以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分について図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
(実施の形態1)
(湿式画像形成装置の全体構成および動作)
図1は、本実施の形態に係る湿式画像形成装置の全体構成を示す図である。図1を参照して、本実施の形態に係る湿式画像形成装置100の全体構成について説明する。
図1に示すように、本実施の形態に係る湿式画像形成装置100は、像担持体としての感光体ドラム1と、帯電装置2と、露光装置3と、湿式現像装置4と、転写部としての中間転写部材5および2次転写部材6と、像担持体クリーニング装置7と、中間転写部材クリーニング装置8とを備える。
感光体ドラム1は、表面に感光体層(不図示)が形成された円筒形状である。感光体ドラム1は、図1中の矢印A方向に回転駆動する。感光体ドラム1の外周には、帯電装置2、露光装置3、湿式現像装置4、中間転写部材5、像担持体クリーニング装置7が、感光体ドラム1の回転方向(A方向)に沿って順次配置されている。
帯電装置2は、感光体ドラム1の表面を所定電位に帯電させる。露光装置3は、感光体ドラム1の表面に光を照射し照射領域内の帯電レベルを低下させて静電潜像を形成する。湿式現像装置4は、感光体ドラム1上に形成された静電潜像を現像する。具体的には、感光体ドラム1の現像領域へ湿式現像剤を搬送し、当該湿式現像剤に含まれるトナー粒子を感光体ドラム1の表面の静電潜像に供給してトナー像を形成する。
現像プロセスにおいては、後述する湿式現像装置4の現像剤担持体9に電源(不図示)から現像バイアス電圧が印加される。感光体ドラム1上の静電潜像の電位と現像剤担持体9の電位とのバランスで生じた電界に従って湿式現像剤中のトナー粒子が感光体ドラム1の静電潜像部分に静電吸着され、感光体ドラム1上の静電潜像が現像される。
中間転写部材5は、感光体ドラム1と対向するように配置されており、感光体ドラム1と接触しながら図中の矢印B方向に回転する。中間転写部材5と感光体ドラム1とのニップ部で、感光体ドラム1から中間転写部材5への一次転写が行なわれる。
一次転写プロセスにおいては、中間転写部材5に電源(不図示)から転写バイアス電圧が印加される。これにより、一次転写位置における中間転写部材5と感光体ドラム1との間に電界が形成され、感光体ドラム1上のトナー像が、中間転写部材5に静電吸着される。この結果、感光体ドラム1上のトナー像が、中間転写部材5上に転写される。
感光体ドラム1上のトナー像が中間転写部材5に転写されると、像担持体クリーニング装置7が感光体ドラム1上の残存トナー像を除去し、次の画像形成が行なわれる。必要に応じて、像担持体クリーニング装置7と帯電装置2との間にはイレーサーランプ10が設置される。
中間転写部材5と2次転写部材6とは、記録材としての記録媒体11を挟んで対向するように配置されており、記録媒体11を介して接触回転する。中間転写部材5と2次転写部材6とのニップ部で、中間転写部材5から記録媒体11への二次転写が行なわれる。記録媒体11は、二次転写のタイミングに合わせて二次転写位置へ図中の矢印C方向に搬送される。
二次転写プロセスにおいては、2次転写部材6に、電源(不図示)から転写バイアス電圧が印加される。これにより、中間転写部材5と2次転写部材6との間に電界が形成され、中間転写部材5と2次転写部材6との間を通過させた記録媒体11上へ中間転写部材5上のトナー像が静電吸着される。この結果、中間転写部材5上のトナー像が記録媒体11上に転写される。
トナー像が記録媒体11上に転写されると、中間転写部材クリーニング装置8が中間転写部材5上の残存トナー像を除去し、次の一次転写が行なわれる。記録媒体11はその後図示しない定着装置へと搬送され、記録媒体11上のトナー粒子を加熱溶融することによりトナー粒子を記録媒体11に定着させる。
なお、図1では、感光体ドラム1と湿式現像装置4とを1組として、単色の湿式画像形成装置100を示しているが、感光体ドラム1と湿式現像装置4とを合計4組用意し、それぞれにCMYK(シアン(Cyan)、マゼンタ(Magenta)、イエロー(Yellow)、黒(Black))の各色の画像形成をさせ、中間転写部材5上で重ね合わせる構成にしたカラーの画像形成装置に対しても本発明は適用可能である。また、中間転写部材5を省略して感光体ドラム1から直接記録媒体にトナー像を転写させる直接転写方式に対しても本発明は適用可能である。その他、従来から用いられる電子写真各プロセス技術は、画像形成装置の目的に応じて任意の構成と組み合わせることができる。
(湿式現像剤の構成)
現像に用いる湿式現像剤について説明する。湿式現像剤は、溶媒であるキャリア液中に着色されたトナー粒子121aを高濃度で分散している。湿式現像剤には、分散剤、荷電制御剤などの添加剤を適宜、選んで添加してもよい。
キャリア液としては、絶縁性の溶媒が用いられる。トナー粒子は、主として樹脂と着色のための顔料または染料からなる。樹脂には、顔料または染料をその樹脂中に均一に分散させる機能と、記録媒体11に定着される際のバインダとしての機能がある。
トナー粒子としては、一般に電子写真方式の湿式現像剤に用いるものであれば、特に制
限することなく使用することができる。トナー粒子用結着樹脂としては、たとえばポリスチレン樹脂、スチレンアクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、その他熱可塑性樹脂を用いることができる。これらの樹脂を複数、混合して用いることも可能である。トナー粒子の着色に用いられる顔料および染料も一般に市販されているものを用いることができる。
トナー粒子の体積平均粒子径は、0.1μm以上5μm以下の範囲が適当である。トナー粒子の平均粒子径が0.1μmを下回ると現像性が大きく低下する。一方、平均粒子径が5μmを超えるとドット、ベタを含めた画像の品質が低下する。トナー粒子の体積平均粒子径は、1μm以上2μm以下の範囲がさらに好ましい。トナー粒子の平均粒子径が1μm以上の場合には、クリーニング性がさらに良好となり、トナー粒子の平均粒子径が2μm以下の場合には、画像においてベタ部の均一性がさらに安定する。
湿式現像剤の調製方法としては、一般に用いられる技法に基づいて調製することができる。たとえば、結着剤樹脂と顔料とを所定の配合比で、加圧ニーダ、ローラーミルなどを用いて溶融混練して均一に分散させ、得られた分散体をたとえばジェットミルによって微粉砕する。得られた微粉末をたとえば風力分級機などにより分級することで、所望の粒径の着色トナー粒子を得ることができる。得られたトナー粒子をキャリア液としての絶縁性液体と所定の配合比で混合する。この混合物をボールミル等の分散手段によって均一に分散させることにより湿式現像剤を得ることができる。
湿式現像剤の質量に対するトナー粒子の質量の割合は、10%以上50%以下であることが好ましい。湿式現像剤の質量に対するトナー粒子の質量の割合が10%以上である場合には、トナー粒子の沈降が生じにくく、長期保管時においてトナー粒子が経時的に高いい安定性を有し、また、所望の画像濃度を得るために必要な湿式現像剤の量を低減することができる。これにより、トナー粒子を定着させる際に多くのキャリア液を乾燥させる必要がなくなり、キャリア液から多くの蒸気が発生することを防止できる。液体現像剤の質量に対するトナー粒子の質量の割合が50%以下である場合には、液体現像剤の粘度が適切な値となり、製造時における取扱いが良好となる。
(湿式現像装置の構成および現像プロセス)
図1に示すように、湿式現像装置4は、現像剤槽13、汲み上げ部材14、供給部材16、現像剤担持体9、規制ブレード15、帯電部としてのトナー帯電装置17、除電部としての除電装置19および除去部18を含む。
現像剤槽13には、上述の湿式現像剤12が貯留されている。汲み上げ部材14は、現像剤槽13内の湿式現像剤に一部が浸漬するように設けられている。また、汲み上げ部材14は、図中矢印D方向に回転する。汲み上げ部材14としては、ウレタン製またはNBR(ニトリルブタジエンゴム)製のゴムローラー、または、表面に凹部を設けたアニロックスローラーを採用することができる。
供給部材16は、汲み上げ部材14および現像剤担持体9の両方に湿式現像剤12を介して接触するように、汲み上げ部材14と現像剤担持体9との間に配置されている。供給部材16は、図中矢印E方向に回転する。供給部材16としては、ウレタン製またはNBR製のゴムローラーを採用することができる。
現像剤担持体9は、感光体ドラム1および供給部材16の両方に湿式現像剤12を介して接触するように、感光体ドラム1と供給部材16との間に配置されている。現像剤担持体9は、図中矢印F方向に回転する。現像剤担持体9の周辺においては、供給部材16、トナー帯電装置17、感光体ドラム1、除電装置19、および除去部18が、現像剤担持体9の回転方向に沿ってこの順に配置されている。
なお、汲み上げ部材14、供給部材16および現像剤担持体9の相対的な回転方向は、上述の回転方向と異なっていてもよい。また、供給部材16を省略して、汲み上げ部材14が供給部材16としての役割を兼ねてもよい。
トナー帯電装置17としては、コロトロン、スコロトロンおよび放電ローラー等を採用することができる。除去部18としては、クリーニングブレード等を採用することができる。
除電装置19としては、たとえばACコロトロンを採用することができる。除電装置19は、現像剤担持体9に向けて開口するシールドケース191と、シールドケース191内に配置された放電部材としての放電電極192と、当該放電電極192に交流バイアスを印加する交流バイアス電源193とを備える。放電電極192は、残留トナー粒子が付着しないように現像剤担持体9上に残留した湿式現像剤12から離れて配置される。
放電電極192を湿式現像剤12から離れて配置することにより、交流バイアスを印加して放電電極がトナー粒子と反対の極性となった場合でも、湿式現像剤12に含まれるトナー粒子のうち高電位に帯電したトナー粒子が静電気力によって放電電極192に吸着することを防止できる。これにより、放電電極192が汚染されることによって繰り返し均一に交流放電を行なうことができなくなることを防止でき、現像後の湿式現像剤12を安定して除電することができる。
印加する交流バイアスとしては、矩形波、サイン波、三角波、のこぎり波、ブランク波などの波形を使用することができる。交流バイアスの周波数としては、1000Hz以上100000Hz以下が好ましい。周波数が1000Hz未満である場合には、交流バイアスの印加状態に場所ムラが生じ、トナー粒子の電位の収束作用が不十分な領域が生じる。周波数が100000Hzを超えた場合には、トナー粒子が、交流電界の変動に追従することができずトナー粒子の電位の収束作用が不十分な領域が生じる。
交流バイアスの振幅は、放電するに十分に大きければよく、ACコロントロンあれば数Kv以上とし、火花放電などが発生せず安全に使用できる範囲内に設定することが好ましい。
現像を行なうに際して、まず、汲み上げ部材14が図中に示す矢印D方向に回転することによって、湿式現像剤12が汲み上げ部材14の表面に汲み上げられる。汲み上げ部材14の表面に汲み上げられた湿式現像剤12は、汲み上げ部材14に当接して設けられた規制ブレード15によって一定の膜厚に規制される。
湿式現像剤12が規制された後、汲み上げ部材14は、供給部材16に当接して湿式現像剤12を供給部材16に受け渡す。供給部材16は、現像剤担持体9との当接部(ニップ部)において回転方向が逆方向となるように回転しており、受け渡された湿式現像剤12をその方向に搬送する。湿式現像剤12は、供給部材16と現像剤担持体9との対向部にて現像剤担持体9上に受け渡される。
現像剤担持体9上に受け渡された湿式現像剤12は、トナー帯電装置17によって湿式現像剤12中のトナー粒子がその正規帯電極性に帯電される。トナー帯電装置17は、印加する電圧に応じてトナー粒子に付与する帯電量を変更することができる。なお、正規帯電極性は、正極性または負極性のいずれか一方である。
トナー粒子が帯電された湿式現像剤12は、現像剤担持体9が図中矢印F方向に回転することにより、感光体ドラム1と現像剤担持体9との対向部である現像ニップ部に移動する。現像ニップ部において、現像剤担持体9上に担持された現像剤に含まれるトナー粒子の一部が、感光体ドラム1側に移動して感光体ドラム1上の静電潜像を現像する。
現像に使用されず現像剤担持体9上に残留した湿式現像剤12に含まれるトナー粒子は、除電装置19によって除電される。除電されたトナー粒子を含む湿式現像剤12は、除去部18によって現像剤担持体9上から除去される。湿式現像剤12の除去プロセスの詳細については後述する。
除去部18により除去された湿式現像剤12は、現像槽13内の湿式現像剤12とトナー濃度が異なるため、現像剤槽13とは別の現像剤回収槽(図示せず)に回収される。回収された湿式現像剤12は、トナー濃度を調整後、再び現像剤槽13に戻される。
(湿式現像剤の除去プロセス)
湿式現像剤の除去プロセスにあっては、まず、除電装置19によって現像後の現像剤担持体9上に残留しているトナー粒子を除電する。この際、除電装置19の放電電極192に交流バイアスを印加することにより、現像後の画像領域と非画像領域とにおいて量および帯電量が異なるトナー粒子を適正に除電することができる。これにより、トナー粒子に対する現像剤担持体9の静電気的な拘束力を十分に低減させることができ、除去部18によって現像剤担持体上に残留しているトナー粒子を確実に除去することができる。以下、その現象について説明する。
図2(A)および図2(B)は、図1に示す現像装置において交流バイアスが印加された放電部材によって現像剤担持体上に残留したトナー粒子に電荷を与える際の画像領域側の様子を示す模式図および非画像領域側の様子を示す図である。現像剤担持体の表面のうち、像担持体に形成された静電潜像に対応する領域が画像領域に相当し、静電潜像の領域外に対応する領域が非画像領域に相当する。
図2(A)および図2(B)に示すように、感光体ドラム1と現像剤担持体9の現像ニップ部を通過した現像後のトナー粒子121aは、キャリア液122中において正規帯電極性(たとえば、正極性)に帯電している。トナー粒子121aは帯電することにより、静電気力によって現像剤担持体9の表面9aに吸着している。
図2(A)に示すように、画像領域側においては、現像時に現像剤担持体9上のトナー粒子は、現像ニップ部において感光体ドラム1上に形成された静電潜像に静電吸着するため、現像後に現像剤担持体9上に残留する湿式現像剤12に含まれるトナー粒子121aの量は少なくなる。
図2(B)に示すように、非画像領域側においては、現像時に現像剤担持体9上のトナー粒子は、感光体ドラム1上の静電潜像が形成された領域を除く領域には静電吸着せずに現像剤担持体9上に留まるため、現像後に現像剤担持体9上に残留する湿式現像剤12に含まれるトナー粒子121aの量は多くなる。
また、帯電したトナー粒子121aは鏡像力によって導電性部材へと引き寄せられることに加えて、非画像領域では、現像ニップ部において感光体ドラム1と現像剤担持体9との間に印加されるバイアスによって、トナー粒子121aが現像剤担持体9側へ押し付けられることから、現像後のトナー粒子121aは、現像剤担持体9表面にトナー層123を形成して存在している。
このように、画像領域と非画像領域とでは、画像パターンに応じて残留する湿式現像剤12に含まれるトナー粒子121aの量が異なる。また、現像時において静電潜像の中央部では平坦な電位であるのに対し静電潜像の端部では電位に傾斜があることにより、現像ニップ部において湿式現像剤12が晒される電界履歴は一様でなくなる。この結果、残留した湿式現像剤12に含まれるトナー粒子121aの帯電量の減衰が一様ではなくなり、画像パターンに応じてトナー粒子の帯電量も異なることになる。
画像パターンに応じてトナー粒子121aの量および帯電量が異なる状態で、ACコロトロンによって現像剤担持体9上のトナー粒子121aを除電する。この際、交流バイアスが放電電極192に印加されることにより、放電電極192と現像剤担持体との間に交流放電を発生させる。
交流放電は、対象物の電位に応じた極性の電荷を対象物に与える性質を有する。たとえば、対象物が正極性に帯電している場合には、負電荷を対象物に与え、対象物が負極性に帯電している場合には、正電荷を対象物に与える。このため、交流放電を発生させて異なる電位を有する対象物を除電する場合には、対象物の電位は、正負の振動を繰り返し最終的には概ねゼロ近傍に収束される。
言い換えると、交流放電を発生させて現像剤担持体9上のトナー粒子を除電する場合にあっては、トナー粒子の量や帯電量に応じて適正な除電量がトナー粒子に与えられる。図2(A)に示すように、トナー粒子121aの量が少ない場合には、トナー粒子121aの電荷をキャンセルするように少量の負電荷が与えられる。図2(B)に示すように、トナー粒子121aの量が多い場合には、トナー粒子121aの電荷をキャンセルするように多量の負電荷が与えられる。
図3(A)および図3(B)は、交流バイアスが印加された放電部材によってトナー粒子に電荷が与えられた後の画像領域側のトナー粒子の状態を示す模式図および非画像領域側のトナー粒子の状態を示す模式図である。
図3(A)および図3(B)に示すように、交流放電を発生させて現像剤担持体9上のトナー粒子121aを除電した後においては、除電前に画像領域と非画像領域とでトナー粒子121aの電位がばらつく場合であっても、上述のように除電量が適正に制御されることによって画像領域と非画像領域を含めた全体でのトナー粒子121aの電位をほぼゼロにすることができる。
この結果、除電装置19によってトナー粒子121aに対する現像剤担持体9の静電気的な拘束力を十分に弱めることができる。
図4は、図1に示す湿式現像装置において湿式現像剤を除去部によって除去する様子を示す模式図である。図4を参照して、交流バイアスが印加された放電部材によって電荷が与えられたトナー粒子を含む湿式現像剤を除去部によって除去する様子について説明する。
図4に示すように、除電装置19によってトナー粒子121aに対する現像剤担持体9の静電気的な拘束力が十分に弱まった状態で湿式現像剤12を除去することにより、トナー粒子121aは、除去部18と現像剤担持体9との当接部をすり抜けることなく、図中二点鎖線に示すようにキャリア液122と一緒に除去部18の上面18bを伝って現像剤回収槽(不図示)に回収される。
以上のように、本実施の形態に係る湿式現像剤4およびこれを具備する湿式画像形成装置100においては、トナー粒子121aによる汚染を防止するために放電電極192を湿式現像剤12から離して配置し、汚染によるムラを発生させることなく放電電極192と現像剤担持体9との間に交流放電を発生させることによって、画像パターンによらず現像剤担持体9上に残留したトナー粒子121aの電荷を安定してキャンセルさせることができる。これにより、現像後に現像剤担持体9上に残留した湿式現像剤12を確実に除去することができる。
(比較の形態)
比較の形態における湿式現像装置(不図示)は、実施の形態1に係る湿式現像装置100と比較した場合に、湿式現像装置4の除電装置19としてDCコロトロンを用いており、除電の際に放電電極192に交流バイアスではなく直流バイアスを印加する点において相違し、その他の構成についてはほぼ同様である。
湿式現像装置4の除電装置19としてDCコロトロンが使用される場合には、放電電極192と現像剤担持体9との間に直流放電を発生させる。直流放電は、対象物の電位に因らず一定の電荷を対象物に与える性質を有する。
このため、画像パターンに応じて現像剤担持体9上の場所によってトナー粒子の量および帯電量が異なる場合であっても、DCコロトロンは、現像前にトナー粒子が帯電した極性と反対の極性の電荷(負極性の電荷)を現像剤担持体9の長手方向に亘って均一に与えてしまう。この結果、現像後の現像剤担持体9上においてトナー粒子の帯電量がDCコロトロンの除電量よりも大きい場所では除電不足となり、トナー粒子の帯電量がDCコロトロンの除電量よりも小さい場所では除電過多となる。
以下、比較の形態の第1例として除電不足となる場合について説明し、比較の形態の第2例として除電過多となる場合について説明する。
図5(A)および図5(B)は、比較の形態における現像装置において直流バイアスが印加された放電部材によって現像剤担持体上に残留したトナー粒子に電荷を与える際の画像領域側の様子の第1例を示す模式図および非画像領域側の様子の第1例を示す模式図である。
図5(A)に示すように画像領域側にあっては、トナー粒子の量が少なく、図5(B)に示すように非画像領域側にあっては、トナー粒子の量が多い。上述のようにDCコロトロンは、現像剤担持体9上の長手方向に亘って均一な除電量を与えるため、図5(A)に示すように画像領域側のトナー粒子の量に見合った除電量を与える場合には、図5(B)に示すように、画像領域側に与えられた除電量と同量の除電量が非画像領域側にも与えられることになる。このため、非画像領域側では、トナー粒子が凝集することによって形成されるトナー層123の帯電量よりも少ない除電量がトナー層123に与えられる。
図6(A)および図6(B)は、比較の形態における現像装置において直流バイアスが印加された放電部材によってトナー粒子に電荷が与えられた後の画像領域側のトナー粒子の状態の第1例を示す模式図および非画像領域側のトナー粒子の状態の第1例を示す模式図である。
図6(A)に示すように、画像領域側においては、トナー粒子の量に見合った負電荷が与えられるため、除電後のトナー粒子121aの電荷がキャンセルされ、これによりトナー粒子121aの電位はほぼゼロになる。
図6(B)に示すように、非画像領域側においては、トナー層123の帯電量よりも少ない負電荷が与えられるため除電不足となり、トナー層123の表層に位置する一部のトナー粒子121aのみの電荷がキャンセルされることになる。これにより、トナー層123には正電荷が残ってしまい、トナー層123に対する現像剤担持体9の静電気的な拘束力を解消することができなくなる。
図7は、比較の形態における湿式現像装置において湿式現像剤を除去部によって除去する様子の第1例を示す模式図である。
除電後の現像剤担持体9上の湿式現像剤12において一部の領域のトナー粒子121aの電荷がキャンセルされており、その他の領域のトナー粒子121aの電荷がキャンセルされていない状態で除去部18によって湿式現像剤12が除去される場合にあっては、図7に示すように、静電気力によって現像剤担持体9に拘束されたトナー粒子121aの一部が除去部18と現像剤担持体9との当接部をすり抜けてしまう。この結果、クリーニング不良が発生してしまう。
図8(A)および図8(B)は、比較の形態における現像装置において直流バイアスが印加された放電部材によって現像剤担持体上に残留したトナー粒子に電荷を与える際の画像領域側の様子の第2例を示す模式図および非画像領域側の様子の第2例を示す模式図である。
図8(A)に示すように画像領域側にあっては、トナー粒子の量が少なく、図8(B)に示すように非画像領域側にあっては、トナー粒子の量が多い。上述のようにDCコロトロンは、現像剤担持体9上の長手方向に亘って均一な除電量を与えるため、図8(B)に示すように非画像領域側のトナー粒子の量に見合った除電量を与える場合には、図8(A)に示すように、非画像領域側に与えられた除電量と同量の除電量が画像領域側にも与えられることになる。このため、画像領域側では、トナー粒子の帯電量よりも多い除電量がトナー層123に与えられる。
図9(A)および図9(B)は、比較の形態における現像装置において交流バイアスが印加された放電部材によってトナー粒子に電荷が与えられた後の画像領域側のトナー粒子の状態の第2例を示す模式図および非画像領域側のトナー粒子の状態の第2例を示す模式図である。
図9(A)に示すように、画像領域側においては、トナー粒子121aの帯電量よりも多い負電荷が与えられるため除電過多となり、トナー粒子121aは負極性に帯電する。この結果、トナー粒子121aは静電気力によって現像剤担持体9の表面9aに吸着する。
図9(A)に示すように、非画像領域側においては、トナー粒子の量に見合った負電荷が与えられるため、トナー層123(トナー粒子121a)の電荷がキャンセルされ、これによりトナー粒子121aの電位はほぼゼロになる。
このような状態において除去部18によって除電後の湿式現像剤12を除去する場合にあっては、上述同様に静電気力によって現像剤担持体9に拘束されたトナー粒子121aの一部が除去部18と現像剤担持体9との当接部をすり抜けてしまう。この結果、クリーニング不良が発生してしまう。
(実施の形態2)
図10は、本実施の形態に係る湿式画像形成装置に具備される湿式現像装置の構成を示す模式図である。図10を参照して、本実施の形態に係る湿式画像形成装置100Aについて説明する。
図10に示すように、本実施の形態に係る湿式画像形成装置100Aは、実施の形態1に係る湿式画像形成装置100と比較した場合に、湿式現像装置4Aの構成が相違し、その他の構成についてはほぼ同様である。
湿式現像装置4Aは、実施の形態1に係る湿式現像装置4と比較した場合に、除電装置19Aにおいて、放電電極192に対して交流バイアスに直流バイアスを重畳した重畳バイアスを印加できるように直流バイアス電源194をさらに備える点において相違し、その他の構成についてはほぼ同様である。
除電装置19Aによる除電の際に重畳バイアスを放電電極192に印加することにより、放電電極192と現像剤担持体9との間に直流成分が重畳された交流放電を発生させる。直流成分が重畳された交流放電は、対象物の電位に応じて電荷を対象物に与え、対象物が正極性に帯電しているときは負の荷電を多く与え、負極性に帯電しているときは正の荷電を多く与える。この場合には、対象物の表面電位は、重畳された直流成分と同極性の電位に収束する。また、収束する表面電位の絶対値は、重畳する直流成分の大小に応じて制御することができる。
本実施の形態においては、除電後のトナー層123の表面電位が、トナーの正規帯電極性と反対の極性となるように、直流成分として負の電圧を印加することが好ましい。
図11は、図10に示す現像装置において交流バイアスに直流バイアスが重畳された重畳バイアスが印加された放電部材によってトナー粒子に電荷が与えられた後のトナー粒子の状態を示す模式図である。
負極性の直流成分が重畳された交流放電を発生させることによって発生する直流成分が重畳された交流放電によってトナー粒子121aを除電した場合には、図11に示すように、トナー層123の表面電位をゼロ近傍よりもトナー粒子121aの反正規帯電極性(ここではマイナス極性)になるようにトナー層123が除電される。
トナー層123の帯電量に見合った負極性の電荷をトナー層123に与えることによりトナー層123の全体的な電荷をキャンセルした場合であっても、トナー粒子121aに対する現像剤担持体9の静電気的な拘束力を完全に解消することができない場合が起こり得る。
トナー層123の電荷がキャンセルされた場合であってもトナー層123内に異なる極性に帯電されたトナー粒子が混在する状態が形成される場合には、現像剤担持体9の表面9a側と反対側からトナー層123と異なる極性の電荷が与えられるため、現像剤担持体9の表面9a側にはトナー粒子121aの正規帯電極性に帯電したトナー粒子121aが偏在する場合がある。
このような状態にあっては、トナー粒子121aに対する現像剤担持体9の静電気的な拘束力を完全に解消することができず、静電気的な拘束力が一定程度残存することになる。
一方、本実施の形態においては、トナー層123の表面電位をゼロ近傍よりも負極性側にすることにより、現像剤担持体9の表面9a側に位置するトナー粒子121aに対しても負の電荷を与えることができる。この結果、現像剤担持体9の表面9a側に位置するトナー粒子121aに対する現像剤担持体9の静電的な拘束力をより確実に解消することができる。
トナー粒子121aに対する現像剤担持体9の静電的な拘束力が十分に弱まった状態で湿式現像剤12を除去することにより、トナー粒子121aは、除去部18と現像剤担持体9との当接部をすり抜けることなく、キャリア液122と一緒に除去部18の上面を伝って現像剤回収槽(不図示)に回収される。
以上のように、本実施の形態に係る湿式現像装置4Aおよびこれを具備する湿式画像形成装置100Aにおいては、汚染によるムラを発生させることなく放電電極と湿式現像剤担持体との間に直流成分が重畳された交流放電を発生させることによって、画像パターンによらず現像剤担持体9上に残留したトナー層123の表面電位をゼロ近傍よりもトナー粒子121aの反正規帯電極性側となるように除電することができる。これにより、現像剤担持体9の表面9a近傍のトナー粒子121aに対する静電気的な拘束力を寄り確実に解消することができ、現像後に現像剤担持体9上に残留した湿式現像剤12をより確実に除去することができる。
(実施の形態3)
図12は、本実施の形態に係る湿式画像形成装置に具備される湿式現像装置の構成を示す模式図である。図12を参照して、本実施の形態に係る湿式画像形成装置100Bについて説明する。
図12に示すように、本実施の形態に係る湿式画像形成装置100Bは、実施の形態1に係る湿式画像形成装置100と比較した場合に、湿式現像装置4Bの構成が相違し、その他の構成についてはほぼ同様である。
湿式現像装置4Bは、実施の形態1に係る湿式現像装置4と比較した場合に、除電装置19と除去部18との間に分散部としての導電性ローラー20Bをさらに備える点において相違し、その他の構成についてはほぼ同様である。
現像剤担持体9の回転方向に沿って、除電装置19、導電性ローラー20Bおよび除去部18がこの順で配置される。導電性ローラー20Bは、現像剤担持体9とのニップ部において、現像剤担持体9の移動方向と同一の方向に回転することが好ましい。また、導電性ローラー20Bの周速は、現像剤担持体9の周速と同一となることが好ましい。
導電性ローラー20Bとしては、アルミニウム、鉄、ステンレス等の材料によって構成される金属ローラー、当該金属ローラーの基体の外周面を導電性の樹脂や弾性部材で被覆したローラー、さらには導電性の樹脂や弾性部材で被覆したローラーの表面に電界形成可能な程度に薄く絶縁性材料をコーティングしたローラー等の電子写真装置においてバイアス電界形成に使用される公知の各種のローラーを使用することができる。
現像後の除去プロセスにおいては、除電装置19による除電の後に、現像剤担持体9に湿式現像剤12を介して当接する導電性ローラー20Bと現像剤担持体9との間に交流バイアスを印加することにより、トナー粒子121aをキャリア液122中に分散させる。
印加する交流バイアスとしては、矩形波、サイン波、三角波、のこぎり波、ブランク波などの波形を使用することができる。交流バイアスの周波数としては、1000Hz以上100000Hz以下が好ましい。周波数が1000Hz未満である場合には、交流バイアスの印加状態に場所ムラが生じ、分散作用が不十分な領域が生じる。一方、周波数が100000Hzを超えるとトナー粒子が、交流電界の変動に追従することができず分散作用が十分に得られない場合が生じる。なお、交流バイアスの平均電位は、現像剤担持体9の表面電位と同電位であることが好ましい。
また、交流電圧の振幅は、放電の発生を抑制するために1000V程度までとすることが好ましい。現像剤担持体9の表面9aあるいは導電性ローラー20Bの表面に絶縁性部材をコーティングしている場合には、さらに高電圧まで印加することが可能である。なお、交流バイアスに直流バイアスを重畳してもよい。
交流バイアスを印加することによって導電性ローラー20Bと現像剤担持体9との間に交流電界が形成される。トナー粒子121aは、交流電界に基づき現像剤担持体9と導電性ローラー20Bとの間のニップ部において現像剤担持体9の表面9aから離脱して、湿式現像剤12中において湿式現像剤12の表面と現像剤担持体9の表面9aとの間を往復するように移動する。これにより、トナー粒子121aがキャリア液122中に分散される。
また、上述のように、トナー層123内に異なる極性に帯電されたトナー粒子121aが混在する状態が形成される場合には、正極性のトナー粒子と負極性のトナー粒子とが、交流電界に基づき互い違いの方向に動かされる。この結果、正極性のトナー粒子と負極性のトナー粒子とがキャリア液122中を浮遊するとともに正極性のトナー粒子と負極性のトナー粒子とが互いに引き付け合う状態となる。
正負のペアになったトナー粒子は、実質的に現像剤担持体9に対して静電気力が作用せずに、現像剤担持体9による静電気的な拘束力から開放され、キャリア液122中に分散される。
ここで、トナー粒子121aをキャリア液122中に分散させない場合には、トナー粒子121aが現像剤担持体9の表面9a側に偏在してしまう場合がある。この場合には、湿式現像剤12中において、現像剤担持体9の表面9a近傍では、トナー粒子が多く含まれることによってトナー濃度が高くなる。一方、現像剤担持体9の表面9aと反対側の湿式現像剤12の表面側では、キャリア液122が多く含まれることによってトナー濃度が低くなる。この結果、現像剤担持体9の表面9a近傍に位置する湿式現像剤の粘度が非常に高くなり、現像剤担持体9の表面9aから離れて位置する湿式現像剤の粘度は低くなる。
粘度の低い湿式現像剤は、流動性が高く除去部18を介して排出されるが、粘度の高い湿式現像剤は、除去部18と現像剤担持体9との当接部近傍に滞留しやすくなるため、トナー粒子が除去部18に堆積する場合が生じる。
本実施の形態にあっては、現像後のトナー粒子が有する電荷を画像パターンによらず除電部によってキャンセルした状態でトナー粒子をキャリア液中に分散させることによって除去部による除去までにトナー粒子が現像剤担持体9に再度付着することを防止することができる。これにより、湿式現像剤12内で粘度の偏りが発生することを抑制し、現像剤担持体9の表面9a近傍に位置する湿式現像剤の粘度が高くなることを防止することができる。
この結果、本実施の形態に係る湿式現像装置4Bおよびこれを具備する湿式画像形成装置にあっては、トナー粒子121aが除去部18と現像剤担持体9との当接部をすり抜けることを防止して現像後に現像剤担持体9上に残留した湿式現像剤を確実に除去することができるのに加えて、トナー粒子121aが除去部18に堆積することを抑制することができる。
(実施の形態4)
図13は、本実施の形態に係る湿式画像形成装置に具備される湿式現像装置の構成を示す模式図である。図13を参照して、本実施の形態に係る湿式画像形成装置100Cについて説明する。
図13に示すように、本実施の形態に係る湿式画像形成装置100Cは、実施の形態1に係る湿式画像形成装置100と比較した場合に、湿式現像装置4Cの構成が相違し、その他の構成についてはほぼ同様である。
湿式現像装置4Cは、実施の形態1に係る湿式現像装置4と比較した場合に、除電装置19と除去部18との間に分散部としての振動付与部材20Cをさらに備える点において相違し、その他の構成についてはほぼ同様である。
現像剤担持体9の回転方向に沿って、除電装置19、振動付与部材20Cおよび除去部18がこの順で配置される。振動付与部材20Cは、現像剤担持体9上の湿式現像剤12を介して現像剤担持体9に接触している。振動付与部材20Cは、たとえば超音波振動子によって構成されている。超音波振動子が画像形成中に振動することにより、超音波振動が湿式現像剤12中のトナー粒子121aに伝達される。これにより、除電後のトナー粒子121aが湿式現像剤12中において現像剤担持体9の表面9aから浮き上がるとともに拡散される。
上述のように、トナー層123内に異なる極性に帯電されたトナー粒子が混在する状態が形成される場合にも、正極性のトナー粒子121aと負極性のトナー粒子121bとがペアとなり、静電気力によって現像剤担持体に拘束されない状態でキャリア液122中に分散される。
このような構成とすることにより、本実施の形態にあっても、現像後のトナー粒子が有する電荷を画像パターンによらず除電部によってキャンセルした状態でトナー粒子をキャリア液中に分散させることによって除去部による除去までにトナー粒子が現像剤担持体9に再度付着することを防止することができる。これにより、湿式現像剤12内で粘度の偏りが発生することを抑制し、現像剤担持体9の表面9a近傍に位置する湿式現像剤の粘度が高くなることを防止することができる。
この結果、本実施の形態に係る湿式現像装置4Cおよびこれを具備する湿式画像形成装置100Cにあっても、トナー粒子121aが除去部18と現像剤担持体9との当接部をすり抜けることを防止して現像後に現像剤担持体9上に残留した湿式現像剤を確実に除去することができるのに加えて、トナー粒子121aが除去部18に堆積することを抑制することができる。
(実施の形態5)
図14は、本実施の形態に係る湿式画像形成装置に具備される湿式現像装置の構成を示す模式図である。図14を参照して、本実施の形態に係る湿式画像形成装置100Dについて説明する。
図12に示すように、本実施の形態に係る湿式画像形成装置100Dは、実施の形態1に係る湿式画像形成装置100と比較した場合に、湿式現像装置4Dの構成が相違し、その他の構成についてはほぼ同様である。
湿式現像装置4Dは、実施の形態1に係る湿式現像装置4と比較した場合に、除電装置19と除去部18との間に分散部としてのブラシ部材20Dをさらに備える点において相違し、その他の構成についてはほぼ同様である。
現像剤担持体9の回転方向に沿って、除電装置19、ブラシ部材20Dおよび除去部18がこの順で配置される。ブラシ部材20Dは、トナーとの接触確率の高い材料でトナーを直接拡散させるためのブラシローラーを採用することができる。トナーとの接触確率の高い材料としては、金属繊維、アクリル繊維、ナイロン繊維等を採用することができる。なお、ブラシローラーに代えて、表面を発泡させて可撓性を持たせた材料で構成したスポンジローラーを使用してもよい。
ブラシ部材20Dをこのように構成することにより、表面が面形状を有する金属ローラーやゴムローラーと比較して、層状に凝集しているトナー粒子に対して部分的に接触することができる。これにより、凝集するトナー粒子を分離させるような摩擦力をトナー層に付与することができ、確実に分散効果を発揮させることができる。
また、ブラシ部材の回転方向およびその速度は適宜選択することができる。たとえば、ブラシ部材は、現像剤担持体9とのニップ部において、現像剤担持体9の移動方向と逆方向になるように回転させてもよいし、同一方向となるように回転させてもよい。この際、ブラシ部材の回転速度は、現像剤担持体9の回転速度と同一にしてもよいし、現像剤担持体9の回転速度に対して速度差が設けられるように設定してもよい。
ブラシ部材の回転方向を現像剤担持体9とのニップ部において現像剤担持体9の移動方向と同一方向となるように設定した場合には、発熱や現像剤の飛び散り等の副作用を生じない範囲内で速度範囲を設けることが好ましい。これにより、トナー粒子のキャリア液中への分散効果が補助される。
ブラシ部材20Dは、現像剤担持体9上の湿式現像剤12を介して現像剤担持体9に接触している。ブラシローラーが画像形成中に摺接して回転することにより、ブラシがトナー粒子121aと接触して機械的に摩擦力をトナー粒子121aに付与する。これにより、トナー粒子121aが湿式現像剤12中において現像剤担持体9の表面9aから浮き上がり拡散される。
上述のように、トナー層123内に異なる極性に帯電されたトナー粒子が混在する状態が形成される場合にも、正極性のトナー粒子121aと負極性のトナー粒子121bとがペアとなり、静電気力によって現像剤担持体に拘束されない状態でキャリア液122中に分散される。
このような構成とすることにより、本実施の形態にあっても、現像後のトナー粒子が有する電荷を画像パターンによらず除電部によってキャンセルした状態でトナー粒子をキャリア液中に分散させることによって除去部による除去までにトナー粒子が現像剤担持体9に再度付着することを防止することができる。これにより、湿式現像剤12内で粘度の偏りが発生することを抑制し、現像剤担持体9の表面9a近傍に位置する湿式現像剤の粘度が高くなることを防止することができる。
この結果、本実施の形態に係る湿式現像装置4Dおよびこれを具備する湿式画像形成装置100Dにあっても、トナー粒子121aが除去部18と現像剤担持体9との当接部をすり抜けることを防止して現像後に現像剤担持体9上に残留した湿式現像剤を確実に除去することができるのに加えて、トナー粒子121aが除去部18に堆積することを抑制することができる。
図15は、本発明の効果を検証するために行なった検証実験の結果および条件を示す図である。図15を参照して、各実施例および各比較例について行なった検証実験について説明する。
図15に示す比較例1から比較例4については、実施の形態1に係る湿式現像装置4を基本構成として、その構成の一部を変更したものを実験機として使用した。具体的には、除電部としての除電装置の設置または非設置を選択するとともに、除電装置の種類および除電装置の放電電極に印加するバイアスを変更することにより湿式現像装置4の構成を変更した。
実施例1については、実施の形態1に係る湿式現像装置4を使用した。実施例2および実施例3については、実施の形態3に係る湿式現像装置4Bを使用した。この際、実施例2と実施例3において除電装置の放電電極に印加するバイアスを交流バイアスから重畳バイアスに変更した。実施例4については、実施の形態4に係る湿式現像装置4Cを使用した。
なお、実施例2および実施例3において分散部として導電性ローラー20Bを用いる場合には、ステンレスの金属ローラーを採用した。この際、金属ローラーは、現像剤担持体9とのニップ部において現像剤担持体9の移動方向と同じ方向となるように回転させた。また、金属ローラーの周速が現像剤担持体9の周速と同じになるように回転数を設定した。また、導電性ローラー20Bに印加する交流バイアスは周波数10000Hz、振幅300V(Peak−to−Peakで600V)のサイン波形とした。
比較例1から比較例6および実施例1から実施例4における湿式現像装置を具備する湿式画像形成装置を1時間稼働させて連続印字した際の除去部18のクリーニング性と除去部18へのトナー粒子の堆積状態とを評価した。
図16は、検証実験にて湿式現像装置によって形成される画像を示す図である。上記のクリーニング性とトナー粒子の堆積評価を行なうに際して、図16に示すように、黒ベタ印刷領域B1と白ベタ領域W1と50%網点パッチ領域H1を矢印L1方向に並列させた画像を印字した。
現像剤担持体9上の領域のうち、黒ベタ印刷領域B1に対応する領域、白ベタ領域W1に対応する領域および50%網点パッチ領域H1に対応する領域は、現像剤担持体9の軸方向(図16中L1方向に対応する方向)に沿って並ぶように設定した。
黒ベタ印刷領域B1に対応する領域では、現像時にトナー粒子121aが感光体ドラム1に供給されるため、現像後のトナー粒子の量は少なくなる。白ベタ領域W1に対応する領域では、現像時にトナー粒子121aが感光体ドラム1に供給されないため、現像後のトナー粒子の量が多くなる。50%網点パッチ領域H1に対応する領域では、現像時に一部のトナー粒子121aが感光体ドラム1に供給されるため、現像後のトナー粒子の量は、白ベタ領域W1に対応する領域のトナー粒子の量と黒ベタ印刷領域B1に対応する領域のトナー粒子の量のほぼ中間の量となる。
クリーニング性の評価としては、除去部18を通過した直後の湿式現像剤12をテープで採取して除去部18と現像剤担持体9との当接部をトナー粒子121aがすり抜けたか否かを確認した。
この際、多量のトナー粒子121aが除去部をすり抜けてクリーニング性が急速に悪化したものを「E」と判定し、画像パターンに応じてトナー粒子121aが除去部をすり抜けてクリーニング性が悪化したものおよび連続印字の途中からトナー粒子が徐々に除去部をすり抜けてクリーニング性が悪化したものを「D」と判定し、通常の条件においてはクリーニング性が良好であったが温度条件を変化させた場合にクリーニング性が極わずかに悪化したものを「B」と評価し、通常の条件および温度条件を変化させた際にもクリーニング性が良好であったものを「A」と評価した。
トナー粒子の堆積状態の評価においては、除去部18の先端部(除去部18と現像剤担持体9との当接部)を観察することにより評価した。この際、トナー粒子が急速に堆積したものを「E」と判定し、画像パターンに応じてトナー粒子が堆積したものおよび連続印字の途中からトナー粒子が徐々に堆積したものを「D」と判定し、湿式現像装置を実用品として使用可能である範囲内においてトナー粒子がわずかに堆積したものを「C」と判定し、通常の条件においてはトナー粒子が堆積しなかったが温度条件を変化させた場合に極わずかに堆積したものを「B」と判定し、通常の条件および堆積を強調させる条件においてトナー粒子が堆積しなかったものを「A」と判定した。
(比較例1)
比較例1においては、湿式現像装置とて、除電装置および分散部をともに非設置とした構成のものを用いた。この場合には、クリーニング性評価は、「E」と判定され、トナー粒子の堆積評価は、「E」と判定された。
(比較例2)
比較例2においては、湿式現像装置として、除電装置を設置し、分散部を非設置とした構成のものを用いた。除電装置としては、現像剤担持体9に非接触なDCコロトロンを用いた。この際、除電電流の電流量は、白ベタ領域W1に対応する現像後の湿式現像剤に含まれるトナー層123の表面電位がゼロになる電流量(0.25mA/m)に設定した。この場合には、クリーニング性評価は、「D」と判定され、トナー粒子の堆積評価は、「D」と判定された。
(比較例3)
比較例3においては、湿式現像装置として、除電装置を設置し、分散部を非設置とした構成のものを用いた。除電装置としては、DCスコロトロンを用いた。この際、DCスコロトロンの放電電極に印加する直流バイアスは7000V、現像剤担持体9に印加する直流バイアスは400V、グリッド電極に印加する直流バイアスは380Vとした。この場合には、クリーニング性評価は、「D」と判定され、トナー粒子の堆積評価は、「D」と判定された。
(比較例4)
比較例4においては、湿式現像装置として、除電装置を設置し、分散部を非設置とした構成のものを用いた。除電装置としては、湿式現像剤12を介して現像剤担持体9に接触回転する導電性ローラーを用いた。導電性ローラーとしては、ステンレスの金属ローラーを採用した。この際、金属ローラーは、現像剤担持体9とのニップ部において現像剤担持体9の移動方向と同じ方向となるように回転させた。また、金属ローラーの周速が現像剤担持体9の周速と同じになるように回転数を設定した。金属ローラーに印加するバイアスは周波数3000Hz、振幅500V(Peak−to−Peakで1000V)のサイン波形とした。この場合には、クリーニング性評価は、「D」と判定され、トナー粒子の堆積評価は、「D」と判定された。
(実施例1)
実施例1においては、湿式現像装置として、除電装置を設置し、分散部を非設置として構成のものを用いた。除電装置としては、現像剤担持体9に非接触なACコロトロンを用いた。この際、ACコロトロンの放電電極に印加する交流バイアスは、周波数3000Hz、振幅7000V(Peak−to−Peakで14000V)のサイン波形とした。この場合には、クリーニング性評価は、「B」と判定され、トナー粒子の堆積評価は、「C」と判定された。
(実施例2)
実施例2においては、湿式現像装置として、除電装置および分散部をともに設置した構成のものを用いた。除電装置としては、現像剤担持体9に非接触なACコロトロンを採用した。この際、ACコロトロンの放電電極に印加する交流バイアスは、周波数3000Hz、振幅7000V(Peak−to−Peakで14000V)のサイン波形とした。分散部としては、上記の導電性ローラー20Bを用いた。この場合には、クリーニング性評価は、「B」と判定され、トナー粒子の堆積評価は、「B」と判定された。
(実施例3)
実施例3においては、湿式現像装置として、除電装置および分散部をともに設置した構成のものを用いた。除電装置としては、現像剤担持体9に非接触なコロトロンを用いた。この際、コロトロンの放電電極に印加する交流バイアスは、直流成分に交流成分を重畳した重畳バイアスとした。交流成分のバイアスは、周波数3000Hz、振幅7000V(Peak−to−Peakで14000V)のサイン波形とした。直流成分のバイアスは、−50Vとした。分散部としては、上記の導電性ローラー20Bを用いた。この場合には、クリーニング性評価は、「A」と判定され、トナー粒子の堆積評価は、「A」と判定された。
(実施例4)
実施例4においては、湿式現像装置として、除電装置および分散部をともに設置した構成のものを用いた。除電装置としては、現像剤担持体9に非接触なコロトロンを用いた。この際、コロトロンの放電電極に印加する交流バイアスは、直流成分に交流成分を重畳した重畳バイアスとした。交流成分のバイアスは、周波数3000Hz、振幅7000V(Peak−to−Peakで14000V)のサイン波形とした。直流成分のバイアスは、−50Vとした。分散部としては、超音波振動付与部材を用いた。この場合には、クリーニング性評価は、「A」と判定され、トナー粒子の堆積評価は、「A」と判定された。
(実験結果および考察)
比較例1においては、除電装置および分散部ともに設置していないため、現像後のトナー粒子は、静電気力によって現像剤担持体9上に強く拘束されたままである。このため、急速にクリーニング不良が発生するとともにトナー粒子が除去部に堆積した。
比較例2においては、除電装置を設置しているもののDCコロトロンを用いているため、現像剤担持体9の長手方向に沿って均一に電荷が与えられる。このため、画像パターンに応じて現像剤担持体9上のトナー粒子121aおよびトナー層123を除電することができない。
現像剤担持体9上の領域のうち白ベタ領域W1に対応する領域のトナー粒子121aおよびトナー層123の電荷をキャンセルすることができるが、黒ベタ印刷領域B1および網点パッチ領域H1に対応する領域のトナー粒子121aおよびトナー層123の電荷を十分にキャンセルすることができない。
このため、白ベタ領域W1に対応する領域ではクリーニング不良が発生しなかったが、黒ベタ印刷領域B1および網点パッチ領域H1に対応する領域ではトナー粒子121aに対する現像剤担持体9の静電気的な拘束力を十分に解消することができず、クリーニング不良が発生した。
同様の理由により、白ベタ領域W1に対応する領域ではトナー粒子は除電部に堆積しなかったが、黒ベタ印刷領域B1および網点パッチ領域H1に対応する領域ではトナー粒子が除電部に堆積した。
比較例3においては、除電装置としてスコロトロンを用いているため、画像パターンに応じて現像剤担持体9上のトナー粒子121aおよびトナー層123を除電することができる。このため、印字開始直後からしばらくの間はクリーニング不良が発生せず、トナー粒子も堆積しなかった。しかしながら、連続印字を継続して1時間後の評価終了時には、複数箇所においてクリーニング不良が発生し、トナー粒子も堆積した。
比較例3における湿式現像装置を解体して観察したところ、スコロトロンのグリッド電極には複数箇所に湿式現像剤に起因する汚れが見られた。グリッド電極の汚れはクリーニング不良の発生箇所およびトナー粒子の堆積箇所と対向する位置に見られた。このため、グリッド電極が汚染された部分で除電不良となり、クリーニング不良が発生するとともにトナー粒子も堆積した。
比較例4においては、除電装置として、湿式現像剤12に接触する導電性ローラーを用いており、当該導電性ローラーには交流バイアスを印加できるため、画像パターンに応じて現像剤担持体9上のトナー粒子121aおよびトナー層123を除電することができる。しかしながら、印字開始直後から導電性ローラー表面が、当該表面にスジ状に付着したトナー粒子によって急速に汚染され、数分後以降は汚染されたローラー表面に対応する位置でクリーニング不良が発生するとともにトナー粒子が堆積した。
現像後の湿式現像剤12には高電位に帯電したトナー粒子が含まれる。このため、湿式現像剤12に接触した状態で導電性ローラーに交流バイアスを印加することにより、電気的な駆動力が作用するによって高電位に帯電したトナー粒子が導電性ローラーの表面に吸着した。この結果、導電性ローラーが急速に汚染された。
実施例1においては、除電装置としてACコロトロンを用いているため、画像パターンに応じて現像剤担持体9上のトナー粒子121aおよびトナー層123を除電することができる。また、ACコロトロンにおいては現像剤担持体9に近接したグリッド電極を設ける必要がないため、グリッド電極の汚染に起因する除電不良が発生しない。さらに、ACコロントロンは、現像直後の湿式現像剤12から離れて配置されているため、放電電極が湿式現像剤12によって汚染されることがない。これにより、トナー粒子の汚染に起因する除電不良が発生せず、適正な除電を継続することができる。
適正な除電を継続することにより、トナー粒子121aおよびトナー層123が有する電荷を平均してキャンセルすることができた。この結果、トナー粒子121aに対する現像剤担持体9の静電気的な拘束力を弱めることができ、クリーニング不良が発生しなかった。一方、分散部材によるトナー粒子の分散が行われていないため、湿式現像装置を実用品として使用できる範囲内においてトナー粒子がわずかに堆積した。
このように、実施例1においては、クリーニング性に関して上記比較例と比較して顕著な改善効果を得ることができた。また、トナー粒子の堆積に関しても改善が見られた。
実施例2においては、分散として交流バイアスを印加可能な導電性ローラーを使用している。除電装置としてのACコロトロンからの除電によってトナー粒子121aおよびトナー層123が有する電荷を平均してキャンセルした後に、分散装置によって交流電界を形成して当該トナー粒子121aおよびトナー層123をキャリア液122に分散させた。
これにより、トナー粒子121aが静電気的に拘束されることなくキャリア液122中に浮遊することになるため、除去部18による除去までに再度トナー粒子121aが現像剤担持体9の表面に付着することを防止できた。この結果、トナー粒子が除去部に堆積しなかった。また、クリーニング不良も発生しなかった。このように、分散部を設置することにより、トナー堆積に関して実施例1と比較して更に改善効果を得ることができた。
この実施例2において、湿式現像装置にさらに環境的な負荷を与えてクリーニング性の評価とトナー粒子の堆積評価を行なった。具体的には、実施例2における現像装置を30℃の恒温槽内で1時間稼働させて連続印字した後、さらに15℃の恒温槽内で1時間稼働させて連続印字させた際のクリーニング性とトナー粒子の堆積を評価した。この場合には、環境雰囲気の変化に伴って除去部18の掻き取り性能が変化することに加え、除電装置からの除電状態が変化することによってクリーニング性がわずかに悪化し、トナー粒子が極わずかに堆積した。
実施例3においては、除電時に直流成分に交流成分を重畳した重畳バイアスをコロトロンの放電電極に印加することによって、主としてトナー層123の表面電位を反正規帯電極性(マイナス)に帯電させている。これにより、現像剤担持体9の表面9a側に位置するトナー粒子121aを反正規帯電極性に帯電させることができる。このため、現像剤担持体9の表面9a側に位置するトナー粒子121aに対する現像剤担持体9の静電気的拘束力をさらに弱めることができる。
この状態でトナー粒子121aを分散させることにより、トナー粒子121aが静電気的に拘束されることなくキャリア液中にほぼ均一に浮遊させることができるため、除去部18による除去までに再度トナー粒子121aが現像剤担持体9の表面に付着することをより確実に防止できた。この結果、トナー粒子が除去部に堆積しなかった。また、クリーニング不良も発生しなかった。
この実施例3において、実施例2と同様に湿式現像装置にさらに環境的な負荷を与えてクリーニング性の評価とトナー粒子の堆積評価を行なった。この場合においては、現像装置において環境雰囲気の変化に対する耐性が向上し、クリーニング不良が発生せず、トナー粒子121aも堆積しなかった。このように、主としてトナー層123の表面電位を反正規帯電極性(マイナス)に帯電させることにより、クリーニング性およびトナー粒子121aの堆積の両方に関して実施例2と比較してさらに改善効果を得ることができた。
実施例4においては、主として表面電位が反正規帯電極性(マイナス)に帯電されたトナー粒子121aに対して超音波振動を付与することによりトナー粒子121aをキャリア液中に分散させた。この場合でも、実施例4においては実施例3とほぼ同様の現象が生じてほぼ同様の結果が得られた。
以上より、トナー粒子121aによる汚染を防止するために放電電極192を湿式現像剤12から離して配置し、汚染によるムラを発生させることなく放電電極と湿式現像剤担持体との間に交流放電を発生させることによって、画像パターンによらず現像剤担持体9上に残留したトナー粒子の電荷を安定してキャンセルさせることができ、これにより、現像後に現像剤担持体9上に残留した湿式現像剤を確実に除去することができることが実験的にも証明されたと言える。
また、画像パターンによらず現像剤担持体9上に残留したトナー層123の表面電位をゼロ近傍よりもトナー粒子121aの反正規帯電極性側となるように除電することにより、現像後に現像剤担持体9上に残留した湿式現像剤をさらに確実に除去することができることが実験的にも証明されたと言える。
さらに、除電部と除去部との間に分散部を備えた構成とすることにより、トナー粒子の堆積を抑制することができることが実験的にも証明されたと言える。
なお、上述した実施の形態1においては、除電装置19としてACコロントロンを採用する場合を例示して説明したが、これに限定されず、トナー粒子に汚染されないように湿式現像剤から他の部材を介在させることなく離れて配置され、かつ、交流バイアスを印加することにより現像剤担持体9との間に交流放電を発生可能な放電部材として導電性の電極を採用することができる。
このような導電性の電極としては、導電性の固定部材や導電性ローラーを採用することができる。導電性の固定部材、導電性ローラーも、ACコロトロン同様に非接触交流除電器として機能する。
導電性の固定部材の材料としては、アルミニウム、鉄、ステンレス等の金属部材、当該金属部材で構成される基体の外表面を導電性の樹脂や弾性部材で被覆した部材、更には、導電性の樹脂や弾性部材で被覆した部材表面に電界形成可能な程度に薄く絶縁性材料をコーティングした部材等を採用することができる。固定部材の形状は、円柱状、板状形状、断面視円弧状に湾曲した形状等を適宜選択することができる。
導電性ローラーとしては、導電性の固定部材の材料とほぼ同様のものが使用でき、電子写真装置においてバイアス電界形成に使用される公知の各種のローラーを使用することができる。
なお、導電性ローラーの両端部にローラー径よりも大きな外径を有する円筒形状の樹脂部材を嵌め込んでもよい。樹脂部材を現像剤担持体9に当接して回転させることにより、現像剤担持体9の表面を傷つけることなく、現像剤担持体9と導電性ローラーとの間の距離を一定に保つことができる。これにより、安定して交流放電を発生させることができる。
導電性の電極として、回転する導電性ローラーを用いる場合には、常に同一の電極面と担持体との間で放電し続ける導電性の固定部材を用いる場合と比較して、現像剤担持体9との間で放電する電極面が、回転と共に切り替わるため、放電によるストレスを緩和させることができ、これにより導電性ローラーの寿命を長くすることができる。たとえば、導電性ローラーが回転することにより導電性の電極と現像剤担持体9との間に気流が生じることで放電によって導電性の電極と現像剤担持体9との間に生成される放電生成物がこれらの間に溜まることを防止することができる。これにより、放電生成物に導電性電極が長時間曝されることで生じる電極表面の経時変化を抑制することができる。
また、上述のように実施の形態3から実施の形態5においては、除電部の放電部材に交流バイアスを印加する場合を例示して説明したが、これに限定されず、直流成分に交流成分を重畳した重畳バイアスを印加してもよい。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。