JP6308652B2 - 薄膜製品の製造方法 - Google Patents
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Description
このような薄膜製品においては摩擦特性や風合い、意匠性といった付加価値をつけるために、その一部または全体を連続する規則的な凹凸形状にすることがある(例えば特許文献1等参照)。
この場合、型の凹部は薄膜製品の凸部となり、型の凸部は薄膜製品の凹部となる。
すなわち型の凸部付近では、ラテックス組成物は自身の表面張力の影響で凸部の最高位置付近から周囲に流出して、当該最高位置付近で薄くその周囲で厚く付着する傾向がある。
そしてこの2つの傾向の相乗作用により、ラテックス組成物は型の凹部に集まり、逆に型の凸部において希薄になって、加熱乾燥後に型から反転させて脱型した薄膜製品の膜の厚みが凹部において凸部と比べて相対的に薄くなり裂け易くなる。
また型の凹部を構成する凹曲面の曲率半径の最小値を1.5mm以上に設定することで、ラテックス組成物が自身の表面張力の影響で凹部内に流入するのを抑制できる。
なお凸曲面の曲率半径の最小値が3.2mm以下に設定され、凹曲面の曲率半径の最小値が2.0mm以下に設定されるのは、いずれか一方でもこの範囲を超える場合には凹部と凸部の高低差が小さくなって、先に説明した摩擦特性や風合い、意匠性といった付加価値を有するはっきりした凹凸形状を薄膜製品に付与できないためである。
なお、かかる効果をより一層向上することを考慮すると、内角は、上記の範囲でも120°以上であるのが好ましい。
さらに、本発明によれば、表面張力が35mN/m以下であるラテックス組成物を用いることにより、ラテックス組成物が型の表面で流動するのを抑制できる。そのため加熱乾燥後に型から反転させて脱型した薄膜製品の凹部と凸部の膜の厚みの差をより一層小さくして、さらに裂けにくくすることができる。
なお、かかる効果をより一層向上することを考慮すると、ラテックス組成物の表面張力は、上記の範囲でも30mN/m以下であるのが好ましい。
図1は、本発明の製造方法によって製造される薄膜製品の一例としての、手袋1の正面図である。また図2は、図1の例の手袋を本発明の製造方法によって製造するために使用する型の、要部を拡大した断面図である。
図1を参照して、この例の手袋1は、図では上側の一端が手首部2とされた略筒状の袖部3、および当該袖部3に手首部2を介して連なる、手指部4を備えた手袋本体5を有している。
袖部3には、手首部2から絞り部7までの間の領域に、当該手首部2から袖口6へ向けて、帯状の凹部8と凸部9が複数本ずつ、全周に亘って交互に配列されている。
これにより袖部3は、周方向に伸縮自在なプリーツ形状とされている。
すなわち型12をあらかじめ40〜80℃に加温した状態で、凝固剤(主に硝酸カルシウム溶液)に浸漬したのち引き上げて乾燥させる。
そして引き上げた型ごとラテックス組成物を加熱乾燥させる。すなわち加熱して膜を乾燥させるか、あるいは一旦乾燥させた後に加熱する。
そうするとラテックス組成物が固形分としてゴムを含むものである場合は、ラテックス組成物が乾燥されるとともにゴムが加硫される。また固形分として熱可塑性樹脂を含むものである場合は、ラテックス組成物が乾燥されるとともに樹脂が溶融一体化されたのち冷却によって固化される。さらに固形分として熱硬化性樹脂を含むものである場合は、ラテックス組成物が乾燥されるとともに熱硬化性樹脂が硬化される。
〈型〉
本発明の製造方法では、かかる浸漬成形に使用する型12として、先に説明したように凸部10を構成する凸曲面13の曲率半径の最小値R1が2.5mm以上、3.2mm以下で、かつ凹部11を構成する凹曲面14の曲率半径の最小値R2が1.5mm以上、2.0mm以下に設定されたものを用いる。
なお本発明において、凸曲面13および凹曲面14の曲率半径の「最小値」を規定しているのは、これら曲面の断面形状が円弧状、放物線状、双曲線状、正弦曲線状、角がRになった台形状等のいずれの形状であっても、その曲率半径が最も小さい部分、つまり最小値の部分において、先に説明したラテックス組成物の表面張力の影響が最も大きく出るためである。
また、型12は、凸曲面13と凹曲面14の変曲点Pでの接線L0と、1つの凹曲面14を挟んで隣り合う一対の凸曲面13の頂点間をつなぐ直線L1とがなす内角θ1、または当該接線L0と、1つの凸曲面13を挟んで隣り合う一対の凹曲面14の頂点間をつなぐ直線L2とがなす内角θ2が116°以上である必要があり、特に120°以上、140°以下あるのが好ましい。
また内角を140°以下に設定することで凹凸の高低差を確保して、手袋1により一層はっきりした凹凸形状を付与できる。
固形分としてゴムを含むラテックス組成物は、従来同様に、ゴムのラテックスに加硫剤等の各種添加剤を配合して調製される。
ゴムとしては天然ゴム、および合成ゴムの中からラテックス化が可能な種々のゴムがいずれも使用可能であり、かかるゴムとしては、例えば天然ゴム、脱蛋白天然ゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)等の1種または2種以上が挙げられる。
ゴムおよび加硫剤を含むラテックス組成物には、さらに加硫促進剤、熱安定剤、加硫促進助剤、老化防止剤、充填剤、pH調整剤、分散安定剤、増粘剤、発泡剤、消泡剤、可塑剤、着色剤等の各種添加剤を配合してもよい。
加硫促進助剤としては、例えば亜鉛華(酸化亜鉛)、および/またはステアリン酸等が挙げられる。加硫促進助剤の配合割合は、ゴムラテックス中のゴム100質量部あたり0.5質量部以上であるのが好ましく、3質量部以下であるのが好ましい。
充填剤としては、例えばカオリンクレー、ハードクレー、炭酸カルシウム、酸化チタン等の1種または2種以上が挙げられる。充填剤の配合割合は、ゴムラテックス中のゴム100質量部あたり1質量部以上であるのが好ましく、10質量部以下であるのが好ましい。
分散安定剤は、以上で説明した各種添加剤をゴムラテックス中に良好に分散させるために配合されるものであり、当該分散安定剤としては、例えば陰イオン系界面活性剤等の1種または2種以上が挙げられる。分散安定剤の配合割合は、ゴムラテックス中のゴム100質量部あたり0.3質量部以上であるのが好ましく、1質量部以下であるのが好ましい。
固形分として樹脂を含むラテックス組成物は、従来同様に、樹脂のエマルションに各種添加剤を配合して調製される(厳密にはラテックスではないが、便宜上、ゴムのラテックスを含むものに合わせてこのように記載する)。
樹脂としては、塩化ビニル系樹脂、ウレタン系樹脂、硬化性アクリル系樹脂等の、エマルション化が可能な樹脂の1種または2種以上が挙げられる。
このうち老化防止剤としては、先に例示した非汚染性のフェノール類やアミン類等の1種または2種以上が挙げられる。老化防止剤の配合割合は、樹脂エマルション中の樹脂(固形分)100質量部あたり0.5質量部以上であるのが好ましく、3質量部以下であるのが好ましい。
分散安定剤としては、先に例示した陰イオン系界面活性剤等の1種または2種以上が挙げられる。分散安定剤の配合割合は、樹脂エマルション中の樹脂100質量部あたり0.3質量部以上であるのが好ましく、1質量部以下であるのが好ましい。
〈ラテックス組成物の表面張力〉
ラテックス組成物は、表面張力が35mN/m以下である必要があり、特に30mN/m以下であるのが好ましい。
これにより、ラテックス組成物が型12の表面で流動するのを抑制できる。そのため加熱乾燥後に型から反転させて脱型した手袋1の凹部8と凸部9の膜の厚みの差をより一層小さくして、さらに裂けにくくすることができる。
ラテックス組成物の表面張力を調製するには、例えば分散安定剤としての陰イオン系界面活性剤等の配合割合や量を調整したりすればよい。
なお本発明の製造方法は、以上で説明した手袋の製造には限定されず、ラテックス組成物を用いた浸漬成形によって製造され、その一部または全体が連続する規則的な凹凸形状に形成される従来公知の種々の薄膜製品の製造に適用することができる。
その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を施すことができる。
(型)
型12としては、全体が図1に示す手袋1の形状に対応し、なおかつ図2に示す凸曲面13の曲率半径の最小値R1が3.05mm、凹曲面14の曲率半径の最小値R2が1.79mm、凸曲面13と凹曲面14の変曲点Pの接線L0と、1つの凹曲面14を挟んで隣り合う1対の凸曲面13の頂点間をつなぐ直線L1とがなす内角θ1が130°、そして当該接線L0と、1つの凸曲面13を挟んで隣り合う一対の凹曲面14の頂点間をつなぐ直線L2とがなす内角θ2が130°である陶器製のものを用意した。
天然ゴムラテックスに、下記表1に示す各成分を配合し、2日間熟成させてラテックス組成物を調製した。調製したラテックス組成物の表面張力は28mN/mであった。
表中の各成分の質量部は、天然ゴムラテックス中の天然ゴム分100質量部あたりの質量部とした。また水酸化カリウムは水溶液として配合したが、表中の質量部は、有効成分としての水酸化カリウム(固形分)の質量部とした。
先の型を、まず60℃で20分間、加温したのち、20%硝酸カルシウム水溶液に浸漬し、引き上げたのち60℃で1分間加熱して乾燥させた。
次いで型を、上記のラテックス組成物に20秒間、浸漬したのち引き上げることで、その表面にラテックス組成物を付着させた。
製造した手袋1の、凹部8の厚みT1は0.55mm、凸部9の厚みT2は0.54mm、厚みの比T1/T2は1.02であった。
〈実施例2〉
型12として、全体が図1に示す手袋1の形状に対応し、なおかつ図2に示す凸曲面13の曲率半径の最小値R1が2.64mm、凹曲面14の曲率半径の最小値R2が1.58mm、凸曲面13と凹曲面14の変曲点Pの接線L0と、1つの凹曲面14を挟んで隣り合う1対の凸曲面13の頂点間をつなぐ直線L1とがなす内角θ1が128°、そして当該接線L0と、1つの凸曲面13を挟んで隣り合う一対の凹曲面14の頂点間をつなぐ直線L2とがなす内角θ2が128°である陶器製のものを用いたこと以外は実施例1と同様にして手袋1を製造した。
〈実施例3〉
型12として、全体が図1に示す手袋1の形状に対応し、なおかつ図2に示す凸曲面13の曲率半径の最小値R1が2.64mm、凹曲面14の曲率半径の最小値R2が1.58mm、凸曲面13と凹曲面14の変曲点Pの接線L0と、1つの凹曲面14を挟んで隣り合う1対の凸曲面13の頂点間をつなぐ直線L1とがなす内角θ1が116°、そして当該接線L0と、1つの凸曲面13を挟んで隣り合う一対の凹曲面14の頂点間をつなぐ直線L2とがなす内角θ2が116°である陶器製のものを用いたこと以外は実施例1と同様にして手袋1を製造した。
〈実施例4〉
アルキルベンゼンスルホン酸を配合しなかったこと以外は実施例1と同様にして、表面張力が35mN/mのラテックス組成物を調製し、実施例1と同じ型12を使用して手袋1を製造した。
〈比較例1〉
型12として、全体が図1に示す手袋1の形状に対応し、なおかつ図2に示す凸曲面13の曲率半径の最小値R1が1.64mm、凹曲面14の曲率半径の最小値R2が1.75mm、凸曲面13と凹曲面14の変曲点Pの接線L0と、1つの凹曲面14を挟んで隣り合う1対の凸曲面13の頂点間をつなぐ直線L1とがなす内角θ1が113°、そして当該接線L0と、1つの凸曲面13を挟んで隣り合う一対の凹曲面14の頂点間をつなぐ直線L2とがなす内角θ2が113°である陶器製のものを用いたこと以外は実施例1と同様にして手袋1を製造した。
〈比較例2〉
型12として、全体が図1に示す手袋1の形状に対応し、なおかつ図2に示す凸曲面13の曲率半径の最小値R1が2.13mm、凹曲面14の曲率半径の最小値R2が1.33mm、凸曲面13と凹曲面14の変曲点Pの接線L0と、1つの凹曲面14を挟んで隣り合う1対の凸曲面13の頂点間をつなぐ直線L1とがなす内角θ1が121°、そして当該接線L0と、1つの凸曲面13を挟んで隣り合う一対の凹曲面14の頂点間をつなぐ直線L2とがなす内角θ2が121°である陶器製のものを用いたこと以外は実施例1と同様にして手袋1を製造した。
〈比較例3〉
型12として、全体が図1に示す手袋1の形状に対応し、なおかつ図2に示す凸曲面13の曲率半径の最小値R1が1.67mm、凹曲面14の曲率半径の最小値R2が1.41mm、凸曲面13と凹曲面14の変曲点Pの接線L0と、1つの凹曲面14を挟んで隣り合う1対の凸曲面13の頂点間をつなぐ直線L1とがなす内角θ1が115°、そして当該接線L0と、1つの凸曲面13を挟んで隣り合う一対の凹曲面14の頂点間をつなぐ直線L2とがなす内角θ2が115°である陶器製のものを用いたこと以外は実施例1と同様にして手袋1を製造した。
以上の結果を表2にまとめた。
2 手首部
3 袖部
4 手指部
5 手袋本体
6 袖口
7 絞り部
8 凹部
9 凸部
10 凸部
11 凹部
12 型
13 凸曲面
14 凹曲面
L0 接線
L1、L2 直線
P 変曲点
R1、R2 曲率半径の最小値
θ1、θ2 内角
Claims (3)
- 薄膜製品の凹凸形状に対応した凸部および凹部が連続して交互に配列された型をラテックス組成物に浸漬したのち引き上げて当該ラテックス組成物を型の表面に付着させる工程、および付着させたラテックス組成物を加熱乾燥させたのち脱型する工程を含み、前記ラテックス組成物は、表面張力が35mN/m以下であるとともに、前記型は、凸部を構成する凸曲面の曲率半径の最小値が2.5mm以上、3.2mm以下で、かつ凹部を構成する凹曲面の曲率半径の最小値が1.5mm以上、2.0mm以下、凸曲面と凹曲面の変曲点での接線と、1つの凹曲面を挟んで隣り合う1対の凸曲面の頂点間をつなぐ直線とがなす内角、または当該接線と、1つの凸曲面を挟んで隣り合う一対の凹曲面の頂点間をつなぐ直線とがなす内角が116°以上に設定されている薄膜製品の製造方法。
- 型は、前記内角が120°以上、140°以下に設定されている請求項1に記載の薄膜製品の製造方法。
- ラテックス組成物は、前記表面張力が30mN/m以下である請求項1または2に記載の薄膜製品の製造方法。
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