JP6295877B2 - 動植物油含有排水処理システム - Google Patents
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Description
また、分離により回収した油分を汚泥として処理する場合、その取扱いや臭気により、作業環境が悪化するという問題もある。処理対象が分散油や乳化油である場合には、加圧浮上分離が採用されることもある。ところが、加圧浮上分離は、負荷変動などで安定した処理ができないという問題がある。
また、活性汚泥曝気槽等を用いた生物学的処理により、動植物油を含有する排水を処理することも知られている。
[1]動植物油を含有する排水を生物学的処理する排水処理システムであって、活性汚泥曝気槽と、前記活性汚泥曝気槽から流出した汚泥含有液を固液分離する膜分離槽とを有し、前記活性汚泥曝気槽は、該活性汚泥曝気槽中の前記汚泥含有液を前記膜分離槽へと流出させる流出口と、前記活性汚泥曝気槽中の前記汚泥含有液に浮上している動植物油の前記流出口からの流出を防ぐ遮蔽板とを有し、前記遮蔽板は、遮蔽板の液面上高さおよび液面下深さが、それぞれ5cm以上である、動植物油含有排水処理システム。
[2]前記活性汚泥曝気槽に、微生物固定化担体が投入された、[1]の動植物油含有排水処理システム。
[3]前記微生物固定化担体は、ポリプロピレンを主成分とする、[2]の動植物油含有排水処理システム。
[4]前記微生物固定化担体は、下記条件(A)〜(C)を満たす円筒状である、[2]または[3]に記載の動植物油含有排水処理システム。
(A)外径:3〜15mm
(B)内径:2〜13mm
(C)長さ:3〜20mm
[5]前記微生物固定化担体は、炭素質フィラーおよびガラス質フィラーの少なくとも一方を含む、[2]〜[4]のいずれかに記載の動植物油含有排水処理システム。
[6]前記微生物固定化担体の全質量に対する、炭素質フィラーおよびガラス質フィラーの割合が、0.1%以上5%未満である、[5]に記載の動植物油含有排水処理システム。
[7]前記炭素質フィラーおよび前記ガラス質フィラーは、長さが50μm〜3mm、太さが1μm 〜25μmである、[5]または[6]に記載の動植物油含有排水処理システム。
[8]前記微生物固定化担体の表面には細孔が形成され、該微生物固定化担体は、下記式(1)を満たす、[2]〜[7]のいずれかに記載の動植物油含有排水処理システム。
A/B≧0.8 ・・・(1)
A:1〜1000μmの直径を有する細孔容積の合計
B:0.003 〜1000μ mの直径を有する細孔容積の合計
尚、本発明において、「動植物油」とは、動物油及び/又は植物油を意味する。
<動植物油含有排水処理システム>
図1は、本発明の動植物油含有排水処理システム(以下、単に「処理システム」ともいう。)の一例を示す概略構成図である。図2は、図1の処理システムの備える活性汚泥曝気槽および固液分離槽(分離槽)を示す概略構成図である。
ついで、調整槽を経た浮上分離処理水を活性汚泥曝気槽に導入し、浮上分離処理水を活性汚泥曝気槽で生物学的処理する。その後、活性汚泥曝気槽の汚泥混合液を固液分離槽に導入し、活性汚泥と処理水とに分離する。分離により得られた活性汚泥の少なくとも一部は、活性汚泥曝気槽へと返送され、処理水は放流される。
この例の活性汚泥曝気槽10は、調整槽を経た浮上分離処理水(以下、「処理対象水という。」)を処理するものであって、該活性汚泥曝気槽10には、処理対象水が導入される。活性汚泥曝気槽10には、図示略のブロワから供給される空気を該活性汚泥曝気槽10内に曝気(散気)する散気管11が設けられている。また、該活性汚泥曝気槽10内には、生物学的処理を行う活性汚泥12と、該活性汚泥12に含まれる微生物を固定化しつつ、活性汚泥曝気槽10内で流動する多数の微生物固定化担体13とが投入されている。活性汚泥曝気槽10からの汚泥混合液(処理対象水と活性汚泥とを含む。)は、この例では、膜ユニット21を備えた膜分離槽20で固液分離される。
また、詳しくは後述するが、この例では、活性汚泥曝気槽10内における流出口14の近傍において、活性汚泥曝気槽10の汚泥混合液に浮上している動植物油が槽内で充分に生物学的処理されずに流出口14から活性汚泥曝気槽10の後(後段)の膜分離槽20へと流出してしまうことを防止するための遮蔽板16が設けられている。
本実施形態では、活性汚泥曝気槽10で使用する微生物固定化担体13として、ポリプロピレンを主成分とする担体を使用する。ポリプロピレンを主成分とする担体を使用することにより、動植物油を含有する排水の油分を安定かつ良好に分解、除去できる。また、その後の固液分離において、膜分離性の良好な汚泥含有液が得られる。
なお、主成分とは、50質量%を超えて含まれる成分のことをいう。
熱可塑性樹脂成分を構成するポリプロピレン以外の樹脂としては、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリスチレン等が挙げられ、これらの1種以上を使用できる。
市販の一般のポリプロピレンとしては、例えば、日本ポリケム(株)製、商品名「ノバテックPP BC4」、「ノバテックPP BC4L」等が挙げられる。市販の酸変性ポリオレフィンとしては、例えば、三井化学(株)製、商品名「アドマー」、三洋化成(株)製、商品名「ユーメックス」等があげられる。
微生物固定化担体の表面積は、微生物との親和性の観点から、400m2/m3以上であることが好ましく、4000m2/m3以上であることがより好ましい。
フィラーの割合が上記範囲の下限値以上であると、強度、微生物との親和性の向上効果が期待でき、上記範囲の上限値以下であると、微生物固定化担体を成形する際の成形性を良好に維持でき、フィラーによるコストも抑制できる。
ここでフィラーの長さとは、フィラーの長手方向に沿う長さであり、太さとは、フィラーの長手方向に垂直な面の最大径である。該垂直な面が真円形である場合には、最大径はその直径であり、真円形以外の形状である場合には、最大径は該形状に外接する真円の直径である。
本明細書においては、フィラーの長さおよび太さには、微生物固定化担体に含まれるフィラーのうちの任意の15本について、顕微鏡観察により測定した値の平均値を「フィラーの長さおよび太さ」として採用する。
マスターペレットは、例えば、数千本のフィラメントからなるフィラーのロービングを含浸ダイスに導き、フィラメントの間に、溶融した樹脂を均一に含浸させた後、所定長に切断してペレット化することで製造できる。
任意成分は、微生物固定化担体の製造時に直接添加しても、任意成分を含む樹脂ペレット等として添加してもよい。
A/B≧0.8・・・(1)
A:1〜1000μmの直径を有する細孔容積の合計
B:0.003〜1000μmの直径を有する細孔容積の合計
微生物固定化担体の活性を高めるためには、担体に付着する微生物の中で、有効に働く微生物の量を向上させることが有効であり、そのためには1μm以上の直径を有する細孔容積を増加させることが有効である。1μm未満の直径を有する細孔容積が多いと、微生物固定化担体の体積あたりの表面積(比表面積)は大きくなるものの、有効に働く微生物の量はほとんど増加しない。そのため、比表面積は、微生物固定化担体の活性の指標としては不充分である。
そこで、微生物固定化担体の活性の指標として、上記A/Bを用いる。
微生物固定化担体は、下記式(2)を満たすことがより好ましく、下記式(3)を満たすことがより好ましい。また、A/Bの上限は1であってよい。
A/B≧0.83・・・(2)
A/B≧0.85・・・(3)
なお、細孔容積測定にあたっては、微生物固定化担体を充分に乾燥した後に測定した。
よって、このような上限および下限の範囲内にある直径を有する細孔容積の合計の割合は、上記B(0.003〜1000μmの直径を有する細孔容積の合計)に対して、80%以上であることが好ましく、83%以上であることがより好ましく、85%以上であることがさらに好ましい。該割合は100%であってよい。
活性汚泥曝気槽10における生物学的処理は、散気管11により活性汚泥曝気槽10内を曝気して、微生物が付着した微生物固定化担体13を流動させることにより行う。処理条件としては、例えば下記の条件が好ましい。
・微生物固定化担体の投入量:活性汚泥曝気槽の容量の10〜20容積%。
・活性汚泥曝気槽の水温:15〜37℃。
・活性汚泥曝気槽の溶存酸素量:2.0mg/L以上。
・BOD容積負荷:0.5〜3.0(kg−BOD/m3・日)。
・汚泥濃度(MLSS):10〜20000(mg/L)。
図2の活性汚泥曝気槽10の槽壁上部には、上述のとおり、槽内の汚泥混合液を活性汚泥曝気槽10の後(後段)の膜分離槽20にオーバーフローさせる流出口14が形成され、槽内における流出口14の近傍には、遮蔽板16が設けられている。遮蔽板16は、前段(この例では調整槽。)から送られてくる処理対象液の液面に浮上している動植物油が、活性汚泥曝気槽10内でも汚泥混合液の液面に浮上したまま、充分に生物学的処理されずに、流出口14から活性汚泥曝気槽10の後(後段)の膜分離槽20に流出してしまうことを防止するために設けられる。図2に示すように、遮蔽板16は、この例では半筒状であり、高さ方向の一部は液面上に出て、高さ方向の残りの一部は液面下に位置するように、面方向が略垂直方向となるように設けられる。動植物油の流出をより効果的に抑制する観点からは、遮蔽板の液面上高さHおよび液面下深さDは、それぞれ5cm以上であることが好ましく、20cm以上であることがより好ましく、30cm以上であることがさらに好ましい。遮蔽板の液面上高さHおよび液面下深さDの上限はたとえば100cmである。遮蔽板の液面上高さHおよび液面下深さDは、活性汚泥曝気槽10の深さ等のスケール、活性含有液および微生物固定化担体の流動状態、気泡の挙動等に応じて設定できる。また、図3の平面図に示すように、遮蔽板16が流出口14を取り囲むように、その両側端部16a,16bが、活性汚泥曝気槽10の内側壁に取り付けられていることが、動植物油の流出をより効果的に抑制し、油分を安定かつ良好に分解、除去できる点で好ましい。
また、本実施形態例の処理システムは、ポリプロピレンを主成分とする微生物固定化担体が投入された活性汚泥曝気槽10を有する。そのため、活性汚泥曝気槽10において、動植物油を含有する処理対象液の油分を効果的に分解、除去でき、活性汚泥曝気槽10での処理条件にも依存するが、油分の濃度を例えば数十ppmまで低減することも可能である。このように油分の濃度が低減された汚泥含有液であれば、中空糸膜等の分離膜を備えた膜分離槽においても、充分に固液分離することができる。
[実施例1]
活性汚泥曝気槽の処理対象液として、表1に示す組成および分析値の合成下水に、市販のサラダ油(日清オイリオ(株)製)を添加したモデル液を用いた。サラダ油は、ヘキサン抽出物質として、合成下水1Lあたり300mg/Lとなるように添加した。なお、合成下水とサラダ油は、それぞれ別のラインで添加した。微生物固定化担体としては、表2に示すように、ポリプロピレンを主成分とし、フィラーとして炭素繊維とガラス繊維とを含有する樹脂組成物から形成された円筒状の担体を用いた。表2中の炭素繊維とガラス繊維の含有量は、微生物固定化担体100質量%に対する値である。
微生物固定化担体における炭素繊維(炭素質フィラー)の長さは3mm、太さは17μmで、ガラス繊維(ガラス質フィラー)の長さは3mm、太さは7μmであった。
また、微生物固定化担体のA/Bは、0.86であった。
なお、フィラーの長さおよび太さ、微生物固定化担体についてのA/Bは、すでに述べた方法により求めた。
そして、一定の経過日数ごとに、沈殿槽から処理水をサンプリングし、処理水中のヘキサン抽出物質濃度をJIS K0102法により分析した。結果を図4のグラフに示す。
また、一定の経過日数ごとに、活性汚泥曝気槽から汚泥含有液をサンプリングし、膜分離性の指標であるろ紙ろ過量を測定した。結果を図5に示す。
ろ紙ろ過量は、汚泥含有液をNo.5C(JIS P 3801)の濾紙を用いて5分間濾過した時のろ液量である。
微生物固定化担体として、表2に示すように、ポリプロピレンから形成された円筒状の担体を用いた以外は、実施例1と同様にして水処理を行い、同様の評価を行った。結果を図4〜図5に示す。なお、使用した微生物固定化担体の外径および長さは、表2に示すようにいずれも10mmであり、内径は7.2mmである。
微生物固定化担体を活性汚泥曝気槽で使用しなかった以外は、実施例1と同様にして水処理を行い、同様の評価を行った。結果を図4〜図5に示す。
遮蔽板を設置していない以外は、実施例1と同様の活性汚泥曝気槽を用いて、モデル液の水処理を行った。
その結果、モデル液中の油分が活性汚泥曝気槽の汚泥処理液の液面に浮上し、活性汚泥曝気槽で処理されずに、そのまま、流出口から沈殿槽へと流出してしまった。
このことから、遮蔽板を設置しない場合には、活性汚泥曝気槽において、油分を充分には処理できないことがわかった。また、活性汚泥曝気槽の後(後段)に膜分離槽を設けて膜処理した場合には、活性汚泥曝気槽から流出した油分により膜が閉塞し、安定に膜処理を行えないことが示唆された。
12 活性汚泥
13 微生物固定化担体
16 遮蔽板
Claims (8)
- 動植物油を含有する排水を生物学的処理する排水処理システムであって、
活性汚泥曝気槽と、前記活性汚泥曝気槽から流出した汚泥含有液を固液分離する膜分離槽とを有し、
前記活性汚泥曝気槽は、該活性汚泥曝気槽中の前記汚泥含有液を前記膜分離槽へと流出させる流出口と、前記活性汚泥曝気槽中の前記汚泥含有液に浮上している動植物油の前記流出口からの流出を防ぐ遮蔽板とを有し、前記遮蔽板は、遮蔽板の液面上高さおよび液面下深さが、それぞれ5cm以上である、動植物油含有排水処理システム。 - 前記活性汚泥曝気槽に、微生物固定化担体が投入された、請求項1に記載の動植物油含有排水処理システム。
- 前記微生物固定化担体は、ポリプロピレンを主成分とする、請求項2に記載の動植物油含有排水処理システム。
- 前記微生物固定化担体は、下記条件(A)〜(C)を満たす円筒状である、請求項2または3に記載の動植物油含有排水処理システム。
(A)外径:3〜15mm
(B)内径:2〜13mm
(C)長さ:3〜20mm - 前記微生物固定化担体は、炭素質フィラーおよびガラス質フィラーの少なくとも一方を含む、請求項2〜4のいずれか一項に記載の動植物油含有排水処理システム。
- 前記微生物固定化担体の全質量に対する、炭素質フィラーおよびガラス質フィラーの割合が、0.1%以上5%未満である、請求項5に記載の動植物油含有排水処理システム。
- 前記炭素質フィラーおよび前記ガラス質フィラーは、長さが50μm〜3mm、太さが1μm〜25μmである、請求項5または6に記載の動植物油含有排水処理システム。
- 前記微生物固定化担体の表面には細孔が形成され、該微生物固定化担体は、下記式(1)を満たす、請求項2〜7のいずれか一項に記載の動植物油含有排水処理システム。
A/B≧0.8 ・・・(1)
A:1〜1000μmの直径を有する細孔容積の合計
B:0.003 〜1000μmの直径を有する細孔容積の合計
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