JP4115299B2 - キャスク、中性子遮蔽体用組成物、及び、中性子遮蔽体製造法 - Google Patents

キャスク、中性子遮蔽体用組成物、及び、中性子遮蔽体製造法 Download PDF

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    • Y02E30/30Nuclear fission reactors

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、中性子遮蔽体用組成物に関し、特に使用済燃料の貯蔵および運搬用のキャスクに適した中性子遮蔽体製造用の組成物に関する。また、この中性子遮蔽体用組成物を用いたキャスクに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の原子力産業の発展に伴い、各種の原子力施設、たとえば原子炉、燃料再処理工場などが各地に建設されているが、これら各種の原子力施設などでは、人体が受ける放射線の量を極力低減し、また放射線により構造材料や機器材料が損傷しないようにしなければならない。すなわち、各種の原子力施設などの燃料あるいは使用済み燃料(リサイクル燃料とも言う)から発生する中性子は、エネルギーが高く、強い透過力を有し、他の物質と衝突するとγ線を発生して、原子力施設などの各種材料を損傷させることから、この中性子およびγ線を安全確実に遮蔽することができる中性子遮蔽体の開発が行なわれている。
【0003】
従来、中性子遮蔽体としては、コンクリートが用いられていたが、このコンクリートは、遮蔽壁としては相当の厚みを必要とし、原子力船のように、容積に制限のある原子力施設では不適な中性子遮蔽体であり、中性子遮蔽体の薄化が望まれていた。
【0004】
ここで、中性子のうちの高速中性子は、ほぼ同じ質量の水素元素と衝突することによってエネルギーが吸収され、効果的に減速される。よって、水素密度の高い、すなわち水素含有率の高い物質が高速中性子の遮蔽に有効であり、例えば水、パラフィン、ポリエチレンなどを中性子遮蔽体として用いることができる。この水などの液体は、コンクリートに比べて軽量であるが、液体であるために取り扱いが限定され、さらには、この水などの液体を収納する容器自体の材質の中性子遮蔽能が問題となる。
【0005】
そこで、中性子の遮蔽については、水素含有率の高いことから中性子の減速材としての効果が大きい、パラフィン、ポリエチレンなどのポリオレフィン系熱可塑性樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などの熱硬化性樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂に、中性子遮蔽材として微量のホウ素化合物とを配合したものが使われている。一方、γ線の遮蔽については、中性子遮蔽体本体の外側を覆うような形状をもつγ線遮蔽用の構造物を配置して遮蔽している。
【0006】
さらに、万一、火災が生じた場合でも、ある程度以上の中性子遮蔽能を維持できるような中性子遮蔽体の開発も行われている。これについては耐火材として大量の水酸化アルミニウム粉末や水酸化マグネシウム粉末等が配合された中性子遮蔽体が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−108787号公報
【特許文献2】
特許第3150672号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、中性子の遮蔽においては、中性子をより安全確実に遮蔽できる中性子遮蔽体が求められている。一方、γ線の遮蔽においては、現在主に使用されている樹脂等からなる中性子遮蔽体は、比重が0.9〜1.2と小さく、高速の中性子を遮蔽する際に発生するγ線を遮蔽するには適していなかった。そこで、中性子遮蔽体本体の外側に比重の大きい材料を用いたγ線遮蔽用の構造物を配置する必要があった。つまり、中性子遮蔽体自体で中性子遮蔽能とγ線の遮蔽を満足させることはできていなかった。
【0009】
比重の大きい材料を用いたγ線遮蔽用の構造物を中性子遮蔽体本体の外側に配置しなければならないということは、容積の制限のある原子力施設等において、最良の形態とは言えず、中性子遮蔽能のみならず中性子遮蔽体自体のγ線遮蔽能の向上が期待されている。
【0010】
耐火性においては、水酸化アルミニウムの脱水熱分解温度は、245〜320℃であり、これに対して水酸化マグネシウムの脱水熱分解温度は340〜390℃であるため耐火材としては水酸化マグネシウム粉末がより適していると考えられる。しかし、水酸化マグネシウム粉末を使用した場合、組成物の粘度が上昇して混練・充填に多大な時間と労力がかかるという問題点および樹脂内部に巻き込まれた気泡が残留し、中性子遮蔽能を低下させるおそれがあるという問題点があった。そのため、実際にキャスク用に水酸化マグネシウム粉末が使用された例はなく、また、水酸化マグネシウム粉末の粒径等についても検討された例もない。
【0011】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたもので、中性子およびγ線を効果的に遮蔽し、耐火性に優れた中性子遮蔽体組成物およびそれを用いたキャスクを提供することを目的とする。さらに、作業性のよい中性子遮蔽体組成物を提供することも目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題解決のため、中性子遮蔽体用組成物の開発に着手したところ、密度増加剤をエポキシ樹脂等に混合することによりγ線遮蔽能および中性子遮蔽能が向上すること、微細な粒径の水酸化マグネシウム粉末を使用することにより耐熱性および中性子遮蔽能が向上すること、さらに、カーボン粉末を配合することにより中性子遮蔽体用組成物の中性子遮蔽能が向上することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
すなわち、本発明は下記の通りである。
〔1〕 使用済み燃料集合体を収容するセルを構成する角パイプ又は板状部材からなるバスケットを内部に有する胴本体と、
前記胴本体とその外周に設けられた外筒との間に、エポキシ樹脂を主体とした中性子遮蔽材料と、粒径が1.5〜15μmの水酸化マグネシウム粉末である耐火材と、5.0g/mL以上の密度を有する金属粉または金属酸化物である密度増加剤とを含有すると共に、
前記エポキシ樹脂を主体とした中性子遮蔽材料が20〜55質量%、
前記耐火材が5〜60質量%、
前記密度増加剤が5〜40質量%である中性子遮蔽体用組成物を充填してなる中性子遮蔽体と、
を有することを特徴とするキャスク。
〔2〕 さらに蓋部が設けられており、該蓋部は、その上面および周囲に、前記エポキシ樹脂を主体とした中性子遮蔽材料と、前記耐火材と、前記密度増加剤とを含有する中性子遮蔽体用組成物が封入されていることを特徴とする上記〔1〕に記載のキャスク。
〔3〕 中性子遮蔽体製造用の組成物であって、
エポキシ樹脂を主体とした中性子遮蔽材料と、粒径が1.5〜15μmの水酸化マグネシウム粉末である耐火材と、5.0g/mL以上の密度を有する金属粉または金属酸化物である密度増加剤とを含有すると共に、
前記エポキシ樹脂を主体とした中性子遮蔽材料が20〜55質量%、
前記耐火材が5〜60質量%、
前記密度増加剤が5〜40質量%であることを特徴とする中性子遮蔽体用組成物。
〔4〕 前記エポキシ樹脂を主体とした中性子遮蔽材料が、水素添加エポキシ樹脂と水素添加ビスフェノールA型エポキシ樹脂のいずれかであることを特徴とする上記〔3〕に記載の中性子遮蔽体用組成物。
〔5〕 前記密度増加剤が、350℃以上の融点を有する金属粉であることを特徴とする上記〔3〕に記載の中性子遮蔽体用組成物。
〔6〕 前記350℃以上の融点を有する金属粉が、Cr、Mn、Fe、Ni、Cu、Sb、U、Wのうちいずれか1つであることを特徴とする上記〔5〕に記載の中性子遮蔽体用組成物。
〔7〕 前記密度増加剤が、1000℃以上の融点を有する金属の酸化物粉であることを特徴とする上記〔3〕に記載の中性子遮蔽体用組成物。
〔8〕 前記1000℃以上の融点を有する金属の酸化物粉が、NiO、CuO、ZnO、ZrO 、SnO、SnO 、WO 、CeO 、UO 、PbO、WO のうちいずれか1つであることを特徴とする上記〔7〕に記載の中性子遮蔽体用組成物。
〔9〕 さらに、カーボン粉末を含有することを特徴とする上記〔3〕に記載の中性子遮蔽体用組成物。
〔10〕 前記カーボン粉末が、カーボンブラックであることを特徴とする上記〔9〕に記載の中性子遮蔽体用組成物。
〔11〕 前記カーボンブラックを0.02〜4質量%含有することを特徴とする上記〔10〕に記載の中性子遮蔽体用組成物。
〔12〕 中性子遮蔽体用の組成物は、
前記硬化剤を4〜55質量%と、ホウ素化合物を0.5〜10質量%とを含有することを特徴とする上記〔3〕に記載の中性子遮蔽体用組成物。
〔13〕 構成成分としてエポキシ樹脂を主体とした中性子遮蔽材料を含有し、γ線の遮蔽性能を維持しつつ、中性子遮蔽効果を上げることができる中性子遮蔽体の製造法であって、
前記エポキシ樹脂を主体とした中性子遮蔽材料と粒径が1.5〜15μmの水酸化マグネシウム粉末である耐火材を含む組成において、前記耐火材の一部を5.0g/mL以上 の密度を有する金属粉または金属酸化物である密度増加剤で置換し、硬化成形加工し、
その配合割合を
前記エポキシ樹脂を主体とした中性子遮蔽材料が20〜55質量%、
前記耐火材が5〜60質量%、
前記密度増加剤が5〜40質量%とすることを特徴とする中性子遮蔽体製造法。
〔14〕 脱水分解温度が、340〜390℃である水酸化マグネシウムを耐火材とすることを特徴とする請求項3に記載の中性子遮蔽体用組成物。
【0014】
【発明の実施の形態】
(I)中性子遮蔽体用組成物
まず、本発明の中性子遮蔽体用組成物について説明する。中性子遮蔽体用組成物は、基本成分として、主剤としての高分子を主体とした中性子遮蔽材料、硬化剤、ホウ素化合物が混合されたものである。この基本成分に耐火材を混合することにより難燃性を付与することができる。また、カーボン粉末、および/または、密度増加剤を混合することによりγ線遮蔽能、中性子遮蔽能、作業性等をより向上させることができる。以下、各成分について詳細に説明するが、特に断らない限り市販のものを使用することができる。
【0015】
(i)高分子を主体とした中性子遮蔽材料
高分子を主体とした中性子遮蔽材料としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン等のポリオレフィン系樹脂、およびエポキシ樹脂等が、代表的なものとして挙げられる。エポキシ樹脂とは、架橋し得るエポキシ基を含む樹脂を意味する。
【0016】
エポキシ樹脂としては、例えばグリシジルエーテル型/2官能フェノール型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型/多官能フェノール型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型/アルコール型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂等が挙げられ、さらにこれらのエポキシ樹脂の環構造に水素を添加した水素添加エポキシ樹脂等も挙げられる。中でも水素添加エポキシ樹脂が好ましい。エポキシ樹脂は、1種類のエポキシ樹脂を用いても、2種以上のエポキシ樹脂を混合して用いてもよい。
【0017】
さらに、エポキシ樹脂の具体例を挙げると、グリシジルエーテル型/2官能フェノール型エポキシ樹脂としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、単環型芳香族エポキシ樹脂、縮合多環型芳香族エポキシ樹脂等、グリシジルエーテル型/多官能フェノール型エポキシ樹脂としては、ポリフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、メチレン基置換型フェノールノボラック型エポキシ樹脂、アルキレン変性フェノールノボラック型エポキシ樹脂、アラルキル変性フェノールノボラック型エポキシ樹脂等、脂肪族エポキシ樹脂としては、直接酸化による脂環式エポキシ樹脂、官能基のグリシジルエーテル化による脂環式エポキシ樹脂、ジクロロペンタジエン型エポキシ樹脂、鎖上脂肪族エポキシ樹脂等、変性エポキシ樹脂としては、シリコーン変性エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、ポリイミドおよびポリアミド変性エポキシ樹脂、光硬化性エポキシ樹脂等、その他には、リン含有エポキシ樹脂、硫黄含有エポキシ樹脂、窒素含有エポキシ樹脂等が挙げられる。水素添加エポキシ樹脂としては、水素添加ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水素添加ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型グリシジルエーテル樹脂を水素添加した樹脂等が挙げられる。
【0018】
水素添加されていないエポキシ樹脂のうち好ましくはビスフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂である。特に好ましくは水素添加したエポキシ樹脂であり、ビスフェノール型エポキシ樹脂の環構造に水素を添加した水素添加ビスフェノールA型エポキシ樹脂である。水素添加ビスフェノールA型エポキシ樹脂のような水素含有量の大きい水素添加エポキシ樹脂を用いることにより、中性子遮蔽能のより優れた中性子遮蔽体を製造することが可能となる。
【0019】
【化1】
Figure 0004115299
【0020】
上記水素添加ビスフェノールA型エポキシ樹脂の構造式中のnの好ましい範囲は、n=0〜2であり、n=0〜0.1程度がより好ましい。
【0021】
高分子を主体とした中性子遮蔽材料の含有量は、用いる材料、他の成分の種類や含有量等によって変動するため、規定することは困難であるが、例えば組成物全体中、20〜55質量%、好ましくは24〜47質量%、特に好ましくは35〜42質量%である。20質量%以下だと中性子遮蔽能が弱くなる傾向があり、55質量%以上だと他の成分とのバランスが良くないためである。
【0022】
(ii)硬化剤
硬化剤は、高分子を主体とした中性子遮蔽材料の種類によって、適したものが選択される。具体的には、エポキシ樹脂と反応して架橋構造を形成する硬化剤としては、例えばアミン系硬化剤、酸および酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤等が挙げられ、好ましくはアミン系硬化剤が用いられる。さらにアミン系硬化剤のうち、脂環式アミン系硬化剤、芳香族アミン系硬化剤等の環構造を有する硬化剤は、耐熱性が高いため、本発明の組成物に好適に用いられる。硬化剤は、1種類の硬化剤を用いても、2種以上の硬化剤を混合して用いてもよい。
【0023】
硬化剤の好ましい添加量は、用いられる硬化剤の種類、他の成分の種類や含有量等によって変動するため、規定することは困難であるが、アミン系硬化剤の一例を挙げると、組成物全体中、4〜55質量%、好ましくは4.5〜30質量%、特に好ましくは6〜15質量%である。4質量%以下だと硬化剤としての効果が弱く、55質量%以上だと硬化が早くなりすぎ、充填等に必要な作業時間を確保できない。
【0024】
(iii)耐火材
耐火材とは、例えば火災が生じた場合のように中性子遮蔽体が高温にさらされたときに、ある程度以上の中性子遮蔽能を維持できるよう中性子遮蔽体を残存させることを目的として加えられるものであり、例えば水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の化合物をいう。水酸化マグネシウムの脱水分解温度は、340〜390℃で水酸化アルミニウムの脱水分解温度より高温であるため耐火材として特に適している。
【0025】
一般的に、水酸化マグネシウムは、粉末状になっている。この水酸化マグネシウム粉末の粒径については、通常は特に調整されていない。粒径を調整することにより、中性子遮蔽体用組成物としてより好適な組成物となる。
【0026】
耐火材として水酸化マグネシウム粉末を用いる場合、好ましい水酸化マグネシウム粉末の粒径は、1.5〜15μmであり、特に1.5〜5μmの粒径が好ましい。これらの粒径を有す水酸化マグネシウム粉末は、市販のものを用いることができる。ここで、水酸化マグネシウム粉末の粒径は、全ての粉末の粒径が1.5〜15μmの範囲にあることが望ましいが、現実的には水酸化マグネシウム粉末の80%以上が1.5〜15μmの範囲にあればよく、好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上が当該範囲にあることが望ましい。粒径1.5μm以下の水酸化マグネシウム粉末を用いて、水酸化マグネシウム粉末の混合比をあげると粘度が上昇して混練・充填に多大な時間と労力がかかってしまう。従って、水酸化マグネシウム粉末の混合比を低く抑えることになるため、耐火性が悪くなる。他方、粒径15μm以上の水酸化マグネシウム粉末を用いた場合、水酸化マグネシウム粉末の総表面積が小さくなるため耐火性が低下するおそれがある。すなわち、1.5〜15μmの水酸化マグネシウム粉末を用いることにより、耐火性を維持しつつ、混練・充填に多大な時間と労力がかからない作業性のよい中性子遮蔽体組成物を得ることができる。
【0027】
さらに中性子遮蔽能の観点から具体的に説明すると、硬化前エポキシ樹脂の容器への流し込みに際し、空隙部をなくすため、硬化前レジンの粘度は100Pa・s以下にすることが望ましい。1.5μm以下の水酸化マグネシウム粉末を用いた場合、粘度を適正に保つには水酸化マグネシウム粉末の混入量は30質量%以下となり、溶融栓付き密閉容器内で耐火条件温度(外部800℃、30分)とすると、樹脂内部に気泡(ボイド)が発生し、中性子遮蔽能が低下するおそれがある。他方、15μm以上の水酸化マグネシウム粉末を用いた場合、水酸化マグネシウム粉末の混入量は50質量%以上とすることができるが、水酸化マグネシウム粉末の表面積が低下するため、耐火条件温度(外部800℃、30分)で樹脂内部に気泡が発生し、中性子遮蔽能が低下するおそれがある。
【0028】
つまり、水酸化マグネシウム粉末の粒径を1.5〜15μmにすることにより耐火性および中性子遮蔽能がより優れた中性子遮蔽体を得ることができる。また、作業性も向上する。
【0029】
一方、水酸化アルミニウムは、水素含有量の点から水酸化マグネシウムより優れているので、水酸化アルミニウム粉末と水酸化マグネシウム粉末とを適宜混合して耐火材としてもよい。その場合用いる水酸化アルミニウム粉末は、0.07質量%以下の低ソーダ分の水酸化アルミニウム粉末を用いることが好ましい。ソーダ分(Na2O)を0.07質量%以下にすることによって、150℃以上まで水素含有率を保持することができる。また、水酸化アルミニウム粉末、水酸化マグネシウム粉末以外の耐火材をさらに添加したものであってもよい。
【0030】
耐火材の添加量は、用いられる耐火材、他の成分の種類や含有量等によって変動するため、規定することは困難であるが、組成物全体中、好ましくは5〜60質量%、特に好ましくは33〜41質量%である。5質量%以下だと耐火材としての効果が弱く、60質量%以上だと高分子を主体とした中性子遮蔽材料等の割合が小さくなり、中性子吸収能を小さくするためである。
【0031】
(iv)密度増加剤
密度増加剤は、密度の高い材料であり、中性子遮蔽体の比重を大きくすることができれば、他の成分に悪影響を与えない限りいかなる材料でもよい。ここで、γ線を効果的に遮蔽する密度増加剤自体の密度は、5.0g/cm3以上、好ましくは5.0〜22.5g/cm3、より好ましくは6.0〜15g/cm3である。5.0g/cm3以下だと中性子遮蔽能を損なわずにγ線を効果的に遮蔽するのは難しく、22.5g/cm3以上だと添加量に応じた効果が認められない。
【0032】
具体的には、金属粉または金属の酸化物粉等が挙げられる。密度増加剤として、好ましくは、融点が350℃以上の金属であるCr、Mn、Fe、Ni、Cu、Sb、Bi、U、W等、および/または、融点が1000℃以上の金属の酸化物であるNiO、CuO、ZnO、ZrO2、SnO、SnO2、WO2、UO2、PbO、WO3、ランタノイド酸化物等が挙げられる。中でもCu、WO2、WO3、ZrO2、CeO2が特に好ましい。コスト面で利点を有するためである。密度増加剤は、1種類で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0033】
粒径は特に限定はされないが、粒径が大きいと密度増加剤が、製造中に沈降する恐れがあるので沈降しない程度で小さな粒径が好ましい。沈降しない粒径については、その他の条件(例えば、組成物の温度、粘度、硬化速度等)によって大きく作用されるため、単純に数値で規定できない。
【0034】
密度増加剤を添加することにより、中性子遮蔽体の比重を上げることができ、γ線をより効果的に遮蔽することができる。また、上記の金属粉や金属の酸化物粉を用いることで耐火性も向上させることができる。
【0035】
また、高分子を主体とした中性子遮蔽材料以外の添加物の一部、主として耐火材の一部を密度増加剤で置換することによって、水素含有量を増加させることができる。主として耐火材の一部と一部置換を行なうことにより、中性子遮蔽体用組成物の比重を維持(1.62〜1.72g/cm3)しながら、エポキシ樹脂の量を多くすることができるため水素含有量の高い中性子遮蔽体を製造することができ、効果的に中性子を遮蔽することができる。すなわち、中性子遮蔽能とγ線の遮蔽とを両立することが可能となる。
【0036】
混合する密度増加剤の添加量は、上記中性子遮蔽体用組成物の比重(1.62〜1.72g/cm3)を保つように適宜調節して添加することができる。具体的には、用いられる密度増加剤の種類、他の成分の種類や含有量等によって変動するため、規定することは困難であるが、例えば組成物全体中、5〜40質量%、好ましくは9〜35質量%である。CeO2を用いる場合は、15〜20質量%が特に好ましい。5質量%以下では添加の効果が認められにくく、40質量%以上だと組成物の比重を1.62〜1.72g/cm3の範囲に保つことが困難となる。
【0037】
ここで、更に図面を用いて密度増加剤を用いた実施の形態の具体例について詳細に説明する。
【0038】
(第1の実施の形態)
図1は、本実施の形態による中性子遮蔽体の構成例を示す概念図である。
【0039】
すなわち、本実施の形態による中性子遮蔽体は、図1に示すように、高分子を主体とした中性子遮蔽材料1に、耐火材2と、当該耐火材2よりも密度が高い密度増加剤3とを混合したものである。
【0040】
ここで、特に密度増加剤3としては、金属粉あるいは金属の酸化物粉を混合したりすることにより、材料の密度を維持しながら(1.62〜1.72g/mLの範囲)水素含有量を上げた中性子遮蔽体としている。
【0041】
また、混合する密度増加剤3の密度は、5.0g/mL以上、好ましくは5.0〜22.5g/mL、より好ましくは6.0〜15g/mLである。
【0042】
さらに、密度増加剤3としては、融点が350℃以上の金属粉あるいは融点が1000℃以上の金属の酸化物粉を混合することが好ましい。
【0043】
これらに該当する粉体の材料として、金属では、例えばCr、Mn、Fe、Ni、Cu、Sb、Bi、U、W等が挙げられる。
【0044】
また、金属の酸化物では、例えばNiO、CuO、ZnO、ZrO2、SnO、SnO2、WO2、CeO2、UO2、PbO、PbO、WO3等が挙げられる。
【0045】
なお、高分子を主体とした中性子遮蔽材料1としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン等のポリオレフィン系樹脂、およびエポキシ樹脂等が、代表的なものとして挙げられる。
【0046】
次に、以上のように構成した本実施の形態による中性子遮蔽体においては、高分子を主体とした中性子遮蔽材料(樹脂)1に、耐火材2と、当該耐火材2よりも密度が高い密度増加剤3を混合させたことにより、密度を一定の値に維持しながら(1.62〜1.72g/mLの範囲)、水素含有量を増加させることができる。
【0047】
すなわち、耐火材2は、中性子遮蔽材料1よりも密度がやや高く、やや少ない水素を含有する。
【0048】
そこで、耐火材2の一部を、水素を含まない密度増加剤3で置き換え、密度が同等となるようにする。
【0049】
そして、それぞれの密度・水素含有量を計算して、適度な置き換えを行なうことにより、水素含有量がやや小さい耐火材2部が高水素の中性子遮蔽材料1で置換されて、水素含有量を増加させることができる。
【0050】
この結果、二次γ線の遮蔽性能を維持しながら中性子吸収量を上げることができ、これにより従来のように中性子遮蔽体本体の外側にγ線遮蔽用の構造物を配置することなく、中性子線の遮蔽性能を向上させることができる。
【0051】
また、本実施の形態による中性子遮蔽体においては、混合する密度増加剤3の密度を、5.0g/mL以上、好ましくは5.0〜22.5g/mL、より好ましくは6.0〜15g/mLにすることにより、上述した作用効果を、より一層顕著に奏することができる。
【0052】
すなわち、図2は、密度増加剤3の密度と水素含有量との関係を示す特性図である。
【0053】
図2では、水素含有量0.0969g/mL、耐火材2:水酸化マグネシウム、密度1.64g/mLのベース樹脂1に、密度が一定となるように耐火材2を密度増加剤3で置換していった時の水素含有量を示している。
【0054】
なお、耐火材2である水酸化マグネシウムの密度は、2.36g/mLである。
【0055】
図2から、効果が現われるのは、耐火材2の密度以上ではなく、ベース樹脂1、耐火材2によって異なるが、耐火材2の密度よりもやや高い密度が境界、すなわち密度増加剤3の密度が、5.0g/mL以上、好ましくは6.0g/mL以上となっていることがわかる。22.5g/mL以上では添加量に応じた効果は認められない。
【0056】
図3は、密度増加剤3の密度と中性子遮蔽体外側の中性子線+二次γ線量相対比との関係を示す特性図である。
【0057】
図3では、水素含有量0.0969g/mL、耐火材2:水酸化マグネシウム、密度1.64g/mLのベース樹脂1に、密度が一定となるように耐火材2を密度増加剤3で置換していった時の遮蔽効果を示している。
【0058】
なお、ベース樹脂1の遮蔽外側線量を1としている。
【0059】
図3から、効果が認められるのは、密度増加剤3の密度が5.0g/m以上、より好ましくは6.0g/mL以上となっていることがわかる。22.5g/mL以上では添加量に応じた効果は認められない。
【0060】
さらに、本実施の形態による中性子遮蔽体においては、密度増加剤3として、融点が350℃以上の金属粉(Cr、Mn、Fe、Ni、Cu、Sb、Bi、U、W等)を混合するか、あるいは融点が1000℃以上の金属の酸化物粉(NiO、CuO、ZnO、ZrO2、SnO、SnO2、WO2、CeO2、UO2、PbO、PbO、WO3)を混合していることにより、耐火性を向上させることができる。
【0061】
上述したように、本実施の形態による中性子遮蔽体では、材料の密度を下げずに一定の値に維持しながら水素含有量を増加させることができ、これにより従来のように中性子遮蔽体本体の外側にγ線遮蔽用の構造物を配置することなく、中性子線の遮蔽性能を向上させることが可能となる。
【0062】
(第2の実施の形態)
本実施の形態による中性子遮蔽体も、前記図1に示すように、高分子を主体とした中性子遮蔽材料1である水素含有量が低いエポキシ樹脂に、耐火材2と、当該耐火材2よりも密度が高い密度増加剤3とを混合し、硬化成形加工したものとしている。
【0063】
ここで、特に密度増加剤3としては、金属粉を混合したり、あるいは金属の酸化物粉を混合することにより、水素含有量が低いエポキシ樹脂を硬化させた中性子遮蔽体としている。
【0064】
また、混合する密度増加剤3の密度は、5.0g/mL以上、好ましくは5.0〜22.5g/mL、より好ましくは6.0〜15g/mLである。
【0065】
さらに、密度増加剤3としては、融点が350℃以上の金属粉を混合するか、あるいは融点が1000℃以上の金属の酸化物粉を混合することが好ましい。
【0066】
これらに該当する粉体の材料として、金属では、例えばCr、Mn、Fe、Ni、Cu、Sb、Bi、U、W等が挙げられる。
【0067】
また、金属の酸化物では、例えばNiO、CuO、ZnO、ZrO2、SnO、SnO2、WO2、CeO2、UO2、PbO、PbO、WO3等が挙げられる。
【0068】
なお、高分子を主体とした中性子遮蔽材料1としては、エポキシ樹脂以外に、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン等のポリオレフィン系樹脂等が、代表的なものとして挙げられる。
【0069】
次に、以上のように構成した本実施の形態による中性子遮蔽体においては、高分子を主体とした中性子遮蔽材料1に、耐火材2と、当該耐火材2よりも密度が高い密度増加剤3とを混合していることにより、材料の密度を下げずに一定の値に維持しながら(1.62〜1.72g/mLの範囲)、水素含有量を増加させることができる。
【0070】
すなわち、耐火材2は、中性子遮蔽材料1よりも密度がやや高く、やや少ない水素が含有する。
【0071】
そこで、耐火材2の一部を、水素を含まない密度増加剤3で置き換え、密度が同等となるようにする。
【0072】
そして、それぞれの密度・水素含有量を計算して、適度な置き換えを行なうことにより、水素含有量がやや小さい耐火材2部が高水素の中性子遮蔽材料1で置換されて、水素含有量を増加させることができる。
【0073】
この結果、二次γ線の遮蔽性能を維持しながら中性子吸収量を上げることができ、これにより従来のように中性子遮蔽体本体の外側にγ線遮蔽用の構造物を配置することなく、中性子線の遮蔽性能を向上させることができる。
【0074】
また、本実施の形態による中性子遮蔽体においては、混合する密度増加剤3の密度を、5.0g/mL以上、好ましくは5.0〜22.5g/mL、より好ましくは6.0〜15g/mLにすることにより、上述した作用効果を、より一層顕著に奏することができる。
【0075】
すなわち、図2は、密度増加剤3の密度と水素含有量との関係を示す特性図である。
【0076】
図2では、水素含有量0.0969g/mL、耐火材2:水酸化マグネシウム、密度1.64g/mLのベース樹脂1に、密度が一定となるように耐火材2を密度増加剤3で置換していった時の水素含有量を示している。
【0077】
なお、耐火材2である水酸化マグネシウムの密度は、2.36g/mLである。
【0078】
図2から、効果が現われるのは、耐火材2の密度以上ではなく、ベース樹脂1、耐火材2によって異なるが、耐火材2の密度よりもやや高い密度が境界、すなわち密度増加剤3の密度が、5.0g/mL以上、より好ましくは6.0g/mL以上となっていることがわかる。22.5g/mL以上では添加量に応じた効果は認められない。
【0079】
図3は、密度増加剤3の密度と中性子遮蔽体外側の中性子線+二次γ線量相対比との関係を示す特性図である。
【0080】
図3では、水素含有量0.0969g/mL、耐火材2:水酸化マグネシウム、密度1.64g/mLのベース樹脂1に、密度が一定となるように耐火材2を密度増加剤3で置換していった時の遮蔽効果を示している。
【0081】
なお、ベース樹脂1の遮蔽外側線量を1としている。
【0082】
図3から、効果が認められるのは、密度増加剤3の密度が5.0g/mL以上、好ましくは6.0g/mL以上となっていることがわかる。22.5g/mL以上では添加量に応じた効果は認められない。
【0083】
さらに、本実施の形態による中性子遮蔽体においては、密度増加剤3として、融点が350℃以上の金属粉(Cr、Mn、Fe、Ni、Cu、Sb、Bi、U、W等)を混合するか、あるいは融点が1000℃以上の金属の酸化物粉(NiO、CuO、ZnO、ZrO2、SnO、SnO2、WO2、CeO2、UO2、PbO、PbO、WO3)を混合していることにより、耐火性を向上させることができる。
【0084】
上述したように、本実施の形態による中性子遮蔽体でも、材料の密度を下げずに一定の値に維持しながら水素含有量を増加させることができ、これにより従来のように中性子遮蔽体本体の外側にγ線遮蔽用の構造物を配置することなく、中性子線の遮蔽性能を向上させることが可能となる。
【0085】
つまり、密度増加剤を用いることによりγ線の遮蔽性能を維持しながら中性子遮蔽効果をより上げることができるので、従来のように中性子遮蔽体本体の外側に重厚なγ線遮蔽用の構造物を配置する必要性を小さくすることができる。
【0086】
(v)ホウ素化合物
ホウ素化合物は、微量に配合され、中性子の減速および吸収材としての機能を有する。中性子遮蔽体に微量に配合されるホウ素化合物は、中性子吸収能を有するものであればよく、例えば低速および熱中性子に対して大きな吸収断面積を有する窒化ホウ素、無水ホウ酸、ホウ素鉄、正ホウ酸、炭化ホウ素、あるいはメタホウ酸などのホウ素化合物が挙げられ、炭化ホウ素が特に好ましい。化学的安定性(温度で変化しない、水分を吸収しない等)が高く、また、高分子を主体とした中性子遮蔽材料に影響を与えないためである。ホウ素化合物は、1種類のホウ素化合物を用いても、2種以上のホウ素化合物を混合して用いてもよい。
【0087】
ホウ素化合物は粉末で用いられ、粒径および添加量は適宜調節して添加することができる。しかし、エポキシ樹脂内での分散性、中性子に対する遮蔽性を考慮すれば平均粒径は1〜200μm程度が好ましく、10〜100μm程度がより好ましく、20〜50μm程度が特に好ましい。添加量は、用いられるホウ素化合物の種類、他の成分の種類や含有量等によって変動するため、規定することは困難であるが、組成物全体中、好ましくは0.5〜10質量%、特に好ましくは0.5〜3質量%である。0.5質量%未満では加えたホウ素化合物の中性子遮蔽材としての効果が低く、また、10質量%を超えた場合はホウ素化合物を均一に分散させることが困難になる。
【0088】
ここで、中性子遮蔽能、γ線遮蔽能、および耐火性の点から好ましい中性子遮蔽体用組成物は、水素添加エポキシ樹脂:38wt%、アミン系硬化剤:8wt%、耐火材(MgOH2):35wt%、密度増加剤(CeO2):18wt%、B4C:1wt%の組成からなる中性子遮蔽体用組成物である。
【0089】
(vi)カーボン粉末
カーボン粉末は、中性子遮蔽能力をより向上させるために添加される。詳しく説明すると、硬化前樹脂を溶融栓付き密閉容器内で耐火条件温度(外部800℃、30分)とすると、樹脂内部に気泡(ボイド)が発生し、中性子遮蔽能が低下するおそれがある。ここで、カーボン粉末を添加すると気泡の発生が抑制され、中性子遮蔽能力がより向上する。
【0090】
添加するカーボン粉末は、例えばカーボンブラック、グラファイト、活性炭などであり、カーボンブラックが特に好ましい。購入のし易さとコスト面で利点を有するためである。ここで、カーボン粉末は、1種類のカーボン粉末を用いても、2種以上のカーボン粉末を混合して用いてもよい。添加量は、カーボン粉末の種類により適宜調節して添加することができるが、カーボンブラックの場合0.02〜4質量%が適当であり、0.05〜0.3質量%が特に好ましい。0.02質量%以上で効果が認められ、0.05質量%以上で特に効果が顕著である。また、0.3質量%以下では粘度の顕著な上昇は認められない。一方、4質量%以上では、カーボン粉末添加に伴って粘度が急激に上昇し、また、添加分だけ水素含有量が低下することから、添加量に見合った効果が認められない。
【0091】
また、カーボン粉末を過剰に添加すると、中性子遮蔽体の他の成分比率が低くなるため、水素含有量が下がり中性子遮蔽能力が低下する傾向がみられる。
【0092】
粒径は特に限定はされないが、粒径が大きいとカーボン粉末が製造中に沈降する恐れがあるので沈降しない程度で小さな粒径が好ましい。沈降しない粒径については、その他の条件(例えば、組成物の温度、粘度、硬化速度等)によって大きく作用されるため、単純に数値で規定できない。
【0093】
(vii)その他
本発明の中性子遮蔽体用組成物には、充填剤として、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム三酸化アンチモン、酸化チタン、アスベスト、クレー、マイカ等の粉末のほか、ガラス繊維等を添加してもよく、また、必要に応じ炭素繊維等を添加してもよい。さらに必要に応じて、離型剤としての天然ワックス、脂肪酸の金属塩、酸アミド類、脂肪酸エステル類等、難燃剤としての塩化パラフィン、ブロムトルエン、ヘキサブロムトルエン、三酸化アンチモン等、着色剤としてのカーボンブラック、ベンガラ等の他、シランカップリング剤、チタンカップリング剤等を添加することができる。
【0094】
(II)キャスク
本発明の組成物は、エポキシ樹脂とその他の成分とを混合することによって調製される。中性子遮蔽体は、中性子遮蔽体用組成物を成形したものである。中性子遮蔽体の成形におけるエポキシ樹脂の架橋は、室温でも可能だが加熱により行なうのが好ましい。具体的な条件としては、エポキシ樹脂の種類、組成等によって異なるが、50〜200℃の温度条件において1時間〜3時間加熱を行なうことが好ましい。さらには、このような加熱処理は2段階で行なうことが好ましく、60〜90℃で1時間〜2時間加熱した後、120〜150℃で2時間〜3時間加熱処理することが好ましい。
【0095】
中性子遮蔽体は、中性子を遮蔽する目的で用いられ、例えば使用済み燃料を貯蔵・輸送するためのキャスクなどに用いられる。このような輸送用のキャスクは、公知技術を利用して製造することができる。なお、キャスクは、燃焼を終えた使用済み燃料集合体を収容、貯蔵する容器である。核燃料サイクルの終期にあって燃焼を終え使用できなくなった核燃料集合体を、使用済み燃料(リサイクル燃料)という。使用済み燃料は、FPなど高放射能物質を含むので熱的に冷却する必要があるから、原子力発電所の冷却ピットで所定期間(3〜6ヶ月間)冷却される。その後、遮蔽容器であるキャスクに収納され、トラックや船舶等で再処理施設に搬送、貯蔵される。以下、図を用いて、本発明のキャスクをさらに詳細に説明する。
【0096】
図4は、キャスクを示す斜視図である。図5は、図4に示したキャスクの軸方向断面図である。図6は、図4に示したキャスクの径方向断面図である。キャスク100は、胴本体101のキャビティ102内面をバスケット130の外周形状に合わせて機械加工したものである。キャビティ102内面の機械加工は、専用の加工装置によってフライス等によって加工する。胴本体101および底板104は、γ線遮蔽機能を有する炭素鋼製の鍛造品である。なお、炭素鋼の代わりにステンレス鋼を用いることもできる。胴本体101と底板104は、溶接によって結合する。また、耐圧容器としての密閉性能を確保するため、一次蓋110と胴本体101との間には金属ガスケットを設けておく。
【0097】
胴本体101と外筒105との間には、水素を多く含有する高分子材料であって中性子遮蔽機能を有するレジン106、すなわち上述した中性子遮蔽体用組成物が充填される。また、胴本体101と外筒105との間には、熱伝導を行う複数の銅製内部フィン107が溶接されており、レジン106は、内部フィン107によって形成される空間に流動状態で図示しないパイプ等を介して注入され、冷却固化される。なお、内部フィン107は、放熱を均一に行うため、熱量の多い部分に高い密度で設けるようにするのが好ましい。また、レジン106と外筒105との間には、数mmの熱膨張しろ108が設けられる。熱膨張しろ108は、ホットメルト接着剤等にヒーターを埋め込んだ消失型を外筒105内面に配し、レジン106を注入固化した後、ヒーターを加熱して溶融排出することによって形成する。
【0098】
蓋部109は、一次蓋110と二次蓋111によって構成される。一次蓋110は、γ線を遮蔽するステンレス鋼または炭素鋼からなる円盤形状である。また、二次蓋111も、ステンレス鋼製または炭素鋼製の円盤形状であるが、その上面には、中性子遮蔽体としてレジン112、すなわち上述した中性子遮蔽体が封入されている。一次蓋110および二次蓋111は、ステンレス鋼製または炭素鋼製のボルト113によって胴本体101に取り付けられている。さらに、一次蓋110および二次蓋111と胴本体101との間には、それぞれ金属ガスケットが設けられ、内部の密封性を保持している。また、蓋部109の周囲には、レジン114を封入した補助遮蔽体115が設けられている。
【0099】
キャスク本体116の両側には、キャスク100を吊り下げるためのトラニオン117が設けられている。なお、図4では、補助遮蔽体115を設けたものを示したが、キャスク100の搬送時には、補助遮蔽体115を取り外して緩衝体118を取り付ける(図5参照)。緩衝体118は、ステンレス鋼材によって作成された外筒120内にレッドウッド材などの緩衝材119を組み込んだ構造である。バスケット130は、使用済み燃料集合体を収容するセル131を構成する69本の角パイプ132からなる。角パイプ132には、AlまたはAl合金粉末に中性子吸収性能をもつBまたはB化合物の粉末を添加したアルミニウム複合材またはアルミニウム合金を用いる。また、中性子吸収材としては、ボロンの他にカドミウムを用いることができる。
【0100】
上述したキャスク100は、100トン級の大型装置であり、本発明の中性子遮蔽体用組成物をレジン106,112,114として用いることによって、格段の軽量化と、十分な中性子遮蔽能および耐熱性を保持することができるとともに、内部フィン107を有するような複雑な構成を有する箇所においても、その流動性と可使時間の増大によってレジン106,112,114の鋳込み作業にかかる時間と労力とを格段に低減することができる。
【0101】
また、本発明の組成物は、図7に示す板状部材からなるバスケットを内部に有する胴本体を有するキャスクにも好適に用いられる。
【0102】
胴本体201と外筒205と2枚の伝熱フィン207とで囲まれる空間209には、中性子を吸収するため、中性子遮蔽能を有する水素を多く含有する高分子材料であるレジン、すなわち上述した中性子遮蔽体用組成物が充填される。この中性子遮蔽体用組成物を含む中性子遮蔽体によって、リサイクル燃料集合体から放出される中性子を遮蔽し、キャスク200の外部へ漏洩する中性子を規制値以下に抑える。
【0103】
本発明の組成物は、このようなキャスク中の遮蔽体に限定されるものではなく、中性子の拡散を防止する装置や施設において、様々な個所に用いることができ、効果的に中性子を遮蔽することができる。
【0104】
【実施例】
以下、本発明の実施例を示し、本発明について更に詳細に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0105】
中性子遮蔽能は、以下重量減少率で表される耐熱性で評価した。重量減少のほとんどは水であり、水には中性子を減速させる効果がある水素が多く含まれるからである。すなわち、重量減少率が大きいという試験結果は、耐熱性が低いため、水分が減少し、その結果中性子遮蔽能が小さくなるということを意味している。
【0106】
γ線の遮蔽能は、中性子遮蔽体用組成物の密度(g/cm3)で評価される。密度が1.62〜1.72g/cm3程度あれば、γ線を十分に遮蔽することができる。
【0107】
(実験例1)密度増加剤と水酸化マグネシウム粉末の使用
表1の配合にてエポキシ樹脂を硬化させ、耐熱性を比較した。耐熱性は、密閉容器中で200℃×2,000h保持し、室温にて開封後、一昼夜放置して揮発成分を除去した時の重量減少率で表した。水素含有量は、一般にCHN分析計で測定され、本実施例においてはガス熱伝導度検出型CHN分析計を用いて求めた。水酸化マグネシウム粉末は、粒径が3.3μmのものを用いた。
材料
Figure 0004115299
【0108】
【表1】
Figure 0004115299
【0109】
比較例1では、200℃耐熱評価にて3.2質量%の重量減少がみられた。従って、中性子遮蔽能の低下が推測される。
【0110】
実施例1では、耐火剤を水酸化アルミニウム粉末から水酸化マグネシウム粉末に代えることで、耐熱性が大きく向上している。しかし、水酸化マグネシウムは水素含有量が低いため、水素含有量をほぼ一定にすると、耐火剤混入量を削減しなければならず、密度が低下する。その結果、中性子が吸収された時にγ線が発生するが、γ線の遮蔽能は、密度にほぼ比例するため、γ線の遮蔽能は低下する。
【0111】
実施例2では、密度低下を防止するため、銅粉を水酸化マグネシウム粉末と合わせて添加した。これにより、水酸化マグネシウム粉末を使用しても、比較例1と同じ密度を維持することができ、その結果γ線遮蔽能を維持する。また、水酸化アルミニウム粉末を使用せず、水酸化マグネシウム粉末を用いることで、耐火材混合比を下げても耐熱性を維持することができた。
【0112】
(実験例2)水素添加エポキシ樹脂と水酸化マグネシウム粉末の使用
表2の配合にてエポキシレジンを硬化させ、耐熱性を比較した。密閉容器中で200℃×2,000h保持し、室温にて開封後、一昼夜放置して揮発成分を除去した時の重量減少率で表した。水酸化マグネシウム粉末は、粒径が50μmのものを用いた。
材料
Figure 0004115299
【0113】
【表2】
Figure 0004115299
【0114】
比較例2では、200℃耐熱評価にて3.2質量%の重量減少がみられた。従って、中性子遮蔽能の低下が推測される。耐火剤として使用している水酸化アルミニウム粉末の耐熱性が問題になっていると考えられた。
【0115】
比較例3では、水酸化アルミニウム粉末を水酸化マグネシウム粉末に代えることで、耐熱性は大きく向上した。しかし、水酸化マグネシウム自体(Mg(OH)2)の水素含有量は水酸化アルミニウム自体(Al(OH)3)の水素含有量より低いので、中性子遮蔽体の水素含有量も低下し、中性子遮蔽能も低下する。そこで、エポキシ主剤を水素添加したもの(水素添加ビスフェノールA型エポキシ樹脂)を用い、水素含有量を向上させた。
【0116】
(実験例3)水素添加エポキシ樹脂と水酸化マグネシウム粉末と密度増加剤の使用
表3の配合にてエポキシレジンを硬化させ、耐熱性を比較した。耐熱性は、実験例1、2と同様にして求めた。水酸化マグネシウム粉末は、粒径が3.3μmのものを用いた。
材料
Figure 0004115299
【0117】
【表3】
Figure 0004115299
【0118】
比較例4では、200℃耐熱評価にて3.2質量%の重量減少がみられた。従って、中性子遮蔽能の低下が推測される。
【0119】
実施例3では、エポキシ主剤を水素添加物(水素添加ビスフェノールA型エポキシ樹脂)に、耐火剤を水酸化マグネシウム粉末に変更し、さらに、鉄粉を添加することで、密度、水素含有量、耐熱性が改善された。すなわち、中性子線およびγ線に対する遮蔽性および耐熱性が向上した。
【0120】
(実験例4)粒径が1.5〜15μmの水酸化マグネシウム粉末の使用
下記に示す市販のエポキシ材料と水酸化マグネシウム粉末と炭化ホウ素を室温、真空下で混合、脱泡し、50×50×100mmの型に流し込んで、室温で一昼夜硬化後、130℃×24hの条件で完全硬化させ、図1に示すサンプル1を作製した。材料混合後の粘度は、遮蔽体製造時の作業性を考慮し、一般に100Pa・s以下としているが、ここでは、30Pa・sを目安として試験を行った。これを図8に示す耐火試験容器5に入れ、全体をSUSの鋼板で密封し、上面試験片の中心部分に直径5mmのスズの溶融栓をつけた後、800℃の雰囲気下で30分間静置した。すなわち、一般的な材料の耐火条件でなく、金属キャスクの使用条件に合わせ、準密閉状態での耐火となる。耐火試験容器5は、室温・大気雰囲気の条件下に取り出すと、溶融栓からしばらく炎がみられるが、間もなく自己消火する。室温まで戻した後、中性子遮蔽体を取り出し、内部の状態と重量残存率を測定し、耐火後もある程度の中性子遮蔽能力を有しているかどうかを判断した。重量残存率は、実験例1、2の耐熱性と同様の方法で求め、混合粘度は、B型粘度計を用いて求めた。また、連続するボイドは、中性子遮蔽体の任意の断面を10mmのメッシュに分割し、それを貫通する空間部の有無が1つにでもみられるかで判断する。連続するボイドが生成すると、中性子が透過する経路ができ、中性子遮蔽能力が大きく低下する。
材料
Figure 0004115299
【0121】
【表4】
Figure 0004115299
【0122】
表4に示すように実施例4〜実施例7において、重量残存率50%以上で、かつ、中性子遮蔽体の表層を除いて、連続するボイドが生成されにくい傾向が認められた。ここで、重量残存率とは、100(%)−重量減少率(%)で表された数値である。
【0123】
(実験例5)カーボン粉末の添加
実験例4と同様の試験方法にて、カーボン粉末添加の効果を確認した(試行数1〜5回)。カーボン粉末はシグマアルドリッチジャパン社製カーボンブラック(型番05-1530-5)を使用した。また、密度増加剤として使用したNi粉は、山石金属製のものを用いた。その結果、表5に示すように、カーボン粉末を混合した実施例9〜実施例14で効果が認められ、特に実施例11〜実施例14では連続ボイドの生成が認められなかった。
【0124】
【表5】
Figure 0004115299
【0125】
(実験例6)水酸化マグネシウム粉末の粒径とカーボン粉末の添加
実験例4と同様の試験方法にて、水酸化マグネシウム粉末とカーボン粉末添加の効果を確認した。カーボン粉末はシグマアルドリッチジャパン社製カーボンブラック(型番05-1530-5)を使用した。また、密度増加剤として使用したNi粉は、山石金属製のものを用いた。その結果、表6に示すように粒径が1.5〜15μmの水酸化マグネシウム粉末とカーボン粉末の2つを組み合わせることによる相乗効果により、ボイドが発生しにくいという傾向が認められた。断面の観察を行なったところ、耐火後、水酸化マグネシウム粉末とカーボン粉末の相乗効果により、最も緻密な構造を保っていたのは、実施例18の水酸化マグネシウム粉末の粒径が3.3μmの場合であった。
【0126】
【表6】
Figure 0004115299
【0127】
(実験例7)水素添加したビスフェノールA主剤38.6Wt%に、脂環族アミンを主成分とした硬化剤を12.9Wt%を添加したエポキシ樹脂原料に、さらに耐火材として水酸化マグネシウム粉末(粒径未調整)を30.0Wt%、中性子吸収剤としてB4Cを1.5Wt%添加し、それからさらに鉛粉末を17.0Wt%添加し、室温、真空下で混合し、これを型に流し込み、室温にて1日硬化後、140℃にて10時間硬化させ、実施例22の中性子遮蔽体を得た。
【0128】
この材料の組成を分析したところ、水素−0.103g/mL、炭素−0.581g/mL、窒素−0.025g/mL、ホウ素−0.019g/mL、マグネシウム−0.187g/mL、鉛−0.279/mLであり、密度は1.640g/mLであった。
【0129】
また、実施例22の鉛(Pb)以外の密度増加剤として、Bi23(実施例23)、ZrO2(実施例24)、Cu(実施例25)を用いて中性子遮蔽体を得た。
【0130】
表7は、実施例22、23、24と、従来の金属粉添加なしの比較例8(BWR金属キャスク用中性子遮蔽体)の中性子遮蔽性能とを比較した結果を示す表である。尚、比較例8のBWR金属キャスク用中性子遮蔽体は、従来品に相当するものを製造して用いた。
【0131】
また、金属粉あるいは金属の酸化物粉を添加せず、水酸化アルミニウムのみで水素含有量と密度を調整した一例を比較例9に示している。
【0132】
【表7】
Figure 0004115299
【0133】
表7の実施例22に示すように、高分子を主体とした中性子遮蔽材に、金属粉を添加することにより、材料の密度(1.62〜1.72g/mLの範囲)を下げずに水素含有量を増加させることができる。
【0134】
その結果、二次γ線の遮蔽性能を維持しながら、中性子吸収量を上げることができ、これより中性子線の遮蔽性能を向上させることができる。
【0135】
なお、水酸化アルミニウムのみで水素含有量と密度を調整した場合は、表7の比較例9に示すように、固形分の増加により、混合初期粘度が大幅に増加する。
【0136】
この場合、遮蔽材の施工性が悪くなり、製造コストアップや、大型成形体の製造が困難になるなどの弊害が出る。
【0137】
(実験例8)水素添加を行なっていない一般のビスフェノールA主剤38.7Wt%に、脂環族アミンを主成分とした硬化剤を12.9Wt%を添加したエポキシ樹脂原料に、さらに耐火材として水酸化マグネシウム粉末(粒径未調整)を28.0Wt%、中性子吸収剤としてB4Cを1.5Wt%添加し、それからさらにCu粉末を19.0Wt%添加し、室温、真空下で混合し、これを型に流し込み、室温にて1日硬化後、140℃にて10時間硬化させ、実施例25の中性子遮蔽体を得た。
【0138】
表7は、この実施例25と従来の金属粉添加なしの比較例8(BWR金属キャスク用中性子遮蔽体)の中性子遮蔽性能を比較した結果を示す表である。
【0139】
表7の実施例25に示すように、高分子を主体とした中性子遮蔽材に、金属粉を添加することにより、水素添加せず、水素含有量を上げていないエポキシ樹脂を用いても、従来品(BWR金属キャスク用中性子遮蔽体)と同等の中性子線の遮蔽性能を確保することができる。これにより、中性子遮蔽体の製造工程を簡略化することができる。
【0140】
尚、本発明は、上記各実施例に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で、種々に変形して実施することが可能である。また、各実施の形態は可能な限り適宜組み合わせて実施してもよく、その場合には組み合わせた作用効果を得ることができる。さらに、上記各実施の形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせにより、種々の発明を抽出することができる。例えば、実施の形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題(の少なくとも一つ)が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果(の少なくとも一つ)が得られる場合には、この構成要件が削除された構成を発明として抽出することができる。
【0141】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明の中性子遮蔽体用組成物は、高分子を主体とした中性子遮蔽材料と粒径が1.5〜15μmの水酸化マグネシウム粉末とを含有するため、中性子を遮蔽するのに好適であり、耐火性にも優れている。また、粒径を調整した水酸化マグネシウム粉末を用いているため、作業性が向上している。さらにカーボン粉末を添加することにより、より中性子遮蔽能を向上させることができる。
【0142】
また、本発明の中性子遮蔽体用組成物は、高分子を主体とした中性子遮蔽材料と耐火材と密度増加剤とを含有するため、中性子およびγ線を遮蔽するのに好適であり、耐火性に優れている。さらに耐火材として水酸化マグネシウム粉末を選択し、その粒径を調整することにより作業性を向上させることができる。さらにカーボン粉末を添加することにより、より中性子遮蔽能を向上させることができる。また、材料の密度を下げずに一定の値に維持しながら水素含有量を増加させることができ、これにより中性子遮蔽体本体の外側にγ線遮蔽用の構造物を配置することなく中性子線の遮蔽性能を向上させることが可能となる。
【0143】
また、本発明の中性子遮蔽体用組成物は、前記高分子を主体とした中性子遮蔽材料を20〜55質量%と、前記硬化剤を4〜55質量%と、前記耐火材を5〜60質量%と、前記密度増加剤を5〜40質量%と、ホウ素化合物を0.5〜10質量%とを含有することを特徴とするため、中性子およびγ線を遮蔽するのに好適であり、耐火性にも優れている。
【0144】
また、本発明のキャスクは、上記中性子遮蔽体用組成物を含む中性子遮蔽体を有するので、効果的に中性子およびγ線を遮蔽することができる。
【0145】
また、本発明の中性子遮蔽体の製造方法は、エポキシ樹脂以外の添加物の一部を密度増加剤で置換することによって、水素含有量を増加させることができる。高分子を主体とした中性子遮蔽材料以外の構成成分の一部置換を行なうことにより、中性子遮蔽体用組成物の比重を維持(1.62〜1.72g/cm3)しながら、エポキシ樹脂の量を多くすることができるため水素含有量の高い中性子遮蔽体を製造することができ、効果的に中性子を遮蔽することができる。すなわち、中性子遮蔽能とγ線遮蔽能を両立させた中性子遮蔽体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による中性子遮蔽体用組成物の一実施の形態を示す概念図。
【図2】本発明による中性子遮蔽体用組成物における密度増加剤と水素含有量との関係を示す特性図。
【図3】本発明による密度増加剤の密度と中性子遮蔽体の外側の中性子線+二次γ線量相対比との関係を示す特性図。
【図4】この発明に適用されるキャスクの構成を示す斜視図である。
【図5】図4に示したキャスクの構成を示す軸方向断面図である。
【図6】図4に示したキャスクの構成を示す径方向断面図である。
【図7】板状部材からなるバスケットを内部に有する胴本体を有するキャスクの概要を示す説明図である。
【図8】耐火試験容器を示した図である。
【符号の説明】
1・・・中性子遮蔽材料
2・・・耐火材
3・・・密度増加剤
4・・・耐火試験用レジンサンプル
5・・・耐火試験容器
100・キャスク
101・胴本体
102・キャビティ
104・底板
105・外筒
106・レジン
107・内部フィン
108・熱膨張しろ
109・蓋部
110・一次蓋
111・二次蓋
115・補助遮蔽体
116・キャスク本体
117・トラニオン
118・緩衝体
131・セル
132・角パイプ
200・キャスク
201・胴本体
201c・キャビティ
203・セル
205・外筒
207・伝熱フィン
209・胴本体と外筒と2枚の伝熱フィンとで囲まれる空間
210・リサイクル燃料集合体格納用バスケット(バスケット)

Claims (14)

  1. 使用済み燃料集合体を収容するセルを構成する角パイプ又は板状部材からなるバスケットを内部に有する胴本体と、
    前記胴本体とその外周に設けられた外筒との間に、エポキシ樹脂を主体とした中性子遮蔽材料と、粒径が1.5〜15μmの水酸化マグネシウム粉末である耐火材と、5.0g/mL以上の密度を有する金属粉または金属酸化物である密度増加剤とを含有すると共に、
    前記エポキシ樹脂を主体とした中性子遮蔽材料が20〜55質量%、
    前記耐火材が5〜60質量%、
    前記密度増加剤が5〜40質量%である中性子遮蔽体用組成物を充填してなる中性子遮蔽体と、
    を有することを特徴とするキャスク。
  2. さらに蓋部が設けられており、該蓋部は、その上面および周囲に、前記エポキシ樹脂を主体とした中性子遮蔽材料と、前記耐火材と、前記密度増加剤とを含有する中性子遮蔽体用組成物が封入されていることを特徴とする請求項1に記載のキャスク。
  3. 性子遮蔽体製造用の組成物であって、
    エポキシ樹脂を主体とした中性子遮蔽材料と、粒径が1.5〜15μmの水酸化マグネシウム粉末である耐火材と、5.0g/mL以上の密度を有する金属粉または金属酸化物である密度増加剤とを含有すると共に、
    前記エポキシ樹脂を主体とした中性子遮蔽材料が20〜55質量%、
    前記耐火材が5〜60質量%、
    前記密度増加剤が5〜40質量%であることを特徴とする中性子遮蔽体用組成物。
  4. 前記エポキシ樹脂を主体とした中性子遮蔽材料が、水素添加エポキシ樹脂と水素添加ビスフェノールA型エポキシ樹脂のいずれかであることを特徴とする請求項3に記載の中性子遮蔽体用組成物。
  5. 前記密度増加剤が、350℃以上の融点を有する金属粉であることを特徴とする請求項に記載の中性子遮蔽体用組成物。
  6. 前記350℃以上の融点を有する金属粉が、Cr、Mn、Fe、Ni、Cu、Sb、U、Wのうちいずれか1つであることを特徴とする請求項に記載の中性子遮蔽体用組成物。
  7. 前記密度増加剤が、1000℃以上の融点を有する金属の酸化物粉であることを特徴とする請求項に記載の中性子遮蔽体用組成物。
  8. 前記1000℃以上の融点を有する金属の酸化物粉が、NiO、CuO、ZnO、ZrO、SnO、SnO、WO、CeO、UO、PbO、WOのうちいずれか1つであることを特徴とする請求項に記載の中性子遮蔽体用組成物。
  9. さらに、カーボン粉末を含有することを特徴とする請求項3に記載の中性子遮蔽体用組成物。
  10. 前記カーボン粉末が、カーボンブラックであることを特徴とする請求項に記載の中性子遮蔽体用組成物。
  11. 前記カーボンブラックを0.02〜4質量%含有することを特徴とする請求項10に記載の中性子遮蔽体用組成物。
  12. 性子遮蔽体用の組成物は、
    前記硬化剤を4〜55質量%と、ホウ素化合物を0.5〜10質量%とを含有することを特徴とする請求項3に記載の中性子遮蔽体用組成物。
  13. 構成成分としてエポキシ樹脂を主体とした中性子遮蔽材料を含有し、γ線の遮蔽性能を維持しつつ、中性子遮蔽効果を上げることができる中性子遮蔽体の製造法であって、
    前記エポキシ樹脂を主体とした中性子遮蔽材料と粒径が1.5〜15μmの水酸化マグネシウム粉末である耐火材を含む組成において、前記耐火材の一部5.0g/mL以上 の密度を有する金属粉または金属酸化物である密度増加剤で置換し、硬化成形加工し、
    その配合割合を
    前記エポキシ樹脂を主体とした中性子遮蔽材料が20〜55質量%、
    前記耐火材が5〜60質量%、
    前記密度増加剤が5〜40質量%とすることを特徴とする中性子遮蔽体製造法。
  14. 脱水分解温度が、340〜390℃である水酸化マグネシウムを耐火材とすることを特徴とする請求項3に記載の中性子遮蔽体用組成物。
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