以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態のうち、第2〜第5、第7、第9〜第25実施形態は、参考例としての形態を示している。
(第1実施形態)
図1〜図3を用いて、本発明の第1実施形態を説明する。本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10は、デュアルエアコンタイプの車両用空調装置に適用されており、空調対象空間である車室内に送風される送風空気を冷却する機能を果たす。
ここで、デュアルエアコンタイプの車両用空調装置とは、車室内のうち主に前席側の領域へ空調風を吹き出すための前席用空調ユニット、および主に後席側の領域へ空調風を吹き出すための後席用空調ユニットを備え、それぞれのユニット内に形成された送風空気の空気通路に、エジェクタ式冷凍サイクル10において低圧冷媒を蒸発させる第1蒸発器17および第2蒸発器18を配置したものである。
従って、本実施形態では、車室内前席側に送風される前席側送風空気、および車室内後席側へ送風される後席側送風空気の双方が、エジェクタ式冷凍サイクル10の冷却対象流体となる。
また、このエジェクタ式冷凍サイクル10では、冷媒としてHFC系冷媒(具体的には、R134a)を採用しており、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない亜臨界冷凍サイクルを構成している。もちろん、冷媒としてHFO系冷媒(具体的には、R1234yf)等を採用してもよい。さらに、冷媒には圧縮機11を潤滑するための冷凍機油が混
入されており、冷凍機油の一部は冷媒とともにサイクルを循環している。
次に、エジェクタ式冷凍サイクル10の詳細構成について説明する。図1の全体構成図に示すエジェクタ式冷凍サイクル10において、圧縮機11は、冷媒を吸入して高圧冷媒となるまで昇圧して吐出するものである。具体的には、本実施形態の圧縮機11は、1つのハウジング内に固定容量型の圧縮機構、および圧縮機構を駆動する電動モータを収容して構成された電動圧縮機である。
この圧縮機構としては、スクロール型圧縮機構、ベーン型圧縮機構等の各種圧縮機構を採用できる。また、電動モータは、後述する制御装置から出力される制御信号によって、その作動(回転数)が制御されるもので、交流モータ、直流モータのいずれの形式を採用してもよい。
さらに、圧縮機11は、プーリ、ベルト等を介して車両走行用エンジンから伝達された回転駆動力によって駆動されるエンジン駆動式の圧縮機であってもよい。この種のエンジン駆動式の圧縮機としては、吐出容量の変化により冷媒吐出能力を調整できる可変容量型圧縮機や、電磁クラッチの断続により圧縮機の稼働率を変化させて冷媒吐出能力を調整する固定容量型圧縮機等を採用することができる。
圧縮機11の吐出口側には、放熱器12の凝縮部12aの冷媒入口側が接続されている。放熱器12は、圧縮機11から吐出された高圧冷媒と冷却ファン12dにより送風される車室外空気(外気)を熱交換させることによって、高圧冷媒を放熱させて冷却する放熱用熱交換器である。
より具体的には、この放熱器12は、圧縮機11から吐出された高圧気相冷媒と冷却ファン12dから送風された外気とを熱交換させ、高圧気相冷媒を放熱させて凝縮させる凝縮部12a、凝縮部12aから流出した冷媒の気液を分離して余剰液相冷媒を蓄える高圧側気液分離手段としてのレシーバ部12b、およびレシーバ部12bから流出した液相冷媒と冷却ファン12dから送風される外気とを熱交換させ、液相冷媒を過冷却する過冷却部12cを有して構成される、いわゆるサブクール型の凝縮器である。
また、冷却ファン12dは、制御装置から出力される制御電圧によって回転数(送風空気量)が制御される電動式送風機である。
放熱器12の過冷却部12cの冷媒出口側には、放熱器12から流出した冷媒の流れを分岐する上流側分岐部13aの冷媒流入口が接続されている。上流側分岐部13aは、3つの流入出口を有する三方継手で構成されており、3つの流入出口のうち1つを冷媒流入口とし、残りの2つを冷媒流出口としたものである。このような三方継手は、管径の異なる配管を接合して形成してもよいし、金属ブロックや樹脂ブロックに複数の冷媒通路を設けて形成してもよい。
上流側分岐部13aの一方の冷媒流出口には、上流側エジェクタ14の上流側ノズル部41の冷媒流入口41aが接続されている。また、上流側分岐部13aの他方の冷媒流出口には、後述する高圧側固定絞り16aおよび第2蒸発器18を介して、上流側エジェクタ14の上流側ボデー部42に形成された上流側冷媒吸引口41bが接続されている。
上流側エジェクタ14は、放熱器12から流出した高圧冷媒を減圧させる減圧手段としての機能を果たすとともに、上流側ノズル部41から高速度で噴射される噴射冷媒の吸引作用によって冷媒を吸引(輸送)してサイクル内を循環させる冷媒循環手段(冷媒輸送手段)としての機能を果たすものである。
上流側エジェクタ14の詳細構成については、図2を用いて説明する。上流側エジェクタ14は、図2に示すように、上流側ノズル部41および上流側ボデー部42を有して構成されている。まず、上流側ノズル部41は、冷媒の流れ方向に向かって徐々に先細る略円筒状の金属(例えば、ステンレス合金)で形成されており、内部に流入した冷媒を等エントロピ的に減圧させて、冷媒流れ最下流側に設けられた冷媒噴射口41bから噴射するものである。
上流側ノズル部41の内部には、冷媒流入口41aから流入した冷媒を旋回させる旋回空間41c、並びに、旋回空間41cから流出した冷媒を減圧させる冷媒通路が形成されている。
さらに、この冷媒通路には、冷媒通路面積が最も縮小した最小通路面積部41d、旋回空間41cから最小通路面積部41dへ向かって冷媒通路面積を徐々に縮小させる先細部41e、および最小通路面積部41dから冷媒噴射口41bへ向かって冷媒通路面積を徐々に拡大させる末広部41fが形成されている。
旋回空間41cは、上流側ノズル部41の冷媒流れ最上流側に設けられて、上流側ノズル部41の軸線方向と同軸上に延びる筒状部41gの内部に形成された円柱状の空間である。さらに、冷媒流入口41aと旋回空間41cとを接続する冷媒流入通路は、旋回空間41cの中心軸方向から見たときに旋回空間41cの内壁面の接線方向に延びている。
これにより、冷媒流入口41aから旋回空間41cへ流入した冷媒は、旋回空間41cの内壁面に沿って流れ、旋回空間41cの中心軸周りに旋回する。従って、筒状部41gは、特許請求の範囲に記載された旋回流発生手段を構成しており、本実施形態では、特許請求の範囲に記載された旋回流発生手段と上流側ノズル部が一体的に形成されていることになる。
ここで、旋回空間41c内で旋回する冷媒には遠心力が作用するので、旋回空間41c内では中心軸側の冷媒圧力が外周側の冷媒圧力よりも低下する。そこで、本実施形態では、エジェクタ式冷凍サイクル10の通常運転時に、旋回空間41c内の中心軸側の冷媒圧力を、飽和液相冷媒となる圧力、あるいは、冷媒が減圧沸騰する(キャビテーションを生じる)圧力となるまで低下させるようにしている。
このような旋回空間41c内の中心軸側の冷媒圧力の調整は、旋回空間41c内で旋回する冷媒の旋回流速を調整することによって実現することができる。さらに、旋回流速の調整は、例えば、冷媒流入通路の通路断面積と旋回空間41cの軸方向垂直断面積との面積比を調整すること等によって行うことができる。なお、本実施形態における旋回流速とは、旋回空間41cの最外周部近傍における冷媒の旋回方向の流速を意味している。
先細部41eは、旋回空間41cと同軸上に配置されて旋回空間41cから最小通路面積部41dへ向かって冷媒通路面積を徐々に縮小させる円錐台状に形成されている。末広部41fは、旋回空間41cおよび先細部41eと同軸上に配置されて最小通路面積部41dから冷媒噴射口41bへ向かって冷媒通路面積を徐々に拡大させる円錐台状に形成されている。
次に、上流側ボデー部42は、略円筒状の金属(例えば、アルミニウム)で形成されており、内部に上流側ノズル部41を支持固定する固定部材として機能するとともに、上流側エジェクタ14の外殻を形成するものである。より具体的には、上流側ノズル部41は、上流側ボデー部42の長手方向一端側の内部に収容されるように圧入等によって固定さ
れている。
また、上流側ボデー部42の外周側面のうち、上流側ノズル部41の外周側に対応する部位には、その内外を貫通して上流側ノズル部41の冷媒噴射口41bと連通するように設けられた上流側冷媒吸引口42aが形成されている。この上流側冷媒吸引口42aは、上流側ノズル部41の冷媒噴射口41bから噴射された噴射冷媒の吸引作用によって第2蒸発器18から流出した冷媒を上流側エジェクタ14の内部へ吸引する貫通穴である。
従って、上流側ボデー部42の内部の上流側冷媒吸引口42aの周辺には、冷媒を流入させる入口空間が形成され、上流側ノズル部41の先細り形状の先端部周辺の外周壁面と上流側ボデー部42の内周壁面との間には、上流側ボデー部42の内部へ流入した吸引冷媒を上流側ディフューザ部42bへ導く吸引通路42cが形成されている。
この吸引通路42cの冷媒通路面積は、冷媒流れ方向に向かって徐々に縮小している。これにより、本実施形態の上流側エジェクタ14では、吸引通路42cを流通する吸引冷媒の流速を徐々に増速させて、上流側ディフューザ部42bにて吸引冷媒と噴射冷媒が混合する際のエネルギ損失(混合損失)を減少させている。
上流側ディフューザ部42bは、吸引通路42cの出口側に連続するように配置されて、冷媒通路面積が徐々に拡大するように形成されている。これにより、噴射冷媒と吸引冷媒との混合冷媒の有する運動エネルギを圧力エネルギに変換する機能、すなわち、混合冷媒の流速を減速させて混合冷媒を昇圧させる上流側昇圧部としての機能を果たす。
より具体的には、本実施形態の上流側ディフューザ部42bを形成する上流側ボデー部42の内周壁面の壁面形状は、図2の軸方向断面に示すように、複数の曲線を組み合わせて形成されている。そして、上流側ディフューザ部42bの冷媒通路断面積の広がり度合が冷媒流れ方向に向かって徐々に大きくなった後に再び小さくなっていることで、冷媒を等エントロピ的に昇圧させることができる。
上流側エジェクタ14の冷媒出口側には、図1に示すように、気液分離器15の冷媒流入口が接続されている。気液分離器15は、内部に流入した冷媒の気液を分離する低圧側気液分離手段である。さらに、本実施形態では、気液分離器15として、分離された液相冷媒を殆ど蓄えることなく液相冷媒流出口から流出させるものを採用しているが、サイクル内の余剰液相冷媒を蓄える貯液手段としての機能を有するものを採用してもよい。
気液分離器15の気相冷媒流出口には、圧縮機11の吸入側が接続されている。一方、気液分離器15の液相冷媒流出口には、減圧手段としての低圧側固定絞り16bを介して、第1蒸発器17の冷媒入口側が接続されている。低圧側固定絞り16bは、気液分離器15から流出した液相冷媒を減圧させる減圧手段であり、具体的には、オリフィス、キャピラリチューブあるいはノズル等を採用できる。
第1蒸発器17は、上流側エジェクタ14および低圧側固定絞り16bにて減圧された低圧冷媒と送風ファン17aから車室内前席側へ向けて送風される前席側送風空気とを熱交換させることによって、低圧冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させる吸熱用熱交換器である。送風ファン17aは、制御装置から出力される制御電圧によって回転数(送風空気量)が制御される電動式送風機である。
第1蒸発器17の冷媒出口側には、合流部13bの一方の冷媒流入口が接続されている。合流部13bは、上流側分岐部13aと同様の三方継手で構成されており、3つの流入出口のうち2つを冷媒流入口とし、残りの1つを冷媒流出口としたものである。合流部13bの他方の冷媒流入口には、第2蒸発器18の冷媒出口側が接続され、合流部13bの冷媒流出口には、上流側エジェクタ14の上流側冷媒吸引口42aが接続されている。
また、上流側分岐部13aの他方の冷媒流出口には、上流側分岐部13aにて分岐された他方の冷媒を減圧させる減圧手段としての高圧側固定絞り16aが接続されている。この高圧側固定絞り16aとしては、低圧側固定絞り16bと同様に、オリフィス、キャピラリチューブあるいはノズル等を採用できる。
高圧側固定絞り16aの冷媒流れ下流側には、第2蒸発器18の冷媒入口側が接続されている。第2蒸発器18は、高圧側固定絞り16aにて減圧された低圧冷媒と送風ファン18aから車室内後席側へ向けて送風される後席側送風空気とを熱交換させることによって、低圧冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させる吸熱用熱交換器である。
第2蒸発器18の冷媒出口側には、合流部13bの他方の冷媒流入口が接続されている。送風ファン18aは、制御装置から出力される制御電圧によって回転数(送風空気量)が制御される電動式送風機である。
次に、図示しない制御装置は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成される。この制御装置は、そのROM内に記憶された制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行って、上述の各種電気式のアクチュエータ11、12d、17a、18a等の作動を制御する。
制御装置には、車室内温度を検出する内気温センサ、外気温を検出する外気温センサ、車室内の日射量を検出する日射センサ、第1、第2蒸発器17、18の吹出空気温度(蒸発器の温度)を検出する第1、第2蒸発器温度センサ、放熱器12出口側冷媒の温度を検出する出口側温度センサおよび放熱器12出口側冷媒の圧力を検出する出口側圧力センサ等の空調制御用のセンサ群が接続され、これらのセンサ群の検出値が入力される。
さらに、制御装置の入力側には、車室内前部の計器盤付近に配置された図示しない操作パネルが接続され、この操作パネルに設けられた各種操作スイッチからの操作信号が制御装置へ入力される。操作パネルに設けられた各種操作スイッチとしては、車室内空調を行うことを要求する空調作動スイッチ、車室内温度を設定する車室内温度設定スイッチ等が設けられている。
なお、本実施形態の制御装置は、その出力側に接続された各種の制御対象機器の作動を制御する制御手段が一体に構成されたものであるが、制御装置のうち、各制御対象機器の作動を制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)が各制御対象機器の制御手段を構成している。例えば、本実施形態では、圧縮機11の作動を制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)が吐出能力制御手段を構成している。
次に、上記構成における本実施形態の作動を図3のモリエル線図を用いて説明する。まず、操作パネルの空調作動スイッチが投入(ON)されると、制御装置が圧縮機11、冷却ファン12d、送風ファン17a、18a等を作動させる。これにより、圧縮機11が冷媒を吸入し、圧縮して吐出する。
圧縮機11から吐出された高温高圧冷媒(図3のa3点)は、放熱器12の凝縮部12aへ流入し、冷却ファン12dから送風された外気と熱交換し、放熱して凝縮する。凝縮部12aにて放熱した冷媒は、レシーバ部12bにて気液分離される。レシーバ部12bにて気液分離された液相冷媒は、過冷却部12cにて冷却ファン12dから送風された外気と熱交換し、さらに放熱して過冷却液相冷媒となる(図3のa3点→b3点)。
放熱器12の過冷却部12cから流出した過冷却液相冷媒の流れは、上流側分岐部13aにて分岐される。上流側分岐部13aにて分岐された一方の冷媒は、上流側エジェクタ14の上流側ノズル部41の冷媒流入口41aへ流入し、等エントロピ的に減圧されて冷媒噴射口41bから噴射される(図3のb3点→c3点)。
そして、冷媒噴射口41bから噴射された上流側噴射冷媒の吸引作用によって、第1蒸発器17および第2蒸発器18から流出した冷媒が、合流部13bを介して、上流側冷媒吸引口42aから吸引される。上流側噴射冷媒および上流側冷媒吸引口42aから吸引された上流側吸引冷媒は、上流側ディフューザ部42bへ流入する(図3のc3点→d3点、i3点→d3点)。
上流側ディフューザ部42bでは冷媒通路面積の拡大により、冷媒の運動エネルギが圧力エネルギに変換される。これにより、上流側噴射冷媒と上流側吸引冷媒が混合されながら混合冷媒の圧力が上昇する(図3のd3点→e3点)。上流側ディフューザ部42bから流出した冷媒は、気液分離器15へ流入して気液分離される(図3のe3点→f3点、e3点→g3点)。
気液分離器15にて分離された気相冷媒は、圧縮機11の吸入口から吸入されて再び圧縮される(図3のf3’点→a3点)。なお、図3においてf3点とf3’点が異なっている理由は、気液分離器15から流出した気相冷媒が、気液分離器15の気相冷媒流出口から圧縮機11の吸入口へ至る冷媒配管を流通する際に、圧力損失が生じるからである。従って、理想的なサイクルでは、f3点とf3’点が一致していることが望ましい。このことは、他のモリエル線図においても同様である。
また、気液分離器15にて分離された液相冷媒は、低圧側固定絞り16bにて等エンタルピ的に減圧されて(図3のg3点→h3点)、第1蒸発器17へ流入する。第1蒸発器17へ流入した冷媒は、送風ファン17aから送風された前席側送風空気から吸熱して蒸発する。これにより、前席側送風空気が冷却される。さらに、第1蒸発器17から流出した冷媒は、合流部13bへ流入する(図3のh3点→i3点)。
一方、上流側分岐部13aにて分岐された他方の冷媒は、高圧側固定絞り16aへ流入して等エンタルピ的に減圧膨張されて(図3のb3点→j3点)、第2蒸発器18へ流入する。第2蒸発器18へ流入した冷媒は、送風ファン18aから送風された後席側送風空気から吸熱して蒸発する。これにより、後席側送風空気が冷却される。さらに、第2蒸発器18から流出した冷媒は、合流部13bへ流入する(図3のj3点→i3点)。
ここで、本実施形態では、エジェクタ式冷凍サイクル10の通常運転時に、第1蒸発器17へ流入する冷媒の圧力と第2蒸発器18へ流入する冷媒の圧力が略同等となるように、高圧側固定絞り16aおよび低圧側固定絞り16bの減圧特性(流量係数)が決定されている。そして、合流部13bから流出した冷媒は、前述の如く、上流側エジェクタ14の上流側冷媒吸引口42aから吸引される。
本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10は、以上の如く作動して、前席側送風空気および後席側送風空気を冷却することができる。さらに、このエジェクタ式冷凍サイクル10では、上流側エジェクタ14の上流側ディフューザ部42bにて昇圧された冷媒を圧縮機11に吸入させるので、圧縮機11の駆動動力を低減させて、サイクルの成績係数(COP)を向上させることができる。
さらに、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10では、第1蒸発器17へ気液分離手段である気液分離器15にて分離された液相冷媒を流入させるので、図3のh3点に示すように、第1蒸発器17へ比較的エンタルピの低い冷媒を流入させることができる。また、第2蒸発器18へ放熱器12から流出して高圧側固定絞り16aにて等エンタルピ的に減圧された冷媒を流入させるので、図3のj3点に示すように、第2蒸発器18にも比較的エンタルピの低い冷媒を流入させることができる。
従って、第1蒸発器17へ流入する冷媒のエンタルピと第2蒸発器18へ流入する冷媒のエンタルピとの差を縮小することができ、第1蒸発器17にて冷媒が発揮する冷凍能力(図3のi3点とh3点とのエンタルピ差)と、第2蒸発器18にて冷媒が発揮する冷凍能力(図3のi3点とj3点とのエンタルピ差)とを近づけることができる。
その結果、第1蒸発器17における冷却能力と第2蒸発器18における冷却能力とを近づけることができ、車両前席側へ送風される送風空気の温度と、車両後席側へ送風される送風空気の温度が不均一になってしまうことを抑制できる。なお、蒸発器における冷却能力とは、所望の流量の冷却対象流体(本実施形態では、送風空気)を所望の温度となるまで冷却する能力と定義することができる。
また、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10では、第1蒸発器17の冷媒入口側の冷媒圧力と第2蒸発器18の冷媒入口側の冷媒圧力が略同等となるように、高圧側固定絞り16aおよび低圧側固定絞り16bの減圧特性(流量係数)が決定されている。さらに、上流側エジェクタ14の上流側冷媒吸引口42aに、合流部13bを介して、第1蒸発器17の冷媒出口側および第2蒸発器18の冷媒出口側の双方が接続されている。
従って、第1蒸発器17における冷媒蒸発圧力(冷媒蒸発温度)と第2蒸発器18における冷媒蒸発圧力(冷媒蒸発温度)とを近づけることができ、より一層効果的に、第1蒸発器17における冷却能力と第2蒸発器18における冷却能力とを近づけることができる。
また、本実施形態の上流側エジェクタ14の上流側ノズル部41では、旋回空間41cにて冷媒を旋回させて、旋回空間41cの旋回中心側の冷媒圧力を、飽和液相冷媒となる圧力、あるいは、冷媒が減圧沸騰する(キャビテーションを生じる)圧力まで低下させている。これにより、旋回中心軸の外周側よりも内周側に気相冷媒が多く存在するようにして、旋回空間41c内の旋回中心線近傍はガス単相、その周りは液単相の二相分離状態とすることができる。
このように二相分離状態となった冷媒が上流側ノズル部41の先細部41eへ流入することで、先細部41eでは、外周側壁面から冷媒が剥離する際に生じる壁面沸騰および冷媒通路の中心軸側の冷媒のキャビテーションによって生じた沸騰核による界面沸騰によって冷媒の沸騰が促進される。これにより、最小通路面積部41dへ流入する冷媒が、気相と液相が均質に混合した気液混合状態に近づく。
そして、最小通路面積部41dの近傍で気液混合状態の冷媒の流れに閉塞(チョーキング)が生じ、このチョーキングによって音速に到達した気液混合状態の冷媒が末広部41fにて加速されて噴射される。このように、壁面沸騰および界面沸騰の双方による沸騰促進によって、気液混合状態の冷媒を音速となるまで効率よく加速できることで、上流側ノズル部41にて冷媒の圧力エネルギを運動エネルギへ変換するエネルギ変換効率(ノズル効率)を向上させることができる。
さらに、本実施形態の放熱器12では、高圧側気液分離手段としてのレシーバ部12bを備えているので、旋回流発生手段を構成する上流側エジェクタ14の筒状部41g内に形成される旋回空間41cへ確実に液相冷媒を供給することができる。従って、旋回空間41cにて旋回させた冷媒をノズル部へ供給することによるノズル効率向上効果を確実に得ることができる。
(第2実施形態)
本実施形態では、図4の全体構成図に示すように、第1実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10に対して、放熱器12下流側の高圧冷媒と圧縮機11吸入側の低圧冷媒とを熱交換させる内部熱交換手段である内部熱交換器19を追加した例を説明する。なお、図4では、第1実施形態と同一もしくは均等部分には同一の符号を付している。このことは、以下の図面でも同様である。
より具体的には、本実施形態では、気液分離器15の気相冷媒流出口側に合流部13bの一方の冷媒流入口を接続し、第2蒸発器18の冷媒出口側に合流部13bの他方の冷媒流入口を接続している。さらに、合流部13bの冷媒流出口に内部熱交換器19の低圧冷媒通路の入口側を接続している。
内部熱交換器19は、放熱器12下流側の高圧冷媒のうち上流側分岐部13aから高圧側固定絞り16aへ至る冷媒流路を流通する高圧冷媒と、圧縮機11吸入側の低圧冷媒のうち合流部13bから圧縮機11の吸入口へ至る冷媒流路を流通する低圧冷媒とを熱交換させるものである。
なお、合流部13bから圧縮機11の吸入口へ至る冷媒流路を流通する低圧冷媒とは、気液分離器15から流出した気相冷媒と第2蒸発器18から流出した冷媒が合流した低圧冷媒となる。
このような内部熱交換器19としては、低圧冷媒を流通させる低圧冷媒通路を形成する内側管の外側に、高圧冷媒を流通させる高圧冷媒通路を形成する外側管を配置する二重管方式の熱交換器等を採用することができる。もちろん、低圧冷媒通路を形成する外側管の内側に、高圧冷媒通路を形成する内側管を配置する構成としてもよい。その他のエジェクタ式冷凍サイクル10の構成は第1実施形態と同様である。
次に、上記構成における本実施形態の作動を図5のモリエル線図を用いて説明する。なお、図5のモリエル線図にて冷媒の状態を示す各符号は、第1実施形態で説明した図3のモリエル線図に対してサイクル構成上同等の箇所の冷媒の状態を示すものは同一のアルファベットを用いて示し、添字のみ変更している。このことは、以下のモリエル線図においても同様である。
本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10を作動させると、第1実施形態と同様に、圧縮機11吐出冷媒が、放熱器12→上流側分岐部13aの順に流れ、上流側分岐部13aにて分岐された一方の冷媒が上流側エジェクタ14の上流側ノズル部41にて等エントロピ的に減圧される(図5のa5点→b5点→c5点)。
これにより、第1蒸発器17から流出した冷媒が、上流側冷媒吸引口42aから吸引されて上流側噴射冷媒と合流する(図5のc5点→d5点、i5点→d5点)。さらに、上流側噴射冷媒および上流側冷媒吸引口42aから吸引された上流側吸引冷媒が、上流側ディフューザ部42bにて混合されながら昇圧されて(図5のd5点→e5点)、気液分離器15にて気液分離される(図5のe5点→f5点、e5点→g5点)。
気液分離器15にて分離された気相冷媒は、合流部13bへ流入して第2蒸発器18から流出した冷媒と合流し、内部熱交換器19の低圧冷媒通路へ流入する。また、気液分離器15にて分離された液相冷媒は、第1実施形態と同様に、低圧側固定絞り16bにて減圧されて(図5のg5点→h5点)、第1蒸発器17にて送風ファン17aから送風された前席側送風空気から吸熱して蒸発する(図5のh5点→i5点)。
一方、上流側分岐部13aにて分岐された他方の冷媒は、内部熱交換器19の高圧冷媒通路へ流入して、低圧冷媒通路を流通する低圧冷媒と熱交換してさらにエンタルピを低下させる(図5のb5点→b’5点)。一方、低圧冷媒通路を流通する低圧冷媒はエンタルピを上昇させる(図5のf5点→f”5点)。
内部熱交換器19の高圧冷媒通路から流出した冷媒は、第1実施形態と同様に、高圧側固定絞り16aにて減圧されて(図5のb’5点→j5点)、第2蒸発器18にて送風ファン18aから送風された後席側送風空気から吸熱して蒸発する(図5のj5点→f5点)。また、内部熱交換器19の低圧冷媒通路から流出した冷媒は、圧縮機11の吸入口から吸入されて再び圧縮される(図5のf5’点→a5点)。
本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10は、以上の如く作動するので、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。つまり、前席側送風空気および後席側送風空気を冷却することができ、この際、車両前席側へ送風される送風空気の温度と、車両後席側へ送風される送風空気の温度が不均一になってしまうことを抑制できる。
より詳細には、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10によれば、第1実施形態と同様に、第1蒸発器17へ気液分離器15にて分離された液相冷媒を流入させるので、図5のh5点に示すように、第1蒸発器17へ比較的エンタルピの低い冷媒を流入させることができる。また、第2蒸発器18へ内部熱交換器19にて冷却されて高圧側固定絞り16aにて等エンタルピ的に減圧された冷媒を流入させるので、図5のj5点に示すように、第2蒸発器18にも比較的エンタルピの低い冷媒を流入させることができる。
従って、第1蒸発器17にて冷媒が発揮する冷凍能力(図5のi5点とh5点とのエンタルピ差)と、第2蒸発器18にて冷媒が発揮する冷凍能力(図5のf5点とj5点とのエンタルピ差)とを近づけることができ、第1蒸発器17における冷却能力と第2蒸発器18における冷却能力とを近づけることができる。
また、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10では、内部熱交換器19を備えているので、第2蒸発器18へ流入する冷媒のエンタルピを低下させて、第2蒸発器18にて冷媒が発揮する冷凍能力を拡大することができる。従って、図5のモリエル線図に示すように、第2蒸発器18における冷媒蒸発温度が、第1蒸発器17における冷媒蒸発温度よりも高くなっていても、第1蒸発器17における冷却能力と第2蒸発器18における冷却能力が大きく乖離してしまうことを抑制できる。
また、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10では、内部熱交換器19の低圧冷媒通路に、気液分離器15にて分離された気相冷媒と第2蒸発器18から流出した冷媒とを合流させた低圧冷媒を流入させている。従って、第2蒸発器18から流出した冷媒に液相冷媒が混じっていても内部熱交換器19にて液相冷媒を蒸発気化させることができ、圧縮機11の液圧縮を防止できる。
(第3実施形態)
本実施形態では、図6の全体構成図に示すように、第1実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10に対して、下流側エジェクタ20を追加した例を説明する。下流側エジェクタ20の基本的構成は、上流側エジェクタ14と同様である。従って、下流側エジェクタ20は、上流側エジェクタ14と同様の下流側ノズル部21および下流側ボデー部22を有して構成されている。
より具体的には、下流側ノズル部21には、冷媒を流入させる冷媒流入口21aが形成されている。また、下流側ボデー部22には、下流側ノズル部21から噴射された下流側噴射冷媒の吸引作用によって冷媒を吸引する下流側冷媒吸引口22a、および下流側噴射冷媒と下流側冷媒吸引口22aから吸引された下流側吸引冷媒との混合冷媒を昇圧させる下流側昇圧部としての下流側ディフューザ部22bが形成されている。
さらに、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10では、気液分離器15の気相冷媒流出口に、下流側エジェクタ20の下流側ノズル部21の冷媒流入口21a側が接続され、気液分離器15の液相冷媒流出口に、第1蒸発器17の冷媒入口側が接続されている。また、第2蒸発器18の冷媒流出口には、下流側エジェクタ20の下流側冷媒吸引口22a側が接続されている。
つまり、本実施形態の気液分離器15は、上流側エジェクタ14から流出した冷媒の気液を分離するだけでなく、分離した冷媒の流れを分岐して、分岐された気相冷媒を下流側エジェクタ20の冷媒流入口21a側へ流出させ、分岐された液相冷媒を第1蒸発器17の冷媒入口側へ流出させる下流側分岐部としての機能も果たしている。また、下流側エジェクタ20は、気液分離器15にて分離された気相冷媒と第2蒸発器18から流出した冷媒とを合流させる合流部としての機能も果たしている。
なお、下流側エジェクタ20の冷媒流入口21aには気相冷媒が流入するので、下流側エジェクタ20は、下流側ノズル部21にて減圧される冷媒に旋回流れを生じさせる旋回流発生手段を備えていない。その他のエジェクタ式冷凍サイクル10の構成は第1実施形態と同様である。
次に、上記構成における本実施形態の作動を図7のモリエル線図を用いて説明する。本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10を作動させると、第1実施形態と同様に、圧縮機11吐出冷媒が、放熱器12→上流側分岐部13aの順に流れ、上流側分岐部13aにて分岐された一方の冷媒が上流側エジェクタ14の上流側ノズル部41にて等エントロピ的に減圧される(図7のa7点→b7点→c7点)。
これにより、第1蒸発器17流出冷媒が上流側冷媒吸引口42aから吸引されて上流側噴射冷媒と合流する(図7のc7点→d7点、i7点→d7点)。さらに、第1実施形態と同様に、上流側ディフューザ部42bにて昇圧された冷媒が、気液分離器15にて気液分離される(図7のe7点→f7点、e7点→g7点)。
気液分離器15にて分離された液相冷媒は、低圧側固定絞り16bにて減圧されて(図5のg7点→h7点)、第1蒸発器17にて送風ファン17aから送風された前席側送風空気から吸熱して蒸発する(図7のh7点→i7点)。
気液分離器15にて分離された気相冷媒は、下流側エジェクタ20の下流側ノズル部21へ流入し、等エントロピ的に減圧されて噴射される(図7のf7点→m7点)。そして、下流側ノズル部21から噴射された下流側噴射冷媒の吸引作用によって、第2蒸発器18から流出した冷媒が、下流側冷媒吸引口22aから吸引される。下流側噴射冷媒および下流側冷媒吸引口22aから吸引された下流側吸引冷媒は、下流側ディフューザ部22bへ流入する(図7のm7点→n7点、k7点→n7点)。
下流側ディフューザ部22bでは、上流側ディフューザ部42bと同様に、下流側噴射冷媒と下流側吸引冷媒が混合されながら混合冷媒の圧力が上昇する(図7のn7点→f’7点)。下流側ディフューザ部22bから流出した冷媒は、圧縮機11へ吸入されて再び圧縮される(図7のf’7点→a7点)。
一方、上流側分岐部13aにて分岐された他方の冷媒は、第1実施形態と同様に、高圧側固定絞り16aにて減圧されて(図7のb7点→j7点)、第2蒸発器18にて送風ファン18aから送風された後席側送風空気から吸熱して蒸発する(図7のj7点→k7点)。さらに、第2蒸発器18から流出した冷媒は、下流側エジェクタ20の下流側冷媒吸引口22aから吸引される。
本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10は、以上の如く作動するので、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。つまり、前席側送風空気および後席側送風空気を冷却することができ、この際、車両前席側へ送風される送風空気の温度と、車両後席側へ送風される送風空気の温度が不均一になってしまうことを抑制できる。
より詳細には、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10によれば、第1実施形態と同様に、第1蒸発器17へ気液分離器15にて分離された液相冷媒を流入させるので、図7のh7点に示すように、第1蒸発器17へ比較的エンタルピの低い冷媒を流入させることができる。また、第2蒸発器18へ放熱器12から流出して高圧側固定絞り16aにて等エンタルピ的に減圧された冷媒を流入させるので、図7のj7点に示すように、第2蒸発器18にも比較的エンタルピの低い冷媒を流入させることができる。
従って、第1蒸発器17にて冷媒が発揮する冷凍能力(図7のi7点とh7点とのエンタルピ差)と、第2蒸発器18にて冷媒が発揮する冷凍能力(図7のk7点とj7点とのエンタルピ差)とを近づけることができ、第1蒸発器17における冷却能力と第2蒸発器18における冷却能力とを近づけることができる。
また、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10では、下流側エジェクタ20を備えており、第2蒸発器18の冷媒出口側が下流側エジェクタ20の下流側冷媒吸引口22aに接続されているので、下流側ディフューザ部22bから流出した冷媒の圧力よりも、第2蒸発器18における冷媒蒸発圧力を低下させることができる。
従って、第2蒸発器18における冷媒蒸発圧力(冷媒蒸発温度)を、第1蒸発器17における冷媒蒸発圧力(冷媒蒸発温度)に近づくように低下させることができる。その結果、第1蒸発器17における冷却能力と第2蒸発器18における冷却能力を、より一層効果的に近づけることができる。
(第4実施形態)
本実施形態では、図8の全体構成図に示すように、第1実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10に対して、下流側エジェクタ20を追加した例を説明する。本実施形態の下流側エジェクタ20は、第3実施形態の下流側エジェクタ20に対して、第1実施形態と同様の旋回流発生手段を備えている。つまり、本実施形態では、下流側エジェクタ20として、上流側エジェクタ14と全く同様の構成のものが採用されている。
さらに、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10では、上流側分岐部13aの一方の冷媒流出口に、上流側エジェクタ14の上流側ノズル部41の冷媒流入口41a側が接続され、上流側分岐部13aの他方の冷媒流出口に、下流側エジェクタ20の下流側ノズル部21の冷媒流入口21a側が接続されている。
また、下流側エジェクタ20の下流側ディフューザ部22bの下流側には、下流側気液分離器15aが接続されている。この下流側気液分離器15aは、気液分離器15と同様の構成の低圧側気液分離手段である。なお、本実施形態では、説明の明確化のために、気液分離器15を上流側気液分離器15と記載する。
上流側気液分離器15の気相冷媒流出口および下流側気液分離器15aの気相冷媒流出口は、合流部13bを介して、圧縮機11の吸入口側に接続されている。下流側気液分離器15aの液相冷媒流出口には、低圧側固定絞り16bと同様に構成された第2低圧側固定絞り16cを介して第2蒸発器18の冷媒入口側が接続され、第2蒸発器18の冷媒出口には、下流側エジェクタ20の下流側冷媒吸引口22aが接続されている。
つまり、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10では、上流側エジェクタ14、上流側気液分離器15、低圧側固定絞り16bおよび第1蒸発器17を上流側ユニット、そして、下流側エジェクタ20、下流側気液分離器15a、第2低圧側固定絞り16cおよび第2蒸発器18を下流側ユニットとしたときに、2つのユニットが冷媒流れに対して並列的に接続されることになる。その他の構成は、第1実施形態と同様である。
従って、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10を作動させると、前席側送風空気および後席側送風空気を冷却することができるとともに、上流側エジェクタ14の上流側ディフューザ部42bおよび下流側エジェクタ20の下流側ディフューザ部22bの昇圧作用によって、サイクルのCOPを向上させることができる。
さらに、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10では、第1蒸発器17へ流入する冷媒を上流側ノズル部41および低圧側固定絞り16bにて減圧し、第2蒸発器18へ流入する冷媒を下流側ノズル部21および第2低圧側固定絞り16cにて減圧するサイクル構成になっている。
従って、第1蒸発器17における冷媒蒸発温度と第2蒸発器18における冷媒蒸発温度とを、容易に同等の温度に近づけることができる。同様に、第1蒸発器17へ流入する冷媒流量と第2蒸発器18へ流入する冷媒流量とを、容易に同等の流量に近づけることができる。
これに加えて、第1蒸発器17へ気液分離手段15にて分離された液相冷媒を流入させ、第2蒸発器18へ下流側気液分離手段15aにて分離された液相冷媒を流入させるサイクル構成になっている。
従って、第1蒸発器17へ流入する冷媒の乾き度と第2蒸発器18へ流入する冷媒の乾き度とを、容易に同等の乾き度に近づけることができる。従って、第1蒸発器17にて冷媒が発揮する冷凍能力と、第2蒸発器18にて冷媒が発揮する冷凍能力とを近づけることができる。
その結果、第4実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10によれば、第1蒸発器17における冷却能力と第2蒸発器18における冷却能力を、効果的に近づけることができる。
(第5実施形態)
本実施形態では、図9に示すように、第1実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10に対して、合流部13bの接続態様を変更したものである。具体的には、本実施形態では、気液分離器15の気相冷媒流出口に合流部13bの一方の冷媒流入口側を接続し、第2蒸発器18の冷媒出口に合流部13bの他方の冷媒流入口側を接続している。さらに、合流部13bの冷媒流出口に圧縮機11の吸入口側を接続している。その他のエジェクタ式冷凍サイクル10の構成は第1実施形態と同様である。
次に、上記構成における本実施形態の作動を図10のモリエル線図を用いて説明する。本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10を作動させると、第1実施形態と同様に、圧縮機11吐出冷媒が、放熱器12→上流側分岐部13aの順に流れ、上流側分岐部13aにて分岐された一方の冷媒が上流側エジェクタ14の上流側ノズル部41にて等エントロピ的に減圧される(図10のa10点→b10点→c10点)。
これにより、第1蒸発器17から流出した冷媒が上流側冷媒吸引口42aから吸引されて上流側噴射冷媒と合流し(図10のc10点→d10点、i10点→d10点)、上流側ディフューザ部42bにて昇圧される(図10のd10点→e10点)。さらに、上流側ディフューザ部42bにて昇圧された冷媒は、気液分離器15にて気液分離される(図10のe10点→f10点、e10点→g10点)。
気液分離器15にて分離された液相冷媒は、低圧側固定絞り16bにて減圧されて(図10のg10点→h10点)、第1蒸発器17にて送風ファン17aから送風された前席側送風空気から吸熱して蒸発する(図10のh10点→i10点)。気液分離器15にて分離された気相冷媒は、合流部13bへ流入して、第2蒸発器18から流出した冷媒と合流する。
一方、上流側分岐部13aにて分岐された他方の冷媒は、第1実施形態と同様に、高圧側固定絞り16aにて減圧されて(図10のb10点→j10点)、第2蒸発器18にて送風ファン18aから送風された後席側送風空気から吸熱して蒸発する(図10のj10点→f10点)。
さらに、第2蒸発器18から流出した冷媒は、合流部13bへ流入して、気液分離器15にて分離された気相冷媒と合流する。合流部13bから流出した冷媒は、圧縮機11へ吸入されて再び圧縮される(図10のf’10点→a10点)。
本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10は、以上の如く作動するので、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。つまり、第1蒸発器17へ気液分離器15にて分離された液相冷媒を流入させることによって、第1蒸発器17にて冷媒が発揮する冷凍能力と、第2蒸発器18にて冷媒が発揮する冷凍能力とを近づけることができる。
ここで、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10の構成では、合流部13bを介して、気液分離器15の気相冷媒流出口側と第2蒸発器18の冷媒出口側が接続されている。このため、図10のモリエル線図に示すように、第2蒸発器18における冷媒蒸発温度が、第1蒸発器17における冷媒蒸発温度よりも高くなってしまい、第1蒸発器17における冷却能力と第2蒸発器18における冷却能力が乖離してしまいやすい。
これに対して、本実施形態では、第1蒸発器17へ気液分離器15にて分離された液相冷媒を流入させることによって、第1蒸発器17にて冷媒が発揮する冷凍能力と、第2蒸発器18にて冷媒が発揮する冷凍能力とを近づけることができる。従って、第1蒸発器17における冷却能力と第2蒸発器18における冷却能力が大きく乖離してしまうことを抑制できる。
(第6〜第9実施形態)
第6〜第9実施形態では、第2実施形態で説明した内部熱交換器19を備えるエジェクタ式冷凍サイクル10の変形例について説明する。
第6実施形態では、図11の全体構成図に示すように、第1実施形態で説明したエジェクタ式冷凍サイクル10に対して、内部熱交換器19を追加している。より具体的には、第6実施形態の内部熱交換器19は、放熱器12下流側の高圧冷媒のうち放熱器12出口側から上流側分岐部13aへ至る冷媒流路を流通する高圧冷媒と、圧縮機11吸入側の低圧冷媒のうち気液分離器15の気相冷媒流出口から圧縮機11の吸入口へ至る冷媒流路を流通する低圧冷媒とを熱交換させるように配置されている。
従って、第6実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10によれば、第1実施形態と同様の効果を得られるだけでなく、第2蒸発器18へ流入する冷媒のエンタルピを低下させて、第2蒸発器18にて冷媒が発揮する冷凍能力を拡大することができる。
第7実施形態では、図12の全体構成図に示すように、第5実施形態で説明したエジェクタ式冷凍サイクル10に対して、内部熱交換器19を追加している。より具体的には、第7実施形態の内部熱交換器19は、放熱器12下流側の高圧冷媒のうち放熱器12出口側から上流側分岐部13aへ至る冷媒流路を流通する高圧冷媒と、圧縮機11吸入側の低圧冷媒のうち合流部13bの冷媒流出口から圧縮機11の吸入口へ至る冷媒流路を流通する低圧冷媒とを熱交換させるように配置されている。
従って、第7実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10によれば、第5実施形態と同様の効果を得られるだけでなく、第2蒸発器18へ流入する冷媒のエンタルピを低下させて、第2蒸発器18にて冷媒が発揮する冷凍能力を拡大することができる。
第8実施形態では、図13の全体構成図に示すように、第1実施形態で説明したエジェクタ式冷凍サイクル10に対して、内部熱交換器19を追加している。より具体的には、第8実施形態の内部熱交換器19は、放熱器12下流側の高圧冷媒のうち上流側分岐部13aから高圧側固定絞り16aへ至る冷媒流路を流通する高圧冷媒と、圧縮機11吸入側の低圧冷媒のうち気液分離器15の気相冷媒流出口から圧縮機11の吸入口へ至る冷媒流路を流通する低圧冷媒とを熱交換させるように配置されている。
従って、第8実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10によれば、第1実施形態と同様の効果を得られるだけでなく、第2蒸発器18へ流入する冷媒のエンタルピを低下させて、第2蒸発器18にて冷媒が発揮する冷凍能力を拡大することができる。
第9施形態では、図14の全体構成図に示すように、第4実施形態で説明したエジェクタ式冷凍サイクル10に対して、内部熱交換器19を追加している。より具体的には、第9実施形態の内部熱交換器19は、放熱器12下流側の高圧冷媒のうち放熱器12出口側から上流側分岐部13aへ至る冷媒流路を流通する高圧冷媒と、圧縮機11吸入側の低圧冷媒のうち合流部13bから圧縮機11の吸入口へ至る冷媒流路を流通する低圧冷媒とを熱交換させるように配置されている。
従って、第9実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10によれば、第4実施形態と同様の効果を得られるだけでなく、第1蒸発器17および第2蒸発器18の双方へ流入する冷媒のエンタルピを低下させて、双方の蒸発器17、18にて冷媒が発揮する冷凍能力を拡大することができる。
さらに、第9実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10において、内部熱交換器19は、放熱器12出口側から上流側分岐部13aへ至る冷媒流路を流通する高圧冷媒と、気液分離器15の気相冷媒流出口から合流部13bへ至る冷媒流路を流通する低圧冷媒とを熱交換させるように配置されていてもよい。
また、放熱器12出口側から上流側分岐部13aへ至る冷媒流路を流通する高圧冷媒と、下流側気液分離器15aの気相冷媒流出口から合流部13bへ至る冷媒流路を流通する低圧冷媒とを熱交換させるように配置されていてもよい。
(第10実施形態)
本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10では、図15の全体構成図に示すように、上流側分岐部13aの一方の冷媒流出口に高圧側固定絞り16aを介して第1蒸発器17の冷媒入口側を接続され、上流側分岐部13aの他方の冷媒流出口に第2高圧側固定絞り16dを介して第2蒸発器18の冷媒入口側を接続している。この第2高圧側固定絞り16dの基本的構成は、高圧側固定絞り16aと同様である。
さらに、第1蒸発器17の冷媒出口側には、上流側エジェクタ14の上流側ノズル部41の冷媒流入口41a側が接続され、第2蒸発器18の冷媒出口側には、上流側エジェクタ14の上流側冷媒吸引口42a側が接続されている。なお、本実施形態の上流側エジェクタ14は、第3実施形態の下流側エジェクタ20と同様に、旋回流発生手段を備えていない。
つまり、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10では、上流側エジェクタ14が、第1蒸発器17から流出した冷媒と第2蒸発器18から流出した冷媒とを合流させる合流部としての機能を兼ね備えることによって、第1蒸発器17および第2蒸発器18が冷媒流れに対して並列的に接続されることになる。その他の構成は、第1実施形態と同様である。
従って、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10を作動させると、第1蒸発器17における冷媒蒸発温度が第2蒸発器18における冷媒蒸発温度よりも高くなってしまうものの、第1蒸発器17にて冷媒が発揮する冷凍能力と第2蒸発器18にて冷媒が発揮する冷凍能力と近づけることができる。
さらに、高圧側固定絞り16aおよび第2高圧側固定絞り16dの減圧特性(流量係数)を適切に調整することで、第1蒸発器17へ流入する冷媒流量と第2蒸発器18へ流入
する冷媒流量とを調整することができ、第1蒸発器17における冷却能力と第2蒸発器18における冷却能力を近づけることができる。
(第11実施形態)
本実施形態では、図16の全体構成図に示すように、第3実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10に対して、補助上流側分岐部13c、第2高圧側固定絞り16dおよび第3蒸発器23を追加した例を説明する。
補助上流側分岐部13cの基本的構成は、上流側分岐部13aと同様である。補助上流側分岐部13cは、上流側分岐部13aの他方の冷媒流出口から流出した冷媒の流れをさらに分岐して、分岐された一方の冷媒を第2高圧側固定絞り16d側へ流出させるとともに、分岐された他方の冷媒を高圧側固定絞り16a側へ流出させるものである。
つまり、本実施形態の高圧側固定絞り16aは、上流側分岐部13aにて分岐された他方の冷媒のうちの一部を減圧させる減圧手段としての機能を果たし、第2高圧側固定絞り16dは、上流側分岐部13aにて分岐された他方の冷媒のうちの別の一部を減圧させる補助減圧手段としての機能を果たす。
第3蒸発器23は、第2高圧側固定絞り16dにて減圧された低圧冷媒と送風ファン23aから車室内前席側へ向けて送風される前席側送風空気とを熱交換させることによって、前席側送風空気を補助的に冷却する吸熱用熱交換器である。第3蒸発器23の冷媒出口側は、合流部13bの一方の冷媒流入口側に接続されている。また、送風ファン23aの基本的構成は、送風ファン17a、18aと同等である。
さらに、合流部13bの他方の冷媒流入口には、第1蒸発器17の冷媒出口側が接続され、合流部13bの冷媒流出口には、上流側エジェクタ14の上流側冷媒吸引口42a側が接続されている。その他の構成は、第3実施形態と同様である。
従って、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10を作動させると、第3実施形態と同様の効果を得られるだけでなく、第3蒸発器23にて前席側送風空気を冷却することができる。
さらに、本実施形態では、上流側エジェクタ14の上流側冷媒吸引口42aに、合流部13bを介して、第1蒸発器17の冷媒出口側および第3蒸発器23の冷媒出口側の双方が接続されている。これにより、第1蒸発器17における冷媒蒸発圧力(冷媒蒸発温度)と第3蒸発器23における冷媒蒸発圧力(冷媒蒸発温度)とを近づけることができる。
なお、本実施形態では、第3蒸発器23の冷媒出口側を上流側エジェクタ14の上流側冷媒吸引口42aに接続した例を説明したが、第3蒸発器23の冷媒出口側を下流側エジェクタ20の下流側冷媒吸引口22aに接続して、第3蒸発器23にて後席側送風空気を冷却するようにしてもよい。また、第3蒸発器23にて別の冷却対象空間へ送風される送風空気を冷却してもよい。
(第12実施形態)
本実施形態では、図17の全体構成図に示すように、第11実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10に対して、気液分離器15を廃止し、上流側エジェクタ14の上流側ディフューザ部42bの出口側に、第1蒸発器17の冷媒入口側を接続した例を説明する。
さらに、本実施形態の第1蒸発器17の冷媒出口には、下流側エジェクタ20の下流側ノズル部21の冷媒流入口21a側が接続され、第2蒸発器18の冷媒出口には、上流側エジェクタ14の上流側冷媒吸引口42a側が接続され、第3蒸発器23の冷媒出口には、下流側エジェクタ20の下流側冷媒吸引口22a側が接続されている。その他の構成は、第11実施形態と同様である。
次に、上記構成における本実施形態の作動を図18のモリエル線図を用いて説明する。本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10を作動させると、第1実施形態と同様に、圧縮機11吐出冷媒が、放熱器12→上流側分岐部13aの順に流れ、上流側分岐部13aにて分岐された一方の冷媒が上流側エジェクタ14の上流側ノズル部41にて等エントロピ的に減圧される(図18のa18点→b18点→c18点)。
これにより、第2蒸発器18から流出した冷媒が上流側冷媒吸引口42aから吸引されて上流側噴射冷媒と合流する(図18のc18点→d18点、i18点→d18点)。上流側噴射冷媒と上流側吸引冷媒は、上流側ディフューザ部42bにて混合されながら昇圧される(図18のd18点→e18点)。
上流側ディフューザ部42bから流出した冷媒は、第1蒸発器17へ流入して、送風ファン17aから送風された前席側送風空気から吸熱して蒸発する(図18のe18点→f18点)。これにより、前席側送風空気が冷却される。
第1蒸発器17から流出した冷媒は、下流側エジェクタ20の下流側ノズル部21へ流入して、等エントロピ的に減圧される(図18のf18点→m18点)。これにより、第3蒸発器23から流出した冷媒が下流側冷媒吸引口22aから吸引されて下流側噴射冷媒と合流する(図18のm18点→n18点、k18点→n18点)。
下流側ノズル部21から噴射された下流側噴射冷媒と下流側冷媒吸引口22aから吸引された上流側吸引冷媒は、下流側ディフューザ部22bにて混合されながら昇圧される(図18のn18点→f’18点)。下流側ディフューザ部22bから流出した冷媒は、圧縮機11に吸入されて再び圧縮される(図18のf’18点→a18点)。
一方、上流側分岐部13aにて分岐された他方の冷媒の流れは、補助上流側分岐部13cへ流入してさらに分岐される。補助上流側分岐部13cにて分岐された一方の冷媒は、高圧側固定絞り16aにて減圧されて(図18のb18点→j18点)、第2蒸発器18にて送風ファン18aから送風された後席側送風空気から吸熱して蒸発する(図18のj18点→i18点)。これにより、後席側送風空気が冷却される。第2蒸発器18から流出した冷媒は、上流側エジェクタ14の上流側冷媒吸引口42aから吸引される。
また、補助上流側分岐部13cにて分岐された他方の冷媒は、第2高圧側固定絞り16dにて減圧されて(図18のb18点→o18点)、第3蒸発器23にて送風ファン23aから送風された前席側送風空気から吸熱して蒸発する(図18のo18点→k18点)。これにより、前席側送風空気が冷却される。第3蒸発器23から流出した冷媒は、下流側エジェクタ20の下流側冷媒吸引口22aから吸引される。
本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10は、以上の如く作動して、前席側送風空気および後席側送風空気を冷却することができる。さらに、下流側エジェクタ20を備えているので、第3蒸発器23から流出した冷媒を昇圧させて圧縮機11へ吸入させることができる。
従って、第3蒸発器23から流出した冷媒を圧縮機11へ吸入させるサイクル構成に対して、圧縮機11へ吸入される冷媒の密度を上昇させることができ、圧縮機11の回転数を増加させることなく吐出流量を増加させることができる。
ここで、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10では、上流側エジェクタ14の上流側ディフューザ部42bの出口側に第1蒸発器17の冷媒入口側が接続され、第1蒸発器17の冷媒出口側に上流側エジェクタ14の上流側冷媒吸引口42aが接続されている。このため、図18のモリエル線図に示すように、第1蒸発器17における冷媒蒸発温度が、第2蒸発器18における冷媒蒸発温度よりも高くなり、第1蒸発器17における冷却能力と第2蒸発器18における冷却能力が乖離してしまいやすい。
これに対して、本実施形態では、上記の如く、圧縮機11の吐出流量を増加させることができるので、上流側ノズル部41、高圧側固定絞り16aおよび第2高圧側固定絞り16dの減圧特性(流量係数)を適切に調整することで、第1蒸発器17へ流入する冷媒流量を第2蒸発器18へ流入する冷媒流量よりも増加させることができる。その結果、第1蒸発器17における冷却能力と第2蒸発器18における冷却能力を近づけることができる。
(第13〜第17実施形態)
第13〜第17実施形態では、第12実施形態で説明した、上流側エジェクタ14の上流側ディフューザ部42bの出口側に第1蒸発器17の冷媒入口側が接続され、第1蒸発器17の冷媒出口側に下流側エジェクタ20の下流側ノズル部21の冷媒流入口21a側が接続されたエジェクタ式冷凍サイクル10の変形例について説明する。
第13実施形態では、図19の全体構成図に示すように、第12実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10に対して、第2補助上流側分岐部13d、第3高圧側固定絞り16eおよび第4蒸発器24を追加した例を説明する。
第2補助上流側分岐部13dの基本的構成は、上流側分岐部13a等と同様である。第2補助上流側分岐部13dは、補助上流側分岐部13cにて分岐された一方の冷媒をさらに分岐して、分岐された一方の冷媒を第2高圧側固定絞り16d側へ流出させるとともに、分岐された他方の冷媒を第2補助減圧手段である第3高圧側固定絞り16e側へ流出させるものである。
第4蒸発器24は、第3高圧側固定絞り16eにて減圧された低圧冷媒と送風ファン24aから車室内後席側へ向けて送風される後席側送風空気とを熱交換させることによって、後席側送風空気を補助的に冷却する第2補助熱交換器である。第3蒸発器23の冷媒出口側は、合流部13bの一方の冷媒流入口側に接続されている。
さらに、合流部13bの他方の冷媒流入口には、第2蒸発器18の冷媒出口側が接続され、合流部13bの冷媒流出口には、上流側エジェクタ14の上流側冷媒吸引口42a側が接続されている。
従って、第13実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10によれば、第12実施形態と同様の効果を得られるだけでなく、第4蒸発器24にて冷却対象流体(第13実施形態では後席側送風空気)を冷却することができる。
第14実施形態では、図20の全体構成図に示すように、第12実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10に対して、送風ファン18aを廃止するとともに、第1蒸発器17および第2蒸発器18を一体化させた例を説明する。従って、本実施形態では、第1蒸発器17および第2蒸発器18の双方で、同一の冷却対象空間へ送風される送風空気が冷却されることになる。
なお、このような蒸発器の一体化の具体的な手段としては、第1蒸発器17および第2蒸発器18を、冷媒が流通する複数本のチューブと、この複数本のチューブの長手方向両端側に配置されて冷媒の集合および分配を行う一対の分配集合用タンクとを有して構成される、いわゆるタンクアンドチューブ型の熱交換器として構成する。
そして、双方の蒸発器の分配集合用タンクを一体的に形成する、あるいは双方の蒸発器において、冷媒と送風空気との熱交換を促進する熱交換フィンを共通化する等の手段等によって実現することができる。
さらに、本実施形態では、第1蒸発器17が第2蒸発器18に対して送風空気の流れ方向の風上側に配置されるとともに、送風空気の流れ方向から見たときに、第1蒸発器17の熱交換コア部(冷媒と空気と熱交換させる部位)の全域が、第2蒸発器18の熱交換領域コア部の全域に重合するように一体化されている。
従って、第14実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10によれば、送風空気を第1蒸発器17→第2蒸発器18の順に通過させて同一の冷却対象空間を冷却できる。この際、第1蒸発器17の冷媒蒸発温度が第2蒸発器18の冷媒蒸発温度よりも高くなっているので、第1蒸発器17および第2蒸発器18の冷媒蒸発温度と送風空気との温度差を確保して、効率的に送風空気を冷却することができる。
また、第14実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10において、第1蒸発器17および第2蒸発器18を車室内前席側へ向けて送風される前席側送風空気を冷却するために用い、第3蒸発器23を車室内後席側へ向けて送風される後席側送風空気を冷却するために用いてもよい。
第15実施形態では、図21の全体構成図に示すように、第13実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10に対して、第14実施形態と同様に、送風ファン18aを廃止するとともに、第1蒸発器17および第2蒸発器18を一体化させている。従って、第15実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10によれば、第14実施形態と同様に、同一の冷却対象空間を効率的に冷却することができる。
また、第15実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10において、第1蒸発器17および第2蒸発器18を車室内前席側へ向けて送風される前席側送風空気を冷却するために用い、第3蒸発器23および第4蒸発器24の少なくとも一方を車室内後席側へ向けて送風される後席側送風空気を冷却するために用いてもよい。
第16実施形態では、図22の全体構成図に示すように、第13実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10に対して、第4蒸発器24の冷媒出口側と合流部13bとの間に、低圧側固定絞り16bを配置している。これによれば、第13実施形態と同様の効果を得ることができるとともに、第2蒸発器18の冷媒蒸発温度に対して、第4蒸発器24の冷媒蒸発温度を上昇させることができる。
さらに、第17実施形態では、図23の全体構成図に示すように、第15実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10に対して、第4蒸発器24の冷媒出口側と合流部13bとの間に、低圧側固定絞り16bを配置している。これによれば、第15実施形態と同様の効果を得ることができるとともに、第2蒸発器18の冷媒蒸発温度に対して、第4蒸発器24の冷媒蒸発温度を上昇させることができる。
(第18、第19実施形態)
第18実施形態では、第3実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10に対して、図24の全体構成図に示すように、下流側エジェクタ20の接続態様を変更している。具体的には、本実施形態では、気液分離器15の気相冷媒流出口に下流側エジェクタ20の下流側冷媒吸引口22a側が接続され、第2蒸発器18の冷媒出口に下流側エジェクタ20の下流側ノズル部21の冷媒流入口21a側が接続されている。
従って、第18実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10を作動させると、第3実施形態と同様に、第1蒸発器17における冷却能力と第2蒸発器18における冷却能力とを近づけることができる。さらに、第12実施形態と同様に、下流側エジェクタ20の昇圧作用によって、圧縮機11へ吸入される冷媒の密度を上昇させることができ、圧縮機11の回転数を増加させることなく吐出流量を増加させることができる。
第19実施形態では、第11実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10に対して、図25の全体構成図に示すように、下流側エジェクタ20の接続態様を変更している。具体的には、第18実施形態と同様に、気液分離器15の気相冷媒流出口に下流側エジェクタ20の下流側冷媒吸引口22a側が接続され、第2蒸発器18の冷媒出口に下流側エジェクタ20の下流側ノズル部21の冷媒流入口21a側が接続されている。
従って、第19実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10を作動させると、第11実施形態と同様に、第1蒸発器17における冷却能力と第2蒸発器18における冷却能力とを近づけることができる。さらに、第12実施形態と同様に、下流側エジェクタ20の昇圧作用によって、圧縮機11へ吸入される冷媒の密度を上昇させることができ、圧縮機11の回転数を増加させることなく吐出流量を増加させることができる。
(第20〜第25実施形態)
第20実施形態では、第12実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10に対して、図26の全体構成図に示すように、下流側エジェクタ20の接続態様を変更している。具体的には、本実施形態では、第1蒸発器17の冷媒出口に下流側エジェクタ20の下流側冷媒吸引口22a側が接続され、第3蒸発器23の冷媒出口に下流側エジェクタ20の下流側ノズル部21の冷媒流入口21a側が接続されている。このようなサイクル構成としても第12実施形態と同様の効果を得ることができる。
第21実施形態では、第13実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10に対して、図27の全体構成図に示すように、下流側エジェクタ20の接続態様を変更している。具体的には、第20実施形態と同様に、第1蒸発器17の冷媒出口に下流側エジェクタ20の下流側冷媒吸引口22a側が接続され、第3蒸発器23の冷媒出口に下流側エジェクタ20の下流側ノズル部21の冷媒流入口21a側が接続されている。このようなサイクル構成としても第13実施形態と同様の効果を得ることができる。
第22実施形態では、第14実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10に対して、図28の全体構成図に示すように、下流側エジェクタ20の接続態様を変更している。具体的には、第20実施形態と同様に、第1蒸発器17の冷媒出口に下流側エジェクタ20の下流側冷媒吸引口22a側が接続され、第3蒸発器23の冷媒出口に下流側エジェクタ20の下流側ノズル部21の冷媒流入口21a側が接続されている。このようなサイクル構成としても第14実施形態と同様の効果を得ることができる。
第23実施形態では、第15実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10に対して、図29の全体構成図に示すように、下流側エジェクタ20の接続態様を変更している。具体的には、第20実施形態と同様に、第1蒸発器17の冷媒出口に下流側エジェクタ20の下流側冷媒吸引口22a側が接続され、第3蒸発器23の冷媒出口に下流側エジェクタ20の下流側ノズル部21の冷媒流入口21a側が接続されている。このようなサイクル構成としても第15実施形態と同様の効果を得ることができる。
第24実施形態では、第16実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10に対して、図30の全体構成図に示すように、下流側エジェクタ20の接続態様を変更している。具体的には、第20実施形態と同様に、第1蒸発器17の冷媒出口に下流側エジェクタ20の下流側冷媒吸引口22a側が接続され、第3蒸発器23の冷媒出口に下流側エジェクタ20の下流側ノズル部21の冷媒流入口21a側が接続されている。このようなサイクル構成としても第16実施形態と同様の効果を得ることができる。
第25実施形態では、第17実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10に対して、図31の全体構成図に示すように、下流側エジェクタ20の接続態様を変更している。具体的には、第20実施形態と同様に、第1蒸発器17の冷媒出口に下流側エジェクタ20の下流側冷媒吸引口22a側が接続され、第3蒸発器23の冷媒出口に下流側エジェクタ20の下流側ノズル部21の冷媒流入口21a側が接続されている。このようなサイクル構成としても第17実施形態と同様の効果を得ることができる。
(第26実施形態)
本実施形態では、第9実施形態に対して、図32の全体構成図に示すように、上流側エジェクタ14、下流側エジェクタ20、および内部熱交換器19を備えるエジェクタ式冷凍サイクル10のサイクル構成を変更している。
具体的には、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10は、上流側分岐部13aにて分岐された他方の冷媒の流れをさらに分岐する第2上流側分岐部(補助上流側分岐部)13cを備えている。なお、本実施形態では、説明の明確化のために、上流側分岐部13aを第1上流側分岐部13aと記載する。
この第2上流側分岐部13cの一方の冷媒流出口には、下流側エジェクタ20の下流側ノズル部21の冷媒流入口21aが接続されている。また、第2上流側分岐部13cの他方の冷媒流出口には、高圧側固定絞り16aおよび第2蒸発器18を介して、下流側エジェクタ20の下流側冷媒吸引口22aが接続されている。
さらに、上流側エジェクタ14の上流側ディフューザ部42bから流出した冷媒の気液を分離する気液分離器15の気相冷媒流出口には、合流部13bの一方の冷媒流入口が接続されている。また、下流側エジェクタ20の下流側ディフューザ部22bの出口側には、合流部13bの他方の冷媒流入口が接続されている。
合流部13bの冷媒流出口には、内部熱交換器19の低圧冷媒通路の入口側が接続されている。従って、本実施形態の内部熱交換器19における低圧冷媒は、合流部13bの冷媒流出口側から圧縮機11の吸入口側へ至る冷媒流路を流通する冷媒である。その他のエジェクタ式冷凍サイクル10の構成は第9実施形態と同様である。
次に、上記構成における本実施形態の作動を図33のモリエル線図を用いて説明する。本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10を作動させると、圧縮機11吐出冷媒(図33のa33点)が、放熱器12にて冷却されて凝縮し(図33のa33点→b33点)、内部熱交換器19の高圧冷媒通路へ流入する。
内部熱交換器19の高圧冷媒通路へ流入した高圧冷媒は、内部熱交換器19の低圧冷媒通路を流通する低圧冷媒と熱交換してさらにエンタルピを減少させる(図33のb33点→b’33点)。内部熱交換器19の高圧冷媒通路から流出した冷媒の流れは、第1上流側分岐部13aにて分流される。
第1上流側分岐部13aにて分岐された一方の冷媒は、上流側エジェクタ14の上流側ノズル部41にて等エントロピ的に減圧される(図33のb’33点→c33点)。そして、上流側ノズル部41から噴射された上流側噴射冷媒の吸引作用により、第1蒸発器17から流出した冷媒が、上流側冷媒吸引口42aから吸引される(図33のc33点→d33点、i33点→d33点)。
上流側噴射冷媒および上流側冷媒吸引口42aから吸引された上流側吸引冷媒は、上流側ディフューザ部42bにて混合されながら昇圧されて(図33のd33点→e33点)、気液分離器15にて気液分離される(図33のe33点→f33点、e33点→g33点)。気液分離器15にて分離された気相冷媒は、合流部13bの一方の冷媒流入口へ流入する。
気液分離器15にて分離された液相冷媒は、低圧側固定絞り16bにて等エンタルピ的に減圧されて(図33のg33点→h33点)、第1蒸発器17へ流入する。第1蒸発器17へ流入した冷媒は、送風ファン17aから送風された前席側送風空気から吸熱して蒸発する(図33のh33点→i33点)。これにより、前席側送風空気が冷却される。
第1上流側分岐部13aにて分岐された他方の冷媒の流れは、第2上流側分岐部13cにてさらに分岐される。なお、図33では、図示の明確化のために、第1上流側分岐部13aの他方の冷媒流出口から合流部13bの他方の冷媒流入口へ至る冷媒の状態の変化を太破線で示している。
第2上流側分岐部13cにて分岐された一方の冷媒は、下流側エジェクタ20の下流側ノズル部21にて等エントロピ的に減圧される(図33のb’33点→p33点)。そして、下流側ノズル部21から噴射された下流側噴射冷媒の吸引作用により、第2蒸発器18から流出した冷媒が、下流側冷媒吸引口22aから吸引される(図33のp33点→q33点、k33点→q33点)。
下流側噴射冷媒および下流側冷媒吸引口22aから吸引された下流側吸引冷媒は、下流側ディフューザ部22bにて混合されながら昇圧されて(図33のq33点→r33点)、合流部13bの他方の冷媒流入口へ流入する。
第2上流側分岐部13cにて分岐された他方の冷媒は、高段側固定絞り16aにて等エンタルピ的に減圧されて(図33のb’33点→j33点)、第2蒸発器18へ流入する。第2蒸発器18へ流入した冷媒は、送風ファン18aから送風された後席側送風空気から吸熱して蒸発する(図33のj33点→k33点)。これにより、後席側送風空気が冷却される。
また、合流部13bでは、気液分離器15にて分離された気相冷媒の流れと下流側ディフューザ部22bから流出した気液二相冷媒の流れが合流し(図33のf33点→s33点、r33点→s33点)、比較的乾き度の高い気液二相状態となった低圧冷媒(図33のs33点)が、内部熱交換器19の低圧冷媒通路側へ流出する。
内部熱交換器19の低圧冷媒通路へ流入した低圧冷媒は、高圧冷媒通路を流通する高圧冷媒と熱交換してエンタルピを増加させる(図33のs33点→t33点)。これにより、内部熱交換器19の低圧冷媒通路から流出する冷媒は、比較的過熱度の低い気相状態となる。内部熱交換器19の低圧冷媒通路から流出した冷媒は、圧縮機11に吸入され、再び圧縮される(図33のf’33→a33)。
本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10は、以上の如く作動して、前席側送風空気および後席側送風空気を冷却することができるとともに、上流側エジェクタ14の上流側ディフューザ部42bおよび下流側エジェクタ20の下流側ディフューザ部22bの昇圧作用によって、サイクルのCOPを向上させることができる。
さらに、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10では、上流側エジェクタ14の上流側ノズル部41にて第1蒸発器17へ流入する冷媒を減圧し、高段側固定絞り16aにて第2蒸発器18へ流入する冷媒を減圧するサイクル構成になっている。従って、第1蒸発器17における冷媒蒸発温度と第2蒸発器18における冷媒蒸発温度とを、容易に同等の温度に近づけることができる。同様に、第1蒸発器17へ流入する冷媒流量と第2蒸発器18へ流入する冷媒流量とを、容易に同等の流量に近づけることができる。
その結果、第1蒸発器17における冷却能力と第2蒸発器18における冷却能力を効果的に近づけることができる。
また、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10では、合流部13bにて、気液分離器15にて分離された気相冷媒の流れと、下流側ディフューザ部22bから流出した気液二相冷媒の流れを合流させるので、内部熱交換器19の低圧冷媒通路へ流入する低圧冷媒を気液二相状態とすることができる。
これにより、内部熱交換器19の低圧冷媒通路から流出して圧縮機11に吸入される低圧冷媒の過熱度が不必要に上昇してしまうことを抑制できる。従って、圧縮機11から吐出される冷媒が過度に高温となって、圧縮機11の耐久寿命に悪影響を及ぼしてしまうことを抑制できる。
なお、本実施形態では、内部熱交換器19へ流入させる低圧冷媒を、合流部13bの冷媒流出口側から圧縮機11の吸入口側へ至る冷媒流路を流通する冷媒とした例を説明したが、内部熱交換器19へ流入させる低圧冷媒を、下流側昇圧部22bの出口側から合流部13bの入口側へ至る冷媒流路を流通する冷媒としても、同様の圧縮機11保護効果を得ることができる。
つまり、本実施形態の内部熱交換器19では、放熱器12の冷媒出口側から第1上流側分岐部13aの入口側へ至る冷媒流路を流通する高圧冷媒と下流側ディフューザ部22bの出口側から圧縮機11の吸入口側へ至る冷媒流路を流通する低圧冷媒とを熱交換させるようにすれば、圧縮機11に吸入される低圧冷媒の過熱度が不必要に上昇してしまうことを抑制できる。
また、本実施形態では、三方継手によって第1上流側分岐部13aおよび第2上流側分岐部13bを構成した例を説明したが、例えば、四方継手によって第1上流側分岐部13aおよび第2上流側分岐部13bを一体的に構成してもよい。
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、以下のように種々変形可能である。また、上記各実施形態に開示された手段は、実施可能な範囲で適宜組み合わせてもよい。
(1)上述の実施形態では、本発明に係るエジェクタ式冷凍サイクル10をデュアルエアコンタイプの車両用空調装置に適用し、第1蒸発器17を前席側送風空気を冷却するために用い、第2蒸発器18を後席側送風空気を冷却するために用いた例を説明したが、第1蒸発器17および第2蒸発器18の冷却対象流体はこれに限定されない。
例えば、第1蒸発器17を後席側送風空気を冷却するために用い、第2蒸発器18を前席側送風空気を冷却するために用いてもよい。
さらに、上述の実施形態では、第3蒸発器23および第4蒸発器24を、前席側送風空気あるいは後席側送風空気を補助的に冷却するために用いた例を説明したが、第3蒸発器23および第4蒸発器24を、別の冷却対象流体を冷却するために用いてもよい。例えば、第3蒸発器23あるいは第4蒸発器24を、車室内に配置された車内冷蔵庫(クールボックス)内へ循環送風される庫内用送風空気を冷却するために用いてもよい。
また、上述の実施形態で説明したエジェクタ式冷凍サイクル10の適用は、車両用空調装置に限定されない。例えば、定置型空調装置、冷凍冷蔵装置等に適用してもよい。
(2)上述の実施形態では、放熱器12として、サブクール型の熱交換器を採用した例を説明したが、凝縮部12aのみからなる通常の放熱器を採用してもよい。さらに、通常の放熱器とともに、この放熱器にて放熱した冷媒の気液を分離して余剰液相冷媒を蓄える受液器(レシーバ)を採用してもよい。
また、上述の実施形態では、上流側エジェクタ14および下流側エジェクタ20のノズル部41、21およびボデー部42、22といった各種構成部材を金属で形成した例を説明したが、それぞれの構成部材の機能を発揮可能であれば材質は限定されない。従って、これらの構成部材を樹脂等にて形成してもよい。
また、上述の実施形態では、上流側エジェクタ14と気液分離器15とを別体として構成した例を説明したが、上流側エジェクタ14の上流側ディフューザ部42bの出口側に気液分離器15を一体化させてもよいし、下流側エジェクタ20の下流側ディフューザ部22bの出口側に下流側気液分離器15aを一体化させてもよい。
また、上述の実施形態では、上流側エジェクタ14および下流側エジェクタ20として、最小通路面積部の冷媒通路面積が変化しない固定ノズル部を有するものを採用した例を説明したが、上流側エジェクタ14および下流側エジェクタ20として、最小通路面積部の冷媒通路面積を変更可能に構成された可変ノズル部を有するものを採用してもよい。
このような可変ノズル部としては、可変ノズル部の通路内にニードル状あるいは円錐状の弁体を配置し、この弁体を電気式アクチュエータ等によって変位させて、冷媒通路面積を調整する構成とすればよい。
また、上述の実施形態では、高圧側固定絞り16a、低圧側固定絞り16b等として、固定絞りを採用した例を説明したが、もちろん、温度式膨張弁や電気式膨張弁等の可変絞り機構を採用してもよい。
(3)上述の第2実施形態等では、内部熱交換器19を備えるエジェクタ式冷凍サイクル10について説明したが、もちろん、第10〜第25実施形態にて説明したエジェクタ式冷凍サイクル10に内部熱交換器19を追加してもよい。
(4)上述の実施形態では、冷媒としてR134aあるいはR1234yf等を採用可能であることを説明したが、冷媒はこれに限定されない。例えば、R600a、R410A、R404A、R32、R1234yfxf、R407C等を採用することができる。または、これらの冷媒のうち複数種を混合させた混合冷媒等を採用してもよい。