JP6313183B2 - ガイドワイヤ - Google Patents

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Description

本発明は、ガイドワイヤに関するものである。
従来から、治療や検査の際に、血管、消化管、尿管等の管状器官や体内組織に挿入して、カテーテル等をガイドするために、ガイドワイヤが用いられている。ガイドワイヤとしては、長尺状のコアシャフトの先端部にコイルを備えたガイドワイヤが一般的に用いられている。
例えば、特許文献1及び特許文献2には、長尺状のコアシャフト及びコアシャフトの先端部の外周を覆うコイルを備えるガイドワイヤであって、先端部において優れた柔軟性を確保するために、コイルをアウターコイルとインナーコイルとの二重コイル構造としたガイドワイヤが開示されている。
このような、ガイドワイヤを用いる治療や検査において、ガイドワイヤは血管等の内部を押し進められるが、ガイドワイヤが、血管の狭窄部等の径が狭くなった部分を通過することができず、狭窄部に挟まれてスタックする場合がある。ガイドワイヤがスタックした場合、手技者はガイドワイヤの基端側を手元で操作して回転させながらガイドワイヤを進退させ、ガイドワイヤの動きを確保している。この時、ガイドワイヤには、回転力が加わり易い方向、即ち、先端部のコイルの巻回方向に回転力が加えられるが、先端部のコイルはスタック部で動きが制限されるため、コイルには、回転力が伝達されてくるコイルの基端側とスタック部との間で、コイルの巻回方向に過剰な力が加わり、コイルが縮径するように変形することとなる。特許文献1及び特許文献2に開示されているような従来のガイドワイヤは、先端部の柔軟性に優れており、血管等の内部を押し進める際には良好な操作性を有するが、ガイドワイヤがスタックした場合には、コイルが変形しすぎて破損するという問題がある。
特開平8−173547号公報 国際公開第2004/060462号
本発明は、先端部にコイルを備えるガイドワイヤにおいて、血管の狭窄部等に先端部がスタックした場合であっても、コイルが破損することのないガイドワイヤを提供することを目的とする。
本発明のガイドワイヤは、コアシャフト、コアシャフトの先端部の外周を覆うように配設されたアウターコイル、アウターコイルの先端とコアシャフトの先端とが接合された先端チップ、アウターコイルの基端をコアシャフトの外周面に接合するアウターコイル基端接合部、及びコアシャフトの先端部の外周を覆うように、かつ、アウターコイルの内周と隙間を有するようにアウターコイルの内部に配設されたインナーコイルを備えており、インナーコイルの外径は、アウターコイルの内径の87%以上であり、インナーコイルの長さは、アウターコイルの長さの70%以上99%以下であり、コアシャフト及びアウターコイルのいずれにも接合されていないことを特徴とする。
上記インナーコイルは、複数の素線が撚り合わされてなり、インナーコイルの両端部は、インナーコイルを構成する各素線が固着されているのが好ましい。
アウターコイルの基端には、先端がアウターコイル基端接合部に接合された第2のアウターコイルを備えるのが好ましい。
本発明は、コアシャフト、アウターコイル、先端チップ、アウターコイル基端接合部及びインナーコイルを備えたガイドワイヤにおいて、インナーコイルの外径をアウターコイルの内径の87%以上とするとともに、インナーコイルの長さを、アウターコイルの長さの70%以上99%以下とし、かつ、インナーコイルの先端及び基端を自由端としているので、コアシャフトを回転させても、インナーコイルにはコアシャフトの回転力が伝わらず、即ち、インナーコイルはコアシャフトの回転により変形することがなく、さらに、アウターコイルの内部で、インナーコイルがずれることなく所定範囲内に実質的に位置決めされる。従って、ガイドワイヤの先端部がスタックした際、アウターコイルの巻回方向にコアシャフトを回転させてアウターコイルを引き締め、その外径を若干小さくすることでガイドワイヤの動きを確保しようとした場合でも、コアシャフトの回転により変形しないインナーコイルがアウターコイルの過剰な変形を抑制するので、アウターコイルが変形しすぎて破損することがなく、さらに、インナーコイルは実質的に位置決めされているので、インナーコイルがずれてスタック部において存在しないということがなく、アウターコイルの破損が確実に防止される。
また、上記インナーコイルが、複数の素線が撚り合わせされてなる構成を有することで、径方向に力が加わった場合に、インナーコイルの形状がより崩れ難くなるので、アウターコイルが引き締められてその外径が若干小さくなり、アウターコイルの内周とインナーコイルの外周とが接触した場合でも、インナーコイルの形状がアウターコイルに押されて崩れることが無く、アウターコイルの破損がより確実に防止される。
本発明のガイドワイヤの実施の形態の1つを示す断面図である。 図1のガイドワイヤの先端部において、アウターコイルが引き締められてその外径が若干小さくなった状態を示す断面図である。 本発明のガイドワイヤの実施の形態の1つを示す正面図である。 本発明のガイドワイヤの他の実施の形態の1つを示す断面図である。 本発明のガイドワイヤのさらに他の実施の形態の1つを示す断面図である。 図5のガイドワイヤの先端部において、アウターコイルが引き締められてその外径が若干小さくなった状態を示す断面図である。 図1のガイドワイヤがスタックした状態を示す断面図である。
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、図1〜図6において、図示左側が体内に挿入される先端側、右側が、体内には挿入されず体外に露出したままとされ、医師等の手技者によって操作される後端側である。なお、これらの図面は、理解を容易にするため、寸法を誇張して図示している。
図1〜図3は、本発明の第1の形態を示す図である。図1は、第1の形態のガイドワイヤを示す断面図であり、図2は、図1の第1の形態のガイドワイヤの先端部において、アウターコイルが引き締められてその外径が若干小さくなった状態を示す断面図である。また、図3は、第1の形態のガイドワイヤを示す正面図である。
第1の形態のガイドワイヤ1は、コアシャフト2、コアシャフト2の先端部に配設されたアウターコイル3、先端チップ4、及びアウターコイル3の内部に配設されたインナーコイル5を備えている。
上記ガイドワイヤ1は、血管、消化管、尿管等の管状器官や体内組織に挿入して用いられ、一般的には1000mm〜3500mm、好ましくは1500mm〜3000mmの長さを有する長尺体である。第1の形態のガイドワイヤ1は、血管の治療、検査等に用いられるものであり、長さは約1900mmである。
上記コアシャフト2は、ガイドワイヤ1の中心を、略全長に亘って延びる長尺体である。
コアシャフト2は、ステンレス鋼から構成されているのが好ましいが、ガイドワイヤ1の芯材となるものであれば特には限定されず、その他の材料、例えば、Ni−Ti合金などの超弾性合金、ピアノ線等から構成されていてもよい。また、コアシャフト2の全体が同じ材料で構成されていてもよいし、部分的に構成材料が異なっていてもよい。
コアシャフト2は、先端部21及び先端部21よりも基端側に位置する本体部22からなる。
先端部21は、コアシャフト2の直径が小さくされた先端側の部分であり、ガイドワイヤ1の最先端から、200mm〜600mmの長さにまで延びる部分である。先端部21は、テーパ部211を有することで、直径が先端側に向かって小さくなるように構成されている。テーパ部211は、1つだけ形成されていても、複数形成されていもよい。
本体部22は、先端部21よりも基端側に位置する、コアシャフト2の先端部21以外の部分であり、直径が略一定の長尺の円柱状の部分である。本体部22の直径は、一般的には0.25〜0.45mmである。
コアシャフト2の横断面の形状は、特には限定されないが、先端部21及び本体部22のいずれにおいても円形であるのが好ましい。また、先端部21の先端は、横断面が円形であるのが好ましいが、横断面が矩形のプレスされた平坦面とされているのも好ましい。
アウターコイル3は、コアシャフト2の先端部21の外周を覆うように、かつ、先端部21の外周面とは隙間を有するように配設されている。アウターコイル3の先端は、先端チップ4によりコアシャフト2の先端部21の先端と接合されており、アウターコイル3の基端は、アウターコイル基端接合部31により、コアシャフト2の先端部21の外周面に接合されている。
アウターコイル3は、1本の金属製の素線が巻回されてなる柔軟体、複数の金属製の素線が撚り合わされてなる柔軟体、又は複数の金属製の素線が撚り合わされた撚線がさらに螺旋状に巻回されてなる柔軟体である。金属製の素線としては、ステンレス鋼からなる素線が好ましいが、これに限定されるものではなく、例えば、Ni−Ti合金のような超弾性合金、タングステン、プラチナ合金等からなる素線であってもよい。また、全て同じ材料から構成された素線でもよいが、異なる材料から構成された素線を組み合わせて用いてもよい。また、アウターコイル3の一部を、1本の金属製の素線が巻回されてなる柔軟体、複数の金属製の素線が撚り合わされてなる柔軟体、又は複数の金属製の素線が撚り合わされた撚線がさらに螺旋状に巻回されてなる柔軟体とし、その他の部分を異なる柔軟体から構成してもよい。
アウターコイル3の外径は、0.25〜0.45mmが、血管等に挿通されるガイドワイヤ1として一般的であり、好ましい。
上記アウターコイル基端接合部31はロウ材から構成されているのが好ましく、アウターコイル3にコアシャフト2を挿通させ、アウターコイル3を所定の位置に配置させた後、ロウ材を用いてアウターコイル3の基端をコアシャフト2の先端部21の外周面にロウ付けすることにより、アウターコイル基端接合部31を形成するのが好ましい。その他、溶接、接着剤による接着等により、アウターコイル基端接合部31を形成してもよい。
上記先端チップ4は、半球状などの曲面からなる滑らかな外表面を有している。先端チップ4の形成方法は特には限定されず、例えば、コアシャフト2、アウターコイル3、後述するインナーコイル5等の部材を組み合わせて位置決めした後、インナーコイル5が含まれないように、コアシャフト2の先端及びアウターコイル2の先端にロウ材を供給してこれらをロウ付けすることにより、ロウ材からなる先端チップ4を形成するのが好ましい。その他、溶接、接着剤による接着等により先端チップ4を形成してもよい。
インナーコイル5は、コアシャフト2の先端部21の外周を覆うように、かつ、アウターコイル3の内周と隙間を有するように、アウターコイル3の内部に配設されている。インナーコイル5の先端及び基端は、コアシャフト2及びアウターコイル3のいずれにも接合されておらず、自由端とされている。さらに、インナーコイル5は、先端と基端との間においてもコアシャフト2及びアウターコイル3のいずれにも接合されていないのが好ましい。即ち、インナーコイル5は、全体に亘って他の部材に接合されていないのが好ましい。
インナーコイル5は、1本の金属製の素線が巻回されてなる柔軟体、複数の金属製の素線が撚り合わされてなる柔軟体、又は複数の金属製の素線が撚り合わされた撚線がさらに螺旋状に巻回されてなる柔軟体である。中でも、インナーコイル5は、後述する第2の形態のように、複数の金属製の素線が撚り合わされてなるのが好ましい。金属製の素線としては、ステンレス鋼からなる素線が好ましいが、これに限定されるものではなく、例えば、Ni−Ti合金のような超弾性合金、タングステン、プラチナ合金等からなる素線であってもよい。また、全て同じ材料から構成された素線でもよいが、異なる材料から構成された素線を組み合わせて用いてもよい。また、インナーコイル5の一部を、1本の金属製の素線が巻回されてなる柔軟体、複数の金属製の素線が撚り合わされてなる柔軟体、又は複数の金属製の素線が撚り合わされた撚線がさらに螺旋状に巻回されてなる柔軟体とし、その他の部分を異なる柔軟体から構成してもよい。
インナーコイル5は、密巻き部分を有しているのが好ましい。インナーコイル5が密巻き部分を有することで、径方向に力が加わった場合でも形状が崩れ難くなるので、アウターコイル3が引き締められて、アウターコイル3の内周とインナーコイル5の外周が接触した場合でも、インナーコイル5の形状が崩れることが無く、アウターコイル3の破損がより確実に防止される。
また、インナーコイル5は、アウターコイル3の逆方向に巻回されていても、同方向に巻回されていてもよい。図1〜図3は、インナーコイル5をアウターコイル3の逆方向に巻回させた状態を示している。
インナーコイル5の先端及び基端は、インナーコイル5の端部の素線が解けるのを防止するため、固着部51、52で素線同士が固着されているのが好ましい。固着部51、52は、インナーコイル5の端部に位置する素線同士を固着しているが、コアシャフト2及びアウターコイル3には固着されていない。固着部51、52は、ロウ材から構成されるのが好ましく、ロウ付けにより形成されるのが好ましい。その他、接着剤等により固着部51、52を形成してもよい。
インナーコイル5の外径d1は、アウターコイル3の内径D1の87%以上とされている。また、インナーコイル5は、アウターコイル3の内部に、アウターコイル3の内周と隙間を有するように配設されているので、インナーコイル5の外径d1が、アウターコイル3の内径D1よりも小さいのは当然であるが、98%以下とされているのが好ましい。インナーコイル5の外径d1を上記範囲とすることで、ガイドワイヤ1が血管の狭窄部等にスタックした場合に、アウターコイル3が過度に変形するのを抑制し、アウターコイル3の破損を確実に防止するとともに、ガイドワイヤ1を複雑に湾曲した血管内を押し進めた場合であっても、インナーコイル5とアウターコイル3とが干渉して、相互の動きを阻害することがなく、先端部の柔軟性が損なわれることがない。
インナーコイル5の外径d1は、図1に示しているように、回転力等の外力が加えられていない状態における、任意の点でのインナーコイル5の最大外径であり、アウターコイル3の内径D1は、回転力等の外力が加えられていない状態における、前記任意の点と軸方向に同位置における、アウターコイル3の最小内径である。従って、インナーコイル5又はアウターコイル3がテーパを有するコイルである場合は、軸方向に同位置におけるインナーコイル5の外径d1及びアウターコイル3の内径D1が、上記範囲内にあればよい。
また、インナーコイル5は、アウターコイル3と略同様の長さを有する。略同様の長さとは、インナーコイル5が、先端チップ4とアウターコイル基端接合部31との間に収容され得る長さであるとともに、インナーコイル5の先端の軸方向のずれが先端チップ4により規制され、かつ、インナーコイル5の基端の軸方向のずれがアウターコイル基端接合部31により規制されることで、インナーコイル5が、アウターコイル3の内部で軸方向に実質的に位置決めされ得る長さである。具体的には、アウターコイル3の軸方向の長さE1に対し、インナーコイル5の軸方向の長さe1は、上限は99%が好ましく、下限は70%が好ましい。
インナーコイル5の軸方向の長さe1を上記範囲内とすることで、インナーコイル5の先端及び基端が自由端とされていても、インナーコイル5の位置がアウターコイル3の内部で軸方向にずれることがなく、アウターコイル3の内部の所定範囲内に実質的に位置決めされ、ガイドワイヤ1がスタックした際に、インナーコイル5がずれてスタック部に存在しないということがなく、アウターコイル3の過度の変形が確実に防止される。
ガイドワイヤ1を体内に導入させた際、例えば、血管の狭窄部等の径が狭くなった部分でガイドワイヤ1がスタックした場合には、ガイドワイヤ1をアウターコイル3の巻回方向に回転させることで、アウターコイル3が若干引き締められ、図2に示すように、少なくともスタックしている部分Aにおいて、アウターコイル3の外径が若干小さくなる。それにより、ガイドワイヤ1の動きを確保し易くなる。この時、アウターコイル3の内部に位置しているインナーコイル5は、ガイドワイヤ1の回転により変形することないので、アウターコイル3がインナーコイル5の外周に接触するまで縮径されると、アウターコイル3のそれ以上の変形はインナーコイル5により抑制される。従って、アウターコイル3が過度に変形することがなく、破損が防止される。
図4は、本発明の第2の形態のガイドワイヤを示す断面図である。なお、第2の形態のガイドワイヤの正面図は、インナーコイルを構成する素線の軸方向に対する角度が異なる以外は、図3と同様である。
第2の形態のガイドワイヤ10は、第1の形態のガイドワイヤ1におけるインナーコイル5としてインナーコイル50を用いた以外は、第1の形態のガイドワイヤ1と同様の構成を有している。図4において、第1の形態のガイドワイヤ1と共通する構成については、同じ符号を用いている。
インナーコイル50は、複数の金属製の素線が撚り合わされてなる。このように、複数の素線が撚り合わされてなるインナーコイル50を用いることにより、径方向に力が加わった場合でも形状が崩れ難く、アウターコイル3が引き締められて、アウターコイル3の内周とインナーコイル50の外周が接触した場合でも、インナーコイル50の形状が崩れることが無く、アウターコイル3の破損がより確実に防止されるとともに、インナーコイル50の外径が大きくなることもなく、アウターコイル3の内部に配設し易いので、好ましい。また、インナーコイル50を構成する金属製の素線の本数を調整することで、インナーコイル50を構成する素線の軸方向に対する傾斜角度が変化するので、インナーコイル50の構成を調整することで、インナーコイル50の形状の保持性、ガイドワイヤ10の先端部の柔軟性等を両立できるように調整し易い。
インナーコイル50の先端及び基端は、インナーコイル50の端部の素線が解けるのを防止するため、第1の形態のインナーコイル5と同様に、固着部501、502で素線同士が固着されているのが好ましい。固着部501、502は、第1の形態のガイドワイヤ1と同様、インナーコイル50の端部に位置する素線同士を固着しているが、コアシャフト2及びアウターコイル3には固着されていない。固着部501、502は、ロウ材から構成されるのが好ましく、ロウ付けにより形成されるのが好ましい。その他、接着剤等により固着部501、502を形成してもよい。
図5及び図6は、本発明の第3の形態を示す図である。図5は、第3の形態のガイドワイヤを示す断面図であり、図6は、図5の第3の形態のガイドワイヤの先端部において、アウターコイルが引き締められてその外径が若干小さくなった状態を示す断面図である。
第3の形態のガイドワイヤ100は、コアシャフト200、コアシャフト200の先端部に配設された第1アウターコイル300、第1アウターコイル300の基端側に接続された第2アウターコイル301、先端チップ400、及び第1アウターコイル300の内部に配設されたインナーコイル500を備えている。
上記ガイドワイヤ100は、第1の形態及び第2の形態と同様に、血管、消化管、尿管等の管状器官や体内組織に挿入して用いられるものであり、一般的には1000mm〜3500mm、好ましくは1500mm〜3000mmの長さを有する長尺体である。第3の形態のガイドワイヤ100は、血管の治療、検査等に用いられるものであり、その長さは、第1の形態及び第2の形態と同様に約1900mmである。
上記コアシャフト200は、ガイドワイヤ100の中心を、略全長に亘って延びる長尺体であり、第1の形態のコアシャフト2と同様の構成を有する。
コアシャフト200は、第1の形態のコアシャフト2と同様に、先端部2001及び先端部2001よりも基端側に位置する本体部2002からなり、その他の構成は、第1の形態のコアシャフト2と同様である。
アウターコイルは、第1アウターコイル300及び第2アウターコイル301とから構成されている。第2アウターコイル301は、第1アウターコイル300の基端側に、第1アウターコイル基端接合部302を介して接続されており、第1アウターコイル300及び第2アウターコイル301は、いずれもコアシャフト200の先端部2001の外周を覆うように、かつ、先端部2001の外周面とは隙間を有するように配設されている。
第1アウターコイル300の先端は、先端チップ400によりコアシャフト200の先端部2001の先端と接合されている。第1アウターコイル300の基端は、第1アウターコイル基端接合部302によりコアシャフト200の先端部2001の外周面に接合されており、さらに、第1アウターコイル基端接合部302を介して、第2アウターコイル301の先端と接続されている。
第2アウターコイル301の先端は、第1アウターコイル基端接合部302を介して、第1アウターコイル300の基端に接続されており、かつ、コアシャフト200の先端部2001の外周面と接合されている。また、第2アウターコイル301の基端は、第2アウターコイル基端接合部303により、コアシャフト200の先端部2001の外周面に接合されている。
第1アウターコイル300及び第2アウターコイル301は、1本の金属製の素線が巻回されてなる柔軟体、複数の金属製の素線が撚り合わされてなる柔軟体、又は複数の金属製の素線が撚り合わされた撚線がさらに螺旋状に巻回されてなる柔軟体である。第1アウターコイル300及び第2アウターコイル301は、同じ構成を有する柔軟体であってもよく、異なる構成を有する柔軟体であってもよい。金属製の素線としては、ステンレス鋼からなる素線が好ましいが、これに限定されるものではなく、例えば、Ni−Ti合金のような超弾性合金、タングステン、プラチナ合金等からなる素線であってもよい。また、全て同じ材料から構成された素線でもよいが、異なる材料から構成された素線を組み合わせて用いてもよい。また、第1アウターコイル300及び第2アウターコイル301の各々を、一部を1本の金属製の素線が巻回されてなる柔軟体、複数の金属製の素線が撚り合わされてなる柔軟体、又は複数の金属製の素線が撚り合わされた撚線がさらに螺旋状に巻回されてなる柔軟体とし、その他の部分を他の柔軟体で構成してもよい。
第1アウターコイル300及び第2アウターコイル301の外径は、0.25〜0.45mmが、血管等に挿通されるガイドワイヤ100として一般的であり、好ましい。
上記第1アウターコイル基端接合部302及び第2アウターコイル基端接合部303はロウ材から構成されているのが好ましく、第1アウターコイル300及び第2アウターコイル301にコアシャフト200を挿通させ、第1アウターコイル300及び第2アウターコイル301を所定の位置に配置させた後、ロウ材を用いて、第2アウターコイル301の基端及び第1アウターコイル300と第2アウターコイル301との境界部をコアシャフト200の先端部2001の外周面にロウ付けすることにより、第1アウターコイル基端接合部302及び第2アウターコイル基端接合部303を形成するのが好ましい。第1アウターコイル基端接合部302及び第2アウターコイル基端接合部303の形成は同時に行ってもよいが、先に第2アウターコイル302を位置決めして第2アウターコイル基端接合部303を形成し、その後、第1アウターコイル基端接合部302を形成して第2アウターコイル301の先端に第1アウターコイル300を接続させてもよい。その他、接着剤による接着等により、第1アウターコイル基端接合部302及び第2アウターコイル基端接合部303を形成してもよい。
上記先端チップ400は、第1の形態の先端チップ4と同様の構成を有しており、半球状などの曲面からなる滑らかな外表面を有している。先端チップ400の形成方法は、第1の形態の先端チップ4と同様である。
インナーコイル500は、コアシャフト200の先端部2001の外周を覆うように、かつ、第1アウターコイル300の内周と隙間を有するように、第1アウターコイル300の内部に配設されている。インナーコイル500の先端及び基端は、コアシャフト200及び第1アウターコイル300のいずれにも接合されておらず、自由端とされている。さらに、インナーコイル500は、先端と基端との間においてもコアシャフト200及び第1アウターコイル300のいずれにも接合されていないのが好ましい。即ち、インナーコイル500は、全体に亘って他の部材に接合されていないのが好ましい。
インナーコイル500は、第2の形態のインナーコイル50と同様の構成を有する。また、インナーコイル500の先端及び基端は、第2の形態のインナーコイル50と同様に、インナーコイル500の端部の素線が解けるのを防止するため、固着部5001、5002で素線同士が固着されているのが好ましい。固着部5001、5002は、各々第2の形態の固着部501、502と同様にして形成される。
なお、インナーコイル500は、図5及び図6においては、第1アウターコイル300の内部にのみ配設されているが、第2アウターコイル301の内部にも配設されていてもよい。
インナーコイル500の外径d2は、第1アウターコイル300の内径D2の87%以上とされている。また、インナーコイル500は、第1アウターコイル300の内部に、第1アウターコイル300の内周と隙間を有するように配設されているので、インナーコイル500の外径d2が、第1アウターコイル300の内径D2よりも小さいのは当然であるが、98%以下とされているのが好ましい。ガイドワイヤがスタックする場合、先端に近い部分でスタックすることが多いが、ガイドワイヤ100が血管の狭窄部等にスタックする場合は、先端側の第1アウターコイル300の部分でスタックされることが多い。従って、インナーコイル500の外径d2を上記範囲とすることで、ガイドワイヤ100が血管の狭窄部等にスタックした場合に、スタック部に位置する第1アウターコイル300が過度に変形するのをインナーコイル500が抑制し、第1アウターコイル300の破損を確実に防止するとともに、ガイドワイヤ100を複雑に湾曲した血管内を押し進めた場合であっても、インナーコイル500と第1アウターコイル300とが干渉して、相互の動きを阻害することがなく、先端部の柔軟性が損なわれることがない。
インナーコイル500の外径d2は、図5に示しているように、回転力等の外力が加えられていない状態における、任意の点でのインナーコイル500の最大外径であり、第1アウターコイル300の内径D2は、回転力等の外力が加えられていない状態における、前記任意の点と軸方向に同位置における、第1アウターコイル300の最小内径である。従って、インナーコイル500又は第1アウターコイル300がテーパを有するコイルである場合は、軸方向の同位置におけるインナーコイル500の外径d2及び第1アウターコイル300の内径D2が、上記範囲内にあればよい。
また、インナーコイル500は、第1アウターコイル300と略同様の長さを有する。
略同様の長さとは、インナーコイル500が、先端チップ400と第1アウターコイル基端接合部302との間に収容され得る長さであるとともに、インナーコイル500の先端の軸方向のずれが先端チップ400により規制され、かつ、インナーコイル500の基端の軸方向のずれが第1アウターコイル基端接合部302により規制されることで、インナーコイル500が、第1アウターコイル300の内部で軸方向に実質的に位置決めされ得る長さである。具体的には、第1アウターコイル300の軸方向の長さE2に対し、インナーコイル500の軸方向の長さe2は、上限は99%が好ましく、下限は70%が好ましい。
インナーコイル500の軸方向の長さe2を上記範囲内とすることで、インナーコイル500の先端及び基端が自由端とされていても、インナーコイル500の位置が第1アウターコイル300の内部で軸方向にずれることがなく、第1アウターコイル300の内部の所定範囲内に実質的に位置決めされ、ガイドワイヤ100が第1アウターコイル300の部分でスタックした際に、インナーコイル500がずれてスタック部に存在しないということがなく、第1アウターコイル300の過度の変形がインナーコイル500により確実に防止される。
ガイドワイヤ100を体内に導入させた際、例えば、血管の狭窄部等の径が狭くなった部分でガイドワイヤ100がスタックした場合には、多くの場合、ガイドワイヤ100の第1アウターコイル300がスタックされることとなるが、ガイドワイヤ100を第1アウターコイル300の巻回方向に回転させることで、第1アウターコイル300が若干引き締められ、図6に示すように、少なくともスタックしている部分Bにおいて、第1アウターコイル300の外径が若干小さくなる。それにより、ガイドワイヤ100の動きを確保し易くなる。この時、第1アウターコイル300の内部に位置しているインナーコイル500は、ガイドワイヤ100の回転により変形することないので、第1アウターコイル300がインナーコイル500の外周に接触するまで縮径されると、第1アウターコイル300のそれ以上の変形はインナーコイル500により抑制される。従って、第1アウターコイル300が過度に変形することがなく、破損が防止される。
図7は、第1の形態のガイドワイヤ1が血管6の内部の狭窄部Cにスタックした状態を示した断面図である。
ガイドワイヤ1を用いて血管6内の治療又は検査を行う場合、ガイドワイヤ1は、血管6内に導入された後、目的部位にまで血管6内を進められる。その際、狭窄部Cのように径が狭くなった部分でガイドワイヤ1がスタックすることがある。この時、ガイドワイヤ1をアウターコイル3の巻回方向に回転させることで、アウターコイル3が若干引き締められ、少なくともスタックしている狭窄部Cにおいて、アウターコイル3の外径が若干小さくなる。それにより、ガイドワイヤ1が前進又は後退することができるようになり、ガイドワイヤ1の動きを確保し易くなる。アウターコイル3の内部に位置しているインナーコイル5は、先端及び基端が自由端とされていることでガイドワイヤ1を回転させてもその回転力が伝わらず、変形することがないので、アウターコイル3が若干縮径することで、アウターコイル3の内周がインナーコイル5の外周に接触した後は、アウターコイル3はそれ以上縮径されることがない。従って、アウターコイル3が過度に変形することがなく、破損が防止される。
ガイドワイヤ1が目的部位にまで進められると、必要に応じて、ガイドワイヤ1に沿ってカテーテル等の他のデバイスが導入され、治療又は検査が行われる。治療又は検査が終了した後は、ガイドワイヤ1は体外に引き抜かれる。
1、10、100・・・ガイドワイヤ
2、200・・・コアシャフト
21、2001・・・先端部
22、2002・・・本体部
3・・・アウターコイル
31・・・アウターコイル基端接合部
300・・・第1アウターコイル
301・・・第2アウターコイル
302・・・第1アウターコイル基端接合部
303・・・第2アウターコイル基端接合部
4、400・・・先端チップ
5、50、500・・・インナーコイル
51、52、501、502、5001、5002・・・固着部
6・・・血管
A、B・・・スタックしている部分
C・・・狭窄部

Claims (3)

  1. コアシャフト、
    前記コアシャフトの先端部の外周を覆うように配設されたアウターコイル、
    前記アウターコイルの先端と前記コアシャフトの先端とが接合された先端チップ、
    前記アウターコイルの基端を前記コアシャフトの外周面に接合するアウターコイル基端接合部、及び
    前記コアシャフトの先端部の外周を覆うように、かつ、前記アウターコイルの内周と隙間を有するように前記アウターコイルの内部に配設されたインナーコイル
    を備えたガイドワイヤであって、
    前記インナーコイルの外径は、前記アウターコイルの内径の87%以上であり、記インナーコイルの長さは、前記アウターコイルの長さの70%以上99%以下であり、前記コアシャフト及び前記アウターコイルのいずれにも接合されていないことを特徴とするガイドワイヤ。
  2. 前記インナーコイルは、複数の素線が撚り合わされてなり、前記インナーコイルの両端部は、前記インナーコイルを構成する各素線が固着されていることを特徴とする請求項1に記載のガイドワイヤ。
  3. 前記アウターコイルの基端には、先端が前記アウターコイル基端接合部に接合された第2のアウターコイルを備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のガイドワイヤ。
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