JP4506877B2 - エジェクタ - Google Patents

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Description

本発明は、ノズル部から噴射される高速度の噴射流体によって流体を吸引するエジェクタに関し、エジェクタ式冷凍サイクルに適用して好適である。
従来、高圧流体を減圧膨張させるノズル部から噴射される高速度の噴射流体の吸引作用によって、流体吸引口から流体を吸引するエジェクタが知られている。この種のエジェクタでは、噴射流体と流体吸引口から吸引された吸引流体とを混合部にて混合し、混合された流体の運動エネルギを昇圧部(ディフューザ部)にて圧力エネルギに変換して、エジェクタから流出する流出流体の圧力を吸引流体の圧力よりも上昇させている。
例えば、特許文献1に記載されたエジェクタでは、吸引流体を流体吸引口から混合部へ導く流体通路の入口側の通路面積を、流体吸引口の通路面積に対して同等以上に設定している。これにより、吸引流体が流体吸引口から吸引される際に生じる圧力損失を低減させて、吸引流体の流量を増加させることによって、エジェクタのエネルギ変換効率であるエジェクタ効率を向上させている。
また、特許文献2のエジェクタ式冷凍サイクルに適用されたエジェクタでは、ノズル部中心軸を含む断面における、ディフューザ部の断面形状の広がり角度を最適化して、ディフューザ部における昇圧量ΔPを増加させることによって、エジェクタ効率ηeを向上させている。
また、特許文献3に記載されたエジェクタでは、ノズル部中心軸を含む軸方向断面におけるディフューザ部の断面形状を角部のない滑らかな曲線で構成することで、ディフューザ部における渦損失等のエネルギ損失を抑制して、エジェクタ効率ηeを向上させている。
なお、上記の従来技術におけるエジェクタ効率ηeとは、以下の式F1で定義されるものである。
ηe=(1+Ge/Gnoz)×(ΔP/ρ)/Δi…(F1)
ここで、Geは吸引流体の流量、Gnozは噴射流体の流量、ΔPはディフューザ部における昇圧量、ρは吸引流体の密度、そして、Δiはノズル部出入口間の流体のエンタルピ差である。
特開2004−340136号公報 特開2003−14318号公報 特開2004−116807号公報
ところで、特許文献1には、吸引流体が流体吸引口から吸引される際に生じる圧力損失を低減させることについては記載されているものの、吸引流体を流体吸引口から混合部へ導く流体通路の入口空間よりも下流側の流体通路、すなわち、流体吸引口から流入した吸引流体を混合部入口へ導く吸引通路の圧力損失について何ら記載されていない。
しかしながら、吸引通路の圧力損失が増加してしまうと、吸引流体の流量が低下してしまうだけでなく、混合部およびディフューザ部を通過する流体が気液二相状態になっていると、気相流体と液相流体との密度差に起因する慣性力の違いによって、混合部にて噴射流体と吸引流体とを均質な状態に混合させることができなくなる。
そのため、ディフューザ部にて不均質な状態の流体の運動エネルギを圧力エネルギに変換することとなり、エジェクタ効率ηeを十分に向上させることができなくなってしまう。なお、均質な状態の流体とは、完全に気相状態の流体、完全に液相状態の流体、さらに、気相流体の流速および液相流体の流速が略等速となって均質に混合された気液二相状態の流体を含む意味である。
また、特許文献2、3では、いずれも混合部およびディフューザ部に均質な状態の流体が通過することを前提として、エジェクタ効率ηeの向上を狙っている。しかしながら、前述の如く、実際のエジェクタでは、混合部およびディフューザ部を通過する流体が気液二相状態になっていると、この流体を均質な状態とすることは難しい。
そのため、特許文献2、3に記載されたエジェクタでは、混合部およびディフューザ部を通過する流体が気液二相状態になっていると、エジェクタ効率ηeを十分に向上させることができない。
上記点に鑑み、本発明は、気液二相状態の流体の運動エネルギを圧力エネルギに変換するエジェクタにおいて、エジェクタ効率ηeを十分に向上させることを目的とする。
本発明は、以下の解析的知見に基づいて案出されたものである。前述の従来技術におけるエジェクタ効率ηeの定義から明らかなように、エジェクタは、ノズル部にて等エントロピ的に流体を減圧膨張させることによって、減圧膨張時に損失されるエネルギを回収して、回収されたエネルギ(以下、回収エネルギという。)を圧力エネルギに変換している。
従って、回収エネルギの全てを圧力エネルギに変換することができれば、エジェクタ効率ηeを最大値とすることができる。そこで、本発明者らは、混合部の入口における回収エネルギ(すなわち、流体の昇圧に利用できるエネルギ)が実際のエジェクタにおいて、どのように利用されているかについて調査検討を行った。
図24は、その検討結果である。図24から明らかなように、流体の昇圧に利用できるエネルギのうち、実際に昇圧に利用されたエネルギは20%程度であり、残りのエネルギは昇圧に利用されていない。また、昇圧に利用されていない残りのエネルギの内訳としては、例えば、圧力エネルギに変換されずにディフューザ部から流出する流体の流速として残る残存運動エネルギや、その他の損失がある。
そして、その他の損失としては、具体的には、ディフューザ部における圧力損失、ディフューザ部の壁面摩擦による損失等の他に、ディフューザ部を通過する気相流体と液相流体とのエネルギ伝達損失等がある。なお、気相流体と液相流体とのエネルギ伝達損失とは、液相流体の持つ運動エネルギを気相流体に伝達する際に生じるエネルギ損失であり、図24に示すように、このエネルギ伝達損失の占める割合は大きい。
そこで、本発明者らは、この気相流体と液相流体とのエネルギ伝達損失を抑制することで、エジェクタ効率ηeを向上させることができることに着眼し、ディフューザ部において、気相流体よりも速度の速い液相流体から、液相流体よりも速度の遅い気相流体へ効果的にエネルギ伝達を行うための検討を行った。
ここで、閉空間において自由落下する剛体について考える。自由落下する剛体は、重力加速度によって鉛直下方の速度を増加させる。その後、剛体の速度は、周囲の空気から受ける抗力と釣り合って、一定の終端速度(ターミナルベロシティ)に到達する。
換言すると、終端速度に到達した剛体は、周囲の空気に対して、剛体が受ける抗力に相当する力を反作用として作用させている。さらに、終端速度に到達した剛体は、それ以上に増速されることはないので、剛体から周囲の空気が受ける剛体の進行方向の力は、剛体が終端速度に達したときに最大となる。
このことは、剛体を速やかに終端速度に到達させれば、剛体の持つ運動エネルギを速やかに周囲空気へ伝達できることを意味している。そこで、本発明者らは、図25に示すように、上記の剛体をディフューザ部を通過する液相流体の粒に対応するものとし、さらに、周囲の空気をディフューザ部を通過する気相流体に対応するものとしてディフューザ部を通過する気相流体と液相流体との効率的なエネルギ伝達を検討した。
なお、図25は、従来技術のエジェクタ内部における気相流体の流速および液相流体の流速の変化を示すグラフである。図25の実線に示すように、ノズル部では、気相流体と液相流体との密度差に起因する慣性力の違いによって、気相流体の流速が液相流体よりも大幅に速くなる。このため、混合部に流入する噴射流体と吸引流体との混合流体についても、液相流体に対して気相流体の流速が早くなる。
従って、混合部に流入した液相流体の粒は、その周囲の気相流体に引きずられて加速される。その後、液相流体の粒の流速は、気相流体の流速と等しくなり、液相流体の粒の流速は加速されることがなくなる。つまり、液相流体の粒の流速が、上述の終端速度に相当する速度(ターミナルベロシティ)に到達した状態になる。
そして、ターミナルベロシティに到達した液相流体の粒は、その周囲の気相流体に対して、上述の抗力に相当する力を反作用として作用させながら、その流速を低下させていく。この際、液相流体の粒から気相流体に運動量が伝達されて、液相流体の粒が気相流体に与える力積の合計値が、気相流体の昇圧量(圧力エネルギ)となる。
従って、混合部に流入した液相流体の粒を速やかにターミナルベロシティに到達させれば、液相流体の持つ運動エネルギを速やかに気相流体へ伝達できる。そして、液相流体の粒の流速がターミナルベロシティに到達した後に、流体の運動エネルギを圧力エネルギに変換すれば、効率的に液相流体の運動エネルギを気相流体へ伝達できる。さらに、液相流体の粒のターミナルベロシティ自体を増加させれば、より一層、気相流体の昇圧量を増加させてエジェクタ効率ηeを向上させることができる。
以上のことから、本発明者らは、図25の破線に示すように、混合部へ流入する気相流体の流速を増加させて、液相流体の粒のターミナルベロシティを増加させること、および、液相流体の粒の流速を速やかにターミナルベロシティへ到達させた後に、流体の運動エネルギを圧力エネルギに変換することで、気相流体と液相流体とのエネルギ伝達損失を抑制し、エジェクタ効率ηeを飛躍的に向上できることを見出した。
そこで、請求項1に記載の発明では、気液二相状態、液相状態および超臨界状態のうちいずれか1つの状態の冷媒を減圧膨張させるノズル部(16a)と、ノズル部(16a)から噴射される高速度の噴射冷媒によって気相状態あるいは気液二相状態の冷媒を吸引する冷媒吸引口(16d)ノズル部(16a)から噴射された噴射冷媒冷媒吸引口(16d)から吸引された吸引冷媒とを混合させながら、混合された気液二相状態の冷媒の運動エネルギを圧力エネルギに変換する混合昇圧部(16e)、および、冷媒吸引口(16d)から内部へ流入した吸引冷媒を混合部(16e)入口へ導く吸引通路(16i)が形成されたボデー部(16b)とを備え、混合昇圧部(16e)のうち冷媒入口側には、冷媒通路面積が一定に形成されたストレート部(16g)が設けられ、さらに、混合昇圧部(16e)のうちストレート部(16g)の冷媒流れ下流側には、冷媒通路面積が徐々に拡大する拡大部(16h)が設けられたエジェクタであって、
ノズル部(16a)中心軸を含む断面における拡大部(16h)の断面形状が、直線および曲線を組み合わせて形成されているとともに、拡大部(16h)の入口側における冷媒通路面積の広がり度合が、拡大部(16h)の出口側における冷媒通路面積の広がり度合よりも大きくなっていることによって、混合昇圧部(16e)では、冷媒を等エントロピ的に昇圧させるようになっており、さらに、吸引通路(16i)の冷媒通路面積が、混合昇圧部(16e)へ流入する吸引冷媒の流速が噴射冷媒の流速と同等となるように、吸引冷媒の流れ方向に向かって徐々に縮小していることによって、ストレート部(16g)が、混合昇圧部(16e)の冷媒入口から、混合昇圧部(16e)を流れる冷媒のうち気相冷媒の流速および液相冷媒の流速が等速になる部位へ至る範囲に設けられていることを特徴とする。
これによれば、混合昇圧部(16e)のうち流体入口側に、ストレート部(16g)が設けられているので、ストレート部(16g)において、液相流体の粒に気相流体からの力を効率的に作用させて、液相流体の粒の流速を速やかにターミナルベロシティに到達させることができる。その結果、拡大部(16h)における気相流体と液相流体とのエネルギ伝達損失を抑制でき、エジェクタ効率ηeを十分に向上させることができる。
さらに、ノズル部(16a)中心軸を含む断面における拡大部(16h)の断面形状が、直線および曲線を組み合わせて形成されているとともに、拡大部(16h)の入口側における冷媒通路面積の広がり度合が、拡大部(16h)の出口側における冷媒通路面積の広がり度合よりも大きくなっていることによって、混合昇圧部(16e)では、冷媒を等エントロピ的に昇圧させるので、混合昇圧部(16e)におけるエネルギ損失を抑制して、より一層、エジェクタ効率ηeを向上させることができる。
具体的には、請求項1ないし4のいずれか1つに記載のエジェクタにおいて、請求項5に記載の発明のように、ノズル部(16a)中心軸を含む断面における拡大部(16h)の断面形状は、直線状に形成されていてもよい。
なお、ノズル部(16a)中心軸を含む断面における拡大部(16h)の断面形状は、曲線状に形成されていてもよい。
また、ノズル部(16a)中心軸を含む断面における拡大部(16h)の断面形状は、複数の直線を組み合わせて形成されていてもよい。
さらに、拡大部(16h)の入口側における冷媒通路面積の広がり度合、拡大部の出口側における冷媒通路面積の広がり度合よりも大きくなっている。
これにより、混合昇圧部(16e)の出口部における冷媒の剥離を抑制して、混合昇圧部(16e)の出口部におけるエネルギ損失を抑制できる。その結果、より一層、エジェクタ効率ηeを向上させることができる。
ここで、本請求項における流体通路面積の広がり度合とは、混合昇圧部(16e)における流体流れ方向の単位距離あたりの流体通路面積の拡大量を意味している。
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
(第1実施形態)
図1〜7により、本発明の第1実施形態を説明する。本実施形態では、本発明のエジェクタ16を、車両用空調装置に用いられるエジェクタ式冷凍サイクル10に適用している。図1は、このエジェクタ式冷凍サイクル10の全体構成図である。
まず、エジェクタ式冷凍サイクル10において、圧縮機11は、冷媒を吸入して圧縮するもので、プーリおよびベルトを介して車両走行用エンジン(図示せず)から駆動力が伝達されて回転駆動される。
この圧縮機11としては、吐出容量の変化により冷媒吐出能力を調整できる可変容量型圧縮機、あるいは、電磁クラッチの断続により圧縮機作動の稼働率を変化させて冷媒吐出能力を調整する固定容量型圧縮機のいずれを採用してもよい。また、圧縮機11として電動圧縮機を使用すれば、電動モータの回転数調整により冷媒吐出能力を調整できる。
圧縮機11の冷媒吐出側には、放熱器12が接続されている。放熱器12は、圧縮機11から吐出された高圧冷媒と冷却ファン12aにより送風される外気(車室外空気)とを熱交換させて、高圧冷媒を放熱させる放熱用熱交換器である。冷却ファン12aは、図示しない空調制御装置から出力される制御電圧によって回転数(送風空気量)が制御される電動式送風機である。
なお、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10では、冷媒として通常のフロン系冷媒を採用し、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない亜臨界冷凍サイクルを構成している。従って、放熱器12は冷媒を凝縮させる凝縮器として機能する。
放熱器12の下流側には、レシーバ12bが接続されている。このレシーバ12bは、放熱器12から流出した冷媒の気液を分離して余剰液相冷媒を溜めておく気液分離器である。なお、本実施形態では、放熱器12とレシーバ12bとを一体的に構成しているが、放熱器12とレシーバ12bとを別体に構成してもよい。
レシーバ12bの液相冷媒出口には、レシーバ12bから流出した液相冷媒の流れを分岐する分岐部13が接続されている。分岐部13は、3つの流入出口を有する三方継手で構成されており、流入出口のうち1つを冷媒流入口とし、2つを冷媒流出口としたものである。このような三方継手は、管径の異なる配管を接合して構成してもよいし、金属ブロックや樹脂ブロックに通路径の異なる複数の冷媒通路を設けて構成してもよい。
そして、この分岐部13において分岐された一方の冷媒は、分岐部13と後述するエジェクタ16のノズル部16a側とを接続するノズル部側配管14aへ流入し、他方の冷媒は、分岐部13とエジェクタ16の冷媒吸引口16d側とを接続する吸引口側配管14bへ流入する。
ノズル部側配管14aには、可変絞り機構である膨張弁15が設けられている。この膨張弁15は、レシーバ12bから流出した高圧液相冷媒を気液二相状態の中間圧冷媒に減圧する減圧手段であるとともに、膨張弁15下流側へ流出させる冷媒の流量を調整する流量調整手段でもある。
なお、本実施形態では、膨張弁15として周知の温度式膨張弁を採用している。具体的には、この温度式膨張弁は、後述する第1蒸発器17出口側冷媒通路に配置された感温部15aを有しており、第1蒸発器17出口側冷媒の温度と圧力とに基づいて第1蒸発器17出口側冷媒の過熱度を検出し、第1蒸発器17出口側冷媒の過熱度が予め設定された所定値となるように機械的機構により弁開度(冷媒流量)を調整する。
膨張弁15の冷媒出口側には、エジェクタ16が接続されている。このエジェクタ16は、高圧冷媒を減圧する減圧手段の機能を果たすとともに、高速で噴出する冷媒流の吸引作用によって冷媒の循環を行う冷媒循環手段としての機能を果たす。エジェクタ16の詳細構成については、図2〜4により説明する。
なお、図2(a)はエジェクタ16の軸方向断面図であり、(b)は(a)のA−A断面図であり、(c)は(a)のB−B断面図である。より具体的には、(b)は、後述する吸引通路16iの入口部の断面であり、(c)は、吸引通路16iの出口部の断面図である。
本実施形態のエジェクタ16は、ノズル部16aおよびボデー部16bを有して構成されている。ノズル部16aは、ステンレス合金等の金属で形成されており、略円筒状で冷媒の流れ方向に向かって先細り形状の先端部を有し、この形状に沿って冷媒通路面積を変化させ、冷媒を等エントロピ的に減圧膨張させるようになっている。
従って、ノズル部16aの先細り形状の先端部には、冷媒を噴射する冷媒噴射口16cが形成されている。また、ノズル部16aは、ボデー部16bの内部に収容されるように、圧入等の方法で固定されており、圧入部(固定部)から冷媒が漏れることを防止している。もちろん、固定部からの冷媒漏れを防止できれば、接着、溶接、圧接、はんだ付け等の接合手段で接合・固定してもよい。
なお、本実施形態のノズル部16aは、冷媒通路の途中に通路面積が最も縮小した喉部を有するラバールノズルで構成されており、ノズル部16aから噴射される噴射冷媒の流速は音速以上となる。もちろん、ノズル部16aを先細ノズルで構成してもよい。
ボデー部16bは、アルミニウム等の金属で形成されており、略円筒状の形状になっており、その内部にノズル部16aを支持固定するとともに、ボデー部16bの内外を貫通する冷媒吸引口16d、混合昇圧部16eが形成されている。もちろん、上記の各部位16d、16eを形成できれば、金属以外の物質(具体的には樹脂等)で形成されていてもよい。
冷媒吸引口16dは、後述する第2蒸発器19下流側冷媒を、ボデー部16b内部に吸引する吸引口であり、ノズル部16aの外周側に配置され、ノズル部16aの冷媒噴射口16cと連通するように設けられている。
従って、ボデー部16b内部の冷媒吸引口16d周辺には、冷媒を流入させる入口空間が形成され、ノズル部16aの先細り形状の先端部周辺の外周側とボデー部16bの内周側の間の空間には、ボデー部16bの内部へ流入した吸引冷媒を混合昇圧部16e入口へ導く吸引通路16iが形成されている。
さらに、本実施形態では、図2(c)に示す吸引通路16iの出口部の冷媒通路面積Aoutが、図2(b)に示す吸引通路16iの入口部の冷媒通路面積Ainよりも小さく形成されている。そして、図3に示すように、吸引通路16iの冷媒通路面積比は、吸引通路16iを流れる冷媒の流れ方向に向かって徐々に縮小するように変化している。
なお、図3は、吸引通路16iの入口部(図2(b)に示すA−A断面位置に相当)から出口部(図2(c)に示すB−B断面位置に相当)へ至る吸引通路16iのAinに対する冷媒通路面積比の変化を示すグラフである。より具体的には、図3に示すように、吸引通路16iの入口側の冷媒通路面積の縮小度合は、出口側の冷媒通路面積の縮小度合よりも大きく形成されている。
つまり、吸引通路16iの入口部から略中間位置に至る範囲では、吸引通路16iの入口から出口に至る平均的な縮小度合よりも冷媒通路面積が急に縮小して、略中間位置から出口に至る範囲では、緩やかに縮小している。換言すると、図3のグラフでは、破線で示す吸引通路16iの入口部における冷媒通路面積と出口部における冷媒通路面積とを結ぶ線に対して、下に凸となるように変化している。
本実施形態では、吸引通路16iの冷媒通路面積を上述の如く変化させることによって、吸引通路16iを通過する吸引冷媒の流速を音速以上となるようにしている。換言すると、混合昇圧部16eへ流入する吸引冷媒の流速が、混合昇圧部16eへ流入するノズル部16aからの噴射冷媒の流速と同等となるようにしている。これにより、吸引通路16iでは、吸引冷媒を等エンタルピ的に減圧させる。
混合昇圧部16eは、図2に示すように、ノズル部16aおよび冷媒吸引口16dの冷媒流れ下流側に配置されて、ノズル部16aから噴射された噴射冷媒と冷媒吸引口16dから吸引された吸引冷媒とを混合させながら混合された気液二相状態の冷媒の運動エネルギを圧力エネルギに変換するものである。
混合昇圧部16eのうち冷媒入口側には、冷媒通路面積が一定に形成されたストレート部16gが設けられ、混合昇圧部16eのうちストレート部16gの冷媒流れ下流側には、冷媒通路面積が徐々に拡大する拡大部16hが設けられている。
このストレート部16gは、混合昇圧部16eの冷媒入口から、混合昇圧部16eを流れる冷媒のうち気相冷媒の流速および液相冷媒の流速が略等速となる部位へ至る範囲に設けられている。より具体的には、ストレート部16gのノズル部16a中心軸方向の長さをL1とし、混合昇圧部16eの冷媒入口から冷媒出口に至るノズル部16a中心軸方向の長さをL2としたときに、L1/L2が0.2程度となるように設けられている。
また、図2の断面における拡大部16hの冷媒流路形状は、図4に示すように、曲線状に変化している。より具体的には、拡大部16hの入口側における冷媒通路面積の広がり度合が、出口側における冷媒通路面積の広がり度合よりも大きくなるように変化している。つまり、拡大部16hの入口側では、拡大部16hの入口から出口に至る平均的な広がり度合よりも冷媒通路面積が急に拡大して、出口側では、緩やかに拡大している。
換言すると、拡大部16hの入口側の冷媒通路の断面形状は、内周側に向かって凸となる曲線101で形成され、出口側の冷媒通路の断面形状は、外周側に向かって凸となる曲線102で形成されている。そして、混合昇圧部16e全体として、冷媒を等エントロピ的に昇圧させるとともに、混合昇圧部16eの出口部における冷媒の剥離を抑制するように変化している。
これにより、混合昇圧部16eを通過する際の冷媒のエネルギ損失を抑制するとともに、混合昇圧部16eから流出する際の冷媒のエネルギ損失を抑制している。なお、図4は、混合昇圧部16eの冷媒流路形状を模式的に表したものである。つまり、図2における混合昇圧部16eの内壁面の断面形状である。さらに、図4の黒丸点は、断面形状を説明するために図示したものであって、実際の断面形状に黒丸点に相当する部位は存在しない。
エジェクタ16の混合昇圧部16eの下流側(具体的には、拡大部16hの出口側)には、図1に示すように、第1蒸発器17が接続されている。第1蒸発器17は、混合昇圧部16eから流出した冷媒と送風ファン17aより送風された送風空気とを熱交換させて、冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させる吸熱用熱交換器である。
送風ファン17aは、図示しない空調制御装置から出力される制御電圧によって回転数(送風空気量)が制御される電動式送風機である。さらに、第1蒸発器17の冷媒出口は圧縮機11の冷媒吸入口へ接続される。
次に、分岐部13にて分岐された他方の冷媒が流れる吸引口側配管14bは、絞り機構18および第2蒸発器19を介して、エジェクタ16の冷媒吸引口16dへ接続される。絞り機構18は第2蒸発器19に流入する冷媒を減圧する減圧手段であるとともに、第2蒸発器19に流入する冷媒の流量調整を行う流量調整手段でもある。この絞り機構18としては、キャピラリチューブ、オリフィス等の固定絞りを採用することができる。
第2蒸発器19は、絞り機構18から流出した冷媒と送風ファン19aより送風された送風空気とを熱交換させて、冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させる吸熱用熱交換器である。送風ファン19aは、送風ファン17aと同様の構成の電動式送風機である。
次に、図5のモリエル線図により、上記構成における本実施形態の作動を説明する。圧縮機11を車両エンジンにより駆動すると、圧縮機11から吐出された高温高圧状態の冷媒(図5の201点)は放熱器12に流入する。放熱器12では高温の冷媒が外気により冷却されて凝縮する(図5の201点→202点)。
放熱器12から流出した高圧冷媒はレシーバ12b内に流入し、このレシーバ12b内にて冷媒の気液が分離され、さらに、レシーバ12bから流出した液相冷媒は、分岐部13にてノズル部側配管14aへ流入する冷媒流れと吸引口側配管14bへ流入する冷媒流れとに分流される(図5の202点→203点)。
この際、本実施形態では、ノズル部側配管14aへ流入する冷媒流量Gnozと吸引口側配管14bへ流入する冷媒流量Geとの流量比Ge/Gnozは、膨張弁15、エジェクタ16のノズル部16aおよび絞り機構18の流量特性によって決定される。
そして、ノズル部側配管14aを介して膨張弁15へ流入した冷媒は、膨張弁15で減圧膨張および流量調整されてエジェクタ16へ流入する(図5の203点→204点)。ここで、膨張弁15は、第1蒸発器17出口側冷媒(図5の208点)の過熱度が予め定めた値に近づくように、膨張弁15の通過冷媒流量を調整する。
エジェクタ16に流入した冷媒流れはノズル部16aでさらに減圧されて膨張する(図5の204点→205点)。そして、ノズル部16aで冷媒の圧力エネルギが速度エネルギに変換され、冷媒噴射口16cから冷媒が高速度となって噴射される。この際、噴射冷媒の吸引作用により、冷媒吸引口16dから第2蒸発器19通過後の冷媒が吸引される。
ノズル部16aから噴射された噴射冷媒と冷媒吸引口16dより吸引された吸引冷媒は、ノズル部16a下流側の混合昇圧部16eに流入する。混合昇圧部16eでは噴射冷媒および噴射冷媒が混合されるとともに、冷媒通路面積の拡大により、冷媒の速度エネルギが圧力エネルギに変換されるため、冷媒の圧力が上昇する(図5の205点→206点→207点)。
混合昇圧部16eから流出した冷媒は第1蒸発器17に流入する。第1蒸発器17では、流入した低圧冷媒が送風ファン17aの送風空気から吸熱して蒸発する(図5の207点→208点)。これにより、送風ファン17aの送風空気が冷却されて車室内へ送風される。そして、第1蒸発器17から流出した気相冷媒は、圧縮機11に吸入され再び圧縮される(図5の208点→201点)。
一方、吸引口側配管14bに流入した冷媒流れは、絞り機構18で減圧膨張されて低圧冷媒となり、この低圧冷媒が第2蒸発器19に流入する(図5の203点→209点)。第2蒸発器19では、流入した低圧冷媒が送風ファン19aの送風空気から吸熱して蒸発する(図5の209点→210点)。これにより、送風ファン17aの送風空気が冷却されて車室内へ送風される。
第2蒸発器19通過後の冷媒は冷媒吸引口16dからエジェクタ16内へ吸引されて、吸引通路16iを介して混合昇圧部16eへ流入する。この際、本実施形態では、図5の破線で囲まれた拡大部に示すように、吸引通路16iを通過する吸引冷媒の流速が音速以上となり、吸引通路16iを通過する吸引冷媒が等エンタルピ的に減圧される(図5の210点→210’点)。
さらに、混合昇圧部16eへ流入した吸引冷媒は、混合昇圧部16eにてノズル部16aから噴射された噴射冷媒と混合して(図5の210’点→206点)、第1蒸発器17に流入していく。
以上の如く、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10では、エジェクタ16の混合昇圧部16e下流側冷媒を第1蒸発器17に供給できるとともに、吸引口側配管14b側の冷媒を絞り機構18を介して第2蒸発器19にも供給できるので、第1蒸発器17および第2蒸発器19で同時に冷却作用を発揮できる。
さらに、第1蒸発器17下流側を圧縮機11吸入側に接続しているので、混合昇圧部16eで昇圧された冷媒を圧縮機11に吸入させることができる。その結果、圧縮機11の吸入圧を上昇させて、圧縮機11の駆動動力を低減することができ、サイクルの成績係数(COP)を向上させることができる。
さらに、本実施形態のエジェクタ16では、吸引冷媒の流速が音速以上となるように吸引通路16iを形成し、換言すると、混合昇圧部16eへ流入する吸引冷媒の流速が混合昇圧部16eへ流入する噴射冷媒の流速と同等となるように吸引通路16iを形成し、吸引冷媒を等エントロピ的に減圧させている。従って、吸引冷媒が吸引通路16iを通過する際のエネルギ損失を低減させながら、吸引冷媒の流速を増速させることができる。
これにより、混合昇圧部16eのストレート部16gへ流入する気相冷媒の速度を増加させることができ、ストレート部16gへ流入した液相冷媒の粒のターミナルベロシティを増加させることができる。
その結果、気液二相状態の冷媒が混合昇圧部16eを通過するエジェクタ、すなわち気液二相状態の冷媒の運動エネルギを圧力エネルギに変換するエジェクタ16において、混合昇圧部16eにおける気相冷媒の昇圧量を増加させてエジェクタ効率ηeを十分に向上させることができる。
このことをより詳細に説明すると、本実施形態では、吸引冷媒を等エントロピ的に減圧させることで、図5の破線で囲まれた拡大部に示すように、吸引通路16iにて、冷媒を等エンタルピ的に減圧させてしまう場合に対して、ΔHの分だけ冷媒の昇圧に利用できるエネルギを増加させることができる。従って、ディフューザ部16fの昇圧量を、ΔHの分に対応する量だけ増加させることができる。
その結果、従来技術では式F1のように定義していたエジェクタ効率ηeを、本実施形態では以下の式F2のように定義することができる。
ηe’=((Gnoz+Ge)×(ΔP/ρ))/(Gnoz×Δi+Ge×ΔH)…(F2)
つまり、式F1に対して、分母側(回収エネルギ側)に吸引通路16iにおける膨張エネルギの項(Ge×ΔH)を追加できる。
従って、式F1で定義されるエジェクタ効率ηeと同一の効率ηe’を得られるようにエジェクタ16の各寸法諸元を決定すれば、回収エネルギが増加した分だけ昇圧量ΔPが増加させることができ、従来技術に対して、エジェクタ効率ηeを十分に向上させることができる。
さらに、本実施形態のエジェクタ16では、混合昇圧部16eのうち冷媒入口側に、ストレート部16gが設けられているので、ストレート部16gにおいて、液相冷媒の粒に気相冷媒からの力を効率的に作用させることができ、液相冷媒の粒の流速を速やかにターミナルベロシティに到達させることができる。
そして、ターミナルベロシティに到達した液相冷媒の運動エネルギを拡大部16hにて気相冷媒へ効果的に伝達することができる。その結果、拡大部16hにおける気相冷媒と液相冷媒とのエネルギ伝達損失を抑制でき、より一層、エジェクタ効率ηeを十分に向上させることができる。
このことを図6に基づいてより詳細に説明する。なお、図6(a)は、本実施形態の混合昇圧部16eの入口部から出口部へ至る各部位における、気相冷媒の流速(実線)および液相冷媒の流速(破線)、および、冷媒の圧力(二点鎖線)の変化を示しており、図6(b)は、従来技術における混合部の入口側から昇圧部(ディフューザ部)の出口側へ至る各部位における、気相冷媒および液相冷媒の流速および圧力の変化を示している。
図6に示すように、本実施形態では、ストレート部16gが、混合昇圧部16eの冷媒入口から、混合昇圧部16eを流れる冷媒のうち気相冷媒の流速および液相冷媒の流速が等速になる部位へ至る範囲に設けられているので、ターミナルベロシティに到達した直後の冷媒の運動エネルギを、拡大部16hにて圧力エネルギに変換できる。
この際、液相冷媒の流速がターミナルベロシティに到達しているので、拡大部16hにおける気相冷媒と液相冷媒とのエネルギ伝達損失を抑制できる。これにより、拡大部16hの出口部における液相冷媒および液相冷媒の流速を十分に低下させることができる。つまり、冷媒の昇圧に利用できるエネルギうち、実際に昇圧に利用されるエネルギの割合を増加させることができる。
その結果、図6に示すように、混合昇圧部16eにおける冷媒の昇圧量ΔPを、従来技術に対して大幅に増加させることができ、エジェクタ効率ηeを十分に向上できる。
さらに、本発明者等の検討によれば、ストレート部16gのノズル部16a中心軸方向の長さをL1とし、混合昇圧部16eの冷媒入口から冷媒出口に至るノズル部16a中心軸方向の長さをL2としたときに、L1/L2が0.2程度となるようにすれば、昇圧量ΔPが最大となることが判明している。
このことは、L1/L2を0.2程度とすれば、ストレート部16gから流出する冷媒のうち気相冷媒の流速および液相冷媒の流速が略等速となることを意味する。さらに、エジェクタ16の製造誤差、エジェクタ式冷凍サイクル10を循環する冷媒流量の変動を勘案すると、0<L1/L2≦0.4とすれば、十分にエジェクタ効率ηeを向上できる。より好ましくは、0.1≦L1/L2≦0.3とすればよい。
また、0<L1/L2≦0.4の範囲であれば、混合昇圧部16eを通過する気液二相状態の冷媒の気液密度差が0.9〜600kg/m3程度の幅広い範囲において、エジェクタ効率ηeを十分に向上させることができる。
さらに、本実施形態では、混合昇圧部16e全体として、冷媒を等エントロピ的に昇圧させるとともに、混合昇圧部16eの出口部における断面形状が冷媒の剥離を抑制するように変化しているので、混合昇圧部16eを通過する冷媒のエネルギ損失を抑制できるとともに、混合昇圧部16eから流出する冷媒のエネルギ損失を抑制できる。
その結果、冷媒の昇圧に利用できる回収エネルギのうち、実際に昇圧に利用されるエネルギの割合を増加させることができ、図7に示すように、従来技術に対して飛躍的にエジェクタ効率ηeを向上できる。
(第2実施形態)
本実施形態では、第1実施形態に対して、図8に示すように、吸引通路16iの冷媒通路面積を変化させている。なお、図8は、第1実施形態の図3に対応する図面である。より具体的には、本実施形態では、吸引通路16iの入口側から出口側に至る冷媒通路面積の縮小度合は一定の度合で変化している。その他の構成は、第1実施形態と同様である。
本実施形態の構成においても、混合昇圧部16eのストレート部16gへ流入する吸引冷媒の流速が音速以上となるように吸引通路16iを形成し、吸引冷媒を等エントロピ的に減圧させることで、ストレート部16gへ流入した液相冷媒の粒のターミナルベロシティを増加させて、エジェクタ効率ηeを十分に向上させることができる。
(第3実施形態)
本実施形態では、第1実施形態に対して、図9に示すように、吸引通路16iの冷媒通路面積を変化させている。なお、図9は、第1実施形態の図3に対応する図面である。より具体的には、本実施形態では、吸引通路16iの入口側の冷媒通路面積は、吸引冷媒の流れ方向に向かって徐々に縮小しており、さらに、出口側の冷媒通路面積は、吸引冷媒の流れ方向に向かって徐々に拡大している。
本実施形態の構成では、吸引通路16iのうち最も冷媒通路面積が縮小する部位で、吸引冷媒の流速が音速以上となるように吸引通路16iを形成することで、吸引通路16iのうち最も冷媒通路面積が縮小する部位の下流側で、吸引冷媒を増速させることができる。その結果、ストレート部16gへ流入した液相冷媒の粒のターミナルベロシティを増加させて、エジェクタ効率ηeを十分に向上させることができる。
(第4実施形態)
本実施形態では、第1実施形態に対して、図10に示すように、ノズル部16a中心軸を含む断面における拡大部16hの冷媒通路断面形状を、複数の直線103〜107を組み合わせて形成したものである。換言すると、拡大部16hの冷媒通路形状は、複数のテーパ面によって形成されている。その他の構成は第1実施形態と同様である。なお、図10は、第1実施形態の図4に対応する図面である。
本実施形態のように拡大部16hを構成しても、気相流体と液相流体とのエネルギ伝達損失を抑制することができ、十分にエジェクタ効率ηeを向上させることができる。もちろん、本実施形態の拡大部16hの構成を第2、3実施形態に適用してもよい。
(第5実施形態)
本実施形態では、第1実施形態に対して、図11に示すように、ノズル部16a中心軸を含む断面における拡大部16hの冷媒通路断面形状を、複数の直線103〜105と曲線102を組み合わせて形成したものである。なお、図11は、第1実施形態の図4に対応する図面である。その他の構成は第1実施形態と同様である。
本実施形態のように拡大部16hを構成しても、気相流体と液相流体とのエネルギ伝達損失を抑制することができ、十分にエジェクタ効率ηeを向上させることができる。もちろん、本実施形態の拡大部16hの構成を第2、3実施形態に適用してもよい。
(第6〜8実施形態)
第6実施形態では、第1実施形態に対して、図12に示すように、ノズル部16a中心軸を含む断面における拡大部16hの冷媒通路断面形状を、単一の直線108にて形成したものである。
また、第7実施形態では、第1実施形態に対して、図13に示すように、ノズル部16a中心軸を含む断面における拡大部16hの冷媒通路断面形状を、複数の直線103〜106、109を組み合わせて形成したものである。さらに、冷媒通路面積の広がり度合が、徐々に拡大するように変化している。
また、第8実施形態では、第1実施形態に対して、図14に示すように、ノズル部16a中心軸を含む断面における拡大部16hの冷媒通路断面積状を、冷媒通路面積の広がり度合が、徐々に拡大する曲線110にて形成したものである。なお、図12〜14は、第1実施形態の図4に対応する図面である。その他の構成は第1実施形態と同様である。
第6〜8実施形態のように拡大部16hを構成すると、第1〜5実施形態に対して、冷媒の剥離を抑制することによるエネルギ損失分は抑制できないものの、従来技術に対して、十分にエジェクタ効率ηeを向上させることができる。もちろん、第6〜8実施形態の拡大部16hの構成を第2、3実施形態に適用してもよい。
(第9実施形態)
上述の実施形態では、ノズル部16aの先端部周辺の外周側とボデー部16bの内周側の間の空間に、吸引通路16iを形成した例を説明したが、本実施形態では、図15に示すように、吸引側ノズル部16jによって吸引通路16iを構成している。
より具体的には、本実施形態では、吸引側ノズル部16jとしてラバールノズルを採用している。つまり、吸引側ノズル部16jの入口が冷媒吸引口16dとなり、吸引側ノズル部16j内部に形成される冷媒通路が吸引通路16iとなる。そして、吸引通路16iの冷媒通路面積の変化は、第3実施形態と同様に変化する。
従って、本実施形態のエジェクタ16においても、第3実施形態と同様の効果を得ることができる。もちろん、吸引側ノズル部16jとして、先細ノズルを採用して、第1、第2実施形態と同様に吸引通路16iの冷媒通路面積を変化させてもよい。
(第10実施形態)
上述の実施形態では、放熱器12およびレシーバ12bを設けたサイクルにエジェクタ16を適用した例を説明したが、本実施形態では、放熱器12として、いわゆるサブクールタイプの凝縮器を採用したサイクルにエジェクタ16を適用した例を説明する。
具体的には、サブクールタイプの凝縮器は、冷媒を凝縮させる凝縮用熱交換部と、この凝縮用熱交換部からの冷媒を導入して冷媒の気液を分離するレシーバ部と、このレシーバ部からの飽和液相冷媒を過冷却する過冷却用熱交換部とを有して構成される。その他のサイクル構成は、第1実施形態と同様である。
本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクルを作動させると、サイクル内を循環する冷媒の状態は、図16のモリエル線図に示すように変化する。つまり、本実施形態では、分岐部13にて分岐される冷媒は、過冷却状態の液相冷媒(図16の203’点)となる。
従って、膨張弁15から流出してエジェクタ16のノズル部16aへ流入する冷媒の状態が、膨張弁15の弁開度に応じて、気液二相状態(図16の204点)となる場合だけでなく、液相状態(図16の204’点)となる場合もある。なお、図16では、図5と同一もしくは均等部分には同一の符号を付している。このことは、以下の図面においても同様である。
これに対して、エジェクタ16では、上述の如く、吸引通路16iを通過する吸引冷媒の流速を増速させること、および、混合昇圧部16eのストレート部16gにて液相冷媒の粒の流速を速やかにターミナルベロシティに到達させるとともに拡大部16hにて液相冷媒および液相冷媒の流速を十分に低下させることによって、エジェクタ効率ηeを向上させている。
従って、ノズル部16aへ流入する冷媒が気液二相状態、液相状態のいずれの状態となるサイクルであっても、ノズル部16aから噴射される噴射冷媒と冷媒吸引口16dから吸引させる吸引冷媒との混合冷媒が気液二相状態となるサイクルに本実施形態のエジェクタ16を適用すれば、エジェクタ効率ηeを飛躍的に向上させることができる。
(第11実施形態)
上述の実施形態では、ノズル部側配管14aに膨張弁15を設けたサイクルにエジェクタ16を適用した例を説明したが、本実施形態では、膨張弁15を廃止したサイクルにエジェクタ16を適用した例について説明する。その他のサイクル構成は、第1実施形態と同様である。本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクルを作動させると、サイクル内を循環する冷媒の状態は、図17のモリエル線図に示すように変化する。
つまり、本実施形態では、分岐部13にて分岐された冷媒が、ノズル部側配管14aを介して、エジェクタ16のノズル部16aへ流入して減圧膨張される(図17の203点→205点)。このような構成のサイクルに本実施形態のエジェクタ16を適用しても、第1実施形態と同様に、エジェクタ効率ηeを飛躍的に向上させることができる。
さらに、レシーバ12bを廃止して、放熱器12から流出した気液二相状態(図17の202点)の冷媒を分岐部13で分岐するサイクル構成に適用してもよい。また、第10実施形態と同様に、放熱器12としてサブクールタイプの凝縮器を採用し、放熱器12から流出した液相冷媒(図17の203’点)の冷媒を分岐部13で分岐するサイクル構成に適用してもよい。
(第12実施形態)
上述の実施形態では、分岐部13からノズル部側配管14aへ流入する冷媒および吸引口側配管14bへ流入する冷媒の双方が同じ状態となるサイクルにエジェクタ16を適用した例を説明したが、本実施形態では、レシーバ12bを廃止し、膨張弁15を分岐部13の上流側に配置し、さらに、分岐部13にて双方の冷媒の状態(具体的には、乾き度)を変化させるサイクルにエジェクタ16を適用した例を説明する。
なお、分岐部13にて双方の冷媒の状態を変化させるサイクルは、以下のような分岐部13を採用することで構成できる。例えば、分岐部13の内部に放熱器12から流入した冷媒に旋回流れを発生させる内部空間を設け、この旋回流れによって生じる遠心力の作用によって、内部空間内の冷媒に乾き度分布を生じさせる。
そして、内部空間から所望の乾き度の冷媒を取り出せるように、ノズル部側配管14aおよび吸引口側配管14bを接続することで、分岐された双方の冷媒の乾き度を変化させることができる。このような分岐部13の構成は、特開2007−46806号公報等を参照できる。
従って、本実施形態のサイクル構成のエジェクタ式冷凍サイクルを作動させると、サイクル内を循環する冷媒の状態は、図18あるいは図19のモリエル線図に示すように変化する。つまり、ノズル部へ流入する冷媒が、気液二相状態(図18の203’’点)となる場合、あるいは、液相状態(図19の203’)となる。
このようなサイクル構成であっても、本実施形態のエジェクタ16によれば、第10実施形態と同様に、エジェクタ効率ηeを飛躍的に向上させることができる。
(第13実施形態)
上述の実施形態では、亜臨界冷凍サイクルを構成するサイクルにエジェクタ16を適用した例を説明したが、本実施形態では、冷媒として二酸化炭素を採用し、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超える超臨界冷凍サイクルを構成するエジェクタ式冷凍サイクル10にエジェクタ16を適用した例を説明する。
本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10では、図20の全体構成図に示すように、第1実施形態に対して、レシーバ12bおよび膨張弁15を廃止し、絞り機構18として、サイクルの高圧側冷媒圧力を放熱器12出口側冷媒の温度に応じて決定される目標高圧に調整する高圧制御弁を採用している。
具体的には、この高圧制御弁は、放熱器12の出口側に設けられた感温部18aを有し、この感温部18aの内部に放熱器12出口側冷媒の温度に対応した圧力を発生させ、感温部18aの内圧と放熱器12出口側冷媒の圧力とのバランスで弁開度を変化させることで、高圧側冷媒圧力をCOPが略最大となる目標高圧に調整するものである。
さらに、本実施形態では、第1蒸発器17の出口側に冷媒の気液を分離して余剰液相冷媒を蓄える低圧側気液分離器であるアキュムレータ20を配置している。その他の構成は、第1実施形態と同様である。
従って、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10を作動させると、図21のモリエル線図に示すように、圧縮機11にて冷媒が臨界圧力以上となるまで圧縮されて(図21の201点)、放熱器12へ流入する。
放熱器12では冷媒が外気により超臨界状態のまま冷却され(図21の201点→202点)、放熱器12から流出した高圧冷媒は、分岐部13にてノズル部側配管14aへ流入する冷媒流れと吸引口側配管14bへ流入する冷媒流れとに分流される。
ノズル部側配管14aへ流入した冷媒は、第1実施形態と同様に、エジェクタ16→第1蒸発器17の順に流れ、アキュムレータ20へ流入する(図21の202点→205点→206点→207点→208点)。アキュムレータ20にて分離された気相冷媒は、再び圧縮機11へ吸引される。
一方、吸引口側配管14bへ流入した冷媒は、絞り機構18(高圧制御弁)→第2蒸発器19の順に流れ、エジェクタ16の冷媒吸引口16dから吸引される(図21の202点→209点→210点→210’点→206点)。この際、絞り機構18(高圧制御弁)は、COPが略最大となる目標高圧に近づくように、圧縮機11吐出口からエジェクタ16のノズル部16a入口および絞り機構18入口へ至る高圧側冷媒圧力を調整する。
本実施形態のように、エジェクタ16のノズル部16aに超臨界状態の冷媒が流入するサイクルであっても、第10実施形態と同様に、エジェクタ効率ηeを飛躍的に向上させることができる。
つまり、ノズル部16aへ流入する冷媒が超臨界状態となるサイクルであっても、ノズル部16aから噴射される噴射冷媒と冷媒吸引口16dから吸引させる吸引冷媒との混合冷媒が気液二相状態となるサイクルに本実施形態のエジェクタ16を適用すれば、エジェクタ効率ηeを飛躍的に向上させることができる。
換言すると、少なくとも噴射冷媒が気液二相状態となるサイクル、あるいは、ノズル部16dの喉部より下流側の冷媒が気液二相状態となるサイクルに対して、各実施形態で説明したエジェクタ16を採用することで、エジェクタ効率ηeを飛躍的に向上させることができる。
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、以下のように種々変形可能である。
(1)上述の実施形態では、ノズル部16aの上流側で冷媒の流れを分岐するエジェクタ式冷凍サイクル10に、エジェクタ16を適用した例を説明したが、本発明の適用はこれに限定されない。
例えば、図22に示すように、分岐部13、吸引口側配管14bおよび第1蒸発器17を廃止して、エジェクタ16のディフューザ部16fの下流側に第13実施形態と同様のアキュムレータ20を配置し、第2蒸発器19には、アキュムレータ20にて分離された液相冷媒を流入させるようにしてもよい。なお、図22では、図示の明確化のため、冷却ファン12a、送風ファン19a等を省略している。
(2)上述の実施形態では、図5の拡大部に示すように、冷媒通路16iにて気相状態の吸引冷媒を等エントロピ的に減圧させた例を説明したが、冷媒通路16iにて等エントロピ的に減圧させる冷媒はこれに限定されない。
例えば、図23(a)に示すように、気液二相状態の吸引冷媒を等エントロピ的に減圧させてもよいし、図23(b)に示すように、気相状態の吸引冷媒を気液二相状態となるように等エントロピ的に減圧させてもよい。なお、図23(a)、(b)は、第1実施形態の図5の拡大部に対応する図面である。
(3)上述の実施形態では、冷媒として通常のフロン系冷媒、二酸化炭素を採用した例を説明したが、冷媒の種類はこれに限定されない。例えば、炭化水素系冷媒を採用してもよい。
(4)上述の実施形態では、第1、第2蒸発器17、19を、同じ冷却対象空間(車室内)の冷却に用いた例を説明したが、それぞれ異なる冷却対象空間の冷却に用いてもよい。この際、第1蒸発器17の冷媒蒸発温度に対して、第2蒸発器19の冷却対象空間が低くなるので、例えば、第1蒸発器17を車室内の冷却用に用い、第2蒸発器19を車室内冷蔵庫の冷却用に用いてもよい。
(5)上述の各実施形態では、車両用空調装置用のエジェクタ式冷凍サイクル10に、本発明のエジェクタを適用した例を説明したが、本発明のエジェクタは、車両用に限らず、業務用冷蔵・冷蔵装置、自動販売機用冷却装置、冷蔵機能付きショーケース等の定置用のエジェクタ式冷凍サイクルに適用してもよいことはもちろんである。
(6)上記の実施形態では、第1、第2蒸発器17、19を室内側熱交換器として構成し、放熱器12を大気側へ放熱する室外熱交換器として構成しているが、逆に、第1、第2蒸発器17、19を大気等の熱源から吸熱する室外側熱交換器として構成し、放熱器12を空気あるいは水等の被加熱冷媒を加熱する室内側熱交換器として構成するヒートポンプサイクルに、本発明のエジェクタを適用してもよい。
第1実施形態のエジェクタ式冷凍サイクルの全体構成図である。 (a)は、第1実施形態のエジェクタの軸方向断面図であり、(b)は、(a)のA−A断面図であり、(c)は、(a)のB−B断面図である。 第1実施形態の吸引通路の冷媒通路面積比の変化を示すグラフである。 第1実施形態の混合昇圧部の流路形状を模式的に示した説明図である。 第1実施形態の冷媒の状態を示すモリエル線図である。 (a)は、第1実施形態のエジェクタ内の冷媒の流速および昇圧量の変化を示すグラフであり、(b)は、従来技術のエジェクタ内の冷媒の流速および昇圧量の変化を示すグラフである。 第1実施形態の流体の昇圧に利用できるエネルギの利用の内訳を示すグラフである。 第2実施形態の吸引通路の冷媒通路面積比の変化を示すグラフである。 第3実施形態の吸引通路の冷媒通路面積比の変化を示すグラフである。 第4実施形態の混合昇圧部の流路形状を模式的に示した説明図である。 第5実施形態の混合昇圧部の流路形状を模式的に示した説明図である。 第6実施形態の混合昇圧部の流路形状を模式的に示した説明図である。 第7実施形態の混合昇圧部の流路形状を模式的に示した説明図である。 第8実施形態の混合昇圧部の流路形状を模式的に示した説明図である。 第9実施形態のエジェクタの軸方向断面図である。 第10実施形態の冷媒の状態を示すモリエル線図である。 第11実施形態の冷媒の状態を示すモリエル線図である。 第12実施形態の冷媒の状態の一例を示すモリエル線図である。 12実施形態の冷媒の状態の別の一例を示すモリエル線図である。 第13実施形態のエジェクタ式冷凍サイクルの全体構成図である。 第13実施形態の冷媒の状態を示すモリエル線図である。 他の実施形態のエジェクタ式冷凍サイクルの全体構成図である。 (a)は、他の実施形態の冷媒の状態を示すモリエル線図の一部拡大図であり、(b)は、別の他の実施形態の冷媒の状態を示すモリエル線図の一部拡大図である。 従来技術の流体の昇圧に利用できるエネルギの利用の内訳を示すグラフである。 従来技術のエジェクタ内部の気相流体および液相流体の速度分布を示すグラフである。
符号の説明
16a ノズル部
16b ボデー部
16d 冷媒吸引口
16e 混合昇圧部
16g ストレート部
16h 拡大部
16i 吸引通路
16j 吸引側ノズル部

Claims (2)

  1. 冷媒を圧縮する圧縮機(11)、および、前記圧縮機(11)から吐出された高圧冷媒を放熱させる放熱器(12)を有するエジェクタ式冷凍サイクル(10)に適用されて、
    前記放熱器(12)から流出した気液二相状態、液相状態および超臨界状態のうちいずれか1つの状態の冷媒を減圧膨張させるノズル部(16a)と、
    前記ノズル部(16a)から噴射される高速度の噴射冷媒によって気相状態あるいは気液二相状態の冷媒を吸引する冷媒吸引口(16d)前記ノズル部(16a)から噴射された噴射冷媒と前記冷媒吸引口(16d)から吸引された吸引冷媒とを混合させながら、混合された気液二相状態の冷媒の運動エネルギを圧力エネルギに変換する混合昇圧部(16e)、および、前記冷媒吸引口(16d)から内部へ流入した前記吸引冷媒を前記混合部(16e)入口へ導く吸引通路(16i)が形成されたボデー部(16b)とを備え、
    前記混合昇圧部(16e)のうち冷媒入口側には、冷媒通路面積が一定に形成されたストレート部(16g)が設けられ、
    さらに、前記混合昇圧部(16e)のうち前記ストレート部(16g)の冷媒流れ下流側には、冷媒通路面積が徐々に拡大する拡大部(16h)が設けられたエジェクタであって、
    前記ノズル部(16a)中心軸を含む断面における前記拡大部(16h)の断面形状が、直線および曲線を組み合わせて形成されているとともに、前記拡大部(16h)の入口側における冷媒通路面積の広がり度合が、前記拡大部(16h)の出口側における冷媒通路面積の広がり度合よりも大きくなっていることによって、前記混合昇圧部(16e)では、冷媒を等エントロピ的に昇圧させるようになっており、
    さらに、前記吸引通路(16i)の冷媒通路面積が、前記混合昇圧部(16e)へ流入する前記吸引冷媒の流速が前記噴射冷媒の流速と同等となるように、前記吸引冷媒の流れ方向に向かって徐々に縮小していることによって、前記ストレート部(16g)が、前記混合昇圧部(16e)の冷媒入口から、前記混合昇圧部(16e)を流れる冷媒のうち気相冷媒の流速および液相冷媒の流速が等速になる部位へ至る範囲に設けられていることを特徴とするエジェクタ。
  2. 前記ノズル部(16a)中心軸を含む断面でみたときに、前記ノズル部(16a)の冷媒噴射口(16c)および前記吸引通路(16i)の出口部が同一直線上に位置付けられていることを特徴とする請求項1に記載のエジェクタ。
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