JP6300099B2 - ポリカーボネート組成物、及びそれを含有する成形体 - Google Patents
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Description
そして、ポリカーボネート樹脂の物性を更に向上させるために、従来から異種の樹脂を混合して、各々の樹脂が単独で発揮できる特性を超える性質を得ようとする試みがなされている。
例えば、特定のポリカーボネートに他の樹脂をブレンドする技術が試みられている(例えば、特許文献1を参照)。
この技術では、ブレンドすることによって、伸長特性やガスバリア特性が予想外に改善されることが報告されている。そして、この技術は、食品の包装用途に好適に利用できることが開示されている。
また、この新規なポリカーボネート組成物を含有する成形体を提供することを目的とする。
そして、この新規なポリカーボネート組成物は、従来のポリカーボネート組成物には見られない特異的な性質を有するという予想外の事実を見いだした。本発明は、この知見に基づいてなされたものである。
ポリカーボネート(A)と、低密度ポリエチレン(LDPE)(B)と、を含有するポリカーボネート組成物であって、
相溶化成分を実質的に含有せず、
前記ポリカーボネート(A)が連続相をなすとともに、前記連続相には空隙が形成されており、
前記空隙の中に、前記低密度ポリエチレン(B)の粒子が存在しており、
前記空隙の内壁面と、前記粒子の外面との間には隙間があり、
前記空隙の径が0.1〜0.7μmであり、
有機スルホン酸金属塩を含有せず、
前記ポリカーボネート(A)と前記低密度ポリエチレン(B)との合計を100質量部とした場合に、前記低密度ポリエチレン(B)は、0.1〜4質量部であることを要旨とする。
請求項1に記載のポリカーボネート組成物を含有する成形体であることを要旨とする。
通常の樹脂組成物では、衝撃強度を向上させると、曲げ弾性率が低下する傾向にある。一方、通常の樹脂組成物では、曲げ弾性率を向上させると、衝撃強度が低下する傾向にある。つまり、衝撃強度の向上と、曲げ弾性率の向上を同時に達成することは困難であった。
また、一般的に樹脂材料中に空隙が存在することは、衝撃強度の低下を招くと考えられている。
本発明のポリカーボネート組成物では、空隙が存在するにも拘わらず、空隙の大きさを制御した特異的な構造を導入することにより、衝撃強度の向上と、曲げ弾性率の向上と、を共に達成している。
〔1〕ポリカーボネート組成物
本発明のポリカーボネート組成物は、ポリカーボネート(A)と、低密度ポリエチレン(LDPE)(B)と、を含有するポリカーボネート組成物である。
相溶化成分を実質的に含有せず、ポリカーボネート(A)は連続相をなすとともに、連続相には空隙が形成されている。
空隙の中に、低密度ポリエチレン(B)の粒子が存在している。
そして、空隙の内壁面と、塊の外面との間には隙間が存在している。
また、空隙の径が0.1〜0.7μmであり、有機スルホン酸金属塩を含有しない。
また、ポリカーボネート(A)と前記低密度ポリエチレン(B)との合計を100質量部とした場合に、前記低密度ポリエチレン(B)は、0.1〜4質量部である。
ポリカーボネート(A)としては特に限定されず、カーボネート基(-O-(C=O)-O-)を有する樹脂であればよい。
本発明のポリカーボネート(A)としては、芳香族ポリカーボネート、脂肪族ポリカーボネート、芳香族−脂肪族ポリカーボネートが挙げられる。例えば、芳香族ポリカーボネート樹脂が好適に用いられる。具体的には、芳香族ジヒドロキシ化合物をホスゲン又は炭酸のジエステルと反応させることによって得られる熱可塑性芳香族ポリカーボネート重合体又は共重合体が挙げられる。
本発明では、低密度ポリエチレン(LDPE)を用いる。また、本発明の低密度ポリエチレン(B)は、本発明の樹脂組成物内において、ポリカーボネート(A)を連続相として、この樹脂内に分散されて存在する分散相をなす樹脂である。
一方、ポリカーボネート(A)の成形収縮率は、通常、0.5%以上0.8%以下である。
なお、成形収縮率は後述のように測定される値である。
なお、低密度ポリエチレンの粘度平均分子量は、複数の低密度ポリエチレンが用いられる場合には、各々の低密度ポリエチレンについて測定される値を意味する。
また、低密度ポリエチレンとして、粘度平均分子量の異なる数種の低密度ポリエチレンを混合して用いてもよい。
本発明では、ポリカーボネート(A)が連続相をなしている。すなわち、ポリカーボネート(A)が母材となっている。
そして、ポリカーボネート(A)の連続相に空隙(cell)が形成されている。
空隙の径が、0.1〜0.7μmの範囲では、衝撃強度を向上させながら、曲げ弾性率も向上させる効果が得られる。空隙の径は、衝撃強度及び曲げ弾性率の向上のためには、0.1〜0.5μmであることがより好ましく、0.2〜0.4μmであることが特に好ましい。
尚、空隙の径は、次のように算出される。まず、ポリカーボネート組成物の試料を液体窒素で冷却する。そして、試料を刃物で砕いて切断面を作製する。次に、切断面を電子顕微鏡(SEM 以下同じ)により1万倍に拡大して、100個の空隙の径(最大長)を実測する。そして、これらの径を平均して空隙の径とする。
また、空隙の径が、0.2〜0.7μmの範囲では、衝撃強度を向上させながら、曲げ弾性率も向上させる効果が得られ、かつ断熱性も向上させることができる。
本発明では、ポリカーボネート(A)の空隙1の中には、低密度ポリエチレン(B)の粒子3が存在している(図8参照)。そして、空隙の内壁面と、粒子の外面との間には隙間5を有する。
低密度ポリエチレン(B)の粒子の形状は、特に限定されない。例えば、略球形である。
本発明のポリカーボネート組成物は、隙間5を有することで、(1)衝撃強度を向上させながら曲げ弾性率も向上させることができる、または(2)熱伝導率を低下させて、断熱性を向上できるものと考えられる。
低密度ポリエチレン(B)の粒子の径は、特に限定されない。粒子の径は、ポリカーボネート(A)の空隙の径を100%とした場合に、例えば、10〜99.9%であり、25〜95%が好ましく、30〜80%が特に好ましい。
尚、粒子の径は、次のように算出される。まず、ポリカーボネート組成物の試料を液体窒素で冷却する。そして、試料を刃物で砕いて切断面を作製する。次に、切断面を電子顕微鏡により1万倍に拡大して、100個の粒子の径(最大長)を実測する。そして、これらの径を平均して粒子の径とする。
ポリカーボネート(A)と低密度ポリエチレン(B)との混合比は、以下のとおりである。
衝撃強度を向上させながら曲げ弾性率も向上させるために、ポリカーボネート(A)と低密度ポリエチレン(B)との合計を100質量部とした場合に、低密度ポリエチレン(B)を、0.1〜4質量部とする。低密度ポリエチレン(B)の割合は、衝撃強度及び曲げ弾性率の向上のためには、0.1〜3質量部であることが好ましく、0.5〜1質量部であることが特に好ましい。
なお、ポリカーボネート(A)と低密度ポリエチレン(B)との合計を100質量部とした場合に、低密度ポリエチレン(B)が、0.5〜4質量部の範囲では、衝撃強度を向上させながら、曲げ弾性率も向上させる効果が得られ、かつ断熱性も向上させることができる。
本発明のポリカーボネート組成物は、空隙を効果的に得るために、連続相を構成するポリカーボネート(A)と、分散相を構成する低密度ポリエチレン(B)と、を相溶化させるための相溶化成分を実質的に含有しない。これらの樹脂同士を相溶化させる相溶化成分が含有されると、空隙が形成され難くなり、耐衝撃性を向上させる効果が得られにくくなるためである。このような相溶化成分としては、酸変性ポリオレフィンなどの各種相溶化剤、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、無水マレイン酸誘導体等が挙げられる。本発明のポリカーボネート組成物は、ここに列挙された相溶化成分を実質的に含有しない。
他の熱可塑性樹脂としては、例えば、脂肪族ポリエステル系樹脂(ポリブチレンサクシネートなど)、芳香族ポリエステル系樹脂(ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネートなど)等が挙げられる。
上述の難燃助剤としては、各種アンチモン化合物、亜鉛を含む金属化合物、ビスマスを含む金属化合物、水酸化マグネシウム、粘土質珪酸塩等が挙げられる。
上述の充填剤としては、ガラス成分(ガラス繊維、ガラスビーズ、ガラスフレーク等)、シリカ、無機繊維(ガラス繊維、アルミナ繊維、カーボン繊維)、黒鉛、珪酸化合物(珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、カオリン、タルク、クレー等)、金属酸化物(酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アンチモン、アルミナ等)、カルシウム、マグネシウム、亜鉛等の金属の炭酸塩及び硫酸塩、有機繊維(芳香族ポリエステル繊維、芳香族ポリアミド繊維、フッ素樹脂繊維、ポリイミド繊維、植物性繊維等)が挙げられる。
上述の着色剤としては、顔料及び染料等が挙げられる。
本発明の成形体は、上述のポリカーボネート組成物を含有する。成形体の形状、大きさ及び厚さ等は特に限定されない。また、その用途も特に限定されない。この成形体としては、例えば、自動車、鉄道車両、船舶、飛行機等の外装材、内装材、構造材等として用いられる。このうち自動車用品としては、自動車用外装材、自動車用内装材等が挙げられる。具体的には、バンパー、スポイラー、カウリング、フロントグリル、ガーニッシュ、ボンネット、トランクリッド、フェンダーパネル、ドアパネル、ルーフパネル等の外装材、インストルメントパネル、ドアトリム、クオータートリム、ルーフライニング、ピラーガーニッシュ、デッキトリム、トノボード、パッケージトレイ、ダッシュボード、コンソールボックス、キッキングプレート、スイッチベース、シートバックボード、シートフレーム、アームレスト、サンバイザ等の内装材が挙げられる。更に、例えば、建築物及び家具等の内装材、外装材、構造材が挙げられる。即ち、ドア表装材、ドア構造材、各種家具(机、椅子、棚、箪笥など)の表装材、構造材等が挙げられる。その他、包装体、収容体(トレイ等)、保護用部材、パーティション部材等が挙げられる。
また、成形体におけるポリカーボネート組成物の含有率も特に限定されない。例えば、成形体全体を100質量部とした場合に、ポリカーボネート組成物を、5〜100質量部含有することが好ましく、10〜100質量部含有することがより好ましく、20〜100質量部、含有することが特に好ましい。
1.ポリカーボネート組成物の調製
<実験例1>
連続相を形成するためのポリカーボネート(A)としてユーピロン E−2000(三菱エンジニアリング プラスチックス(株)製)を用いた。なお、他の実験例でも同一のポリカーボネートを用いた。
分散相を形成するためにLDPE(低密度ポリエチレン、low density polyethylene(SIGMA−ALDRICH社製))を用いた。なお、他の実験例でも同一のLDPEを用いた。
ポリカーボネート(A)と、低密度ポリエチレン(B)の基本物性を下記表1に示す。
これらの樹脂を質量比で、
ポリカーボネート(A):低密度ポリエチレン(B)=99.9:0.1となるように調整した。
表1中の成形収縮率(Shrinkage ratio)は、次のようにして求めた。すなわち、図1のようなステンレス鋼製の型枠に樹脂を充填し、ミニテストプレス(東洋精機製作所)を用いて加熱した後、プレスする。プレス後、水冷プレスを用いて冷却する。冷却後にサンプルを型枠から取り出し、サンプルの長さおよび幅を測定する。測定したサンプルの長さ及び幅と、型枠の長さ及び幅と、を比較し、サンプルの成形収縮率を求めた。
なお、型枠の長さ、及び幅は加熱温度と線熱膨張係数を用いて補正を行った。また、上記測定をポリカーボネートと低密度ポリエチレンについて、それぞれ5つのサンプルで行い、成形収縮率の平均値を算出し、各樹脂の成形収縮率とした。
式(1)に長さについての成形収縮率の計算式を示す。ここで、Lはそれぞれの長さ、Tpは加熱プレス時の温度、Trtは室温、αはステンレス鋼の線熱膨張係数である。
ポリカーボネート(A)と低密度ポリエチレン(B)との質量割合を下記のようにした以外は実験例1と同様にしてポリカーボネート組成物を調製した。
ポリカーボネート(A):低密度ポリエチレン(B)=99.8:0.2
ポリカーボネート(A)と低密度ポリエチレン(B)との質量割合を下記のようにした以外は実験例1と同様にしてポリカーボネート組成物を調製した。
ポリカーボネート(A):低密度ポリエチレン(B)=99.7:0.3
ポリカーボネート(A)と低密度ポリエチレン(B)との質量割合を下記のようにした以外は実験例1と同様にしてポリカーボネート組成物を調製した。
ポリカーボネート(A):低密度ポリエチレン(B)=99.6:0.4
ポリカーボネート(A)と低密度ポリエチレン(B)との質量割合を下記のようにした以外は実験例1と同様にしてポリカーボネート組成物を調製した。
ポリカーボネート(A):低密度ポリエチレン(B)=99.5:0.5
ポリカーボネート(A)と低密度ポリエチレン(B)との質量割合を下記のようにした以外は実験例1と同様にしてポリカーボネート組成物を調製した。
ポリカーボネート(A):低密度ポリエチレン(B)=99.4:0.6
ポリカーボネート(A)と低密度ポリエチレン(B)との質量割合を下記のようにした以外は実験例1と同様にしてポリカーボネート組成物を調製した。
ポリカーボネート(A):低密度ポリエチレン(B)=99.3:0.7
ポリカーボネート(A)と低密度ポリエチレン(B)との質量割合を下記のようにした以外は実験例1と同様にしてポリカーボネート組成物を調製した。
ポリカーボネート(A):低密度ポリエチレン(B)=99.2:0.8
ポリカーボネート(A)と低密度ポリエチレン(B)との質量割合を下記のようにした以外は実験例1と同様にしてポリカーボネート組成物を調製した。
ポリカーボネート(A):低密度ポリエチレン(B)=99.1:0.9
ポリカーボネート(A)と低密度ポリエチレン(B)との質量割合を下記のようにした以外は実験例1と同様にしてポリカーボネート組成物を調製した。
ポリカーボネート(A):低密度ポリエチレン(B)=99:1
ポリカーボネート(A)と低密度ポリエチレン(B)との質量割合を下記のようにした以外は実験例1と同様にしてポリカーボネート組成物を調製した。
ポリカーボネート(A):低密度ポリエチレン(B)=98.5:1.5
ポリカーボネート(A)と低密度ポリエチレン(B)との質量割合を下記のようにした以外は実験例1と同様にしてポリカーボネート組成物を調製した。
ポリカーボネート(A):低密度ポリエチレン(B)=98:2
ポリカーボネート(A)と低密度ポリエチレン(B)との質量割合を下記のようにした以外は実験例1と同様にしてポリカーボネート組成物を調製した。
ポリカーボネート(A):低密度ポリエチレン(B)=96:4
ポリカーボネート(A)と低密度ポリエチレン(B)との質量割合を下記のようにした以外は実験例1と同様にしてポリカーボネート組成物を調製した。
ポリカーボネート(A):低密度ポリエチレン(B)=94:6
ポリカーボネート(A)と低密度ポリエチレン(B)との質量割合を下記のようにした以外は実験例1と同様にしてポリカーボネート組成物を調製した。
ポリカーボネート(A):低密度ポリエチレン(B)=92:8
ポリカーボネート(A)と低密度ポリエチレン(B)との質量割合を下記のようにした以外は実験例1と同様にしてポリカーボネート組成物を調製した。
ポリカーボネート(A):低密度ポリエチレン(B)=90:10
ポリカーボネート(A)と低密度ポリエチレン(B)との質量割合を下記のようにした以外は実験例1と同様にして調製した。すなわち、ポリカーボネート(A)のみを用いた。
ポリカーボネート(A):低密度ポリエチレン(B)=100:0
ポリカーボネート(A)と低密度ポリエチレン(B)との質量割合を下記のようにした以外は実験例1と同様にして調製した。すなわち、低密度ポリエチレン(B)のみを用いた。
ポリカーボネート(A):低密度ポリエチレン(B)=0:100
〔1〕シャルピー衝撃試験
(1.1)シャルピー衝撃試験用の試験片の調製
実験例1〜16の樹脂組成物、参考例A,Bの樹脂を、それぞれJIS K7111−1に準拠して、シャルピー衝撃試験用の試験片に成形した。
上記(1.1)で得られた各試験片を用いて、JIS K7111−1に準拠してシャルピー衝撃試験を行った。
(2.1)曲げ弾性率試験用の試験片の調製
実験例1〜16の樹脂組成物、参考例A,Bの樹脂を、それぞれJIS K7171に準拠して、曲げ弾性率試験用の試験片に成形した。
上記4.で得られた各試験片を用いて、JIS K7171に準拠して曲げ弾性率の測定を行った。尚、この曲げ弾性率は、各試験片を支点間距離(L)32mmとした2つの支点(曲率半径5mm)で支持しつつ、支点間中心に配置した作用点(曲率半径5mm)から速度1mm/分にて荷重の負荷を行い測定した。
空隙の径は、次のように求めた。まず、各試料を液体窒素で冷却した。そして、試料を刃物で砕いて切断面を作製した。次に、切断面を電子顕微鏡(SEM)により1万倍に拡大して、100個の空隙の径(最大長)を実測した。そして、これらの径を平均して空隙の径とした。
空隙率は、次のように求めた。まず、各試料を液体窒素で冷却した。そして、試料を刃物で砕いて切断面を作製した。次に、切断面を電子顕微鏡により1万倍に拡大して、視野の全面積を求めた。また、その視野内に存在する全空隙の面積の合計を求めた。そして、次式により空隙率を求めた。
空隙率=(全空隙の面積の合計)÷(視野の全面積)×100(%)
断熱性を評価するため次式により熱伝導率を求めた。
熱伝導率=(密度)×(熱拡散率)×(比熱)
密度の測定には電子比重計(アルファーミラージュ株式会社製、型式「MD-200S」)を用いてアルキメデス法により比重を測定し、温度補正を行い25℃での密度を求めた。測定には幅10mm×長さ40mm×厚さ4.5mmの試験片を使用した。
熱拡散率の測定にはレーザーフラッシュアナライザー(NETZSCH 社製、型式「LFA457 Micro Flash」)を用いてレーザーフラッシュ法により25℃での熱拡散率を測定した。測定には直径8mm、厚さ1mmの円柱形の試験片を使用した。
比熱の測定には示差走査熱量計(NETZSCH 社製、型式「404 F3 Pegasus」、熱流束型)を用いて、25℃での比熱を測定した。測定には、幅4.6mm×長さ4.6mm×厚さ0.5mmの試験片を使用した。
〔1〕衝撃強度及び曲げ弾性率
図2〜17に、実験例1〜16の電子顕微鏡観察の結果を示す。なお、衝撃強度及び曲げ弾性率を向上させるという観点からは、実験例1〜13が実施例に相当し、実験例14〜16は参考例である。
実験例1〜16のいずれの場合においてもポリカーボネート(A)には空隙が形成されており、この空隙の中に、低密度ポリエチレン(B)の粒子が存在していることが確認された。また、実験例1〜16のいずれの場合においても空隙の内壁面と、粒子の外面との間には隙間があることも観察された。
なお、ポリカーボネート(A)のみの参考例A、及び低密度ポリエチレン(B)のみの参考例Bを電子顕微鏡にて観察したが、いずれの場合も空隙は観察されなかった。
次に、空隙(cell)の径と、熱伝導度(Thermal conductivity)の関係、を表4及び図24に示す。空隙の径が0.2〜1.1μmである場合には、熱伝導度が低下して、断熱性が向上することが分かる。なお、熱伝導度を低下させるという観点からは、実験例5、14、16が優れていることが分かる。
以上の結果より、本実施例のポリカーボネート組成物によれば、衝撃強度を向上させながら曲げ弾性率も向上させることができる。
3;オレフィン系樹脂の粒子
5;隙間
Claims (2)
- ポリカーボネート(A)と、低密度ポリエチレン(LDPE)(B)と、を含有するポリカーボネート組成物であって、
相溶化成分を実質的に含有せず、
前記ポリカーボネート(A)が連続相をなすとともに、前記連続相には空隙が形成されており、
前記空隙の中に、前記低密度ポリエチレン(B)の粒子が存在しており、
前記空隙の内壁面と、前記粒子の外面との間には隙間があり、
前記空隙の径が0.1〜0.7μmであり、
有機スルホン酸金属塩を含有せず、
前記ポリカーボネート(A)と前記低密度ポリエチレン(B)との合計を100質量部とした場合に、前記低密度ポリエチレン(B)は、0.1〜4質量部であることを特徴とするポリカーボネート組成物。 - 請求項1に記載のポリカーボネート組成物を含有することを特徴とする成形体。
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WO2023100895A1 (ja) | 樹脂組成物、成形品、およびペレット |
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