JP2008051295A - 円すいころ軸受及び保持器 - Google Patents

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Abstract

【課題】円すいころの大端面と内輪の大つばのころ案内面との間に対する潤滑油の流れを円滑化し、耐焼き付き性を図ることができる円すいころ軸受と、円すいころ軸受に好適に採用することができる保持器を提供する。
【解決手段】保持器40は、大径側環状部41と、小径側環状部42と、これら両環状部を連結しかつ複数個の円すいころ30をそれぞれ保持するポケット43を区画形成する複数の柱部44とを有する。複数の柱部44の内周面側には、中心軸線と平行する線L1又はL2に対し外周面側の傾斜角度θ1よりも小さい傾斜角度θ2でかつ小径側端部近傍から大径側端部近傍にわたって延びる突出部45が形成される。突出部45の内周面側には、小径側端部から大径側端部に向けて潤滑油を流動案内する誘導溝46が凹設される。誘導溝46の大径側端部は、大つば12のころ案内面13に臨んで開口している。
【選択図】図3

Description

この発明は、円すいころ軸受と、この円すいころ軸受に用いられる保持器に関する。
従来、円すいころ軸受は、図8と図9に示すように、内輪210と外輪220の両軌道面211、221の間に転動可能に配設された複数個の円すいころ230の大端面232が内輪210の大つば212のころ案内面213に転動案内され、複数個の円すいころ230の小端面233が内輪210の小つば215のころ案内面216に転動案内され、両軌道面211、221の間に複数個の円すいころ230をそれぞれ保持するポケット243を有する保持器240が配設されているのが一般的である。
また、円すいころ軸受において、保持器の柱部にグリースを溜めるための窪みが設けられたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開2005−121097号公報
ところで、図8と図9に示すような一般的な円すいころ軸受においては、円すいころ230の接触角を大きくしたり、ころ径を大きくしたり、ころ数を少なくすることによって低損失トルク化を図ることが可能となる。
しかしながら、円すいころ230の接触角を大きくすると、軸受回転時の遠心力による潤滑油の振り切り力が大きくなり、内輪210側から保持器240の各柱部244に向けて流れる潤滑油が、図8の矢印Pに示すように保持器240のポケット243を通して外輪220側へ逃げやすくなる。また、ころ数を少なくすると、円すいころ230の大端面232と内輪210の大つば212のころ案内面213との間の面圧が高くなる。
このようなことから、円すいころ230の大端面232と内輪210の大つば212のころ案内面213との間に対する潤滑油の供給量が不足して、これら両者間に焼き付きが発生し易くなる、という問題点があった。
この発明の目的は、前記問題点に鑑み、円すいころの大端面と内輪の大つばのころ案内面との間に対する潤滑油の流れを円滑化し、耐焼き付き性を図ることができる円すいころ軸受と、円すいころ軸受に好適に採用することができる保持器を提供することである。
前記目的を達成するために、この発明の請求項1に係る円すいころ軸受は、内輪と外輪の両軌道面の間に転動可能に配設された複数個の円すいころの大端面が前記内輪の大つばのころ案内面に転動案内され、前記複数個の円すいころの小端面が前記内輪の小つばのころ案内面に転動案内され、前記両軌道面の間に前記複数個の円すいころをそれぞれ保持する保持器が配設された円すいころ軸受であって、
前記保持器は、大径側環状部と、小径側環状部と、これら両環状部を連結しかつ前記複数個の円すいころをそれぞれ保持するポケットを区画形成する複数の柱部とを有し、
前記複数の柱部の内周面側には、中心軸線と平行する線に対し外周面側の傾斜角度よりも小さい傾斜角度でかつ小径側端部近傍から大径側端部近傍にわたって延びる突出部が形成され、
前記突出部の内周面側には、小径側端部から大径側端部に向けて潤滑油を流動案内する誘導溝が凹設され、
前記誘導溝の大径側端部は、前記大つばのころ案内面に臨んで開口していることを特徴とする。
前記構成によると、軸受回転時において、遠心力によって内輪側から保持器の各柱部に向けて流れる潤滑油は、各柱部の突出部に形成された誘導溝内に流入した後、誘導溝によって小径側から大径側に向けて流動案内される。
誘導溝の大径側端部は、内輪の大つばのころ案内面に臨んで開口しているため、誘導溝によって流動案内された潤滑油は内輪の大つばのころ案内面に向けて流れる。これによって、円すいころの大端面と内輪の大つばのころ案内面との間に対する潤滑油が充分に供給され、潤滑油の不足による焼き付きの発生を防止することができる。
前記したようにして、円すいころの大端面と内輪の大つばのころ案内面との間に対する潤滑油の流れを円滑化し、耐焼き付き性を図ることができる。ひいては、円すいころ軸受の円すいころの接触角を大きくしたり、ころ径を大きくしたり、ころ数を少なくすることによって低損失トルク化を図る場合に効果が大きい。
請求項2に係る円すいころ軸受は、請求項1に記載の円すいころ軸受であって、
誘導溝の両側壁部のうち、少なくとも一方の側壁部には、潤滑油が前記誘導溝内に流入可能な連通孔が貫設されていることを特徴とする。
前記構成によると、軸受回転時において、遠心力によって内輪側から保持器の各柱部に向けて流れる潤滑油の一部は、複数の円すいころの転動面(外周面)と各柱部の突出部の外壁面の間に溜まる場合がある。この際、前記潤滑油が各柱部の突出部の誘導溝の両側壁部のうち、少なくとも一方の側壁部に貫設された連通孔を通して誘導溝内に流入する。その後、潤滑油は誘導溝によって流動案内されて内輪の大つばのころ案内面に向けて流れる。このため、円すいころの大端面と内輪の大つばのころ案内面との間に対する潤滑油の流れがより一層円滑化される。ひいては、潤滑油によるトルク損失の低減や焼き付き防止に効果が大きい。
請求項3に係る円すいころ軸受の保持器は、内輪と外輪の両軌道面の間に転動可能に配設された複数個の円すいころの大端面が前記内輪の大つばのころ案内面に転動案内され、前記複数個の円すいころの小端面が前記内輪の小つばのころ案内面に転動案内され、前記両軌道面の間に前記複数個の円すいころをそれぞれ保持する円すいころ軸受の保持器であって、
前記保持器は、大径側環状部と、小径側環状部と、これら両環状部を連結しかつ前記複数個の円すいころをそれぞれ保持するポケットを区画形成する複数の柱部とを有し、
前記複数の柱部は、中心軸線と平行する線に対し外周面側の傾斜角度よりも内周面側の傾斜角度が小さく設定されると共に、前記複数の柱部の内周面側には、小径側から大径側に向けて潤滑油を流動案内する誘導溝が凹設され、
前記誘導溝の大径側端部は、前記大つばのころ案内面に臨んで開口していることを特徴とする。
前記構成によると、保持器の各柱部の突出部に形成した誘導溝によって、円すいころの大端面と内輪の大つばのころ案内面との間に対する潤滑油の流れを円滑化し、耐焼き付き性を図ることができるため、円すいころの接触角を大きくしたり、ころ径を大きくしたり、ころ数を少なくすることによって低損失トルク化を図るための円すいころ軸受に好適に採用することができる。
次に、この発明を実施するための最良の形態を実施例にしたがって説明する。
(実施例1)
この発明の実施例1を図1〜図5にしたがって説明する。
図1はこの発明の実施例1に係る円すいころ軸受を示す縦断面図である。図2は内輪、外輪、円すいころ及び保持器の組付状態を拡大して示す断面図である。図3は保持器の柱部を拡大して示す断面図である。図4は図3のIV−IV線に基づく保持器の柱部の横断面図である。図5は図3のV−V線に基づく保持器の柱部の横断面図である。
図1に示すように、円すいころ軸受は、内輪10、外輪20、複数個の円すいころ30及び保持器40を備えて構成されている。
内輪10は、外周面に円すい状の軌道面11が形成され、軌道面11の両端部には大つば12と小つば15がそれぞれ形成されている。
外輪20の内周面には、内輪10の軌道面11に対向して円すい状の軌道面21が形成されている。そして、内輪10と外輪20の両軌道面11、21の間に複数の円すいころ30が転動可能に配設されると共に、これら円すいころ30の大端面32が内輪10の大つば12のころ案内面13に転動案内され、円すいころ30の小端面33が小つば15のころ案内面16に転動案内されるようになっている。
内輪10と外輪20の両軌道面11、21の間に複数個の円すいころ30をそれぞれ保持する保持器40は、両軌道面11、21の間に組込可能な円すい状に形成される。
すなわち、保持器40は、大径側環状部41と、小径側環状部42と、これら両環状部41、42を連結しかつ複数個の円すいころ30をそれぞれ個別に保持するポケット43を区画形成する複数の柱部44とを有し、全体として略円すい状に形成されている。
図2と図3に示すように、複数の柱部44の内周面側には、中心軸線と平行する線L1又はL2に対し柱部44の外周面側の傾斜角度θ1よりも小さい傾斜角度θ2でかつ小径側端部近傍から大径側端部近傍にわたって延びる突出部45が形成されている。
図3〜図5に示すように、突出部45の内周面側には、小径側端部から大径側端部に向けて潤滑油を流動案内する誘導溝46が凹設されている。さらに、誘導溝46の大径側端部は、大つば12のころ案内面13に臨んで開口している。
この実施例1において、誘導溝46の大径側端部の開口部の溝底部46aは、大つば12のころ案内面13の外周を越えることなくころ案内面13の範囲内の位置に設定されている。
また、この実施例1において、保持器40は、ポリアミドを含む樹脂組成物(強化繊維、充填材、添加剤等も含む)を材料とし射出成形によって形成されている。
また、より広い温度範囲で、より幅広い種類の潤滑油に対応するために、例えば、国際公開第2006/019121号パンフレットに開示されたポリアミドを含む樹脂組成物によって保持器40が形成されるのが望ましい。
すなわち、ポリアミドが、式(1):
Figure 2008051295
で表される繰り返し単位と、式(2):
Figure 2008051295
で表される繰り返し単位とを含むと共に、式(1)及び式(2)において、R、Rが、pーフェニレン基、炭素数6〜10の直鎖アルキレン基、及び炭素数6〜10が分岐アルキレン基の三種の基であることが望ましい。
前記三種の基のうち、pーフェニレン基の機能によって、ポリアミドの主鎖を剛直化させることで、保持器40の耐熱性を向上させると共に、保持器40に対する潤滑油の使用上限温度を上昇させることができる。
また、三種の基のうち、炭素数6〜10が分岐アルキレン基の機能によって、潤滑油に含まれる極圧添加剤等に対する耐性を向上させることができる。
また、二種の基と共に併用している、炭素数6〜10の直鎖アルキレン基の機能によって、ポリアミドの主鎖が剛直化しすぎるのを抑制して、射出成形等による保持器40の成形性を向上させることができる。
また、三種の基を併用することで、保持器40に適度な柔軟性と靱性とを付与して保持器40の耐衝撃性を向上させることができる。
また、保持器40を形成する樹脂組成物に含まれる強化繊維、充填材において、補強繊維としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、繊維状珪灰石、炭化ケイ素繊維、ボロン繊維等が挙げられる。
また、充填材としては、例えば、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。
この実施例1に係る円すいころ軸受は上述したように構成される。
したがって、軸受回転時において、遠心力によって内輪10側から保持器40の各柱部44に向けて流れる潤滑油は、各柱部44の突出部45に形成された誘導溝46内に流入した後、誘導溝46によって小径側から大径側に向けて流動案内される(図3の矢印Q参照)。
誘導溝46の大径側端部は、内輪10の大つば12のころ案内面13に臨んで開口しているため、誘導溝46によって流動案内された潤滑油は内輪10の大つば12のころ案内面13に向けて流れる。これによって、円すいころ30の大端面32と内輪10の大つば12のころ案内面との間に対する潤滑油が充分に供給され、潤滑油の不足による焼き付きの発生を防止することができる。
前記したようにして、円すいころ30の大端面32と内輪10の大つば12のころ案内面13との間に対する潤滑油の流れを円滑化し、耐焼き付き性を図ることができる。ひいては、円すいころ軸受の円すいころ30の接触角を大きくしたり、ころ径を大きくしたり、ころ数を少なくすることによって低損失トルク化を図る場合に効果が大きい。
また、この実施例1においては、図3に示すように、誘導溝46の大径側端部の開口部の溝底部46aは、大つば12のころ案内面13の外周を越えることなくころ案内面13の範囲内の位置に設定されている。このため、誘導溝46の大径側端部の開口部の溝底部46aに沿って流出する潤滑油は、内輪10の大つば12のころ案内面13に良好に流れる。これによって、円すいころ30の大端面32と内輪10の大つば12のころ案内面13との間に潤滑油を不足なく確実に供給することが可能となり、焼き付き防止に効果が大きい。
(実施例2)
次に、この発明の実施例2を図6と図7にしたがって説明する。
図6はこの発明の実施例2に係る円すいころ軸受の保持器の柱部を拡大して示す断面図である。図7は図6のVII−VII線に基づく保持器の柱部の横断面図である。
図6と図7に示すように、この実施例2においては、複数の円すいころ30の転動面(外周面)と保持器40の各柱部44の突出部45の外壁面の間に溜まる潤滑油を誘導溝146内に流入させるように構成したものであり、各柱部44の突出部45の誘導溝146の両側壁部147(又は一方の側壁部)の長手方向中央部近傍に長孔状の連通孔148が貫設されている。
また、この実施例2のその他の構成は実施例1と同様にして構成されるため、同一構成部分に対し同一符号を付記してその説明は省略する。
したがって、この実施例2においては、軸受回転時の遠心力によって内輪10側から保持器40の各柱部44に向けて流れる潤滑油の一部は、複数の円すいころ30の転動面31と各柱部44の突出部45の外壁面の間に溜まる場合がある。この際、前記潤滑油が各柱部44の誘導溝146の側壁部147に貫設された連通孔148を通して誘導溝146内に流入する(図7の矢印X参照)。その後、潤滑油は誘導溝146によって流動案内されて内輪10の大つば12のころ案内面13に向けて流れる。このため、円すいころの大端面32と内輪10の大つば12のころ案内面13との間に対する潤滑油の流れがより一層円滑化される。ひいては、潤滑油によるトルク損失の低減や焼き付き防止に効果が大きい。
なお、この発明は前記実施例1及び2に限定するものではない。
例えば、前記実施例1及び2においては、式(1)で表される繰り返し単位と、式(2)で表される繰り返し単位とを含むと共に、式(1)及び式(2)において、R、Rが、pーフェニレン基、炭素数6〜10の直鎖アルキレン基、及び炭素数6〜10が分岐アルキレン基の三種の基であるポリアミド樹脂を含む樹脂組成物によって保持器40が形成される場合を例示したが、他の樹脂組成物によって保持器40を形成した場合においてもこの発明を実施可能である。
この発明の実施例1に係る円すいころ軸受を示す縦断面図である。 同じく内輪、外輪、円すいころ及び保持器の組付状態を拡大して示す断面図である。 同じく保持器の柱部を拡大して示す断面図である。 同じく図3のIV−IV線に基づく保持器の柱部の横断面図である。 同じく図3のV−V線に基づく保持器の柱部の横断面図である。 この発明の実施例2に係る円すいころ軸受の保持器の柱部を拡大して示す断面図である。 同じく図6のVII−VII線に基づく保持器の柱部の横断面図である。 従来の円すいころ軸受の保持器の柱部を拡大してを示す縦断面図である。 同じく図8のIX−IX線に基づく保持器の柱部の横断面図である。
符号の説明
10 内輪
11 軌道面
12 大つば
13 ころ案内面
20 外輪
21 軌道面
30 円すいころ
32 大端面
33 小端面
40 保持器
41 大径側環状部
42 小径側環状部
43 ポケット
44 柱部
45 突出部
46 誘導溝
146 誘導溝
147 側壁部
148 連通孔

Claims (3)

  1. 内輪と外輪の両軌道面の間に転動可能に配設された複数個の円すいころの大端面が前記内輪の大つばのころ案内面に転動案内され、前記複数個の円すいころの小端面が前記内輪の小つばのころ案内面に転動案内され、前記両軌道面の間に前記複数個の円すいころをそれぞれ保持する保持器が配設された円すいころ軸受であって、
    前記保持器は、大径側環状部と、小径側環状部と、これら両環状部を連結しかつ前記複数個の円すいころをそれぞれ保持するポケットを区画形成する複数の柱部とを有し、
    前記複数の柱部の内周面側には、中心軸線と平行する線に対し外周面側の傾斜角度よりも小さい傾斜角度でかつ小径側端部近傍から大径側端部近傍にわたって延びる突出部が形成され、
    前記突出部の内周面側には、小径側端部から大径側端部に向けて潤滑油を流動案内する誘導溝が凹設され、
    前記誘導溝の大径側端部は、前記大つばのころ案内面に臨んで開口していることを特徴とする円すいころ軸受。
  2. 請求項1に記載の円すいころ軸受であって、
    誘導溝の両側壁部のうち、少なくとも一方の側壁部には、潤滑油が前記誘導溝内に流入可能な連通孔が貫設されていることを特徴とする円すいころ軸受。
  3. 内輪と外輪の両軌道面の間に転動可能に配設された複数個の円すいころの大端面が前記内輪の大つばのころ案内面に転動案内され、前記複数個の円すいころの小端面が前記内輪の小つばのころ案内面に転動案内され、前記両軌道面の間に前記複数個の円すいころをそれぞれ保持する円すいころ軸受の保持器であって、
    前記保持器は、大径側環状部と、小径側環状部と、これら両環状部を連結しかつ前記複数個の円すいころをそれぞれ保持するポケットを区画形成する複数の柱部とを有し、
    前記複数の柱部は、中心軸線と平行する線に対し外周面側の傾斜角度よりも内周面側の傾斜角度が小さく設定されると共に、前記複数の柱部の内周面側には、小径側から大径側に向けて潤滑油を流動案内する誘導溝が凹設され、
    前記誘導溝の大径側端部は、前記大つばのころ案内面に臨んで開口していることを特徴とする円すいころ軸受の保持器。
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