以下、本発明の一実施形態を、図1〜図13を参照して説明する。
本実施形態は、本発明をファイルF及びその表紙体Hの背表紙H2に取付けられた綴じ具Gに適用した場合のものである。
ファイルFは、表表紙H1、背表紙H2及び裏表紙H3を有した表紙体Hを備えたものである。このファイルFは表紙体Hに施された図示しない印刷やシール等によりその使用方向が明確に設定されている。
綴じ具Gは、相互に突き合わせた第一、第二の連結板11、12を軸支してなるベース1と、第一の連結板11に支持された第一のリング構成部材31、51及び第二の連結板12に支持された第二のリング構成部材32、52をそれぞれ備えてなる複数すなわち2つの綴じリング3、5とを具備してなり、これら綴じリング3、5のうちの一の綴じリング3に加えられる閉方向の操作力により他の綴じリング5をも閉じることができるようにしたものである。
換言すれば、本実施形態における綴じ具Gは、一の綴じリング3と他の綴じリング5の2つの綴じリング3、5によって主として2穴の用紙(図示せず)を綴じることができるようにしたものである。以下、各部について説明する。
ベース1は、例えば合成樹脂により作られたベース本体13と、このベース本体13に長手方向において複数箇所で軸支された第一、第二の連結板11、12とを具備してなる。
ベース本体13は、長手方向両端部に表紙体Hに取り付けるための取付孔131と、第一、第二の連結板を軸支するための4つの軸支部132と、第一の連結板を開位置へ付勢するための図示しない弾性付勢手段であるコイルバネを取り付けるためのバネ取付部133とを有したもので、内部に相互に突き合わせた第一、第二の連結板11、12を閉位置で面一に収容するための空間を形成しうる形状をなしている。ベース本体13の両側縁に設けた第一、第二の連結板11、12を回転可能に軸支する軸支部132は、図示下方から、端部軸支部134、2つ中間軸支部135、そして許容軸支部136を有してなる。かかる許容軸支部136については後に詳述する。
なお、第一、第二の連結板11、12の内縁部すなわち突き合わせ端縁111、121には噛み合わせ用の上向突起t1及び下向突起t2が設けられている。この実施形態においては、一の綴じリング3付近における第一の連結板11の端縁111に突設された二つの上向突起t1と一つの下向突起t2とが、第二の連結板12の端縁121に突設された二つの下向突起t2と一つの上向突起t1に対して閉位置では隙間無く嵌合し、開位置では先端部分のみが引っ掛かるように相対動作することによって二つの連結板11、12の動作を連動させつつ両連結板11、12の噛み合わせを確保している。
また、この実施形態においては、各綴じリング3、5は、第一、第二の連結板11、12に一体的に形成されたものであり、弾性付勢手段により開方向に間接的に付勢されている。具体的には、ベース本体13のバネ取付部133が設けられた一の綴じリング3付近に位置する部位で第一の連結板11が開方向に弾性的に付勢されており、この弾性付勢力が上記上向突起t1、下向突起t2を介して第二の連結板12も同様に開方向へ付勢されることで、第一の連結板11の内縁部111側と第二の連結板12の内縁部121側とがともに上方に向けて弾性付勢されている。
第一の連結板11は、一端部で一の綴じリング3の第一のリング構成部材31を支持するとともに他端部で他の綴じリング5の第一のリング構成部材51を支持するもので、具体的には概ね短冊状をなしている。この第一の連結板11はベース本体13同様、樹脂製のものである。この第一の連結板11は、前記リング構成部材31、51とともに適宜の方法により一体成形されている。より具体的に言えば、第一の連結板11に形成された前記リング構成部材31、51が相対角度を異ならせて設けられている。本実施形態では、一の綴じリング3の第一のリング構成部材31よりも他の綴じリング5の第一のリング構成部材51を約5°閉位置へ向けて傾けて形成している。
この第一の連結板11は、図3に示すように、長手方向に計4箇所で前記ベース本体13に軸支される回転軸112を有している。この回転軸112は、図示下方から、一端軸114、2つの中間軸115及び他端軸116を有している。
第二の連結板12は、一端部で一の綴じリング3の第二のリング構成部材32を支持するとともに他端部で他の綴じリング5の第二のリング構成部材52を支持するもので、具体的には概ね短冊状をなしている。この第二の連結板12も樹脂製のものである。この第二の連結板12は、前記リング構成部材32、52とともに適宜の方法により一体成形されている。より具体的に言えば、第二の連結板12に形成された前記リング構成部材32、52は相対角度を異ならせて設けられている。本実施形態では、一の綴じリング3の第二のリング構成部材32よりも他の綴じリング5の第二のリング構成部材52を約5°閉位置へ向けて傾けて形成するために、第一の連結板11と第二の連結板12は、一の綴じリング3と他の綴じリング5との間の部位を敢えて傾けて成形している。
この第二の連結板12は、図3に示すように、長手方向に計4箇所で前記ベース本体13に軸支される回転軸122を有している。この回転軸122は、図示下方から、一端軸124、2つの中間軸125及び他端軸126を有している。
しかして、本実施形態では、図1に示すように、各綴じリング3、5が開いた状態である開位置において、他の綴じリング5における第一のリング構成部材51の先端部51sと第二のリング構成部材52の先端部52sとの離間距離が、一の綴じリング3における第一のリング構成部材31の先端部31sと第二のリング構成部材32の先端部32sとの離間距離よりも短く設定されている。よって特に図4に示すように、他の綴じリング5を構成する両リング構成部材51、52の係合部511、521同士が係合した状態では、一の綴じリング3を構成する両リング構成部材31、32の先端部31s、32sは所定距離離間した状態にある。
各綴じリング3、5は、一の綴じリング3付近に設けられた図示しない弾性付勢部により開方向に付勢されているとともにその付勢力に抗して閉じられた状態で第一、第二のリング構成部材31、51、32、52の先端に設けられた係合部311、511、321、521同士が係合して閉位置に保持されるものである。詳述すれば、各綴じリング3、5は、第一の連結板11の端部に基端部312、512を位置付けた第一のリング構成部材31、51と、第二の連結板12の端部に基端部322、522を位置付けた第二のリング構成部材32、52とを具備してなる。
綴じリング3、5は、いわゆるOリングと称される構成をなすものである。すなわち本実施形態では第一のリング構成部材31、51、第二のリング構成部材32、52ともに全体が湾曲した形状をなしているが勿論、第二のリング構成部材32、52に略直線状に形成された直線と湾曲形状に形成された湾曲部とを設けることで、いわゆるDリングと称される構成としても良い。
第一のリング構成部材31、51の先端部には外向きの係合部311、511が設けられているとともに第二のリング構成部材32、52の先端部には内向きの係合部321、521が設けられ、第一のリング構成部材31、51の先端部と第二のリング構成部材32、52の先端部とを突き合わせることにより外向きの係合部311、511と内向きの係合部321、521とが係合して各綴じリング3、5が閉位置に保持されるようになっている。
具体的に、外向きの係合部311、511は、外側すなわち綴じ具Gの長手方向における外方側に向けて突出する突起311a、511aを備えたものである。内向きの係合部321、521は、内側に前記突起311a、511aを収容し得る凹部321a、521aを備えたものである。
各第一、第二のリング構成部材31、51、32、52の先端同士が係合する状態においては、外向きの係合部311、511の突起311a、511aが内向きの係合部321、521の凹部321b、521bに嵌るようになっており、第一、第二のリング構成部材31、51、32、52の突き合わせ側端部には係合時に第一のリング構成部材31、51と第二のリング構成部材32、52とを離間させるべく案内する案内傾斜面311c、511c、321c、521cが形成されている。
一の綴じリング3における第一のリング構成部材31に設けられた外向きの係合部311と他の綴じリング5における第一のリング構成部材51に設けられた外向きの係合部511とは互いに背反する方向を向いている。また、一の綴じリング3における第二のリング構成部材32に設けられた内向きの係合部321と他の綴じリング5における第二のリング構成部材52に設けられた内向きの係合部521とは互いに対面する方向を向いている。そのため、一の綴じリング3における第一のリング構成部材31と、他の綴じリング5における第一のリング構成部材51をそれぞれ相寄る方向に移動させることにより、係合部311、511、321、521同士の係合が解除されるようになっている。
以上のようにしてなる綴じ具Gを、ファイルFの背表紙H2に取付けている。そして、2つの綴じリング3、5の内、一の綴じリング3がファイルの使用者からみて手前側に位置するようにしてファイルFに取付けられており、その取付けはベース本体13に設けた取付孔131に挿通されたリベット138により行われている。この取付け状態では、第二のリング構成部材32、52が第一のリング構成部材31、51よりも右側に位置するようになっている。
このような構成のものであれば、第一、第二のリング構成部材31、51、32、52の係合部311、511、321、521同士の係合が解除されている状態では、弾性付勢手段すなわちベース本体13と第一の連結板11との間に取り付けられた図示しないねじりコイルバネの働きにより第一、第二の連結板11、12が弾性付勢されているため、綴じリング3、5は、図1に示すように開いた状態である開位置に維持される。この開いた状態から、図2、図8及び図10に示すように一の綴じリング3を構成している第一、第二のリング構成部材31、32を相寄る方向に操作すると、第一、第二の連結板11、12により相互に連結されている両綴じリング3、5が弾性付勢部の付勢力に抗して閉じ方向に作動し、図12に示す状態を経て最終的に図13に示すように各綴じリング3、5の第一のリング構成部材31、51の外向きの係合部311、511と第二のリング構成部材32、52の内向きの係合部321、521とが係合する。そのため、両綴じリング3、5は、係合後においては第一、第二のリング構成部材31、32から手を離しても閉位置に維持される。
第一のリング構成部材31、51の外向きの係合部311、511と第二のリング構成部材32、52の内向きの係合部321、521とが係合する際の作動を詳述すれば、次の通りである。
各綴じリング3、5が開位置にある状態から、図2、図8及び図10に示すように一の綴じリング3を構成している第一、第二のリング構成部材31、32に対し、手指によって閉方向の操作力を与えると、第一、第二の連結板11、12により相互に連結されている両綴じリング3、5が弾性付勢部の付勢力に抗して閉じ方向に作動し、他の綴じリング5の第一、第二のリング構成部材51、52の先端部51s、52s同士が、一の綴じリング3の第一、第二のリング構成部材31、32の先端部31s、32s同士が当接するよりも先に当接する。すなわち、手指によって閉方向の操作力が直接的に与えられる一の綴じリング3から離れて位置している綴じリングである他の綴じリング5の第一、第二のリング構成部材51、52の先端部51s、52s同士は、一の綴じリング3の第一、第二のリング構成部材31、32の先端部31s、32s同士が当接して押し合う前に先んじて、閉じ方向に押し合いを行うことになる。
次いで、第一のリング構成部材31、51の先端部と第二のリング構成部材32、52の先端部とがそれぞれ突き合った段階では、外向きの係合部311、511の案内傾斜面311c、511cと内向きの係合部321、521の案内傾斜面321c、521cとが当接する。その状態からさらに両リング構成部材31、51、32、52に閉じ方向の操作力が付与されると、案内傾斜面311c、511c、321c、521cの案内作用により外向きの係合部311、511を有している第一のリング構成部材31、51が一時的に内側に弾性変位するとともに内向きの係合部321、521を有している第二のリング構成部材32、52が一時的に外側に弾性変位することになる。そして、外向きの係合部311、511の突起311a、511aが内向きの係合部321、521の凹部321a、521aに嵌り込み、係合が完了する。その結果、一の綴じリング3から手を離しても両綴じリング3、5は閉位置に保持される。
しかして本実施形態に係る綴じ具Gは、前記ベース1が、前記第一、第二のリング構成部材51、52の係合部511、521同士が係合する際の動作方向に交差する方向の一時的な離間動作によって起こる前記第一、第二の連結板11、12の他端軸116、126の一時的な移動を許容しながら軸支する許容軸支部136を有してなる。
この許容軸支部136は、他の綴じリング5の近傍であるベース本体13の長手方向端部に設けられている。前記第一の連結板11の他端軸116の一方向すなわち図視上側への移動を許容する第一退避面136aと、前記第二の連結板12の他端軸126の前記一方向とは反対側である下方向への移動を許容する第二退避面136bとを有している。また前記許容軸支部136は上記第一退避面136a、第二退避面136bに加え、前記第一の連結板11の他端軸116の下方向への移動を禁止する第一禁止面136cと、前記第二の連結板12の他端軸126の上方向への移動を禁止する第二禁止面136dとを有している。そしてかかる退避許容部136は、第一の連結板11側の第一退避面136a及び前記第一禁止面136c並びに第二の連結板12側の第二退避面136b及び前記第二禁止面136dをそれぞれ連続的に断面視長円形状に形成することで、他端軸116、126のスムーズな移動を担保している。
すなわち以上の係合動作は、第一、第二のリング構成部材51、52を支持している第一、第二の連結板11、12の長手方向の一時的且つ部分的なたわみを利用して行われる。すなわち、第一のリング構成部材31、51に設けられた外向きの係合部311、511の案内傾斜面311c、511cと、第二のリング構成部材32、52に設けられた内向きの係合部321、521の案内傾斜面321c、521cとを当接させた状態で一の綴じリング3における両リング構成部材31、32をさらに閉じ方向に操作した場合、案内傾斜面311c、511c、321c、521cの案内作用により二つの第一のリング構成部材31、51は相寄る方向に倒れるとともに二つの第二のリング構成部材32、52は相離れる方向に倒れる動作が惹き起こされる。図11に示すように、二つの第一のリング構成部材31、51が相寄る方向へ傾倒する動作は、第一のリング構成部材51近傍において第一の連結板11が上方に第一のリング構成部材31近傍よりも大きくたわむこと、すなわち第一の連結板11の長手方向端部にある他端軸116の位置が第一退避面136aへ向けて上方に変位する方向にたわむことによって惹起される。二つの第二のリング構成部材32、52が相離れる方向へ傾倒する動作は、第二のリング構成部材52近傍において第二の連結板12が下方に第二のリング構成部材32近傍よりも大きくたわむこと、すなわち第二の連結板12の長手方向端部にある他端軸126の位置が第二退避面136bへ向けて下方に変位する方向にたわむことによって惹起される。このように、図11で示される第一、第二連結板11、12のたわみ動作が起こることで、他の綴じリング5は直接手で触れられる事が無く、一の綴じリング3から第一、第二の連結板11、12を伝って付与される間接的で小さな操作力によっても、容易に閉位置となり得る。
そして、以上の動作が軽快かつ円滑に行われつつも、閉位置では他の綴じリング5のがたつきは有効に禁止される。すなわち、前記許容軸支部136が、前記第一の連結板11の他端軸116の下方向への移動を禁止する第一禁止面136cと、前記第二の連結板12の他端軸126の上方向への移動を禁止する第二禁止面136dとを有しているので、閉位置にある他の綴じリング5は上方へ動かす外力が働くと他端軸126が第二禁止面136dに当接する。また閉位置にある綴じリング5は下方へ動かす外力が働くと他端軸116が第一禁止面136cに当接する。その結果、閉位置にある他の綴じリング5はがたつきを生ずることなく紙葉類を綴じることができる。
以上のような構成とすることにより、本実施形態に係る綴じ具Gは、第一、第二のリング構成部材31、51、32、52を支持している第一、第二の連結板11、12の軸である他端軸116、126の位置そのものが移動するように構成しているので、第一、第二の連結板11、12を小さな力でも変形させやすくすることができる。その結果、綴じ具Gを構成する素材を樹脂素材といった大きな弾性反発力を生み出せないような素材であっても、しかも形状の変更を従来から最小限の変更に抑えながらも、第一、第二のリング構成部材31、51、32、52の係合部311、511、321、521同士を少ない操作力で係合させることを実現している。
また本実施形態では、前記許容軸支部136が、前記第一の連結板11の他端軸116の上方向への移動を許容する第一退避面136aと、前記第二の連結板12の他端軸126の前記下方向への移動を許容する第二退避面136bとを設けることにより、前記第一、第二のリング構成部材31、51、32、52の係合部311、511、321、521同士が係合する際の動作方向に交差する方向の一時的な離間動作をよりスムーズに行わせている。
特に本実施形態では、開位置からのスムーズな閉位置への係合と閉位置で第一、第二のリング構成部材31、51、32、52の位置決めを両立させるために、前記許容軸支部136を、前記第一の連結板11の他端軸116の前記下方向への移動を禁止する第一禁止面136cと、前記第二の連結板12の他端軸126の上方向への移動を禁止する第二禁止面136dとを設けている。これにより、操作時には他端軸116、126の移動を促しながらも閉位置での他端軸115、126の移動を禁止することで、閉位置での他の綴じリング5のがたつきを有効に回避している。
本実施形態では、複数の綴じリング3、5をそれぞれ閉じるという動作を行うことなく簡単に複数の綴じリング3、5を閉じるべく、前記複数の綴じリング3、5における第一のリング構成部材31、51の先端部31s、51sと第二のリング構成部材32、52の先端部32s、52sがともに離間した開位置において、他の綴じリング5における第一のリング構成部材51の先端部51sと第二のリング構成部材52の先端部52sとの離間距離が、前記一の綴じリング3における第一のリング構成部材31の先端部31sと第二のリング構成部材32の先端部32sとの離間距離よりも短く設定することにより、前記開位置にあるこれら綴じリング3、5のうちの一の綴じリング3に加えられる閉方向の操作力により他の綴じリング5をも閉じることができるようにしている。
そして本実施形態ではこのとき許容軸支部136を、直接操作力が加わらない他の綴じリング5の近傍に設けるようにしていることで、操作力が直接ではなく間接的に小さな操作力しか伝わらない他の綴じリング5をも確実に閉じ得る構成を実現している。
そして、閉位置での紙葉類の閲覧や開位置での紙葉類の加除をスムーズに行わせつつ前記他の綴じリング5における第一のリング構成部材51の先端部51sと第二のリング構成部材52の先端部52sとの離間距離が、前記一の綴じリング3における第一のリング構成部材31の先端部31sと第二のリング構成部材32の先端部32sとの離間距離よりも短く設定する構成を実現するために、本実施形態では、前記一の綴じリング3を構成する前記第一、第二のリング構成部材31、32と前記他の綴じリング5を構成する前記第一、第二のリング構成部材51、52とを同じ形状とするとともに、前記第一、第二の連結板11、12は、前記一の綴じリング3と前記他の綴じリング5との間の部位を敢えて傾けた構成としている。
そして本実施形態に係る綴じ具Gは、前記第一、第二の連結板11、12が樹脂製のものであり金属製の綴じ具よりも一の綴じリング3側に伝えられた操作力を他の綴じリング5側へ伝達させ難いにも拘わらず、上記の通り一の綴じリング3に対する小さい操作力で確実に第一、第二のリング構成部材31、32、51、52の係合部311、511、321、521同士を係合せしめている。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
例えば、上記実施形態では許容軸支部を両方の連結板の軸それぞれに設けた態様を開示したが勿論、何れか片方の連結板側にのみ許容軸支部を設けるようにしてもよい。また上記実施形態では許容軸支部を他の綴じリング近傍に設けた態様を開示したが、勿論、一の綴じリング近傍に設けたものであってもよい。これにより、使用者はより軽い操作感を持って閉位置とすることができる。また綴じリングの具体的な数やサイズ、形状といった具体的な態様は上記実施形態のものに限定されることはなく、既存のものを含め、種々の態様のものを適用することができる。
次いで、本発明の他の実施形態について図14〜図23を参照して説明する。ここで、当該他の実施形態において、前述した一の実施形態と同一又は対応する構成部分については同一の符号を付して説明することとし、詳細な説明を省略又は簡略化することがある。
他の実施形態は、前述した一の実施形態と同様に、本発明をファイル及びその表紙体の背表紙に取付けられた綴じ具Gに適用した場合のものである。(なお、他の実施形態では表紙体を図示していない。)
ファイルは、綴じ具Gと、表表紙、背表紙及び裏表紙を有した表紙体とを備えたものである。このファイルは、表紙体に施された図示しない印刷やシール等によりその使用方向が明確に設定されている。しかして、綴じ具Gは、表紙体に、一の綴じリング3が他の綴じリング5よりも手前側に位置するように取付けられている。
綴じ具Gは、相互に突き合わせた第一、第二の連結板11、12をベース本体13に軸支してなるベース1と、前記第一の連結板11に支持された第一のリング構成部材31、51及び前記第二の連結板12に支持された第二のリング構成部材32、52をそれぞれ備えてなる複数の綴じリング3、5とを具備してなり、開位置にあるこれら綴じリング3、5のうちの一の綴じリング3に加えられる閉方向の操作力により他の綴じリング5をも閉じることができるようにしたものである。換言すれば、本実施形態における綴じ具Gは、一の綴じリング3と他の綴じリング5の2つの綴じリング3、5によって主として2穴の用紙(図示せず)を綴じることができるようにしたものである。前記第一の連結板11は樹脂製のものであり、前記第一のリング構成部材31、51とともに一体成形されており、前記第二の連結板12は樹脂製のものであり、前記第二のリング構成部材32、52とともに一体成形されている。
以下、他の実施形態である綴じ具Gについて詳述する。
ベース1は、合成樹脂製のベース本体13と、このベース本体13に長手方向において複数箇所で軸支された第一、第二の連結板11、12とを具備してなる。
ベース本体13は、長手方向両端部に表紙体Hに取り付けるための取付孔131と、第一、第二の連結板を軸支するための4つの軸支部132と、第一の連結板を開位置へ付勢するための弾性付勢手段であるコイルバネ6を取り付けるためのバネ取付部133とを有したもので、内部すなわち長手方向中央部に相互に突き合わせた第一、第二の連結板11、12を閉位置で面一に収容するための空間を形成しうる形状をなしている。ベース本体13の両側縁に設けられた第一、第二の連結板11、12を回転可能に軸支するための軸支部132は、図示下方から、端部軸支部134、2つ中間軸支部135、端部軸支部139を有してなる。この実施形態では、端部軸支部134、139は、第一、第二の連結板11、12の一端軸114、124及び他端軸116、126を上下動を抑制した態様で支持している。
また、ベース本体13は、前記各綴じリング3、5が閉位置に保持されている場合に、前記一の綴じリング3付近における前記第二の連結板12の下面が当接する第一のスペーサ部材7aと、前記他の綴じリング5付近における前記第一、第二の連結板11、12の下面が当接する第二のスペーサ部材7bとを備えている。詳述すると、ベース本体13は、長手方向の両端部すなわち第一、第二の連結板11、12を挟む位置に配設され、内側に前記端部軸支部134、139が形成された第一、第二のベース本体端部13a、13bと、これら第一、第二のベース本体端部13a、13b間に設けられ第一、第二の連結板11、12の下側に位置するベース本体中間部13cとを備えており、前記第一、第二のスペーサ部材7a、7bは、それぞれ前記ベース本体中間部13cに第一、第二の連結板11、12側に向かって突設されている。第一のスペーサ部材7aは、第一のベース本体端部13aに隣接する位置に配されている。第二のスペーサ部材7bは、第二のベース本端端部13bに隣接する位置に配されている。第一のスペーサ部材7aは、平面視において縦長矩形状に形成されている。第二のスペーサ部材7bは、平面視において略正方形の矩形状に形成されている。
第一の連結板11の内縁部すなわち突き合わせ端縁111には第二の連結板12と係わり合うための下突起t3が2箇所に設けられている。下突起t3は後述する上突起t4の下側に位置するものであり第一の連結板11における長手方向中間部に第二の連結板12側に向かって突設されている。第二の連結板12の内縁部すなわち突き合わせ端縁121には前記第一の連結板11の下突起t3と係わり合う上突起t4が前記下突起t3に対応する2箇所に設けられている。上突起t4は第二の連結板12における長手方向中間部に第一の連結板11側に向かって突設されている。この実施形態では、爪t31を有した下突起t3が、長孔(図示せず)を有した上突起t4と相互に離脱しない態様で係わり合うようになっている。下突起t3の爪t31は、各連結板11、12の長手方向に貫通するとともに各連結板11、12の短手方向に延びる前記長孔内に位置している。そして、第一、第二の連結板11、12は、下突起t3と上突起t4との係わり合い、すなわち、爪t31と長孔との係わり合いにより相対動作し得るようになっており、開位置では下突起t3と上突起t4の先端部分のみが係わり合うようになっている。このようにして、二つの連結板11、12の動作を連動させつつ両連結板11、12の噛み合わせを確保している。
各綴じリング3、5は合成樹脂製のものであり、第一、第二の連結板11、12とともに樹脂により一体に形成されたものである。各綴じリング3、5は、コイルバネ6により開方向に間接的に付勢されている。前記コイルバネ6は、いわゆるねじりコイルバネと称されるものであり、前記一の綴じリング3付近における前記ベース本体13と前記第一の連結板11との間に配されている。具体的には、ベース本体13のバネ取付部133が設けられた一の綴じリング3付近に位置する部位で、第一の連結板11がコイルバネ6の一端と接続し、開方向に弾性的に付勢されている。コイルバネ6の他端はベース本体13におけるベース本体中間部13cの上面に接続している。そして、各綴じリング3、5の係合を解除した場合には、第一の連結板11はコイルバネ6からの直接的な弾性付勢力を受けて回転軸112回りに回転し、同様に、前記下突起t3と係わり合う上突起t4を有した第二の連結板12も開方向へ間接的に付勢されて回転軸122回りに回転する。すなわち、コイルバネ6によって、第一の連結板11の内縁部111側と第二の連結板12の内縁部121側とがともに上方に向かう方向に弾性付勢されている。
第一の連結板11は、一端部で一の綴じリング3の第一のリング構成部材31を支持するとともに他端部で他の綴じリング5の第一のリング構成部材51を支持するもので、具体的には概ね短冊状をなしている。この第一の連結板11はベース本体13同様、樹脂製のものである。この第一の連結板11は、前記リング構成部材31、51とともに適宜の方法により合成樹脂により一体に成形されている。より具体的に言えば、第一の連結板11に形成された前記リング構成部材31、51が相対角度を異ならせて設けられている。
前記第一の連結板11における前記一の綴じリング3が接続する連結板一端部11aの厚み寸法は、当該連結板一端部11a以外の他の部位11bよりも厚く形成されている。そして、前記第一の連結板11の上面側における前記連結板一端部11aと前記連結板一端部11a以外の他の部位11bとの間に、段差部11cが形成されている。また、前記第一の連結板11の前記連結板一端部11aが、その下面側にコイルバネ6を配するための収容空間spを形成している。
本実施形態では、第一の連結板11と各リング構成部材31、51との角度は略同一に設定されている。詳しくは、第一の連結板11における第一のリング構成部材31が接続する部分(すなわち、連結板一端部11a)の上面11asと第一のリング構成部材31との角度、及び、第一の連結板11における第二のリング構成部材51が接続する部分(すなわち、第一の連結板11における連結板一端部11a以外の他の部分11b)の上面11bsと第一のリング構成部材51との角度は略同一に設定されている。なお、一の綴じリング3の第一のリング構成部材31よりも他の綴じリング5の第一のリング構成部材51を約6°閉位置へ向けて傾けて形成している。両第一のリング構成部材31、51の形状は同一に設定されている。
第一の連結板11は、長手方向に計4箇所で前記ベース本体13に軸支される回転軸112を有している。この回転軸112は、図示下方から、一端軸114、2つの中間軸115及び他端軸116を有している。
第二の連結板12は、一端部で一の綴じリング3の第二のリング構成部材32を支持するとともに他端部で他の綴じリング5の第二のリング構成部材52を支持するもので、具体的には概ね短冊状をなしている。この第二の連結板12も樹脂製のものである。この第二の連結板12は、前記リング構成部材32、52とともに適宜の方法により合成樹脂により一体に成形されている。より具体的に言えば、第二の連結板12に形成された前記リング構成部材32、52は相対角度を異ならせて設けられている。
前記第二の連結板12における前記一の綴じリング3が接続する連結板一端部12aの厚み寸法は、当該連結板一端部12a以外の他の部位12bよりも厚く形成されている。そして、前記第一の連結板12の上面側における前記連結板一端部12aと前記連結板一端部12a以外の他の部位12bとの間に、段差部12cが形成されている。
本実施形態では、第二の連結板12と各リング構成部材32、52との角度は略同一に設定されている。詳しくは、第二の連結板12における第二のリング構成部材32が接続する部分(すなわち、連結板一端部12a)の上面12asと第一のリング構成部材32との角度、及び、第二の連結板12における第二のリング構成部材52が接続する部分(すなわち、第二の連結板12における連結板一端部12a以外の他の部分12b)の上面12bsと第二のリング構成部材52との角度は略同一に設定されている。なお、一の綴じリング3の第二のリング構成部材32よりも他の綴じリング5の第二のリング構成部材52を約6°閉位置へ向けて傾けて形成している。両第二のリング構成部材32、52の形状は同一に設定されている。
すなわち、本実施形態では、一の綴じリング3の第二のリング構成部材32よりも他の綴じリング5の第二のリング構成部材52を約6°閉位置へ向けて傾けて形成するために、第一の連結板11と第二の連結板12は、一の綴じリング3と他の綴じリング5との間の部位を敢えて傾けて成形している。
第二の連結板12は、長手方向に計4箇所で前記ベース本体13に軸支される回転軸122を有している。この回転軸122は、図示下方から、一端軸124、2つの中間軸125及び他端軸126を有している。
他の実施形態では、各綴じリング3、5が開いた状態である開位置(図1を参照)において、他の綴じリング5における第一のリング構成部材51の先端部51sと第二のリング構成部材52の先端部52sとの離間距離が、一の綴じリング3における第一のリング構成部材31の先端部31sと第二のリング構成部材32の先端部32sとの離間距離よりも短く設定されている。よって他の綴じリング5を構成する両リング構成部材51、52の係合部511、521同士が係合した状態では、一の綴じリング3を構成する両リング構成部材31、32の先端部31s、32sは所定距離離間した状態にある。
各綴じリング3、5は、一の綴じリング3付近に設けられたコイルバネ6により開方向に付勢されているとともにその付勢力に抗して閉じられた状態で第一、第二のリング構成部材31、51、32、52の先端に設けられた係合部311、511、321、521同士が係合して閉位置に保持されるものである。詳述すれば、各綴じリング3、5は、第一の連結板11の端部に基端部312、512を位置付けた第一のリング構成部材31、51と、第二の連結板12の端部に基端部322、522を位置付けた第二のリング構成部材32、52とを具備してなる。
綴じリング3、5は、いわゆるOリングと称される構成をなすものである。
第一のリング構成部材31、51、及び、第二のリング構成部材32、52は、全体が湾曲した形状をなしている。なお、第二のリング構成部材32、52に略直線状に形成された直線と湾曲形状に形成された湾曲部とを設けることで、いわゆるDリングと称される綴じリングの構成としても良いことはもちろんである。
第一のリング構成部材31、51の先端部には外向きの係合部311、511が設けられているとともに第二のリング構成部材32、52の先端部には内向きの係合部321、521が設けられ、第一のリング構成部材31、51の先端部と第二のリング構成部材32、52の先端部とを突き合わせることにより外向きの係合部311、511と内向きの係合部321、521とが係合して各綴じリング3、5が閉位置に保持されるようになっている。
具体的に、外向きの係合部311、511は、外側すなわち綴じ具Gの長手方向における外方側に向けて突出する突起311a、511aを備えたものである。内向きの係合部321、521は、内側に前記突起311a、511aを収容し得る凹部321a、521aを備えたものである。
各第一、第二のリング構成部材31、51、32、52の先端同士が係合する状態においては、外向きの係合部311、511の突起311a、511aが内向きの係合部321、521の凹部321b、521bに嵌るようになっており、第一、第二のリング構成部材31、51、32、52の突き合わせ側端部には係合時に第一のリング構成部材31、51と第二のリング構成部材32、52とを離間させるべく案内する案内傾斜面311c、511c、321c、521cが形成されている。
一の綴じリング3における第一のリング構成部材31に設けられた外向きの係合部311と他の綴じリング5における第一のリング構成部材51に設けられた外向きの係合部511とは互いに背反する方向を向いている。また、一の綴じリング3における第二のリング構成部材32に設けられた内向きの係合部321と他の綴じリング5における第二のリング構成部材52に設けられた内向きの係合部521とは互いに対面する方向を向いている。そのため、一の綴じリング3における第一のリング構成部材31と、他の綴じリング5における第一のリング構成部材51をそれぞれ相寄る方向に移動させることにより、係合部311、511、321、521同士の係合が解除されるようになっている。
このような構成のものであれば、第一、第二のリング構成部材31、51、32、52の係合部311、511、321、521同士の係合が解除されている状態では、ベース本体13と第一の連結板11との間に取り付けられたねじりコイルバネ6の働きにより第一、第二の連結板11、12が弾性付勢されているため、綴じリング3、5は、開いた状態である開位置に維持される。この開いた状態から、一の綴じリング3を構成している第一、第二のリング構成部材31、32を相寄る方向に操作すると、第一、第二の連結板11、12により相互に連結されている両綴じリング3、5が弾性付勢部の付勢力に抗して閉じ方向に作動し、各綴じリング3、5の第一のリング構成部材31、51の外向きの係合部311、511と第二のリング構成部材32、52の内向きの係合部321、521とが係合する。そのため、両綴じリング3、5は、係合後においては第一、第二のリング構成部材31、32から手を離しても閉位置に維持される。
第一のリング構成部材31、51の外向きの係合部311、511と第二のリング構成部材32、52の内向きの係合部321、521とが係合する際の作動を詳述すれば、次の通りである。
各綴じリング3、5が開位置にある状態から、一の綴じリング3を構成している第一、第二のリング構成部材31、32に対し、手指によって閉方向の操作力を与えると、第一、第二の連結板11、12により相互に連結されている両綴じリング3、5が弾性付勢部たるコイルバネ6の付勢力に抗して閉じ方向に作動し、他の綴じリング5の第一、第二のリング構成部材51、52の先端部51s、52s同士が、一の綴じリング3の第一、第二のリング構成部材31、32の先端部31s、32s同士が当接するよりも先に当接する。すなわち、手指によって閉方向の操作力が直接的に与えられる一の綴じリング3から離れて位置している綴じリングである他の綴じリング5の第一、第二のリング構成部材51、52の先端部51s、52s同士は、一の綴じリング3の第一、第二のリング構成部材31、32の先端部31s、32s同士が当接して押し合う前に先んじて、閉じ方向に押し合いを行うことになる。
次いで、第一のリング構成部材31、51の先端部と第二のリング構成部材32、52の先端部とがそれぞれ突き合った段階では、外向きの係合部311、511の案内傾斜面311c、511cと内向きの係合部321、521の案内傾斜面321c、521cとが当接する。その状態からさらに両リング構成部材31、51、32、52に閉じ方向の操作力が付与されると、案内傾斜面311c、511c、321c、521cの案内作用により外向きの係合部311、511を有している第一のリング構成部材31、51が一時的に内側に弾性変位するとともに内向きの係合部321、521を有している第二のリング構成部材32、52が一時的に外側に弾性変位することになる。そして、外向きの係合部311、511の突起311a、511aが内向きの係合部321、521の凹部321a、521aに嵌り込み、係合が完了する。その結果、一の綴じリング3から手を離しても両綴じリング3、5は閉位置に保持される。
前記係合部311、511、321、521同士の係合動作は、前記第一、第二のリング構成部材31、51、32、52、及び、前記第一、第二の連結板11、12の全体的なたわみを利用して行われる。特に、各綴じリング3、5とその付け根部分の弾性変形を利用して行われる。すなわち、前記第一のリング構成部材31、51と前記第一の連結板11とは合成樹脂により一体に形成されており、前記第二のリング構成部材32、52と前記第二の連結板12とは合成樹脂により一体に形成されている。このため、各係合部311、511、321、521同士の係合は、一方の綴じ要素8を形成する合成樹脂一体成形体である前記第一のリング構成部材31、51及び前記第一の連結板11、並びに、他方の綴じ要素9を形成する合成樹脂一体成形体である前記第二のリング構成部材32、52及び前記第二の連結板12が、それぞれ樹脂一体成形体に付与された剛性に優れるとともにたわみ易い特性を利用して全体的に弾性変形することにより行われる。
以上説明したように、他の実施形態である綴じ具Gは、開位置にある二つの綴じリング3、5のうちの一の綴じリング3に加えられる閉方向の操作力により他の綴じリング5をも閉じることができるようにしたものであるものであって、前記第一の連結板11は樹脂製のものであり、前記第一のリング構成部材31、51とともに一体成形されており、前記第二の連結板12は樹脂製のものであり、前記第二のリング構成部材32、52とともに一体成形されている。そして、前記各綴じリング3、5は、コイルバネ6により開方向に付勢されているとともにその付勢力に抗して閉じられた状態で前記第一、第二のリング構成部材31、51、32、52の先端に設けられた係合部311、511、321、521同士が係合して閉位置に保持されるものである。このため、樹脂の弾性変形を利用して、係合部311、511、321、521同士を好適に係合させるものとなるので、金属製のものと比較して弾性変形の度合を高く設定し得るものとなり、小さい操作力であっても全ての綴じリング3、5の係合部同士311、511、321、521が確実に係合し得る綴じ具G及び当該綴じ具Gを有するファイルを提供することができるものとなる。しかも、前記第一の連結板11は樹脂製のものであり、前記第一のリング構成部材31、51とともに一体成形されており、前記第二の連結板12は樹脂製のものであり、前記第二のリング構成部材32、52とともに一体成形されているものであるため、金型によって予め精度の優れた所期の部品を得ることができるものとなり、組み立て後の取付精度についても確保された綴じ具Gを実現し得るものとなる。換言すれば、当該実施形態に係る綴じ具Gであれば、組み立て後の取付精度に関して多くの注意力を注ぐ必要性が低減されるものとなる。また、製品毎に各連結板11、12に対する第一、第二のリング構成部材31、32、51、52の角度がばらつくことがなく、製品毎に操作力がばらつくといった不具合も生じ難いものとなる。また、精度の高い部品を得ることができるため、従来における金属製の綴じ具において存在していた対をなす連結板上を覆うカバーが必要では無くなり、比較的シンプルな構成の綴じ具Gを実現することができるものとなっている。
前記係合部311、511、321、521同士の係合動作は、前記第一、第二のリング構成部材31、51、32、52、及び、前記第一、第二の連結板11、12の全体的なたわみを利用して行われるものであるため、樹脂一体成形体の特性を生かして、係合部311、511、321、521同士を好適に係合させるものとなる。
前記第一、第二の連結板11、12における前記一の綴じリング3が接続する部位である連結板一端部11a、12aの厚み寸法を、当該連結板一端部11a、12a以外の他の部位11b、12bよりも厚く形成している。このため、一の綴じリング3に作用した操作力を第一、第二の連結板11、12を介して他の綴じリング5に好適に伝達するための設計の自由度に優れたものとなる。
前記第一、第二の連結板11、12の上面側における前記連結板一端部11a、12aと前記連結板一端部11a、12a以外の他の部位11b、12bとの間に、段差部11c、12cが形成されている。このため、連結板一端部11a、12aの厚み寸法を当該連結板一端部11a、12a以外の他の部位11b、12bよりも厚く形成するための設計の自由度に優れるとともに金型設計の便宜に寄与し得るものとなる。また、操作力を直接的に作用させるべき操作者の手前側に位置する一の綴じリング3の位置を段差部11c、12cに関連させて認識させ得るものとなる。
前記第一の連結板11の前記連結板一端部11aが、その下面側に前記弾性付勢手段であるコイルバネ6を配するための収容空間spを形成している。このため、必要なコイルバネ6を収容するための空間領域を確保し易いものとなっている。
前記コイルバネ6が前記一の綴じリング3付近における前記ベース本体13と前記第一の連結板11との間に配されており、前記ベース本体13が、前記各綴じリング3、5が閉位置に保持されている場合に、前記一の綴じリング3付近における前記第二の連結板12の下面が当接する第一のスペーサ部材7aと、前記他の綴じリング5付近における前記第一、第二の連結板11、12の下面が当接する第二のスペーサ部材7bとを備えている。このため、第一の連結板11とベース本体13との間に配されたコイルバネ6の配置、及び、ベース本体13の軸支部122と第一、第二の連結板11、12の回転軸112、122との間に存在する微細なクリアランスに伴って、第一、第二の連結板11、12の上面が面一になりにくくなるという現象を好適に抑制することができるものとなる。具体的には、第一のスペーサ部材7aは、コイルバネ6によって上側に向かって直接的に付勢される第一の連結板11の連結板一端部11aの樹脂弾性変形を見越して、第二の連結板12の連結板一端部12aの閉位置における上面12asの位置を調整する機能を営む。また、第二のスペーサ部材7bは、第一、第二の連結板11、12の前述した連結板一端部11a、12aの位置に対応して、第一、第二の連結板11、12の他端部11b、12b側の上面11bs、12bsの位置を調整する機能を営む。このようなものであれば、第一、第二の連結板11、12の上面が面一に設定され易いものとなり、外観の良好ひいては快適な使用に寄与し得るものとなる。
前記一の綴じリング3における前記第一のリング構成部材31と前記他の綴じリング5における前記第一のリング構成部材51をそれぞれ相寄る方向に移動させることにより前記係合部311、321、511、521同士の係合が解除されるようになっているものであるため、二つの綴じリング3、5の係合状態を解除してそれぞれを開位置にするための操作を容易に行うことができるものとなっている。
なお、本発明は、以上に詳述した実施形態に限定されるものではない。
第一のリング構成部材や第二のリング構成部材の大きさは種々の大きさに設定することができ、上述した実施形態のものに限定されるものではない。ベース本体は、製造段階において所定の大きさに設定された第一、第二のリング構成部材を一体に取り付けた第一、第二の連結板を支持することができるようになっている。換言すれば、ベース本体は、その仕様を変更することなく、綴じリングの大きさの異なる複数タイプ綴じ具の構成部品として共通して適用することができるようになっている。
例えば、大型の綴じリングを有した綴じ具、及び、小型の綴じリングを有した綴じ具(及び、当該綴じ具を有したファイル)の2タイプを提供できる場合において、ベース本体をそれぞれのタイプの綴じ具に共通する部品として適用することができるようになっている。大型の綴じリングを有した一方及び他方の綴じ要素や、小型の綴じリングを有した一方及び他方の綴じ要素は、共通のベース本体に支持させることができる。このため、ベース本体の部品共通化を行うことができ、製造工数の低減に寄与し得るものとなっている。
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。