次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る田植機1の全体的な構成を示す側面図である。図2は、田植機1の平面図である。
図1に示すように、本発明の第1実施形態に係る田植機1は、いわゆる乗用型田植機として構成されている。田植機1の機体は、車体2と、植付部3と、を備える。
車体2は、左右1対の前輪4と、左右1対の後輪5と、を備えており、圃場等を走行することができる。車体2は、オペレータが搭乗するための運転座席6を備える。運転座席6の近傍には、車体2の操向操作を行うためのステアリングハンドル7、車体2の操向速度を調節するための変速ペダル等の各種の操作具が配置されている。
車体2において、運転座席6の下方には、駆動源としてのエンジン10が配置されている。また、エンジン10の前方には、ミッションケース11が配置されている。
車体2の後部には昇降リンク機構12が配置される。この昇降リンク機構12は、車体2の後方に配置された植付部3を、昇降可能となるように車体2に連結している。また、車体2の後部には、エンジン10の駆動力を植付部3に出力するための駆動出力軸13等が配置されている。
植付部3は、植付ケース15と、複数のフロート16と、苗載台17と、作溝器27と、を備える。
植付ケース15には、前記昇降リンク機構12が連結されているとともに、1つ以上の植付ユニット20が取り付けられている。本実施形態の田植機1は6条植えに対応しており、6つの植付ユニット20を備えている。それぞれの植付ユニット20は、回転ケース21に2つの植付アーム22を備えるロータリ式植付装置として構成されている。
植付ケース15には、駆動出力軸13からの駆動力が入力されており、この駆動力によって回転ケース21が回転駆動されるように構成されている。ロータリ式植付装置の構成は公知であるので詳細な説明は省略するが、回転ケース21を回転駆動することにより、植付アーム22の先端部が所定の軌跡を描きながら上下に駆動される構成になっている。植付アーム22の先端部は、上から下に向かって動くときに、苗載台17に乗せられた苗マットの下端から1株分の苗を掻き取り、当該苗の根元を保持したまま下方に動いて、その軌跡の下死点近傍で苗を地面に植え込むように構成されている。
フロート16は、植付部3の下部に左右対称に設けられている。フロート16を地面に接触させることにより、植付部3を地面に対して水平に保ち、植付姿勢を安定させて正確な植付けを行うことができるように構成されている。
作溝器27は、フロート16に隣接して設けられている。作溝器27は、フロート16の設置面よりも下方に向けて泥土層に入り込み、肥料を供給するための溝を形成しながら、肥料案内ホース26を介して肥料タンク25から供給されてくる肥料を泥土層に施肥するように構成されている。
苗載台17は、植付ケース15の上方に配置されている。苗載台17は、図略のガイドレール上を車体左右方向に往復動可能に支持されている。そして、植付部3は、苗マットの左右幅の範囲内で苗載台17を左右に往復駆動する図略の横送り機構を備えている。これにより、苗載台17に載せた苗マットを、植付ユニット20に対して左右に相対移動させることができる。また、苗載台17は、苗マットを、下方に向かって(即ち、植付ユニット20側に向かって)間欠的に送る苗送りベルト(縦送り機構)を備えている。以上の構成で、横送り機構と縦送り機構とを適切に連動して駆動することにより、各植付ユニット20に対して苗を順次供給し、連続的に植付けを行うことができる。
田植機1の車体前部には、内部にバッテリー等を収容したボンネット14が配置されている。このボンネット14の左右側方には、それぞれ予備苗台ユニット30が備えられている。図2に示すように、左右に配置された予備苗台ユニット30のそれぞれは、複数(2つ)の予備苗台31を備える。それぞれの予備苗台31には、図1に示すように、予備の苗マット40を収容した苗箱41を搭載することができる。
予備苗台ユニット30は、ステー51を備えている。このステー51は丸棒状の部材であり、車体2の左右側方に水平に突出するとともに、上方に折り曲げられている。ステー51において上方に折り曲げられた部分には、上下方向に延びる丸棒状の回動軸61が形成されており、後述の支持アーム52を回転可能に支持することができる。
ステー51における適宜高さの位置には、2つの予備苗台31を支持するための支持アーム(支持部)52が取り付けられている。この支持アーム52は、ボス部53と、ボス部53から突出する1対のアーム部54と、を備える。
ボス部53は、ステー51(回動軸)に対して平面視で回転可能に構成されるとともに、ステー51に対して上下方向にスライド移動させることも可能に構成されている。従って、支持アーム52は、回転させることも上下方向に移動させることも可能になっている。
なお、ボス部53とステー51との間には、支持アーム52の回転を、図2の実線の状態、又は、この状態から180°回転させた状態(2つの予備苗台31の位置を交換した状態)でロック可能な図略の回転ロック機構が設置されている。ただし、回転角度は上記の180°に限定されず、様々な角度でロックできるように構成しても良い。更に、ボス部53とステー51との間には、支持アーム52を上昇させた状態で保持することが可能な図略の保持機構が設置されている。
1対のアーム部54は、ボス部53から互いに反対向きに直線状に延びるように構成されている。1対のアーム部54は互いに等しい長さを有しており、それぞれのアーム部54の先端には、上記の予備苗台31が、ガイドレール55を介してスライド可能に取り付けられている。このガイドレール55は、平面視で長方形状に形成された予備苗台31を、その長手方向に移動させることができる。2つの予備苗台31は、回動軸であるステー51を挟んで配置されている。
図1及び図2には、2つの予備苗台31のうち、前側の予備苗台31が車体2の前方に向けて突出しており、後側の予備苗台31が運転座席6のほぼ側方に位置した状態を示している。以下、この状態での前側の予備苗台31の位置を第1位置と呼び、後側の予備苗台31の位置を第2位置と呼ぶことがある。第1位置及び第2位置の何れにおいても、予備苗台31は、その長手方向が前後方向に沿うように配置される。
第1位置の予備苗台31は、車体2の前方に突出して配置されているので、この予備苗台31に対して、車体2の前方から予備の苗(苗箱41に入った状態の苗マット40)を容易に補給できる。特に、第1位置の予備苗台31は、その長手方向が前後方向に沿うように配置されるので、当該予備苗台31に対する予備の苗の補給を前方から行い易くなる。また、必要な場合には、第1位置の予備苗台31をガイドレール55に沿って前方に引き出すことで、前方の遠い位置から苗を補給することも可能になる。
上述したように、2つの予備苗台31を支持する支持アーム52は、平面視で回動軸61を中心にして回転することができる。この回転により、第1位置にある予備苗台31と、第2位置にある予備苗台31とが、搭載面の向きが一定である状態を保ったまま、位置を互いに入れ替えることができる。なお、支持アーム52を回転させるときには、2つの予備苗台31とともに支持アーム52を上方に持ち上げることで、予備苗台31をステアリングハンドル7等に干渉させずに回転させることができる。
そして、上記の回転により、前側の第1位置において予備苗台31上に補給された予備の苗を、予備苗台31とともに後側の第2位置まで移動させることができる。これにより、予備の苗を、車体2の後方の植付部3(苗載台17)の近くまでスムーズに搬送することができる。特に、第2位置の予備苗台31は、その長手方向が前後方向に沿うように配置されるので、当該第2位置の予備苗台31の苗を後方に向けて取り出し易くなる。また、必要な場合には、第2位置の予備苗台31をガイドレール55に沿って後方に引き出すことで、当該予備苗台31から植付部3まで苗を運ぶ距離を一層短くすることができる。
また、2つの予備苗台31は支持アーム52によって繋がっているため、一方の予備苗台31が第1位置から第2位置へ移動するのと連動して、他方の予備苗台31が第2位置から第1位置へ移動する。従って、一方の予備苗台31を動かせば他方の予備苗台31が動くので、予備の苗の補給作業を効率良く行うことができる。
なお、第1位置の予備苗台31をガイドレール55に沿って前方に引き出したり、第2位置の予備苗台31をガイドレール55に沿って後方に引き出した場合には、引き出す前の位置に戻してから予備苗台31及び支持アーム52を回転させるようにすると、予備苗台31の回転軌跡を小さくでき、周囲との干渉を防止することができる。
以上に説明したように、本実施形態の田植機1は、車体2と、植付部3と、複数の予備苗台31と、を備える。車体2は、走行する。植付部3は、車体2の後方に配置される。それぞれの予備苗台31は、植付部3に補給するための予備の苗を搭載可能な搭載面を有する。それぞれの予備苗台31は、平面視で略長方形状に形成される。それぞれの予備苗台31は、車体2の前方に向けて突出する第1位置と、当該第1位置よりも後方の第2位置と、の間で前記搭載面の向きを保ったまま移動可能である。第1位置に位置する予備苗台31は、その長手方向が前後方向に沿うように配置される。第2位置に位置する予備苗台31は、その長手方向が前後方向に沿うように配置される。第1位置に位置していた予備苗台31を第2位置まで移動させることで、第2位置に位置していた予備苗台31が第1位置まで移動するように、当該2つの予備苗台31の移動が機械的に連動する。
これにより、第1位置の予備苗台31は車体前方に突出して配置されているので、この予備苗台31に対して、車体2の前方から予備の苗を容易に補給できる。そして、このようにして予備の苗が補給された予備苗台31を第2位置まで移動させることにより、当該予備の苗を車体2の後方に向けて搬送できる。これにより、車体後方の植付部3に対して、苗の補給を容易に行うことができる。また、2つの予備苗台31の移動を機械的に連動させるので、2つの予備苗台31の前後の位置を入れ替えるように移動させることができる。従って、第1位置において予備の苗が補給された予備苗台31を、第2位置まで移動させることで、他の予備苗台31を第1位置まで移動させることができる。これにより、予備苗台31に対する予備の苗の補給を効率良く行うことができる。そして、第1位置及び第2位置の予備苗台31を、その長手方向を前後方向に沿って配置することで、2つの予備苗台31を前後に細長く配置できる。これにより、第1位置の予備苗台31に対する予備の苗の補給を前方から行い易くなるとともに、第2位置の予備苗台31の苗を後方に向けて取り出し易くなる。
また、本実施形態の田植機1は、複数の予備苗台31を支持する支持アーム52を備える。支持アーム52は、上下方向に沿って配置された回動軸61を中心にして回動可能である。平面視において、2つの予備苗台31が、回動軸61を挟んで配置されている。支持アーム52が回動軸61を中心にして回動することにより、当該支持アーム52に支持されている予備苗台31が、第1位置と第2位置の間を移動する。
これにより、上下方向の軸を中心にして支持アーム52を回動させることで、2つの予備苗台31を移動させることができる。また、2つの予備苗台31を連動して移動させる構成を簡単に実現することができる。
また、本実施形態の田植機1において、支持アーム52に対して、それぞれの予備苗台31が、当該予備苗台31の長手方向にスライド可能に構成されている。
これにより、第1位置に位置する予備苗台31を前方に引き出すことで、畦から予備苗台31への苗の補給を行い易くなる。また、第2位置に位置する予備苗台31を後方に引き出すことで、車体後方の植付部3に対する予備苗台31からの苗の補給を行い易くなる。更に、予備苗台31を回動軸61まわりで回動させる場合には、引き出された状態の予備苗台31を元に戻すことで、予備苗台31をコンパクトに回動させることができ、当該予備苗台31が周囲に干渉することを防止できる。
次に、第2実施形態を説明する。図3は、第2実施形態の田植機1bの平面図である。なお、本実施形態以降の説明においては、前述の実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
第2実施形態の田植機1aにおいては、それぞれの予備苗台31を支持アーム52に対してスライド可能に支持するガイドレール55が省略されている。一方で、それぞれの予備苗台31は、支持アーム52の先端部に、上下方向の軸を中心として回転可能に取り付けられている。
また、支持アーム52及び予備苗台31は、上記の第1実施形態とは異なり、上下移動不能に構成されている。これに伴い、ステー51(回動軸61)は、ボス部53より上側に突出しない構成となっている。また、支持アーム52及び予備苗台31は、回転させたときにステアリングハンドル7等と干渉しないように、第1実施形態よりも高い位置に設置されている。
そして、それぞれの予備苗台31には、回動軸61を中心として支持アーム52を回転させたときに、当該予備苗台31の長手方向が前後方向に沿った姿勢を維持するように、当該予備苗台31を支持アーム52に対して相対回転させるリンク機構(姿勢維持機構)が設けられている。
このリンク機構により、図3に示すように、予備苗台31を第1位置と第2位置との間で移動させる際に必要なスペースを、左右方向でコンパクトに構成することができる。
以下、上記のリンク機構について詳細に説明する。
支持アーム52を支持する回動軸61の近傍には、第2回動軸62が設けられている。この第2回動軸62は上下方向の軸線を有しており、この第2回動軸62の軸線は、平面視において回動軸61の軸線とは異なる場所に配置されている。
前記リンク機構は、第2回動軸62を中心として回転可能に構成されたリンクアーム56を備えている。このリンクアーム56は、ボス部57と、ボス部57から突出する1対のアーム部58と、を備える。
リンクアーム56における1対のアーム部58は、ボス部57から互いに反対向きに直線状に延びるように構成されている。1対のアーム部58は互いに等しい長さを有しており、それぞれのアーム部58の長さは、支持アーム52のアーム部54の長さと等しくなっている。それぞれのアーム部58の先端には、短い棒状の小リンク59の一端部が回転可能に連結され、小リンク59の他端部は、支持アーム52のアーム部54の先端に回転可能に連結される。
以上の構成で、回動軸61を中心にして支持アーム52を回転させると、この回転に連動してリンクアーム56も第2回動軸62を中心に回転する結果、それぞれの小リンク59の向きは常に一定に保たれる。従って、予備苗台31を小リンク59に対して固定することで、支持アーム52の回転に連動して予備苗台31が当該支持アーム52に対して相対回転し、予備苗台31の長手方向が常に前後方向に沿うように構成することができる。
以上に説明したように、本実施形態の田植機1において、回動軸61を中心にして支持アーム52を回動させたときに、それぞれの予備苗台31の長手方向が前後方向に沿った姿勢を維持するように、各予備苗台31を支持アーム52に対して相対回転させるリンク機構を備えている。
これにより、予備苗台31を、その長手方向が前後方向に沿った姿勢で、回動軸61を中心にして回転させることができる。従って、予備苗台31を移動させる際に必要なスペースを左右方向でコンパクトに構成することができる。
次に、第3実施形態について、図4を参照しながら説明する。
図4に示す第3実施形態の田植機1bにおいては、1つの予備苗台ユニット30につき2つの支持アーム52が設けられている。2つの支持アーム52は上下方向(即ち、回動軸61の軸線の向き)に適宜の間隔をあけて並べられている。なお、それぞれの支持アーム52の構成は第1実施形態と同様であるので説明を省略する。このように、本実施形態では1つの予備苗台ユニット30につき4つの予備苗台31が備えられているので、第1実施形態の構成よりも予備の苗の搭載量を増大させることができる。
2つの支持アーム52は、互いに独立して回転可能に構成されている。また、2つの支持アーム52のうち上側の支持アーム52は、単独で上下にスライドさせることができる。なお、下側の支持アーム52は、上側の支持アーム52を上方に移動させた状態とすることで、上下にスライドさせることができる。従って、それぞれの支持アーム52は、上方向に持ち上げて水平面内で回転させることができる。この結果、上側の2つの予備苗台31と、下側の2つの予備苗台31と、をそれぞれ適切な配置として作業を行うことができる。
以上に説明したように、本実施形態の田植機1bは、支持アーム52を、回動軸61の方向に並べて複数備える。それぞれの支持アーム52は、互いに独立して、回動軸61を中心に回動可能に構成されている。
これにより、複数の予備苗台31を上下に並べて配置できるので、苗の搭載量を増大させることができる。また、それぞれの支持アーム52が独立して回動できるので、作業の内容等に応じてそれぞれの予備苗台31を適宜の位置において作業を行うことができる。
次に、第4実施形態について、図5を参照しながら説明する。
図5に示す第4実施形態の田植機1cにおいては、回動軸61が機体左右方向に水平に配置されている。また、回動軸61に支持される支持アーム52は、ボス部53の周囲に、回動軸61を中心にして90°の間隔でアーム部54を4本備える構成となっている。それぞれのアーム部54の先端には、予備苗台31が、機体左右方向に水平な軸を中心として回転可能に取り付けられている。従って、予備苗台31は、回動軸61を中心にして90°の間隔で配置される。
また、本実施形態において、予備苗台ユニット30は、機体左右方向に水平に配置された第2回動軸62を介して回転可能なリンクアーム56を備える。リンクアーム56も支持アーム52と同様に、ボス部57の周囲に、第2回動軸62を中心にして90°の間隔でアーム部58を4本備える構成となっている。それぞれのアーム部58の先端には、短い棒状の小リンク59の一端部が回転可能に連結され、小リンク59の他端部は、支持アーム52のアーム部54の先端に回転可能に連結される。これにより、回転軸の向きが異なる以外は第2実施形態と実質的に同様なリンク機構(姿勢維持機構)が構成されている。
上記の構成において支持アーム52を回転させると、この回転に連動してリンクアーム56も回転し、それぞれの小リンク59の向きは常に一定に保たれる。予備苗台31を小リンク59に取り付けることで、予備苗台31において予備の苗(苗箱41に入れられた苗マット40)を搭載する搭載面の向きを保ったまま、当該予備苗台31を、前側の第1位置と、後側の第2位置と、の間で移動させることができる。
予備苗台ユニット30には、支持アーム52の回転を、図5の状態から45°単位で回転させた状態でそれぞれロック可能な図略の回転ロック機構(ロック機構)が設置されている。従って、4つの予備苗台31のうち選択された何れかが前側の第1位置にあり、反対側の予備苗台31が後側の第2位置にある状態でロックすることができる。また、上記の回転ロック機構は、図5の状態から45°だけ回転させた図6の状態でロックすることもできる。これにより、予備苗台31が前後方向でコンパクトに配置された状態で植付作業等を行うことができる。ただし、回転角度は上記の45°単位に限定されず、様々な角度でロックできるように構成しても良い。
なお、ロック機構としては、例えばピンを孔に差し込むことによってロックする構成が考えられるが、これに限定されない。
以上に説明したように、本実施形態の田植機1cは、複数の予備苗台31を支持する支持アーム52を備える。支持アーム52は、略左右方向に沿って配置された回動軸61を中心にして回動可能である。側面視において、2対の予備苗台31が、回動軸61を挟んで配置されている。支持アーム52が回動軸61を中心にして回動することにより、当該支持アーム52に支持されている予備苗台31が、第1位置と前記第2位置の間を移動する。
これにより、2対の予備苗台31が観覧車のように連動して移動する構成を実現できる。また、それぞれの予備苗台31は略鉛直な平面内で移動するので、左右方向でコンパクトな構成を実現することができる。
また、本実施形態の田植機1cにおいては、回動軸61を中心にして支持アーム52を回動させたときに、それぞれの予備苗台31の搭載面の向きを一定に保つ平行リンク機構を備える。
これにより、予備苗台31の姿勢が常に維持されるので、当該予備苗台31から予備の苗が落下することを防止できる。また、予備苗台31がフラつかないので、当該予備苗台31に対して予備の苗を搭載したり取り出したりする作業を安定して行うことができる。
また、本実施形態の田植機1cにおいて、支持アーム52は、4つの予備苗台31を備える。それぞれの予備苗台31は、回動軸61を中心として略90°の間隔で配置されている。そして、田植機1cは、4つの予備苗台31のうち1つが第1位置に位置する状態から、回動軸61を中心として支持アーム52を略45°回動させた図6の状態で保持できるロック機構を備える。
これにより、4つの予備苗台31が占めるスペースを前後方向でコンパクトにした状態で支持アーム52を固定して植付作業等を行うことができる。
次に、図7及び図8を参照して、本発明の第5実施形態を説明する。
図7に示す第5実施形態の田植機1dにおいて、予備苗台ユニット30は、ステー51の前方と後方にそれぞれ回転可能に支持されたスプロケット71,72と、このスプロケット71に巻き掛けられた無端状のチェーン(無端状部材)73と、を備える。これにより、後述の2つの連結部材74,75の移動を連動させるチェーン機構(連動機構)が構成されている。
図7及び図8に示すように、ステー51には、2つのガイドレール55が適宜の間隔をあけて上下方向に並べて固定されている。2つのガイドレール55は何れも機体前後方向に向けられており、それぞれのガイドレール55には予備苗台31が前後方向に移動可能に支持されている。上側の予備苗台31は、連結部材(第1連結部)73を介して、チェーン73の上半部の適宜位置に固定され、下側の予備苗台31は、連結部材(第2連結部)74を介して、チェーン73の下半部の適宜位置に固定されている。
この構成で、一方の予備苗台31を、図7において車体2の前方に突出する第1位置から後方の第2位置へ直線的に移動させると、他方の予備苗台31は、第2位置から第1位置へ直線的に移動する。なお、図8に示すように、2つの予備苗台31は上下方向で異なる位置に配置され、2つの連結部材74,75は機体左右方向で異なる位置に配置されているため、両者は互いにすれ違うように前後方向に往復動することができる。
以上に示すように、本実施形態の田植機1dは、2つの連結部材74,75と、2つの連結部材74,75の移動方向が互いに逆となるように両者の移動を連動させるチェーン機構と、を備える。2つの連結部材74,75は、それぞれ予備苗台31を支持している。2つの連結部材74,75が移動することにより、当該連結部材74,75に支持されている予備苗台31が、第1位置と第2位置との間で直線移動する。
これにより、2つの予備苗台31を、それぞれ、第1位置と第2位置の間で前後方向に直線移動させることができる。そして、2つの連結部材74,75の移動方向が逆になるようにチェーン機構が設けられているので、2つの予備苗台31の位置を、第1位置と第2位置の間で入れ換えるように移動させることができる。また、予備苗台31が直線移動するので、当該予備苗台31が移動する際に必要なスペースを小さくすることができる。
また、本実施形態の田植機1dにおいて、チェーン機構は、チェーン73と、2つのスプロケット71,72と、を備える。2つのスプロケット71は、前後方向に並べて配置されている。チェーン73は、2つのスプロケット71,72に巻き掛けられている。2つの連結部材74,75は、チェーン73に固定されている。
これにより、2つの連結部材74,75(2つの予備苗台31)を機械的に連動させつつ前後方向に移動させる構成を容易に実現できる。
次に、図9を参照して、本発明の第6実施形態を説明する。
図9に示す第6実施形態の田植機1eにおいて、それぞれの連結部材74,75は、上下方向に並べて配置された2つの予備苗台31を支持するように構成されている。従って、本実施形態では、1つの予備苗台ユニット30につき4つの予備苗台31が備えられる。
最も高く位置する予備苗台31は連結部材74に支持され、2番目に高い予備苗台31は連結部材75に支持されている。3番目に高い予備苗台31は連結部材74に支持され、最も低く位置する予備苗台31は連結部材75に支持されている。
従って、本実施形態では、予備苗台31を第1位置と第2位置との間で移動させるときに、上から1番目の予備苗台31と上から3番目の予備苗台31との間を、上から2番目の予備苗台31が通過することになる。また、上から2番目の予備苗台31と上から4番目の予備苗台31との間を、上から3番目の予備苗台31が通過することになる。このように、コンパクトな構成と、予備苗台31のスムーズな移動を両立させることができる。
以上に説明したように、本実施形態の田植機1eにおいて、2つの連結部材74,75は、それぞれ2つの予備苗台31を上下方向に並べて支持している。そして、2つの連結部材74,75が前後方向ですれ違うときに、連結部材74に支持されている2つの予備苗台31の間を、連結部材75に支持されている予備苗台31が通過するように構成されている。
これにより、コンパクトな構成で予備の苗の搭載量を増大させることができるとともに、予備苗台31が第1位置と第2位置との間で移動する際に、当該予備苗台31同士が干渉することなく行き違わせることができる。
次に、田植機に対する予備の苗の補給に関する複数の変形例を説明する。
図10に示す第1変形例の田植機1pは、機体左右方向に細長い構成の予備苗台31aを備えている。この予備苗台31aは、運転座席6の後方かつ植付部3の前方(図10においては図示されていない肥料タンクの上方)に配置されている。予備苗台31aは図略のスライド機構を介して車体2に支持されており、車体2の左側、右側の何れにも移動させることができる。なお、図10の鎖線は、車体2の左側に予備苗台31aを大きく突出させた状態を示している。
予備苗台31aは、その長手方向に並べて配置された多数のローラを備えている。従って、予備苗台31aに搭載した苗(苗マット40を収容した苗箱41)を、予備苗台31aの長手方向に沿って円滑に滑らせることができる。このように、ローラスライダ式の予備苗台31aの構成とすることで、予備の苗の補給作業が容易になる。
なお、図10の例は予備苗台31aを平行移動させる構成であるため、図10の鎖線のように予備苗台31aを移動させた場合は、植付部3のすぐ前方には予備苗台31aが位置しなくなる。これを考慮し、予備苗台を平行移動させるのではなく、折り畳み式又は伸縮式に構成することもできる。この場合、予備苗台を車体2から横向きに大きく張り出した状態でも、その先端から植付部3のすぐ前方まで苗(苗箱41)を搬送して補給することができる。従って、予備の苗の補給作業が更に容易になり、また、連続的な補給作業を実現することができる。
また、図10に示す予備苗台31aを側面視で回転させて、例えば運転座席6の背中部に沿うように収納可能に構成しても良い。これにより、運転座席6の後方に配置された肥料タンクへのアクセスが良好になる。
なお、ローラスライダ式の予備苗台は、植付部3に近づくにつれて下方となるように適宜の傾斜が設定されていると、予備の苗が自重で自動的に搬送されることになるので好ましい。また、この傾斜角度を適宜変更できるように構成すると、予備の苗の搬送スピードを調整可能になるので、更に好ましい。ただし、予備苗台の傾斜を逆にして、植付部3から遠ざかるにつれて下方となるように構成されても良い。
また、ローラスライダ式の予備苗台31aの長手方向途中に、苗の根切り装置を設けても良い。この根切り装置としては、回転して根を切るための回転ブラシを備える構成が考えられる。この場合、苗箱41から苗マット40を取り出し易くなる。
予備苗台31aをスライドさせる構成は、手動としても良いが、例えば電動モータによりスライドする構成としても良い。このとき、車体2を旋回させるステアリングハンドル7の操作を検出して、横方向に突出していた予備苗台31aを自動的に元に戻す構成にしても良い。
図11に示す第2変形例の田植機1qにおいては、予備苗台31bが運転座席6の後方かつ植付部3の前方(肥料タンク25の上方)に配置されている。この予備苗台31bは、(苗箱41を介さずに)苗マット40を直接搭載するように構成されている。そして、当該予備苗台31bの後部が、回動軸81を中心にして回動可能となるように車体2に取り付けられている。
この構成では、苗マット40を直接持ち上げずに、予備苗台31bを後方に傾けるだけで、植付部3の苗載台17に対して当該苗マット40を供給することができる。従って、苗の補給作業の省力化を実現できるとともに、苗崩れも防止できる。更に、苗マット40に触れないで済むために、オペレータの手が汚れることも防止できる。
なお、予備苗台31bが適宜の方法で左右にスライド可能となるように構成すると、苗載台17と予備苗台31bの左右位置を合わせることができるので、苗の補給作業をより効率的に行うことができ、好ましい。
また、予備苗台31bを上下移動可能に構成することで、苗箱41からの苗マット40の取出し作業を簡便に行うことができる。即ち、苗マット40が苗箱41に入れられた状態で予備苗台31bに載置し、当該予備苗台31bを後方に倒した状態で、苗載台17の上端に取り付けられている板状部材17aの先端部を苗箱41と苗マット40の間に差し込み、予備苗台31bを下降させるようにすることが考えられる。このような補給方法を採ることで、苗載台17への苗マット40の補給と、苗マット40を取り出した空の苗箱41の回収と、を同時に行うことができ、補給作業を効率良く行うことができる。また、従来必要であった苗取出板が不要になる。
図12に示す第3変形例の田植機1rにおいては、ローラスライダ式の予備苗台31cが機体前後方向に細長く配置されている。そして、この予備苗台31cが、上下方向に配置された回動軸82を中心にして回動可能に構成されている。この構成によれば、機体前方や機体横の何れからも予備の苗を供給することができる。
図13に示す第4変形例の田植機1sにおいては、ローラスライダ式の予備苗台31dが機体前後方向に細長く配置されているが、当該予備苗台31dは適宜の回動機構及びスライド機構の両方を介して支持されているため、図13の鎖線に示すように、その一端を、予備苗台31dが配置されている側と左右方向で反対側の端部まで位置させることができる。これにより、どの条でも苗載台17との距離が近くなるので、苗の補給作業を効率的に行うことができる。
図14に示す第5変形例の田植機1tにおいては、ローラローラスライダ式の予備苗台31eが機体前後方向に細長く配置されている。また、予備苗台31eの前部の上方には、第2予備苗台31fが配置されている。
第2予備苗台31fは平行リンク機構83によって支持されており、必要に応じて、図14の鎖線に示すように前方に移動させることで、第2予備苗台31f上に載せられた予備の苗(図略)を、予備苗台31eを介して後方に搬送することができる。これにより、苗を搭載した状態のまま予備苗台31eを実質的に伸縮させることができる。
第2予備苗台31fの上面の前端部には、ローラ89が配置されている。このローラ89は、機体左右方向に配置された回転軸を中心にして回転可能に支持されている。この構成で、第2予備苗台31fに苗箱41(苗マット40)を前方から載せる際には、このローラ89の上に苗箱41を載せてローラ89を回転させながら苗箱41を後方へ移動させることで、作業を省力化することができる。このローラ89は、本変形例に限らず、例えば第1〜第6実施形態の予備苗台31に取り付けられていても良いし、各変形例の予備苗台に取り付けられても良い。
田植機1tの前端部の下方には、補助ステップ90が配置されている。この補助ステップ90は、機体前後方向(水平方向)にスライド可能に支持されている。この構成で、補助ステップ90を機体から前方に引き出すことで、田植機1tの前方で作業をする場合に作業者が当該補助ステップ90に乗って作業をすることができ、作業効率を向上させることができる。また、必要がないときは補助ステップ90を収納することができる。
図15においては、上下方向に3段で並べられた予備苗台31gが示されている。なお、それぞれの予備苗台31gには何れも図10の場合と同様にローラが設けられており、ローラスライダ式に構成されている。3つの予備苗台31gは、互いに平行に配置された2本の支持部材84によって支持されている。2本の支持部材84は何れも上下方向に配置されており、それぞれの支持部材84の下端部は、図略の車体に対して回動可能となるように取り付けられている。
上段の予備苗台31gには長孔85が形成されており、当該予備苗台31gは、この長孔85を介して支持部材84に連結されている。従って、上段の予備苗台31gは、支持部材84に対して機体前方に移動することができる。一方、下段の予備苗台31gには長孔86が形成されており、当該予備苗台31gは、この長孔86を介して支持部材84に連結されている。従って、下段の予備苗台31gは、支持部材84に対して機体後方に移動することができる。
以上の構成により、支持部材84を機体前方に倒すとともに、上段の予備苗台31gを前方にスライド移動させ、下段の予備苗台31gを後方にスライド移動させることで、図15の鎖線で示すように3つの予備苗台31gを互いに近接させることができる。この状態では、3つの予備苗台31gを実質的に繋げて、1つのローラスライダ式予備苗台として機能させることができる。
図16においては、上下方向に3段で並べられた予備苗台31hが示されている。それぞれの予備苗台31hは、上下方向に配置された支持部材87によって回動可能に支持されている。
予備苗台31hと支持部材87の間には、適宜のバネ力を有する図略のバネが設置されている。ここで、予備苗台31hに苗マット40付きの苗箱41を載せた場合には、バネ力よりも苗マット40及び苗箱41の重量が上回るので、予備苗台31hは図16の姿勢を保つ。一方、苗箱41から苗マット40を取り出すと、搭載重量が軽くなるので、予備苗台31hはバネ力により跳ね上げられるように傾斜し、空となった苗箱41はガイド部材88の案内により下方の適宜の場所に移動する。これにより、空の苗箱41を自動的に1箇所に集めることができる。
以上に本発明の好適な実施の形態及び変形例を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
図1〜図6に示す支持アーム52は、手動で回転させる構成に代えて、例えば電動モータで回転させる構成とすることができる。この場合、例えば運転座席6の近傍に備えた操作具としてのスイッチにより、支持アーム52の回転/停止を指示するように構成することができる。同様に、図7及び図9に示すスプロケット71,72に電動モータを取り付けてチェーン73を駆動する構成とすることもできる。
ステー51に図略の昇降機構を設けても良い。この場合、回動軸61とともに予備苗台31を上下方向に変位させることができるので、苗の補給作業の効率を一層向上させることができる。
更に、このローラスライダ式の予備苗台(例えば、図9に示す予備苗台31a等)は、田植機が備える肥料タンク25に補給する肥料を載せるために用いられても良い。この場合、肥料の供給の省力化も実現することができる。
ローラスライダ式の予備苗台(例えば、図9に示す予備苗台31a等)に代えて、ベルトコンベア又はチェーン等により苗箱41(苗マット40)を搬送可能な搬送機構を設けるように変更することができる。ベルトコンベアやチェーンは、例えば電動モータで駆動することができる。
予備苗台31の形状や向き、個数については、上記に限定されず、事情に応じて適宜変更することができる。
上記の実施形態では、左右の予備苗台ユニット30の間で予備苗台31の移動を連動させてはいないが、連動させるように構成しても良い。