する材料の混合時に巻き込む泡の消泡を目的として添加するものであり、流動性向上のために過度に増量すると、硬化物の特性(たとえば、曲げ強度)に悪影響を及ぼすおそれがあると共に、硬化物の表面にベタツキが残ることとなり、望ましくない結果をもたらしてしまうので注意を要する。
以上のように構成した各放射線遮蔽用樹脂組成物は、パネルやブロックなど所定の形状に硬化成形した放射線遮蔽材とすることができる。また、放射線遮蔽用樹脂組成物は、ライニング材として金属製容器等の内面に被覆して硬化させることで、放射性廃棄物用容器とすることもできる。
また、本発明の放射線遮蔽用樹脂組成物は、可撓性付与剤を含むものとすることができる。すなわち、樹脂組成物に可撓性付与剤が含まれることで、樹脂硬化物がフレキシブル化したものとなるので、種々の用途に応じた態様の放射線遮蔽用樹脂組成物を成形することができる。
このような可撓性付与剤としては、たとえば、クマロン樹脂などの非反応性材料や、オレイルアミンなどのモノアミン系類を挙げることができる。
以上のように可撓性付与剤を付与して構成した各放射線遮蔽用樹脂成形物は、柔軟で折り曲げが可能な弾性変形し易いものとなるので、所望の厚みを有するシート体とすることができる。ゆえに、このシート体を、福島原発の事故現場といった強いγ線を有する現場で作業に従事する作業員の上着やズボン等の作業衣、靴、グローブといった防護具に成形加工することで、作業が行えるよう可動域を確保した放射線遮蔽材とすることができる。
次に、本発明に係る放射線遮蔽用樹脂組成物についてさらに詳細に説明するために、実施例を示して具体的に説明する。なお、ここで述べる実施例は本発明の一例であり、本発明はこれらの実施例よって限定されるものではない。
[タングステン粉の粒径の選定]
まず、放射線遮蔽物質(無機材料)として、大きさが1.5μm〜16μmの粒径範囲にあるタングステン粉を用いることが、常温での作業性に望ましいことを確認するために、樹脂中に配合するタングステン粉の粒径を変えたときの流動性について評価を行った。
<実施例1〜5>
具体的には、液状エポキシ樹脂とその硬化剤を均一に混合した樹脂中に、タングステン粉の大きさ(平均粒径)が0.6μm以上1.5μm未満のもの(実施例1)、同1.5μm以上4μm未満のもの(実施例2)、同4μm以上8μm未満のもの(実施例3)、同8μm以上16μm未満のもの(実施例4)、同10μm以上40μm未満のもの(実施例5)、をそれぞれ配合して樹脂組成物を製造し、こられの流動性の評価を行った。
この流動性の評価は、樹脂組成物を紙コップに入れ、約25℃で紙コップを斜めにして樹脂組成物を流出させ、30秒後に紙コップ内の樹脂組成物の残量が10%以内の場合を「A」とした。さらに30秒後(計1分後)に紙コップ内の樹脂組成物の残量が10%以内の場合を「B」とし、一方、残量が10%以上の場合を「C」とした。その結果を、以下の[表1]に示す。
なお、実施例1〜5において用いた液状エポキシ樹脂は、新日鉄住金化学社製の低粘度のビスフェノールA型エポキシ樹脂(ビスフェノールA—エピクロルヒドリン重合物)「YD−118T」であり、硬化剤は、新日鉄住金化学社製のポリアミドアミン「G625A」とした。
また、タングステン粉は、何れも日本新金属社製であり、実施例1では「タングステンW−1KD(0.6〜0.99μm)」と「タングステンW−2KD(1.0〜1.49μm)」を半々に混合したものを、実施例2では「タングステンW−3KD(1.50〜1.99μm)」と「タングステンW−4KD(2.0〜3.99μm)」を半々に混合したものを、実施例3では「タングステンW−5KD(4.00〜7.99μm)」を、実施例4では「タングステンW−6(8.0〜16.0μm)」を、実施例5では「タングステンW−L(10.0〜40.0μm)」を、それぞれ用いた。
Figure 0006313684
[表1]の結果より、放射線遮蔽物質として、粒径が小さ過ぎず、かつ、大き過ぎず、適度な大きさである1.5μm〜16μmの粒径範囲にあるタングステン粉を用いると、流動性が向上して常温での作業性が良く、特に、同4μm〜8μmの粒径範囲にあるものを用いると常温での作業性が望ましいことがわかる。
[タングステン粉の配合量の確認]
次に、望ましい大きさである4μm〜8μmの粒径範囲にあるタングステン粉を放射線遮蔽物質として用い、常温での作業性を損なわずに、どれくらい比重を大きくすることができるかを確認した。
<実施例6〜9>
具体的には、液状エポキシ樹脂とその硬化剤を均一に混合した樹脂中に、大きさが4μm〜8μmの粒径範囲にあるタングステン粉の配合量を変えて樹脂組成物を製造し、こられの硬化物の比重について測定した。また、併せて樹脂組成物の流動性の評価も行った。さらに、それぞれ消泡剤を適量添加し、脱泡性を評価も行った。
脱泡性の評価は、目盛り付きの200ml樹脂製カップに樹脂混合物を約50ml入れ、これを真空チャンバー内に静置した後、真空ポンプによりチャンバー内を減圧して脱泡を行ったときに膨張した樹脂混合物の発泡の高さ(膨らみ具合)を、樹脂製カップに付されている目盛りを参考にして目視で判断した。このとき、体積膨張が1.2倍以内で破泡した場合を「◎」印、同1.2〜1.5倍以内で破泡した場合を「○」印、同1.5〜2.0倍以内で破泡した場合を「○〜△」印、同2.0〜3.0倍以内で破泡した場合を「△」印、同3.0倍以上でないと破泡しない場合を「×」印とした。それらの結果を、以下の[表2]に併せて示す。
なお、実施例6〜9において用いたエポキシ樹脂と硬化剤は、実施例1〜5で用いたものと同じである。また、同タングステン粉は、実施例3で用いたものと同じである。
また、消泡剤は何れも、信越化学工業社製の溶液型シリコーン消泡剤「KS−603」を用いた。
Figure 0006313684
*実施例9の消泡剤量は2.15とのご指示ですが、小数点以下の位を合わせました。
[表2]の結果より、放射線遮蔽物質として、大きさが4μm〜8μmの粒径範囲にあるタングステン粉を用いることで、常温での作業性が良く、これまでの放射線遮蔽材(3g/cm強)より非常に比重の大きな放射線遮蔽用樹脂成形物(硬化物)が得られる樹脂組成物とすることが確認できた。しかも、タングステン粉の配合量を280部まで上げても、流動性が損なわれずに常温での作業性が良く、比重7g/cm強の樹脂成形物(硬化物)を得ることが確認できた。
しかしながら、タングステン粉の配合量を400部に増加すると、樹脂成形物の比重は9g/cm弱とすることはできたが、非常に粘度の高い樹脂組成物となり、常温では流動性を失う結果となってしまった。
[粒径が異なるタングステン粉の組み合わせ効果の確認]
次に、粒径の異なる二種類のタングステン粉を用いることで、作業性が向上した樹脂組成物が得られることを確認した。
<実施例10〜13>
具体的には、液状エポキシ樹脂とその硬化剤を均一に混合した樹脂中に、大きさが4μm〜8μmの粒径範囲にあるタングステン粉の細粒体と、同10μm〜40μmの粒径範囲にあるタングステン粉の粗粒体とを配合したものであって、前記細粒体と粗粒体と配合比が1:1であるもの(実施例10)、同配合比が2:1であるもの(実施例11)、同配合比が3:1であるもの(実施例12)、同配合比が4:1であるもの(実施例13)、として樹脂組成物を製造し、こられの流動性の評価を行った。また、併せて樹脂成形物(硬化物)の比重についても測定した。さらに、それぞれ消泡剤を適量添加し、脱泡性を評価も行った。それらの結果を、以下の[表3]に併せて示す。
また、粒径の異なる二種類のタングステン粉を用いたことの効果を明らかにするために、比較対象として、大きさが4μm〜8μmの粒径範囲にあるタングステン粉を用いたときに望ましい結果が得られた実施例8の結果を[表3]に併せて示した。
なお、実施例10〜13において用いたエポキシ樹脂と硬化剤は、実施例1〜5で用いたものと同じである。また、同タングステン粉は、細粒体が実施例3で用いたもの、粗粒体が実施例5で用いたものとそれぞれ同じである。
また、樹脂組成物中には、それぞれ消泡剤を適量添加されており、消泡剤は、実施例6〜9で用いたものと同じである。
Figure 0006313684
[表3]の結果より、液状エポキシ樹脂とその硬化剤を均一に混合した樹脂中に、大きさが異なるタングステン粉を配合すると、大きさが4μm〜8μmの粒径範囲にあるタングステン粉を用いたときに望ましい結果が得られた実施例8よりも混合物の流動性が向上して常温での作業性が良く、これまでの放射線遮蔽材より非常に比重の大きな放射線遮蔽用樹脂成形物を成形することができる樹脂組成物とすることが確認できた。
また、タングステン粉は、大きさが4μm〜8μmの粒径範囲にある細粒体と10μm〜40μmの粒径範囲にある粗粒体とを、重量比が概ね3:1で配合されたものとすると、タングステン粉の細粒体だけのときよりも混合物(エポキシ樹脂組成物)の粘度を低くすることができ、作業性の良いものとすることが確認できた。しかも、樹脂成形物の比重もさらに大きくした樹脂組成物を得ることができた。
[シランカップリング剤の組み合わせ効果の確認]
次に、シランカップリング剤を用いることで、さらに作業性が向上した樹脂組成物が得られることを確認した。
<実施例14>
具体的には、液状エポキシ樹脂とその硬化剤の一部をシランカップリング剤に置き換えて均一に混合した樹脂中に、大きさが異なるタングステン粉をそれぞれ同量配合して樹脂組成物を製造し、それらの流動性の評価を行った。このとき、タングステン粉は、大きさが4μm〜8μmの粒径範囲にあるタングステン粉(「タングステン粉A」という。)と、大きさが8μm〜16μmの粒径範囲にあるタングステン粉(「タングステン粉B」という。)を用いた。また、併せて樹脂成形物(硬化物)の比重についても測定した。さらに、それぞれ消泡剤を適量添加し、脱泡性を評価も行った。それらの結果を、以下の[表4]に併せて示す。
また、シランカップリング剤の組み合わせ効果を確認するために、比較対象として、樹脂の一部をシランカップリング剤に置き換えず、大きさが4μm〜8μmの粒径範囲にあるタングステン粉を用いたときに望ましい結果が得られた実施例8の結果を[表4]に併せて示した。
なお、実施例14及び15において用いたエポキシ樹脂と硬化剤は、実施例1〜5で用いたものと同じである。
また、実施例14において用いたタングステン粉は実施例3で用いたものと同じであり、実施例15において用いたタングステン粉は実施例4で用いたものと同じである。
さらに、シランカップリング剤は、信越シリコーン社製のシランカップリング剤「KBM−403」を用いた。
Figure 0006313684
[表4]の結果より、液状エポキシ樹脂とその硬化剤を均一に混合した樹脂中にシランカップリング剤を添加することで、大きさが4μm〜8μmの粒径範囲にあるタングステン粉を用いたときに望ましい結果が得られた実施例8よりも混合物の流動性が向上し、作業性の良いものとすることが確認できた。また、大きさが4μm〜8μmの粒径範囲にあるタングステン粉に限らず、大きさが8μm〜16μmの粒径範囲にあるタングステン粉を用いた場合であっても、混合物の粘度を低くして作業性の良いものとすることが確認できた。ゆえに、本発明では、大きさが4μm〜16μmの粒径範囲にあるタングステン粉を用いることができることがわかる。
[シランカップリング剤の配合量の確認]
次に、望ましい大きさである4μm〜8μmの粒径範囲にあるタングステン粉を放射線遮蔽物質として用い、シランカップリング剤を配合した場合、どれくらいの配合量が望ましいかを確認した。
<実施例16〜19>
具体的には、液状エポキシ樹脂とその硬化剤の一部をシランカップリング剤に置き換えて均一に混合した樹脂中に、大きさが4μm〜8μmの粒径範囲にあるタングステン粉を配合した樹脂組成物を製造し、シランカップリング剤の配合量による影響を確認するために、樹脂分のシランカップリング剤への置き換え率を変えて製造した樹脂組成物の流動性と、樹脂成形物(硬化物)の強さについての評価を行った。本実施例では、樹脂分のシランカップリング剤への置き換えは、置き換え率が10質量%以下であるもの(実施例16:置き換え率は7.1質量%)、同10質量%であるもの(実施例17:置き換え率は11.1質量%)、同20質量%であるもの(実施例18)、同20質量%以上であるもの(実施例19:置き換え率は25.0質量%)について評価を行った。
また、樹脂成形物(硬化物)の強さの評価は、室温(約25℃)で2週間経過後の硬化物の硬度を、西東京精密社製ショアーA硬度計(WR−204A)を用いて測定し、当該「硬度」と、測定後の針跡の残り具合、及び針跡からの割れの有無を確認して行った。具体的には、硬度98以上で表面に針跡が残らない場合を「A」、硬度は98以下であるが針跡が残らない場合を「B」、硬度98以上であるが針跡が残る場合を「C」、硬度が98以下で且つ針跡が残る場合を「D」、硬度が98以下で且つ針跡から割れた場合を「E」とした。その結果を、以下の[表5]に併せて示す。
また、併せて樹脂成形物(硬化物)の比重について測定した。さらに、それぞれ消泡剤を適量添加し、脱泡性を評価も行った。それらの結果を、以下の[表5]に併せて示す。
この際、樹脂分のシランカップリング剤への置き換えが10質量%以下であるもののデータの一つとして、シランカップリング剤の組み合わせることで混合物の流動性が向上して作業性が良くなることの効果を確認した上記実施例14(置き換え率は3.4質量%)の結果を[表5]に併せて示した。
また、実施例16〜19において用いたエポキシ樹脂と硬化剤は、実施例1〜5で用いたものと同じであり、シランカップリング剤は、実施例14で用いたものと同じである。また、タングステン粉は実施例3で用いたものと同じであり、樹脂組成物中に添加した消泡剤は、実施例6〜9で用いたものと同じである。
Figure 0006313684
[表5]の結果より、樹脂分の一部をシランカップリング剤に置き換えた場合、何れも樹脂組成物の流動性が優れた組成物となるが、樹脂分の25質量%をシランカップリング剤に置き換えたものとすると、流動性が向上し比重がやや大きくなるものの、硬化性が極めて遅く且つ硬化物は軟らかくて脆い状態となる。したがって、樹脂分の一部を20質量%以下の範囲でシランカップリング剤に置き換えたものとすると、常温での作業性が良く、樹脂成形物(硬化物)の比重もさらに大きくした樹脂組成物を得ることができるので望ましいことがわかる。
[シランカップリング剤を組み合わせた後のタングステン粉の配合量の確認]
次に、望ましい大きさである4μm〜8μmの粒径範囲にあるタングステン粉を放射線遮蔽物質として用い、シランカップリング剤を所定量配合した場合、常温での作業性を損なわずに、どれくらい比重を大きくすることができるかを確認した。
<実施例20〜24>
具体的には、液状エポキシ樹脂とその硬化剤の一部として、10質量%をシランカップリング剤に置き換えて均一に混合した樹脂中に、大きさが4μm〜8μmの粒径範囲にあるタングステン粉の配合量を変えて樹脂組成物を製造し(実施例20〜23)、これらの流動性を評価すると共に、その硬化物の比重についてそれぞれ測定した。また、それぞれ消泡剤を適量添加し、脱泡性を評価も行った。それらの結果を、以下の[表6]に併せて示す。
また、シランカップリング剤の置き換え率を20質量%とし、樹脂中に大きさが4μm〜8μmの粒径範囲にあるタングステン粉をより多く配合した樹脂組成物を製造し(実施例24)、実施例20〜23と同様の評価・測定を行い、その結果を、以下の[表6]に併せて示す。
なお、シランカップリング剤を所定量配合した場合にさらに比重を大きくできることを明らかにするために、比較対象として、シランカップリング剤の望ましい配合量である置き換え率が10質量%(正しくは11.1質量%)であるもののデータの一つとして、実施例17の結果を[表6]に併せて示した。
また、実施例20〜24において用いたエポキシ樹脂と硬化剤は、実施例1〜5で用いたものと同じであり、シランカップリング剤は、実施例14で用いたものと同じである。また、タングステン粉は実施例3で用いたものと同じであり、樹脂組成物中に添加した消泡剤は、実施例6〜9で用いたものと同じである。
Figure 0006313684
[表6]の結果より、液状エポキシ樹脂とその硬化剤を均一に混合した樹脂中にシランカップリング剤を添加した場合、シランカップリング剤の置き換え率が10質量%(11.1質量%)であると、常温での作業性が良く、タングステン粉を440部まで配合することができ、比重9g/cm 強の樹脂成形物(硬化物)を得ることが確認できた。
しかしながら、タングステン粉の配合量を620部に増加すると、シランカップリング剤の置き換え率を増やしても非常に粘度の高い樹脂組成物となり、常温では流動性を失う結果となってしまった。
[粒径が異なるタングステン粉の組み合わせたときのカップリング剤の効果の確認]
次に、粒径の異なる二種類のタングステン粉を用いた場合でも、シランカップリング剤を用いることで作業性がさらに向上した樹脂組成物が得ることができることを確認した。
<実施例25及び26>
具体的には、粒径の異なる二種類のタングステン粉を用いるときに、液状エポキシ樹脂とその硬化剤の一部をシランカップリング剤に置き換えた樹脂組成物(実施例25)と、液状エポキシ樹脂とその硬化剤の一部をシランカップリング剤に置き換えるときに、タングステン粉として粒径の異なる二種類のものを用いた樹脂組成物(実施例26)とを製造し、それぞれの流動性の評価を行った。本実施例において粒径の異なる二種類のタングステン粉は、大きさが4μm〜8μmの粒径範囲にある細粒体と、大きさが10μm〜40μmの粒径範囲にある粗粒体とを用い、これら細粒体と粗粒体との配合比が3:1の重量比で配合されたものとした。
また、併せて樹脂成形物(硬化物)の比重について測定した。さらに、それぞれ消泡剤を適量添加し、脱泡性を評価も行った。それらの結果を、以下の[表7]に示す。
また、樹脂分の一部をシランカップリング剤に置き換えたことの改善効果を明らかにするために、実施例25に対する比較対象として、樹脂の一部をシランカップリング剤に置き換えていないが、粒径の異なる二種類のタングステン粉を用いたときに望ましい結果が得られた実施例12の結果、及び実施例26に対する比較対象として、タングステン粉は一種類(望ましい大きさである4μm〜8μmの粒径範囲)であるが、シランカップリング剤を配合することで望ましい結果が得られた実施例24の結果を、それぞれ[表7]に併せて示した。
なお、実施例25及び26において用いたエポキシ樹脂と硬化剤は、実施例1〜5で用いたものと同じである。また、同タングステン粉は、細粒体が実施例3で用いたもの、小粒体が実施例4で用いたもの、粗粒体が実施例5で用いたものとそれぞれ同じである。
また、樹脂組成物中には、それぞれ消泡剤を適量添加されており、消泡剤は、実施例6〜9で用いたものと同じである。
Figure 0006313684
[表7]の結果より、粒径の異なる二種類のタングステン粉を用いるときに、液状エポキシ樹脂とその硬化剤の一部をシランカップリング剤に置き換えることで、常温での作業性が良く、樹脂の一部をシランカップリング剤に置き換えていないが、粒径の異なる二種類のタングステン粉を用いたときに望ましい結果が得られた実施例12よりもさらに比重の大きな放射線遮蔽用樹脂成形物(硬化物)を得ることができる樹脂組成物とすることができることを確認した。
また、液状エポキシ樹脂とその硬化剤の一部をシランカップリング剤に置き換えるときに、タングステン粉として粒径の異なる二種類のものを用いることで、タングステン粉の配合量を620部に増加した場合でも、タングステン粉は一種類(望ましい大きさである4μm〜8μmの粒径範囲)であるが、シランカップリング剤を配合することで望ましい結果が得られた実施例24に比して流動性を失うことなく(常温での作業性が良く)、さらに比重の大きな放射線遮蔽用樹脂成形物(硬化物)を得ることができる樹脂組成物とすることができることを確認した。
[アルカノールアミンの組み合わせ効果の確認]
次に、粒径の異なる二種類のタングステン粉を放射線遮蔽物質として用い、シランカップリング剤と共にアルカノールアミンを用いることで、さらに作業性が向上した樹脂組成物が得られることを確認した。
<実施例27>
具体的には、液状エポキシ樹脂とその硬化剤の一部として、20質量%をシランカップリング剤及びアルカノールアミンに置き換えて均一に混合した樹脂中に、大きさが4μm〜8μmの粒径範囲にあるタングステン粉の細粒体と、同10μm〜40μmの粒径範囲にあるタングステン粉の粗粒体とを
配合して樹脂組成物を製造し、その流動性の評価を行った。また、併せて樹脂成形物(硬化物)の比重についても測定した。さらに、それぞれ消泡剤を適量添加し、脱泡性を評価も行った。それらの結果を、以下の[表8]に併せて示す。
また、アルカノールアミンを組み合わせたことの改善効果を明らかにするために、比較対象として、樹脂分の一部をシランカップリング剤で置き換えた上記実施例25の結果を[表8]に併せて示した。
なお、実施例27において用いたエポキシ樹脂と硬化剤は、実施例1〜5で用いたものと同じであり、シランカップリング剤は、実施例14で用いたものと同じである。また、タングステン粉は、細粒体が実施例3で用いたもの、粗粒体が実施例5で用いたものとそれぞれ同じであり、樹脂組成物中に添加した消泡剤は、実施例6〜9で用いたものと同じである。そして、アルカノールアミンは、三井化学ファイン社製の「ジイソプロパノールアミン」を用いた。
Figure 0006313684
[表8]の結果より、液状エポキシ樹脂とその硬化剤を均一に混合した樹脂中にシランカップリング剤とアルカノールアミンを添加することで、常温での作業性及び脱泡性が良く、しかも、シランカップリング剤だけを用いた実施例25よりも多くのタングステン粉を配合することができ、金属鉛の比重(11.3g/cm)に迫る大きな比重を有する放射線遮蔽用樹脂成形物(硬化物)を得ることができる樹脂組成物とすることができることを確認した。
[可撓性付与剤の効果の確認]
次に、可撓性付与剤をさらに加えることができることを確認した。
<実施例28及び29>
具体的には、液状エポキシ樹脂と、その硬化剤と、可撓性付与剤としてクマロン樹脂とを均一に混合した樹脂中に、大きさが異なるタングステン粉をそれぞれ同量配合して樹脂組成物を製造し、それらの流動性の評価を行った。本実施例では、大きさが4μm〜8μmの粒径範囲にあるタングステン粉(「タングステン粉A」という。)を用いたもの(実施例28)と、大きさが8μm〜16μmの粒径範囲にあるタングステン粉(「タングステン粉B」という。)を用いたもの(実施例29)について評価を行った。
また、併せて樹脂成形物(硬化物)の比重についても測定すると共に、可撓性が得られたことを確認するために、硬化物を作成してその伸び率を求めて可撓性を評価した。この伸び率は、長さ100mm×幅10mm×厚さ5mmをした板状の硬化物を作成した後、25℃で7日間養生したものを試験片とし、JIS−K6911に準拠して測定した。測定条件は、つかみ間隔(L):50mm、引張り速度:5mm/分とし、試験片が破断するまで(切断時)のつかみ間隔の伸び(ΔL)から、以下の計算式(1)により伸び率を求めた。
それらの結果を、以下の[表9]に示す。
Figure 0006313684
また、可撓性付与剤の効果を明らかにするために、比較対象として、シランカップリング剤を組み合わせることで混合物の流動性が向上して作業性が良くなることの効果を確認した上記実施例14の結果を[表9]に併せて示した。
なお、実施例28及び29において用いたエポキシ樹脂と硬化剤は、実施例1〜5で用いたものと同じであり、クマロン樹脂は、日塗化学社製の「エスクロンL−5」とした。ただし、硬化剤とクマロン樹脂は、事前に配合して使用することも可能である。また、実施例28において用いたタングステン粉は実施例3で用いたものと同じであり、実施例29において用いたタングステン粉は実施例4で用いたものと同じである。さらに、樹脂組成物中には、それぞれ消泡剤が適量添加されており、消泡剤は、実施例6〜9で用いたものと同じである。
Figure 0006313684
[表9]の結果より、樹脂中に可撓性付与剤を配合することで、単一の粒径(大きさが4μm〜8μm)をしたタングステン粉を用いた場合でも、シランカップリング剤を組み合わせることで混合物の流動性が向上して作業性が良くなることの効果を確認した上記実施例14よりも硬化物の伸び率が大きく柔軟なものとなり、硬化物に可撓性が付与されたことが確認できた。しかも、大きさが4μm〜8μmの粒径範囲にあるタングステン粉に限らず、大きさが8μm〜16μmの粒径範囲にあるタングステン粉を用いた場合であっても、常温での作業性が良く、これまでの放射線遮蔽材(3g/cm 強)より比重の大きな放射線遮蔽用樹脂成形物(硬化物)を得ることができた。
ゆえに、本発明では、大きさが4μm〜16μmの粒径範囲にあるタングステン粉を用いて、可撓性を有する放射線遮蔽用樹脂成形物(硬化物)が得られることがわかる。
[粒径が異なるタングステン粉を組み合わせたときの可撓性付与剤効果の確認]
次に、粒径の異なる二種類のタングステン粉を用いた場合でも、可撓性付与剤を配合することで可撓性を有する樹脂成形物(硬化物)が得られることを確認した。
<実施例30及び31>
具体的には、液状エポキシ樹脂と、その硬化剤と、可撓性付与剤としてクマロン樹脂とを均一に混合した樹脂中に、大きさが4μm〜8μmの粒径範囲にあるタングステン粉の細粒体と、同10μm〜40μmの粒径範囲にあるタングステン粉の粗粒体とを配合比が3:1の割合で配合したものであって、エポキシ樹脂と硬化剤樹脂との配合比が2:1であるもの(実施例30)、同配合比が1:1であるもの(実施例31)、として樹脂組成物を製造し、こられの流動性の評価を行った。
また、併せて樹脂成形物(硬化物)の比重についても測定すると共に、可撓性が得られたことを確認するため、上記実施例30及び31と同様の方法により樹脂成形物(硬化物)の硬化物の伸び率を求めて可撓性を評価した。それらの結果を、以下の[表10]に示す。
なお、実施例30及び31において用いたエポキシ樹脂と硬化剤とクマロン樹脂は何れも、実施例28及び29で用いたものと同じである。また、同タングステン粉は、細粒体が実施例3で用いたもの、粗粒体が実施例5で用いたものとそれぞれ同じである。
また、樹脂組成物中には、それぞれ消泡剤を適量添加されており、消泡剤は、実施例6〜9で用いたものと同じである。
Figure 0006313684
[表10]の結果より、粒径の異なる二種類のタングステン粉を配合した場合において樹脂中に可撓性付与剤が配合されていても、常温での作業性が良く、これまでの放射線遮蔽材(3g/cm 強)より比重の大きな放射線遮蔽用樹脂成形物(硬化物)とすることが確認できた。しかも、エポキシ樹脂と硬化剤樹脂とクマロン樹脂の配合比を1:1:1とすることで、非常に大きな伸び率を有する可撓性が付与された放射線遮蔽用樹脂成形物(硬化物)を得ることができた。
[放射線(γ線)遮蔽能の確認]
次に、本発明の放射線遮蔽用樹脂組成物を硬化した放射線遮蔽用樹脂成形物(硬化物)が放射線遮蔽材として機能するために十分な放射線遮蔽能を有することを確認した。
本実施例では、実施例12(粒径の異なる二種類のタングステン粉を用いたときに望ましい結果が得られたもの)、実施例14(シランカップリング剤の組み合わせることで望ましい結果が得られたもの)、及び実施例30(粒径の異なる二種類のタングステン粉を用いた場合において樹脂中に可撓性付与剤が配合されたもの)に記載の放射線遮蔽用樹脂組成物について放射線(γ線)遮蔽能の評価を行った。
遮蔽能の試験は、上述した実施例12の放射線遮蔽用樹脂組成物を用いて、縦200mm×横200mm×厚さ6mmを有する硬化物を9枚作成した後、25℃で2週間養生したものを各試験材とし、これらの試験材を適宜枚数組み合わせることにより、遮蔽材全体の厚さを6mm、18mm、24mm、及び54mmとした4種類の厚みでの放射線(γ線)に対する遮蔽試験を行った。すなわち、遮蔽材全体の厚さを6mmとした場合は、厚さ6mmを有する試験材1枚を用いた。また、同厚さを18mmとした場合は、厚さ6mmを有する試験材3枚用いた。また、同厚さを24mmとした場合は、厚さ6mmを有する試験材4枚を用いた。さらに、同厚さを54mmとした場合は、厚さ6mmを有する試験材9枚全てを用いた。
また、遮蔽能の試験は、外部機関である地方独立行政法人東京都立産業技術研究センターが所有する応用光研工業社製のγ線測定器:S−3073(1インチφNaIシンチレーション検出器)を使用し、同センターが所有する線源を使用して行った。このNaIシンチレーション検出器は、検出器に放射線(γ線)が入った際に生じる発光の波長をヨウ化ナトリウム結晶検出器で検出するものである。また、線源は、I)セシウム137線源(以下、「Cs137」と記す。)、線源強度(公称値)は10MBq(基準日:平成22年12月16日)、及びII)コバルト60線源(以下、「Co60」と記す。)、線源強度(公称値)は10MBq(基準日:平成22年12月16日)である。
測定方法は、図3に示すように、床Gからの高さTが1.2mにおいて、線源RSから放出される放射線(γ線)の飛来方向を特定し、それ以外の方向から飛来するγ線を遮蔽するためのコリメータCの先端と測定器Mまでの距離Dを250mm(一定)とし、その間に試料(遮蔽材)Sがない場合(図3(A)を参照)と、試料(遮蔽材)Sがある場合について線量をそれぞれ測定した。また、線源RSと測定装置Mとの間に試料(遮蔽材)Sがある場合の測定は、上述した通り遮蔽材S全体の厚さを6mm(図3(B)を参照)、同18mm、同24mm、及び同54mm(図3(C)を参照)とした場合について行った。また、測定は30秒間隔で10回行い、測定した線量の平均値より、以下の計算式(2)に基づいて遮蔽率を求めた。それらの結果を、以下の[表11]に示す。なお、計算式(2)中のBGは、バックグラウンド(測定対象以外からの放射線)値である。
Figure 0006313684
Figure 0006313684
また、[表11]の結果(求めた遮蔽率)より、以下の計算式(3)に基づいて各種γ線に対する価層を算出した。その結果を以下の[表12]及び[図4]に示す。
Figure 0006313684
Figure 0006313684
この[図4]からは、縦軸に示す1/価層に基づいて線量を減衰させる遮蔽材の厚みが横軸より分かり、たとえば、縦軸に示す1/2価層からは、線量を2分の1にする遮蔽材の厚みが横軸より分かり、同1/5価層からは、線量を5分の1にする遮蔽材の厚みが横軸より分かる。
ゆえに[図4]の結果より、Cs137によるγ線の場合、1/2価層(線量を50%遮蔽する厚み)は約11mm、同1/5価層(線量を80%遮蔽する厚み)は約26mmであることが確認できた。
但し、線源をCo60によるγ線とした場合、1/2価層は約20mm、同1/5価層は約48mm必要となり、同線源の遮蔽材への貫通力が高いことも確認できた。
1 エポキシ樹脂(主剤)、2 硬化剤、3(3a,3b) タングステン粉、10 混合物、11 タングステン粉入り液状エポキシ樹脂(A液)、12 タングステン粉入り放射線遮蔽用樹脂材料(B液)、20 放射線遮蔽用樹脂組成物。

Claims (11)

  1. 液状のエポキシ樹脂と、その硬化剤、及び放射線遮蔽物質を少なくとも含むエポキシ樹脂組成物であって、
    前記エポキシ樹脂と前記硬化剤とを混合した樹脂中に、前記放射線遮蔽物質として少なくとも4μm〜8μmの粒径範囲にあるタングステン粉の細粒体と共に、10μm〜40μmの粒径範囲にあるタングステン粉の粗粒体が、常温で混合物の流動性を失わない範囲の分量であり、比重が4g/cm 以上となるように、前記細粒体と前記粗粒体とが概ね3:1の重量比で配合されていることを特徴とする放射線遮蔽用樹脂組成物。
  2. 前記エポキシ樹脂は、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン系であることを特徴とする請求項1に記載の放射線遮蔽用樹脂組成物。
  3. 前記エポキシ樹脂は、希釈剤を含むことを特徴とする請求項に記載の放射線遮蔽用樹脂組成物。
  4. 前記硬化剤は、脂肪族アミン、脂環式アミン、複素環式アミン、ポリアミドアミン、及びこれらの変性物の群から選択された1種以上であることを特徴とする請求項1乃至の何れか1項に記載の放射線遮蔽用樹脂組成物。
  5. シランカップリング剤をさらに含むことを特徴とする請求項1乃至の何れか1項に記載の放射線遮蔽用樹脂組成物。
  6. アルカノールアミンをさらに含むことを特徴とする請求項に記載の放射線遮蔽用樹脂組成物。
  7. 消泡剤をさらに含むことを特徴とする請求項1乃至の何れか1項に記載の放射線遮蔽用樹脂組成物。
  8. 可撓性付与剤をさらに含むことを特徴とする請求項1乃至の何れか1項に記載の放射線遮蔽用樹脂組成物。
  9. 前記請求項1乃至の何れか1項に記載の放射線遮蔽用樹脂組成物を得るための、エポキシ樹脂を主成分とするA液と、その硬化剤を主成分とするB液とから構成される樹脂材料であって、
    前記A液と前記B液とを混合した樹脂組成物中に概ね3:1の重量比で含まれることとなる放射線遮蔽物質として少なくとも4μm〜8μmの粒径範囲にあるタングステン粉の細粒体と、10μm〜40μmの粒径範囲にあるタングステン粉の粗粒体が、予め前記A液側と前記B液側とに振り分けて配合されていることを特徴とする二液型の放射線遮蔽用樹脂材料。
  10. 前記請求項1乃至の何れか1項に記載の放射線遮蔽用樹脂組成物を所定形状に硬化成形したことを特徴とする放射線遮蔽材。
  11. 前記請求項1乃至の何れか1項に記載の放射線遮蔽用樹脂組成物を容器の内面に被覆して硬化させたことを特徴とする放射性廃棄物用容器。

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