JP6311794B2 - 有機el表示装置の製造方法および有機el表示装置 - Google Patents

有機el表示装置の製造方法および有機el表示装置 Download PDF

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Description

本発明は、有機EL表示装置の製造方法及び有機EL表示装置に関する。
近年、発光型の表示装置として、基板上に複数の有機EL素子をマトリックス状に配列した有機EL表示パネルが実用化されている。この有機EL表示パネルは、各有機EL素子が自己発光を行うので視認性が高く、完全固体素子であるため耐衝撃性に優れる。
有機EL表示パネルにおいて、各有機EL素子は、陽極と陰極の一対の電極対の間に有機発光材料を含む発光層が配設された基本構造を有し、駆動時には、一対の電極対間に電圧を印加し、陽極から発光層に注入されるホールと、陰極から発光層に注入される電子との再結合に伴って発生する電流駆動型の発光素子である。
有機EL表示パネルにおいて、一般に各有機EL素子の発光層と、隣接する有機EL素子の発光層とは、絶縁材料からなるバンクで仕切られている。
また、陽極と発光層との間には、ホール注入層、ホール輸送層、ホール注入兼輸送層といった有機層が必要に応じて介挿され、陰極と発光層との間にも、必要に応じて電子注入層、電子輸送層または電子注入兼輸送層が介挿されている。
これらの発光層をはじめとするホール注入層、ホール輸送層、ホール注入兼輸送層、電子注入層、電子輸送層または電子注入兼輸送層は、機能層といわれる。
フルカラー表示の有機EL表示パネルにおいては、このような有機EL素子が、RGB各色のサブピクセルを形成し、隣り合うRGBのサブピクセルが合わさって一画素が形成されている。
このような有機EL表示パネルを製造する上で、基板上にバンクを形成しておいて、バンクで区画された凹空間に発光層などの有機機能層を形成する工程がある。この有機機能層の形成には、高分子材料や薄膜形成性の良い低分子を含むインクを、インクジェット法等で凹空間に塗布するウェット方式が多く用いられている。このウェット方式によれば、大型のパネルにおいても有機機能層を比較的容易に形成することができる。
国際公開WO2010/013654号
上記のような有機EL表示パネルにおいて、製造過程においてバンクに部分的な決壊が生じていたり、異物が付着したりして欠陥部が発生すると、発光層を形成するときに、その欠陥部が存在するバンクを挟んで塗布される異なる色のインク同士が欠陥部を介して混合され混色が生じることがある。
その混色が生じたパネルを用いて製造した有機EL表示装置においては、混色が生じた範囲での発光色が本来の色と異なり、表示不良となることがある。
そこで、欠陥が生じたバンクを補修することによって、表示パネルにおける表示不良の発生を抑える技術が求められる。
本発明は、上記課題に鑑み、有機EL表示装置の製造過程において、バンクに決壊や異物による欠陥部が発生したときにも、表示不良の発生を抑えることのできる有機EL表示装置の製造方法、及び有機EL表示装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の一態様にかかる有機EL表示装置の製造方法は、基板上方にバンクを形成し、当該バンクで区画された凹空間のそれぞれに、有機機能層を形成することによって有機EL表示装置を製造する方法であって、基板上方に形成したバンクにおける欠陥部を検出し、欠陥部が検出された場合に、バンクにおける当該欠陥部が存在する部分の両側に隣接する凹空間の各々の中に、凹空間を、欠陥部に近接する空間部分からなる第1空間と、欠陥部に近接しない空間部分からなる第2空間とに仕切る1以上の堰を形成し、その後、各凹空間に、ノズルヘッドから凹空間のそれぞれにインクを吐出することによって有機機能層を形成し、有機機能層を形成する際に、第1空間及び第2空間のそれぞれに、ノズルヘッドから吐出するインクの着弾点を存在させることとした。
上記態様の有機EL表示装置の製造方法で有機EL表示装置を製造すると、インク層が欠陥部を介して混合されて混色する範囲が、欠陥部に近接する第1空間に制限される。よって、有機EL表示装置における表示不良を抑えることができる。
また、有機機能層を形成する際に、第1空間及び第2空間のそれぞれに、ノズルヘッドから吐出されるインクの着弾点を存在させているので、第1空間及び第2空間のそれぞれに、有機機能層を形成するインクが塗布される。
従って、製造された有機EL表示装置は、発光不良が抑えられ、良好な表示性能が得られる。
有機EL表示装置の構成例を示す模式ブロック図である。 表示パネルの部分平面図である。 表示パネルを図2のA−A'線で切断した一部拡大断面図である。 表示パネルの製造過程を示す模式工程図である。 表示パネルの製造工程の一部を模式的に示す断面図である。 (a)は、バンクに生じる欠陥部の一例を示す斜視図、(b)は、実施の形態1にかかる堰が欠陥部の周囲に形成されている様子を示す斜視図である。 (a)は、異物によってバンクに生じた欠陥部の別の例を示す模式斜視図であり、(b)は、異物によってバンクに生じた欠陥部のさらに別の例を示す模式斜視図であり、(c)は決壊によってバンクに生じた欠陥部の一例を示す模式斜視図である。 バンク欠陥部の検出と補修に用いる補修装置の一例を示す概略構成図である。 補修装置が欠陥部を検出する動作の一例を示すフローチャートである。 補修装置が行う堰形成工程の動作の一例を示すフローチャートである。 (a)は、欠陥部の周辺の画像において設定された補修材料の塗布位置を示す図である。(b)は、点A1を通る堰形成ラインに沿った模式断面図である。 (a)〜(g)は、補修材を塗布することによって、堰が形成される様子を示す図である。(a)は、補修材料を塗布する前の状態のタンク及びニードルの状態を示す模式断面図である。(b)は、ニードルに付着した補修材を塗布点P1に塗布した状態を示す模式断面図である。(c)は、ニードルを上方に移動させている途中の状態を示す模式断面図である。(d)は、ニードルを上方に移動させた状態を示す模式断面図である。(e)は、ニードル及びタンクを移動させて塗布点P2に補修材を塗布した状態を示す模式断面図である。(f)は、塗布点P1に塗布された補修材と塗布点P2に塗布された補修材とがつながった状態を示す模式断面図である。(g)は、ニードルを上方に移動させた状態を示す模式断面図である。 発光層形成工程で使うインクジェット装置の構成を示す図である。 インクジェット装置の機能ブロック図である。 (a)は、発光層形成工程で、欠陥部近くの凹空間にインクを着弾させる様子を示す模式平面図であり、(b)は、(a)の一部拡大模式平面図である。 実施の形態1にかかる堰の形成による効果を示す図であって、(a)は、堰が形成されている場合の模式平面図であり、(b)は堰が形成されていない比較例を示す模式平面図である。 図16(a)におけるC−C線の断面図である。 (a)は、堰部の一部が横バンク上に形成された、実施の形態1の変形例にかかる堰の形成形態を示す模式平面図であり、(b)は、堰部の全部が横バンク上に形成された、実施の形態1の別の変形例にかかる堰の形成形態を示す模式平面図である。 (a)は実施の形態2にかかる堰の形状を示す斜視図であり、(b)は凹空間に堰を形成した後、インク層を形成した状態を示す模式平面図であり、(c)は、堰5を形成した凹空間に対するインクの着弾点を示す模式平面図である。 (a)は実施の形態3にかかる堰の形状を示す模式斜視図、(b)は凹空間に堰を形成した後インク層を形成した状態の模式平面図、(c)は、堰5を形成した凹空間に対するインクの着弾点を示す模式平面図である。 実施の形態4において、凹空間に堰を形成した後、インクを塗布するときにノズルヘッドの位置調整をする様子を示す模式平面図であり、(a)は、ノズルヘッドのY方向の位置を標準位置に設定した場合の模式平面図であり、(b)は、ノズルヘッドのY方向の位置を調整した後の状態を示す模式平面図である。 インクジェット装置300でインクを塗布する工程の一具体例を示すフローチャートである。 ピクセルバンクを有する表示パネルにおいて、ピクセルバンクに生じた欠陥部を堰で補修する場合の変形例を示す模式平面図であって、(a)は、実施の形態1と同様の形状の堰が形成された変形例を示す模式平面図であり、(b)は、実施の形態2と同様の形状の堰が形成された変形例示す模式平面図であり、(c)は、欠陥部の位置が横バンクに近い場合の変形例を示す模式平面図であり、(d)は、欠陥部の位置が、縦バンクと横バンクが交差する位置である場合の変形例を示す模式平面図である。
<発明に到った経緯>
フラットディスプレイ基板の製造技術において、例えば、特許文献1には、隔壁を形成後、インク塗布前に、隔壁における決壊箇所の周囲の一部を除去し、除去した箇所に撥インク性のポリマーからなる隔壁修正液を塗布して、決壊箇所を修復する技術が開示されている。
バンクが部分的に決壊している場合は、このような技術を用いて決壊部分の修復をし、修復後にインクを塗布すれば、互いに異なるインクの混合を防止することができると考えられる。
しかし、バンクの欠陥部には、決壊だけでなく、異物が付着することによって生じる欠陥部もある。そして、上記従来技術のようにポリマーを塗布する方法では、異物に起因する欠陥部を補修することは難しい場合があると考えられる。例えば、バンクに付着した異物にポリマー液を塗布しようとすると、異物がポリマー液をはじいて、うまく補修できないこともある。
また、本願発明者の考察によると、現状の有機EL表示装置においてもバンクの幅は10μm以下とかなり狭く、今後、画素の高精細化が進むにつれてバンクの幅がさらに狭くなることが予想されることから、バンクの決壊箇所に塗布針を位置合わせして補修するのも、技術的な難しさがある。
このような考察のもとに、特に高精細のEL表示装置において、バンクに生じた欠陥部を容易に補修することができ、且つ、表示不良を抑えることのできる方法を検討した。
そして、バンクの欠陥部自体を補修しなくても、欠陥部の周辺の凹空間の中に堰を設けることによって、異なるインク同士が混ざり合う領域が広がるのを抑えることができ、発光色不良(表示不良)の問題を解決できることを見出した。
さらに、EL表示装置において、有機発光層を含む有機機能層は、1対の電極で挟まれ、その電極間に電圧が印加されることによって発光するが、上記のように凹空間に堰を形成して第1空間と第2空間とに仕切ったときに、例えば、第1空間に機能層が形成されないと(所謂、未濡れが生じると)、製造された有機EL表示装置においては、その箇所で発光不良が生じることがある。
従って、このインクの未濡れによる発光不良もなくすことも考慮して、本発明を案出するに至った。
<発明の態様>
本発明の一態様にかかる有機EL表示装置の製造方法は、基板上方にバンクを形成し、当該バンクで区画された凹空間のそれぞれに、有機機能層を形成することによって有機EL表示装置を製造する方法であって、基板上方に形成されたバンクにおける欠陥部を検出し、欠陥部が検出された場合に、バンクにおける当該欠陥部が存在する部分の両側に隣接する凹空間の各々の中に、凹空間を、欠陥部に近接する空間部分からなる第1空間と、欠陥部に近接しない空間部分からなる第2空間とに仕切る堰を形成し、その後、各凹空間に、ノズルヘッドから凹空間のそれぞれにインクを吐出することによって有機機能層を形成し、有機機能層を形成する際に、第1空間及び第2空間のそれぞれに、ノズルヘッドから吐出されるインクの着弾点を存在させることとした。
それによって、凹空間の各々にインクを塗布して有機機能層を形成するときに、凹空間の中に形成される堰によって、インク層が仕切られるので、インクの混ざり合う範囲が、欠陥部に近接しない第2空間に広がることがない。従って、有機EL表示装置における表示不良を抑えることができる。
また、欠陥部の周囲に堰を形成する方法でバンクを補修しているので、欠陥部が異物に起因する場合でも、比較的容易に堰を形成してバンクを補修できる。
さらに、第1空間及び第2空間のそれぞれに、有機機能層を形成するインクが塗布されるので、製造された有機EL表示装置は、有機機能層を形成するインクの未濡れに起因する発光不良が抑えられ、良好な表示性能が得られる。
なお、ここでいう「堰」は、表示装置の表示領域全体に形成されるバンクとは別に、欠陥部の周辺に形成されるものであって、バンクのように表示装置の表示領域全体に形成されるものではない。従って、例えば縦バンクとこれに直交する横バンクが形成されている場合においては、横バンクは「堰」には該当せず、堰は横バンクとは別に形成される。
また、縦バンクや横バンクは一般に、ピクセルあるいはサブピクセル同士を区画する境界位置に形成されるが、「堰」は、ピクセルやサブピクセルの領域内に形成されることもある。
上記有機EL表示装置の製造方法において、以下のようにしてもよい。
基板上方に、基板面に沿った一方向に伸長する縦バンクを複数本並列に配列し、有機機能層を形成する際に、縦バンクで区画された各凹空間において、一方向に伸長する1本以上の着弾ラインに沿って複数の着弾点を点在させる場合、堰を形成した凹空間において、1本以上の着弾ラインのいずれかが第1空間を横断する長さが、当該着弾ライン上の着弾点のピッチよりも長くなるように、堰の形状を設定する。
そうすれば、有機機能層を形成するときに、第1空間にインクの着弾点が存在することになる。
基板上方に、基板面に沿って長尺な横バンクを複数本並列に配列し、横バンクよりも高さが高く、横バンクと交差し、基板面に沿った一方向に伸長する縦バンクを複数本並列に配列し、少なくとも1つの堰のいずれかが隣接する横バンクとの間に間隙を開けて形成する場合、有機機能層を形成する際に、この間隙にもノズルヘッドから吐出するインクの着弾点を存在させることが好ましい。
そのために、有機機能層を形成する際に、縦バンクで区画された各凹空間において、一方向に伸長する1本以上の着弾ラインに沿って複数の着弾点を点在させる場合、堰を形成した凹空間において、着弾ラインのいずれかが間隙を横断する長さを、堰に隣接する横バンクと当該横バンクに最も近い着弾点との距離よりも長く設定すればよい。
基板上方に、基板面に沿った一方向に伸長する縦バンクを複数本並列に配列し、堰を形成する際に、欠陥部が存在する縦バンクの両側に隣接する凹空間の各々に、欠陥部が存在する縦バンクにおいて欠陥部を一方向に挟む2点のそれぞれから、欠陥部が存在する縦バンクの隣の縦バンクに亘る形状の堰を、対で形成してもよい。
ここで、有機機能層を形成する際に、縦バンクで区画された各凹空間において、一方向に伸長する1本以上の着弾ラインに沿って複数の着弾点を点在させる場合、堰の対と交差するいずれかの着弾ライン上において、対をなす堰同士の間隔を、着弾点のピッチよりも長く設定すればよい。そうすれば、有機機能層を形成するときに、第1空間にインクの着弾点が存在する。
基板上方に、基板面に沿った一方向に伸長する縦バンクを複数本並列に配列し、堰を形成する際に、欠陥部が存在する縦バンクにおいて欠陥部を一方向に挟む2点の一方から欠陥部を迂回して他方に亘る形状の堰を形成してもよい。
ここで、有機機能層を形成する際に、縦バンクで区画された各凹空間において、一方向に伸長する1本以上の着弾ラインに沿って複数の着弾点を点在させる場合、堰と2か所で交差するいずれかの着弾ライン上において、2か所の堰部分同士の間隔を、着弾点のピッチよりも長く設定すればよい。そうすれば、有機機能層を形成するときに、第1空間に着弾点が存在することになる。
堰の各々は、上記2点の一方から他方に亘る途中で、欠陥部が存在する縦バンクに隣接する縦バンクと接していてもよいし、欠陥部が存在する縦バンクに隣接する縦バンクに非接触であってもよい。
非接触の場合は、堰を形成した凹空間において、1以上の着弾ラインのいずれかと、欠陥部が存在する縦バンクとの間隔を、堰における欠陥部が存在する縦バンクから最も離間している箇所の離間距離よりも小さく設定する。
基板上方に、基板面に沿った一方向に伸長する縦バンクを複数本並列に配列し、縦バンクで区画された各凹空間に、縦バンクよりも高さの低い複数の横バンクを列設した場合、堰は、その少なくとも一部を横バンクの上に重ねて形成してもよい。
それによって、堰の根元部分の近傍には横バンクが存在するので、堰の根元部分近傍でインクの未濡れが生じたとしても、製造された有機EL装置において堰の根元部分近傍に電流リークが生じるのを防止できる。
有機機能層を形成する際に、ノズルヘッドを基板に沿って走査しながらノズルヘッドからインクを吐出することによって凹空間へのインクの塗布を行い、基板に沿って走査方向と直交する方向にノズルヘッドの位置を調整することによって、第1空間及び第2空間のそれぞれに、ノズルヘッドから吐出するインクの着弾点を存在させることもできる。
有機機能層には、基本的に有機発光層が含まれるが、その他の層、例えば、ホール注入層、ホール輸送層、電子輸送層、電子注入層などが含まれることもある。
本発明の一態様にかかる有機EL表示装置は、基板と、基板上方に形成されたバンクと、バンクによって区画された各凹空間に形成された有機機能層と、を有する有機EL表示装置であって、基板上方のバンクにおいて欠陥部が存在する部分の両側に隣接する凹空間の各々の中に、発光層を、欠陥部に近接する部分からなる第1有機機能層と、欠陥部に近接しない部分からなる第2有機機能層とに仕切る少なくとも1つの堰を形成した。
このような有機EL表示装置によれば、凹空間の各々に有機機能層を形成するときに、凹空間の中に形成されている堰によってインク層が仕切られるので、有機機能層にインクの混色が生じる範囲が、欠陥部に近接する第1有機機能層に限られ、欠陥部に近接しない第2有機機能層には広がらない。
また、堰で仕切られた凹空間の一方に第1有機機能層、他方に第2有機機能層が形成されているので、この有機EL表示装置は、インクの未濡れに起因する発光不良も抑えられ、良好な表示性能を有する。
<実施の形態1>
[有機EL表示装置の全体構成]
図1は、実施形態1に係る表示パネル100を有する有機EL表示装置1の構成を示す模式ブロック図である。
図1に示すように、有機EL表示装置1は、表示パネル100と、これに接続された駆動制御部101とを有している。表示パネル100は、有機材料の電界発光現象を利用したパネルであり、図2に示すように、複数の発光素子(有機EL素子)10が基板上にマトリクス状に配列されている。駆動制御部101は、4つの駆動回路102〜105と制御回路106とから構成されている。
なお、表示パネル100に対する駆動制御部101の配置などは、これに限られない。
[有機EL表示パネルの構成]
図2は、表示パネル100の表示面側から見た概略構成を模式的に示す平面図である。図3は、表示パネル100を図2のA−A'線で切断した一部拡大断面図である。表示パネル100は、いわゆるトップエミッション型であって、Z方向側が表示面となっている。
表示パネル100の構成について、図2,3を参照しながら説明する。
図3に示すように、表示パネル100は、その主な構成として、下地基板11、画素電極12、ホール注入層13、縦バンク14、有機発光層15、電子輸送層16、共通電極17、封止層18を備える。
ホール注入層13、有機発光層15、電子輸送層16が、機能層に相当し、画素電極12と共通電極17によって、機能層が挟まれた構造となっている。
そして、赤(R),緑(G),青(B)の何れかの発光色に対応する有機発光層15を有する発光素子10R,10G,10Bをサブピクセルとし、図2に示すように、サブピクセルがマトリクス状に配設されている。
なお、図2においては、電子輸送層16、共通電極17、封止層18を取り除いた状態を示している。
[下地基板]
下地基板11は、基板本体部11a、TFT(薄膜トランジスタ)層11b、層間絶縁層11cを有する。
基板本体部11aは、表示パネル100の基材となる部分であり、例えば、無アルカリガラス、ソーダガラス、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル樹脂、アルミナ等の絶縁性材料のいずれかで形成することができる。
TFT層11bは、基板本体部11aの表面にサブピクセル毎に設けられており、各々には薄膜トランジスタ素子を含む画素回路が形成されている。
層間絶縁層11cは、TFT層11b上に形成されている。層間絶縁層11cは、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、ノボラック型フェノール樹脂等の有機絶縁材料、SiO(酸化シリコン)やSiN(窒化シリコン)等の無機絶縁材料からなり、TFT層11bと画素電極12との間の電気的絶縁性を確保すると共に、TFT層11bの上面に段差が存在してもそれを平坦化して、画素電極12を形成する下地面への影響を抑える機能を持つ。
[画素電極]
画素電極12は、下地基板11上に、サブピクセル毎に個別に設けられた画素電極であり、例えば、Ag(銀)、Al(アルミニウム)、アルミニウム合金、Mo(モリブデン)、APC(銀、パラジウム、銅の合金)等の光反射性導電材料からなる。本実施形態において、画素電極12は、陽極である。
なお、画素電極12の表面にさらに公知の透明導電膜を設けてもよい。透明導電膜の材料としては、例えば酸化インジウムスズ(ITO)や酸化インジウム亜鉛(IZO)を用いることができる。透明導電膜は、画素電極12とホール注入層13の間に介在し、各層間の接合性を良好にする機能を有する。
[ホール注入層]
ホール注入層13は、例えば、銀(Ag)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、バナジウム(V)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、イリジウム(Ir)などの酸化物、あるいは、PEDOT(ポリチオフェンとポリスチレンスルホン酸との混合物)などの導電性ポリマー材料からなる層である。上記の内、酸化金属からなるホール注入層13は、ホールを安定的に、またはホールの生成を補助して、有機発光層15に対しホールを注入および輸送する機能を有する。
[バンク]
ホール注入層13の表面には、Y方向に伸長する平面視にて短冊状の縦バンク14が複数本並列に設けられている。この縦バンク14は、絶縁性の有機材料(例えばアクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ノボラック型フェノール樹脂等)からなる。
各縦バンク14の断面は、図3に示されるように台形であって、縦バンク14同士の間には、縦バンク14によって区画された凹空間20(20R,20G,20B)が形成され、各凹空間20の底部には、複数の画素電極12がY方向に列設され、その上に機能層としてのホール注入層13、有機発光層15、電子輸送層16が形成されている。
縦バンク14は、X方向に隣接する発光素子10どうしを区画すると共に、有機発光層15をウェット法で形成するときに、塗布されたインクがあふれ出ないようにする構造物としても機能する。
横バンク24は、縦バンク14よりも高さが低く(図6参照)、各凹空間20においてY方向に隣接する画素電極12と画素電極12との間に形成され、Y方向に隣接する発光素子10どうしを区画している。
複数の各凹空間20において、形成されている複数の横バンク24のY方向の位置は同じである。各横バンク24はX方向に伸長し、縦バンク14の下を通り隣の横バンク24につながってX方向に伸長する短冊状となっている。従って、下地基板11上において、縦バンク14と横バンク24の全体は格子状に形成されている(図2参照)。
[有機発光層]
有機発光層15は、キャリア(正孔と電子)が再結合して発光する部位であって、R,G,Bのいずれかの色に対応する有機材料を含む。
この有機発光層15は、上記の縦バンク14によって区画されたY方向に伸長する溝状の凹空間(図6の凹空間20R,20G,20B参照)に形成されている。
なお、図6に示す凹空間20Rは、赤色の発光層が形成されて赤色の発光素子10Rが形成される凹空間であり、凹空間20Gは、緑色の発光層が形成されて、緑色の発光素子10Gが形成される凹空間であり、凹空間20Bは、青色の発光層が形成されて、青色の発光素子10Bが形成される凹空間である。
従って、互いに色の異なる有機発光層15が、縦バンク14を挟んで配置されていることになる。
有機発光層15の材料としては、例えば、ポリパラフェニレンビニレン(PPV)、ポリフルオレン、オキシノイド化合物、ペリレン化合物、クマリン化合物、アザクマリン化合物、オキサゾール化合物、オキサジアゾール化合物、ペリノン化合物、ピロロピロール化合物、ナフタレン化合物、アントラセン化合物、フルオレン化合物、フルオランテン化合物、テトラセン化合物、ピレン化合物、コロネン化合物、キノロン化合物及びアザキノロン化合物、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、ローダミン化合物、クリセン化合物、フェナントレン化合物、シクロペンタジエン化合物、スチルベン化合物、ジフェニルキノン化合物、スチリル化合物、ブタジエン化合物、ジシアノメチレンピラン化合物、ジシアノメチレンチオピラン化合物、フルオレセイン化合物、ピリリウム化合物、チアピリリウム化合物、セレナピリリウム化合物、テルロピリリウム化合物、芳香族アルダジエン化合物、オリゴフェニレン化合物、チオキサンテン化合物、シアニン化合物、アクリジン化合物、8−ヒドロキシキノリン化合物の金属錯体、2−ビピリジン化合物の金属錯体、シッフ塩とIII族金属との錯体、オキシン金属錯体、希土類錯体等の蛍光物質等が挙げられる。
[電子輸送層]
電子輸送層16は、共通電極17から注入された電子を有機発光層15へ輸送する機能を有し、例えば、オキサジアゾール誘導体(OXD)、トリアゾール誘導体(TAZ)、フェナンスロリン誘導体(BCP、Bphen)などで形成されている。
[共通電極]
共通電極17は、例えば、ITO、IZO等の導電性を有する光透過性材料で形成され全てのサブピクセルに亘って設けられている。
本実施形態において、共通電極17は陰極である。
[封止層18]
封止層18は、ホール注入層13、有機発光層15、電子輸送層16、共通電極17を水分及び酸素から保護するために設けられている。
なお、図示はしないが、封止層18の上に、ブラックマトリクス、カラーフィルター等が形成されていてもよい。
[表示パネルの製造方法]
図4は、表示パネル100の製造過程を示す模式工程図である。
図5は、表示パネル100の製造工程の一部を模式的に示す断面図である。
表示パネル100の製造方法について、図4の工程図に基づいて、図3、5を参照しながら説明する。
まず、基板本体部11a上にTFT層11bを形成する(ステップS1)。
続いて、TFT層11bの上に、絶縁性に優れる有機材料を用いてフォトレジスト法で層間絶縁層11cを形成して下地基板11を作製する(ステップS2)。層間絶縁層11cの厚みは例えば約4μmである。なお、図3の断面図および図4の工程図には現れないが、層間絶縁層11cを形成するときに、コンタクトホール2(図2参照)を形成する。
次に、下地基板11上に、真空蒸着法またはスパッタ法によって、厚み400[nm]程度の金属材料からなる画素電極12を、サブピクセル毎に形成する(ステップS3)。
続いて、スパッタ法などで酸化タングステンを、下地基板11および画素電極12上に一様に成膜することによって、ホール注入層13を形成する(ステップS4)。
次に、横バンク24と縦バンク14を以下のようにフォトリソグラフィー法で形成する(ステップS5)。
まず横バンク24を形成するためのバンク材料(感光性を有するフォトレジスト材料)を、ホール注入層13上に一様に塗布する。
その後、塗布されたバンク材料層に、横バンク24のパターンに合わせた開口を有するフォトマスクを重ねて、UV照射して露光する。そして未硬化の余分なバンク材料を現像液で除去することによって横バンク24を形成する。
次に、縦バンク14を形成するためのバンク材料(ネガ型感光性樹脂組成物を)を、横バンク24を形成した基板上に一様に塗布する。
そのバンク材料層上に、形成しようとする縦バンク14のパターンに合わせた開口を有するマスクを重ねて、マスクの上から露光する。その後、余分なバンク材料をアルカリ現像液で洗い出すことによって、バンク材料をパターニングして、縦バンクのパターンを形成する。
図5(b)に示すように未焼成の縦バンク14a及び横バンク24aがパターン形成される。そして隣接する縦バンク14a同士の間に、凹空間20が形成されている。
次に、このパターン形成された未焼成の縦バンク14aにおける欠陥部の発生を調べて(ステップS6)、欠陥部があればその補修を行う。
このバンク補修については、後で詳しく説明するが、検出した欠陥部の近傍において、縦バンク14aの同士の間の凹空間20に補修材を塗布し乾燥することによって行う(ステップS7)。図5(b)には、縦バンク14a間の凹空間20に補修材が塗布され、未焼成の堰5aが形成された状態を示している。
その後、未焼成の縦バンク14a、横バンク24aと未焼成の堰5aとを、同時に加熱焼成することによって、縦バンク14、横バンク24、及び堰5が出来上がり、欠陥部3の補修が完了する(ステップS8)。この同時焼成は、例えば、未焼成の縦バンク14a、横バンク24a、未焼成の堰5aを、150℃〜210℃の温度で60分間加熱することによって行う。
図5(c)は、この焼成によって、縦バンク14、横バンク24が形成されると共に堰5が形成された状態、すなわち、縦バンク14が補修されて形成された状態を示している。
このように製造された縦バンク14において、さらに、次の工程で塗布するインクに対する縦バンク14の接触角を調節してもよい。あるいは、縦バンク14の表面に撥水性を付与するために、所定のアルカリ性溶液や水、有機溶媒等によって表面処理したり、プラズマ処理を施してもよい。
続いて、図5(d)に示すように、縦バンク14同士の間の凹空間20に、発光層形成用のインクを塗布する。このインクは、有機発光層15を構成する有機材料と溶媒を混合したものであって、各凹空間20内にインクジェット法を用いて塗布する。
そして、塗布されたインク層15aに含まれる溶媒を蒸発させて乾燥し、必要に応じて加熱焼成することによって、図5(e)に示すように、各凹空間20内に有機発光層15が形成される(ステップS9)。
次に、有機発光層15および縦バンク14の上に、電子輸送層16を構成する材料を真空蒸着法で成膜して、電子輸送層16を形成する(ステップS10)。
そして、ITO、IZO等の材料を、スパッタ法等で成膜して、共通電極17を形成する(ステップS11)。
そして、共通電極17の表面に、SiN、SiON等の光透過性材料をスパッタ法あるいはCVD法等で成膜して、封止層18を形成する(ステップS12)。
以上の工程を経て表示パネル100が完成する。
[バンクの欠陥部を検出し補修する方法]
上記製造方法で説明したように、正確には、未焼成の縦バンク14a、横バンク24a、未焼成の堰5aを形成した後、これら未焼成の縦バンク14a、横バンク24aや堰5aを加熱焼成して硬化させることによって、最終的な縦バンク14、横バンク24や堰5が形成される。しかし、未焼成の縦バンク14a、未焼成の堰5aは、ある程度固体化して安定なバンク形状、堰形状となっているので、本明細書では、未焼成の縦バンク14aや未焼成の堰5aについても、単に縦バンク14a、堰5aと記載して説明する。
[欠陥部3]
まず、縦バンク14aに存在する欠陥部3について説明する。
この欠陥部3は、縦バンク14aに異物が存在する部分、または縦バンク14aの一部が欠損した部分である。
異物は、例えば、製造装置に由来する金属片、空気中に存在する塵・埃の類である。そして、塵・埃は、繊維片であることが多い。
図6(a)に示す例では、1本の縦バンク14aの上に、異物が付着して欠陥部3となっている。
このように縦バンク14a上に異物があると、図5(d)に示すように縦バンク14を挟んで隣接する凹空間20にインクを塗布してドーム状に盛ったインク層15aが形成されると、インク層15aが異物に接触して、発光色の異なるインク(例えば赤色インクと緑色インク)が混ざってしまうことがある。
図7(a)に示す例では、1本の縦バンク14aの中に異物が入り込み、その異物が縦バンク14の壁面を隣の凹空間まで貫通して欠陥部3となっている。
図7(b)に示す例では、1本の縦バンク14aの下に異物が入り込んで、その異物が隣の凹空間まで貫通して欠陥部3となっている。
このように、縦バンク14aの中や下に異物が存在する場合でも、異物とバンク材料との密着性が悪い場合には、隙間が生じてインクの流通路ができる。また、異物が繊維片の場合にはインクを吸収するので、異物自体がインクの流通路となる。従って、異物を挟んで隣り合う凹空間に形成されたインク層15aの間で混色が生じる原因となる。
図7(c)に示す例では、縦バンク14aの一部が決壊して欠陥部3となっている。このような縦バンク14aにおける決壊は、例えば、バンク材料層に対する露光の工程で、露光が不十分で重合が十分になされたかった箇所が、次の現像工程で洗い流されることによって発生する。このように決壊が生じた場合も、その決壊を介して隣り合う凹空間に形成されたインク層15aの間で混色が生じる。
発光層に混色領域が生じたパネルを用いて表示パネル100を製造すると、混色領域は、本来の発光色とは異なった発光色で発光する。一般に、異なる発光色の蛍光体が混合された場合、波長の長い蛍光体の発光色が優勢になる。
例えば図16(b)に示すような赤色インクと緑色インクが混合されて生じた混色領域では、赤色が優勢となって発光することになる。従って、緑色で発光すべき領域の中で、混色領域となった領域では赤色が優勢となるので、この混色領域が広がると発光色不良の領域が大きくなり、表示不良の原因となる。
以上説明したように、縦バンク14aにおいて異物や決壊が生じている箇所は、発光色が異なるインクの混色が生じて、表示不良の原因となるので、この箇所を欠陥部3としている。
なお、図7(a),(b)のように縦バンク14aの下あるいは中に異物が入り込むと、その箇所では、縦バンク14が上に膨らんでバンク高さが高くなり、一方、図7(c)のように縦バンク14aが決壊した箇所では、縦バンク14の高さが低くなる。
[欠陥部3の検出]
縦バンク14aにおける欠陥部3の検出は、例えば、下地基板11上に形成した縦バンク14aの表面画像を撮影し、その表面画像のパターン検査によって行う。
図8は、バンク欠陥部の検出と、その補修に用いる補修装置の一例を示す概略構成図である。
この補修装置200においては、ベース201上に、上記の下地基板11を載置するテーブル202と、撮像素子211及びディスペンサ212が取り付けられたヘッド部210とを有している。そして、テーブル202は、コントローラ230の指示に基づいてY方向に移動でき、ヘッド部210は、コントローラ230の指示によって、X方向及びZ方向に移動できるようになっている。
従って、ヘッド部210に取り付けられている撮像素子211及びディスペンサ212は、コントローラ230の指示によって、テーブル202上に載置された下地基板11の上方で、下地基板11に対して、X方向、Y方向、Z方向に相対移動することができる。
図9は、補修装置200が欠陥部を検出する動作の一例を示すフローチャートである。図中Bは下地基板11上に形成されている縦バンク14aに付した番号を示す。
補修装置200を用いて、下地基板11の上面に沿って撮像素子211を移動させながら、ステップS21〜S26の処理を繰り返し行うことによって1番目の縦バンク14aから最終番の縦バンク14aまで順に、欠陥部3が存在するか否かを調べる。
その方法は、まず下地基板11の上面の画像データ(縦バンク14a、横バンク24aの画像)を取得し、コントローラ230の記憶部231に記憶する。そして、コントローラ230は、その画像データにおいて、各縦バンク14aにおける部分同士を次々に比較して、相違点を検出することによって、欠陥部3の検出を行う。
そして、欠陥部3が検出された場合(ステップS23でYes)、検出された欠陥部3の中央Oの位置データ(X方向の位置及びY方向の位置Yo)を、記憶部231に記憶する(ステップS24)。
そして、最終番の縦バンク14aまで検査を行ったら処理を終了する(ステップS25)。
なお、このような検出工程において、下地基板11上に形成される縦バンク14aの中で、いくつかの縦バンク14aに欠陥部3が検出される可能性もあれば、すべての縦バンク14aにおいて欠陥部3がゼロである可能性もある。
そして、いずれかの縦バンク14aで欠陥部3が検出された場合には、その補修を行う。
[欠陥部を有するバンクの補修方法]
次に、補修装置200におけるテーブル202に載置されている下地基板11の上に、ディスペンサ212から堰形成用の補修材を、欠陥部3の周囲を囲むように塗布して、堰5を形成することによって、縦バンク14aの補修を行う。
ここでは、図6(b)に示すように、欠陥部3を有する縦バンク14aの両側に隣接する各凹空間20の中に、欠陥部3をY方向に挟んだ2つの点A1、A2から、欠陥部3が存在する縦バンク14aの隣の縦バンク14aに亘る形状で堰5を形成する。すなわち、欠陥部3の周囲を取り囲む凹空間20の中に、X方向に仕切る合計4つの堰5を井桁状に形成する。また、凹空間20内において、各堰5は、Y方向に互いに隣接する横バンク24同士の間に形成されている。
補修装置200が備えるディスペンサ212は、ニードル式のディスペンサであって、その先端部分に補修材を収納するタンク214が取り付けられ、タンク214内を貫通するようにニードル213が上下に移動することによって、ニードル213に付着させた補修材をマイクロリットル単位で塗布できるようになっている。
このディスペンサ212におけるニードル213の駆動は、コントローラ230からの制御信号に基づいてなされる。
補修材としては、光や熱を加えることによって硬化する樹脂の組成物を用いることができる。
そのような樹脂としては、例えば、(メタ)アクロイル基、アリル基、ビニル基、ビニルオキシ基などのエチレン性の二重結合を有する硬化性の樹脂が挙げられる。
また、樹脂に対して架橋する架橋剤、例えば、エポキシ化合物、ポリイソシアネート化合物を添加してもよい。
また、この樹脂構造の中に、フッ素が導入されているフッ化ポリマーを用いてもよい。補修材の樹脂にフッ素が導入されることによって、形成される堰5に撥インク性を付与することができる。あるいは、樹脂に各種撥インク剤を添加してもよい。撥インク剤の添加量は0.01〜10wt%とする。撥インク剤の添加量をこの範囲にすることで、樹脂組成物の貯蔵安定性が良好で、且つ形成される堰5の撥インク性も良好となる。
なお、補修材として、縦バンク14aを形成するバンク材料と同じものを用いてもよい。ただしバンク材料の場合は、アルカリ現像液に可溶の酸成分が含まれているが、堰を形成する補修材には、アルカリ現像液に可溶の酸成分は含有しないことが好ましい。これは、堰を形成するときには現像は行われず、酸成分が堰5に残存すると堰5の耐溶剤性が低下するためである。
上記補修材を構成する樹脂の組成物に、必要に応じて、溶剤、光重合開始剤を適宜添加してもよい。
溶剤は、樹脂に対する溶解性を有するもので、沸点が150〜250℃程度の溶剤を1種類以上用いても良い。
光重合開始剤としては、市販の各種光重合開始剤を用いることができる。
補修材の塗布時において、補修材の固形分は、例えば20〜90wt%に調整し、粘度は例えば10〜50cP(センチポイズ)に調整する。
光重合開始剤の添加量は、焼成時における露光量に応じて調整するが、例えば全固形分に対して0.1〜50重量%、好ましくは5重量%〜30重量%である。
堰5aの形成は、凹空間20内において、堰5を形成しようとするライン(堰形成ライン)に沿って設定された複数の位置に、ディスペンサ212から補修材を塗布することによって行う。
本実施形態では、堰形成ラインのY方向の位置を設定するときに、形成される堰5同士のY方向の間隙が基本的に着弾ピッチW1以上となるように設定する。これは、次の発光層形成工程(図4のステップS9)を行うときにインクを着弾させる着弾点を堰5同士の間に存在するようにするためである。
以下に補修装置200が行う堰形成の具体的な方法を説明する。
後述するように、本実施形態では、次の発光層形成工程(図4のステップS9)において、ノズルヘッド322のY方向の位置は標準位置で行う。従って、下地基板11上においてインクを着弾させる着弾点の位置は図15(b)に示すように、Y方向にピッチW1で並ぶ複数(6個)の着弾点の中心が、横バンク24同士の間隙のY方向中央位置Coと一致するように定まっている。その前提のもとで補修装置200が行う堰形成工程について説明する。
図10は、補修装置200が行う堰形成工程の動作の一例を示すフローチャートである。図中nは、下地基板11上に検出された1以上の欠陥部3に対して順に付した番号を示す。
1番目の欠陥部から最終番の欠陥部まで順に、以下のように堰形成ラインの設定を行う。
まず、1番目の欠陥部について、その中央OのY方向の位置Yoを読み出す(ステップS32)。
そして、横バンク24同士の間隙のY方向中央位置Coと、位置Yoとの距離dを算出する。この距離dは、d=│Yo−Co│で算出される(ステップS33)。
算出した距離dが、着弾ピッチW1の3倍以下であれば(ステップS34でYes)、欠陥部3の中央位置Yoから着弾ピッチW1の1/2以内のところに着弾点が存在するので、1対の堰形成ラインのY方向の位置を、Yo+(W1+T)/2とYo−(W1+T)/2とに設定する(ステップS35)。ここでTは、堰5の幅に相当すると見積もった値であって、例えばT=10μmとする。ただし、このTの値として、堰5の幅よりも大きい値を採用してもよい。
このように堰形成ラインの位置を設定することによって、形成される1対の堰5同士の間隙を着弾ピッチW1以上にすることができる。
一方、算出した距離dが、着弾ピッチW1の3倍より大きい場合(ステップS34でNoの場合)は、欠陥部3のY方向位置が横バンク24の近傍にあり、欠陥部3の中央位置Yoとこれに最も近い着弾点との距離は、着弾ピッチW1の1/2よりも長いと見なされるので、この場合は、形成する堰5同士の間隙に、欠陥部3に最も近い着弾点を存在させるために、堰形成ラインのY方向の位置を、Yo+(d−2.5W1+T/2)と(d−2.5W1+T/2)とに設定する(ステップS36)。
ただし、上記ステップS35,S36で設定した堰形成ラインの位置は、形成される堰5同士の間隙に着弾点を存在させるための一例であって、例えば堰形成ライン同士の間隙をこれよりも長く設定してもよい。
2番目以降の欠陥部がある場合には(ステップS37でNo、ステップS38)、2番目以降の欠陥部についても同様にして堰形成ラインを設定し、最終番の欠陥部に到るまで(ステップS37でYes)、堰形成ラインのY方向の位置を設定する。
図11(a)は、この画像において欠陥部3の周辺に設定された塗布位置を示す図である。当図に示すように、欠陥部3を有する縦バンク14aの両側に隣接する凹空間20の中に、欠陥部3の中央Oを基準として、Y方向に距離a1離れた点A1を通ってX方向に伸長する堰形成ラインと、Y方向と反対の方向に距離a2離れた点A2を通ってX方向に伸長する堰形成ラインが設定される。
次に、上記のように各欠陥部3に対して設定された堰形成ラインに沿って、以下に説明するように堰5を形成する(図10のステップS39)。各堰形成ラインに沿って塗布点P1,P2,P3,P4を設定する。
図11(b)は、下地基板11において、点A1を通る堰形成ラインに沿った断面を模式的に示す図である。
補修装置200は、このように設定した塗布点P1,P2,P3,P4において、順次、ニードル213で補修材を塗布することによって堰5aを形成する。
図12(a)〜(g)は、塗布点P1,P2…に、補修材を順次塗布することによって、堰5aが形成される様子を示す図である。
まず図12(a),(b)に示すように、ニードル213、タンク214を塗布点P1に位置させて、ニードル213を下方に移動してニードル213に補修材を付着させ、ニードル213を塗布点P1に近づけることによって補修材を塗布点P1に塗布する。
補修材は、塗布されるまでは流動性を有するが、塗布後は山形状が維持され、図12(c)に示すように、塗布点P1に補修材の山が形成される。
続いて、図12(d)に示すように、ニードル213をタンク214内に引き上げて、ニードル213,タンク214を、塗布点P2に移動させる。そして、ニードル213を下方に移動して、補修材を付着させたニードル213を塗布点P2に近づけることによって補修材を塗布点P2に塗布する。
それによって図12(e)に示すように、塗布点P2に形成される補修材の山は、塗布 点P1に形成されている補修材の山と繋がる。
続いて、図12(f)に示すように、ニードル213を引き上げて、塗布点P3に移動させる。そして、同様にして、塗布点P3に補修材の山を形成して、塗布点P2に補修材の山とつなげる。
このようにして、欠陥部3を有する縦バンク14a上の点A1から、隣の縦バンク14aに亘る形状で、補修材の山が連なることになる。そして、この塗布された補修材の山を、乾燥し、必要に応じて露光することによって堰5aが形成される。
また、その後の同時焼成工程において、塗布された補修材が硬化するので、より安定した物性を有する堰5が形成される。
以上の堰形成工程によって、図6(b)に示すように、欠陥部3を有する縦バンク14の両側にある凹空間20の各々に、堰5が対で設けられ、この堰5によって凹空間20は、欠陥部3に近接する空間部分からなる第1空間SAと、欠陥部3に近接しない空間部分からなる2つの第2空間SBとに仕切られている。そして、欠陥部3は、2つの第1空間SAによって囲まれている。
以上のように各縦バンク14の欠陥部3を補修した上で、次のステップS9の発光層形成工程を行うことによって、後述するように、インクの混色領域を制限するとともに、第1空間SA、第2空間SBに、インクが塗布され、有機発光層15が形成される。
[発光層形成]
発光層形成工程(図4のステップS9)では、インクジェット装置300のノズルヘッド322から、下地基板11の各凹空間20にインクを吐出し、乾燥することによって有機発光層15を形成する。
(インクジェット装置300の構成)
図13は、インクジェット装置300の構成を示す図である。図14は、このインクジェット装置の機能ブロック図である。
図13に示すように、インクジェット装置300は、塗布対象物であるバンク付の基板11を載置する作業テーブル310、インクを吐出する複数のノズルを有するヘッド部320を備える。
作業テーブル310は、いわゆるガントリー式の作業テーブルであって、吐出対象物が載置される基台311と、基台311の上方に配置された長尺状の移動架台312とを備える。
図13では、バンク付の下地基板11が基台311上に載置された状態が示されている。
移動架台312は、基台311の長手方向(X方向)に沿って平行に配置された一対のガイドシャフト313a,313b間に架け渡されている。一対のガイドシャフト313a,313bは、基台311の四隅に配設された柱状のスタンド314a〜314dで支持されている。移動架台312は、リニアモータ部315a,315bによって、各ガイドシャフト313a,313bに沿ってX方向に駆動できるようになっている。
移動架台312にはL字形の台座316が取り付けられ、この台座316に上記のヘッド部320が取り付けられている。従って、リニアモータ部315a,315bを駆動することによってヘッド部320をX方向に移動可能であり、サーボモータ部317を駆動することによってヘッド部320をY方向に移動可能となっている。
ヘッド部320には、ノズルヘッド322が設けられている。このノズルヘッド322は、ヘッド支持部321を介して台座316に取り付けられている。
リニアモータ部315a,315b及びサーボモータ部317は、図14に示す駆動制御部319に接続されており、駆動制御部319は、通信ケーブル301,302を介して制御装置330のCPU331に接続されている。
(ヘッド部320)
ヘッド部320には、Y方向に長尺なノズルヘッド322が設けられている。ノズルヘッド322には、輸液チューブ304を介して外部からインクが供給される。
図13には示されないが、ノズルヘッド322の下面側には複数のノズル325がY方向に列設されている(図15参照)。ここでノズルヘッド322に列設されている複数のノズル325の位置については、Y方向に隣り合う横バンク24同士の各間隙に、一定個数(6個)のノズル325が同じ位置関係で入るように設定されている。また、一定個数(6個)のノズル325同士の間隔は等ピッチに設定されている。
そして、各ノズル325には、圧電素子、液室等を構成要素とするインクを吐出する機構(不図示)が設けられている。
ヘッド部320には、各ノズルの各圧電素子を個別に駆動するための駆動回路を備えた吐出制御部327(図14参照)が収納されている。吐出制御部327は、各圧電素子に与える駆動信号を制御して、各ノズル325の吐出口から液滴を吐出させる。吐出制御部327は、通信ケーブル303を介して制御装置330のCPU331に接続されている。
(制御装置330)
制御装置330は、CPU331、記憶手段332、入力手段333、表示手段(ディスプレイ)334を備える。制御装置330は具体的にはパーソナルコンピュータ(PC)である。
記憶手段332には、制御装置330に接続された作業テーブル310およびヘッド部320を駆動するための制御プログラム等が格納されていて、インクジェット装置300の駆動時には、CPU331は入力手段333を通じて操作者により入力された指示と、記憶手段332に格納された各制御プログラムに基づいて、インクジェット装置300の各部の制御を行う。
具体的には、記憶手段332には、バンク付の下地基板11上におけるノズルヘッド322のY方向の標準位置、並びにインクを着弾させるX方向の位置(図15に示す着弾ラインQ1,Q2の位置)などが記憶されている。
CPU331は、記憶手段332に格納された所定の制御プログラムに基づいて、駆動制御部319に指示してリニアモータ部315a,315b及びサーボモータ部317を駆動させたり、吐出制御部327に指示してノズルヘッド322の圧電素子に駆動電圧を印加する。
ここで上記の「ノズルヘッド322のY方向の標準位置」は、ノズルヘッド322がこの位置にあるときに、図15(b)に示すように、Y方向に隣接する横バンク24Aと横バンク24Bの間の間隙内において、Y方向に並ぶ複数(6個)の着弾点の中心が、当該間隙のY方向中央位置Coと一致するように定められている。従って、ノズルヘッド322のY方向の位置がこの標準位置にあるとき、図15(b)に示すように、横バンク24Aとそれに最も近い着弾点との距離W2と、横バンク24Bとそれに最も近い着弾点との距離W3は等しく(W2=W3)なる。
また、ノズルヘッド322のY方向の位置を調整できるように、入力手段333には、操作者がずらし量ΔWを入力できるようになっている。
この「ずらし量ΔW」は、ノズルヘッド322を標準位置からY方向にどれだけずらすかを示す数値(正数、負数または0)であって、CPU331は、入力手段333に入力されるずらし量ΔWに応じ、以下の制御を行う。
入力手段333にずらし量ΔW=0が入力された場合、CPU331は、駆動制御部319に指示して、サーボモータ部317を動作させることによって、ノズルヘッド322を標準位置に位置させて、その後、リニアモータ部315a,315bを駆動して、ノズルヘッド322をX方向に走査させながら、吐出制御部327に指示してノズルヘッド322の圧電素子を駆動することによってインクを吐出する。これによって、バンク付の下地基板11における凹空間20内の各着弾点にインクが着弾される。
一方、入力手段333に0でないずらし量ΔWの値が入力されたときには、CPU331は駆動制御部319に指示して、サーボモータ部317を動作させることによって、ノズルヘッド322を標準位置からΔWだけずらした位置に位置させて、その後、同様にリニアモータ部315a,315bを駆動して、ノズルヘッド322をX方向に走査させながら、吐出制御部327に指示してノズルヘッド322の圧電素子を駆動することによってインクを吐出する。
なお、以上説明したインクジェット装置300においては、ヘッド部320がX方向,Y方向に駆動されるようになっているが、基台311をX方向,Y方向に駆動されるようにしてもよく、その場合も同様に、バンク付の下地基板11に対してノズルヘッド322を相対的にX方向,Y方向に移動させることができる。
(インクジェット装置300による発光層形成用のインク塗布)
以上説明した構成のインクジェット装置300を用いて、発光層形成用のインクをバンク付の下地基板11に塗布する動作を説明する。
操作者は、図13に示すように、インクジェット装置300における基台311上にバンク付の下地基板11を載置する。このとき、ノズルヘッド322の伸長方向が、バンク付の下地基板11における縦バンク14の伸長方向(Y方向)に沿うように載置する。
操作者は、入力手段333にずらし量ΔWを入力する。ただし本実施形態では、ノズルヘッド322を標準位置で動作させるためにΔW=0を入力することとする。
それによってインクジェット装置300は、ノズルヘッド322のY方向の位置を標準位置に維持した状態で、ノズルヘッド322をX方向に走査しながら、ノズルヘッド322からバンク付の下地基板11の各凹空間20にインクを吐出することによってインクを塗布する。
図15(a)は、このようにして、ノズルヘッド322をX方向に走査しながら、各凹空間20R,20G、20B内に、対応する発光色のインクを着弾させる様子を示す平面図である。
図15(a)に示す例では、各凹空間20の中において、Y方向に伸長する2本の着弾ラインQ1,Q2上に、それぞれ複数の着弾点が設定されている。また、1つのサブピクセルあたり、各着弾ラインQ1,Q2上に着弾点が6個ずつ点在し、合計12個の着弾点が存在している。Y方向に点在する着弾点のピッチW1は、ノズルヘッド322におけるノズル325のピッチと同等である。
なお、図13、図15(a)では、説明を簡略化するためノズルヘッド322を1つだけ示しているが、インクジェット装置300においてノズルヘッド322は色別に設けて、赤色用の凹空間20Rには赤色インク用のノズルヘッド322から赤色インクを吐出し、緑色用の凹空間20Gには緑色インク用のノズルヘッド322から緑色インクを吐出し、青色用の凹空間20Bには青色インク用のノズルヘッド322から青色インクを吐出することが望ましい。
このようにして、各凹空間20R,20G、20B内に 対応する色のインクを塗布し、乾燥することによって、有機発光層15が形成される。
[堰5の形成形態によるインク未濡れ防止効果]
堰5で挟まれた第1空間SA、並びに堰5の外側の第2空間SBにおいて、インクが未濡れの部分が生じると、その領域に有機発光層15が形成されず、出来上がった表示パネル100を駆動するときに、画素電極12と共通電極17との間で電流リークが生じ、点灯不良となることがある。
従って、堰5が形成された凹空間20にインクを塗布する際には、第1空間SAと第2空間SBの両方にインクを着弾させることが、表示パネル100の表示性能を良好にするために求められる。
特に、1対の堰5のY方向の間隔は、欠陥部3を挟み込めるだけの距離は必要であるが、混色領域を狭くする上で、サブピクセルのY方向の長さ以下に設定することが好ましく、できるだけ小さく設定することが好ましいので、堰5の対に挟まれた第1空間SAは、第2空間SBと比べて狭く、インクの未濡れが生じやすい。
そこで、第1空間SAに対する未濡れを防止する上で好ましい堰5の形成形態について以下に述べる。
図15(b)は、図15(a)における欠陥部3の近傍を模式的に示す図である。第1空間SAに着弾点を存在させるための堰5の形状などの条件としては、基本的には、着弾ラインQ1,Q2のいずれかが第1空間SAを通過する長さが、着弾ラインQ1,Q2上における着弾点のピッチW1よりも長くすることが望ましい。
本実施形態では、欠陥部3の近傍に、堰5Aと堰5BがY方向に対向して対で形成され、堰5Aと堰5Bとの間が第1空間SAとなっている。そして、堰5A及び堰5Bは共にX方向に沿って平行に形成されているので、堰5Aと堰5Bの間隙L1を、着弾ラインQ1,Q2上における着弾点のピッチW1よりも長く設定すればよい。
すなわち、上記堰形成工程(ステップS8)で堰形成ラインのY方向の位置を設定する際に、L1>W1となるように設定すればよく、また、この条件を満たしていれば、基本的にノズルヘッド322のY方向の位置を調整しなくても、堰5Aと堰5Bとの間の第1空間SAに着弾点が存在することになる。
以上のような観点から、上記堰形成工程においては、各欠陥部3に対して形成する堰5同士のY方向の間隙を着弾ピッチW1以上となるように設定した。
すなわち、図10に示した堰形成工程のステップS34〜S36において、ステップS24でYesの場合、ステップS35で形成される1対の堰形成ライン同士の間隔は(W1+T)となるので、1対の堰形成ラインに沿って形成される堰5同士のY方向の間隙は着弾ピッチW1に相当する。また、ステップS34でNoの場合、ステップS36で形成される1対の堰形成ライン同士の間隔は(2d-5W1+T)となるので、堰形成ラインに沿って形成された堰5同士のY方向の間隙は(2d-5W1)となる。ここで、ステップS34でNoの場合は2d>6W1なので、形成される堰5同士のY方向の間隙はW1以上となる。
そして、ステップS35、S36のいずれで堰形成ラインが設定された場合でも、形成される1対の堰の間には、インクの着弾点が存在することになる。
なお、通常、着弾点のピッチW1は20μm程度かそれ以上なので、堰5Aと堰5Bとの間の第2空間SBに着弾点を存在させるためには、堰5Aと堰5Bとの間隙L1を20μmより長く設定する(L1>20μmとする)ことが好ましいともいえる。
以上説明したような形態で堰5を形成することによって、堰5が形成された凹空間20において、第1空間SAと第2空間SBのいずれにもインクが塗布されて、第1空間SAと第2空間SBとに有機発光層15が形成される。
[堰5と横バンク24との間の間隙に対する未濡れ防止]
次に、第2空間SBの中で、堰5と横バンク24との間に間隙が存在する場合は、その間隙にも比較的インクの未濡れが発生しやすい。そこで、この間隙にもインクを着弾させて未濡れを防止することが好ましい。
例えば図15(b)に示す例では、堰5Aと横バンク24Aとの間に間隙が存在するので、この間隙が未濡れにならないように、堰5Aと横バンク24Aとの間隙にインクを着弾させることが好ましい。同様に、堰5Bと横バンク24Bとの間に間隙(間隙L3)も存在するので、堰5Bと横バンク24Bとの間隙にインクの着弾点を存在させることが好ましい。
以下に、堰5Aと横バンク24Aとの間の間隙に着弾点が存在するための堰5AのY方向の位置について考察する。
基本的に、着弾ラインQ1,Q2のいずれかが、この堰5Aと横バンク24Aとの間の間隙を横断する長さが、横バンク24Aとその横バンク24Aに最も近い着弾点との距離W2よりも長くなるように、堰5AのY方向の形成位置を設定すれば、この間隙に着弾点が存在する。
本実施形態の堰5の形状の場合、着弾ラインQ1,Q2が堰5Aと横バンク24Aとの間の間隙を横断する長さはいずれもL2なので、堰5AのY方向の位置(堰形成ラインの位置)を、L2>W2となるように設定すればよいことになる。
また、本実施形態では、ノズルヘッド322のY方向に位置を標準位置に設定して走査するのでW2=W3となる。この場合、W2,W3の値は、サブピクセル長さLo、着弾点の数6、着弾点のピッチW1を用いて、W2=[Lo−5W1]÷2で算出することができる。従って、L2,L3が、この算出したW2(W3)の値より大きくなるように、堰形成ラインの位置を設定すればよいことになる。
距離W2が20μm程度とすると、間隙L2を20μmより長く設定する(L2>20μmとする)ことが好ましいともいえる。
また、堰5Bと横バンク24Bとの間隙にインクの着弾点を存在させるために、着弾ラインQ1、Q2のいずれかが堰5Bと横バンク24Bとの間隙を横断する長さL3が、横バンク24Bに最も近い着弾点との距離W3よりも長く(L3>W3)なるように、堰5AのY方向の位置を設定すればよい。またこの長さL3を20μmより長く設定する(L3>20μmとする)ことが好ましいともいえる。
[本実施形態の製造方法による混色防止効果]
堰5を形成することによって縦バンク14の欠陥部3を補修することによるインクの混色防止効果について説明する。
図16(a)は、実施の形態にかかるパネルにおいて、欠陥部3を有する縦バンク14の周囲に堰5が形成された後、その縦バンク14に隣接する一方の凹空間20に、赤色のインクが塗布されてインク層15a(R)、他方の凹空間20に緑色のインクが塗布されてインク層15a(G)が形成された状態を示す平面図である。また、図16(b)は、堰5を形成しない比較例において、同様に縦バンク14を挟んで隣接する凹空間20にインク層15a(R)とインク層15a(G)が形成された状態を示す平面図である。
図16(b)に示すように、欠陥部3を有する縦バンク14の周囲に堰5が形成されていないと、赤色インクと緑色インクが、欠陥部3を介して混ざり合ってできる混色領域は、各インク層15a内で広がる。この混色領域は、Y方向に長く伸びて、その長さが1cm程度になることもある。
表示パネル100が製造されたときに、この混色領域は、本来の発光色とは異なった発光色で発光する。上記のように、赤色インクと緑色インクが混合された混色領域は、赤色が優勢となって発光することになる。従って、緑色で発光すべき領域の中で、混色領域となった領域では、赤色が優勢となって発光することになり、発光色不良が発生し、表示不良の原因となる。
これに対して、本実施の形態では、欠陥部3を有する縦バンク14の周囲に堰5が対で形成され、凹空間20が、堰5の対に挟まれた欠陥部3に近接する第1空間SAと、堰5の対の外側にある欠陥部3に近接しない2つの第2空間SBとに仕切られているので、以下のように混色領域が制限される。
図17は、図16(a)におけるC−C線の断面図であって、堰5が形成された凹空間20にインクが塗布されてインク層15a(G)が形成されたところを、Y方向に切断した断面を表している。
縦バンク14間の各凹空間20に、発光層形成用のインクが塗布されると、図17に示すように、1対の堰5で挟まれた第1空間SAと、1対の堰5よりも外側にある2つの第2空間SBには、それぞれインク層15a(G)が形成される。
ここで、図16(a)に示すように、赤色インクと緑色インクが、欠陥部3を介して混ざり合って、空間部分SAが混色領域となることはあるが、第1空間SAに形成されたインク層15aと、1対の堰5よりも外側の第2空間SBに形成されたインク層15aとは、堰5によって隔てられているので、相互に混ざり合わない。
従って、第1空間SAには混色領域ができることがあっても、その混色領域は堰5を超えて第2空間SBが広がることがない。
このように本実施の形態においては、欠陥部3によって生じる混色領域の範囲が、欠陥部3に近接する狭い第1空間SAに制限されるので、混色範囲の広がりを抑制する効果が得られ、表示パネル100における発光色不良を低減できることになる。
なお、本実施形態のようにライン状の縦バンク14で仕切られたが凹空間にインクを塗布する場合には、インクの混色が生じると混色範囲が広がって発光色不良が生じやすいので、特にラインバンクを有する有機EL表示パネルに対しては、堰5を形成する補修によって得られる効果も大きい。しかし、変形例として後述するように、ラインバンクに限らず、ピクセルバンクにおいても、堰5を形成することによって効果を得ることができる。
ところで、欠陥部3によるインクの混色を防止する方法としては、欠陥部3自体を、同様の補修材で覆って補修することも考えられる。しかし、その方法でインクの混色を確実になくすには、欠陥部3を構成する異物全体を補修材で覆ったり、欠陥部3を構成する決壊を補修材で補修するといったことが必要となる。そして、ディスペンサなどを使ってこの補修を行うには、ディスペンサの塗布針を細かく位置制御しながら塗布することが必要となる。また、異物が存在する場合は、その異物によって補修材がはじかれてうまく補修できない場合も多くあり、塗布するのに技術的な難しさが伴う。これに対して、本実施の形態のように欠陥部3を有する縦バンク14の周囲に堰5を形成する補修方法によれば、欠陥部3に補修材を直接塗布するのではなく、その周囲を囲むように補修材を塗布するので、異物によって補修材がはじかれることがなく、比較的容易に塗布を行うことができる。
[堰5の高さ、幅について]
堰5の高さ(凹空間20の底面からの高さ)について考察する。
図4のステップS9の有機発光層15を形成する工程で、堰5で仕切られている第1空間SAと第2空間SBに、それぞれインクが塗布されてインク層15aが形成される。
そして、図17に示されるように、第1空間SAのインク層15aと第2空間SBのインク層15aとは、堰5によって分離された状態となる。
ここで、堰5の高さが低すぎると、インク層15aを分離する機能が損なわれて、第1空間SAのインク層15aと、第2空間SBのインク層15aとが混合され、その結果、混色領域が第2空間SBまで広がることになる。例えば図16(a)の例で、堰5の高さが低すぎると、第1空間SAに存在する赤が混ざった緑のインク層15aが、第2空間SBに存在する緑色のインク層15a(G)と混ざって、赤と緑の混色領域が第2空間SBに広がることになる。
従って、堰5の高さは、この第1空間SAのインク層15aと第2空間SBのインク層15aとを分離する機能を十分果たすことができるだけの高さに設定することが好ましい。
一方、堰5を高くし過ぎると、その上に形成する電子輸送層16、共通電極17などに段切れが生じやすくなる。
このような考察に基づくと、堰5の高さは、縦バンク14の高さに対して50%以上、200%以下とし、縦バンク14の高さと同程度とすることが好ましい。
堰5の幅、すなわち堰形成ラインと直交する方向(Y方向)の幅については、この幅が大きすぎると、表示パネル100を見たときにその堰5自体が目立つ可能性もあるので、50μm以下とすることが好ましい。
[堰5を横バンク24上に形成する変形例]
上記図15(a),(b)に示した例では、欠陥部3をY方向に挟む堰5A,5Bの対は、横バンク24Aと横バンク24Bとの間に形成されていた。
このように横バンク24Aと横バンク24Bとの間に堰5A,5Bを形成することは、混色領域を狭くする上では好ましいが、上述したように横バンク24Aと堰5Aとの間の間隙、並びに横バンク24Bと堰5bとの間の間隙で、インクの未濡れが生じることがある。これに対して以下の変形例のように堰を形成することも有効である。
図18(a),(b)に示す変形例は、堰5の一部または全部が、平面視で横バンク24の上に重ねて形成されている。
まず、図18(a)に示す変形例では、欠陥部3をY方向に挟む堰5A,5Bの中、一方の堰5Aを横バンク24Aの上に重ねて形成している。
このように堰5Aを横バンク24Aの上に重ねて形成することによって、図18(a)に示されるように、堰5Aと堰5Bとの間の間隙L1は、図15(b)に示した例と比べてより長くなるので、堰5Aと堰5Bとの間の第1空間に着弾点を存在させやすくなる。
従って、堰5Aと堰5Bとの間の第1空間におけるインクの未濡れ防止に有効である。
また上記図15(b)に示した例では、堰5Aと横バンク24Aとの間に隙間が存在していたが、図18(a)の例では、堰5Aと横バンク24Aとの間に間隙が存在しないので、この点でもインクの未濡れが生じにくくなる。
特に、欠陥部3の位置が横バンク24Aに近い場合には、このように堰5Aを横バンク24Aの上に重ねて形成することが有効である。
また、このように堰5Aを横バンク24Aの上に重ねて形成することによって、堰5Aの根本近傍には横バンク24Aが存在するので、堰5Aの根本近傍でインクの未濡れが生じたとしても、製造される表示パネル100において、この領域でホール注入層13と共通電極17とがショートしたり、電流リークが生じることがない。
特に、堰5Aのエッジ(堰5Aが縦バンク14と接触する箇所)の近傍においては、インクの未濡れが生じやすいが、この変形例のように堰5Aを横バンク24Aの上に重ねて形成すれば、堰5のエッジ近傍に横バンク24Aが存在するので、そのエッジ近傍にインクの未濡れが生じたとしても、ショートや電流リークを防止することができる。
なお、図18(a)の例においても、堰5Bと横バンク24Bとの間には間隙が存在するので、この間隙L3の長さを、横バンク24Bに最も近い着弾点との距離W3よりも長く(L3>W3)設定することによって、当該間隙におけるインクの未濡れを防止することが好ましい。
次に、図18(b)に示す変形例は、欠陥部3をY方向に挟む堰5A,5Bの両方が横バンク24の上に形成されている。すなわち堰5Aは横バンク24Aの上に重ねて形成され、さらに堰5Bも横バンク24Bの上に重ねて形成されている。
この場合、図18(b)に示すように、堰5Aと堰5Bとの間隙L1はさらに長くなり、サブピクセルのY方向の長さ相当となるので、堰5Aと堰5Bとの間の第1空間SAにインクが確実に着弾される。
また、堰5Aと横バンク24Aとの間に間隙がないだけでなく、堰5Bと横バンク24Bとの間にも間隙が存在しない。また、堰5Bの根本近傍の領域も横バンク24Bが存在しているため、堰5Bの根本近傍領域でインクの未濡れが生じても、電流リークは生じにくい。
従って、図18(b)に示す変形例では、さらにインク未濡れに起因する表示不良を抑える効果を奏する。
<実施の形態2>
実施の形態2にかかる表示パネル100の構成、並びにその製造方法は、実施の形態1で説明した構成、並びに製造方法と同様である。
また、欠陥部3が存在する縦バンク14aの両側に隣接する各凹空間20に、堰5を形成する点も同様であるが、形成する堰5の形状が異なっている。
図19(a)は、実施の形態2にかかる堰5の形状を示す斜視図、(b)は、凹空間に堰5を形成した後、インク層を形成した平面図、(c)は、堰5を形成した凹空間に対するインクの着弾点を示す平面図である。
本実施形態にかかる堰5は、図19(b)に示すように、X−Y面を平面視するとき、欠陥部3をY方向に挟む2点(点A1及び点A2)の一方(点A1)から欠陥部3を迂回して他方(点A2)に亘るL字形状に形成されている。また、点A1から点A2に到る途中の折れ曲がり点A3で、欠陥部3が存在する縦バンク14の隣の縦バンク14に接している。
堰5の形成方法は、実施の形態1において図12(a)〜(g)を参照しながら説明した方法と同様であって、点A1から点A3を経由して点A2に到る堰形成ラインに沿って設定した複数の塗布点に、補修材を順次塗布することによって、堰5を形成することができる。
このようにして欠陥部3を有する縦バンク14の両側に隣接する各凹空間20に形成される堰5によって、図19(a)に示すように、各凹空間20は、欠陥部3に近接する空間部分からなる第1空間SAと、欠陥部3に近接しない空間部分からなる2つの第2空間SBとに仕切られる。そして、欠陥部3は2つの第1空空間SAによって囲まれる。
従って、実施の形態1と同様に混色範囲を抑制する効果が得られる。
すなわち、図19(b)に示すように、縦バンク14同士の間の凹空間20に、発光層形成用のインクが塗布されるときに、赤色インクと緑色インクが、欠陥部3を介して混ざり合って、混色領域ができても、その混色領域は堰5を超えて第2空間SBに広がることがない。そして、欠陥部3によって生じる混色領域の範囲は、欠陥部3に近接する狭い第1空間SAに制限されるので、表示パネル100における発光色不良を低減できることになる。
また、欠陥部3の周囲を囲むように補修材を塗布することによって堰5を形成するので、補修が容易である点についても、実施の形態1と同様である。
一方、実施の形態1の堰5と比べると、本実施形態の堰5においては、第1空間SAが占める面積がより小さくなっているので、表示パネル100における発光色不良をさらに抑えることができる。
本実施形態の堰5においても、凹空間20内において、堰5の内側領域(第1空間SA)並びに堰5と横バンク24との間の間隙にインクの着弾点が存在するように、堰5の形状を設定することが好ましい。
この点について、図19(c)を参照しながら、具体的に説明する。
本実施形態でもノズルヘッド322を標準位置で走査させるものとして説明する。
説明上、L字形状の堰5を、点A3を境にして2つの堰部分に分け、横バンク24Aに近い方を堰部分5Aとし、横バンク24Bに近い方を堰部分5Bとする。
堰部分5Aと堰部分5Bとの間の第1空間SAに着弾点を存在させるための基本的な条件は、実施の形態1と同様であって、2本の着弾ラインQ1,Q2のいずれかが堰5の内側領域(第1空間SA)を横断する長さが、着弾点のピッチW1よりも長ければ、堰部分5Aと堰部分5Bとの間の第1空間SAに着弾点が存在する。
ただし本実施形態の堰5においては、各堰部分5A,5BがX方向に対して傾斜しているので、着弾ラインQ1が堰5と交差する2か所の間隔(着弾ラインQ1上における堰部分5Aと堰部分5Bとの間隔)の方が、着弾ラインQ2が堰5と交差する2か所の間隔(着弾ラインQ2上における堰部分5Aと堰部分5Bとの間隔)よりも長くなっている。
従って、着弾ラインQ1が堰5と交差する2か所の間隙L11が、着弾点のピッチW1よりも長く(L11>W1)なるように、堰部分5Aと堰部分5Bの形成位置を設定すれば、基本的にその間の第1空間SAに着弾点を存在させることができる。
ここで、着弾点のピッチW1は通常20μm以上なので、着弾ラインQ1上における堰部分5Aと堰部分5Bとの間隙L11を20μmよりも長く設定することが、堰部分5Aと堰部分5Bとの間の第1空間SAに着弾点を存在させる上で好ましいともいえる。
次に、堰部分5Aと横バンク24Aとの間の間隙に着弾点を存在させるのに適した条件を考察する。この条件も基本的には実施の形態1と同様であって、着弾ラインQ1,Q2のいずれかが、この堰5Aと横バンク24Aとの間の間隙を横断する長さを、横バンク24Aとそれに最も近い着弾点との距離W2よりも長く設定すればよい。
ただし、本実施形態では、着弾ラインQ2が堰5Aと横バンク24Aとの間の間隙を横断する長さL22の方が、着弾ラインQ1が堰部分5Aと横バンク24Aとの間の間隙を横断する長さL21よりも長い。従って、着弾ラインQ2が堰部分5Aと横バンク24Aとの間の間隙を横断する長さL22が、横バンク24Aとそれに最も近い着弾点との距離W2よりも長くなるように(L22>W2)設定すればよいことになる。
また、着弾ラインQ2上における横バンク24Aと堰部分5Aとの間隙L22を20μmより長く設定する(L2>20μmとする)ことが好ましいともいえる。
次に、堰部分5Bと横バンク24Bと間の間隙に着弾点を存在させるための条件も、同様であって、着弾ラインQ1,Q2のいずれかが、堰部分5Bと横バンク24Bとの間の間隙を横断する長さを、横バンク24Bとそれに最も近い着弾点との距離W3よりも長く設定すればよい。
ただし、着弾ラインQ2が堰部分5Bと横バンク24Bとの間の間隙を横断する長さL32の方が、着弾ラインQ1が堰部分5Bと横バンク24Bとの間の間隙を横断する長さL31よりも長いので、L32>W3に設定すればよいことになる。
また、着弾ラインQ2上における堰部分5Bと横バンク24Bとの間隙L32を20μmより長く設定する(L32>20μmとする)ことが好ましいともいえる。
なお、図19(c)に示す例では、欠陥部3のY方向の位置が、横バンク24Aと横バンク24Bとの中間付近であって、その欠陥部3の周りに形成される堰5も、横バンク24Aと横バンク24Bとの間に形成されているが、例えば、欠陥部3の位置が横バンク24Aに近い場合は、堰部分5Aの全部または一部をその横バンク24Aの上に重ねて形成してもよい。そして、堰部分5Aを横バンクAの上に重ねて形成することによって、実施の形態1で説明したように、インクの未濡れ防止効果を得ることができる。
<実施の形態3>
実施の形態3にかかる表示パネル100の構成、並びにその製造方法も、実施の形態1で説明した構成、並びに製造方法と同様である。
また、縦バンク14aにおける欠陥部3を補修するときに、欠陥部3が存在する縦バンク14aに隣接する各凹空間20に、堰5を形成する点も同様であるが、形成する堰5の形状が異なっている。
図20(a)は、実施の形態3にかかる堰5の形状を示す斜視図、(b)は、凹空間20に、堰5を形成した後、インク層15aを形成した平面図、(c)は、堰5を形成した凹空間に対するインクの着弾点を模式的に示す図である。
本実施形態にかかる堰5も、実施の形態2と同様に、図20(b)に示すように、X-Y面を平面視するとき、欠陥部3をY方向に挟む2点A1,A2の一方から欠陥部3を迂回して他方に亘って形成されているが、欠陥部3が存在する縦バンク14の隣の縦バンク14とが非接触である点が実施の形態2と異なっている。すなわち、本実施形態において、各堰5が欠陥部3の中央からX方向に離間する最大距離bが、凹空間20の幅(X方向幅)よりも小さく設定されている。
また、各堰5の形状は図20(a)〜(c)に示すようにC字形である。
この堰5の形成方法も、実施の形態1において図12(a)〜(g)を参照しながら説明した方法と同様であって、点A1から点A2に到る堰形成ラインに沿って設定した複数の塗布点に、補修材を順次塗布することによって、堰5を形成することができる。
このように、欠陥部3を有する縦バンク14の両側に隣接する各凹空間に堰5を形成することによって、図20(a)に示すように、各凹空間20は、欠陥部3に近接する空間部分からなる第1空間SAと、欠陥部3に近接しない空間部分からなる第2空間SBとに仕切られるので、実施の形態1と同様に混色範囲を抑える効果を奏する。
すなわち、図20(b)に示すように、縦バンク14同士の間の凹空間20に、発光層形成用のインクが塗布されるときに、赤色インクと緑色インクが、欠陥部3を介して混ざり合って、混色領域ができても、その混色領域は堰5を超えないので、第2空間SBに広がらない。
また、欠陥部3の周囲を囲むように補修材を塗布することによって堰5を形成するので、補修が容易である点について、また、表示パネル100製造後において、堰5で挟まれた領域における電流リークが生じない点についても同様である。
一方、本実施の形態では、上記実施の形態1,2と比べて、堰5によって仕切られた欠陥部3に近接する第1空間SAが占める面積をさらに小さくできるので、表示パネル100における発光色不良をさらに抑えることができる。
本実施形態の堰5においても、凹空間20内において、堰5の内側領域(第1空間SA)に、インクの着弾点が存在するように、堰5の形状を設定することが好ましい。
この点について、図20(c)を参照しながら、具体的に説明する。
本実施形態でもノズルヘッド322を標準位置で走査させるものとして説明する。
説明上、図20(c)に示すように、コの字形の堰5を3つの堰部分(横バンク24Aに近い側の堰部分5A、横バンク24Bに近い側の堰部分5B、堰部分5Aと堰部分5Bにまたがって架橋されている堰部分5C)に分ける。
まず、堰5の内側(第1空間SA)に着弾点が存在するためには、着弾ラインQ1,Q2のいずれかが、堰部分5A,堰部分5Bを横切って、第1空間SAを通過することが必要である。すなわち、着弾ラインQ1,Q2のいずれかと欠陥部3を有する縦バンク14との間隔が、堰5における欠陥部3が存在する縦バンク14から最も離間している箇所の離間距離D1(欠陥部3を有する縦バンク14と堰部分5Cとの間のX方向間隔)よりも小さいことが必要である。
さらに、堰部分5Aと堰部分5Bとの間(第1空間SA)に着弾点を存在させるために、着弾ラインQ1,Q2のいずれかが堰5と2か所で交差する箇所の間の間隔が、着弾点のピッチW1よりも長くなるように、堰部分5A及び堰部分5BのY方向形成位置を設定することが好ましい。そうすれば、堰部分5Aと堰部分5Bとの間に着弾点を存在させることができる。
図20(c)に示す例では、着弾ラインQ1,Q2のうち、着弾ラインQ1は、欠陥部3が存在する縦バンク14との間隔D2が、離間距離D1よりも短く(D2<D1)設定されているので、着弾ラインQ1が堰5の2か所と交差(堰部分5A及び堰部分5Bと交差)して、第1空間SAを通過している。
従って、着弾ラインQ1が第1空間SAを通過する長さL1(すなわちY方向に対抗する堰部分5Aと堰部分5Bとの間の間隔)が、着弾点のピッチW1より長く(L1>W1)なるように、堰部分5A及び堰部分5BのY方向の形成位置を設定すればよく、そうすれば堰部分5Aと堰部分5Bとの間に着弾点を存在させることができる。
なお、縦バンク14と着弾ラインとの間には、通常10μm程度の間隔が確保されるので、D1>10μmに設定することが好ましいともいえる。また、着弾点のピッチW1は通常20μm以上なので、堰部分5Aと堰部分5Bとの間隙L1を20μmよりも長く設定することが好ましいともいえる。
次に、本実施形態の堰5においても、それに隣接する横バンク24との間に間隙がある場合は、その間隙にインクを着弾させて、当該間隙内に未濡れが生じないようにすることが好ましい。
例えば、図20(c)に示す例のように、堰部分5Aと横バンク24Aとの間、並びに堰部分5Bと横バンク24bとの間に間隙がある場合、各間隙にインクを着弾させることが好ましい。
堰5Aと横バンク24Aとの間の間隙に着弾点を存在させるための条件については、実施の形態1で説明したのと同様であって、着弾ラインQ1,Q2のいずれかが、堰部分5Aと横バンク24Aとの間の間隙を横断する長さを、横バンク24Aとその横バンク24Aに最も近い着弾点との距離W2よりも長く設定すればよい。
図20(c)に示す例では、着弾ラインQ1,Q2が堰部分5Aと横バンク24Aとの間の間隙を横断する長さは同じL2なので、L2>W2となるように堰部分5Aの形成位置を設定すればよい。
また、堰部分5Bと横バンク24Bとの間の間隙についても、同様であって、着弾ラインQ1,Q2のいずれかが堰5Bと横バンク24Bとの間隙を横断する長さ(L3)が、横バンク24Bに最も近い着弾点との距離W3よりも長く(L3>W3)なるように、堰部分5Aの形成位置を設定すればよい。
なお、図20(c)に示す例でも、欠陥部3のY方向の位置は横バンク24Aと横バンク24Bとの中間近くであり、欠陥部3の周りに形成される堰5のY方向の位置が、横バンク24Aと横バンク24Bとの間に設定されているが、堰5の少なくとも一部を横バンク24の上に重ねて形成してもよい。例えば、欠陥部3の位置が横バンク24Aに近い場合は、堰部分5Aを横バンク24の上に重ねて形成したり、堰部分5Aと堰部分5Cを横バンク24の上に重ねて形成してもよい。
<実施の形態4>
上記実施の形態1〜3においては、堰5の内側領域(第1空間SA)に着弾点を存在するように、堰形成工程において形成する堰5の形状を設定した。
これに対して、本実施形態では、発光層形成工程でインクをインクジェット装置で凹空間20に塗布するときに、ノズルヘッド322のY方向の位置を調整することによって、堰5の内側領域(第1空間SA)に着弾点を存在させる。
図21(a),(b)は、本実施形態にかかるインクの塗布方法について説明する図である。図21(a)は、ノズルヘッド322のY方向の位置を標準位置に設定した場合、(b)は、ノズルヘッド322のY方向の位置を調整した後の状態を示している。図中、各ノズル325のノズル走査ラインを一点鎖線で示している。図面の簡素化のため、横バンク24Aと横バンク24Bとの間に、2本の着弾ラインQ1,Q2に沿って着弾点を4個ずつ点在させている。
堰5の形状は、実施の形態1と同様、欠陥部3を有する縦バンク14を囲むように、堰5が井桁状に形成されている。そして、ノズルヘッド322をX方向に走査しながら、各ノズル325からインクを吐出することによって、凹空間20内にインクを着弾させる点も同様である。
ただし本実施形態では、下地基板11上のいずれかの欠陥部3の周囲に形成した堰5Aと堰5Bとの間の間隙L1が、インク着弾点のピッチW1よりも小さく設定されていることを前提として説明する。
いずれかの欠陥部3の周囲に形成した堰5Aと堰5Bとの間の間隙L1がW1よりも小さい場合、インクジェット装置300においてノズルヘッド322のY方向の位置を標準位置に設定してノズルヘッド322をX方向に走査させると、図21(a)のように、その第1空間SAをノズル325のいずれの走査ラインも通過しないケースもあり得る。
そこで、本実施形態では、インクジェット装置300で下地基板11上の各凹空間20にインクを塗布する前に、必要に応じて、図21(b)に示すようにノズルヘッド322のY方向の位置をずらしてから、ノズルヘッド322をX方向に走査させる。そしてこのときのずらし量を、すべての欠陥部3に対応する第1空間SAを、いずれかのノズル走査ラインが通過するように設定する。
以下にその具体的な方法について説明する。
図22は、インクジェット装置300でインクを塗布する工程の一具体例を示すフローチャートである。図中nは、下地基板11上における欠陥部3に付した番号を示す。ステップS51〜S61の処理は、ノズルヘッド322のずらし量ΔWを設定する具体例を示している。
まず、1番目の欠陥部3について(ステップS51)、その欠陥部3に対応するサブピクセル内に設定した基準Soに対する堰5AのY方向の位置S1及び堰5BのY方向の位置S2を求める。例えば、図21(a)に示すように、欠陥部3に対応する横バンク24Bの縁を基準Soとして、堰5AのY方向の位置S1及び堰5BのY方向の位置S2を求める。堰5A,5BのY方向の位置S1,S2については、実施の形態1で説明した堰形成工程において補修装置200で設定した1対の堰形成ライン(図11参照)のY方向の位置がわかっているので、その位置を、上記基準Soを基準にして表せばよい(ステップS52)。
そして、求めた堰5A,5BのY方向の位置S1,S2と、堰5A,5Bの厚みTの値を用いて、上記基準Soに対する第1空間SAのY方向の範囲を求める。第1空間SAのY方向の範囲は、(S2−T/2)以上、(S1+T/2)以下の範囲となる(ステップS53)。
2番目以降の欠陥部3についても、同様に、第1空間SAのY方向の範囲を求める(ステップS54でNo、ステップS55、S52、S53)。そして、すべての欠陥部3について第1空間SAのY方向の範囲を求めたら(ステップS54でYes)、次のステップS56〜S62でずらし量ΔWを求める。
ステップS56では、ノズルヘッド322のY方向の位置が標準位置にあるときの各ノズル走査ラインのY方向の位置(上記基準Soに対する各ノズル走査ラインの標準位置Y1,Y2,Y3,Y4)を求める。
この各ノズル走査ラインの標準位置Y1,Y2,Y3,Y4は、例えば、1サブピクセルのY方向の長さ、並びに着弾点のピッチ(ノズルピッチ)W1から算出できる。すなわち、図21(a)に示すように、1サブピクセルのY方向の長さ(横バンク24Aと横バンク24Bとの間の間隙)をLo、ノズルピッチをW1とすると、上記基準Soに対する4つの各ノズルの走査ラインのY方向の位置Y1,Y2,Y3,Y4は、Y1=0.5(Lo−3W1)、Y2=0.5(Lo−W1)、Y3=0.5(Lo+W1)、Y4=0.5(Lo+3W1)となる。
そして、まずカウンタmを0にして(ステップS57)、ステップS58において、各ノズル走査ラインが標準位置Y1,Y2,Y3,Y4にあるときに、上で求めたすべての欠陥部3に対応する第1空間SAの中に、いずれのノズル走査ラインも通過しない第1空間SAが存在するか否かを調べる。
この判定は、例えば、1番目の欠陥部3に対応する第1空間の範囲(S1+T/2)以上、(S2−T/2)以下の範囲内に、Y1,Y2,Y3,Y4のいずれかが入っているかどうかを判定し、入っていれば、2番目以降の欠陥部3についても同様に、対応する第1空間の範囲(S1+T/2)以上、(S2−T/2)以下の範囲内に、Y1,Y2,Y3,Y4のいずれかが入っているかどうかを判定し、最終番目の欠陥部3に到るまで、対応する第1空間の範囲(S1+T/2)以上、(S2−T/2)以下の範囲内に、Y1,Y2,Y3,Y4のいずれかが入っていれば、いずれのノズル走査ラインも通過しない第1空間SAは存在しないと判定できる。また、それ以外なら、いずれのノズル走査ラインも通過しない第1空間SAが存在することになる。
そして、いずれのノズル走査ラインも通過しない第1空間SAは存在しないと判定された場合(ステップS59でNo)、ステップS60でずらし量ΔW=0に決定されるので、操作者がこのずらし量ΔW=0をインクジェット装置300の入力手段333に入力する。それによって、インクジェット装置300では、ノズルヘッド322のY方向の位置が標準位置にセットされ、ノズルヘッド322はY方向標準位置のままX方向に走査しながらインクを吐出する(ステップS61)。
一方、上記ステップS59で、いずれの走査ラインも通過しない第1空間SAが存在すると判定された場合(ステップS59でYes)は、各走査ラインのY方向の位置を、ずらし量を少しずつ増やしながらずらしていき、いずれの走査ラインも通過しない第1空間SAが存在するか否かを調べる。
具体的には、カウンタmに1を加え(ステップS62、S63)、各走査ラインのY方向の位置を標準位置(Y1,Y2,Y3,Y4)から着弾ピッチW1の1/10ずつ正方向と負方向とにずらしてみて、ずらした後に、いずれのノズル走査ラインも通過しない第1空間SAが存在するか否かを調べる(ステップS58)。
この各ノズル走査ラインを標準位置から正方向あるいは負方向に着弾ピッチW1の1/10ずらしたときの判定方法(m=1におけるステップS58)も、上記m=0のときと同様であって、正方向については、1番目の欠陥部3に対応する第1空間の範囲(S2−T/2)以上、(S1+T/2)以下の範囲内に、Y1+0.1W1,Y2+0.1W1,Y3+0.1W1,Y4+0.1W1のいずれかが入っているかどうかを判定し、入っていれば、2番目以降の欠陥部3についても順に判定していくことで、着弾ピッチW1の1/10ずらした後に、いずれのノズル走査ラインも通過しない第1空間SAが存在するか否かを調べることができる。
そして、各走査ラインのY方向の位置を標準位置(Y1,Y2,Y3,Y4)から着弾ピッチW1の1/10ずつ正方向あるいは負方向にずらした後に、いずれのノズル走査ラインも通過しない第1空間SAが存在しない場合(S59でNoの場合)は、ステップS60でずらし量ΔWは、0.1W1または−0.1W1に決まるので、操作者がこのずらし量ΔW=0.1W1または−0.1W1を、インクジェット装置300の入力手段333に入力する。それによって、インクジェット装置300では、ノズルヘッド322のY方向の位置は標準位置から正方向又は負方向に着弾ピッチW1の1/10だけずれた位置にセットされ、ノズルヘッド322はそのY方向の位置において、X方向に走査しながらインクを吐出する。
一方、各ノズル走査ラインのY方向の位置を標準位置(Y1,Y2,Y3,Y4)から着弾ピッチW1の1/10ずつ正方向あるいは負方向にずらした後に、いずれのノズル走査ラインも通過しない第1空間SAが存在すると判定された場合(ステップS59でYesの場合)は、カウンタmにさらに1を加えてm=2とし(ステップS62)、ずらし量の大きさを着弾ピッチW1の2/10にして、各走査ラインのY方向の位置を標準位置(Y1,Y2,Y3、Y3)から着弾ピッチW1の2/10ずつ正方向と負方向とにずらし、ずらした後に、いずれのノズル走査ラインも通過しない第1空間SAが存在するか否かを調べる(m=2でステップS58,S59)。
そして、各走査ラインのY方向の位置を標準位置(Y1,Y2,Y3,Y4)から着弾ピッチW1の2/10ずつ正方向あるいは負方向にずらした後に、いずれのノズル走査ラインも通過しない第1空間SAが存在しない場合(m=2でステップS59でNoの場合)は、ステップS60でずらし量ΔW=0.2W1またはΔW=−0.2W1に定まるので、操作者がこのずらし量ΔW=0.2W1または−0.2W1を、インクジェット装置300の入力手段333に入力する。
一方、各走査ラインのY方向の位置を標準位置(Y1,Y2,Y3,Y4)から着弾ピッチW1の2/10ずつ正方向あるいは負方向にずらした後に、いずれの走査ラインも通過しない第1空間SAが存在すると判定された場合(ステップS59でYes)、ずらし量を着弾ピッチW1の3/10に増やして同様の判定、並びに処理を行う。
以上のようにして、ステップS58,S59,S62,S63で、各走査ラインのずらし量を着弾ピッチW1の1/10ずつ増やしながら、すべての欠陥部3に対応する第1空間SAを、いずれかの走査ラインが通過するか否かを順に調べていき、いずれのノズル走査ラインも通過しない第1空間SAが存在しないと判定された時点のずらし量をΔWとして設定する。
以上のような方法でずらし量ΔWを求めることにより、いずれのノズル走査ラインも通過しない第1空間SAが存在しない条件を満たすようなずらし量が複数存在する場合、ずらし量ΔWとして絶対値が小さいものが優先的に設定されることになる。
ここで設定されるずらし量ΔWの絶対値が大きいと、横バンク24の上に着弾点が設定される可能性もあるが、上記のようにずらし量ΔWの絶対値が小さいものが優先的に求められることは、横バンク24の上に着弾点が設定されるのを避ける上でも好ましい。
なお、カウンタm=9になって各ノズル走査ラインのずらし量を着弾ピッチW1の9/10まで増やしても、いずれのノズル走査ラインも通過しない第1空間SAが存在する場合(ステップS63でYesの場合)には、すべての欠陥部3の周囲の第1空間SAを、いずれかのノズル走査ラインが通過するようなずらし量は存在しない(NG)と判断し、そのような場合は、例えばその下地基板11に対するインク塗布は取り止めることにする。
以上説明したように、インクジェット装置300でインクを塗布する際に、ノズルヘッド322のY方向の位置を調整してから、ノズルヘッド322のX方向への走査およびインク塗布を実施することによって、図21(b)に示すように、ノズルヘッド322のY方向の位置を調整する。その結果、下地基板11上のすべての欠陥部3に対応する第1空間SAに着弾点を存在させることができ、その第1空間SAにインクが塗布されて発光層1が形成されることになる。
なお、本実施形態では、堰5が井桁状の場合において、インクジェット装置300におけるノズルヘッド322の位置を調整することによって、第1空間SAに着弾点を存在させることができることを説明したが、堰5が井桁状でなく、実施の形態2,3の形状の場合も同様に、ノズルヘッド322のY方向の位置を調整することによって、第1空間SAに着弾点を存在させることができる。
また、以上の説明では、操作者がずらし量ΔWを求めてインクジェット装置300に入力することとしたが、インクジェット装置300において上記ステップS51〜S63の処理を自動で行うようにしてもよい。
<変形例>
1.上記実施の形態1〜4においては、下地基板11上に、縦バンク14と横バンク24とが形成されている場合について説明したが、横バンク24を形成しない場合にも、同様に、縦バンク14に生じた欠陥部を堰で補修して、ウェット法で発光層を形成することによって、同様に表示装置における発光色不良を低減することができる。
2.上記実施の形態1〜4においては、各凹空間20の中において、Y方向に伸長する2本の着弾ラインQ1,Q2上に、それぞれ複数の着弾点が点在していたが、各凹空間20の中に設ける着弾ラインの数は1本でもよいし、3本以上であってもよく、その場合も同様に実施することができる。
各凹空間20における着弾ラインが1本の場合は通常、凹空間20の幅方向中央(X方向中央)に沿って着弾ラインが設定されるので、第1空間に着弾点を存在させる条件も、凹空間20の中央ライン上において間隙L1、L2、L3などの条件を設定すればよい。
3.上記実施の形態1〜4において、図6(b)、図15(a),(b)、図19(a),(b)、図20(a),(b)に示した例では、いずれも欠陥部3が存在する縦バンク14を基準にして、その両側の凹空間20に堰5が線対称の形状で形成されているが、この両側の凹空間20に形成される堰5は対称でなくてもよい。
例えば、実施の形態1にかかる図6(b)、図11(a)においては、2つの堰5が同じ点A1を通るラインに沿ってX方向に伸び、残り2つの堰は同じ点A2を通るラインに沿ってX方向に伸びているが、各堰が別々のラインに沿ってX方向に伸びていてもよい。
また、実施の形態2にかかる図19(b)、実施の形態3にかかる図20(b)においても、2つの堰5は、同じ点A1から同じ点A2に到っているが、別々の点から別々の点に到っていてもよい。
また、実施の形態3において、図20(b)では欠陥部3を有する縦バンク14から2つの堰5がX方向に離間する最大距離bが同じであるが、欠陥部3を有する縦バンク14から2つの堰5がX方向に離間する最大距離bは互いに異なっていてもよい。
4.上記実施の形態1〜4では、基板上に、ライン状の縦バンクと、縦バンクよりも高さの低い横バンクが形成されたものにおいて、縦バンクに生じた欠陥部を補修する場合について説明したが、Y方向に伸長する複数の縦バンク14と、X方向に伸長する複数の横バンク24とが同等の高さを有するピクセルバンクに生じた欠陥部を補修する場合も同様に実施することができる。
図23(a)〜(d)は、ピクセルバンクを有する表示パネルにおいて、そのピクセルバンクに生じる欠陥部を補修する例を示す図である。
図23(a)〜(d)に示すピクセルバンクは、Y方向に伸長する複数の縦バンク14と、X方向に伸長する複数の横バンク24とが同等の高さを有し、これらの縦バンク14及び横バンク24で囲まれた各矩形領域に有機EL素子が形成されている。
そして、いずれの場合も、Y方向に伸長する縦バンク14の中で、欠陥部3が存在する縦バンク14の両側に隣接する凹空間20の各々の中に堰5が形成され、その堰5は、凹空間20を、欠陥部3に近接する空間と、欠陥部3に近接しない空間とに仕切っている。
図23(a)では、実施の形態1と同様に、欠陥部3が存在する縦バンク14の両側の各凹空間20に、点A1及び点A2の各々から、対向する縦バンク14に亘る形態で、堰5が対で形成されている。
この場合も、インクを塗布するときに欠陥部3に起因して混色が形成されても、混色が広がる範囲は、対となる堰5同士の間の領域内に限られるので、発光色不良を抑える効果が得られる。
図23(b)では、実施の形態2と同様に、欠陥部3が存在する縦バンク14の両側の各凹空間20に、点A1から欠陥部3を迂回して点A2に亘る形態で堰5が形成されている。
この場合も、インクを塗布したときに欠陥部3に起因して混色が形成されても、混色が広がる範囲は、堰5で囲まれた範囲に限られるので、発光色不良を抑える効果が得られる。
また図示はしないが、ピクセルバンクに対して、実施の形態3の堰5を適用することもでき、同様に発光色不良を抑える効果が得られる。
図23(c)では、縦バンク14における欠陥部3の位置が横バンク24に近い位置である。そして、欠陥部3が存在する縦バンク14の両側の各凹空間20に、点A1から欠陥部3を迂回して当該横バンク24に亘る形態で堰5が形成されている。
この場合も、インクを塗布したときに欠陥部3に起因して混色が形成されても、混色が広がる範囲は、2つの堰5と横バンク24とで囲まれた範囲に限られるので、発光色不良を抑える効果が得られる。
図23(d)では、欠陥部3の位置が、縦バンク14と横バンク24が交差する位置であって、欠陥部3は4つの凹空間20に臨んでいる。
そして、この4つの各凹空間20に堰5が1つずつ形成されている。すなわち、2つの堰5は点A1から欠陥部3を迂回して横バンク24に亘る形態で堰5が形成され、残り2つの堰5は点A2から欠陥部3を迂回して横バンク24に亘る形態で堰5が形成されている。
この場合、インクを塗布したときに欠陥部3に起因して4つの凹空間20の間で混色が生じる可能性があるが、混色が形成されても、混色が広がる範囲は、4つの堰5で囲まれた範囲に限られるので、発光色不良を抑える効果が得られる。
このようにピクセルバンクに生じた欠陥部の近傍において凹空間20に堰を形成した場合も、発光層を形成する際に、インクの着弾点を堰5によって仕切られた各空間(欠陥部に近接する第1空間と近接しない第2空間)に存在させることによって、表示パネルの製造後に各空間で電流リークが生じない点も同様である。
5.上記実施の形態では、発光層を形成する際において、インクを堰で仕切られた第1空間と第2空間にそれぞれ着弾させることを説明したが、発光層以外の有機機能層を形成する際においても、インクを堰で仕切られた第1空間と第2空間にそれぞれ着弾させることによって同様の効果を奏する。
例えば、ホール注入層と発光層との間にホール輸送層をウェット法で形成する際に、インクジェット装置でホール輸送層用のインクを第1空間と第2空間にそれぞれ着弾点を存在させることによって、第1空間と第2空間における未濡れを防止し、表示パネルに電流リークが生じないようにすることができる。
6.上記実施の形態では、トップエミッション型有機ELパネルを例にとって説明したが、ボトムエミッション型有機ELパネルにおいても適用可能である。
本発明は、例えば、家庭用もしくは公共施設、あるいは業務用の各種表示装置、テレビジョン装置、携帯型電子機器用ディスプレイ等に用いられる有機EL表示装置に利用可能である。
1 有機EL表示装置
3 欠陥部
5(5A,5B) 堰
10 発光素子
11 下地基板
11b TFT層
11c 層間絶縁層
12 画素電極
13 ホール注入層
14 縦バンク
15a インク層
15 有機発光層
16 電子輸送層
17 共通電極
18 封止層
20 凹空間
24(24A,24B) 横バンク
100 表示パネル
200 補修装置
212 ディスペンサ
300 インクジェット装置
322 ノズルヘッド
325 ノズル
Q1,Q2 着弾ライン
W1 着弾点のピッチ

Claims (12)

  1. 基板上方にバンクを形成し、当該バンクで区画された凹空間のそれぞれに、有機機能層を形成することによって有機EL表示装置を製造する方法であって、
    前記基板上方に形成されたバンクにおける欠陥部を検出し、
    欠陥部が検出された場合に、バンクにおける当該欠陥部が存在する部分の両側に隣接する凹空間の各々の中に、
    前記凹空間を、前記欠陥部に近接する空間部分からなる第1空間と、前記欠陥部に近接しない空間部分からなる第2空間とに仕切る少なくとも1つの堰を形成し、
    その後、前記各凹空間に、ノズルヘッドから前記凹空間のそれぞれにインクを吐出することによって前記有機機能層を形成し、
    前記有機機能層を形成する際に、前記第1空間及び第2空間のそれぞれに、前記ノズルヘッドから吐出されるインクの着弾点を存在させる、
    有機EL表示装置の製造方法。
  2. 前記基板上方に、基板面に沿った一方向に伸長する縦バンクを複数本並列に配列し、
    前記有機機能層を形成する際に、前記縦バンクで区画された各凹空間において、前記一方向に伸長する1本以上の着弾ラインに沿って複数の着弾点を点在させ、
    前記堰を形成した凹空間において、前記1本以上の着弾ラインのいずれかが前記第1空間を横断する長さが、当該着弾ライン上の着弾点のピッチよりも長くなるように、前記堰の形状を設定する、
    請求項1記載の有機EL表示装置の製造方法。
  3. 前記基板上方に、基板面に沿って長尺な横バンクを複数本並列に配列し、
    前記横バンクよりも高さが高く、前記横バンクと交差し、前記基板面に沿った一方向に伸長する縦バンクを複数本並列に配列し、
    前記少なくとも1つの堰のいずれかは、隣接する横バンクとの間に間隙を開けて形成し、
    前記有機機能層を形成する際に、当該間隙に、前記ノズルヘッドから吐出されるインクの着弾点を存在させる、
    請求項1記載の有機EL表示装置の製造方法。
  4. 前記有機機能層を形成する際に、前記縦バンクで区画された各凹空間において、前記一方向に伸長する1本以上の着弾ラインに沿って複数の着弾点を点在させ、
    前記堰を形成した凹空間において、
    前記着弾ラインのいずれかが前記間隙を横断する長さを、前記堰に隣接する横バンクと当該横バンクに最も近い着弾点との距離よりも長く設定する、
    請求項3記載の有機EL表示装置の製造方法。
  5. 前記基板上方には、基板面に沿った一方向に伸長する縦バンクを複数本並列に配列し、
    前記堰を形成する際に、
    欠陥部が存在する縦バンクの両側に隣接する凹空間の各々に、
    前記欠陥部が存在する縦バンクにおいて欠陥部を前記一方向に挟む2点のそれぞれから、前記欠陥部が存在する縦バンクの隣の縦バンクに亘る形状の堰を、対で形成し、
    前記有機機能層を形成する際に、前記縦バンクで区画された各凹空間において、前記一方向に伸長する1本以上の着弾ラインに沿って複数の着弾点を点在させ、
    前記堰の対と交差するいずれかの着弾ライン上において、前記対をなす堰同士の間隔を、着弾点のピッチよりも長く設定する、
    請求項1に記載の有機EL表示装置の製造方法。
  6. 前記基板上方には、基板面に沿った一方向に伸長する縦バンクを複数本並列に配列し、
    前記堰を形成する際に、
    前記欠陥部が存在する縦バンクにおいて欠陥部を前記一方向に挟む2点の一方から前記欠陥部を迂回して他方に亘る形状の堰を形成し、
    前記有機機能層を形成する際に、前記縦バンクで区画された各凹空間において、前記一方向に伸長する1本以上の着弾ラインに沿って複数の着弾点を点在させ、
    前記堰と2か所で交差するいずれかの着弾ライン上において、前記2か所の堰部分同士の間隔を、着弾点のピッチよりも長く設定する、
    請求項1に記載の有機EL表示装置の製造方法。
  7. 前記堰の各々は、前記2点の一方から他方に亘る途中で、
    前記欠陥部が存在する縦バンクの隣の縦バンクと接している、
    請求項6記載の有機EL表示装置の製造方法。
  8. 前記堰の各々は、
    前記欠陥部が存在する縦バンクの隣の縦バンクに非接触であり、
    前記堰を形成した凹空間において、前記1以上の着弾ラインのいずれかと、前記欠陥部が存在する縦バンクとの間隔を、
    前記堰における前記欠陥部が存在する縦バンクから最も離間している部分の離間距離よりも小さく設定する、
    請求項6記載の有機EL表示装置の製造方法。
  9. 前記基板上方に、基板面に沿った一方向に伸長する縦バンクを複数本並列に配列し、
    前記縦バンクで区画された各凹空間に、前記縦バンクよりも高さの低い複数の横バンクを列設し、
    前記堰は、その少なくとも一部を、前記横バンクの上に重ねて形成する、
    請求項1〜8のいずれかに記載の有機EL表示装置の製造方法。
  10. 前記有機機能層を形成する際に、
    前記ノズルヘッドを前記基板に沿って走査しながら前記ノズルヘッドからインクを吐出することによって前記凹空間へのインクの塗布を行い、
    前記基板に沿って前記走査方向と直交する方向に前記ノズルヘッドの位置を調整することによって、前記第1空間及び第2空間のそれぞれに、前記ノズルヘッドから吐出するインクの着弾点を存在させる、
    請求項1記載の有機EL表示装置の製造方法。
  11. 前記有機機能層は、有機発光層を含む、
    請求項1〜10のいずれかに記載の有機EL表示装置の製造方法。
  12. 基板と、前記基板上方に形成されたバンクと、前記バンクによって区画された各凹空間に形成された有機機能層と、を有する有機EL表示装置であって、
    前記基板上方のバンクにおいて欠陥部が存在する部分の両側に隣接する凹空間の各々の中に、
    前記有機機能層を、前記欠陥部に近接する部分からなる第1有機機能層と、前記欠陥部に近接しない部分からなる第2有機機能層とに仕切る堰が形成されている、
    有機EL表示装置。
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