JP2004061463A - 中性子遮蔽体用組成物、遮蔽体及び遮蔽容器 - Google Patents
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Abstract
【課題】中性子およびγ線を効果的に遮蔽し、また耐火性を維持しつつも作業性のよい中性子遮蔽体用組成物を提供する。
【解決手段】中性子遮蔽体用組成物に1.5〜15μmの粒径を有する水酸化マグネシウム粉末が含まれることにより中性子遮蔽能および耐火性を維持しつつ作業性の良い中性子遮蔽体用組成物を得ることができる。また、カーボン粉末が含まれることにより、樹脂内部の気泡発生が抑制され中性子をより効果的に遮蔽することができる。さらに密度増加剤が含まれることにより、比重が大きくなりγ線をより遮蔽することができる。
【選択図】 なし
【解決手段】中性子遮蔽体用組成物に1.5〜15μmの粒径を有する水酸化マグネシウム粉末が含まれることにより中性子遮蔽能および耐火性を維持しつつ作業性の良い中性子遮蔽体用組成物を得ることができる。また、カーボン粉末が含まれることにより、樹脂内部の気泡発生が抑制され中性子をより効果的に遮蔽することができる。さらに密度増加剤が含まれることにより、比重が大きくなりγ線をより遮蔽することができる。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、中性子遮蔽体用組成物に関し、特に使用済核燃料の貯蔵および運搬用のキャスクに適した中性子遮蔽体製造用の組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の原子力産業の発展に伴い、各種の原子力施設、たとえば原子炉、核燃料再処理工場などが各地に建設されているが、これら各種の原子力施設などでは、人体が受ける放射線の量を極力低減し、また放射線により構造材料や機器材料が損傷しないようにしなければならない。すなわち、各種の原子力施設などの核燃料あるいは使用済み核燃料から発生する中性子は、エネルギーが高く、強い透過力を有し、他の物質と衝突するとγ線を発生して、人体に重大な障害を与え、また、原子力施設などの各種材料を損傷させることから、この中性子およびγ線を安全確実に遮蔽することができる中性子遮蔽体の開発が行なわれている。
【0003】
従来、中性子遮蔽体としては、コンクリートが用いられていたが、このコンクリートは、遮蔽壁としては相当の厚みを必要とし、原子力船のように、重量および容積に制限のある原子力施設では不適な中性子遮蔽体であり、中性子遮蔽体の軽量化が望まれていた。
【0004】
ここで、中性子のうちの高速中性子は、ほぼ同じ質量の水素元素と衝突することによってエネルギーが吸収され、効果的に減速される。よって、水素密度の高い、すなわち水素含有率の高い物質が高速中性子の遮蔽に有効であり、例えば水、パラフィン、ポリエチレンなどを中性子遮蔽体として用いることができる。この水などの液体は、コンクリートに比べて軽量であるが、液体であるために取り扱いが限定され、さらには、この水などの液体を収納する容器自体の材質の中性子遮蔽能が問題となる。
【0005】
そこで、中性子の遮蔽については、軽量、かつ、水素含有率の高いことから中性子の減速材としての効果が大きい、パラフィン、ポリエチレンなどのポリオレフィン系熱可塑性樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などの熱硬化性樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂に、中性子遮蔽材として微量のホウ素化合物とを配合したものが使われている。一方、γ線の遮蔽については、中性子遮蔽体本体の外側を覆うような形状をもつγ線遮蔽用の構造物を配置して遮蔽している。
【0006】
さらに、万一、火災が生じた場合でも、ある程度以上の中性子遮蔽能を維持できるような中性子遮蔽体の開発も行われている。これについては耐火材として大量の水酸化アルミニウム粉末や水酸化マグネシウム粉末等が配合された中性子遮蔽体が提案されている(特開2001−108787号公報)。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、中性子の遮蔽においては、中性子をより安全確実に遮蔽できる中性子遮蔽体が求められている。一方、γ線の遮蔽においては、現在主に使用されている樹脂等からなる中性子遮蔽体は、比重が0.9〜1.2と小さく、高速の中性子を遮蔽する際に発生するγ線を遮蔽するには適しておらず、中性子遮蔽体本体の外側に比重の大きい材料を用いたγ線遮蔽用の構造物を配置する必要があった。このため、中性子遮蔽体の性能が向上したとしても、外側に配置するγ線遮蔽用構造物の厚み、重量のため中性子遮蔽体の特徴を活かせておらず、中性子遮蔽体自体のγ線遮蔽能の向上が期待されている。
【0008】
また、耐火性においては、水酸化アルミニウムの脱水熱分解温度は、245℃〜320℃であり、これに対して水酸化マグネシウムの脱水熱分解温度は340℃〜390℃であるため耐火材としては水酸化マグネシウム粉末がより適していると考えられる。しかし、水酸化マグネシウム粉末を使用した場合、組成物の粘度が上昇して混練・充填に多大な時間と労力がかかるという問題点および樹脂内部に巻き込まれた気泡が残留し、中性子遮蔽能を低下させるおそれがあるという問題点があった。そのため、実際にキャスク用に水酸化マグネシウム粉末が使用された例はなく、また、水酸化マグネシウム粉末の粒径等についても検討された例もない。
【0009】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたもので、中性子およびγ線を効果的に遮蔽し、耐火性に優れた中性子遮蔽体用組成物を提供することを目的とする。さらに、作業性のよい中性子遮蔽体用組成物を提供することも目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題解決のため、中性子遮蔽体用組成物の開発に着手したところ、密度増加剤をエポキシ樹脂等に混合することによりγ線遮蔽能および中性子遮蔽能が向上すること、微細な粒径の水酸化マグネシウム粉末を使用することにより耐熱性および中性子遮蔽能が向上すること、さらに、カーボン粉末を配合することにより中性子遮蔽体用組成物の中性子遮蔽能が向上することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明は下記の通りである。
〔1〕エポキシ樹脂と、耐火材と、密度増加剤とを含有することを特徴とする中性子遮蔽体用組成物。
〔2〕水素添加エポキシ樹脂と、水酸化マグネシウム粉末と、密度増加剤とを含有することを特徴とする中性子遮蔽体用組成物。
〔3〕1.5〜15μmの粒径を有する水酸化マグネシウム粉末を含有することを特徴とする中性子遮蔽体用組成物。
〔4〕水素添加ビスフェノールA型エポキシ樹脂と、1.5〜5μmの粒径を有する水酸化マグネシウム粉末と、密度増加剤とを含有することを特徴とする中性子遮蔽体用組成物。
〔5〕カーボン粉末を含有することを特徴とする上記〔1〕〜〔4〕のいずれか1つに記載の中性子遮蔽体用組成物。
〔6〕カーボンブラックを0.02〜4質量%含有することを特徴とする上記〔1〕〜〔5〕のいずれか1つに記載の中性子遮蔽体用組成物。
〔7〕上記〔2〕〜〔6〕のいずれか1つに記載の中性子遮蔽体用組成物からなる中性子遮蔽体。
〔8〕上記〔2〕〜〔6〕のいずれか1つに記載の中性子遮蔽体用組成物からなる中性子遮蔽容器。
【0012】
【発明の実施の形態】
まず、本発明の中性子遮蔽体用組成物について説明する。中性子遮蔽体用組成物は、基本成分として、主剤としてのエポキシ樹脂、硬化剤、ホウ素化合物が混合されたものである。この基本成分に耐火材を混合することにより難燃性を付与することができる。また、カーボン粉末、および/または、密度増加剤を混合することにより中性子遮蔽能、作業性等をより向上させることができる。以下、各成分について詳細に説明するが、特に断らない限り市販のものを使用することができる。まず、エポキシ樹脂とは、架橋し得るエポキシ基を含む樹脂を意味する。
【0013】
エポキシ樹脂は、例えばグリシジルエーテル型/2官能フェノール型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型/多官能フェノール型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型/アルコール型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂等が挙げられ、さらにこれらのエポキシ樹脂の環構造に水素を添加した水素添加エポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂は、1種類のエポキシ樹脂を用いても、2種以上のエポキシ樹脂を混合して用いてもよい。
【0014】
さらに、エポキシ樹脂の具体例を挙げると、グリシジルエーテル型/2官能フェノール型エポキシ樹脂としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、単環型芳香族エポキシ樹脂、縮合多環型芳香族エポキシ樹脂等、グリシジルエーテル型/多官能フェノール型エポキシ樹脂としては、ポリフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、メチレン基置換型フェノールノボラック型エポキシ樹脂、アルキレン変性フェノールノボラック型エポキシ樹脂、アラルキル変性フェノールノボラック型エポキシ樹脂等、脂肪族エポキシ樹脂としては、直接酸化による脂環式エポキシ樹脂、官能基のグリシジルエーテル化による脂環式エポキシ樹脂、ジクロロペンタジエン型エポキシ樹脂、鎖上脂肪族エポキシ樹脂等、変性エポキシ樹脂としては、シリコーン変性エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、ポリイミドおよびポリアミド変性エポキシ樹脂、光硬化性エポキシ樹脂等、その他には、リン含有エポキシ樹脂、硫黄含有エポキシ樹脂、窒素含有エポキシ樹脂等が挙げられる。水素添加エポキシ樹脂としては、水素添加ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水素添加ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型グリシジルエーテル樹脂を水素添加した樹脂等が挙げられる。
【0015】
これらのエポキシ樹脂のうち好ましくはビスフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等であり、特に好ましくはビスフェノール型エポキシ樹脂の中でも水素添加ビスフェノールA型エポキシ樹脂である。水素添加ビスフェノールA型エポキシ樹脂のような水素含有量の大きい水素添加エポキシ樹脂を用いることにより、中性子遮蔽能のより優れた中性子遮蔽体を製造することが可能となる。
【0016】
【化1】
【0017】
上記水素添加ビスフェノールA型エポキシ樹脂の構造式中のnの好ましい範囲は、n=0〜2であり、n=0〜0.1程度がより好ましい。
【0018】
エポキシ樹脂と反応して架橋構造を形成する硬化剤としては、例えばアミン系硬化剤、酸および酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤等が挙げられ、好ましくはアミン系硬化剤が用いられる。さらにアミン系硬化剤のうち、脂環式アミン系硬化剤、芳香族アミン系硬化剤等の環構造を有する硬化剤は、耐熱性が高いため、本発明の組成物に好適に用いられる。硬化剤は、1種類の硬化剤を用いても、2種以上の硬化剤を混合して用いてもよい。
【0019】
耐火材とは、例えば火災が生じた場合のように中性子遮蔽体が高温にさらされたときに、ある程度以上の中性子遮蔽能を維持できるよう中性子遮蔽体を残存させることを目的として加えられるものであり、例えば水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の化合物をいう。水酸化マグネシウムの脱水分解温度は、340℃〜390℃で水酸化アルミニウムの脱水分解温度より高温であるため耐火材として特に適している。
【0020】
一般的に、水酸化マグネシウムは、粉末状になっている。この水酸化マグネシウム粉末の粒径については、通常は特に調整されていない。粒径を調整することにより、中性子遮蔽体用組成物としてより好適な組成物となる。
【0021】
耐火材として水酸化マグネシウム粉末を用いる場合、好ましい水酸化マグネシウム粉末の粒径は、1.5〜15μmであり、特に1.5〜5μmの粒径が好ましい。これらの粒径を有す水酸化マグネシウム粉末は、市販のものを用いることができる。ここで、水酸化マグネシウム粉末の粒径は、全ての粉末の粒径が1.5〜15μmの範囲にあることが望ましいが、現実的には水酸化マグネシウム粉末の80%以上が1.5〜15μmの範囲にあればよく、好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上が当該範囲にあることが望ましい。粒径1.5μm以下の水酸化マグネシウム粉末を用いて、水酸化マグネシウム粉末の混合比をあげると粘度が上昇して混練・充填に多大な時間と労力がかかってしまう。従って、水酸化マグネシウム粉末の混合比を低く抑えることになるため、耐火性が悪くなる。他方、粒径15μm以上の水酸化マグネシウム粉末を用いた場合、水酸化マグネシウム粉末の表面積が小さくなるため耐火性が低下するおそれがある。すなわち、1.5〜15μmの水酸化マグネシウム粉末を用いることにより、耐火性を維持しつつ、混練・充填に多大な時間と労力がかからない作業性のよい中性子遮蔽体用組成物を得ることができる。
【0022】
さらに中性子遮蔽能の観点から具体的に説明すると、硬化前エポキシ樹脂の容器への流し込みに際し、空隙部をなくすため、硬化前レジンの粘度は100Pa・s以下にすることが望ましい。1.5μm以下の水酸化マグネシウム粉末を用いた場合、粘度を適正に保つには水酸化マグネシウム粉末の混入量は30質量%以下となり、溶融栓付き密閉容器内で耐火条件温度(外部800℃、30分)とすると、樹脂内部に気泡(ボイド)が発生し、中性子遮蔽能が低下するおそれがある。他方、15μm以上の水酸化マグネシウム粉末を用いた場合、水酸化マグネシウム粉末の混入量は50質量%以上とすることができるが、水酸化マグネシウム粉末の表面積が低下するため、耐火条件温度(外部800℃、30分)で樹脂内部に気泡が発生し、中性子遮蔽能が低下するおそれがある。
【0023】
つまり、水酸化マグネシウム粉末の粒径を1.5〜15μmにすることにより耐火性および中性子遮蔽能がより優れた中性子遮蔽体を得ることができる。また、作業性も向上する。
【0024】
一方、水酸化アルミニウムは、水素含有量の点から水酸化マグネシウムより優れているので、水酸化アルミニウム粉末と水酸化マグネシウム粉末とを適宜混合して耐火材としてもよい。その場合用いる水酸化アルミニウム粉末は、0.07質量%以下の低ソーダ分の水酸化アルミニウム粉末を用いることが好ましい。ソーダ分(Na2O)を0.07質量%以下にすることによって、150℃以上まで水素含有率を保持することができる。また、水酸化アルミニウム粉末、水酸化マグネシウム粉末以外の耐火材をさらに添加したものであってもよい。これら耐火材の添加量は組成物全体中20〜70質量%が好ましく、35〜60質量%が特に好ましい。
【0025】
ホウ素化合物は、微量に配合され、中性子の減速および吸収材としての機能を有する。中性子遮蔽体に微量に配合されるホウ素化合物は、中性子吸収能を有するものであればよく、例えば低速および熱中性子に対して大きな吸収断面積を有する窒化ホウ素、無水ホウ酸、ホウ素鉄、正ホウ酸、炭化ホウ素、あるいはメタホウ酸などのホウ素化合物が挙げられ、炭化ホウ素が特に好ましい。ホウ素化合物は、1種類のホウ素化合物を用いても、2種以上のホウ素化合物を混合して用いてもよい。
【0026】
ホウ素化合物は粉末で用いられ、粒径および添加量は適宜調節して添加することができる。しかし、エポキシ樹脂内での分散性、中性子に対する遮蔽性を考慮すれば平均粒径は1〜200μm程度が好ましく、10〜100μm程度がより好ましく、20〜50μm程度が特に好ましい。添加量は、組成物全体に対して0.5〜20質量%の範囲が最も好ましい。0.5質量%未満では加えたホウ素化合物の中性子遮蔽材としての効果が低く、また、20質量%を超えた場合はホウ素化合物を均一に分散させることが困難になる。
【0027】
カーボン粉末は、中性子遮蔽能力をより向上させるために添加される。詳しく説明すると、硬化前樹脂を溶融栓付き密閉容器内で耐火条件温度(外部800℃、30分)とすると、樹脂内部に気泡(ボイド)が発生し、中性子遮蔽能が低下するおそれがある。ここで、カーボン粉末を添加すると気泡の発生が抑制され、中性子遮蔽能力がより向上する。
【0028】
添加するカーボン粉末は、例えばカーボンブラック、グラファイト、活性炭などであり、カーボンブラックが特に好ましい。ここで、カーボン粉末は、1種類のカーボン粉末を用いても、2種以上のカーボン粉末を混合して用いてもよい。添加量は、カーボン粉末の種類により適宜調節して添加することができるが、カーボンブラックの場合0.02〜4質量%が適当であり、0.05〜0.3質量%が特に好ましい。0.02質量%以上で効果が認められ、0.05質量%以上で特に効果が顕著である。また、0.3質量%以下では粘度の顕著な上昇は認められない。一方、4質量%以上では、カーボン粉末添加に伴って粘度が急激に上昇し、また、添加分だけ水素含有量が低下することから、添加量に見合った効果が認められない。
【0029】
また、カーボン粉末を過剰に添加すると、中性子遮蔽体の他の成分比率が低くなるため、水素含有量が下がり中性子遮蔽能力が低下する傾向がみられる。
【0030】
密度増加剤は、密度の高い材料であり、中性子遮蔽体の比重を大きくし、γ線を遮蔽するために混合される重金属粉または重金属の酸化物粉である。密度増加剤として、好ましくは、融点が350℃以上の重金属であるCr、Mn、Fe、Ni、Cu、Sb、Bi、U、W等、および/または、融点が1000℃以上の重金属の酸化物であるNiO、CuO、ZnO、ZrO2、SnO、SnO2、WO2、CeO2、UO2、PbO、WO3等が挙げられる。密度増加剤は、1種類で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0031】
密度増加剤を添加することにより、中性子遮蔽体の比重を上げることができ、γ線をより効果的に遮蔽することができる。また、上記の重金属粉や重金属の酸化物粉を用いることで耐火性も向上させることができる。
【0032】
混合する密度増加剤の添加量は、適宜調節して添加することができるが、γ線を効果的に遮蔽するためには密度増加剤自体の密度が5.0g/cm3以上が好ましく、6.0g/cm3以上がより好ましい。
【0033】
また、エポキシ樹脂以外の添加物の一部を密度増加剤で置換することによって、水素含有量を増加させることができる。一部置換を行なうことにより、中性子遮蔽体用組成物の比重を維持(1.62〜1.72g/cm3)しながら、エポキシ樹脂の量を多くすることができるため水素含有量の高い中性子遮蔽体を製造することができ、効果的に中性子を遮蔽することができる。
【0034】
つまり、密度増加剤を用いることによりγ線の遮蔽性能を維持しながら中性子遮蔽効果をより上げることができるので、従来のように中性子遮蔽体本体の外側に重厚なγ線遮蔽用の構造物を配置する必要性を小さくすることができる。
【0035】
本発明の中性子遮蔽体用組成物には、充填剤として、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム三酸化アンチモン、酸化チタン、アスベスト、クレー、マイカ等の粉末のほか、ガラス繊維等を添加してもよく、また、必要に応じ炭素繊維等を添加してもよい。さらに必要に応じて、離型剤としての天然ワックス、脂肪酸の金属塩、酸アミド類、脂肪酸エステル類等、難燃剤としての塩化パラフィン、ブロムトルエン、ヘキサブロムトルエン、三酸化アンチモン等、着色剤としてのカーボンブラック、ベンガラ等の他、シランカップリング剤、チタンカップリング剤等を添加することができる。
【0036】
本発明の組成物は、エポキシ樹脂とその他の成分とを混合することによって調製される。中性子遮蔽体は、中性子遮蔽体用組成物を成形したものである。中性子遮蔽体の成形におけるエポキシ樹脂の架橋は、室温でも可能だが加熱により行なうのが好ましい。具体的な条件としては、エポキシ樹脂の種類、組成等によって異なるが、50℃〜200℃の温度条件において1時間〜3時間加熱を行なうことが好ましい。さらには、このような加熱処理は2段階で行なうことが好ましく、60℃〜90℃で1時間〜2時間加熱した後、120℃〜150℃で2時間〜3時間加熱処理することが好ましい。
【0037】
中性子遮蔽体は、中性子を遮蔽する目的で用いられ、例えば使用済核燃料を貯蔵・輸送するためのキャスクなどに用いられる。このような輸送用のキャスクは、公知技術を利用して製造することができる。キャスク用中性子遮蔽体の成形は、例えば、特開平2000−9890号公報に開示されたキャスクにおいて中性子遮蔽体組成物を充填する個所が設けられており、このような個所に、本発明の組成物を充填することにより中性子遮蔽体を製造することができる。
【0038】
本発明の組成物は、このようなキャスク中の遮蔽体に限定されるものではなく、中性子の拡散を防止する装置や施設において、様々な個所に用いることができ、効果的に中性子を遮蔽することができる。
【0039】
【実施例】
以下、本発明の実施例を示し、本発明について更に詳細に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0040】
中性子遮蔽能は、以下重量減少率で表される耐熱性で評価した。重量減少のほとんどは水であり、水には中性子を減速させる効果がある水素が多く含まれるからである。すなわち、重量減少率が大きいという試験結果は、耐熱性が低いため、水分が減少し、その結果中性子遮蔽能が小さくなるということを意味している。
【0041】
γ線の遮蔽能は、中性子遮蔽体用組成物の密度(g/cm3)で評価される。密度が1.62〜1.72g/cm3程度あれば、γ線を十分に遮蔽することができる。
【0042】
(実験例1)密度増加剤と水酸化マグネシウム粉末の使用
表1の配合にてエポキシ樹脂を硬化させ、耐熱性を比較した。耐熱性は、密閉容器中で200℃×2,000h保持し、室温にて開封後、一昼夜放置して揮発成分を除去した時の重量減少率で表した。水素含有量は、一般にCHN分析計で測定され、本実施例においてはガス熱伝導度検出型CHN分析計を用いて求めた。水酸化マグネシウム粉末は、粒径が3.3μmのものを用いた。
【0043】
【表1】
【0044】
比較例1では、200℃耐熱評価にて3.2質量%の重量減少がみられた。従って、中性子遮蔽能の低下が推測される。
【0045】
実施例1では、耐火剤を水酸化アルミニウム粉末から水酸化マグネシウム粉末に代えることで、耐熱性が大きく向上している。しかし、水酸化マグネシウムは水素含有量が低いため、水素含有量をほぼ一定にすると、耐火剤混入量を削減しなければならず、密度が低下する。その結果、中性子が吸収された時にγ線が発生するが、γ線の遮蔽能は、密度にほぼ比例するため、γ線の遮蔽能は低下する。
【0046】
実施例2では、密度低下を防止するため、銅粉を水酸化マグネシウム粉末と合わせて添加した。これにより、水酸化マグネシウム粉末を使用しても、比較例1と同じ密度を維持することができ、その結果γ線遮蔽能を維持する。また、水酸化アルミニウム粉末を使用せず、水酸化マグネシウム粉末を用いることで、耐火材混合比を下げても耐熱性を維持することができた。
【0047】
(実験例2)水素添加エポキシ樹脂と水酸化マグネシウム粉末の使用
表2の配合にてエポキシレジンを硬化させ、耐熱性を比較した。密閉容器中で200℃×2,000h保持し、室温にて開封後、一昼夜放置して揮発成分を除去した時の重量減少率で表した。水酸化マグネシウム粉末は、粒径が50μmのものを用いた。
【0048】
【表2】
【0049】
比較例2では、200℃耐熱評価にて3.2質量%の重量減少がみられた。従って、中性子遮蔽能の低下が推測される。耐火剤として使用している水酸化アルミニウム粉末の耐熱性が問題になっていると考えられた。
【0050】
比較例3では、水酸化アルミニウム粉末を水酸化マグネシウム粉末に代えることで、耐熱性は大きく向上した。しかし、水酸化マグネシウム自体(Mg(OH)2)の水素含有量は水酸化アルミニウム自体(Al(OH)3)の水素含有量より低いので、中性子遮蔽体の水素含有量も低下し、中性子遮蔽能も低下する。そこで、エポキシ主剤を水素添加したもの(水素添加ビスフェノールA型エポキシ樹脂)を用い、水素含有量を向上させた。
【0051】
(実験例3)水素添加エポキシ樹脂と水酸化マグネシウム粉末と密度増加剤の使用
表3の配合にてエポキシレジンを硬化させ、耐熱性を比較した。耐熱性は、実験例1、2と同様にして求めた。水酸化マグネシウム粉末は、粒径が3.3μmのものを用いた。
【0052】
【表3】
【0053】
比較例4では、200℃耐熱評価にて3.2質量%の重量減少がみられた。従って、中性子遮蔽能の低下が推測される。
【0054】
実施例3では、エポキシ主剤を水素添加物(水素添加ビスフェノールA型エポキシ樹脂)に、耐火剤を水酸化マグネシウム粉末に変更し、さらに、鉄粉を添加することで、密度、水素含有量、耐熱性が改善された。すなわち、中性子線およびγ線に対する遮蔽性および耐熱性が向上した。
【0055】
(実験例4)1.5〜15μmの粒径を有する水酸化マグネシウム粉末の使用下記に示す市販のエポキシ材料と水酸化マグネシウム粉末と炭化ホウ素を室温、真空下で混合、脱泡し、50×50×100mmの型に流し込んで、室温で一昼夜硬化後、130℃×24hの条件で完全硬化させ、図1に示すサンプル1を作製した。材料混合後の粘度は、遮蔽体製造時の作業性を考慮し、一般に100Pa・s以下としているが、ここでは、30Pa・sを目安として試験を行った。これを図1に示す耐火試験容器2に入れ、全体をSUSの鋼板で密封し、上面試験片の中心部分に直径5mmのスズの溶融栓をつけた後、800℃の雰囲気下で30分間静置した。すなわち、一般的な材料の耐火条件でなく、金属キャスクの使用条件に合わせ、準密閉状態での耐火となる。耐火試験容器2は、室温・大気雰囲気の条件下に取り出すと、溶融栓からしばらく炎がみられるが、間もなく自己消火する。室温まで戻した後、中性子遮蔽体を取り出し、内部の状態と重量残存率を測定し、耐火後もある程度の中性子遮蔽能力を有しているかどうかを判断した。重量残存率は、実験例1、2の耐熱性と同様の方法で求め、混合粘度は、B型粘度計を用いて求めた。また、連続するボイドは、中性子遮蔽体の任意の断面を10mmのメッシュに分割し、それを貫通する空間部の有無が1つにでもみられるかで判断する。連続するボイドが生成すると、中性子が透過する経路ができ、中性子遮蔽能力が大きく低下する。
【0056】
【表4】
【0057】
表4に示すように実施例4〜実施例7において、重量残存率50%以上で、かつ、中性子遮蔽体の表層を除いて、連続するボイドが生成されにくい傾向が認められた。ここで、重量残存率とは、100(%)−重量減少率(%)で表された数値である。
【0058】
(実験例5)カーボン粉末の添加
実験例4と同様の試験方法にて、カーボン粉末添加の効果を確認した(試行数1〜5回)。カーボン粉末はシグマアルドリッチジャパン社製カーボンブラック(型番05−1530−5)を使用した。また、密度増加剤として使用したNi粉は、山石金属製のものを用いた。その結果、表5に示すように、カーボン粉末を混合した実施例9〜実施例14で効果が認められ、特に実施例11〜実施例14では連続ボイドの生成が認められなかった。
【0059】
【表5】
【0060】
(実験例6)水酸化マグネシウム粉末の粒径とカーボン粉末の添加
実験例4と同様の試験方法にて、水酸化マグネシウム粉末とカーボン粉末添加の効果を確認した。カーボン粉末はシグマアルドリッチジャパン社製カーボンブラック(型番05−1530−5)を使用した。また、密度増加剤として使用したNi粉は、山石金属製のものを用いた。その結果、表6に示すように1.5〜15μmの粒径を有する水酸化マグネシウム粉末とカーボン粉末の2つを組み合わせることによる相乗効果により、ボイドが発生しにくいという傾向が認められた。断面の観察を行なったところ、耐火後、水酸化マグネシウム粉末とカーボン粉末の相乗効果により、最も緻密な構造を保っていたのは、実施例18の水酸化マグネシウム粉末の粒径が3.3μmの場合であった。
【0061】
【表6】
【0062】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明の中性子遮蔽体用組成物は、中性子およびγ線を遮蔽するのに好適であり、また耐火性にも優れている。さらに耐火材として水酸化マグネシウム粉末を選択し、その粒径を調整することにより作業性を向上させることができる。さらにカーボン粉末を添加することにより、より中性子遮蔽能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】耐火試験容器を示した図である。
【符号の説明】
1・・・耐火試験用レジンサンプル
2・・・耐火試験容器
【発明の属する技術分野】
本発明は、中性子遮蔽体用組成物に関し、特に使用済核燃料の貯蔵および運搬用のキャスクに適した中性子遮蔽体製造用の組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の原子力産業の発展に伴い、各種の原子力施設、たとえば原子炉、核燃料再処理工場などが各地に建設されているが、これら各種の原子力施設などでは、人体が受ける放射線の量を極力低減し、また放射線により構造材料や機器材料が損傷しないようにしなければならない。すなわち、各種の原子力施設などの核燃料あるいは使用済み核燃料から発生する中性子は、エネルギーが高く、強い透過力を有し、他の物質と衝突するとγ線を発生して、人体に重大な障害を与え、また、原子力施設などの各種材料を損傷させることから、この中性子およびγ線を安全確実に遮蔽することができる中性子遮蔽体の開発が行なわれている。
【0003】
従来、中性子遮蔽体としては、コンクリートが用いられていたが、このコンクリートは、遮蔽壁としては相当の厚みを必要とし、原子力船のように、重量および容積に制限のある原子力施設では不適な中性子遮蔽体であり、中性子遮蔽体の軽量化が望まれていた。
【0004】
ここで、中性子のうちの高速中性子は、ほぼ同じ質量の水素元素と衝突することによってエネルギーが吸収され、効果的に減速される。よって、水素密度の高い、すなわち水素含有率の高い物質が高速中性子の遮蔽に有効であり、例えば水、パラフィン、ポリエチレンなどを中性子遮蔽体として用いることができる。この水などの液体は、コンクリートに比べて軽量であるが、液体であるために取り扱いが限定され、さらには、この水などの液体を収納する容器自体の材質の中性子遮蔽能が問題となる。
【0005】
そこで、中性子の遮蔽については、軽量、かつ、水素含有率の高いことから中性子の減速材としての効果が大きい、パラフィン、ポリエチレンなどのポリオレフィン系熱可塑性樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などの熱硬化性樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂に、中性子遮蔽材として微量のホウ素化合物とを配合したものが使われている。一方、γ線の遮蔽については、中性子遮蔽体本体の外側を覆うような形状をもつγ線遮蔽用の構造物を配置して遮蔽している。
【0006】
さらに、万一、火災が生じた場合でも、ある程度以上の中性子遮蔽能を維持できるような中性子遮蔽体の開発も行われている。これについては耐火材として大量の水酸化アルミニウム粉末や水酸化マグネシウム粉末等が配合された中性子遮蔽体が提案されている(特開2001−108787号公報)。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、中性子の遮蔽においては、中性子をより安全確実に遮蔽できる中性子遮蔽体が求められている。一方、γ線の遮蔽においては、現在主に使用されている樹脂等からなる中性子遮蔽体は、比重が0.9〜1.2と小さく、高速の中性子を遮蔽する際に発生するγ線を遮蔽するには適しておらず、中性子遮蔽体本体の外側に比重の大きい材料を用いたγ線遮蔽用の構造物を配置する必要があった。このため、中性子遮蔽体の性能が向上したとしても、外側に配置するγ線遮蔽用構造物の厚み、重量のため中性子遮蔽体の特徴を活かせておらず、中性子遮蔽体自体のγ線遮蔽能の向上が期待されている。
【0008】
また、耐火性においては、水酸化アルミニウムの脱水熱分解温度は、245℃〜320℃であり、これに対して水酸化マグネシウムの脱水熱分解温度は340℃〜390℃であるため耐火材としては水酸化マグネシウム粉末がより適していると考えられる。しかし、水酸化マグネシウム粉末を使用した場合、組成物の粘度が上昇して混練・充填に多大な時間と労力がかかるという問題点および樹脂内部に巻き込まれた気泡が残留し、中性子遮蔽能を低下させるおそれがあるという問題点があった。そのため、実際にキャスク用に水酸化マグネシウム粉末が使用された例はなく、また、水酸化マグネシウム粉末の粒径等についても検討された例もない。
【0009】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたもので、中性子およびγ線を効果的に遮蔽し、耐火性に優れた中性子遮蔽体用組成物を提供することを目的とする。さらに、作業性のよい中性子遮蔽体用組成物を提供することも目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題解決のため、中性子遮蔽体用組成物の開発に着手したところ、密度増加剤をエポキシ樹脂等に混合することによりγ線遮蔽能および中性子遮蔽能が向上すること、微細な粒径の水酸化マグネシウム粉末を使用することにより耐熱性および中性子遮蔽能が向上すること、さらに、カーボン粉末を配合することにより中性子遮蔽体用組成物の中性子遮蔽能が向上することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明は下記の通りである。
〔1〕エポキシ樹脂と、耐火材と、密度増加剤とを含有することを特徴とする中性子遮蔽体用組成物。
〔2〕水素添加エポキシ樹脂と、水酸化マグネシウム粉末と、密度増加剤とを含有することを特徴とする中性子遮蔽体用組成物。
〔3〕1.5〜15μmの粒径を有する水酸化マグネシウム粉末を含有することを特徴とする中性子遮蔽体用組成物。
〔4〕水素添加ビスフェノールA型エポキシ樹脂と、1.5〜5μmの粒径を有する水酸化マグネシウム粉末と、密度増加剤とを含有することを特徴とする中性子遮蔽体用組成物。
〔5〕カーボン粉末を含有することを特徴とする上記〔1〕〜〔4〕のいずれか1つに記載の中性子遮蔽体用組成物。
〔6〕カーボンブラックを0.02〜4質量%含有することを特徴とする上記〔1〕〜〔5〕のいずれか1つに記載の中性子遮蔽体用組成物。
〔7〕上記〔2〕〜〔6〕のいずれか1つに記載の中性子遮蔽体用組成物からなる中性子遮蔽体。
〔8〕上記〔2〕〜〔6〕のいずれか1つに記載の中性子遮蔽体用組成物からなる中性子遮蔽容器。
【0012】
【発明の実施の形態】
まず、本発明の中性子遮蔽体用組成物について説明する。中性子遮蔽体用組成物は、基本成分として、主剤としてのエポキシ樹脂、硬化剤、ホウ素化合物が混合されたものである。この基本成分に耐火材を混合することにより難燃性を付与することができる。また、カーボン粉末、および/または、密度増加剤を混合することにより中性子遮蔽能、作業性等をより向上させることができる。以下、各成分について詳細に説明するが、特に断らない限り市販のものを使用することができる。まず、エポキシ樹脂とは、架橋し得るエポキシ基を含む樹脂を意味する。
【0013】
エポキシ樹脂は、例えばグリシジルエーテル型/2官能フェノール型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型/多官能フェノール型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型/アルコール型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂等が挙げられ、さらにこれらのエポキシ樹脂の環構造に水素を添加した水素添加エポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂は、1種類のエポキシ樹脂を用いても、2種以上のエポキシ樹脂を混合して用いてもよい。
【0014】
さらに、エポキシ樹脂の具体例を挙げると、グリシジルエーテル型/2官能フェノール型エポキシ樹脂としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、単環型芳香族エポキシ樹脂、縮合多環型芳香族エポキシ樹脂等、グリシジルエーテル型/多官能フェノール型エポキシ樹脂としては、ポリフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、メチレン基置換型フェノールノボラック型エポキシ樹脂、アルキレン変性フェノールノボラック型エポキシ樹脂、アラルキル変性フェノールノボラック型エポキシ樹脂等、脂肪族エポキシ樹脂としては、直接酸化による脂環式エポキシ樹脂、官能基のグリシジルエーテル化による脂環式エポキシ樹脂、ジクロロペンタジエン型エポキシ樹脂、鎖上脂肪族エポキシ樹脂等、変性エポキシ樹脂としては、シリコーン変性エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、ポリイミドおよびポリアミド変性エポキシ樹脂、光硬化性エポキシ樹脂等、その他には、リン含有エポキシ樹脂、硫黄含有エポキシ樹脂、窒素含有エポキシ樹脂等が挙げられる。水素添加エポキシ樹脂としては、水素添加ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水素添加ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型グリシジルエーテル樹脂を水素添加した樹脂等が挙げられる。
【0015】
これらのエポキシ樹脂のうち好ましくはビスフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等であり、特に好ましくはビスフェノール型エポキシ樹脂の中でも水素添加ビスフェノールA型エポキシ樹脂である。水素添加ビスフェノールA型エポキシ樹脂のような水素含有量の大きい水素添加エポキシ樹脂を用いることにより、中性子遮蔽能のより優れた中性子遮蔽体を製造することが可能となる。
【0016】
【化1】
【0017】
上記水素添加ビスフェノールA型エポキシ樹脂の構造式中のnの好ましい範囲は、n=0〜2であり、n=0〜0.1程度がより好ましい。
【0018】
エポキシ樹脂と反応して架橋構造を形成する硬化剤としては、例えばアミン系硬化剤、酸および酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤等が挙げられ、好ましくはアミン系硬化剤が用いられる。さらにアミン系硬化剤のうち、脂環式アミン系硬化剤、芳香族アミン系硬化剤等の環構造を有する硬化剤は、耐熱性が高いため、本発明の組成物に好適に用いられる。硬化剤は、1種類の硬化剤を用いても、2種以上の硬化剤を混合して用いてもよい。
【0019】
耐火材とは、例えば火災が生じた場合のように中性子遮蔽体が高温にさらされたときに、ある程度以上の中性子遮蔽能を維持できるよう中性子遮蔽体を残存させることを目的として加えられるものであり、例えば水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の化合物をいう。水酸化マグネシウムの脱水分解温度は、340℃〜390℃で水酸化アルミニウムの脱水分解温度より高温であるため耐火材として特に適している。
【0020】
一般的に、水酸化マグネシウムは、粉末状になっている。この水酸化マグネシウム粉末の粒径については、通常は特に調整されていない。粒径を調整することにより、中性子遮蔽体用組成物としてより好適な組成物となる。
【0021】
耐火材として水酸化マグネシウム粉末を用いる場合、好ましい水酸化マグネシウム粉末の粒径は、1.5〜15μmであり、特に1.5〜5μmの粒径が好ましい。これらの粒径を有す水酸化マグネシウム粉末は、市販のものを用いることができる。ここで、水酸化マグネシウム粉末の粒径は、全ての粉末の粒径が1.5〜15μmの範囲にあることが望ましいが、現実的には水酸化マグネシウム粉末の80%以上が1.5〜15μmの範囲にあればよく、好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上が当該範囲にあることが望ましい。粒径1.5μm以下の水酸化マグネシウム粉末を用いて、水酸化マグネシウム粉末の混合比をあげると粘度が上昇して混練・充填に多大な時間と労力がかかってしまう。従って、水酸化マグネシウム粉末の混合比を低く抑えることになるため、耐火性が悪くなる。他方、粒径15μm以上の水酸化マグネシウム粉末を用いた場合、水酸化マグネシウム粉末の表面積が小さくなるため耐火性が低下するおそれがある。すなわち、1.5〜15μmの水酸化マグネシウム粉末を用いることにより、耐火性を維持しつつ、混練・充填に多大な時間と労力がかからない作業性のよい中性子遮蔽体用組成物を得ることができる。
【0022】
さらに中性子遮蔽能の観点から具体的に説明すると、硬化前エポキシ樹脂の容器への流し込みに際し、空隙部をなくすため、硬化前レジンの粘度は100Pa・s以下にすることが望ましい。1.5μm以下の水酸化マグネシウム粉末を用いた場合、粘度を適正に保つには水酸化マグネシウム粉末の混入量は30質量%以下となり、溶融栓付き密閉容器内で耐火条件温度(外部800℃、30分)とすると、樹脂内部に気泡(ボイド)が発生し、中性子遮蔽能が低下するおそれがある。他方、15μm以上の水酸化マグネシウム粉末を用いた場合、水酸化マグネシウム粉末の混入量は50質量%以上とすることができるが、水酸化マグネシウム粉末の表面積が低下するため、耐火条件温度(外部800℃、30分)で樹脂内部に気泡が発生し、中性子遮蔽能が低下するおそれがある。
【0023】
つまり、水酸化マグネシウム粉末の粒径を1.5〜15μmにすることにより耐火性および中性子遮蔽能がより優れた中性子遮蔽体を得ることができる。また、作業性も向上する。
【0024】
一方、水酸化アルミニウムは、水素含有量の点から水酸化マグネシウムより優れているので、水酸化アルミニウム粉末と水酸化マグネシウム粉末とを適宜混合して耐火材としてもよい。その場合用いる水酸化アルミニウム粉末は、0.07質量%以下の低ソーダ分の水酸化アルミニウム粉末を用いることが好ましい。ソーダ分(Na2O)を0.07質量%以下にすることによって、150℃以上まで水素含有率を保持することができる。また、水酸化アルミニウム粉末、水酸化マグネシウム粉末以外の耐火材をさらに添加したものであってもよい。これら耐火材の添加量は組成物全体中20〜70質量%が好ましく、35〜60質量%が特に好ましい。
【0025】
ホウ素化合物は、微量に配合され、中性子の減速および吸収材としての機能を有する。中性子遮蔽体に微量に配合されるホウ素化合物は、中性子吸収能を有するものであればよく、例えば低速および熱中性子に対して大きな吸収断面積を有する窒化ホウ素、無水ホウ酸、ホウ素鉄、正ホウ酸、炭化ホウ素、あるいはメタホウ酸などのホウ素化合物が挙げられ、炭化ホウ素が特に好ましい。ホウ素化合物は、1種類のホウ素化合物を用いても、2種以上のホウ素化合物を混合して用いてもよい。
【0026】
ホウ素化合物は粉末で用いられ、粒径および添加量は適宜調節して添加することができる。しかし、エポキシ樹脂内での分散性、中性子に対する遮蔽性を考慮すれば平均粒径は1〜200μm程度が好ましく、10〜100μm程度がより好ましく、20〜50μm程度が特に好ましい。添加量は、組成物全体に対して0.5〜20質量%の範囲が最も好ましい。0.5質量%未満では加えたホウ素化合物の中性子遮蔽材としての効果が低く、また、20質量%を超えた場合はホウ素化合物を均一に分散させることが困難になる。
【0027】
カーボン粉末は、中性子遮蔽能力をより向上させるために添加される。詳しく説明すると、硬化前樹脂を溶融栓付き密閉容器内で耐火条件温度(外部800℃、30分)とすると、樹脂内部に気泡(ボイド)が発生し、中性子遮蔽能が低下するおそれがある。ここで、カーボン粉末を添加すると気泡の発生が抑制され、中性子遮蔽能力がより向上する。
【0028】
添加するカーボン粉末は、例えばカーボンブラック、グラファイト、活性炭などであり、カーボンブラックが特に好ましい。ここで、カーボン粉末は、1種類のカーボン粉末を用いても、2種以上のカーボン粉末を混合して用いてもよい。添加量は、カーボン粉末の種類により適宜調節して添加することができるが、カーボンブラックの場合0.02〜4質量%が適当であり、0.05〜0.3質量%が特に好ましい。0.02質量%以上で効果が認められ、0.05質量%以上で特に効果が顕著である。また、0.3質量%以下では粘度の顕著な上昇は認められない。一方、4質量%以上では、カーボン粉末添加に伴って粘度が急激に上昇し、また、添加分だけ水素含有量が低下することから、添加量に見合った効果が認められない。
【0029】
また、カーボン粉末を過剰に添加すると、中性子遮蔽体の他の成分比率が低くなるため、水素含有量が下がり中性子遮蔽能力が低下する傾向がみられる。
【0030】
密度増加剤は、密度の高い材料であり、中性子遮蔽体の比重を大きくし、γ線を遮蔽するために混合される重金属粉または重金属の酸化物粉である。密度増加剤として、好ましくは、融点が350℃以上の重金属であるCr、Mn、Fe、Ni、Cu、Sb、Bi、U、W等、および/または、融点が1000℃以上の重金属の酸化物であるNiO、CuO、ZnO、ZrO2、SnO、SnO2、WO2、CeO2、UO2、PbO、WO3等が挙げられる。密度増加剤は、1種類で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0031】
密度増加剤を添加することにより、中性子遮蔽体の比重を上げることができ、γ線をより効果的に遮蔽することができる。また、上記の重金属粉や重金属の酸化物粉を用いることで耐火性も向上させることができる。
【0032】
混合する密度増加剤の添加量は、適宜調節して添加することができるが、γ線を効果的に遮蔽するためには密度増加剤自体の密度が5.0g/cm3以上が好ましく、6.0g/cm3以上がより好ましい。
【0033】
また、エポキシ樹脂以外の添加物の一部を密度増加剤で置換することによって、水素含有量を増加させることができる。一部置換を行なうことにより、中性子遮蔽体用組成物の比重を維持(1.62〜1.72g/cm3)しながら、エポキシ樹脂の量を多くすることができるため水素含有量の高い中性子遮蔽体を製造することができ、効果的に中性子を遮蔽することができる。
【0034】
つまり、密度増加剤を用いることによりγ線の遮蔽性能を維持しながら中性子遮蔽効果をより上げることができるので、従来のように中性子遮蔽体本体の外側に重厚なγ線遮蔽用の構造物を配置する必要性を小さくすることができる。
【0035】
本発明の中性子遮蔽体用組成物には、充填剤として、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム三酸化アンチモン、酸化チタン、アスベスト、クレー、マイカ等の粉末のほか、ガラス繊維等を添加してもよく、また、必要に応じ炭素繊維等を添加してもよい。さらに必要に応じて、離型剤としての天然ワックス、脂肪酸の金属塩、酸アミド類、脂肪酸エステル類等、難燃剤としての塩化パラフィン、ブロムトルエン、ヘキサブロムトルエン、三酸化アンチモン等、着色剤としてのカーボンブラック、ベンガラ等の他、シランカップリング剤、チタンカップリング剤等を添加することができる。
【0036】
本発明の組成物は、エポキシ樹脂とその他の成分とを混合することによって調製される。中性子遮蔽体は、中性子遮蔽体用組成物を成形したものである。中性子遮蔽体の成形におけるエポキシ樹脂の架橋は、室温でも可能だが加熱により行なうのが好ましい。具体的な条件としては、エポキシ樹脂の種類、組成等によって異なるが、50℃〜200℃の温度条件において1時間〜3時間加熱を行なうことが好ましい。さらには、このような加熱処理は2段階で行なうことが好ましく、60℃〜90℃で1時間〜2時間加熱した後、120℃〜150℃で2時間〜3時間加熱処理することが好ましい。
【0037】
中性子遮蔽体は、中性子を遮蔽する目的で用いられ、例えば使用済核燃料を貯蔵・輸送するためのキャスクなどに用いられる。このような輸送用のキャスクは、公知技術を利用して製造することができる。キャスク用中性子遮蔽体の成形は、例えば、特開平2000−9890号公報に開示されたキャスクにおいて中性子遮蔽体組成物を充填する個所が設けられており、このような個所に、本発明の組成物を充填することにより中性子遮蔽体を製造することができる。
【0038】
本発明の組成物は、このようなキャスク中の遮蔽体に限定されるものではなく、中性子の拡散を防止する装置や施設において、様々な個所に用いることができ、効果的に中性子を遮蔽することができる。
【0039】
【実施例】
以下、本発明の実施例を示し、本発明について更に詳細に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0040】
中性子遮蔽能は、以下重量減少率で表される耐熱性で評価した。重量減少のほとんどは水であり、水には中性子を減速させる効果がある水素が多く含まれるからである。すなわち、重量減少率が大きいという試験結果は、耐熱性が低いため、水分が減少し、その結果中性子遮蔽能が小さくなるということを意味している。
【0041】
γ線の遮蔽能は、中性子遮蔽体用組成物の密度(g/cm3)で評価される。密度が1.62〜1.72g/cm3程度あれば、γ線を十分に遮蔽することができる。
【0042】
(実験例1)密度増加剤と水酸化マグネシウム粉末の使用
表1の配合にてエポキシ樹脂を硬化させ、耐熱性を比較した。耐熱性は、密閉容器中で200℃×2,000h保持し、室温にて開封後、一昼夜放置して揮発成分を除去した時の重量減少率で表した。水素含有量は、一般にCHN分析計で測定され、本実施例においてはガス熱伝導度検出型CHN分析計を用いて求めた。水酸化マグネシウム粉末は、粒径が3.3μmのものを用いた。
【0043】
【表1】
【0044】
比較例1では、200℃耐熱評価にて3.2質量%の重量減少がみられた。従って、中性子遮蔽能の低下が推測される。
【0045】
実施例1では、耐火剤を水酸化アルミニウム粉末から水酸化マグネシウム粉末に代えることで、耐熱性が大きく向上している。しかし、水酸化マグネシウムは水素含有量が低いため、水素含有量をほぼ一定にすると、耐火剤混入量を削減しなければならず、密度が低下する。その結果、中性子が吸収された時にγ線が発生するが、γ線の遮蔽能は、密度にほぼ比例するため、γ線の遮蔽能は低下する。
【0046】
実施例2では、密度低下を防止するため、銅粉を水酸化マグネシウム粉末と合わせて添加した。これにより、水酸化マグネシウム粉末を使用しても、比較例1と同じ密度を維持することができ、その結果γ線遮蔽能を維持する。また、水酸化アルミニウム粉末を使用せず、水酸化マグネシウム粉末を用いることで、耐火材混合比を下げても耐熱性を維持することができた。
【0047】
(実験例2)水素添加エポキシ樹脂と水酸化マグネシウム粉末の使用
表2の配合にてエポキシレジンを硬化させ、耐熱性を比較した。密閉容器中で200℃×2,000h保持し、室温にて開封後、一昼夜放置して揮発成分を除去した時の重量減少率で表した。水酸化マグネシウム粉末は、粒径が50μmのものを用いた。
【0048】
【表2】
【0049】
比較例2では、200℃耐熱評価にて3.2質量%の重量減少がみられた。従って、中性子遮蔽能の低下が推測される。耐火剤として使用している水酸化アルミニウム粉末の耐熱性が問題になっていると考えられた。
【0050】
比較例3では、水酸化アルミニウム粉末を水酸化マグネシウム粉末に代えることで、耐熱性は大きく向上した。しかし、水酸化マグネシウム自体(Mg(OH)2)の水素含有量は水酸化アルミニウム自体(Al(OH)3)の水素含有量より低いので、中性子遮蔽体の水素含有量も低下し、中性子遮蔽能も低下する。そこで、エポキシ主剤を水素添加したもの(水素添加ビスフェノールA型エポキシ樹脂)を用い、水素含有量を向上させた。
【0051】
(実験例3)水素添加エポキシ樹脂と水酸化マグネシウム粉末と密度増加剤の使用
表3の配合にてエポキシレジンを硬化させ、耐熱性を比較した。耐熱性は、実験例1、2と同様にして求めた。水酸化マグネシウム粉末は、粒径が3.3μmのものを用いた。
【0052】
【表3】
【0053】
比較例4では、200℃耐熱評価にて3.2質量%の重量減少がみられた。従って、中性子遮蔽能の低下が推測される。
【0054】
実施例3では、エポキシ主剤を水素添加物(水素添加ビスフェノールA型エポキシ樹脂)に、耐火剤を水酸化マグネシウム粉末に変更し、さらに、鉄粉を添加することで、密度、水素含有量、耐熱性が改善された。すなわち、中性子線およびγ線に対する遮蔽性および耐熱性が向上した。
【0055】
(実験例4)1.5〜15μmの粒径を有する水酸化マグネシウム粉末の使用下記に示す市販のエポキシ材料と水酸化マグネシウム粉末と炭化ホウ素を室温、真空下で混合、脱泡し、50×50×100mmの型に流し込んで、室温で一昼夜硬化後、130℃×24hの条件で完全硬化させ、図1に示すサンプル1を作製した。材料混合後の粘度は、遮蔽体製造時の作業性を考慮し、一般に100Pa・s以下としているが、ここでは、30Pa・sを目安として試験を行った。これを図1に示す耐火試験容器2に入れ、全体をSUSの鋼板で密封し、上面試験片の中心部分に直径5mmのスズの溶融栓をつけた後、800℃の雰囲気下で30分間静置した。すなわち、一般的な材料の耐火条件でなく、金属キャスクの使用条件に合わせ、準密閉状態での耐火となる。耐火試験容器2は、室温・大気雰囲気の条件下に取り出すと、溶融栓からしばらく炎がみられるが、間もなく自己消火する。室温まで戻した後、中性子遮蔽体を取り出し、内部の状態と重量残存率を測定し、耐火後もある程度の中性子遮蔽能力を有しているかどうかを判断した。重量残存率は、実験例1、2の耐熱性と同様の方法で求め、混合粘度は、B型粘度計を用いて求めた。また、連続するボイドは、中性子遮蔽体の任意の断面を10mmのメッシュに分割し、それを貫通する空間部の有無が1つにでもみられるかで判断する。連続するボイドが生成すると、中性子が透過する経路ができ、中性子遮蔽能力が大きく低下する。
【0056】
【表4】
【0057】
表4に示すように実施例4〜実施例7において、重量残存率50%以上で、かつ、中性子遮蔽体の表層を除いて、連続するボイドが生成されにくい傾向が認められた。ここで、重量残存率とは、100(%)−重量減少率(%)で表された数値である。
【0058】
(実験例5)カーボン粉末の添加
実験例4と同様の試験方法にて、カーボン粉末添加の効果を確認した(試行数1〜5回)。カーボン粉末はシグマアルドリッチジャパン社製カーボンブラック(型番05−1530−5)を使用した。また、密度増加剤として使用したNi粉は、山石金属製のものを用いた。その結果、表5に示すように、カーボン粉末を混合した実施例9〜実施例14で効果が認められ、特に実施例11〜実施例14では連続ボイドの生成が認められなかった。
【0059】
【表5】
【0060】
(実験例6)水酸化マグネシウム粉末の粒径とカーボン粉末の添加
実験例4と同様の試験方法にて、水酸化マグネシウム粉末とカーボン粉末添加の効果を確認した。カーボン粉末はシグマアルドリッチジャパン社製カーボンブラック(型番05−1530−5)を使用した。また、密度増加剤として使用したNi粉は、山石金属製のものを用いた。その結果、表6に示すように1.5〜15μmの粒径を有する水酸化マグネシウム粉末とカーボン粉末の2つを組み合わせることによる相乗効果により、ボイドが発生しにくいという傾向が認められた。断面の観察を行なったところ、耐火後、水酸化マグネシウム粉末とカーボン粉末の相乗効果により、最も緻密な構造を保っていたのは、実施例18の水酸化マグネシウム粉末の粒径が3.3μmの場合であった。
【0061】
【表6】
【0062】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明の中性子遮蔽体用組成物は、中性子およびγ線を遮蔽するのに好適であり、また耐火性にも優れている。さらに耐火材として水酸化マグネシウム粉末を選択し、その粒径を調整することにより作業性を向上させることができる。さらにカーボン粉末を添加することにより、より中性子遮蔽能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】耐火試験容器を示した図である。
【符号の説明】
1・・・耐火試験用レジンサンプル
2・・・耐火試験容器
Claims (8)
- エポキシ樹脂と、耐火材と、密度増加剤とを含有することを特徴とする中性子遮蔽体用組成物。
- 水素添加エポキシ樹脂と、水酸化マグネシウム粉末と、密度増加剤とを含有することを特徴とする中性子遮蔽体用組成物。
- 1.5〜15μmの粒径を有する水酸化マグネシウム粉末を含有することを特徴とする中性子遮蔽体用組成物。
- 水素添加ビスフェノールA型エポキシ樹脂と、1.5〜5μmの粒径を有する水酸化マグネシウム粉末と、密度増加剤とを含有することを特徴とする中性子遮蔽体用組成物。
- カーボン粉末を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の中性子遮蔽体用組成物。
- カーボンブラックを0.02〜4質量%含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の中性子遮蔽体用組成物。
- 請求項2〜6のいずれか1つに記載の中性子遮蔽体用組成物からなる中性子遮蔽体。
- 請求項2〜6のいずれか1つに記載の中性子遮蔽体用組成物からなる中性子遮蔽容器。
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-
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- 2002-07-31 JP JP2002224084A patent/JP2004061463A/ja not_active Withdrawn
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