以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。本発明の第1実施形態に係る液体吐出ヘッドについて図1ないし図4を参照して説明する。図1は同ヘッドのノズル配列方向と直交する方向の図4のA―A線に沿う断面説明図、図2は同ヘッドのノズル配列方向と直交する方向の図4のB―B線に沿う断面説明図、図3は図1及び図2のC−C線に沿うノズル配列方向に沿う方向の断面説明図である。図4(a)は流路板を圧電素子側から見た底面図、(b)は圧電素子をノズル側から見た平面説明図、(c)は振動板部材を圧電素子側から見た底面説明図である。なお、図を見やすくするために断面ハッチングを一部省略している(以下でも同様とする。)。
まず、この液体吐出ヘッドの全体構成について説明する。
この液体吐出ヘッドは、ノズル板1と、流路板(液室基板)2と、壁面部材である振動板部材3とを積層接合している。そして、振動板部材3を変位させる積層型圧電素子を含む圧力発生手段である圧電アクチュエータ11と、共通液室部材(共通流路部材)としてのフレーム部材20とを備えている。
ノズル板1は、液滴を吐出する複数のノズル4を配列した1列のノズル列40を有している。
ノズル板1は、例えば、ニッケル(Ni)の金属プレートから形成したもので、エレクトロフォーミング法(電鋳)で製造したものを用いている。これに限らず、その他の金属部材、樹脂部材、樹脂層と金属層の積層部材などを用いることができる。また、ノズル板1の液滴吐出側面(吐出方向の表面:吐出面)には撥液層を設けている。
流路板2は、ノズル列40の各ノズル4が通じる個別液室6と、個別液室6に液体を供給する流体抵抗部を含む液体供給路7及び液導入部8を形成している。液導入部8は個別液室6ごとに分割されていてもよいし、複数又は全部の個別液室6に1つの割合で設けられていても良い。
ここでは、個別液室6及び液体供給路7を合わせて「個別流路」と称し、図3(a)に示すように、隣接する2つの個別流路の一方を「第1個別流路61A」とし、他方を「第2個別流路61B」とする。ここで、第1個別流路61Aは、後述する第1不活性部12Bが振動板部材3に接合されて液体供給路7の壁面が支持される個別流路である。第2個別流路61Bは、後述する支持部材14が振動板部材3に接合されて液体供給路7の壁面が支持される個別流路である。
流路板2は、単結晶シリコン基板をエッチングして、個別液室6、液体供給路などを構成する溝部及び貫通穴を形成している。なお、流路板2は、例えばSUS基板などの金属板を酸性エッチング液でエッチングし、あるいはプレスなどの機械加工を行って形成することもできる。
振動板部材3は、流路板2の個別液室6の壁面を形成する壁面部材を兼ね、第1層3A、第2層3B及び第3層3Cの3層構造としているが、2層又は4層以上の構造とすることもできるし、1層構造とすることもできる。ここでは、振動板部材3の第1層3Aによって個別液室6に対応する部分に変形可能な振動領域30を有している。
フレーム部材20には、複数の個別液室6に液体を供給する共通液室50が形成されている。この共通液室50から振動板部材3に形成した開口部9を通じて、液導入部8、液体供給路7を経て個別液室6に液体を供給する。なお、振動板部材3の開口部9にはフィルタ部を設けることができる。
そして、フレーム部材20には、図示しないヘッドタンクや液体カートリッジから共通液室50に液体を供給する図示しない液体供給口部が形成されている。
このフレーム部材20は、例えばエポキシ系樹脂或いは熱可塑性樹脂であるポリフェニレンサルファイト等で射出成形により形成している。
そして、振動板部材3の個別液室6とは反対側に、振動板部材3の振動領域30を変形させる駆動手段(アクチュエータ手段、圧力発生手段)としての電気機械変換素子を含む圧電アクチュエータ11を配置している。
この圧電アクチュエータ11は、ベース部材13上に接着剤接合した積層型圧電素子である圧電部材12に、ハーフカットダイシングによって溝124を加工して、所要数の柱状の積層型圧電素子(以下、「圧電柱」という。)120を所定の間隔で櫛歯状に形成したものである。また、圧電部材12とフレーム部材20との間には、流路板2及び振動板部材3(これらを併せて「流路部材」という。)を支持する支持部材14をベース部材13に接合している。
そして、圧電部材12の圧電柱120は、振動板部材3の振動領域30の凸部31に接着接合されている。
この圧電部材12は、圧電層と内部電極とを交互に積層したものであり、内部電極がそれぞれ端面に引き出されて外部電極が設けられている。そして、圧電柱120の外部電極に駆動信号を与えるための可撓性を有するフレキシブル配線基板としてのFPC15が接続されている。
また、振動板部材3はダンパ形成部材を兼ねており、第1層3Aによって、共通液室50の一部の壁面を形成する変形可能な領域としてのダンパ領域81を形成している。
このように構成した液体吐出ヘッドにおいては、例えば圧電柱120に与える電圧を基準電位から下げることによって圧電柱120が収縮し、振動板部材3の振動領域30が引かれて個別液室6の容積が膨張することで、個別液室6内に液体が流入する。
その後、圧電柱120に与える電圧を上げて圧電柱120を積層方向に伸長させ、振動板部材3の振動領域30をノズル4方向に変形させて個別液室6の容積を収縮させる。これにより、個別液室6内の液体が加圧され、ノズル4から液滴が吐出(噴射)される。
そして、圧電柱120に与える電圧を基準電位に戻すことによって振動板部材3の振動領域30が初期位置に復元し、個別液室6が膨張して負圧が発生するので、このとき、共通液室50から液体供給路7を通じて個別液室6内に液体が充填される。そこで、ノズル4のメニスカス面の振動が減衰して安定した後、次の液滴吐出のための動作に移行する。
なお、このヘッドの駆動方法については上記の例(引き−押し打ち)に限るものではなく、駆動波形の与え方によって引き打ちや押し打ちなどを行なうこともできる。
次に、圧電アクチュエータ11について説明する。
圧電アクチュエータ11は、圧電部材12をベース部材13に接着接合する。そして、圧電部材12の表面を研磨加工することによって表面を平面化し、ダイシングにより一括で圧電部材12に所定のピッチで溝加工(溝124を加工)して、複数の圧電柱120を形成する。
その後、ノズル配列方向と直交する方向において、圧電柱120の第1不活性部12B側に、図3(b)に示すように、支持部となる支持部材14を配置して、ベース部材13に接着接合している。支持部材14は、1つの圧電柱120おきに配置されている。
また、支持部材14は、圧電柱120と同じ厚さ(ノズルの配列方向:ノズル配列方向の幅)を有している。
ここで、支持部材14の材料は、ここでは圧電部材12と同じ材料を使用しているが、吐出時に個別液室6が持ち上がるのを抑制するための液室支持機能(流路部材支持機能)を高めるために、圧電部材12よりもヤング率の高い材料にすることが好ましい。
次に、本実施形態における液室支持構成(流路部材支持構成)について説明する。
圧電部材12には前述したように溝加工によって複数の圧電柱120が形成されて、振動板部材3の振動領域30の凸部31に接着接合されている。
ここで、圧電柱120(圧電部材12)は、ノズル配列方向と直交する方向(個別液室の長手方向)において、両端部に電圧を与えても変形しない第1不活性部12B及び第2不活性部12Cを有し、中央部に電圧を与えることで変形(伸縮)する活性部12Aを有している。なお、ここでは、第1不活性部12Bを個別液室6への液体流入側(液体供給路7側)とする。
そして、すべての圧電柱120の活性部12Aを振動板部材3の振動領域30の凸部31に接着接合している。
また、複数の圧電柱120は、1つおきに、第1不活性部12Bが振動板部材3の液体供給路7の壁面の面外に形成された凸部(三層部分:図3(c)に面塗りを施した領域)32に接着接合されている。
また、第1不活性部12Bが振動板部材3に接合されていない圧電柱120については、支柱部である支持部材14が振動板部材3の液体供給路7の壁面の面外に形成された凸部(三層部分:図3(c)に面塗りを施した領域)34に接着接合されている。
このように、本実施形態においては、ノズル配列方向において、交互に、圧電柱120の第1不活性部12Bと、支持部材14が振動板部材3の液体供給路7に対応する部分に接合されている。
つまり、隣り合うチャネルの一方のチャネルの第1個別流路61Aは、圧電柱120の第1不活性部12Bで振動板部材3を介して支持される。他方のチャネルの第2個別流路61Bは、圧電柱120とは別部材である支持部材14で振動板部材3を介して支持される。
これに対し、すべての圧電柱120の第1不活性部12Bで振動板部材3を介して液室を支持する構成もある。
ここで、不活性部は電圧によって圧電材料が変位しない部分であるが、吐出時に活性部が伸縮することによって不活性部に振動が生じる。
そのため、隣接チャネルを同じ圧電部材の不活性部で支持した場合、この振動が一体である隣接チャネルの圧電柱120を通して隣接チャネルの液体供給路7(個別流路)にも振動を与える。
その結果、隣接チャネルも同時に吐出するときに、インクの流れに影響を与え滴速度の低下や滴体積の低下など滴吐出特性の変動や不吐出などの吐出不良を生じることになる。
一方、本実施形態のように、液体供給路7から個別液室6への液体流入側が、圧電柱120の第1不活性部12Bで支持された第1個別流路61Aと、支持部材14で支持された第2個別流路61Bとを、交互に並べて配置することにより、隣接チャネルの第1個別流路61Aと第2個別流路61Bとの間でのクロストークを抑制できる。
次に、本発明の第2実施形態に係る液体吐出ヘッドについて図5ないし図7を参照して説明する。図5は同ヘッドのノズル配列方向と直交する方向の図7のD―D線に沿う断面説明図、図6は同ヘッドのノズル配列方向と直交する方向の図7のE―E線に沿う断面説明図、図7(a)は流路板を圧電素子側から見た底面図、(b)は圧電素子をノズル側から見た平面説明図、(c)は振動板部材を圧電素子側から見た底面説明図である。なお、図5は前記第1実施形態の図1と同じである。
本実施形態では、圧電柱120の第1不活性部12Bで支持されている個別液室6を含む第1個別流路61Aと、支持部材14で支持されている個別液室6を含む第2個別流路61Bとを、相対的に、ノズル配列方向と直交する方向に位置をずらして形成配置している。
より具体的には、支持部材14で支持されている第2個別流路61Bは、第1不活性部12Bで支持されている第1個別流路61Aに対して、共通液室50側に移動させている。
すなわち、前記第1実施形態の構成では、隣接するチャネルで圧電柱120の第1不活性部12Bで支持される位置と支持部材14で支持される位置が異なる構成のため、チャネル間でのクロストーク特性にバラツキが生じやすくなる。
そこで、本実施形態では、支持部材14で支持される第2個別流路61Bをノズル4等を含めて移動させて、支持位置を隣接チャネル間で略同じにすることにより、隣接チャネル間でのクロストーク特性のバラツキを低減することができる。
この場合、第2個別流路61Bの位置をずらしたことに伴って、図5及び図6に示すように、圧電柱12bは隣接するチャネルで活性部12Aと第1、第2不活性部12B、12Cの長さが各々異なる構成としている。
ここで、上記のように、チャネル毎に活性部と不活性部の長さが異なる積層型圧電部材の形成方法について図8を参照して説明する。図8は圧電部材をノズル側から見た透視略図である。
この圧電部材の製造プロセスは、スクリーン印刷により、圧電材料と電極材料をパターニングして圧電層121と、内部電極層122,123を積み重ねていく既知の方法により製造する。
このとき、図8(a)、(b)に示すように、溝加工するピッチで櫛歯状に形成された長さの異なる内部電極層122A、122Aと内部電極層123A、123Bを、圧電層121を介して、交互に印刷する。
これにより、図8(c)に示すように、活性部の構成が異なる状態、すなわち、内部電極層122Aと123Aとで構成される活性部と、内部電極層122Bと123Bとで構成される活性部とが、溝加工のピッチで形成される。
その後、図8(d)に示すように、溝124を所定のピッチで加工することにより、隣接する圧電柱120では、活性部12Aが交互にずれた位置になる構成が得られる。なお、図8(e)は図5と同じ断面位置での断面を、図8(f)は図6と同じ断面位置での断面を示している。
次に、本発明の第3実施形態に係る液体吐出ヘッドについて図9を参照して説明する。図9は同ヘッドのノズル配列方向と直交する方向の断面説明図である。
本実施形態では、前記第1実施形態或いは第2実施形態において、振動板部材3と接着接合することで液室を支持する圧電柱120の第1不活性部12Bの長さ(ノズル配列方向と直交する方向の長さ)を第2不活性部12Cの長さよりも長く形成している。
これにより、第1不活性部12Bによる支持領域が長く(大きく)なって、液室(流路)を強固に支持できる。
また、液室を支持していない第2不活性部12Cは長さを短く形成することにより、圧電柱120の拘束による変位低減を抑えられ、圧電柱120の変位を確保でき、吐出効率を向上させることができる。また、圧電部材12自体のサイズを小型化でき、ヘッドの小型化と圧電素子や流路部品などの部品コストの低減を図れる。
次に、本発明の第4実施形態に係る液体吐出ヘッドについて図10及び図11を参照して説明する。図10は同ヘッドのノズル配列方向と直交する方向の断面説明図、図11は同じく要部平面説明図である。
本実施形態では、第1不活性部12Bと活性部12Aとの間、第2不活性部12Cと活性部12Aとの間で、第1不活性部12B側、第2不活性部12C側に、溝(凹部)125、126をそれぞれ形成している。
溝125、126は、図11に示すように、ノズル列方向に、全ての圧電柱120にダイシング加工により形成されている。溝125、126は、圧電部材12に溝加工を行う前に行う。
このように構成した場合、溝125は、活性部12Aの変位に伴って液室を支持する第1不活性部12Bも変位してしまうことを抑制でき、液室をより強固に支持できて、一層クロストークを抑制できる。溝126は、活性部12Aの変位が第2不活性部12Cの拘束を受け減少することを防止し、良好な吐出効率が得られる。
ここで、振動板部材3と接合される側の第1不活性部12Bに形成された溝125は、反対側の溝126より深く形成されている。これにより、支持部分となる第1不活性部12Bに活性部12Aの振動が伝わりにくくなり、クロストークを更に効果的に抑制できる。
なお、図12に示すように、第1不活性部12Bと活性部12Aとの間にだけ溝125を設ける構成とすることもできる。
次に、本発明の第5実施形態に係る液体吐出ヘッドについて図13を参照して説明する。図13は同ヘッドの要部平面説明図である。
本実施形態では、ベース部材13上に圧電部材12とともに支持部材14を接合して、これらの圧電部材12及び支持部材14の表面を研磨加工することにより、表面を平面化している。
そして、ダイシングにより、一括で、圧電部材12と支持部材14に溝加工を施して、圧電柱120を形成するとともに、支持部材14にも圧電柱120と同じピッチで支持部14aを形成している。
支持部材14の材料は、圧電素子と支持部材を一括でダイシング加工するときに、同じ加工条件で安定加工できるセラミックが好ましい。例えば、PZTなどの安価なアルミナや圧電素子と同類の材料である。
このように支持部材14と圧電部材12の振動板部材3との接合面を同時に研磨加工することで、高精度の平滑面を形成することができ、圧電柱120と支持部14aを振動板部材3と均一に接合することができ、チャネル間での吐出ばらつきの低減を図れる。
また、支持部材14は圧電部材12と同じピッチで溝が形成さているため、駆動時の支持部材14の振動が隣接チャネルへ伝播することを抑制できるとともに、圧電部材12と一括で溝加工できることで、加工コストを低下することができる。
次に、本発明の第6実施形態に係る液体吐出ヘッドについて図14及び図15を参照して説明する。図14は同ヘッドのノズル配列方向と直交する方向の図15のF―F線に沿う断面説明図、図15(a)は流路板を圧電素子側から見た底面図、(b)は圧電素子をノズル側から見た平面説明図、(c)は振動板部材を圧電素子側から見た底面説明図である。
本実施形態では、隣接するチャネルにおいて、液体供給路7から個別液室6への液体流入方向が反対になる位置関係で配置している。つまり、個別液室6が入れ子状に整列した構成としている。
この構成では、2つのノズル列41、43が配置される。
そして、ノズル列41を構成するノズル4が通じる個別液室6を含む第1個別流路61Aは、例えば、圧電柱120の第1不活性部12Bで支持される。一方、ノズル列43を構成するノズル4が通じる個別液室6を含む第2個別流路61Bは、例えば、支持部材14で支持される
このように構成したので、前記第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。つまり、吐出時の圧電柱の振動によって、支持に用いられる不活性部にも振動が生じるが、隣接するチャネルの圧電柱の不活性部に支持される部分はノズルの外側の液体の流路ではない部分であるため、吐出時に隣接チャネルの液体流れに影響を与えることはない。そのため、隣接クロストークを抑制できる。
また、本実施形態によれば、一つの圧電部材12から2列の独立したノズル列41、43を形成することができ、高速印刷に適したヘッドを得ることができる。
次に、本発明の第7実施形態に係る液体吐出ヘッドについて図16及び図17を参照して説明する。図16は同ヘッドのノズル配列方向と直交する方向の断面説明図、図17は圧電素子をノズル側から見た平面説明図である。
本実施形態では、ノズル板1は、液滴を吐出する複数のノズル4を配列した4列のノズル列41〜44を有している。
そして、ノズル配列方向と直交する方向で、内側に位置するノズル列41、42は、個別液室6よりも外側に配置され、フレーム部材20に形成されている第1共通液室51、52に通じている。第1共通液室51、52には外部からの液体供給口部55が通じている。
また、ノズル配列方向と直交する方向で、外側に位置するノズル列43、44は、ノズル列41、42間に配置される流路板2で形成されている第2共通液室53、54に通じている。なお、第2共通液室53、54は、流路板2の貫通穴がノズル板1と振動板部材3とで塞がれることで形成される。
一方、圧電アクチュエータ11は、ベース部材13上に、2つの圧電部材12,12が配置されるとともに、これらの圧電部材12,12間に配置した支持部材14が配置されて、接着接合されている。なお、これらの圧電部材12、12及び支持部材14は、表面を一括で研磨加工して平面化し、ダイシングにより一括して溝加工を施している。
そして、1つの圧電部材12に形成した圧電柱120を交互にノズル列41、43又は42、44に対応する個別液室6の壁面を形成する振動領域30に接合している。
また、個別液室6、6は、本実施形態でも、図17に示すように、入れ子状に配置されている。これにより、一つの圧電部材12から2列の独立したノズル列41、43又は42、44を形成することができ、共通液室51〜54の各ノズル列41〜44に対応した配置が容易となり、また、流路板2の面積を増加させずに、小型化できる。
そして、外側の共通液室51、52に通じるノズル列41、42に対応する第1個別流路61Aは、圧電柱120の第1不活性部12Bによって支持されている。また、内側の共通液室53、54に通じるノズル列43、43に対応する第2個別流路61Bは、支持部材14によって支持されている
このように、不活性部で支持されるチャネルと支持部材で支持されるチャネルが交互に配置されていることで、前記各実施形態と同様に、隣接チャネルにおけるクロストークを抑制することができる。
次に、本発明の第8実施形態に係る液体吐出ヘッドについて図18及び図19を参照して説明する。図18は同ヘッドのノズル配列方向と直交する方向の図19のG―G線に沿う断面説明図、図19(a)は流路板を圧電素子側から見た底面図、(b)は圧電素子をノズル側から見た平面説明図、(c)は振動板部材を圧電素子側から見た底面説明図である。
本実施形態では、前記第6実施形態と同様に、隣接するチャネルにおいて、個別液室6が入れ子状に整列し、液体供給路7から個別液室6への液体流入方向が反対になる位置関係で配置し、2つのノズル列41、43を配置している。
そして、ノズル列41を構成するノズル4が通じる個別液室6を含む第1個別流路61Aは、圧電柱120の第1不活性部12Bで支持される。一方、ノズル列43を構成するノズル4が通じる個別液室6を含む第2個別流路61Bは、支持部材14で支持される。
ここで、第1個別流路61A及び第2個別流路61Bの各個別液室6の壁面を形成する振動板部材3の振動領域30の凸部31は、前述したように、圧電柱120の活性部12Aに接着接合している。
このとき、ノズル配列方向において、第1個別流路61A及び第2個別流路61Bの各個別液室6の中央位置P1は、圧電柱120の活性部12Aの中央位置P2よりも第2不活性部12C側に位置している。
ここで、本実施形態の比較例について図20ないし図22を参照して説明する。
この比較例は、図20に示すように、ノズル配列方向において、個別液室6の中央位置P1が圧電柱120(圧電素子)の活性部12Aの中央位置P2と同じである構成としたものである。
この比較例においては、ノズル列41を構成するノズル4が通じる第1個別流路61Aの個別液室6(これを「チャネル1」とする。)に対応する圧電柱120(圧電素子)の最大変位点Pmaxは図21に示す位置になる。
また、ノズル列43を構成するノズル4が通じる第2個別流路61Bの個別液室6(これを「チャネル2」とする。)に対応する圧電柱120(圧電素子)の最大変位点Pmaxは図22に示す位置になる。
このように、比較例では、図20に示すように圧電素子の最大変位点Pmaxが活性部12Aの中央より不活性部が短い側(第2不活性部12C側)に位置する。
そして、個別液室6の中央位置P1が活性部12Aの中央位置P2と同じである場合、図21に示すように、第1個別流路61Aのチャネル1では個別液室6の中央位置よりもノズル側に圧電素子(圧電柱120)の最大変位点Pmaxが位置する。また、図22に示すように第2個別流路61Bのチャネル2では個別液室6の中央位置よりも液体供給路7側に圧電素子(圧電柱120)の最大変位点Pmaxが位置する構成となる。
ここで、図23に示すような駆動パルスを圧電素子に与えるものとする。図23に示す駆動パルスは、引き打ちを行う駆動パルスであり、電圧を立ち下げて個別液室6の容積を膨張させた後、電圧を立ち上げて個別液室6の容積を収縮させて液滴を吐出させる。
この駆動パルスの保持時間(パルス幅)Pwを変化させた場合にチャネル1とチャネル2から吐出される液滴の滴速度の変化の一例を図24に示している。この図24では、チャネル1の滴速度が最大となるパルス幅Pwは1.5μs、チャネル2の滴速度が最大となるパルス幅は1.7μsとなっている。つまり、吐出時の圧力波の速度がピークに到達する時間が第1個別流路61Aのチャネル1と第2個別流路61Bのチャネル2とで異なる現象が生じる。
そのため、同一の駆動信号(駆動パルス)を入力して駆動した場合、第1個別流路61Aのチャネル1と第2個別流路61Bのチャネル2とで吐出特性(滴速度や滴体積)が異なる現象が生じることになり、画像品質が低下する。
これに対して、本実施形態では、個別液室6の中心位置P1が活性部12Aの中心位置P2よりも、第2不活性部12C側に位置するようにしている。このとき、特に、圧電素子の最大変位点Pmaxを個別液室6の略中央に位置するようにすることで、図25に示すように、チャネル1とチャネル2の圧力波の速度がピークに到達する時間を一致させることが可能になり、チャネル1とチャネル2の吐出特性を同等にすることができる。
次に、本発明の第9実施形態に係る液体吐出ヘッドについて図26及び図27を参照して説明する。図26は同ヘッドのノズル配列方向と直交する方向の断面説明図、図27は図26の要部拡大図である。
本実施形態の液体吐出ヘッドは、前記第7実施形態において、圧電素子の壁面支持に用いない第2不活性部12Cと対面するベース部材13の面に凹部(ここでU溝形状としている)131が形成されている。
この凹部131によって第2不活性部12Cがベース部材13と接着固定されない構成となる。
これにより、圧電素子(圧電柱120)が変形するときに、ベース部材13による拘束で変位が低減することが防止されて、活性部12Aの変位を稼ぐことができる。この場合、活性部12A及び第1不活性部12Bはベース部材13に強固に接着固定されているため、液室が持ち上がることによるクロストーク特性の悪化はなく、ヘッドの吐出効率を向上できる。
次に、本発明の第10実施形態に係る液体吐出ヘッドについて図28を参照して説明する。図28は同ヘッドのノズル配列方向と直交する方向の要部断面説明図である。
本実施形態では、圧電素子(圧電柱120)の壁面支持に用いない第2不活性部12Cのベース部材13に対向する面にテーパー面127を形成している。ここでは、テーパー面126はダイシングソーにより加工した。
このように構成することで、前記第9実施形態と同様に、第2不活性部12Cがベース部材13に固定されてない構成となり、活性部12Aの変位効率を向上して、ヘッドの吐出効率を向上できる。
次に、本発明の第11実施形態に係る液体吐出ヘッドについて図29を参照して説明する。図29は同ヘッドのノズル配列方向と直交する方向の要部断面説明図である。
本実施形態は、前記第10実施形態に、前記第4実施形態を適用して、第1不活性部12Bと活性部12Aとの間で、第1不活性部12B側に、溝(凹部)125形成している。
溝125は、ノズル列方向に、全ての圧電柱120にダイシング加工により形成されている。ここでは、溝125は、圧電部材12に溝加工を行う前に行う。
このように構成した場合、溝125は、活性部12Aの変位に伴って液室を支持する第1不活性部12Bも変位してしまうことを抑制でき、液室をより強固に支持できて、更にクロストークを抑制できる。
次に、本発明に係る画像形成装置の一例について図30及び図31を参照して説明する。図30は同装置の機構部の側面説明図、図31は同機構部の要部平面説明図である。
この画像形成装置はシリアル型画像形成装置である。左右の側板221A、221Bに横架したガイド部材である主従のガイドロッド231、232でキャリッジ233を主走査方向に摺動自在に保持し、図示しない主走査モータによってタイミングベルトを介して矢示方向(キャリッジ主走査方向)に移動走査する。
このキャリッジ233には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出するための本発明に係る液体吐出ヘッドからなる記録ヘッド234を搭載している。記録ヘッド234は、複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
記録ヘッド234は、それぞれ2つのノズル列を有する。一方の記録ヘッド234aの一方のノズル列はブラック(K)の液滴を、他方のノズル列はシアン(C)の液滴を吐出する。他方の記録ヘッド234bの一方のノズル列はマゼンタ(M)の液滴を、他方のノズル列はイエロー(Y)の液滴を吐出する。なお、ここでは2ヘッド構成で4色の液滴を吐出する構成としているが、1ヘッド当たり4ノズル列配置とし、1個のヘッドで4色の各色を吐出させることもできる。
また、記録ヘッド234のヘッドタンク235には各色の供給チューブ236を介して、供給ユニットによって各色のインクカートリッジ210から各色のインクが補充供給される。
一方、給紙トレイ202の用紙積載部(圧板)241上に積載した用紙242を給紙するための給紙部として、用紙積載部241から用紙242を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙コロ)243及び給紙コロ243に対向する分離パッド244を備える。この分離パッド244は給紙コロ243側に付勢されている。
そして、この給紙部から給紙された用紙242を記録ヘッド234の下方側に送り込むために、用紙242を案内するガイド245と、カウンタローラ246と、搬送ガイド部材247と、先端加圧コロ249を有する押さえ部材248とを備える。さらに、給送された用紙242を静電吸着して記録ヘッド234に対向する位置で搬送するための搬送手段である搬送ベルト251を備えている。
この搬送ベルト251は、無端状ベルトであり、搬送ローラ252とテンションローラ253との間に掛け渡されて、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。また、この搬送ベルト251の表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ256を備えている。この帯電ローラ256は、搬送ベルト251の表層に接触し、搬送ベルト251の回動に従動して回転するように配置されている。この搬送ベルト251は、図示しない副走査モータによってタイミングを介して搬送ローラ252が回転駆動されることによってベルト搬送方向に周回移動する。
さらに、記録ヘッド234で記録された用紙242を排紙するための排紙部として、搬送ベルト251から用紙242を分離するための分離爪261と、排紙ローラ262及び排紙コロ263とを備え、排紙ローラ262の下方に排紙トレイ203を備えている。
また、装置本体の背面部には両面ユニット271が着脱自在に装着されている。この両面ユニット271は搬送ベルト251の逆方向回転で戻される用紙242を取り込んで反転させて、再度、カウンタローラ246と搬送ベルト251との間に給紙する。また、この両面ユニット271の上面は手差しトレイ272としている。
さらに、キャリッジ233の走査方向一方側の非印字領域には、記録ヘッド234のノズルの状態を維持し、回復するための維持回復機構281を配置している。この維持回復機構281には、記録ヘッド234の各ノズル面をキャッピングするための各キャップ部材(以下「キャップ」という。)282a、282b(区別しないときは「キャップ282」という。)を備えている。また、維持回復機構281は、ノズル面をワイピングするためのブレード部材であるワイパーブレード283と、増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け284などを備えている。
また、キャリッジ233の走査方向他方側の非印字領域には、記録中などに増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け288を配置している。この空吐出受け288には記録ヘッド234のノズル列方向に沿った開口部289などを備えている。
このように構成したこの画像形成装置においては、給紙トレイ202から用紙242が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙242はガイド245で案内され、搬送ベルト251とカウンタローラ246との間に挟まれて搬送される。更に用紙242は先端を搬送ガイド237で案内されて先端加圧コロ249で搬送ベルト251に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
そして、帯電した搬送ベルト251上に用紙242が給送されると、用紙242が搬送ベルト251に吸着され、搬送ベルト251の周回移動によって用紙242が副走査方向に搬送される。
そこで、キャリッジ233を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド234を駆動することにより、停止している用紙242にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙242を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙242の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙242を排紙トレイ203に排紙する。
このように、この画像形成装置では、本発明に係る液体吐出ヘッドを記録ヘッドとして備えるので、高画質画像を安定して形成することができる。
なお、本願において、「用紙」とは材質を紙に限定するものではなく、OHP、布、ガラス、基板などを含み、インク滴、その他の液体などが付着可能なものの意味である。被記録媒体、記録媒体、記録紙、記録用紙などと称されるものを含む。また、画像形成、記録、印字、印写、印刷はいずれも同義語とする。
また、「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液体を吐出して画像形成を行う装置を意味する。また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること)をも意味する。
また、「インク」とは、特に限定しない限り、インクと称されるものに限らず、記録液、定着処理液、液体などと称されるものなど、画像形成を行うことができるすべての液体の総称として用いる。例えば、DNA試料、レジスト、パターン材料、樹脂なども含まれる。
また、「画像」とは平面的なものに限らず、立体的に形成されたものに付与された画像、また立体自体を三次元的に造形して形成された像も含まれる。
また、画像形成装置には、特に限定しない限り、シリアル型画像形成装置及びライン型画像形成装置のいずれも含まれる。