JP2017164200A - ガイドワイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】ガイドワイヤの先端側の柔軟性を確保しつつ、術者が回転操作した際のトルク伝達性を向上する。【解決手段】ガイドワイヤ10は、シャフト12と、シャフト12の先端チップ20に固定され、先端チップ20から基端方向に延在してシャフト12の外側を囲うコイル14と、を備える。コイル14の内側に位置するシャフト12の被包囲部18には、平板状に形成され、その平板面28a、28bに孔部30を有する平板部28と、孔部30に挿入され、コイル14に向かって突出して該コイル14に接触可能な線体32と、が設けられる。【選択図】図1

Description

本発明は、先端部にコイルを有する医療用のガイドワイヤに関する。
血管等の生体管腔内に医療デバイスを挿入及び送達して病変部の治療や診断を行うインターベンション手技では、術者はガイドワイヤを生体管腔内に先行させて、そのガイドワイヤに沿って医療デバイスを生体管腔内に送り込む。このガイドワイヤの先端側は、複雑に分岐又は蛇行する生体管腔内を進出し得るように柔軟に構成される。
例えば、ガイドワイヤは、先端方向に向かって細くなることで柔軟性が増すシャフトと、このシャフトの先端側の外側を螺旋状に囲うコイルとを有するように構成される(特許文献1及び2参照)。また、特許文献1に開示のガイドワイヤは、コイルの内側に放射線不透過性のリング部材を備えることで、手技時にガイドワイヤの先端部を認識可能としつつ、コイルの急激な物性変化を防止している。一方、特許文献2に開示のガイドワイヤは、シャフトの外周面に円盤形状部を設けることで、ガイドワイヤの先端部の過剰な屈曲を抑止している。
特開平06−178811号公報 特開2012−005520号公報
この種のガイドワイヤは、上述したように、蛇行又は分岐する生体管腔内を選択的且つ円滑に移動するために、挿入前に術者により湾曲等の形状付けがなされる。そして、手技時において、術者がガイドワイヤ基部を回転操作した際には、ガイドワイヤの先端側に、回転トルクがスムーズに伝達されることが求められる。
また、特許文献1及び2には開示されていないものの、ガイドワイヤは、コイル部材内を通っているシャフトが平板状に形成されていると、その平面と直交する方向に柔軟に(すなわち、曲げ易く)なり、挿入前の術者による先端側の形状付けが簡単になる。しかしながら、平板状のコアに構成すると、生体管腔の屈曲や抵抗が大きい状況下で、術者が回転操作を加えても平板状コアが捻れてしまい、先端チップへの回転トルクの伝達性が低下する可能性がある。
本発明は、上記のようなガイドワイヤの技術に関連してなされたものであり、その先端側の柔軟性を確保しつつ、術者が回転操作した際のトルク伝達性を向上することができ、これにより生体管腔内を一層良好に移動し得るガイドワイヤを提供することを目的とする。
前記の目的を達成するために、本発明は、シャフトと、前記シャフトの先端部に固定され、該シャフトの外側を囲うコイルと、を備えるガイドワイヤであって、前記コイルの内側に位置する前記シャフトの被包囲部には、平面を有する平板状に形成され、前記平面に被挿入部を有する平板部と、前記被挿入部に挿入され、前記コイルに向かって突出した線体と、が設けられることを特徴とする。
上記によれば、ガイドワイヤは、平板部及び被挿入部を有することで、ガイドワイヤの先端側は、平板部の形状に応じて容易に曲がることが可能な柔軟性を確保することができる。よって、術者は、ガイドワイヤの先端側を簡単に形状付けすることができる。またガイドワイヤは、生体管腔に沿って容易に弾性変形し、生体管腔を傷付けることなく移動することができる。さらに、ガイドワイヤは、シャフトの回転トルクを平板部から線体を介してコイルに伝達する構成となっている。これによりガイドワイヤは、術者が回転操作した際のトルク伝達性が高くなり、生体管腔内で先端側の向きを容易に変えて生体管腔内を一層良好に移動することができる。
この場合、前記平板部が湾曲した状態で、前記線体が前記コイルに接触するとよい。
このように、ガイドワイヤは、平板部が湾曲した状態で、線体がコイルに接触する構成であることで、ガイドワイヤの先端部を湾曲した際に、線体がコイルに接触して、その接触部分を通して回転トルクを確実に伝達することができる。
また、前記被挿入部は、前記平面上で前記シャフトの軸方向と交差する方向に複数設けられ、前記線体は、前記シャフトの軸方向に交差する方向に並ぶ前記被挿入部同士の間をアーチ状に配置されているとよい。
このように、線体がシャフトの軸方向に交差する方向に並ぶ被挿入部同士の間をアーチ状に配置されていることで、線体の径方向外側で螺回しているコイルに沿わせて線体をより確実に接触させることができる。そのため、ガイドワイヤのシャフトの回転トルクが線体からコイルに、より一層確実に伝達することが可能となる。
或いは、前記被挿入部は、前記平面上で前記シャフトの軸方向と交差する方向に1つ設けられ、前記線体は、前記被挿入部に配置され前記平面から突出していてもよい。
このように、ガイドワイヤは、被挿入部が1つ設けられて、この被挿入部から線体が突出していても、線体がコイルに接触することで、平板部の回転トルクを伝達することができる。
また、前記線体は、少なくとも前記平板部の一方面に突出していることが好ましい。
このように、線体が少なくとも平板部の一方面に突出していることで、線体がコイルの内側で180°位相がずれる位置に接触することになり、回転トルクをコイルに安定的に伝達することができる。
上記構成に加えて、前記被挿入部は、前記一方面と他方面を貫通する孔部であり、前記線体は、前記孔部に貫通配置されるとよい。
このように、線体が孔部に貫通配置される構成では、平板部の剛性を高めることが抑制される。よって術者は、平板部の形状付けを容易に行うことができる。
さらに、前記線体は、前記孔部を介して前記シャフトの中心軸を周回するリング部材であるとよい。
このように、線体がリング部材に構成されていることで、線体が平板部から脱落することが防止される。また、線体の周長をコイルの内径に対応するように設計することで、線体をコイルに確実に接触させることができる。さらに線体が平板部に対し径方向に移動することが抑えられ、コイルの外周面から外側に飛び出すことが抑制される。
またさらに、前記被挿入部及び前記線体は、前記シャフトの軸方向に沿って複数設けられていることが好ましい。
このように、被挿入部及び線体がシャフトの軸方向に沿って複数設けられていることで、複数の線体がコイルの軸方向にわたって回転トルクを伝達することができ、コイルをより容易に回転させることができる。
さらにまた、前記線体は、前記平板部の平面と前記線体のなす角度が、前記平面に対し70〜110°の角度であるとよい。
このように、線体が平面に対して70〜110°の角度で突出していることで、回転トルクを大きく損失せずに線体を回転させることができ、コイルにその回転トルクを良好に伝達することが可能となる。
そして、前記線体は、前記コイルを構成している素線よりも細く構成されていることが好ましい。
このように、線体がコイルの素線よりも細いことで、平板部に線体を設けても平板部の剛性を高めることが抑制される。また、ガイドワイヤの先端側の形状付け時に、線体同士の干渉が抑えられ、平板部を良好に曲げることができる。
本発明によれば、ガイドワイヤは、その先端側の柔軟性を確保しつつ、術者が回転操作した際のトルク伝達性を向上することができ、これにより生体管腔内を一層良好に移動することが可能となる。
本発明の一実施形態に係るガイドワイヤの全体構成を示す一部側面断面図である。 図2Aは、図1のガイドワイヤの先端部の側面断面図であり、図2Bは、図2Aのガイドワイヤの先端部の正面断面図である。 図3Aは、図1のガイドワイヤを形状付けした状態の一例を示す側面断面図であり、図3Bは、ガイドワイヤの回転操作時の動作を示す正面断面図である。 図4Aは、第1変形例に係るガイドワイヤの線体を示す正面断面図であり、図4Bは、第2変形例に係るガイドワイヤの線体を示す正面断面図である。
以下、本発明に係るガイドワイヤについて好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
本実施形態に係るガイドワイヤ10は、カテーテルや内視鏡等の医療デバイスを患者の生体管腔内に挿入及び送達する際に、生体管腔内を先行させて医療デバイスを案内するために使用される。生体管腔としては、例えば、血管、胆管、気管、食道、尿道、鼻腔、或いはその他の臓器等、種々の器官があげられる。
図1に示すように、ガイドワイヤ10は、シャフト12と、シャフト12の先端部に固定され、先端部から基端方向に延在してシャフト12の外側を囲うコイル14とを備える。ガイドワイヤ10の全長は、特に限定されないが、例えば200〜5000mm程度であるとよい。
以下では、ガイドワイヤ10の方向を示す場合に、図1に記載の方向指示を基準に述べるものとする。すなわち、図1中において、紙面手前及び奥方向をX方向(ガイドワイヤ10の幅方向)といい、紙面の左右方向をY方向(ガイドワイヤ10の軸方向)といい、上下方向をZ方向(ガイドワイヤ10の厚さ方向)という。なお、図1(図2〜図4Bも同様)では、ガイドワイヤ10は、理解の容易化のため、ガイドワイヤ10の軸方向を短縮し、ガイドワイヤ10の太さを誇張して図示している。
シャフト12は、可撓性を有する中実状の素線により構成される。このシャフト12は、ガイドワイヤ10の全長の大部分を構成する基部16と、基部16より先端寄りでコイル14に囲われる被包囲部18と、被包囲部18に連なりガイドワイヤ10の最先端を形成する先端チップ20(先端部)とを有する。シャフト12を構成する材料は、特に限定されず、例えば、ステンレス鋼、Ni−Ti系合金、Ni−Al系合金、Cu−Zn系合金等の超弾性合金等の種々の金属材料や、比較的高剛性の樹脂材料を適用することができる。
シャフト12は、その全長に渡って、例えばステンレス鋼等の単一の材料で構成することもできるが、異なる材料を組み合わせて形成することもできる。例えば、基部16の大部分をステンレス鋼のような比較的高剛性の材料で構成し、基部16の先端側及び、被包囲部18をNi−Ti系合金のようなステンレス鋼よりも剛性が低い材料で構成してもよい。これにより、ガイドワイヤ10は、優れた押し込み性やトルク伝達性を得て良好な操作性を確保しつつ、先端側においては良好な柔軟性、復元性を得て血管への追従性や安全性が向上する。
シャフト12の基部16は、断面円形状で充分に長く形成されることで、弾力的に撓むことが可能である。基部16の外径は、特に限定されないが、例えば、0.2〜1.2mm程度に設定されるとよい。基部16の外周面には、ガイドワイヤ10の移動性及び回転性の向上のため、摩擦力を低減する塗装(PTFEコーティング等)が施されていてもよい。また、生体管腔に対し非挿入予定の基部16の基端側外周面には、術者によるガイドワイヤ10の把持がし易くなるように、摩擦力を高める塗装(シリコンコーティング等)が施されていてもよい。
基部16の先端側は、先端方向に向かって若干先細りになっている。そして、被包囲部18に繋がる境界付近には、コイル14の基端に対向するコイル受け22が設けられている。このコイル受け22は、基部16の先細り部分の外周面から径方向外側に突出して、基部16の周方向を周回している。コイル受け22の先端面は、平坦状に形成され、コイル14の基端が安定的に接触可能となっている。コイル14は、コイル受け22に非固着状態(フリー状態)で接触してもよく、溶接や接着等の適宜の固着手段により固着されていてもよい。なお、ガイドワイヤ10は、コイル受け22を備えていなくてもよい。
一方、被包囲部18は、基部16の先端に連なり先端方向に向かって所定長さ延在する。この被包囲部18は、図1及び図2Aに示すように、基端から先端に向かって順に、丸棒部24、テーパ部26及び平板部28を有する。テーパ部26及び平板部28は、丸棒部24と同形状の線材をプレス等して所定形状に形成したものである。被包囲部18の全長は、ガイドワイヤ10の全長にもよるが、例えば、20〜500mm程度に設定される。
被包囲部18の丸棒部24は、ガイドワイヤ10の先端側を柔軟に構成するため、基部16よりも若干細く形成されている。この丸棒部24は、断面円形状に形成され、その外径を一定としたままコイル14(ガイドワイヤ10)の軸心に沿って直線状に延びている。つまり、丸棒部24の軸心とコイル14の軸心は同心円上に位置する。なお、丸棒部24の外径は、先端方向に向かって徐々に小径になるように形成されてもよい。これによりガイドワイヤ10の先端側は、物性を急に変えることなく一層柔軟に構成される。
被包囲部18のテーパ部26は、丸棒部24から平板部28に向かって形状を滑らかに移行させる部位である。詳細には、テーパ部26は、線材を一方向(図1中のZ方向)にプレスすることにより、丸棒部24から先端方向に向かって徐々に平らになりつつ、Z方向と直交するX方向に緩やかに広がっている。このテーパ部26は、Y方向に所定長さで形成されることにより、ガイドワイヤ10の剛性を緩やかに変化させる。
被包囲部18の平板部28は、丸棒部24よりもZ方向に薄い一方で、丸棒部24よりもX方向に幅広に形成されて、Y方向に所定長さで延びる部位である(図2A及び図2Bも参照)。つまり平板部28は、平面視で、Y方向に長軸を有する長方形状を呈している。
このため、平板部28は、X方向に湾曲し難い一方で、Z方向に湾曲し易くなっている。この平板部28は、ユーザの形状付けにより一対の平板面28a、28b(Z方向の両平面)が比較的小さな曲率で曲がっても塑性変形して、その湾曲状態を維持する。平板部28の寸法は、特に限定されないが、例えば、幅(X方向長さ)が0.05〜0.30mm程度、軸方向長さ(Y方向長さ)が2〜20mm程度、厚み(Z方向長さ)が0.01〜0.15mm程度に設定されるとよい。
また、平板部28には、一対の平板面28a、28bを貫通する複数の孔部30(被挿入部)が設けられている。複数の孔部30は、平板部28のX方向に一対で並び、且つY方向に沿って複数(図1及び図2A中では11個)直線状に並んでいる。すなわち、平板部28は、軸方向に11個並ぶ孔部30をX方向に2列有している。X方向の一対の孔部30は、平板部28の両側辺近くにそれぞれ位置し、平板部28の幅方向中央部を中実状としている。また、Y方向に並ぶ各孔部30は相互に等間隔に離間している。なお、図示例は、本発明の理解の容易化のため、平板部28及び孔部30を誇張して示しており、実際の孔部30は、平板部28の軸方向の短い範囲に少ない設置数で且つ小径に形成され得る。
孔部30の直径は、特に限定されないが、例えば、5〜40μmの範囲に設定されるとよく、より好適には、10〜20μmの範囲であるとよい。孔部30の直径が40μmよりも大きいと、平板部28の引張破断強度が低下する恐れがある。一方、孔部30の直径が5μmよりも小さいと、ガイドワイヤ10の製造過程において、後記の線体32を孔部30に挿入し難くなる。
そして、X方向に並ぶ一対の孔部30には、リング状に形成された1本の線体32(リング部材)が挿入される。この線体32は、平板部28の一対の平板面28a、28bからコイル14の内面に向かって接触可能に突出している。つまり図2Bに示すように、線体32は、正面断面視で、コイル14(X方向)に向かって突出する部分に長軸を有し、平板部28の挿通部分に短軸を有する楕円形状に形成されている。
なお、孔部30の内周面は、平板部28の軸心や一対の平板面28a、28bと直交する方向に平行な直線状に形成されている。従って、線体32は、孔部30によりその突出方向が規定されることになり、平板部28からコイル14に向かって突出することで、X方向且つZ方向に半楕円状(アーチ状)に配置した状態を呈する。
線体32は、孔部30に固着されずに貫通配置されることで、平板部28の剛性の上昇を抑制している。線体32は、一対の孔部30の挿入状態で、コイル14の形状に合わせてZ方向に比較的容易に変位し、コイル14の内側に接触する。なお、線体32は、溶接や接着等の適宜の固着手段により平板部28に固定されてもよい。
線体32の外径は、孔部30の直径にもよるが、孔部30の直径に対して80%以下に設定されるとよく、これにより線体32を孔部30に容易に挿入することができる。また、線体32は、細く形成されることで、Y方向に隣り合う線体32同士の接触が回避され、平板部28の湾曲を容易に実施可能とする。例えば、孔部30の直径が20μmである場合は、線体32の外径を16μm以下に設定するとよく、より好ましくは10μm以下であるとよい。また、線体32は、その材質にもよるが、剛性を失わない太さを有していることも重要であり、例えば5μm以上に形成されるとよい。
線体32は、平板部28の軸方向に並ぶ一対の孔部30の位置に応じて、等間隔に設けられ、それぞれ対向するコイル14の内面に接触可能となっている。そして、コイル14の接触状態で、線体32は、コイル14に摩擦力を付与することができる。より具体的には、図2Bに示すように、線体32の長軸側の突出頂部32aは、コイル14の内面の所定範囲に線接触又は点接触する。これにより、線体32は、シャフト12に回転トルクが伝えられた際に、平板部28が回転すると、線体32も一緒に回転して、突出頂部32aがその回転力をコイル14に伝達する。
線体32を構成する材料は、特に限定されるものではないが、例えば、ステンレス(SUS304,SUS316等)、Ni−Ti系合金等の超弾性金属材料、或いは比較的高い剛性を有する樹脂材料を適用するとよい。線体32の外周面には、コイル14との摩擦力を増やすため、表面処理が施されていてもよく、摩擦力を高める塗装(コーティング)がなされていてもよい。
図2Aに示すように、平板部28の一対の平板面28a、28bに対する線体32の突出角度θは、側面断面視で、70〜110°の範囲であることが好ましく、より好適には90°前後であるとよい。このように突出角度θが70〜110°の範囲であると、平板部28が回転した際に線体32からコイル14に回転トルクを良好に伝達することができる。
また、線体32は、リング状ではなく半円状(円弧状)に形成されて、平板部28の一対の平板面28a、28bから突出する構成でもよい。この場合、線体32は、平板部28の両面にそれぞれ形成されることが好ましいが、一方のみ(例えば、平板面28a)に設けられていてもよい。さらに、線体32は、中実状に形成されるだけでなく、中空状に形成されてもよい。
さらに、軸方向に並ぶ複数の線体32は、平板部28からの突出量、換言すれば各線体32の周長がそれぞれ異なっていてもよい。またさらに、軸方向に隣接し合う各線体32同士の間隔は、コイル14を構成する素線の間隔に対応しているとよい。例えば、コイル14の素線が1周回る間に線体32が1つ設けられ、軸方向に隣接する各素線に対向して突出していることで、線体32とコイル14の接触状態を良好に形成することができる。なお、複数の線体32(一対の孔部30)は、平板部28の軸方向に沿って相互の間隔が異ってもよい。例えば、平板部28は、先端方向に向かって孔部30の間隔を接近させることで、ガイドワイヤ10を先端方向に向かって徐々に柔軟にすることができる。
一方、被包囲部18(平板部28)の先端に連なる先端チップ20は、半球状を呈し、基端面が平坦状に形成されている。平板部28は、この先端チップ20の基端面の中心部に溶接や半田付け等により連結固定される。また、先端チップ20の基端面の径方向外側寄りにはコイル14の先端が連結固定されている。先端チップ20は、平板部28やコイル14を埋め込むように溶着することで、部材同士を強固に一体化させる。
コイル14は、シャフト12の先端側の柔軟性を保障しつつ、生体管腔内を安定的に進行可能とするために設けられ、先端チップ20から螺回しながら基端方向に延びコイル受け22に至っている。コイル14は、ガイドワイヤ10の先端側が直線状に延びている状態で、各素線が隙間なく密に配置されて、被包囲部18を概ね非露出状態とする。このコイル14の内側には、中空部14aが軸方向に貫通している。被包囲部18は、直線状態で、その軸心が中空部14a(コイル14)の軸心と同軸上に配置されている。コイル14の内径(中空部14aの直径)は、例えば、0.1〜0.3mm程度であるとよい。
また、コイル14を構成する素線は、線体32より充分に太く形成されることが好ましく、線体32の外径よりも2倍以上の外径を有しているとよい。コイル14の素線の外径は、例えば、0.01〜0.10mm程度であるとよい。なお、本実施形態の場合、コイル14は、素線の断面が円形のものを用いているが、これに限らず、素線の断面が例えば楕円形、四角形(特に長方形)等であってもよい。
コイル14を構成する金属材料としては、例えば、ステンレス鋼、Ni−Ti系合金のような超弾性合金、形状記憶合金、コバルト系合金、金、白金のような貴金属、タングステン系合金等があげられる。特に、貴金属、タングステン系合金のようなX線不透過材料を用いることにより、ガイドワイヤ10はX線造影性が付与され、X線透視下で先端部の位置を確認しつつ生体内に挿入することが可能となる。
本実施形態に係るガイドワイヤ10は基本的には、以上のように構成されるものであり、以下、その作用効果について説明する。
ガイドワイヤ10は、直線状に延在した状態で提供されるが、上述したように、患者の生体管腔に挿入する前に、術者によりガイドワイヤ10の先端側を所望の形状に変形する形状付けがなされる。ガイドワイヤ10の先端側は、内部に平板部28を有していることから、形状付けにおいて、基部16の軸線から離れるZ方向(一対の平板面28a、28bが臨む方向)に曲がることを許容する一方で、X方向(幅方向)に曲がることを抑制する。
また、形状付け時に、コイル14は、軸方向又は径方向に弾性的に移動することで、ガイドワイヤ10の先端側が曲げ難くなることを回避する。さらに、平板部28の軸方向に並設された複数の孔部30は、平板部28を軸方向に柔軟にして平板部28を曲げ易くしている。これに加えて、孔部30から突出する複数の線体32は、細く形成され、且つ軸方向に間隔をおいて設けられていることで、平板部28の曲げを邪魔することを抑制する。そのため、平板部28は、充分な柔軟性を有することになり、術者の曲げ操作力に応じて容易に塑性変形して、その湾曲形状を良好に維持することができる。
そして、上記の形状付け状態で、コイル14は、曲げ方向内側の素線が密に接して、曲げ方向外側の素線が疎になる。この状態では、曲げ方向内側のコイル14の素線に対向する線体32の突出頂部32aが、コイル14の素線の内側に確実に接触した状態を構築する。また、曲げ方向外側のコイル14の素線に対向する突出頂部32aも、大部分がコイル14の素線に接触する。
ガイドワイヤ10は、上記のとおり形状付けされた状態で、術者により血管(生体管腔)内に挿入される。術者は、ガイドワイヤ10の進出操作において、血管が蛇行や分岐している部分において向きを変えるため、ガイドワイヤ10の基部16を回転操作する。この回転トルクは、基部16から丸棒部24、テーパ部26を介して平板部28に伝達され、平板部28をガイドワイヤ10の軸心回りに回転させる。さらに平板部28の先端に連結されている先端チップ20も回転して、この先端チップ20に連結されているコイル14も回転する。
ここで、仮に平板部28に線体32が設けられていないガイドワイヤは、径方向外側のコイル14を回転するために、先端チップ20及び平板部28から回転トルクが伝達される必要がある。しかしながら、血管が屈曲している、細くなっている等の状況下では、コイル14に対して大きな抵抗がかかることで、コイル14が回転し難くなって、コイル14内を延びる平板部28に多大な応力がかかる。そして場合によっては、平板部28が捻れてしまい、シャフト12の回転トルクがコイル14に充分に伝わらないおそれがある。また、所望の湾曲形状に形状付けしたガイドワイヤの先端側が、塑性変形を起こして湾曲形状を変える可能性もある。
これに対し、本実施形態に係るガイドワイヤ10は、図3Bに示すように、平板部28が回転すると、平板部28から突出している線体32も軸心回りに回転する。そして、線体32がコイル14の素線に接触(干渉)していることで、平板部28の回転トルクが線体32を介してコイル14にも伝達される。このため、コイル14は、血管から抵抗を受けても、スムーズに回転して平板部28の捻れを抑制することができ、形状付けしたガイドワイヤ10の先端側の向きを容易に変えることができる。
以上のように、本実施形態に係るガイドワイヤ10の先端側は、平板部28及び孔部30を有することで、平板部28の形状に応じて容易に曲がることが可能な柔軟性を確保することができる。よって、術者は、ガイドワイヤ10の先端側を簡単に形状付けすることができる。またガイドワイヤ10は、生体管腔の送達時に、容易に弾性変形して、血管を傷付けることなく移動する。さらに、ガイドワイヤ10は、シャフト12の回転トルクを平板部28から線体32を介してコイル14に伝達する。従って、ガイドワイヤ10は、術者が回転操作した際のトルク伝達性が向上して、生体管腔から抵抗を受けても先端側の向きを容易に変えることができ、血管内を一層良好に移動することができる。
この場合、線体32がシャフト12のX方向に並ぶ孔部30同士の間をアーチ状に配置されていることで、線体32の径方向外側で螺回しているコイル14に沿わせて線体32を確実に接触させることができる。そのため、シャフト12の回転トルクを線体32からコイル14に一層確実に伝達することが可能となる。また、線体32が一対の平板面28a、28bから突出していることで、線体32の突出頂部32aがコイル14の内側で180°位相がずれる位置に接触することになり、回転トルクをコイル14に安定的に伝達することができる。
そして、線体32が孔部30に貫通配置されることで平板部28の柔軟性が低下することを抑制することができる。さらに、線体32がリング部材に構成されていることで、線体32が平板部28から脱落することが防止される。また、線体32の周長をコイル14の内径に対応するように設計することで、線体32をコイル14に確実に接触させることができる。さらに線体32が平板部28に対し径方向に移動することが抑えられ、コイル14の外周面から外側に飛び出すことが抑制される。
またさらに、孔部30及び線体32がシャフト12の軸方向に沿って複数設けられていることで、複数の線体32がコイル14の軸方向にわたって回転トルクを伝達することができ、コイル14をより容易に回転させることができる。また、線体32が一対の平板面28a、28bに対して70〜110°の角度で突出しているため、回転トルクを大きく損失せずに線体32を回転させることができ、コイル14にその回転トルクを良好に伝達することが可能となる。
なお、本実施形態に係るガイドワイヤ10は、上記の構成に限定されるものではなく、種々の変形例や応用例をとり得る。例えば、線体32の形状は、特に限定されるものではなく、1本の線体32が螺旋状に形成されて各孔部30を挿通していてもよい。線体32を螺旋状に構成する場合、線体32はコイル14の巻方向と逆の巻方向に構成することが好ましく、これによりコイル14の素線の間に線体32が挟まれてコイル14が硬くなることを抑制することができる。
また、平板部28に線体32を配置する構成は、孔部30に限定されず種々の手段を取り得る。例えば、線体32が円弧状であれば、平板部28に設けられる被挿入部は、孔部30の代わりに、凹みで構成してもよく、被挿入部を備えずに平板面28a、28bに半田付け等してもよい。
図4Aに示す第1変形例に係るガイドワイヤ10Aは、線体34が平板部28の一対の平板面28a、28bと直交する方向に突出する直線状の棒に形成されている点で、ガイドワイヤ10とは異なる。例えば、線体34は、平板部28の幅方向に一対設けられ、平板部28の軸方向に複数並設される。また、線体34は、平板部28の孔部30に挿入され、溶接等により平板部28に固着されている。線体34の突出端部34aは、コイル14の素線に接触可能な位置まで突出しており、コイル14への接触により平板部28の回転トルクを伝達させる。線体34の突出端部34aは、コイル14との摩擦を大きくするため、種々の構成(膨出形状に形成される、コーティングが施される等)を採用してよい。
また、ガイドワイヤ10Aは、平板部28に孔部30(連通部)を1つだけ設けて、棒状の線体34が一対の平板面28a、28bのいずれか一方又は両方から突出しているだけでもよい。この構成でも、線体34がコイル14に接触することで、平板部28の回転トルクをコイル14に伝達することができる。この場合、線体34は、本実施形態の線体32よりも太く形成される、又は突出端部34aが大径の頭部に形成される等、コイル14により確実に接触可能な形状であるとよい。要するに、平板部28に設けられる線体34の数は、特に限定されず、平板部28に1以上設けられればよい。
図4Bに示す第2変形例に係るガイドワイヤ10Bは、線体36が正面視で四角形状のリング部材に形成されている点で、ガイドワイヤ10と異なる。このように線体36が四角形状のリング部材に構成されていても、線体36とコイル14を接触させることで、回転トルクをコイル14に伝達することができる。要するに、平板部28に設けられる線体32、34、36は、特に限定されるものではなく、様々な形状をとることが可能である。例えば、線体は、コイル14の螺回形状に沿うように形成及び配置されることで、コイル14の素線に沿って線接触するように構成することもできる。これにより、平板部28の回転トルクをより一層良好に伝達することが可能となる。
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能なことは言うまでもない。
10、10A、10B…ガイドワイヤ 12…シャフト
14…コイル 18…被包囲部
20…先端チップ 28…平板部
28a、28b…平板面 30…孔部
32、34、36…線体

Claims (10)

  1. シャフトと、
    前記シャフトの先端部に固定され、該シャフトの外側を囲うコイルと、を備えるガイドワイヤであって、
    前記コイルの内側に位置する前記シャフトの被包囲部には、
    平面を有する平板状に形成され、前記平面に被挿入部を有する平板部と、
    前記被挿入部に挿入され、前記コイルに向かって突出した線体と、が設けられる
    ことを特徴とするガイドワイヤ。
  2. 請求項1記載のガイドワイヤにおいて、
    前記平板部が湾曲した状態で、前記線体が前記コイルに接触する
    ことを特徴とするガイドワイヤ。
  3. 請求項1又は2記載のガイドワイヤにおいて、
    前記被挿入部は、前記平面上で前記シャフトの軸方向と交差する方向に複数設けられ、
    前記線体は、前記シャフトの軸方向に交差する方向に並ぶ前記被挿入部同士の間をアーチ状に配置されている
    ことを特徴とするガイドワイヤ。
  4. 請求項1又は2記載のガイドワイヤにおいて、
    前記被挿入部は、前記平面上で前記シャフトの軸方向と交差する方向に1つ設けられ、
    前記線体は、前記被挿入部に配置され前記平面から突出している
    ことを特徴とするガイドワイヤ。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のガイドワイヤにおいて、
    前記線体は、少なくとも前記平板部の一方面に突出している
    ことを特徴とするガイドワイヤ。
  6. 請求項5記載のガイドワイヤにおいて、
    前記被挿入部は、前記一方面と他方面を貫通する孔部であり、
    前記線体は、前記孔部に貫通配置される
    ことを特徴とするガイドワイヤ。
  7. 請求項6記載のガイドワイヤにおいて、
    前記線体は、前記孔部を介して前記シャフトの中心軸を周回するリング部材である
    ことを特徴とするガイドワイヤ。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載のガイドワイヤにおいて、
    前記被挿入部及び前記線体は、前記シャフトの軸方向に沿って複数設けられている
    ことを特徴とするガイドワイヤ。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載のガイドワイヤにおいて、
    前記線体は、前記平板部の平面と前記線体のなす角度が、前記平面に対し70〜110°の角度である
    ことを特徴とするガイドワイヤ。
  10. 請求項1〜9のいずれか1項に記載のガイドワイヤにおいて、
    前記線体は、前記コイルを構成している素線よりも細い
    ことを特徴とするガイドワイヤ。
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