JP2005021831A - 微生物繁殖用担持体およびその使用方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】浮揚性に優れ、物理的な吸着・ろ過・微生物による分解無機化の機能に加えて、イオン性物質の吸着性能をもつ繁殖用担持体を得て、適正な使用方法を見つけることにある。
【解決手段】界面活性剤が独立気泡性ポリオレフィン系発泡体の樹脂中に練り込まれており、発泡体の粉砕粒子からなる微生物繁殖用担持体である。界面活性剤としてカチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤及び非イオン界面活性剤が使用できる。また、それぞれ別個の界面活性剤が独立気泡性ポリオレフィン系発泡体の樹脂中に練り込まれており、発泡体の粉砕粒子を混合して使用すること並びに発泡体の粉砕粒子が層状集合体であって、異種の層状集合体を複数層にして使用することもできる微生物繁殖用担持体の使用方法である。
【選択図】図2
【解決手段】界面活性剤が独立気泡性ポリオレフィン系発泡体の樹脂中に練り込まれており、発泡体の粉砕粒子からなる微生物繁殖用担持体である。界面活性剤としてカチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤及び非イオン界面活性剤が使用できる。また、それぞれ別個の界面活性剤が独立気泡性ポリオレフィン系発泡体の樹脂中に練り込まれており、発泡体の粉砕粒子を混合して使用すること並びに発泡体の粉砕粒子が層状集合体であって、異種の層状集合体を複数層にして使用することもできる微生物繁殖用担持体の使用方法である。
【選択図】図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、生活系排水、工場系廃水、農業系排水、河川湖沼系の流入流出排水、道路系排水などの各種の排水中に含まれる有機物質、有機態窒素や有機態リンなどの汚濁物質や無機態窒素、無機態リンなどのイオン性低分子、フミン質などの水溶性難分解物質などを物理的吸着およびイオン吸着・ろ過すると同時に、微生物を担持し、微生物により分解無機化し、浮揚性に優れた微生物繁殖用担持体およびその使用方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、排水の水処理方法には様々な方法およびプロセスがあるが、排水中の有機物質、有機態窒素や有機態リン、栄養塩類、懸濁物質などの汚濁物質や無機態窒素、無機態リンなどのイオン性低分子などを、微生物担持体に担持した微生物により分解無機化し、除去処理する方法は有用な方法として、広く実施されてきた。
【0003】
微生物担持体には、古くから砂利、砕石、牡蠣殻、コークス、木片、木炭、活性炭、アンスラサイト(無煙炭)、スポンジ、セラミックなど形状が不均一のものから、プラスチック成型によるサドル、リング、パイプなどの一定形状のもの、ポリ塩化ビニリデン繊維、ポリプロピレン繊維、ビニロン繊維などの繊維集合体、ハニカム、ネット、多孔円筒などの有孔体、さらには人工芝から空き缶まで様々なものがある。最近では、発泡スチロールの微少な球状発泡粒子を利用するものや連続気泡性樹脂発泡体のカット物やセラミック多孔体あるいはゲルの中に微生物を包括固定させた担持体などがある。
【0004】
一般に、砕石、陶器片など重量のある担持体は、敷設、洗浄、交換などにおける作業性が悪く、排水処理装置には組み込めない。また、有孔や多孔ではない担持体は表面が平滑なため微生物の付着する有効面積が小さく、且つ浮動や撹拌で微生物が外れやすいため、微生物による有機物などの分解効率が悪い。従って、空隙のあるプラスチック成形品や連続気泡性樹脂発泡体のカット物が、水中で水の比重に近く、排水処理装置に投入して浮動や撹拌させて使用されている。繊維集合体は激しい撹拌や処理水の流れが速いと、微生物が脱落し易いなどの問題がある。
【0005】
本発明に近似する独立気泡性発泡体から浮揚性のあるろ材として粉砕粒子を低圧で押出発泡して製造する方法がある(例えば、特許文献1を参照。)。しかし、このろ材は微生物繁殖用担持体ではあるが、これには界面活性剤による粉砕粒子表面への親水性イオン基を導入する概念はない。また、独立気泡性発泡体に炭酸カルシウムなどの親水性粉体を混入したものを粉砕して、親水化により早期からの処理能力の向上と浸水による浮揚力の抑制により生ずる浮遊流動性を向上させた技術がある(例えば、特許文献2参照。)。
【0006】
一方、本願発明とは気泡の形態が異なる連続気泡性樹脂発泡体の樹脂中に脂肪族グリセリンエステルなどの非イオン界面活性剤を樹脂100重量部につき1〜15重量部混入させて親水性とした技術が見られ、生物ろ過方式浄化槽に充填する微生物繁殖用担体の用途が記載されている(例えば、特許文献3参照。)。ここには担持体の形状の記載はないが、恐らく細片に切断したものを使用するものと考えられる。同様の技術で、連続気泡性発泡体の樹脂中にアニオン系および非イオン界面活性剤を樹脂100重量部につき1〜15重量部塗布または含浸させた微生物繁殖用担持体がある(例えば、特許文献4参照。)。これは早期に水に水没させて微生物の処理能力の向上を目的とする技術であり、発泡体と界面活性剤との構成であることは本願発明に類似するが、製造方法、形状、連泡率、浮揚性、使用目的において異なる。
【0007】
また、発泡したポリプロピレンに界面活性剤を含有させた水処理用微生物固定化担体がある(例えば、特許文献5参照。)。この目的とするところは、上述の2件の発明と同じであり、水との馴染みを良くして早期に微生物の分解無機化機能を発揮させることにあり、好ましい界面活性剤は非イオン系界面活性剤であるとしており、親水性化のみが目的のようである。また、特許文献5の図1に見られる好気処理層中の微生物固定化担体は発泡体のカット物のようであり、しかも曝気空気だけで浮動していることから連続気泡性発泡体のカット物と想定され、このことからも親水性化のみが目的とみられる。
【0008】
従来からある微生物繁殖用担持体のうち、比重が水よりもかなり重いものは処理水の流れで浮動しないため、下降水流や横水流で水処理する場合が多く、抑止メッシュ上に微生物繁殖用担持体を配置させて上向水流で処理することも可能であるが、敷設、洗浄、交換などにおける作業性が悪く、一般的な排水処理装置に組み込むには無理がある。最近、主流となっている微生物繁殖用担持体は比重が水に近いものであり、空隙のあるプラスチック成形品や連続気泡性樹脂発泡体のカット物や繊維集合体などであり、水中で水の比重に近く、排水処理装置に投入して嫌気性処理槽では撹拌により、好気性処理槽では曝気により浮動させて処理するケースが多い。
【0009】
比重が水に近い微生物繁殖用担持体には、浮揚性がないため撹拌や曝気を止めると沈降する性質があり、浮上させて所定の厚みのろ過層を形成させることができない。この点、浮揚性のある微生物繁殖用担持体はろ過層の形成により懸濁物質(SS分)の物理的吸着が可能であり、大きなものはろ過層下に沈降させることができる。また、上下に抑止メッシュを設け、この間に連続気泡性樹脂発泡体のカット物や繊維集合体を充填する方法でろ過層を形成させても、処理水流で浮動が起こったり、連続気泡中や繊維間の空隙を微細な汚染物質が通過する懸念がある。
【0010】
浮揚性およびろ過性に優れたろ材は、発泡プラスチックの細片や粒子が好適であるが、形状とともに発泡のセル構造も重要である。先述の連続気泡性発泡体からなる細片や粒子は吸水すると沈降し易く、また、発泡スチロールの発泡球状粒子のように100%に近い独立気泡をもつ粒子は浮力が大きすぎることと、充填粒子間の隙間が大きくろ過性能が劣る。この点、独立気泡性発泡体の粉砕粒子は、中心部の破壊されていない独立気泡と外周部の破壊された気泡とで構成され、適度な浮力をもつ一方で、水中の汚染物質との接触面積を広くもつことができる優れた物理的吸着性能を有するろ材といえる。
【0011】
一般にプラスチックは撥水性で水と馴染まない。発泡させてもその性質は変わらず、水中に没しても気泡を巻き込み水中の汚染物質の物理的吸着やろ過の効率の低下を招く。これに鑑み、炭酸カルシウムなどの親水性粉体を発泡体の樹脂中に混練して親水化して改良を加えている(例えば、特許文献2参照。)。しかし、無機充填材はそれ自身の比重が重く、多量に添加すると浮力を低下させることと、独立気泡の破壊が起こり、これも浮力低下の原因となる。
【0012】
一方、生活系排水、工場系廃水、農業系排水、道路系排水などの各種の排水中には様々な形態の汚染物質が含まれている。一般的には、BOD、CODで表される有機物質、有機態窒素や有機態リンなどの汚濁物質や無機態窒素、無機態リンなどのイオン性低分子、フミン質などの水溶性難分解物質などが挙げられるが、食品工場、化学品製造業の排水であればその製品固有の汚染物質が含まれるであろうし、排水処理方法を検討する場合には、排水中には多種多様の汚染物質が含まれることを前提とし、最適な方法を選択する必要がある。排水中の汚染物質が希薄で、少量の場合には、物理的吸着・ろ過でも良いが、水中に多量に存在する場合には物理的吸着・ろ過だけでは処理しきれない。このような場合、微生物による有機物の分解無機化や脱窒・脱リンを行うのが効率的である。しかし、上記独立気泡性発泡体の粉砕粒子は、微生物による有機物の無機化や物理的吸着・ろ過は可能であるが、様々なイオン性低分子や水溶性高分子のフミン質などが捕捉できない欠点がある。
【0013】
【特許文献1】
特許第2726376号公報
【特許文献2】
特開平8−141588号公報
【特許文献3】
特開2001−342277号公報
【特許文献4】
特開2002−199879号公報
【特許文献5】
特開平10−180280号公報
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、浮揚性に優れ、物理的な吸着・ろ過・微生物による分解無機化の機能に加えて、イオン性物質の吸着性能をもつ繁殖用担持体を得て、適正な使用方法を見つけることにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、浮揚性に優れた独立気泡性ポリオレフィン系発泡体に界面活性剤を練り込んだ粉砕粒子が、物理的な吸着・ろ過・微生物による分解無機化の機能に加えてイオン性物質の吸着性能をもつことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
すなわち、界面活性剤が独立気泡性ポリオレフィン系発泡体の樹脂中に練り込まれており、該発泡体の粉砕粒子からなることを特徴とする微生物繁殖用担持体であって、界面活性剤がカチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤および非イオン界面活性剤の4種類の界面活性剤のいずれか1種または2種以上であることが好ましく、界面活性剤の練り込み重量部数が、独立気泡性ポリオレフィン系発泡体の発泡前の樹脂100重量部に対して、0.01〜10重量部であることが好ましく、独立気泡性ポリオレフィン系発泡体の粉砕粒子が、ビーズ法型内発泡成形法の原料ビーズの破砕粒子および発泡成形品の破砕粒子のいずれか1種または2種であることが好ましく、独立気泡性ポリオレフィン系発泡体の独立気泡の直径が10μm〜500μmであることが好ましく、粉砕粒子の短径が1mm〜30mmであることが好ましい。
【0017】
本発明の第二は、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤および非イオン界面活性剤の4種類の界面活性剤のいずれか1種または2種以上である界面活性剤がそれぞれ別個の独立気泡性ポリオレフィン系発泡体の樹脂中に練り込まれており、該発泡体の粉砕粒子を混合して使用することを特徴とする微生物繁殖用担持体の使用方法である。
【0018】
本発明の第三は、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤および非イオン界面活性剤の4種類の界面活性剤のいずれか1種または2種以上である界面活性剤がそれぞれ別個の独立気泡性ポリオレフィン系発泡体の樹脂中に練り込まれており、該発泡体の粉砕粒子が層状集合体であって、該層状集合体を複数層にして使用することを特徴とする微生物繁殖用担持体の使用方法である。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明にいう微生物繁殖用担持体とは、界面活性剤が樹脂中に練り込まれた独立気泡性ポリオレフィン系発泡体の粉砕粒子からなるものであって、微生物が粉砕粒子の細孔中で繁殖が可能である。
【0020】
本発明にいう独立気泡性ポリオレフィン系発泡体に使用されるポリオレフィン系樹脂は、オレフィン単量体を50%以上、好ましくは70%〜100%、含有し、オレフィン単量体と共重合可能な単量単位を50%以下、好ましくは30%〜0%、含有する樹脂である。オレフィン単量体の具体例としては、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテンなどの炭素数2〜8のαオレフィン単量体やノルボルネン系モノマーなどの環状オレフィンなどをあげることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、オレフィン単量体と共重合可能な単量体の具体例としては、酢酸ビニルなどのビニルアルコール、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、ヘキシルアクリレートなどのアルキル基の炭素数が1〜6の(メタ)アクリル酸エステル、ビニルアルコール、メタクリル酸、塩化ビニルなどがあげられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
さらに、前記ポリオレフィン系樹脂の具体例として、エチレン−プロピレンランダム供重合体、エチレン−プロピレン−ブテンランダム3元供重合体、ポリエチレン−ポリプロピレンブロック共重合体,ホモポリプロピレンなどのポリプロピレン系樹脂;低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体などのポリエチレン樹脂;ポリブテン、ポリペンテンなどをあげることができる。これらのポリマーは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、上記ポリオレフィン系樹脂は、無架橋で用いてもよいが、パーオキサイドや放射線などにより架橋させて用いてもよい。
【0022】
本発明に用いる界面活性剤は、特に限定はないが、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤を1種以上用いることが好ましい。上記界面活性剤はいずれも親水基を有するため、浸水時の気泡の巻き込みが少なく、排水処理の効率が向上する。また、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤などのイオン系界面活性剤は、排水中の汚染物質のイオン性物質をイオン吸着ろ過する性能が備わるため優れた微生物繁殖用担持体となる。1種または2種以上の界面活性剤が樹脂中に練り込まれた独立気泡性ポリオレフィン系発泡体の粉砕粒子からなる微生物繁殖用担持体は排水処理水中のイオン物質などの汚染物質の中身にあわせて、その種類を使い分けることでそのイオン吸着・ろ過効果を高めることが可能となる。
【0023】
本発明に用いられる代表的な界面活性剤は、カチオン系界面活性剤では、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエトキシ硫酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩を例示することができ、アニオン系界面活性剤では、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アシロイルアミドプロピルトリメチルアンモニウムメトサルフェート、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩、アシル塩化コリンを例示することができ、両性界面活性剤では、アルキルベタイン型、イミダゾリン型、アラニン型などを例示することができ、非イオン界面活性剤では、脂肪酸アルキロールアミド、ジ−(2−ヒドロキシルエチル)アルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、脂肪酸グリセリンエステル、ポリオキシエチレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルなどを例示することができる。
【0024】
本発明では、異種の界面活性剤が練り込まれた粉砕粒子を混合して使用することを提案しているが、これは排水処理水中のイオン物質などの汚染物質の中身にあわせて、その界面活性剤のイオンの種類を選定し、組合せや配合割合を事前に決めて使用することにより、イオン吸着・ろ過効果を高めることが可能である。
【0025】
さらに、本発明では、図2に示したように、異種の界面活性剤が練り込まれた粉砕粒子からなる複数の層状集合体による構成も提案し、排水処理水中のイオン物質などの汚染物質の中身にあわせて、その界面活性剤のイオンの種類を選定し、組合せや層状集合体の厚みを事前に設定して使用することによりイオン吸着・ろ過効果を高めることが可能である。
【0026】
界面活性剤の練り込み重量部数は、発泡前のポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、0.01〜10重量部であることが好ましい。さらに好ましくは、0.05〜5重量部である。上記範囲より少ない場合には、イオン性物質のイオン吸着・ろ過効果および持続性が劣る場合があり、多すぎると粉砕粒子の近傍で必要以上の泡立ちを生じる恐れがある。
【0027】
本発明においては、独立気泡性ポリオレフィン系発泡体の粉砕粒子を使用するが、これは適度な浮揚性をもたせるためである。ポリオレフィン樹脂が耐久性のある以外に、好ましい理由として、ポリオレフィン樹脂は結晶性ポリマーであってガラス転移温度が低く室温でもそのセグメント内でミクロブラウン運動が行われ、界面活性剤の表面移行が起こり、仮に表面に付いた界面活性剤が洗い落とされても、内部から補給されるため、イオン吸着・ろ過効果が長く持続するからで、この点ポリスチレンなどの非結晶性ポリマーはガラス転移温度が室温より高いものが多く、この性質がないからである。
【0028】
界面活性剤が独立気泡性ポリオレフィン系発泡体の樹脂中に練り込まれており、該発泡体の粉砕粒子からなる微生物繁殖用担持体の製造方法は、押出機にポリオレフィン系樹脂および界面活性剤を投入して、これを分解型発泡剤または揮発性発泡剤で押出発泡させる方法やポリオレフィン系樹脂および界面活性剤に熱分解型発泡剤のほか、必要に応じて架橋剤、発泡助剤などを添加し、熱分解型発泡剤が熱分解しない温度でロールやミキサーなどで溶融混練し、金型中で所定形状に成形後、熱分解型発泡剤が発泡可能な温度で発泡させるバッチタイプの発泡方法で製造される発泡体を粉砕することによって可能となる。粉砕方法は2軸剪断式破砕機で破砕するのが一般的であるが、所望の大きさおよび気泡構成の粒子が得られるものであれば特に限定はない。ポリオレフィン系発泡体の独立気泡率が100%近く、且つ球状の気泡が得られる点から、ビーズ法型内発泡成型法の原料ビーズおよび発泡成形品からのいずれか1種である粉砕粒子であることが好ましい。
【0029】
前記ポリオレフィン系発泡体の原料ビーズとは、例えば、界面活性剤とオレフィン系樹脂とを押出機のスクリュウで加熱混練しながら糸状に押し出し、これをカットしてペレットを得、次に密閉耐圧容器内で水系媒体に分散剤により分散させ、揮発性発泡剤を加え、ペレットの軟化温度以上の発泡温度にまで加熱し、前記密閉耐圧容器の内圧よりも低圧の雰囲気下に放出して得られる予備発泡粒子のことである。この予備発泡粒子を粉砕機で粉砕してもよいが、ビーズ法型内発泡成形した成形品を粉砕機で粉砕することにより、本発明の微生物繁殖用担持体を得ることができる。
【0030】
前記ビーズ法型内発泡成形法として代表されるのはビーズ法発泡スチレンにおける発泡成形方法である。これは、まず揮発性発泡剤を溶存する球形の微小ポリスチレンビーズを予備発泡機で蒸気加熱し所望の発泡倍率(密度)の予備発泡粒子を得る。次に、発泡成形機に設置された開閉可能な金型を閉じ、該金型の空間部に該予備発泡粒子を充填し、金型周囲に設置された蒸気室から金型表面に無数に配置された小孔から蒸気を金型内に投入し、発泡させて充填粒子間にあった空隙部を埋め、粒子同士を溶融固着させ、冷却後金型を開として、所望の形状の発泡成形体を得る方法である。ビーズ法発泡オレフィン系樹脂においても基本的には全く同様といえるが、異なる点はポリオレフィン系樹脂には溶剤型発泡剤を溶存する力がなく、発泡後の予備発泡粒子に2次発泡余力が弱いので、金型に充填する前の予備発泡粒子に無機ガスを加圧封入したり、予備発泡粒子を加圧収縮させて金型に充填するなどの工程を必要とする。
【0031】
独立気泡性ポリオレフィン系発泡体の独立気泡の直径は10μm〜500μmであることが好ましい。より好ましくは、50μm〜300μmである。これは微生物のサイズの長径が概ね5μm〜100μmであることと、独立気泡の直径が小さくなればなるほど粉砕粒子の周囲の破壊された気泡の比表面積が向上して処理する水中の汚染物質との接触の機会が増えるが、小さすぎるとSS分を捕捉できなくなるためである。また、独立気泡の直径が大きくなると比表面積が減少して、処理する水中の汚染物質との接触の機会が減ずるためである。
【0032】
独立気泡の直径の測定方法は、発泡体をカッターナイフで約3×3cm2以上のカット面となるようカットし、カット面の無数の独立気泡をインクやマジックインクで着色し、スケールの付いたルーペ(拡大倍率40または80)で観測し、そのスケール(例えば、20mm)に対する直線上の独立気泡の数を数えて、独立気泡1個当たりの平均気泡径を求める方法で行った。
【0033】
独立気泡性ポリオレフィン系発泡体の粉砕粒子の大きさは、短径で1mm〜30mmが好ましく、より好ましくは2mm〜5mmである。小さすぎると中心部の独立気泡まで破壊されて浮揚性が低下する恐れがあり、逆に大きすぎると浮力が大きすぎることと比表面積が減って処理する水中の汚染物質との接触の機会が減ずるためである。このようなサイズの粉砕粒子は、網目サイズの異なる2種類の篩を用いて篩別することができ、網目5mm〜30mmの篩を通過し、網目1mm〜2mmの篩を通過しない粉砕粒子を所望のサイズの粉砕粒子として用いることができる。
【0034】
本発明による微生物繁殖用担持体の使用方法は、一般的な嫌気性処理槽および好気性処理槽のいずれか単独または連結併用において使用が可能で、処理槽内に浮揚させて使用する。この際、浮揚させた粉砕粒子の層状集合体層を残して、その下方で、嫌気性処理槽では撹拌を好気性処理槽では曝気を行うことは、微生物の繁殖および汚染物質の分解無機化促進に対して有効な手段となる。さらに、好気性処理、嫌気性処理の違いで付着微生物集団の調整を行うことも汚染物質の分解無機化促進のために必要な手段である。
【0035】
次に、図1に示した嫌気性処理槽10および好気性処理槽11を連結併用した場合の実施態様について説明する。被処理液1は入口管12を通じて嫌気性処理槽10に導入される。嫌気性処理槽10には、上部に抑止メッシュ17Aが設けられており、その下方に本発明の微生物繁殖用担持体5Aを浮揚させ層状集合体を形成している。該微生物繁殖用担持体の発泡体に使用している界面活性剤および担持している微生物は処理すべき排水の水質に依存して最適なものを選択することができる。
微生物繁殖用担持体5Aの下部には攪拌機15を設け、被処理水1に流動性を与え、微生物繁殖用担持体5Aを浮揚させた層状集合体の下部において、被処理水1との撹拌が起こり、被処理水1と微生物繁殖用担持体5Aとの接触が促進される。なお、嫌気性処理槽10においては、脱窒反応が起こり、窒素酸化物は窒素ガスにまで還元される。抑止メッシュ17Aの上部にある一次処理水2は、さらに好気性処理槽11に移し、好気的な処理を行う。好気性処理槽11には、上部に抑止メッシュ17Aが設けられており、その下方に本発明の微生物繁殖用担持体5Bを浮揚させ層状集合体を形成している。該微生物繁殖用担持体の発泡体に使用している界面活性剤および担持している微生物は処理すべき排水の水質に依存して最適なものを選択することができる。微生物繁殖用担持体5Bの下部には通気管16を設け、被処理水に流動性を与えるとともに通気を行い好気的に微生物を繁殖させることができる。抑止メッシュ17Aの上部にある処理水3は出口管13を通じて排出されるが、好気性処理槽11においては、亜硝酸菌および硝酸菌により、有機態窒素は酸化され亜硝酸態窒素あるいは硝酸態窒素となるので、その一部をさらに嫌気性処理槽10に戻し、窒素ガスに還元する。
【0036】
さらに、図2には異種の微生物繁殖用担持体を使用した嫌気性処理槽10および好気性処理槽11を連結併用した実施態様を示した。被処理水1は入口管12を通じて嫌気性処理槽10に導入される。嫌気性処理槽10には、上部に抑止メッシュ17Aが設けられており、その下方に本発明の微生物繁殖用担持体5Aを浮揚させ層状集合体を形成しており、微生物繁殖用担持体5Aの下部には攪拌機15を設け、被処理水に流動性を与え、微生物繁殖用担持体5Aを浮揚させた層状集合体の下部において、被処理水との撹拌が起こり、被処理水と微生物繁殖用担持体5Aとの接触が促進される。さらにその下部に抑止メッシュ17Bを設け、上部とは異種の微生物繁殖用担持体5Cを浮揚させ層状集合体を形成しており、微生物繁殖用担持体5Cの下部には攪拌機15を設け、被処理水に流動性を与え、微生物繁殖用担持体5Cを浮揚させた層状集合体の下部において、被処理水との撹拌が起こり、被処理水と微生物繁殖用担持体5Cとの接触が促進される。このことにより排水をより効率的に浄化することができる。微生物繁殖用担持体の発泡体に使用している界面活性剤および担持している微生物並びにその組合せなど処理すべき排水の水質に依存して最適なものを選択することができる。なお、嫌気性処理槽10における反応は、基本的には図1の場合と同様である。抑止メッシュ17Aの上部にある一次処理水2は、さらに好気性処理槽11に移し、好気的な処理を行う。好気性処理槽11には、上部に抑止メッシュ17Aが設けられており、その下方に本発明の微生物繁殖用担持体5Bを浮揚させ層状集合体を形成し、さらにその下部に抑止メッシュ17Bを設け、上部とは異種の微生物繁殖用担持体5Dを浮揚させ層状集合体を形成しており、排水をより効率的に浄化することができる。微生物繁殖用担持体の発泡体に使用している界面活性剤および担持している微生物並びにその組合せなど処理すべき排水の水質に依存して最適なものを選択することができる。微生物繁殖用担持体5Dの下部には通気管16を設け、被処理水を均一に撹拌すると同時に通気を行い好気的に微生物を繁殖することができる。抑止メッシュ17Aの上部にある処理水3は出口管13を通じて排出されるが、その一部をさらに嫌気性処理槽10に戻し、再処理を行うことは、図1に示した処理装置と同様である。なお、好気性処理槽11における反応は、基本的には図1の場合と同様である。
【0037】
【実施例】
次に実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明の趣旨はこれらの実施例 によってなんら限定されるものではない。
【0038】
(実施例1)
エチレン含有量が3%のエチレン−プロピレンランダムコポリマーのラージペレット100重量部に対し、カチオン系界面活性剤のアシロイルアミドプロピルトリメチルアンモニウムサルフェート1.0重量部および発泡造核剤などの添加剤とをマスターバッチとし、押出機内で溶融混練させ糸状に押し出し、ペレタライザーにて直径約0.7mmで、長さ約10mmのスモールペレットを作製した。このスモールペレットを耐圧容器中に水、分散剤とともに仕込み撹拌機で撹拌し、耐圧容器のジャケットに蒸気を投入して昇温した。昇温途中で揮発性発泡剤のブタンを投入し、耐圧容器内の温度が150℃、圧力が1.667MPa(17kg/cm2)で安定するまでブタンを追加した。次に、耐圧容器に連結する配管の仕切り板にある口径6mmの円孔を開放して大気中に放出して発泡させた。この間、耐圧容器内の圧力が一定となるようブタンを追加し続けた。得られた予備発泡粒子は直径約3mmのほぼ球体であり、発泡倍率5倍(密度=0.18g/cm3)で約98%の独立気泡を有していた。この予備発泡粒子を加圧タンク内に仕込み、空気加圧して発泡粒子内の独立気泡内に加圧空気を含浸させた。
独立気泡内の空気圧は1,520hPa(1.5atm)であった。次に、加圧空気が含浸された予備発泡粒子を発泡成形機に搭載された開閉可能な金型を閉じた状態として、該金型内に充填機により充填し、金型に付帯する蒸気チャンバーから金型面にある無数の細孔を通して蒸気を投入し、約140℃で加熱発泡させ、冷却後金型から取り出して、板状体の発泡成形品を得た。その平均気泡径を測定した結果、約180μmであった。次に、複数の刃物をセットした破砕ローターと被破砕物を破砕ローターに押しつける供給プレスシャーをもつ破砕機に該板状体の発泡成形品を投入して粉砕し、網目5mmのスクリーンを通過させ、さらに網目2mmのスクリーンで篩い、短径2〜5mm、平均粒径約3mmの樹脂中にカチオン系界面活性剤が練り込まれた、中心部に独立気泡を有し、外周部に破壊された気泡を有する、浮揚性に優れた、独立気泡性ポリオレフィン系発泡体の粉砕粒子である微生物繁殖用担持体を得た。
【0039】
(実施例2)
実施例1と同一の方法で、エチレン分3%のポリプロピレンランダムコポリマー100重量部にアニオン系界面活性剤のアルキルリン酸エステル塩1.0重量部を練り込んだ、独立気泡性ポリオレフィン系発泡体の粉砕粒子である微生物繁殖用担持体を得た。
【0040】
(実施例3)
実施例1と同一の方法で、エチレン分3%のポリプロピレンランダムコポリマー100重量部に非イオン界面活性剤のジ−(2−ヒドロキシエチル)アルキルアミン1.0重量部を練り込んだ、独立気泡性ポリオレフィン系発泡体の粉砕粒子である微生物繁殖用担持体を得た。
【0041】
(実施例4)
実施例1と同一の方法で、エチレン分3%のポリプロピレンランダムコポリマー100重量部にカチオン系界面活性剤のアシロイルアミドプロピルトリメチルアンモニウムサルフェート0.5重量部およびアニオン系界面活性剤のアルキルリン酸エステル塩0.5重量部を練り込んだ、独立気泡性ポリオレフィン系発泡体の粉砕粒子である微生物繁殖用担持体を得た。
【0042】
(実施例5)
実施例1で得たカチオン系界面活性剤が練り込まれた粉砕粒子50%と実施例2のアニオン系界面活性剤の入った粉砕粒子50%とを混合した微生物繁殖用担持体を得た。
【0043】
(実施例6)
図2に示したように、連続した嫌気性処理槽および好気性処理槽の両者で、実施例1で得たカチオン系界面活性剤が練り込まれた粉砕粒子による厚さ15cmの層状集合体の浮上層を形成し、さらにこの層の上部に実施例2のアニオン系界面活性剤の入った粉砕粒子による厚さ15cmの層状集合体の浮上層をメッシュを介して形成させた微生物繁殖用担持体を得た。
【0044】
(実施例7)
基本的には実施例1と同一の方法であるが、予備発泡条件の温度・圧力や発泡成形の温度など樹脂の耐熱性に合わせて低めに設定し、空気含浸を省略して、直鎖低密度ポリエチレン100重量部にアニオン系界面活性剤のアルキルリン酸エステル塩0.5重量部を練り込んだ、発泡倍率10倍で気泡径250μmの独立気泡性ポリオレフィン系発泡体の粉砕粒子である微生物繁殖用担持体を得た。
【0045】
(実施例8)
実施例7と同じ方法で、直鎖低密度ポリエチレン100重量部に非イオン界面活性剤のジ−(2−ヒドロキシエチル)アルキルアミン0.5重量部を練り込んだ、独立気泡性ポリオレフィン系発泡体の粉砕粒子である微生物繁殖用担持体を得た。
【0046】
(比較例1)
実施例1と同一の方法で、エチレン分3%のポリプロピレンランダムコポリマーに界面活性剤を加えず、独立気泡性ポリオレフィン系発泡体の粉砕粒子である微生物繁殖用担持体を得た。
【0047】
(評価試験)
実施例1〜5および実施例7〜8並びに比較例1の微生物繁殖用担持体について、図1に示したように、連続した嫌気性処理槽および好気性処理槽を用いて、その物理的吸着、イオン的吸着およびろ過性試験を行った。その結果、実施例1〜5および実施例7〜8の微生物繁殖用担持体は、いずれも比較例1と比べて、BOD、CODで表される有機物質、有機態窒素や有機態リンなどの汚毒物質や無機態窒素、無機態リンなどの微生物による分解無機化および物理的吸着・ろ過に加えて各種イオン性低分子、フミン質などの水溶性難分解物質などがイオン吸着により効率良く除去されていることが確認された。
【0048】
【発明の効果】
本発明の樹脂中に界面活性剤が練り込まれた独立気泡性ポリオレフィン系発泡体の粉砕粒子であって、中心部に独立気泡を有し、外周部に破壊された気泡を有する微生物繁殖用担持体は、微生物による汚染物質の分解無機化機能に加え、表面に存在する各種イオンが樹脂を親水化し、排水中のイオン性物質を吸着・ろ過する能力をもたせることができた。また、その表面には正イオンから負イオンに至るまで存在させることで、微生物の付着し易さも調整することができ、さらに好気性処理あるいは嫌気性処理を選択することにより、付着微生物集団の調整も可能である。加えて、樹脂内部に存在する界面活性剤が時間をかけて表面に移行するため効果が持続し、浮揚性のろ材の特徴を生かした新たな微生物繁殖用担持体を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】微生物繁殖用担持体を使用した排水処理設備の1例
【図2】異種の微生物繁殖用担持体を使用した排水処理設備の1例
【符号の説明】
1.被処理水
2.一次処理水
3.処理水
4.液面
5A.微生物繁殖用担持体 5B.微生物繁殖用担持体
5C.微生物繁殖用担持体 5D.微生物繁殖用担持体
6.沈降物質
10.嫌気性処理槽
11.好気性処理槽
12.入口管
13.出口管
14.バルブ
15.攪拌機
16.通気管
17A.抑止メッシュ 17B.抑止メッシュ
【発明の属する技術分野】
本発明は、生活系排水、工場系廃水、農業系排水、河川湖沼系の流入流出排水、道路系排水などの各種の排水中に含まれる有機物質、有機態窒素や有機態リンなどの汚濁物質や無機態窒素、無機態リンなどのイオン性低分子、フミン質などの水溶性難分解物質などを物理的吸着およびイオン吸着・ろ過すると同時に、微生物を担持し、微生物により分解無機化し、浮揚性に優れた微生物繁殖用担持体およびその使用方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、排水の水処理方法には様々な方法およびプロセスがあるが、排水中の有機物質、有機態窒素や有機態リン、栄養塩類、懸濁物質などの汚濁物質や無機態窒素、無機態リンなどのイオン性低分子などを、微生物担持体に担持した微生物により分解無機化し、除去処理する方法は有用な方法として、広く実施されてきた。
【0003】
微生物担持体には、古くから砂利、砕石、牡蠣殻、コークス、木片、木炭、活性炭、アンスラサイト(無煙炭)、スポンジ、セラミックなど形状が不均一のものから、プラスチック成型によるサドル、リング、パイプなどの一定形状のもの、ポリ塩化ビニリデン繊維、ポリプロピレン繊維、ビニロン繊維などの繊維集合体、ハニカム、ネット、多孔円筒などの有孔体、さらには人工芝から空き缶まで様々なものがある。最近では、発泡スチロールの微少な球状発泡粒子を利用するものや連続気泡性樹脂発泡体のカット物やセラミック多孔体あるいはゲルの中に微生物を包括固定させた担持体などがある。
【0004】
一般に、砕石、陶器片など重量のある担持体は、敷設、洗浄、交換などにおける作業性が悪く、排水処理装置には組み込めない。また、有孔や多孔ではない担持体は表面が平滑なため微生物の付着する有効面積が小さく、且つ浮動や撹拌で微生物が外れやすいため、微生物による有機物などの分解効率が悪い。従って、空隙のあるプラスチック成形品や連続気泡性樹脂発泡体のカット物が、水中で水の比重に近く、排水処理装置に投入して浮動や撹拌させて使用されている。繊維集合体は激しい撹拌や処理水の流れが速いと、微生物が脱落し易いなどの問題がある。
【0005】
本発明に近似する独立気泡性発泡体から浮揚性のあるろ材として粉砕粒子を低圧で押出発泡して製造する方法がある(例えば、特許文献1を参照。)。しかし、このろ材は微生物繁殖用担持体ではあるが、これには界面活性剤による粉砕粒子表面への親水性イオン基を導入する概念はない。また、独立気泡性発泡体に炭酸カルシウムなどの親水性粉体を混入したものを粉砕して、親水化により早期からの処理能力の向上と浸水による浮揚力の抑制により生ずる浮遊流動性を向上させた技術がある(例えば、特許文献2参照。)。
【0006】
一方、本願発明とは気泡の形態が異なる連続気泡性樹脂発泡体の樹脂中に脂肪族グリセリンエステルなどの非イオン界面活性剤を樹脂100重量部につき1〜15重量部混入させて親水性とした技術が見られ、生物ろ過方式浄化槽に充填する微生物繁殖用担体の用途が記載されている(例えば、特許文献3参照。)。ここには担持体の形状の記載はないが、恐らく細片に切断したものを使用するものと考えられる。同様の技術で、連続気泡性発泡体の樹脂中にアニオン系および非イオン界面活性剤を樹脂100重量部につき1〜15重量部塗布または含浸させた微生物繁殖用担持体がある(例えば、特許文献4参照。)。これは早期に水に水没させて微生物の処理能力の向上を目的とする技術であり、発泡体と界面活性剤との構成であることは本願発明に類似するが、製造方法、形状、連泡率、浮揚性、使用目的において異なる。
【0007】
また、発泡したポリプロピレンに界面活性剤を含有させた水処理用微生物固定化担体がある(例えば、特許文献5参照。)。この目的とするところは、上述の2件の発明と同じであり、水との馴染みを良くして早期に微生物の分解無機化機能を発揮させることにあり、好ましい界面活性剤は非イオン系界面活性剤であるとしており、親水性化のみが目的のようである。また、特許文献5の図1に見られる好気処理層中の微生物固定化担体は発泡体のカット物のようであり、しかも曝気空気だけで浮動していることから連続気泡性発泡体のカット物と想定され、このことからも親水性化のみが目的とみられる。
【0008】
従来からある微生物繁殖用担持体のうち、比重が水よりもかなり重いものは処理水の流れで浮動しないため、下降水流や横水流で水処理する場合が多く、抑止メッシュ上に微生物繁殖用担持体を配置させて上向水流で処理することも可能であるが、敷設、洗浄、交換などにおける作業性が悪く、一般的な排水処理装置に組み込むには無理がある。最近、主流となっている微生物繁殖用担持体は比重が水に近いものであり、空隙のあるプラスチック成形品や連続気泡性樹脂発泡体のカット物や繊維集合体などであり、水中で水の比重に近く、排水処理装置に投入して嫌気性処理槽では撹拌により、好気性処理槽では曝気により浮動させて処理するケースが多い。
【0009】
比重が水に近い微生物繁殖用担持体には、浮揚性がないため撹拌や曝気を止めると沈降する性質があり、浮上させて所定の厚みのろ過層を形成させることができない。この点、浮揚性のある微生物繁殖用担持体はろ過層の形成により懸濁物質(SS分)の物理的吸着が可能であり、大きなものはろ過層下に沈降させることができる。また、上下に抑止メッシュを設け、この間に連続気泡性樹脂発泡体のカット物や繊維集合体を充填する方法でろ過層を形成させても、処理水流で浮動が起こったり、連続気泡中や繊維間の空隙を微細な汚染物質が通過する懸念がある。
【0010】
浮揚性およびろ過性に優れたろ材は、発泡プラスチックの細片や粒子が好適であるが、形状とともに発泡のセル構造も重要である。先述の連続気泡性発泡体からなる細片や粒子は吸水すると沈降し易く、また、発泡スチロールの発泡球状粒子のように100%に近い独立気泡をもつ粒子は浮力が大きすぎることと、充填粒子間の隙間が大きくろ過性能が劣る。この点、独立気泡性発泡体の粉砕粒子は、中心部の破壊されていない独立気泡と外周部の破壊された気泡とで構成され、適度な浮力をもつ一方で、水中の汚染物質との接触面積を広くもつことができる優れた物理的吸着性能を有するろ材といえる。
【0011】
一般にプラスチックは撥水性で水と馴染まない。発泡させてもその性質は変わらず、水中に没しても気泡を巻き込み水中の汚染物質の物理的吸着やろ過の効率の低下を招く。これに鑑み、炭酸カルシウムなどの親水性粉体を発泡体の樹脂中に混練して親水化して改良を加えている(例えば、特許文献2参照。)。しかし、無機充填材はそれ自身の比重が重く、多量に添加すると浮力を低下させることと、独立気泡の破壊が起こり、これも浮力低下の原因となる。
【0012】
一方、生活系排水、工場系廃水、農業系排水、道路系排水などの各種の排水中には様々な形態の汚染物質が含まれている。一般的には、BOD、CODで表される有機物質、有機態窒素や有機態リンなどの汚濁物質や無機態窒素、無機態リンなどのイオン性低分子、フミン質などの水溶性難分解物質などが挙げられるが、食品工場、化学品製造業の排水であればその製品固有の汚染物質が含まれるであろうし、排水処理方法を検討する場合には、排水中には多種多様の汚染物質が含まれることを前提とし、最適な方法を選択する必要がある。排水中の汚染物質が希薄で、少量の場合には、物理的吸着・ろ過でも良いが、水中に多量に存在する場合には物理的吸着・ろ過だけでは処理しきれない。このような場合、微生物による有機物の分解無機化や脱窒・脱リンを行うのが効率的である。しかし、上記独立気泡性発泡体の粉砕粒子は、微生物による有機物の無機化や物理的吸着・ろ過は可能であるが、様々なイオン性低分子や水溶性高分子のフミン質などが捕捉できない欠点がある。
【0013】
【特許文献1】
特許第2726376号公報
【特許文献2】
特開平8−141588号公報
【特許文献3】
特開2001−342277号公報
【特許文献4】
特開2002−199879号公報
【特許文献5】
特開平10−180280号公報
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、浮揚性に優れ、物理的な吸着・ろ過・微生物による分解無機化の機能に加えて、イオン性物質の吸着性能をもつ繁殖用担持体を得て、適正な使用方法を見つけることにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、浮揚性に優れた独立気泡性ポリオレフィン系発泡体に界面活性剤を練り込んだ粉砕粒子が、物理的な吸着・ろ過・微生物による分解無機化の機能に加えてイオン性物質の吸着性能をもつことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
すなわち、界面活性剤が独立気泡性ポリオレフィン系発泡体の樹脂中に練り込まれており、該発泡体の粉砕粒子からなることを特徴とする微生物繁殖用担持体であって、界面活性剤がカチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤および非イオン界面活性剤の4種類の界面活性剤のいずれか1種または2種以上であることが好ましく、界面活性剤の練り込み重量部数が、独立気泡性ポリオレフィン系発泡体の発泡前の樹脂100重量部に対して、0.01〜10重量部であることが好ましく、独立気泡性ポリオレフィン系発泡体の粉砕粒子が、ビーズ法型内発泡成形法の原料ビーズの破砕粒子および発泡成形品の破砕粒子のいずれか1種または2種であることが好ましく、独立気泡性ポリオレフィン系発泡体の独立気泡の直径が10μm〜500μmであることが好ましく、粉砕粒子の短径が1mm〜30mmであることが好ましい。
【0017】
本発明の第二は、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤および非イオン界面活性剤の4種類の界面活性剤のいずれか1種または2種以上である界面活性剤がそれぞれ別個の独立気泡性ポリオレフィン系発泡体の樹脂中に練り込まれており、該発泡体の粉砕粒子を混合して使用することを特徴とする微生物繁殖用担持体の使用方法である。
【0018】
本発明の第三は、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤および非イオン界面活性剤の4種類の界面活性剤のいずれか1種または2種以上である界面活性剤がそれぞれ別個の独立気泡性ポリオレフィン系発泡体の樹脂中に練り込まれており、該発泡体の粉砕粒子が層状集合体であって、該層状集合体を複数層にして使用することを特徴とする微生物繁殖用担持体の使用方法である。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明にいう微生物繁殖用担持体とは、界面活性剤が樹脂中に練り込まれた独立気泡性ポリオレフィン系発泡体の粉砕粒子からなるものであって、微生物が粉砕粒子の細孔中で繁殖が可能である。
【0020】
本発明にいう独立気泡性ポリオレフィン系発泡体に使用されるポリオレフィン系樹脂は、オレフィン単量体を50%以上、好ましくは70%〜100%、含有し、オレフィン単量体と共重合可能な単量単位を50%以下、好ましくは30%〜0%、含有する樹脂である。オレフィン単量体の具体例としては、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテンなどの炭素数2〜8のαオレフィン単量体やノルボルネン系モノマーなどの環状オレフィンなどをあげることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、オレフィン単量体と共重合可能な単量体の具体例としては、酢酸ビニルなどのビニルアルコール、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、ヘキシルアクリレートなどのアルキル基の炭素数が1〜6の(メタ)アクリル酸エステル、ビニルアルコール、メタクリル酸、塩化ビニルなどがあげられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
さらに、前記ポリオレフィン系樹脂の具体例として、エチレン−プロピレンランダム供重合体、エチレン−プロピレン−ブテンランダム3元供重合体、ポリエチレン−ポリプロピレンブロック共重合体,ホモポリプロピレンなどのポリプロピレン系樹脂;低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体などのポリエチレン樹脂;ポリブテン、ポリペンテンなどをあげることができる。これらのポリマーは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、上記ポリオレフィン系樹脂は、無架橋で用いてもよいが、パーオキサイドや放射線などにより架橋させて用いてもよい。
【0022】
本発明に用いる界面活性剤は、特に限定はないが、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤を1種以上用いることが好ましい。上記界面活性剤はいずれも親水基を有するため、浸水時の気泡の巻き込みが少なく、排水処理の効率が向上する。また、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤などのイオン系界面活性剤は、排水中の汚染物質のイオン性物質をイオン吸着ろ過する性能が備わるため優れた微生物繁殖用担持体となる。1種または2種以上の界面活性剤が樹脂中に練り込まれた独立気泡性ポリオレフィン系発泡体の粉砕粒子からなる微生物繁殖用担持体は排水処理水中のイオン物質などの汚染物質の中身にあわせて、その種類を使い分けることでそのイオン吸着・ろ過効果を高めることが可能となる。
【0023】
本発明に用いられる代表的な界面活性剤は、カチオン系界面活性剤では、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエトキシ硫酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩を例示することができ、アニオン系界面活性剤では、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アシロイルアミドプロピルトリメチルアンモニウムメトサルフェート、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩、アシル塩化コリンを例示することができ、両性界面活性剤では、アルキルベタイン型、イミダゾリン型、アラニン型などを例示することができ、非イオン界面活性剤では、脂肪酸アルキロールアミド、ジ−(2−ヒドロキシルエチル)アルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、脂肪酸グリセリンエステル、ポリオキシエチレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルなどを例示することができる。
【0024】
本発明では、異種の界面活性剤が練り込まれた粉砕粒子を混合して使用することを提案しているが、これは排水処理水中のイオン物質などの汚染物質の中身にあわせて、その界面活性剤のイオンの種類を選定し、組合せや配合割合を事前に決めて使用することにより、イオン吸着・ろ過効果を高めることが可能である。
【0025】
さらに、本発明では、図2に示したように、異種の界面活性剤が練り込まれた粉砕粒子からなる複数の層状集合体による構成も提案し、排水処理水中のイオン物質などの汚染物質の中身にあわせて、その界面活性剤のイオンの種類を選定し、組合せや層状集合体の厚みを事前に設定して使用することによりイオン吸着・ろ過効果を高めることが可能である。
【0026】
界面活性剤の練り込み重量部数は、発泡前のポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、0.01〜10重量部であることが好ましい。さらに好ましくは、0.05〜5重量部である。上記範囲より少ない場合には、イオン性物質のイオン吸着・ろ過効果および持続性が劣る場合があり、多すぎると粉砕粒子の近傍で必要以上の泡立ちを生じる恐れがある。
【0027】
本発明においては、独立気泡性ポリオレフィン系発泡体の粉砕粒子を使用するが、これは適度な浮揚性をもたせるためである。ポリオレフィン樹脂が耐久性のある以外に、好ましい理由として、ポリオレフィン樹脂は結晶性ポリマーであってガラス転移温度が低く室温でもそのセグメント内でミクロブラウン運動が行われ、界面活性剤の表面移行が起こり、仮に表面に付いた界面活性剤が洗い落とされても、内部から補給されるため、イオン吸着・ろ過効果が長く持続するからで、この点ポリスチレンなどの非結晶性ポリマーはガラス転移温度が室温より高いものが多く、この性質がないからである。
【0028】
界面活性剤が独立気泡性ポリオレフィン系発泡体の樹脂中に練り込まれており、該発泡体の粉砕粒子からなる微生物繁殖用担持体の製造方法は、押出機にポリオレフィン系樹脂および界面活性剤を投入して、これを分解型発泡剤または揮発性発泡剤で押出発泡させる方法やポリオレフィン系樹脂および界面活性剤に熱分解型発泡剤のほか、必要に応じて架橋剤、発泡助剤などを添加し、熱分解型発泡剤が熱分解しない温度でロールやミキサーなどで溶融混練し、金型中で所定形状に成形後、熱分解型発泡剤が発泡可能な温度で発泡させるバッチタイプの発泡方法で製造される発泡体を粉砕することによって可能となる。粉砕方法は2軸剪断式破砕機で破砕するのが一般的であるが、所望の大きさおよび気泡構成の粒子が得られるものであれば特に限定はない。ポリオレフィン系発泡体の独立気泡率が100%近く、且つ球状の気泡が得られる点から、ビーズ法型内発泡成型法の原料ビーズおよび発泡成形品からのいずれか1種である粉砕粒子であることが好ましい。
【0029】
前記ポリオレフィン系発泡体の原料ビーズとは、例えば、界面活性剤とオレフィン系樹脂とを押出機のスクリュウで加熱混練しながら糸状に押し出し、これをカットしてペレットを得、次に密閉耐圧容器内で水系媒体に分散剤により分散させ、揮発性発泡剤を加え、ペレットの軟化温度以上の発泡温度にまで加熱し、前記密閉耐圧容器の内圧よりも低圧の雰囲気下に放出して得られる予備発泡粒子のことである。この予備発泡粒子を粉砕機で粉砕してもよいが、ビーズ法型内発泡成形した成形品を粉砕機で粉砕することにより、本発明の微生物繁殖用担持体を得ることができる。
【0030】
前記ビーズ法型内発泡成形法として代表されるのはビーズ法発泡スチレンにおける発泡成形方法である。これは、まず揮発性発泡剤を溶存する球形の微小ポリスチレンビーズを予備発泡機で蒸気加熱し所望の発泡倍率(密度)の予備発泡粒子を得る。次に、発泡成形機に設置された開閉可能な金型を閉じ、該金型の空間部に該予備発泡粒子を充填し、金型周囲に設置された蒸気室から金型表面に無数に配置された小孔から蒸気を金型内に投入し、発泡させて充填粒子間にあった空隙部を埋め、粒子同士を溶融固着させ、冷却後金型を開として、所望の形状の発泡成形体を得る方法である。ビーズ法発泡オレフィン系樹脂においても基本的には全く同様といえるが、異なる点はポリオレフィン系樹脂には溶剤型発泡剤を溶存する力がなく、発泡後の予備発泡粒子に2次発泡余力が弱いので、金型に充填する前の予備発泡粒子に無機ガスを加圧封入したり、予備発泡粒子を加圧収縮させて金型に充填するなどの工程を必要とする。
【0031】
独立気泡性ポリオレフィン系発泡体の独立気泡の直径は10μm〜500μmであることが好ましい。より好ましくは、50μm〜300μmである。これは微生物のサイズの長径が概ね5μm〜100μmであることと、独立気泡の直径が小さくなればなるほど粉砕粒子の周囲の破壊された気泡の比表面積が向上して処理する水中の汚染物質との接触の機会が増えるが、小さすぎるとSS分を捕捉できなくなるためである。また、独立気泡の直径が大きくなると比表面積が減少して、処理する水中の汚染物質との接触の機会が減ずるためである。
【0032】
独立気泡の直径の測定方法は、発泡体をカッターナイフで約3×3cm2以上のカット面となるようカットし、カット面の無数の独立気泡をインクやマジックインクで着色し、スケールの付いたルーペ(拡大倍率40または80)で観測し、そのスケール(例えば、20mm)に対する直線上の独立気泡の数を数えて、独立気泡1個当たりの平均気泡径を求める方法で行った。
【0033】
独立気泡性ポリオレフィン系発泡体の粉砕粒子の大きさは、短径で1mm〜30mmが好ましく、より好ましくは2mm〜5mmである。小さすぎると中心部の独立気泡まで破壊されて浮揚性が低下する恐れがあり、逆に大きすぎると浮力が大きすぎることと比表面積が減って処理する水中の汚染物質との接触の機会が減ずるためである。このようなサイズの粉砕粒子は、網目サイズの異なる2種類の篩を用いて篩別することができ、網目5mm〜30mmの篩を通過し、網目1mm〜2mmの篩を通過しない粉砕粒子を所望のサイズの粉砕粒子として用いることができる。
【0034】
本発明による微生物繁殖用担持体の使用方法は、一般的な嫌気性処理槽および好気性処理槽のいずれか単独または連結併用において使用が可能で、処理槽内に浮揚させて使用する。この際、浮揚させた粉砕粒子の層状集合体層を残して、その下方で、嫌気性処理槽では撹拌を好気性処理槽では曝気を行うことは、微生物の繁殖および汚染物質の分解無機化促進に対して有効な手段となる。さらに、好気性処理、嫌気性処理の違いで付着微生物集団の調整を行うことも汚染物質の分解無機化促進のために必要な手段である。
【0035】
次に、図1に示した嫌気性処理槽10および好気性処理槽11を連結併用した場合の実施態様について説明する。被処理液1は入口管12を通じて嫌気性処理槽10に導入される。嫌気性処理槽10には、上部に抑止メッシュ17Aが設けられており、その下方に本発明の微生物繁殖用担持体5Aを浮揚させ層状集合体を形成している。該微生物繁殖用担持体の発泡体に使用している界面活性剤および担持している微生物は処理すべき排水の水質に依存して最適なものを選択することができる。
微生物繁殖用担持体5Aの下部には攪拌機15を設け、被処理水1に流動性を与え、微生物繁殖用担持体5Aを浮揚させた層状集合体の下部において、被処理水1との撹拌が起こり、被処理水1と微生物繁殖用担持体5Aとの接触が促進される。なお、嫌気性処理槽10においては、脱窒反応が起こり、窒素酸化物は窒素ガスにまで還元される。抑止メッシュ17Aの上部にある一次処理水2は、さらに好気性処理槽11に移し、好気的な処理を行う。好気性処理槽11には、上部に抑止メッシュ17Aが設けられており、その下方に本発明の微生物繁殖用担持体5Bを浮揚させ層状集合体を形成している。該微生物繁殖用担持体の発泡体に使用している界面活性剤および担持している微生物は処理すべき排水の水質に依存して最適なものを選択することができる。微生物繁殖用担持体5Bの下部には通気管16を設け、被処理水に流動性を与えるとともに通気を行い好気的に微生物を繁殖させることができる。抑止メッシュ17Aの上部にある処理水3は出口管13を通じて排出されるが、好気性処理槽11においては、亜硝酸菌および硝酸菌により、有機態窒素は酸化され亜硝酸態窒素あるいは硝酸態窒素となるので、その一部をさらに嫌気性処理槽10に戻し、窒素ガスに還元する。
【0036】
さらに、図2には異種の微生物繁殖用担持体を使用した嫌気性処理槽10および好気性処理槽11を連結併用した実施態様を示した。被処理水1は入口管12を通じて嫌気性処理槽10に導入される。嫌気性処理槽10には、上部に抑止メッシュ17Aが設けられており、その下方に本発明の微生物繁殖用担持体5Aを浮揚させ層状集合体を形成しており、微生物繁殖用担持体5Aの下部には攪拌機15を設け、被処理水に流動性を与え、微生物繁殖用担持体5Aを浮揚させた層状集合体の下部において、被処理水との撹拌が起こり、被処理水と微生物繁殖用担持体5Aとの接触が促進される。さらにその下部に抑止メッシュ17Bを設け、上部とは異種の微生物繁殖用担持体5Cを浮揚させ層状集合体を形成しており、微生物繁殖用担持体5Cの下部には攪拌機15を設け、被処理水に流動性を与え、微生物繁殖用担持体5Cを浮揚させた層状集合体の下部において、被処理水との撹拌が起こり、被処理水と微生物繁殖用担持体5Cとの接触が促進される。このことにより排水をより効率的に浄化することができる。微生物繁殖用担持体の発泡体に使用している界面活性剤および担持している微生物並びにその組合せなど処理すべき排水の水質に依存して最適なものを選択することができる。なお、嫌気性処理槽10における反応は、基本的には図1の場合と同様である。抑止メッシュ17Aの上部にある一次処理水2は、さらに好気性処理槽11に移し、好気的な処理を行う。好気性処理槽11には、上部に抑止メッシュ17Aが設けられており、その下方に本発明の微生物繁殖用担持体5Bを浮揚させ層状集合体を形成し、さらにその下部に抑止メッシュ17Bを設け、上部とは異種の微生物繁殖用担持体5Dを浮揚させ層状集合体を形成しており、排水をより効率的に浄化することができる。微生物繁殖用担持体の発泡体に使用している界面活性剤および担持している微生物並びにその組合せなど処理すべき排水の水質に依存して最適なものを選択することができる。微生物繁殖用担持体5Dの下部には通気管16を設け、被処理水を均一に撹拌すると同時に通気を行い好気的に微生物を繁殖することができる。抑止メッシュ17Aの上部にある処理水3は出口管13を通じて排出されるが、その一部をさらに嫌気性処理槽10に戻し、再処理を行うことは、図1に示した処理装置と同様である。なお、好気性処理槽11における反応は、基本的には図1の場合と同様である。
【0037】
【実施例】
次に実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明の趣旨はこれらの実施例 によってなんら限定されるものではない。
【0038】
(実施例1)
エチレン含有量が3%のエチレン−プロピレンランダムコポリマーのラージペレット100重量部に対し、カチオン系界面活性剤のアシロイルアミドプロピルトリメチルアンモニウムサルフェート1.0重量部および発泡造核剤などの添加剤とをマスターバッチとし、押出機内で溶融混練させ糸状に押し出し、ペレタライザーにて直径約0.7mmで、長さ約10mmのスモールペレットを作製した。このスモールペレットを耐圧容器中に水、分散剤とともに仕込み撹拌機で撹拌し、耐圧容器のジャケットに蒸気を投入して昇温した。昇温途中で揮発性発泡剤のブタンを投入し、耐圧容器内の温度が150℃、圧力が1.667MPa(17kg/cm2)で安定するまでブタンを追加した。次に、耐圧容器に連結する配管の仕切り板にある口径6mmの円孔を開放して大気中に放出して発泡させた。この間、耐圧容器内の圧力が一定となるようブタンを追加し続けた。得られた予備発泡粒子は直径約3mmのほぼ球体であり、発泡倍率5倍(密度=0.18g/cm3)で約98%の独立気泡を有していた。この予備発泡粒子を加圧タンク内に仕込み、空気加圧して発泡粒子内の独立気泡内に加圧空気を含浸させた。
独立気泡内の空気圧は1,520hPa(1.5atm)であった。次に、加圧空気が含浸された予備発泡粒子を発泡成形機に搭載された開閉可能な金型を閉じた状態として、該金型内に充填機により充填し、金型に付帯する蒸気チャンバーから金型面にある無数の細孔を通して蒸気を投入し、約140℃で加熱発泡させ、冷却後金型から取り出して、板状体の発泡成形品を得た。その平均気泡径を測定した結果、約180μmであった。次に、複数の刃物をセットした破砕ローターと被破砕物を破砕ローターに押しつける供給プレスシャーをもつ破砕機に該板状体の発泡成形品を投入して粉砕し、網目5mmのスクリーンを通過させ、さらに網目2mmのスクリーンで篩い、短径2〜5mm、平均粒径約3mmの樹脂中にカチオン系界面活性剤が練り込まれた、中心部に独立気泡を有し、外周部に破壊された気泡を有する、浮揚性に優れた、独立気泡性ポリオレフィン系発泡体の粉砕粒子である微生物繁殖用担持体を得た。
【0039】
(実施例2)
実施例1と同一の方法で、エチレン分3%のポリプロピレンランダムコポリマー100重量部にアニオン系界面活性剤のアルキルリン酸エステル塩1.0重量部を練り込んだ、独立気泡性ポリオレフィン系発泡体の粉砕粒子である微生物繁殖用担持体を得た。
【0040】
(実施例3)
実施例1と同一の方法で、エチレン分3%のポリプロピレンランダムコポリマー100重量部に非イオン界面活性剤のジ−(2−ヒドロキシエチル)アルキルアミン1.0重量部を練り込んだ、独立気泡性ポリオレフィン系発泡体の粉砕粒子である微生物繁殖用担持体を得た。
【0041】
(実施例4)
実施例1と同一の方法で、エチレン分3%のポリプロピレンランダムコポリマー100重量部にカチオン系界面活性剤のアシロイルアミドプロピルトリメチルアンモニウムサルフェート0.5重量部およびアニオン系界面活性剤のアルキルリン酸エステル塩0.5重量部を練り込んだ、独立気泡性ポリオレフィン系発泡体の粉砕粒子である微生物繁殖用担持体を得た。
【0042】
(実施例5)
実施例1で得たカチオン系界面活性剤が練り込まれた粉砕粒子50%と実施例2のアニオン系界面活性剤の入った粉砕粒子50%とを混合した微生物繁殖用担持体を得た。
【0043】
(実施例6)
図2に示したように、連続した嫌気性処理槽および好気性処理槽の両者で、実施例1で得たカチオン系界面活性剤が練り込まれた粉砕粒子による厚さ15cmの層状集合体の浮上層を形成し、さらにこの層の上部に実施例2のアニオン系界面活性剤の入った粉砕粒子による厚さ15cmの層状集合体の浮上層をメッシュを介して形成させた微生物繁殖用担持体を得た。
【0044】
(実施例7)
基本的には実施例1と同一の方法であるが、予備発泡条件の温度・圧力や発泡成形の温度など樹脂の耐熱性に合わせて低めに設定し、空気含浸を省略して、直鎖低密度ポリエチレン100重量部にアニオン系界面活性剤のアルキルリン酸エステル塩0.5重量部を練り込んだ、発泡倍率10倍で気泡径250μmの独立気泡性ポリオレフィン系発泡体の粉砕粒子である微生物繁殖用担持体を得た。
【0045】
(実施例8)
実施例7と同じ方法で、直鎖低密度ポリエチレン100重量部に非イオン界面活性剤のジ−(2−ヒドロキシエチル)アルキルアミン0.5重量部を練り込んだ、独立気泡性ポリオレフィン系発泡体の粉砕粒子である微生物繁殖用担持体を得た。
【0046】
(比較例1)
実施例1と同一の方法で、エチレン分3%のポリプロピレンランダムコポリマーに界面活性剤を加えず、独立気泡性ポリオレフィン系発泡体の粉砕粒子である微生物繁殖用担持体を得た。
【0047】
(評価試験)
実施例1〜5および実施例7〜8並びに比較例1の微生物繁殖用担持体について、図1に示したように、連続した嫌気性処理槽および好気性処理槽を用いて、その物理的吸着、イオン的吸着およびろ過性試験を行った。その結果、実施例1〜5および実施例7〜8の微生物繁殖用担持体は、いずれも比較例1と比べて、BOD、CODで表される有機物質、有機態窒素や有機態リンなどの汚毒物質や無機態窒素、無機態リンなどの微生物による分解無機化および物理的吸着・ろ過に加えて各種イオン性低分子、フミン質などの水溶性難分解物質などがイオン吸着により効率良く除去されていることが確認された。
【0048】
【発明の効果】
本発明の樹脂中に界面活性剤が練り込まれた独立気泡性ポリオレフィン系発泡体の粉砕粒子であって、中心部に独立気泡を有し、外周部に破壊された気泡を有する微生物繁殖用担持体は、微生物による汚染物質の分解無機化機能に加え、表面に存在する各種イオンが樹脂を親水化し、排水中のイオン性物質を吸着・ろ過する能力をもたせることができた。また、その表面には正イオンから負イオンに至るまで存在させることで、微生物の付着し易さも調整することができ、さらに好気性処理あるいは嫌気性処理を選択することにより、付着微生物集団の調整も可能である。加えて、樹脂内部に存在する界面活性剤が時間をかけて表面に移行するため効果が持続し、浮揚性のろ材の特徴を生かした新たな微生物繁殖用担持体を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】微生物繁殖用担持体を使用した排水処理設備の1例
【図2】異種の微生物繁殖用担持体を使用した排水処理設備の1例
【符号の説明】
1.被処理水
2.一次処理水
3.処理水
4.液面
5A.微生物繁殖用担持体 5B.微生物繁殖用担持体
5C.微生物繁殖用担持体 5D.微生物繁殖用担持体
6.沈降物質
10.嫌気性処理槽
11.好気性処理槽
12.入口管
13.出口管
14.バルブ
15.攪拌機
16.通気管
17A.抑止メッシュ 17B.抑止メッシュ
Claims (8)
- 界面活性剤が独立気泡性ポリオレフィン系発泡体の樹脂中に練り込まれており、該発泡体の粉砕粒子からなることを特徴とする微生物繁殖用担持体。
- 前記界面活性剤がカチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤および非イオン界面活性剤の4種類の界面活性剤のいずれか1種または2種以上であることを特徴とする請求項1に記載の微生物繁殖用担持体。
- 前記界面活性剤の練り込み重量部数が、独立気泡性ポリオレフィン系発泡体の発泡前の樹脂100重量部に対して、0.01〜10重量部であることを特徴とする請求項1または2に記載の微生物繁殖用担持体。
- 前記独立気泡性ポリオレフィン系発泡体の粉砕粒子が、ビーズ法型内発泡成形法の原料ビーズの破砕粒子および発泡成形品の破砕粒子のいずれか1種または2種であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の微生物繁殖用担持体。
- 前記独立気泡性ポリオレフィン系発泡体の独立気泡の直径が10μm〜500μmであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の微生物繁殖用担持体。
- 前記粉砕粒子の短径が1mm〜30mmであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の微生物繁殖用担持体。
- カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤および非イオン界面活性剤の4種類の界面活性剤のいずれか1種または2種以上である界面活性剤がそれぞれ別個の独立気泡性ポリオレフィン系発泡体の樹脂中に練り込まれており、該発泡体の粉砕粒子を混合して使用することを特徴とする微生物繁殖用担持体の使用方法。
- カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤および非イオン界面活性剤の4種類の界面活性剤のいずれか1種または2種以上である界面活性剤がそれぞれ別個の独立気泡性ポリオレフィン系発泡体の樹脂中に練り込まれており、該発泡体の粉砕粒子が層状集合体であって、該層状集合体を複数層にして使用することを特徴とする微生物繁殖用担持体の使用方法。
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