JP6311290B2 - 円すいころ軸受 - Google Patents

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Description

本発明は、円すいころ軸受に関する。
円すいころ軸受は、同サイズの他の転がり軸受と比較して負荷容量が大きく、剛性が高いという特徴を有している。
図8は、従来の円すいころ軸受を示す軸方向断面図である。図8に示すように、円すいころ軸受100は、内輪101と、外輪102と、内外輪101,102間に転動自在に介在している複数の円すいころ103と、複数の円すいころ103を周方向に等間隔に保持している環状の保持器104とを備えている(例えば、特許文献1参照)。
保持器104は、小径環状部105と、大径環状部106と、これら両環状部105,106の間に架設した複数の柱部107とを備えている。保持器104は、両環状部105,106と隣り合う柱部107とによって、円すいころ103を収容するポケット108を構成している。
特許第4151347号
一般に、円すいころ軸受は、玉軸受等と比較して回転トルクが大きくなる傾向がある。
ここで、円すいころ軸受のトルク損失は、軌道輪と円すいころとの間における転がり粘性抵抗と、軸受の内部空間に流入する潤滑油の撹拌抵抗とが大部分を占めており、これら抵抗が、回転トルクの増大化の主原因となっている。
上記転がり粘性抵抗や、潤滑油の撹拌抵抗は、内外輪間に形成される環状の軸受内部空間に流入する潤滑油量に依存しており、軸受内部空間に流入する潤滑油の流入量を適切に抑制することによってトルク損失を低減することができる。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、軸受の内部空間に流入する潤滑油の流入量を適切に抑制することによってトルク損失を低減することができる円すいころ軸受を提供することを目的とする。
図8に示す、従来の円すいころ軸受100は、内外輪101,102が相対回転すると、内外輪101,102の軌道面の径寸法が小さい方から大きい方に向かって、軸受内部空間内の潤滑油を流動させるポンプ作用を生じさせる。
よって、例えば、円すいころ軸受100の一部又は全部を潤滑油に浸漬して用いた場合、内輪101の軸方向一端側に設けられている小鍔部101aと外輪102の軸方向一端部とで構成される小径開口部110から円すいころ軸受100の軸受内部空間に潤滑油が流入し、軸方向他端側の大径開口部111から円すいころ軸受100の軸受内部空間の潤滑油が流出する。
そこで、軸受内部空間に流入する潤滑油の流入量を抑制するために、小径開口部110を保持器104の小径環状部105で塞ぎ、円すいころ軸受100の軸受内部空間に潤滑油が流入するのを適度に制限することが考えられる。
しかし、保持器104は、各ポケット108に収容される複数の円すいころ103によって軸方向及び径方向に位置決めされつつ、互いに隣り合う円すいころ103の間の間隔を保持するように構成されている。さらに、ポケット108と、円すいころ103との間には、比較的大きなクリアランスが確保されているため、内外輪101,102が相対回転している際に、保持器104は、内外輪間を高い精度で安定して回転しているとはいえなかった。
このため、保持器104の一部である小径環状部105の回転も不安定となる。
小径環状部105の回転が不安定であると、小径開口部との間が僅かな隙間となるように小径環状部105を形成し、小径環状部105によって小径開口部110を塞いだとしても、その僅かな隙間を安定して維持できなかったり、小径環状部が小径開口部の周面に接触したりして、小径開口部110を安定的に塞ぐことができず、適切に潤滑油の流入量を制限できないという問題が生じるおそれがあった。
本発明者らは、上記問題に着目して本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、内輪軌道面を有する内輪と、前記内輪の外周側に同心に配置され前記内輪軌道面に対向している外輪軌道面を有する外輪と、前記内輪軌道面及び前記外輪軌道面との間に転動自在に介在している複数の円すいころと、前記内輪と前記外輪間の環状空間に配置され、前記複数の円すいころを保持している保持器と、を備え、前記保持器は、小径環状部、前記小径環状部に対して所定間隔離して対向させた大径環状部、及び前記小径環状部と前記大径環状部との間に架設した複数の柱部を有し、隣り合う柱部と前記小径環状部と前記大径環状部とによって囲まれる空間を、前記円すいころを収容するポケットとして構成している円すいころ軸受において、前記小径環状部は、前記内輪の軸方向一端側に設けられている小鍔部と前記外輪の軸方向一端部との間に配置され、当該小径環状部の内周面及び外周面が前記小鍔部及び前記外輪の軸方向一端部と摺接可能とされて、前記小鍔部と前記外輪の軸方向一端部とで構成される環状開口部を塞いでおり、 前記柱部は、前記小径環状部側及び前記大径環状部側それぞれの径方向外側面に、前記外輪軌道面に摺接することで、前記外輪軌道面によって前記保持器を径方向に位置決めする一対の摺接面が所定間隔離して設けられ、前記柱部の径方向外側面における前記一対の摺接面の相互間には、前記一対の摺接面に対して径方向内側に凹むことで互いに隣り合うポケット同士を連通し前記外輪軌道面近傍の潤滑油を互いに隣り合うポケット同士間で流動させるための凹部が設けられ、前記凹部の底面と、前記外輪軌道面との間の隙間は、軸方向小径環状部側から大径環状部側に向かって漸次広がるように前記外輪軌道面に対して傾斜していることを特徴としている。
上記のように構成された円すいころ軸受によれば、小鍔部と外輪の軸方向一端部とで構成される環状開口部を塞いでいる小径環状部によって環状空間に流入する潤滑油の流入量を抑制することができるので、円すいころ軸受のトルク損失を低減することができる。
また、上記円すいころ軸受の保持器は、柱部を外輪軌道面に摺接させることで径方向に位置決めされ、外輪軌道面に案内されて回転するので、内外輪間を精度よく安定して回転することができ、環状開口部を塞ぐ小径環状部も精度よく安定して回転することができる。この結果、環状開口部を安定的に塞ぐことができ、適切に潤滑油の流入量を制限することができる。
一方、上記円すいころ軸受では、保持器の柱部が外輪軌道面と摺接することによって、外輪軌道面近傍の潤滑油を撹拌する効果が高まり、潤滑油の流速が高められることによってポンプ作用の効果が高められ、外部の潤滑油を環状空間内に吸引する作用が高められることがある。
この点、上記円すいころ軸受によれば、柱部の径方向外側面に、径方向に凹むことで互いに隣り合うポケット同士を連通する凹部が設けられているので、外輪軌道面近傍の潤滑油を、互いに隣り合うポケット間で流動させることができ、撹拌効果を弱めて潤滑油の流速が過度に高まるのを抑えることができる。これにより、ポンプ作用の効果を弱めることができ、環状空間への潤滑油の過度な流入を抑制することができる。この結果、軸受の内部空間である環状空間への潤滑油の流入量を適切に制限することができる。
以上のように、上記円すいころ軸受によれば、軸受の内部空間に流入する潤滑油の流入量を適切に抑制することによってトルク損失を低減することができる。
柱部は、大径側の部分ほどその周速が高いので、潤滑油に対する撹拌効果も高く、大径側の部分ほどポンプ作用への寄与も大きい。一方、凹部を通過する潤滑油量がより増えれば、よりポンプ作用の効果を弱めることができる。
よって、上記構成では、底面と外輪軌道面との隙間は、小径側と比較して撹拌効果が高い大径側に向かって広くなっているので、撹拌効果がより高くポンプ作用への寄与が大きい部分である大径側の部分を通過する潤滑油量を増加させることができる。これにより、効果的にポンプ作用を弱めることができる。
また、上記円すいころ軸受において、前記凹部は、前記外輪軌道面の軸方向中央に位置するように設けられていることが好ましく、この場合、柱部の径方向外側面に設けられる摺接面を、凹部の軸方向両側に設けることができる。これにより、柱部の径方向外側面に凹部を設けたとしても、凹部の軸方向両側に軸方向に離間した2つの摺接面を摺接させることにより、保持器が傾くことを抑制しつつ、摺接面を外輪軌道面に対して安定した状態で摺接させることができる。
上記円すいころ軸受において、前記凹部の軸方向長さは、前記外輪軌道面の軸方向長さに対して40%以上、70%以下の範囲に設定されていてもよい。凹部の軸方向長さを外輪軌道面の軸方向長さの40%よりも小さくすると、ポンプ作用を弱める効果が著しく低下する。凹部の軸方向長さを外輪軌道面の軸方向長さの70%より大きくすると、柱部の径方向外側面において摺接面として必要な面積を確保することが困難となる。凹部の軸方向長さを外輪軌道面の軸方向長さに対して40%以上、70%以下の範囲に設定することで、ポンプ作用を効果的に弱めつつ、柱部の径方向外側面における摺接面として必要な面積を確保することができる。
また、上記円すいころ軸受において、前記凹部の底面と前記外輪軌道面との間の隙間は、軸受使用温度において前記外輪軌道面と前記摺接面とが摺接するのに必要な隙間寸法の少なくとも10倍に設定されていることが好ましい。
底面と外輪軌道面との隙間が、軸受使用温度において外輪軌道面と摺接面とが摺接するのに必要な隙間寸法の10倍よりも小さい場合、外輪軌道面近傍の潤滑油を、互いに隣り合うポケット間で十分に流動させることが困難となり、ポンプ作用を弱める効果が低下する。よって、底面と外輪軌道面との隙間を、軸受使用温度において外輪軌道面と摺接面とが摺接するのに必要な隙間寸法の少なくとも10倍とすることで、ポンプ作用を効果的に弱めることができる。
上記円すいころ軸受において、前記小径環状部の内周面は、前記小鍔部の外周面との間で、潤滑油の通過を許容するが前記環状空間に流入する潤滑油の量を制限する微小な環状隙間を形成しており、前記柱部の径方向内側面は、前記小径環状部の内周面端部から、前記内輪の軸方向他端側に設けられている大鍔部の基端部に向かって延びることで、前記環状隙間から前記環状空間に流入する潤滑油を前記大鍔部の基端部に導く案内面とされていてもよい。
この場合、軸受外部から環状隙間を通過して環状空間に流入する潤滑油の一部は、小径環状部の内周面から柱部の内周面に伝わる。さらに柱部の内周面が潤滑油を大鍔部の基端部に導く案内面とされているので、この柱部の内周面に伝わる潤滑油を大鍔部の基端部に導くことができる。これにより、環状空間に流入する潤滑油量を制限しつつも、互いに滑り摺動する円すいころの端面と大鍔部との接触部分付近に対しては、環状空間内の潤滑油を積極的に供給することができる。この結果、環状空間に流入する潤滑油量を制限しつつも、円すいころの端面と大鍔部との滑り摩擦抵抗を低減でき、さらに潤滑油の不足による焼き付きの発生を抑制することができる。
また、上記円すいころ軸受において、前記径方向内側面は、当該径方向内側面と前記内輪軌道面との間の隙間が軸方向前記小径環状部から前記大径環状部側に向かって漸次狭まるように前記内輪軌道面に対して傾斜している傾斜面であることが好ましく、この場合、潤滑油を、軸方向に沿って段差等がない柱部の内周面によってスムーズに大鍔部の基端部にまで導くことができる。
上記円すいころ軸受において、前記径方向内側面には、径方向外側に凹む溝部が軸方向に沿って形成されていてもよく、この場合、小径環状部の内周面から柱部の径方向内側面に伝わる潤滑油を溝部内に留めることができる。さらに、溝部内に留められた潤滑油を、この溝部に沿って大鍔部の基端部にまで導くことができる。これにより、より確実に潤滑油を大鍔部の基端部に導くことができる。
また、上記円すいころ軸受において、前記環状隙間の軸受使用温度における寸法は、軸受使用温度において前記外輪軌道面と前記摺接面とが摺接するのに必要な隙間寸法よりも大きく、かつ、この隙間寸法の3倍以下に設定されていてもよい。
小鍔部の外周面は、比較的高い精度の仕上げ面とされている外輪軌道面と比較してその精度が低いため、環状隙間の軸受使用温度における寸法が、軸受使用温度において外輪軌道面と前記摺接面とが摺接するのに必要な隙間寸法以下であると、必要以上に当該環状隙間が狭まるおそれがあり、必要な潤滑油の流入量を確保できないおそれが生じる。
また、環状隙間の軸受使用温度における寸法が、軸受使用温度において外輪軌道面と前記摺接面とが摺接するのに必要な隙間寸法の3倍より大きくなると、必要量以上に潤滑油の流入を許容してしまうおそれがある。
環状隙間の軸受使用温度における寸法を軸受使用温度において外輪軌道面と前記摺接面とが摺接するのに必要な隙間寸法よりも大きく、かつ、この隙間寸法の3倍以下に設定することで、好適に潤滑油の流入量を制限することができる。
また、上記円すいころ軸受において、前記柱部の前記ポケットの内側に臨む柱部側面は、前記柱部の径方向外側面の周方向端縁から径方向内側に向かって平面状に延びている平面状部を含み、互いに対向して前記ポケットを形成している前記平面状部同士は、径方向断面視において互いに平行となるように形成されている。
また、前記柱部の径方向内側面は、前記小径環状部から前記大径環状部側に向かって、その周方向幅寸法が漸次広くなるように形成されていることが好ましい。
本発明の円すいころ軸受によれば、軸受の内部空間に流入する潤滑油の流入量を適切に抑制することによってトルク損失を低減することができる。
本発明の一実施形態に係る円すいころ軸受の軸方向断面図である。 保持器を外周側からみたときの部分斜視図である。 保持器を内周側からみたときの部分斜視図である。 柱部の断面を示した円すいころ軸受の軸方向断面図である。 図4中、V−V線矢視断面図である。 溝部の変形例を示す柱部の要部断面図である。 凹部の変形例を示す柱部の要部断面図である。 従来の円すいころ軸受を示す軸方向断面図である。
次に、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る円すいころ軸受の軸方向断面図である。
円すいころ軸受1は、内輪2と、内輪2の外周側に同心に配置された外輪3と、内外輪2,3の間に配列された複数の円すいころ4とを備えている。
内輪2は、軸受鋼や機械構造用鋼等を用いて形成された環状の部材であり、その外周には、複数の円すいころ4が転動する内輪軌道面2aが形成されている。
外輪3も、内輪2同様、軸受鋼や機械構造用鋼等を用いて形成された環状の部材であり、その内周には、内輪軌道面2aに対向しているとともに、複数の円すいころ4が転動する外輪軌道面3aが形成されている。
円すいころ4は、軸受鋼等を用いて形成された部材であり、内輪軌道面2aと外輪軌道面3aとの間に転動自在に介在している。
また、円すいころ軸受1は、複数の円すいころ4を保持している保持器10を備えている。
図2は、保持器10を外周側からみたときの部分斜視図であり、図3は、保持器10を内周側から見たときの部分斜視図である。図2,3及び図1も参照して、保持器10は、射出成形等によって形成された合成樹脂製の部材であり、所定間隔離して対向させた一対の環状部11,12(小径環状部11、及び大径環状部12)と、これら環状部11,12の間に周方向に所定間隔をおいて架設された複数の柱部13とを備えている。一対の環状部11,12と、互いに隣り合う2本の柱部13とによって囲まれる空間が、円すいころ4を収容保持するポケット14を構成している。
保持器10は、内輪2と、外輪3との間に形成されている環状空間である軸受内部空間Sに配置されており、複数の円すいころ4をそれぞれ各ポケット14に収容し、複数の円すいころ4が円周方向にほぼ等間隔に配置されるように保持している。
保持器10は、両環状部11,12のポケット14側に臨む環状部側面11c,12cが円すいころ4の小径端面4a及び大径端面4bに摺接することによって、軸方向への移動が規制されている。つまり、保持器10は、両環状部11,12が円すいころ4の端面4a,4bに摺接することで、軸方向に位置決めされている。
また、保持器10は、柱部13の径方向外側面13aを外輪軌道面3aに摺接可能に形成されており、径方向外側面13aを外輪軌道面3aに摺接させながら円周方向に相対回転する。これによって、保持器10は、外輪軌道面3aによって径方向に位置決めされている。
保持器10の小径環状部11は、径方向の厚み寸法が柱部13の径方向の厚み寸法と同程度に形成された円環状の部分である。
小径環状部11は、内輪2の軸方向一端側に設けられている小鍔部5と、外輪3の軸方向一端部6との間に配置されており、当該小径環状部11の内周面11a及び外周面11bが小鍔部5及び外輪3の軸方向一端部6と摺接可能とされて、小鍔部5と、外輪3の軸方向一端部6とで構成されている小径側開口部A1を塞いでいる。
小径環状部11の外周面11bは、外輪軌道面3aに摺接する柱部13の径方向外側面13aからそのまま延ばされたテーパ面とされている。
外輪軌道面3aと柱部13の径方向外側面13aとの間には、円すいころ軸受1が使用される使用温度において外輪軌道面3aと径方向外側面13aとが摺接するために必要な隙間(クリアランス)が設けられており、小径環状部11の外周面11bと、外輪3の軸方向一端部6の内周面6aとの間には、前記クリアランスと同じ寸法の隙間である第1環状隙間K1が設けられている。
小径環状部11の内周面11aは、ほぼ円筒状に形成されている。従って、内周面11aは、径方向外側面13aと同様テーパ状に形成されている径方向内側面13bとの間で、傾斜角度が異なっている。
小径環状部11の内周面11aと、小鍔部5の外周面5aとの間においても、小径環状部11の内周面11aと、小鍔部5の外周面5aとが摺接するために必要な隙間として第2環状隙間K2が設けられている。
このように、小径環状部11は、小鍔部5及び外輪3の軸方向一端部6それぞれの間で環状隙間K1,K2をあけつつ、小径側開口部A1を塞いでいる。
これら小径側開口部A1を塞いで形成された軸方向一端側の環状隙間K1,K2は、軸受内部空間Sに流入する当該円すいころ軸受1を潤滑するための潤滑油の流入口となる。
円すいころ軸受1は、内外輪2,3が相対回転すると、円すいころ4の公転等による軸受内部空間S内に存在する潤滑油の撹拌及びこの潤滑油に作用する遠心力によって、軌道面2a,3aの径寸法が小さい方から大きい方に向かって軸受内部空間S内の潤滑油を流動させようとするポンプ作用を生じさせる。
本実施形態の円すいころ軸受1は、一般に、その一部又は全部を潤滑油に浸漬させた状態で使用される。
よって、円すいころ軸受1の軸受内部空間Sには、上記ポンプ作用によって、小径側開口部A1側から潤滑油が流入する。しかし、本実施形態の円すいころ軸受1では、小径環状部11によって、環状隙間K1,K2をあけつつ、小径側開口部A1を塞いでいるので、軸受内部空間Sに流入する潤滑油は、環状隙間K1,K2を通過する潤滑油に制限される。
第1環状隙間K1及び第2環状隙間K2は、潤滑油の通過を許容するが、軸受内部空間Sの潤滑に必要な量以上の潤滑油が軸受内部空間Sに流入するのを制限している。
つまり、小径環状部11は、必要な量以上の潤滑油が軸受内部空間Sに流入するのを制限するように小径側開口部A1を塞いでいる。
軸受内部空間Sに流入する潤滑油が必要以上に多量になると、潤滑油の撹拌抵抗や転がり粘性抵抗によって円すいころ軸受1の回転トルクを増加させるおそれがある。
この点、本実施形態では、小径環状部11によって軸受内部空間Sに流入する潤滑油の流入量が制限されるので、軸受内部空間Sに流入する潤滑油の流入量を抑制することができ、円すいころ軸受1の回転トルクを低減することができる。
ここで、円すいころ軸受1の潤滑に必要な潤滑油量は僅かであり、軸受内部空間Sに潤滑油を流入させるために僅かな隙間を設ければ、必要な潤滑油量を確保することができる。
よって、第1環状隙間K1及び第2環状隙間K2の隙間寸法は、潤滑油を通過させ、かつ各部の動作に影響を与えない範囲でできるだけ小さい値となるように設定される。
上述したように、第1環状隙間K1の隙間寸法は、円すいころ軸受1が使用される使用温度において外輪軌道面3aと径方向外側面13aとが摺接するために必要なクリアランスと同じ寸法に設定されている。
例えば、円すいころ軸受1の軸受のサイズが、内径30〜40mm、外径70〜80mm程度である場合、円すいころ軸受1が使用される使用温度において外輪軌道面3aと径方向外側面13aとが摺接するために必要なクリアランスは、それぞれの直径同士の比較で少なくとも100μmに設定される。100μmよりも小さくなると、保持器10の径方向外側面13aと外輪軌道面3aとの間の接触面圧が大きくなり、保持器10が外輪軌道面3aに対して滑らかに摺接することができないおそれが生じるからである。
前記クリアランスを少なくとも100μm以上に設定することで、保持器10と外輪軌道面3aとを滑らかに摺接させることができる。
また、第1環状隙間K1の隙間寸法は、上述のように、前記クリアランスと同じ寸法に設定されるため、前記クリアランスと同様、少なくとも100μmに設定される。
円すいころ軸受1が使用される使用温度が150℃であるとすると、常温において上記クリアランスを設定したとしても、外輪3と保持器10とは材質が異なることによる熱膨張係数の差によって、使用温度下では、目標のクリアランスとはならない。
このため、軸受のサイズが上記であって、保持器の材質がPPS樹脂(Poly Phenylene Sulfide Resin:ポリフェニレンサルファイド樹脂)である場合、前記クリアランスは、常温においては、それぞれの直径同士の比較で少なくとも200μmに設定される。これによって、使用温度150℃とされることで外輪3と保持器10とが熱膨張したときに、前記クリアランスをそれぞれの直径同士の比較で少なくとも100μmとすることができる。
第2環状隙間K2の使用温度における隙間寸法は、使用温度における前記クリアランス及び第1環状隙間K1の隙間寸法よりも大きく、かつ、これら寸法の3倍以下に設定される。
小鍔部5の外周面5aは、比較的高い精度の仕上げ面とされている外輪軌道面3aと比較してその精度が低いため、第2環状隙間K2の使用温度における寸法が、軸受使用温度において外輪軌道面3aと径方向外側面13aとが摺接するために必要なクリアランス以下であると、必要以上に当該第2環状隙間K2が狭まるおそれがあり、必要な潤滑油の流入量を確保できないおそれが生じる。さらに、外輪軌道面3aと径方向外側面13aとの接触面圧が必要以上に大きくなり、外輪3と保持器10との間で回転抵抗を生じさせるおそれがある。
また、第2環状隙間K2の使用温度における寸法が、軸受使用温度において前記クリアランスの3倍より大きくなると、必要量以上に潤滑油の流入を許容してしまうおそれがある。
第2環状隙間K2の使用温度における寸法を軸受使用温度において前記クリアランスよりも大きく、かつ、前記クリアランスの3倍以下に設定することで、好適に潤滑油の流入量を制限することができる。
例えば、常温下における前記クリアランスが、それぞれの直径同士の比較で200μmに設定され、150℃の使用温度下における前記クリアランスが100μmであるとすると、第2環状隙間K2の隙間寸法は、常温下においては、100μmより大きく、かつ200μm以下、使用温度下においては、200μmより大きく、かつ300μm以下に設定される。
また、上記では、第2環状隙間K2の使用温度における寸法を、前記クリアランスの3倍以下に設定した場合を説明したが、第2環状隙間K2の使用温度における寸法は、前記クリアランスの2倍以下に設定することがより好ましく、これにより、より好適に潤滑油の流入量を制限することができる。
以上のように、第1環状隙間K1及び第2環状隙間K2の隙間寸法は、潤滑油を通過させ、かつ各部の動作に影響を与えない範囲でできるだけ小さい値となるように設定される。
保持器10の大径環状部12は、内輪2の軸方向他端側に設けられている大鍔部7と、外輪3の軸方向他端部8との間に配置された円環状の部分である。
大径環状部12は、径方向の厚み寸法が、柱部13の径方向の厚み寸法よりも小さい寸法とされている。よって、大径環状部12は、図2及び図3に示すように、柱部13の径方向内側面13b及び径方向外側面13aが、当該大径環状部12の内周面12a及び外周面12bとの間で径方向に段差を形成するように設けられている。つまり、柱部13は、柱部13の径方向内側面13bと、大径環状部12の内周面12aとの間の段差を繋いでいる内周側端面13cを有するとともに、柱部13の径方向外側面13aと、大径環状部12の外周面12bとの間の段差を繋いでいる外周側端面13dを有している。
図1に示すように、大径環状部12は、大鍔部7と軸方向他端部8とで構成されている大径側開口部A2に配置されている。
大径環状部12の内周面12aと、大鍔部7の外周面7aとの間には、比較的大きな隙間が形成されている。
また、大径環状部12の外周面12bと、軸方向他端部8の内周面8aとの間にも、比較的大きな隙間が形成されている。
これら大径環状部12と、内外輪2,3との間に形成された隙間は、上述の環状隙間K1,K2よりも、大きく形成されている。
これら他端側環状開口部A2に形成された、大径環状部12と、内外輪2,3との間に形成された隙間は、上記ポンプ作用によって軸受内部空間Sに流入している潤滑油の排出口となる。
つまり、上記ポンプ作用によって軸受内部空間Sに流入した潤滑油は、軸受内部空間Sにおける潤滑に供され、他端側環状開口部A2から排出される。
本実施形態では、大径環状部12と、内外輪2,3との間に形成された隙間は、上述の環状隙間K1,K2よりも、大きく形成されているので、軸受外部に流出しようとする潤滑油を速やかに外部に排出することができる。
図4は、柱部13の断面を示した円すいころ軸受の軸方向断面図である。
図2、図3も参照して、保持器10の柱部13は、上述したように、径方向外側面13aを外輪軌道面3aに摺接させながら円周方向に相対回転することで、外輪軌道面3aによって径方向に位置決めされている。
柱部13の径方向外側面13aには、軸方向小径環状部11側に小径側摺接面15が、軸方向大径環状部12側に大径側摺接面16が、それぞれ設けられている。
小径側摺接面15及び大径側摺接面16は、共に、外輪軌道面3aに沿う曲面に形成されており、外輪軌道面3aに摺接するように設けられている。
小径側摺接面15及び大径側摺接面16は、外輪軌道面3aに摺接することで、外輪軌道面3aによって保持器10を径方向に位置決めしている。
なお、上述したように、保持器10における小径環状部11の内周面11aは、内輪2の小鍔部5の外周面5aと摺接するように構成されている。小径環状部11の内周面11aは、軸方向に平行な円筒状に形成されており、円筒状の外周面5aに摺接している。
一方、小径側摺接面15及び大径側摺接面16は、テーパ面とされている外輪軌道面3aに摺接している。
このように保持器10は、傾斜角度が互いに異なるように形成された内輪2側の内周面11aと、外輪3側の外輪軌道面3aとに摺接している。この構成によって、保持器10をより確実に径方向に位置決めすることができる。
小径側摺接面15と大径側摺接面16との間には、これら小径側摺接面15及び大径側摺接面16に対して径方向に凹んでいる凹部17が形成されている。凹部17は、各柱部13それぞれに形成されている。
凹部17は、軸方向外輪軌道面3aのほぼ中央に位置するように設けられている。
小径側摺接面15及び大径側摺接面16は、凹部17の軸方向両側に設けられている。
これにより、小径側摺接面15及び大径側摺接面16は、それぞれ、外輪軌道面3aの軸方向小径側の端部、及び大径側の端部に摺接することができる。この結果、柱部13の径方向外側面13aに凹部17を設けたとしても、保持器10が軸方向に対して傾くのを抑制しつつ、小径側摺接面15及び大径側摺接面16を外輪軌道面3aに対して安定した状態で摺接させることができる。
また、凹部17は、柱部13の周方向全域に亘って凹んでおり、互いに隣り合うポケット14同士を連通している。
ここで、本実施形態の円すいころ軸受1では、保持器10の小径環状部11によって軸受内部空間Sに流入する潤滑油の流入量を抑制することができるので、トルク損失を低減することができる。
また、円すいころ軸受1の保持器10は、柱部13を外輪軌道面3aに摺接させることで径方向に位置決めされ、外輪軌道面3aに案内されて回転するので、内外輪2,3間を精度よく安定して回転することができ、小径側開口部A1を塞ぐ小径環状部11も精度よく安定して回転することができる。この結果、小径側開口部A1を安定的に塞ぐことができ、適切に潤滑油の流入量を制限することができる。
一方、この円すいころ軸受1では、保持器10の柱部13が外輪軌道面3aと摺接することによって、外輪軌道面3a近傍の潤滑油を撹拌する効果が高まり、潤滑油の流速が高められることによってポンプ作用の効果が高められ、外部の潤滑油を軸受内部空間S内に吸引する作用が高められることがある。
この点、本実施形態の円すいころ軸受1によれば、保持器10の径方向外側面13aに、径方向に凹むことで互いに隣り合うポケット14同士を連通する凹部17が設けられているので、外輪軌道面3a近傍の潤滑油を、互いに隣り合うポケット14間で流動させることができ、撹拌効果を弱めて潤滑油の流速が過度に高まるのを抑えることができる。これにより、ポンプ作用の効果を弱めることができ、軸受内部空間Sへの潤滑油の過度な流入を抑制することができる。この結果、軸受内部空間Sへの潤滑油の流入量を適切に制限することができる。
これにより、本実施形態の円すいころ軸受1によれば、軸受内部空間Sに流入する潤滑油の流入量を適切に抑制することによってトルク損失を低減することができる。
凹部17の底面17aは、軸方向からみたときの形状が円すいころ軸受1の軸中心を中心とした円弧に形成されている。
また、凹部17の底面17aと、外輪軌道面3aとの間の隙間T(図4)は、円すいころ軸受1が使用される使用温度において外輪軌道面3aと両摺接面15,16とが摺接するために必要な隙間(上述のクリアランス)の少なくとも10倍に設定されている。
例えば、上述のように、150℃の使用温度下における前記クリアランスが100μmに設定されているとすると、隙間Tは、少なくとも1mmに設定される。
隙間Tが、円すいころ軸受1の使用温度下における前記クリアランスの10倍よりも小さい場合、外輪軌道面3a近傍の潤滑油を、互いに隣り合うポケット14間で十分に流動させることが困難となり、ポンプ作用を弱める効果が低下する。よって、隙間Tを、使用温度における前記クリアランスの少なくとも10倍とすることで、ポンプ作用を効果的に弱めることができる。
なお、隙間Tを大きくすればするほど、凹部17を通過する潤滑油量をより増やすことができ、よりポンプ作用の効果を弱めることができる。しかし、間隔Tを大きくしすぎると、柱部13の径方向の肉厚が減少するため、柱部13の強度を低下させるおそれがある。このため、隙間Tは、柱部13として必要とされる強度が確保することができる範囲で設定される。
また、柱部13は、大径の部分ほどその周速が高いので、潤滑油に対する撹拌効果も高く、大径側の部分ほどポンプ作用への寄与も大きい。一方、上述のように、凹部17を通過する潤滑油量がより増えれば、よりポンプ作用の効果を弱めることができる。
そこで、本実施形態における凹部17の底面17aは、隙間Tが軸方向小径環状部11から大径環状部12に向かって漸次広がるように、外輪軌道面3aに対して直線状に傾斜して形成されている。
これによって、隙間Tは、小径側と比較して撹拌効果が高い大径側に向かって広くなっているので、撹拌効果がより高くポンプ作用への寄与が大きい部分である大径環状部12側寄りの部分を通過する潤滑油量を増加させることができる。これにより、小径側から大径側に亘ってバランスよく、効果的にポンプ作用を弱めることができる。
また、柱部13においてポンプ作用への寄与が相対的に少ない小径側の部分では、凹部17の径方向深さを浅くすることができるので、柱部13の径方向の肉厚を大きく減少させる必要がない。つまりこの場合、必要な部分のみ、径方向深さが深くなるように凹部17を形成するので、柱部13として必要な強度を確保する上で有利となる。
凹部17の軸方向長さL(図4)は、外輪軌道面3aの軸方向長さに対して40%以上、70%以下の範囲に設定される。
凹部17の軸方向長さLを外輪軌道面3aの軸方向長さの40%よりも小さくすると、ポンプ作用を弱める効果が著しく低下する。凹部17の軸方向長さLを外輪軌道面3aの軸方向長さの70%より大きくすると、径方向外側面13aにおける両摺接面15,16として必要な面積を確保することが困難となる。凹部17の軸方向長さLを外輪軌道面3aの軸方向長さに対して40%以上、70%以下の範囲に設定することで、ポンプ作用を効果的に弱めつつ、両摺接面15,16として必要な面積を確保することができる。
図5は、図4中、V−V線矢視断面図である。
柱部13のポケット14の内側に臨む柱部側面13eは、図5に示すように、径方向外側面13aの周方向端縁13a1から径方向内側に向かって平面状に延びている平面状部20と、平面状部20の径方向内側端部から繋がってさらに径方向内側に延びている曲面状部21とによって構成されている。
平面状部20の径方向内側端部は、円すいころ4のピッチ円よりも内径側に位置している。
平面状部20は、当該平面状部20が臨むポケット14に収容されている円すいころ4の軸中心と円すいころ軸受1の軸中心とを結んだ直線Pに対して、軸方向に沿って互いに平行となる平面に形成されている。よって、互いに対向してポケット14を形成している平面状部20同士は、軸方向に沿って互いに平行に形成されている。互いに対向している平面状部20同士の周方向の間隔は、円すいころ4の外周径よりも僅かに大きい寸法とされており、転動面4cと、平面状部20との間に僅かな隙間が設けられている。
このように、互いに対向してポケット14を形成している平面状部20同士を、軸方向に沿って互いに平行に形成することで、円すいころ4の保持性を高めることができる。
曲面状部21は、円すいころ4の転動面に沿う曲面状に形成されており、平面状部20の径方向内側端部から柱部13の径方向内側面13bの周方向端縁13b1まで延びている。
曲面状部21は、円すいころ4の転動面に沿う曲面状に形成されているため、柱部13の曲面状部21における周方向幅寸法は、径方向内側に向かって漸次広がっており、径方向内側面13bの周方向幅寸法は、柱部13の平面状部20における周方向幅寸法よりも広く形成されている。
柱部13の径方向内側面13bは、図3に示すように、小径環状部11から大径環状部12側に向かって、その周方向幅寸法が漸次広くなるように形成されている。また、柱部13の径方向外側面13aも、同様に小径環状部11から大径環状部12側に向かって、その周方向幅寸法が漸次広くなるように形成されている。
径方向内側面13bは、大径環状部12側に向かったときに増加する周方向幅寸法の増加量が、径方向外側面13aよりも大きくなるように形成されている。
図4及び図5を参照して、柱部13の径方向内側面13bは、小径環状部11の内周面11aの軸方向内側端縁11a1(内周面端部)から、内周側端面13cの内周側端縁13c1に亘って直線状に延びている。柱部13の内周側端縁13c1は、大鍔部7の基端部7b近傍まで延びている。このため、径方向内側面13bは、小径環状部11の軸方向内側端縁11a1から、大鍔部7の基端部7bに向かって延びている。
より具体的には、柱部13の径方向内側面13bは、軸方向小径環状部11から大径環状部12側に向かって拡径するように傾斜している。
さらに、径方向内側面13bは、当該径方向内側面13bと内輪軌道面2aとの間の隙間が軸方向小径環状部11から大径環状部12側に向かって漸次狭まるように内輪軌道面2aに対して傾斜している傾斜面とされている。
上述したように、小径環状部11の内周面11aと、小鍔部5の外周面5aとの間には、円すいころ軸受1の潤滑に必要な量以上の潤滑油が軸受内部空間Sに流入するのを制限している第2環状隙間K2が設けられている。
よって、ポンプ作用によって第2環状隙間K2から軸受内部空間Sに流入する潤滑油の一部は、小径環状部11の内周面11aから柱部13の径方向内側面13bに伝わる。
柱部13の径方向内側面13bは、軸方向小径環状部11から大径環状部12側に向かって拡径するように傾斜している。このため、径方向内側面13bに潤滑油が伝わっていると、その潤滑油は、保持器10が回転することによる遠心力の作用によって、さらに径方向内側面13bを伝って移動する。径方向内側面13bは、小径環状部11の軸方向内側端縁11a1から、大鍔部7の基端部7bに向かって延びているため、径方向内側面13bを伝って移動する潤滑油は、大鍔部7の基端部7bに導かれる。
このように、径方向内側面13bは、第2環状隙間K2から軸受内部空間Sに流入する潤滑油を大鍔部7の基端部7bに導く案内面を構成している。
このため、第2環状隙間K2から流入して径方向内側面13bに伝わる潤滑油を大鍔部7の基端部7bに導くことができる。これにより、軸受内部空間Sに流入する潤滑油量を制限しつつも、互いに滑り摺動する円すいころ4の端面4bと大鍔部7との接触部分付近に対しては、軸受内部空間S内の潤滑油を積極的に供給することができる。この結果、回転トルク低減のために軸受内部空間Sに流入する潤滑油量を制限しつつも、円すいころ4の端面4bと大鍔部7との滑り摩擦抵抗を低減でき、潤滑油の不足による焼き付きの発生を抑制することができる。
つまり、本実施形態によれば、軸受内部空間S内に流入する潤滑油量を制限することによって、軸受内部空間S内に流入する潤滑油量に依存している転がり粘性抵抗や潤滑油の撹拌抵抗を抑制して回転トルク低減をしつつ、潤滑油が必要な滑り摺動部分に対しては、軸受内部空間Sに流入した潤滑油を導いて積極的に供給することにより滑り摩擦抵抗を低減し、焼き付きの発生を抑制することができる。
また、上述したように、柱部13の柱部側面13eを、平面状部20と曲面状部21とによって構成したので、径方向内側面13bの周方向幅寸法は、柱部13の平面状部20における周方向幅寸法よりも広く形成されている。このため、径方向内側面13bの面積は、例えば、柱部側面13eを径方向に沿う直線状に形成した場合と比較して、大きくなっている。
このため、径方向内側面13bを伝わることができる潤滑油量を増加させることができ、案内することができる潤滑油量を増加させることができる。
さらに、図4及び図5に示すように、径方向内側面13bには、周方向のほぼ中央に、径方向外側に凹む溝部25が形成されている。溝部25は、各柱部13それぞれに形成されている。溝部25は、半円状に凹んでおり、軸方向に沿って径方向内側面13bの軸方向全域に亘って形成されている。
この溝部25を径方向内側面13bに形成することによって、第2環状隙間K2から流入して径方向内側面13bに伝わる潤滑油を溝部25内に留めることができる。
さらに、溝部25内に留められた潤滑油を、この溝部25に沿って大鍔部7の基端部7bにまで導くことができる。これにより、より確実に潤滑油を大鍔部7の基端部7bに導くことができる。
また、本実施形態では、径方向内側面13bが、当該径方向内側面13bと内輪軌道面2aとの間の隙間が軸方向小径環状部11から大径環状部12側に向かって漸次狭まるように内輪軌道面2aに対して傾斜しているので、潤滑油を、軸方向に沿って段差等がない柱部13の径方向内側面13bによってスムーズに大鍔部7の基端部7bにまで導くことができる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されることはない。上記実施形態では、径方向外側面13aに設けた凹部17の底面17aを、隙間Tが軸方向小径環状部11から大径環状部12に向かって漸次広がるように、外輪軌道面3aに対して直線状に傾斜して形成した場合を示したが、適切に潤滑油を通過させてポンプ作用を抑制することができれば、径方向外側面13aに対して底面17aが平行となるように形成してもよいし、底面17aを円状等、曲面状に形成してもよい。
また、上記実施形態では、凹部17の底面17aを軸方向からみたときの形状が、円すいころ軸受1の軸中心を中心とした円弧に形成した場合を示したが、図6(a)に示すように、底面17aを軸方向からみたときの形状を、より小さい半径の円弧とすることで、底面17aの周方向中央から平面状部20に向かって、外輪軌道面3aとの隙間が広がるようにしてもよい。この場合、潤滑油を、凹部17と外輪軌道面3aとの間の隙間にスムーズに導いて通過させることができる。
また、図6(b)に示すように、底面17aを軸方向からみたときの形状を、三角状としてもよい。この場合も、図6(a)と同様、潤滑油を、凹部17と外輪軌道面3aとの間の隙間にスムーズに導いて通過させることができる。
また、上記実施形態では、径方向外側面13aの凹部17を全ての柱部13に設けた場合を例示したが、全ての柱部13に設ける必要はなく、周方向に並ぶ柱部13の内、1つ置きに凹部17を設ける等、適宜変更することができる。
また、上記実施形態では、径方向内側面13bに設けた溝部25を半円状に凹んだ溝として形成した場合を示したが、潤滑油をその内部に留めることができれば、例えば、図7(a),(b)に示すように、矩形状や三角状等の形状に形成してもよいし、図7(c)に示すように、径方向内側面13bの径方向ほぼ全域に亘って凹みを設けることで溝部25を形成してもよい。この場合、径方向内側面13bの径方向ほぼ全域に亘って潤滑油を留めることができ、より多くの潤滑油を集めて大鍔部7の基端部7bに導くことができる。
1 円すいころ軸受 2 内輪 2a 内輪軌道面
3 外輪 3a 外輪軌道面 4 円すいころ
5 小鍔部 5a 外周面 6 軸方向一端部
7 大鍔部 7b 基端部 10 保持器
11 小径環状部 11a 内周面
11a1 軸方向内側端縁(内周面端部) 12 大径環状部
13 柱部 13a 径方向外側面 13b 径方向内側面
14 ポケット 15 小径側摺接面 16 大径側摺接面
17 凹部 17a 底面 25 溝部
A1 小径側開口部 K2 第2環状隙間

Claims (8)

  1. 内輪軌道面を有する内輪と、
    前記内輪の外周側に同心に配置され前記内輪軌道面に対向している外輪軌道面を有する外輪と、
    前記内輪軌道面及び前記外輪軌道面との間に転動自在に介在している複数の円すいころと、
    前記内輪と前記外輪間の環状空間に配置され、前記複数の円すいころを保持している保持器と、を備え、
    前記保持器は、小径環状部、前記小径環状部に対して所定間隔離して対向させた大径環状部、及び前記小径環状部と前記大径環状部との間に架設した複数の柱部を有し、隣り合う柱部と前記小径環状部と前記大径環状部とによって囲まれる空間を、前記円すいころを収容するポケットとして構成している円すいころ軸受において、
    前記小径環状部は、前記内輪の軸方向一端側に設けられている小鍔部と前記外輪の軸方向一端部との間に配置され、当該小径環状部の内周面及び外周面が前記小鍔部及び前記外輪の軸方向一端部と摺接可能とされて、前記小鍔部と前記外輪の軸方向一端部とで構成される環状開口部を塞いでおり、
    前記柱部は、前記小径環状部側及び前記大径環状部側それぞれの径方向外側面に、前記外輪軌道面に摺接することで、前記外輪軌道面によって前記保持器を径方向に位置決めする一対の摺接面が所定間隔離して設けられ、
    前記柱部の径方向外側面における前記一対の摺接面の相互間には、前記一対の摺接面に対して径方向内側に凹むことで互いに隣り合うポケット同士を連通し前記外輪軌道面近傍の潤滑油を互いに隣り合うポケット同士間で流動させるための凹部が設けられ、
    前記凹部の底面と、前記外輪軌道面との間の隙間は、軸方向小径環状部側から大径環状部側に向かって漸次広がるように前記外輪軌道面に対して傾斜していることを特徴とする円すいころ軸受。
  2. 前記凹部は、前記外輪軌道面の軸方向中央に位置するように設けられている請求項1に記載の円すいころ軸受。
  3. 前記凹部の軸方向長さは、前記外輪軌道面の軸方向長さに対して40%以上、70%以下の範囲に設定されている請求項1又は請求項2に記載の円すいころ軸受。
  4. 前記小径環状部の内周面は、前記小鍔部の外周面との間で、潤滑油の通過を許容するが前記環状空間に流入する潤滑油の量を制限する微小な環状隙間を形成しており、
    前記柱部の径方向内側面は、前記小径環状部の内周面端部から、前記内輪の軸方向他端側に設けられている大鍔部の基端部に向かって延びることで、前記環状隙間から前記環状空間に流入する潤滑油を前記大鍔部の基端部に導く案内面とされている請求項1に記載の円すいころ軸受。
  5. 前記径方向内側面は、当該径方向内側面と前記内輪軌道面との間の隙間が軸方向前記小径環状部から前記大径環状部側に向かって漸次狭まるように前記内輪軌道面に対して傾斜している傾斜面である請求項4に記載の円すいころ軸受。
  6. 前記径方向内側面には、径方向外側に凹む溝部が軸方向に沿って形成されている請求項4又は5に記載の円すいころ軸受。
  7. 前記柱部の前記ポケットの内側に臨む柱部側面は、前記柱部の径方向外側面の周方向端縁から径方向内側に向かって平面状に延びている平面状部を含み、
    互いに対向して前記ポケットを形成している前記平面状部同士は、径方向断面視において互いに平行となるように形成されている
    請求項1〜6のいずれか一項に記載の円すいころ軸受。
  8. 前記柱部の径方向内側面は、前記小径環状部から前記大径環状部側に向かって、その周方向幅寸法が漸次広くなるように形成されている
    請求項1〜7のいずれか一項に記載の円すいころ軸受。
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