JP6289388B2 - 画像レーダ装置 - Google Patents

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Description

この発明は、観測対象である目標とレーダとの間の相対的な位置関係を変えながら電波を繰り返し送受信するレーダの受信信号を開口合成することで、目標について高分解能化された電波画像を再生する画像レーダ装置に関するものである。
合成開口レーダであるSAR(Synthetic Aperture Radar)や、逆合成開口レーダであるISAR(Inverse SAR)などの画像レーダでは、目標とレーダの相対位置を変えながら異なる複数の時刻に目標を観測し、各観測で得られた受信信号を、目標に固定された座標系内でのレーダの方向(見込み角)を考慮しながら合成(開口合成)することで、画像の高分解能化が図られている。
SARでは、静止中の目標(例えば、地表面、地上構造物、静止している車両など)の観測が主に想定され、レーダが位置を変えることで見込み角の変化が得られる。
一方、ISARでは、移動する目標(例えば、航空機、車両、船舶など)の観測が主に想定され、目標の運動(例えば、位置の移動、回転、動揺など)を利用することで、必ずしもレーダ自身が位置を変化しなくても、見込み角の変化が得られる。
目標上のある反射点に関する各観測において、電波の送信時刻を基準とする相対時刻における受信信号は、その観測の際のレーダと目標の相対位置関係によって定まる「送信アンテナから当該反射点を介して受信アンテナに至る電波の伝搬経路」を電波が移動するのに要する分の時間遅延を生じ、かつ、その反射点の形状や材質に応じた振幅倍された送信信号として与えられる。目標上に複数の反射点が存在する場合は、これらの重ね合わせとして与えられる。以下では、電波の送信時刻からの経過時間をファストタイム(fast time)と称する。また、上記伝搬経路を電波が移動することによって生じる時間遅延を伝搬遅延時間と称する。この受信信号(または、この受信信号を必要に応じて後述するパルス圧縮などで高分解能化した信号)のファストタイムに対する分布(プロフィール)は、各反射点の伝搬遅延時間の影響が反映されていることを踏まえ、以下では遅延プロフィールと称する。なお、ファストタイムを光速倍したプロフィールは、伝搬経路長に対するプロフィールとみなせる。さらに、送信アンテナと受信アンテナの位置が一致するモノスタティック(monostatic)観測の場合には、各反射点の伝搬経路長の1/2がその各反射点までの距離となることから、遅延プロフィールのファストタイムを(光速/2)倍したプロフィールは、レーダからの距離(レンジ)に対するプロフィールとみなせる。このプロフィールはレンジプロフィールとして良く知られている。
各観測で得られた上記各遅延プロフィールの観測毎の履歴(ヒストリ)を、ファストタイムと各観測の時刻を2軸とする2次元分布としたものを遅延ヒストリと称する。各観測における電波の送信時刻をスロータイム(slow time)と称する。遅延ヒストリを与えるこれら2種類の時間のうち、ファストタイムをフーリエ変換(FT:Fourier Transform)した周波数をファスト周波数と称し、スロータイムをフーリエ変換した周波数をドップラー周波数と称する。
以下では、ファストタイムの軸とファスト周波数の軸をまとめてファスト軸、スロータイムの軸とドップラー周波数の軸をまとめてスロー軸と呼ぶことがある。
遅延プロフィールをFTして得られるファスト周波数に対するプロフィールを遅延スペクトルと称する。また、遅延ヒストリをファスト周波数方向にFTして得られる遅延スペクトルのヒストリを遅延スペクトルヒストリと称する。
開口合成を実施する一つの方法として、遅延ヒストリをスロータイム方向にFTすることで、「各反射点に関する受信信号を、ファストタイムとドップラー周波数を軸とする遅延ドップラー分布上の一つのファストタイムとドップラー周波数の点に結像させる」方法が挙げられる。しかし、このような方法で画像を結像させるには、少なくとも、観測中の各反射点の伝搬遅延の変化が、ファストタイム軸方向の分解能セルの大きさ以下となることが必要となる。これを超えた場合には、目標の信号は複数の分解能セルに亘って存在することとなり、これが画像のぼけの一因となる。しかし、目標とレーダの相対運動や前記分解能セルの大きさ、観測時間の長さ等によっては、上記分解能セルを超えた移動が発生することも有り得る。従って、何らかの方法で、この分解能セルの移動、言い換えると、伝搬遅延時間のスロータイムに対する変化を推定して、この変化を打ち消すように補償してやる必要がある。
例えば、SARで静止目標を画像化するような場合では、レーダプラットフォームに搭載されている運動センサの計測結果を利用することで、受信信号を補償することができる可能性がある。しかし、ISARやSARで移動目標を画像化するような場合、または、SARで静止目標を画像化する場合でも、レーダプラットフォームに運動センサが搭載されていない等の理由で相対運動が不明な場合などには、この実現が困難なものとなる。
以下の非特許文献1には、遅延スペクトルヒストリの各ファスト周波数に応じたサンプリング間隔で、遅延スペクトルヒストリ上の信号をスロータイム方向にリサンプリングすることで、遅延ヒストリにおけるスロータイムに対する電波の伝搬遅延時間の1次変化を補償する方法が提案されている。
この方法は、KT(Keystone Transform)と呼ばれている。しかし、この方法では、リサンプリングの処理負荷が高いという問題がある。
以下の非特許文献2には、リサンプリングの処理負荷が高いという問題を解決している方法が開示されている。
即ち、非特許文献2には、スケーリング理論(SP:Scaling Principle)に基づいて、レーダの受信信号と、スロータイム軸方向の位相の変化が2次の信号である複数の2次位相信号とを畳み込み演算することで、KTにおけるリサンプリングを実現する方法が開示されている。
Perry, R.P.; DiPietro, R.C.; Fante, R., "SAR imaging of moving targets," Aerospace and Electronic Systems, IEEE Transactions on , vol.35, no.1, pp.188,200, Jan 1999 Daiyin Zhu; Li, Yong; Zhaoda Zhu, "A Keystone Transform Without Interpolation for SAR Ground Moving-Target Imaging," Geoscience and Remote Sensing Letters, IEEE , vol.4, no.1, pp.18,22, Jan. 2007
従来の画像レーダ装置は以上のように構成されているので、スケーリング理論を用いる場合、リサンプリングの処理負荷を軽減することができるが、レーダの受信信号と複数の2次位相信号とを畳み込み演算を実施することで、スロータイム幅やドップラー周波数幅の拡大が生じる。このため、その拡大によって折り返し信号が発生しないようにするマージンを受信信号に付加する必要があるが、そのマージンのサイズが大き過ぎると、処理負荷が大きくなる。したがって、処理負荷を軽減するには、折り返し信号が発生しない範囲で、マージンのサイズを最小化する必要があるが、非特許文献2には、マージンのサイズを最小化することの提案がなされていないため、リサンプリングの処理負荷を十分に低減することができないことがあるという課題があった。
また、スケーリング理論を用いる場合、リサンプリング後の受信信号のスロータイム幅がファスト周波数毎に異なってしまうため、サイドローブ形状の乱れなどの画質劣化が発生してしまうという課題があった。
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、折り返し信号の発生を招くことなく、処理負荷を十分に低減することができる画像レーダ装置を得ることを目的とする。
また、この発明は、サイドローブ形状の乱れなどの画質劣化を防止することができる画像レーダ装置を得ることを目的とする。
この発明に係る画像レーダ装置は、観測対象である目標との相対的な位置関係を変えながら電波を繰り返し送受信するレーダから、電波の受信信号として、電波の送信時刻からの経過時間であるファストタイムと電波の送信時刻であるスロータイムとの2次元分布である遅延ヒストリを取得する信号取得手段と、信号取得手段により取得された遅延ヒストリをファストタイム方向にフーリエ変換することで得られる遅延スペクトルヒストリの各ファスト周波数に応じたサンプリング間隔で、遅延スペクトルヒストリ上の信号をスロータイム方向にリサンプリングすることで、遅延ヒストリにおけるスロータイムに対する電波の伝搬遅延時間の変化を補償する補償手段と、補償手段による補償後の遅延ヒストリから目標の画像を再生する画像再生手段とを備え、補償手段が、リサンプリングでの処理の途中で、スロータイム方向及びドップラー周波数方向に拡大する遅延スペクトルヒストリ上の信号の拡大幅に相当するサイズのマージンを遅延スペクトルヒストリ上の信号の両端に付加してから、当該信号をリサンプリングするようにしたものである。
この発明によれば、補償手段が、リサンプリングでの処理の途中で、スロータイム方向及びドップラー周波数方向に拡大する遅延スペクトルヒストリ上の信号の拡大幅に相当するサイズのマージンを遅延スペクトルヒストリ上の信号の両端に付加してから、当該信号をリサンプリングするように構成したので、折り返し信号の発生を招くことなく、処理負荷を十分に低減することができる効果がある。
この発明の実施の形態1による画像レーダ装置を示す構成図である。 この発明の実施の形態1による画像レーダ装置の受信信号スケーリング変換回路10を示す構成図である。 この発明の実施の形態1による画像レーダ装置の最小マージン付加回路8におけるマージ付加処理を示す説明図である。 この発明の実施の形態2による画像レーダ装置を示す構成図である。
以下、この発明をより詳細に説明するために、この発明を実施するための形態について、添付の図面にしたがって説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による画像レーダ装置を示す構成図である。
図1において、レーダ受信信号取得回路1は観測対象である目標との相対的な位置関係を変えながら電波を繰り返し送受信するレーダから、電波の受信信号として、電波の送信時刻からの経過時間(以下、「ファストタイム」と称する)と、各観測における電波の送信時刻(以下、「スロータイム」と称する)との2次元分布である遅延ヒストリを取得する回路である。なお、レーダ受信信号取得回路1は信号取得手段を構成している。
ここで、SARやISARなどのレーダが電波を送受信する処理は一般的なものであるが、例えば、レーダ内の送信アンテナから送信機で生成された高周波信号を電波として目標に向けて放射したのち、目標に反射されて戻ってきた当該電波の反射波が受信アンテナに入射されると、受信機が当該電波の反射波を検波して復調することで受信信号を取得する処理を繰り返し実施するものである。また、必要に応じて、電波の送信信号を用いて、受信信号をパルス圧縮することで、ファストタイム軸(または、ファストタイム軸を(光速/2)倍したレンジ軸)を高分解能化させる処理も実施する。
ただし、レーダは、送信アンテナと受信アンテナを別々に実装している必要はなく、送信と受信を時分割で行う送受信アンテナと、送信信号と受信信号を切り換える送受切換器とを実装するものであってもよい。
また、送信系と受信系が別の位置に配置されているbistatic構成のレーダであってもよいし、放送波のように空間を飛交う既存の電波を送信波として利用するレーダであってもよい。
既存の電波を送信波として利用する場合は、目標の散乱波を受信する第1の受信系と、送信局からの直接波を受信する第2の受信系とを用意し、2つの受信系の相互相関によって、上記のファストタイム軸の高分解能化を実現するようにする。この場合は、その伝搬遅延時間は、直接波のパスの伝搬遅延時間を基準とした値になる。なお、使用する既存の電波が一般的な画像レーダで用いられるパルス波形ではなく連続波であった場合でも、反射波や直接波を適当な時間幅や時間間隔で切出すことで、異なるスロータイムにおける受信信号を得ることができる。
画像化パラメータ設定回路2はレーダ画像生成回路13の画像化に用いるパラメータとして、例えば、画像化に用いる遅延ヒストリの送信時刻幅であるスロータイム幅T[s]を設定する回路である。
最終的に画像化に用いるスロータイム幅Tが定まると、ドップラー周波数の分解能が1/T[s]に定まる。レーダのパルス繰り返し周波数がF[Hz]、最終的に画像化に用いるパルス数がHであるとすると、スロータイム幅TはH/Fで与えられる。
切出幅設定回路3はレーダ受信信号取得回路1により取得された遅延ヒストリにおけるスロータイムの切出し幅を設定する回路である。
即ち、切出幅設定回路3は、補償手段5による遅延ヒストリの補償に伴って生じるファスト周波数毎のスロータイム幅の相違が受信信号整形回路12によって補正された後でも、レーダ画像生成回路13の画像化に用いるスロータイム幅Tを確保するために、スロータイムの切出し幅Tcutを設定する回路である。
受信信号切出回路4は切出幅設定回路3により設定された切出し幅Tcutで、レーダ受信信号取得回路1により取得された遅延ヒストリを切出し、切出した遅延ヒストリを補償手段5に出力する回路である。
補償手段5は受信信号切出回路4により切出された遅延ヒストリをファストタイム方向にフーリエ変換することで得られる遅延スペクトルヒストリの各ファスト周波数に応じたサンプリング間隔で、遅延スペクトルヒストリ上の信号をスロータイム方向にリサンプリングすることで、遅延ヒストリにおけるスロータイムに対する電波の伝搬遅延時間の変化を補償する処理を実施する。
即ち、補償手段5は、遅延スペクトルヒストリ上の信号をリサンプリングする処理の途中で発生するスロータイム方向及びドップラー周波数方向の信号の拡大に対処するために、遅延スペクトルヒストリ上の信号の拡大幅に相当するサイズのマージン(値が0の領域)を遅延スペクトルヒストリ上の信号の両端に付加してから、当該信号のリサンプリングを実施する。
なお、リサンプリング処理の途中で、遅延スペクトルヒストリ上の信号の信号幅が拡大するのは、スケーリング理論であるSPを用いてリサンプリングする場合の特有の現象である。ただし、SPを用いてリサンプリングする場合でも、正しいマージンを設定すれば、リサンプリング処理後には、遅延スペクトルヒストリ上の信号は元の信号幅に戻る。
マージン最小化2次位相係数決定回路6は受信信号スケーリング変換回路10で遅延ヒストリの補償処理が実施されても、折り返し信号が発生しない限界のスロータイム幅(折り返し信号が発生しない範囲で最大のスロータイム幅)及びドップラー周波数幅(折り返し信号が発生しない範囲で最大のドップラー周波数幅)と、電波の中心周波数に対する送信帯域幅の比である比帯域とから、2次の位相変化を定める2次位相係数を決定する回路である。
即ち、マージン最小化2次位相係数決定回路6は折り返し信号が発生しない限界のスロータイム幅がd、限界のドップラー周波数幅がD、レーダの送信機により生成される送信信号の中心周波数Fに対する送信帯域幅Bの比である比帯域がξ(=B/F)であるとき、2次位相係数であるbをb=(D/d)×(2(1+ξ)/ξ)1/2によって計算する。
2次位相信号パラメータ設定回路7はマージン最小化2次位相係数決定回路6により決定された2次位相係数bを用いて、電波のスロータイム方向及びドップラー周波数方向の変化に対して2次の位相変化を有する2次位相信号のスロータイム幅w,w,w,wを設定する回路である。
即ち、2次位相信号パラメータ設定回路7はマージン最小化2次位相係数決定回路6により決定された2次位相係数bを用いて、2次位相信号のスロータイム幅w,w,w,wをw=β×D/b(βは1又は1より僅かに大きな定数)、w=β(d×b+D)/b(βは1又は1より僅かに大きな定数)、w=β(ξ×d×b+2(1+ξ)D)/2b(βは1又は1より僅かに大きな定数)、w=wによって計算する。
最小マージン付加回路8はマージン最小化2次位相係数決定回路6により決定された2次位相係数bにしたがってマージンのサイズを設定し、そのサイズを有するマージンを遅延スペクトルヒストリ上の信号の両端に付加する回路である。
即ち、最小マージン付加回路8はマージン最小化2次位相係数決定回路6により決定された2次位相係数bを用いて、2次位相信号のドップラー周波数幅W (max)をW (max)=β(ξ×d×b+2(1+ξ)D)/(2−ξ)によって計算する。
また、最小マージン付加回路8は遅延スペクトルヒストリ上の信号のスロータイム幅が、2次位相信号パラメータ設定回路7により設定されたスロータイム幅wと一致するように、サイズが(w−d)のマージンを遅延スペクトルヒストリ上の信号のスロータイムの両端に付加してから、マージン付加後の信号をスロータイム方向にフーリエ変換し、フーリエ変換後の信号のドップラー周波数幅が2次位相信号のドップラー周波数幅W (max)と一致するように、サイズが(W (max)−D)のマージンをフーリエ変換後の信号のドップラー周波数の両端に付加する処理を実施する。
2次位相信号生成回路9は2次位相信号パラメータ設定回路7により設定された2次位相信号のスロータイム幅w,w,w,wに基づいて、スロータイム及びファスト周波数についてのサンプル点が、最小マージン付加回路8によりマージンが付加された遅延スペクトルヒストリ上の信号と同じである4種類の2次位相信号Q,Q,Q,Qを生成する回路である。4種類の2次位相信号Q,Q,Q,Qは相互に位相変化が関連している。
受信信号スケーリング変換回路10は最小マージン付加回路8によりマージンが付加された遅延スペクトルヒストリ上の信号と2次位相信号生成回路9により生成された4種類の2次位相信号Q,Q,Q,Qとを用いて、SPに基づくKT処理を実施することで、遅延ヒストリにおけるスロータイムに対する電波の伝搬遅延時間の変化を補償する回路である。
マージン除去回路11は受信信号スケーリング変換回路10によりスロータイムに対する電波の伝搬遅延時間の変化が補償された信号に付加されているマージンを除去する回路である。
即ち、マージン除去回路11は最小マージン付加回路8と逆の操作であり、受信信号スケーリング変換回路10によりスロータイムに対する電波の伝搬遅延時間の変化が補償された信号をスロータイム方向にフーリエ変換して得られる遅延ドップラー分布から、0ドップラー周波数を中心とするドップラー周波数幅Dの信号を抽出するとともに、そのドップラー周波数幅Dの信号をドップラー周波数方向に逆フーリエ変換して得られる遅延ヒストリから、0スロータイムを中心とするスロータイム幅dの信号を抽出することで、スロータイムとドップラー周波数の両者のマージンが除去された遅延ヒストリを得る。
受信信号整形回路12は補償手段5による遅延ヒストリの補償に伴って生じるファスト周波数毎のスロータイム幅の相違を補正し、スロータイム幅補正後の遅延ヒストリをレーダ画像生成回路13に出力する回路である。
即ち、受信信号整形回路12はマージン除去回路11によりマージンが除去された遅延ヒストリから、0スロータイムを中心として、画像化パラメータ設定回路2により設定された画像化に用いるスロータイム幅Tの信号を切出し、その切出したスロータイム幅Tの信号をレーダ画像生成回路13に出力する。
レーダ画像生成回路13は受信信号整形回路12から出力された遅延ヒストリから目標の画像を再生する回路である。なお、レーダ画像生成回路13は画像再生手段を構成している。
図1の例では、画像レーダ装置の構成要素であるレーダ受信信号取得回路1、画像化パラメータ設定回路2、切出幅設定回路3、受信信号切出回路4、補償手段5、受信信号整形回路12及びレーダ画像生成回路13のそれぞれが専用のハードウェア(例えば、CPUを実装している半導体集積回路、あるいは、ワンチップマイコンなど)で構成されているものを想定しているが、画像レーダ装置がコンピュータで構成されていてもよい。
画像レーダ装置がコンピュータで構成される場合、レーダ受信信号取得回路1、画像化パラメータ設定回路2、切出幅設定回路3、受信信号切出回路4、補償手段5、受信信号整形回路12及びレーダ画像生成回路13の処理内容を記述しているプログラムをコンピュータのメモリに格納し、当該コンピュータのCPUが当該メモリに格納されているプログラムを実行するようにすればよい。
図2はこの発明の実施の形態1による画像レーダ装置の受信信号スケーリング変換回路10を示す構成図である。
図2において、スロータイムFT部21は最小マージン付加回路8によりマージンが付加された遅延スペクトルヒストリ上の信号Gftをスロータイム方向にフーリエ変換し、フーリエ変換後の信号Gffを出力する第1のフーリエ変換手段である。
スロータイムFT部22は2次位相信号生成回路9により生成された2次位相信号QであるQ1ftをスロータイム方向にフーリエ変換し、フーリエ変換後の信号Q1ffを出力する第2のフーリエ変換手段である。
乗算回路23はスロータイムFT部21から出力された信号Gffに対して、スロータイムFT部22から出力された2次位相信号Q1ffを乗算する第1の乗算回路である。
スロータイムIFT部24は乗算回路23の乗算結果Gff×Q1ffをドップラー周波数方向に逆フーリエ変換し、逆フーリエ変換後の信号X1ft(遅延スペクトルヒストリ上の信号Gftと2次位相信号Q1ftとの畳み込み演算結果Gft*Q1ftに相当する)を出力する第1の逆フーリエ変換手段である。
乗算回路25はスロータイムIFT部24から出力された逆フーリエ変換後の信号X1ftに対して、2次位相信号生成回路9により生成された2次位相信号QであるQ2ftを乗算する第2の乗算回路である。
スロータイムFT部26は乗算回路25の乗算結果X2ft=X1ft×Q2ftをスロータイム方向にフーリエ変換し、フーリエ変換後の信号X2ffを出力する第3のフーリエ変換手段である。
スロータイムFT部27は2次位相信号生成回路9により生成された2次位相信号QであるQ3ftをスロータイム方向にフーリエ変換し、フーリエ変換後の信号Q3ffを出力する第4のフーリエ変換手段である。
乗算回路28はスロータイムFT部26から出力されたフーリエ変換後の信号X2ffに対して、スロータイムFT部27から出力された2次位相信号Q3ffを乗算する第3の乗算回路である。
スロータイムIFT部29は乗算回路28の乗算結果X2ff×Q3ffをドップラー周波数方向に逆フーリエ変換し、逆フーリエ変換後の信号X3ft(乗算回路25の乗算結果X2ftと2次位相信号Q3ftとの畳み込み演算結果X2ft*Q3ftに相当する)を出力する第2の逆フーリエ変換手段である。
乗算回路30はスロータイムIFT部29から出力された逆フーリエ変換後の信号X3ftに対して、2次位相信号生成回路9により生成された2次位相信号QであるQ4ftを乗算し、その乗算結果X3ft×Q4ftをUftとして出力する第4の乗算回路である。
次に動作について説明する。
レーダは、観測対象である目標との相対的な位置関係を変えながら電波を繰り返し送受信する。
即ち、レーダは、目標との相対的な位置関係を変えながら、送信アンテナから送信機で生成された高周波信号である電波を目標に向けて放射する。
レーダは、目標に反射されて戻ってきた当該電波の反射波が受信アンテナに入射されると、受信機が当該電波の反射波を検波して復調することで受信信号を取得する。
レーダ受信信号取得回路1は、レーダからの受信信号として、ファストタイムとスロータイムとの2次元分布である遅延ヒストリを受けると、その遅延ヒストリを受信信号切出回路4に出力する。
画像化パラメータ設定回路2は、レーダ画像生成回路13の画像化に用いるパラメータとして、例えば、画像化に用いる遅延ヒストリの送信時刻幅であるスロータイム幅T[s]を設定する。
最終的に画像化に用いるスロータイム幅Tが定まると、ドップラー周波数の分解能が1/T[s]に定まる。レーダのパルス繰り返し周波数がF[Hz]、最終的に画像化に用いるパルス数がHであるとすると、スロータイム幅TはH/Fで与えられる。
切出幅設定回路3は、レーダ受信信号取得回路1により取得された遅延ヒストリにおけるスロータイムの切出し幅Tcutを設定する。
即ち、切出幅設定回路3は、補償手段5による遅延ヒストリの補償に伴って生じるファスト周波数毎のスロータイム幅の相違が受信信号整形回路12によって補正された後でも、レーダ画像生成回路13の画像化に用いるスロータイム幅Tを確保するために、スロータイムの切出し幅Tcutを設定する。
具体的には、切出幅設定回路3は、レーダから放射される電波である送信信号の中心周波数がF[Hz]、送信信号の帯域幅がB[Hz]であるとすれば、画像化パラメータ設定回路2により設定されたスロータイム幅T[s]を用いて、切出しスロータイム幅の下限値Tcutmin[s]を下記の式(1)によって得る。
Figure 0006289388
式(1)において、ξは比帯域(=B/F)である。
式(1)では、信号の最小ファスト周波数(F−B/2)における信号のスロータイム幅が、スロータイムに対する電波の伝搬遅延時間の1次変化を補償するKT処理を実施することで、元信号の(2−ξ)/2倍になることを踏まえ、そのスロータイム幅が所望のスロータイム幅T(最終的に画像化に用いるスロータイム幅)と一致するように下限値Tcutminを定めている。
切出幅設定回路3は、切出しスロータイム幅の下限値Tcutminを求めると、下記の式(2)によって、パルス数Hcutを設定する。
パルス数Hcutとして、下記の式(2)を満足する整数のうち、なるべく小さな整数を設定する。
Figure 0006289388
処理の構成によっては、パルス数Hcutが偶数や2のべき乗であることが望ましい場合があるが、このような場合も、式(2)を満たし、かつ、その他の要求条件を満足するように設定すればよい。
以下では、パルス数Hcutを1/2にするための式の簡素化のため、パルス数Hcutを偶数として説明するが、奇数の場合も切り上げや切り捨てを実施する関数を導入すれば容易に対応できるため、本質的な問題ではない。
切出幅設定回路3は、パルス数Hcutを設定すると、下記の式(3)に示すように、そのパルス数Hcutとレーダのパルス繰り返し周波数Fから、スロータイムの切出し幅Tcutを設定する。
Figure 0006289388
受信信号切出回路4は、切出幅設定回路3が切出し幅Tcutを設定すると、その切出し幅Tcutで、レーダ受信信号取得回路1により取得された遅延ヒストリの切出しを行う。
また、受信信号切出回路4は、切出した遅延ヒストリをファストタイム方向にフーリエ変換することで遅延スペクトルヒストリGft(ρ,η)を得て、その遅延スペクトルヒストリGft(ρ,η)を補償手段5に出力する。
ここでは、受信信号切出回路4が切出した遅延ヒストリをファストタイム方向にフーリエ変換して、遅延スペクトルヒストリGft(ρ,η)を得ているが、受信信号切出回路4が切出した遅延ヒストリを補償手段5に出力し、補償手段5が受信信号切出回路4から出力された遅延ヒストリをファストタイム方向にフーリエ変換して、遅延スペクトルヒストリGft(ρ,η)を得るようにしてもよい。
補償手段5は、遅延ヒストリをファストタイム方向にフーリエ変換することで得られる遅延スペクトルヒストリGft(ρ,η)の各ファスト周波数ρに応じたサンプリング間隔で、遅延スペクトルヒストリ上の信号をスロータイム方向にリサンプリングすることで、その遅延ヒストリにおけるスロータイムに対する電波の伝搬遅延時間の変化を補償する処理を実施する。
即ち、補償手段5は、遅延スペクトルヒストリ上の信号をリサンプリングする処理の途中で発生するスロータイム方向及びドップラー周波数方向の信号の拡大に対処するために、遅延スペクトルヒストリ上の信号の拡大幅に相当するサイズのマージン(値が0の領域)を遅延スペクトルヒストリ上の信号の両端に付加してから、当該信号のリサンプリングを実施するようにしている。
以下、補償手段5の処理内容を具体的に説明するが、その動作を説明する前に、KT(Keystone Transform)処理及びSP(Scaling Principle)に基づくKT処理の概要について説明する。
ここでは、目標とレーダの相対運動の影響で発生するスロータイムに対する電波の伝搬遅延時間の変化は、1次の成分が支配的であると想定し、下記の式(4)に示すように、スロータイムに対する電波の伝搬遅延時間の変化を0次の係数sと1次の係数sを用いて表記する。
Figure 0006289388
この場合、遅延スペクトルヒストリGft(ρ,η)は、下記の式(5)のように与えられる。
Figure 0006289388
遅延スペクトルヒストリGft(ρ,η)に対応する遅延ヒストリGtt(τ,η)は、下記の式(6)に示すように、遅延スペクトルヒストリGft(ρ,η)をρ方向に逆フーリエ変換(IFT)することで得られる。τはファストタイムである。
以下、a(x)をx方向にIFTする演算子をF −1[a(x)]で表し、また、a(x)をx方向にFTする演算子をF[a(x)]で表すようにする。
Figure 0006289388
式(6)において、sinc(x)は良く知られているsinc関数であり、下記の式(7)で与えられる。
Figure 0006289388
sinc(x)は、x=0で最大値の1になる。したがって、仮にs=0の場合には、スロータイムηによらず、ファストタイムτ=sでピークになる。
しかし、τ≠sの場合には、ピークのファストタイムの位置がスロータイムηの経過とともに変化する。
簡易なレーダ画像再生では、遅延ヒストリ(または、遅延ヒストリのファストタイム軸を定数倍したレンジヒストリ)をスロータイム方向にフーリエ変換することで、目標上の各反射点分布を遅延ドップラー分布(または、レンジドップラー分布)として得るが、上記のようにピークのファストタイムの位置がスロータイムηの経過とともに変化する遅延ヒストリでは、遅延ドップラー分布のピークが一点に結像せずにぼけが生じる。
また、例えば、建物や地形などの地上の固定目標を移動式レーダで観測するSARのように、目標とレーダの相対的な位置変化が既知である場合には、上記遅延ヒストリのスロータイム方向のフーリエ変換ではなく、相対位置関係の変化を考慮したより詳細な画像再生を行う場合がある。しかし、このような運用でも、相対的な位置変化に関する推定誤差が存在する場合や、観測シーン中に未知の移動目標が存在する場合には同様の問題が発生する。
したがって、遅延ドップラー分布のピークを一点に結像させるためには、式(4)のsηを推定して、スロータイムに対する電波の伝搬遅延時間の1次成分の変化を打ち消すように補償してやる必要がある。
しかし、遅延ヒストリに含まれる雑音やクラッタなどの不要信号のレベルが大きい場合や、相対運動が異なる複数の目標の信号が混在している場合などでは、sηの推定が困難なものとなる。
KT処理は、この推定問題を回避して補償を実現可能とする技術である。そのために、ファスト周波数ρに依存して変化する下記の式(8)に示すα(ρ)を導入する。
Figure 0006289388
式(8)のα(ρ)を用いて、下記の式(9)に示すUft(ρ,η)を得る。
Figure 0006289388
ただし、
Figure 0006289388
式(9)のUft(ρ,η)をρ方向にIFTすると、下記の式(11)に示すUtt(τ,η)が得られる。ただし、ここではT’(ρ)におけるρ依存性を無視している。この問題については後ほど触れる。
Figure 0006289388
式(11)より、Utt(τ,η)では、Gtt(τ,η)で発生していたピークのファストタイム位置が、スロータイムηに依存して変化することが解消されていることが分かる。
このことは、Utt(τ,η)をスロータイム方向にフーリエ変換して得られる遅延ドップラー分布(レーダ画像に相当する画像)、即ち、下記の式(12)のUtf(τ,γ)では、信号がファストタイム軸上でS、ドップラー周波数軸上で−Fの位置に結像することから、明確に把握することができる。ただし、γはドップラー周波数である。
Figure 0006289388
ここで、Uft(ρ,η)を得る処理であるUft(ρ,η)=Gft(ρ,α(ρ)η)は、Gft(ρ,α(ρ)η)の信号分布のη方向のスケーリングをファスト周波数ρ毎に、α(ρ)に変える操作に相当する。
このことを踏まえて、以下、α(ρ)をスケーリング係数と称する。
また、η軸を離散的な時間でサンプリングしてデータを得るような一般的な運用では、そのサンプリングの周期であるΔをファスト周波数ρ毎に変えたα(ρ)Δで得るリサンプリングとみなすこともできる。リサンプリングに要する処理負荷は一般的に高く、この処理負荷の低減が課題となっている。
スケーリング理論であるSPを用いると、4種類の信号の乗算とFT/IFTを組み合わせた軽い処理で実現することができるので、処理負荷が高くなる問題を解決することができる。
4種類の信号は、いずれもリサンプリングを行う軸方向の変化(ここでは、スロータイム方向の変化)に対して、2次の位相変化を有することから、以下では、4種類の信号を2次位相信号と称する。
まず、u(η)のスロータイムをα倍した信号(サンプリング間隔をα倍した信号)であるu(η)は、SPに基づくと、下記の式(13)で得られる。
Figure 0006289388
ここで、x(η)y(η)は、x(η)とy(η)の畳み込み演算である。
また、p(η)(k=1,2,3,4)は、4種類の2次位相信号であり、下記の式(14)〜(17)で与えられる。
Figure 0006289388

Figure 0006289388

Figure 0006289388

Figure 0006289388
式(14)〜(17)において、bは4種類の2次位相信号のスロータイムに対する2次位相の特性を与えるパラメータであり、以下では、2次位相係数と称する。
以上の計算における畳み込み演算部分は、良く知られる畳み込み定理に基づいてスロータイム軸をフーリエ変換したドップラー周波数領域での乗算と、ドップラー周波数軸上での逆フーリエ変換で実現することができる。
したがって、SPの処理は、FT、IFT及び乗算処理で実現することができる。
このSPの原理をKT処理に適用する場合、αをρに応じて変化する前述のα(ρ)に置き代えて、ファスト周波数ρ毎にスケーリングを変えればよい。
KT用の4種類の2次位相信号であるQ1ft(ρ,η)、Q2ft(ρ,η)、Q3ft(ρ,η)、Q4ft(ρ,η)は、下記の式(18)〜(21)で与えられる。
なお、Qkft(ρ,η)の添え字であるk(k=1,2,3,4)は、2次位相信号の番号、ftはファスト軸が周波数で、スロー軸が時間であることを示している。
Figure 0006289388

Figure 0006289388

Figure 0006289388

Figure 0006289388
式(18)〜(21)において、rect(x)は、取り扱う信号が有限の時間幅及び周波数幅であることを考慮して導入している一般的な矩形関数であり、下記の式(22)のように定義される。
Figure 0006289388
式(18)〜(21)におけるrect関数内の分母のw(k=1,2,3,4)は、2次位相信号Qkft(ρ,η)が0とはならないスロータイムηの幅を与えるものである。
以下では、これらを2次位相信号のスロータイム幅と称する。スロータイム幅の定め方については後述する。
2次位相信号Qkft(ρ,η)をスロータイム方向にフーリエ変換して得られる遅延スペクトルドップラー分布Qkff(ρ,γ)は、良く知られる停留位相近似に基づくと、近似的に下記の式(23)〜(26)で表される。ただし、ここでは議論に関係がない定数倍を省略している。
Figure 0006289388

Figure 0006289388

Figure 0006289388

Figure 0006289388
式(23)〜(26)において、遅延スペクトルドップラー分布Qkff(ρ,γ)のドップラー周波数幅を与えるW(k=1,2,3,4)は、停留位相近似に基づいて下記の式(27)〜(30)で与えられる。
Figure 0006289388

Figure 0006289388

Figure 0006289388

Figure 0006289388
これらの信号を用いたSPに基づくKT処理を行ってGft(ρ,η)からUft(ρ,η)を得る処理は、下記の式(31)で表される。
Figure 0006289388
ft(ρ,η)からUft(ρ,η)を得る処理を行う受信信号スケーリング変換回路10の処理ブロックは、図2の通りである。
受信信号スケーリング変換回路10の処理内容は後述するが、Gft(ρ,η)とQ1ft(ρ,η)の畳み込み演算がスロータイムFT部21,22、乗算回路23及びスロータイムIFT部24で実現される。
また、スロータイムIFT部24の出力とQ2ft(ρ,η)の乗算が乗算回路25で実現される。
さらに、乗算回路25の出力とQ3ft(ρ,η)の畳み込み演算がスロータイムFT部26,27、乗算回路28及びスロータイムIFT部29で実現される。
また、スロータイムIFT部29の出力とQ4ft(ρ,η)の乗算が乗算回路30で実現される。
乗算回路23,25,28,30において、Q1ff(ρ,γ),Q2ft(ρ,η),Q3ff(ρ,γ),Q4ft(ρ,η)を乗算する際には、データの欠損が生じないように、乗算する信号の幅(Qkft(ρ,η)を乗算する際にはスロータイム幅w、Qkff(ρ,γ)を乗算する際にはドップラー周波数幅W)が、もう一方の入力信号の幅をカバーすることが可能な分だけ確保しておく必要がある。
また、処理の過程の信号のスロータイム幅やドップラー周波数幅が変化する点には注意する必要がある。特に、スロータイム幅やドップラー周波数幅が広がった際に、元信号のスロータイム幅やドップラー周波数幅を超えて信号が折り返す可能性があるので、注意する必要がある。
ブロック内の各処理は、折り返し信号の発生を想定していないことから、折り返し信号の発生の影響で、再生画像の歪みや意図しない偽像等の問題が発生する。
したがって、再生画像の歪みや偽像が発生する問題を回避するには、入力信号の処理前に、予めスロータイムやドップラー周波数に対してマージン(値が0の領域)を設けておく必要がある。
ここで、図3は最小マージン付加回路8におけるマージ付加処理を示す説明図である。
左上の元データにおける横軸は入力信号のスロータイム軸又はドップラー周波数軸である。
折り返し問題は、スロータイム軸及びドップラー周波数軸のいずれでも発生することから、ここでは、これらをまとめてスロー軸と呼んで統一的に説明する。
まず、単純にKT処理に対してSP処理を適用した場合について考える。
処理過程のある段階で、スロー軸が広がるため、元の幅(スロータイム幅d又はドップラー周波数幅D)を超えた分の信号が発生し、元の幅を超えた分の信号が、折り返し信号として、図3の左側に示すように重畳される。
これに対して、図3の右側に示すように、十分なスロー軸幅のマージン(元の幅を超えている拡大幅に相当するサイズのマージン)を追加しておけば、処理過程のある段階で、スロー軸が広がっても、折り返し信号が発生しないため、折り返し信号の重畳を回避することができる。
ただし、このマージンの幅を広くする程、データ容量の増大によって処理負荷も増大する。
したがって、処理負荷低減の観点からは、マージンのサイズを必要最小限のサイズとすることが望ましい。
このため、マージン最小化2次位相係数決定回路6では、マージンのサイズが必要最小限のサイズになるように2次位相係数bを設定する。
即ち、信号の広がり幅は2次位相係数bによって変化し、必要なマージンも2次位相係数bによって変化するため、マージン最小化2次位相係数決定回路6は、各処理段での信号の広がり幅及び所要マージンの特性を見積もった上で、マージンのサイズが必要最小限のサイズとなるように、2次位相係数bを設定する。
2次位相係数bの設定は、以下のように行われる。
入力信号のドップラー周波数の幅をDで与える。ここでのDは、元信号に含まれる目標信号の真のドップラー周波数幅ではなく、これを超えると、折り返し信号が発生するぎりぎりの幅(折り返し信号が発生しない範囲で最大のドップラー周波数幅)である。
また、各目標のドップラー周波数γtgtは、−D/2≦γtgt<D/2を満足するものとする。
このDは、一般的には、パルス繰り返し周波数F[Hz]と等しいと考えて差し支えない。
また、入力信号のスロータイム幅dは、切出幅設定回路3により設定された切出し幅Tcutに等しいものとする。
以下では、第k番目の2次位相信号(または、2次位相信号をスロータイム方向にフーリエ変換した結果)を乗算した後の信号をスロータイム軸上ではSkft(ρ,η)、ドップラー周波数軸上ではSkff(ρ,γ)で表すものとする。また、そのスロータイム幅をd、ドップラー周波数幅をDで表すものとする。なお、これらは必要に応じてファスト周波数ρの関数d(ρ),D(ρ)に拡張する。
まず、遅延スペクトルドップラー分布Q1ff(ρ,γ)のドップラー周波数幅Wは、Dと等しいか、僅かに大きいことが望ましいので、ここでは、1と等しいか、1より僅かに大きな定数βを導入して、ドップラー周波数幅Wを下記の式(32)で与えるようにする。
Figure 0006289388
次に、2次位相信号Q1ft(ρ,η)と畳込み後の信号S1ft(ρ,η)のスロータイム幅の最大値d[s]を見積もる。
2次位相信号Q1ft(ρ,η)をスロータイム方向にフーリエ変換したQ1ff(ρ,γ)において、畳込み後の信号S1ft(ρ,η)のスロータイム幅の変化に寄与する実効的な成分のドップラー周波数幅W (eff)は、下記の式(33)に示すように、受信信号自身のドップラー周波数幅であるDで制限される。
Figure 0006289388
スロータイム幅の変化に寄与する実効的な成分のドップラー周波数幅W (eff)に対応する時間幅w (eff)は、下記の式(34)で与えられる。
Figure 0006289388
畳み込み演算によって元の信号のスロータイム幅がw (eff)だけ広がるため、スロータイム幅の最大値dは、下記の式(35)で与えられる。
Figure 0006289388
については、スロータイム幅の最大値dの時間幅を過不足なくカバーするために、βを1と等しいか、僅かに大きい定数として、下記の式(36)で与えるようにする。
Figure 0006289388
このwが、SPの処理の途中で生じる信号のスロータイム幅の最大値となり、これが折り返さないようにスロータイム幅のマージンを確保する必要がある。
次に、S2ff(ρ,γ)のドップラー周波数幅であるD(ρ)[Hz]を見積もる。
ここでは幅がファスト周波数ρに依存することを明示化するために、ファスト周波数ρの関数として表している。
2次位相信号Q2ft(ρ,η)のスロータイム幅を、dをカバーするように定めた場合、2次位相信号Q2ft(ρ,η)において、信号のドップラー周波数幅の変化に寄与する実効的な成分のスロータイム幅w (eff)は、dと等しくなる。
Figure 0006289388
信号のドップラー周波数幅の変化に寄与する実効的な成分のスロータイム幅w (eff)に対応するドップラー周波数幅W (eff)(ρ)は、下記の式(38)で与えられる。
Figure 0006289388
したがって、S2ff(ρ,γ)のドップラー周波数幅であるD(ρ)は、下記の式(39)のように表される。
Figure 0006289388
次に、wを定める。2次位相信号Q3ft(ρ,η)をスロータイム方向にフーリエ変換したQ3ff(ρ,γ)がS2ff(ρ,γ)のドップラー周波数幅をカバーするために、βを1と等しいか、僅かに大きい定数として、W(ρ)が下記の式(40)を満足する必要がある。
Figure 0006289388
したがって、wに課される条件は、下記の式(41)で与えられる。
Figure 0006289388
ここで、式(41)を満足する最小のwを見積もるために、式(41)の最右辺における|ρ|(db+D)+(F+ρ)D(=A(ρ)とする)のρに対する振舞を調べる。
A(ρ)は、下記の式(42)から分かるように、ρ<0では単調減少、ρ≧0では単調増加となるため、A(ρ)の最大値は、ρ=B/2又はρ=−B/2になる場合となり、これらのρをA(ρ)に代入することで、ρ=B/2のとき、最大値(Bdb+2(F+B)D)/2となることが確認される。
Figure 0006289388
このことを踏まえると、wは下記の式(43)のように与えられる。
Figure 0006289388
ξは比帯域(=B/F)であるため、W(ρ)は下記の式(44)のように与えられる。
Figure 0006289388
このW(ρ)の最大値W (max)が、SP処理の途中段で発生する信号のドップラー周波数幅の最大値となる。
maxρ(α(ρ))=F/(F−B/2)=2/(2−ξ)であることを踏まえると、最大値W (max)は、下記の式(45)で与えられる。
Figure 0006289388
2次位相信号Q4ft(ρ,η)の乗算は、SP処理の最終段のdechirp処理であり、wについては、S3ft(ρ,η)の情報欠落を生じさせない程度の十分広い幅に設定しておいてよい。
ここでは、マージン幅に影響を及ぼさない範囲での最大幅として、この値を下記の式(46)に示すようにwに一致させるようにする。
Figure 0006289388
したがって、信号の折返しを発生させないようにするためには、マージンを含む処理データのスロータイム幅がw以上で、ドップラー周波数幅がW (max)以上にすればよい。そこで、ここでは、スロータイム幅をw、ドップラー周波数幅をW (max)に設定するものとする。
ただし、上で示しているスロータイム幅w及びドップラー周波数幅W (max)は、2次位相係数bに依存する形で表現されており、2次位相係数bの決定については自由度がある。
そこで、以下では、処理データ容量に比例するスロータイム方向のデータ点数が最小となるように、2次位相係数bを定める。
スロータイム幅wの信号のドップラー周波数分解能が1/wで、ドップラー周波数幅W (max)の信号の時間分解能が1/W (max)で与えられることを踏まえると、スロータイム方向の所要のデータ点数は、2次位相係数bの関数N(b)として、下記の式(47)で定式化される。
Figure 0006289388
式(47)に対して、既に得られたw,W (max)を代入すると、下記の式(48)が得られる
Figure 0006289388
式(48)の関数N(b)を最小化する2次位相係数bが最適な設計値b(opt)となる。
最適な設計値であるb(opt)は、関数N(b)が極値となるbとして得られるが、関数N(b)が極値になるには、下記の式(49)を満足することが必要条件となる。
Figure 0006289388
式(49)を満足するb(opt)は、下記の式(50)のようになる。
Figure 0006289388
b<b(opt)のときdN(b)/db<0になって関数N(b)が単調に減少し、b>b(opt)のときdN(b)/db>0になって関数N(b)が単調に増加することから、関数N(b)はb(opt)で最小となることが確かめられる。
スロータイム幅w(k=1,2,3,4)の最適値w (opt)は、2次位相係数bの最適な設計値であるb(opt)を用いて、下記の式(51)〜(54)のように与えられる。
Figure 0006289388

Figure 0006289388

Figure 0006289388

Figure 0006289388
なお、式(51)は、式(27)及び式(32)からWを消去することで得られる関係式(w=B/b)において、b=b(opt)を代入することにより得られる。
また、W(ρ)の最大値W (max)の最適値W (max,opt)は、下記の式(55)で与えられる。
Figure 0006289388
以上がKT処理及びSPに基づくKT処理の概要である。
以上を踏まえて、以下、補償手段5の処理内容を具体的に説明する。
補償手段5のマージン最小化2次位相係数決定回路6は、受信信号スケーリング変換回路10で遅延スペクトルヒストリGft(ρ,η)上の信号のリサンプリング処理が実施されても、折り返し信号が発生しないようにするのに必要かつ十分なマージンのサイズが得られるようにするため、限界のスロータイム幅d、限界のドップラー周波数幅D及び比帯域ξ(=B/F)を式(50)に代入することで、2次位相係数bの最適な設計値b(opt)を算出する。
2次位相信号パラメータ設定回路7は、マージン最小化2次位相係数決定回路6が2次位相係数bの最適な設計値b(opt)を算出すると、2次位相係数bの最適な設計値b(opt)を式(51)〜(54)に代入することで、2次位相信号Qkft(ρ,η)のスロータイム幅の最適値w (opt)を算出する。
最小マージン付加回路8は、マージン最小化2次位相係数決定回路6が2次位相係数bの最適な設計値b(opt)を算出すると、2次位相係数bの最適な設計値b(opt)を式(55)に代入することで、ドップラー周波数幅の最適値W (max,opt)を算出する。
最小マージン付加回路8は、ドップラー周波数幅の最適値W (max,opt)を算出すると、受信信号切出回路4から出力された遅延スペクトルヒストリGft(ρ,η)に対して、スロータイム幅が最適値w (opt)になり、ドップラー周波数幅が最適値W (max,opt)になるように、値が0の領域であるマージンを各軸上で加える処理を行う。
具体的には、以下のようにマージンを付加する。
最初に、最小マージン付加回路8は、スロータイム幅が最適値w (opt)と一致するように、遅延スペクトルヒストリGft(ρ,η)の両端に、不足しているスロータイム幅(w (opt)−d)と同一サイズのマージンを付加する。
次に、最小マージン付加回路8は、マージン付加後の遅延スペクトルヒストリGft(ρ,η)をスロータイム方向にフーリエ変換し、フーリエ変換後の遅延スペクトルヒストリである遅延スペクトルドップラー分布Gff(ρ,γ)のドップラー周波数幅が2次位相信号のドップラー周波数幅W (max,opt)と一致するように、遅延スペクトルドップラー分布Gff(ρ,γ)の両端に、不足しているドップラー周波数幅(W (max,opt)−D)と同一サイズのマージンを付加する。
ここでは、遅延スペクトルヒストリGft(ρ,η)の両端に、不足しているスロータイム幅(w (opt)−d)と同一サイズのマージンを付加してから、遅延スペクトルドップラー分布Gff(ρ,γ)の両端に、不足しているドップラー周波数幅(W (max,opt)−D)と同一サイズのマージンを付加する例を示しているが、スロータイム幅がw (opt)の空のデータ領域を確保した上で、このデータ領域の中央に遅延スペクトルヒストリGft(ρ,η)を配置してから、この遅延スペクトルヒストリGft(ρ,η)をスロータイム方向にフーリエ変換し、さらに、別途確保したドップラー周波数幅がW (max,opt)の空のデータ領域の中央に、遅延スペクトルドップラー分布Gff(ρ,γ)を配置するようにしてもよい。
以下、スロータイム及びドップラー周波数のサンプルが離散的な一般的な場合の処理方法を具体的に説明する。
スロータイムのサンプリング周波数がF[Hz]であるとき、離散化を考慮して、xの小数点以下を切り上げる関数ceil(x)を導入し、スロータイム軸でのマージン付加後のスロータイム方向のセル数Htimeを下記の式(56)のように定める。
Figure 0006289388
これにより、このマージン付加後の信号のスロータイム幅δtimeは、下記の式(57)のように与えられる。
Figure 0006289388
したがって、この信号のドップラー周波数セル幅Δfreqは、下記の式(58)のように与えられる。
Figure 0006289388
よって、ドップラー周波数軸上でのマージン付加後のセル数Hfreqは、下記の式(59)のように与えられる。
Figure 0006289388
ここでは、サンプル番号hを導入して、入力信号のスロータイム及びドップラー周波数を離散的に取り扱っている。
スロータイムを離散的に表現した信号をG0ft(ρ,h)(≡Gft(ρ,h/F),h=−Hcut/2,・・・,(Hcut/2)−1)で表す。
そして、スロータイム軸上でのマージンを付加するため、スロータイム方向のサンプル数がHtimeのデータ格納配列G1ft(ρ,h)を用意した上で、下記の式(60)によってG0ft(ρ,h)の値を配置する。
Figure 0006289388
これにより、スロータイム軸上でのマージンの付加が実現される。ここでは、式の表記の簡単化のため、Hcut,Htime,Hfreqが偶数であるとして取り扱うが、四捨五入、切り上げや切り捨てなどのオペレータを導入すれば、奇数であっても用いることできることは言うまでもない。
次に、G1ft(ρ,h)をh方向に離散フーリエ変換することで、G1ff(ρ,m)を得る。ただし、m=−Htime/2,・・・,(Htime/2)−1である。
1ft(ρ,h)のスロータイム幅がHtime/Fであることから、ドップラー周波数のステップ幅はF/Htimeとなる。即ち、第m番目のドップラーセルのドップラー周波数γ(m)は、γ(m)=mF/Htime[Hz]となる。
次に、ドップラー周波数軸上でマージンを付加するため、ドップラー周波数方向のサンプル数がHfreqのデータ格納配列G2ff(ρ,m)を用意した上で、下記の式(61)によってG1ff(ρ,m)の値を配置する。
Figure 0006289388
これにより、ドップラー周波数軸上のマージンの付加も実現される。
得られたG2ff(ρ,m)をm方向に離散逆フーリエ変換することで、スロータイム及びドップラー周波数軸の両者で所要の幅のマージンが付加された遅延スペクトルヒストリG2ft(ρ,h)が得られる。ただし、h=−Hfreq/2,・・・,0,・・・,(Hfreq/2)−1である。
なお、G2ff(ρ,m)のドップラー周波数幅がFfreq/Htimeであることから、G2ft(ρ,h)のスロータイムのステップ幅はHtime/Ffreqとなる。
即ち、η(h)=h・Htime/Ffreqとなる。
2次位相信号生成回路9は、2次位相信号パラメータ設定回路7により設定された2次位相信号のスロータイム幅w,w,w,wに基づいて、スロータイム及びファスト周波数についてのサンプル点が、最小マージン付加回路8によりマージンが付加された遅延スペクトルヒストリGft(ρ,η)と同じである4種類の2次位相信号Q1ft(ρ,η),Q2ft(ρ,η),Q3ft(ρ,η),Q4ft(ρ,η)を生成する。
即ち、2次位相信号生成回路9は、2次位相信号パラメータ設定回路7により設定された2次位相信号のスロータイム幅w,w,w,wを式(18)〜(21)に代入することで、2次位相信号Q1ft(ρ,η),Q2ft(ρ,η),Q3ft(ρ,η),Q4ft(ρ,η)を生成する。このとき、スロータイム幅やステップ幅は、最小マージン付加回路8によって定められたものを用いる。
受信信号スケーリング変換回路10は、最小マージン付加回路8によりマージンが付加された遅延スペクトルヒストリGft(ρ,η)と2次位相信号生成回路9により生成された4種類の2次位相信号Q1ft(ρ,η),Q2ft(ρ,η),Q3ft(ρ,η),Q4ft(ρ,η)とを用いて、SPに基づくKT処理を実施することで、目標とレーダの間の相対運動に起因して発生しているスロータイムに対する電波の伝搬遅延時間の1次変化を補償する。
以下、受信信号スケーリング変換回路10の処理内容を具体的に説明する。
受信信号スケーリング変換回路10のスロータイムFT部21は、最小マージン付加回路8からマージンが付加された遅延スペクトルヒストリGft(ρ,η)を受けると、その遅延スペクトルヒストリGft(ρ,η)をスロータイム方向にフーリエ変換し、フーリエ変換後の遅延スペクトルヒストリである遅延スペクトルドップラー分布Gff(ρ,γ)を乗算回路23に出力する。
スロータイムFT部22は、2次位相信号生成回路9から2次位相信号Q1ft(ρ,η)を受けると、その2次位相信号Q1ft(ρ,η)をスロータイム方向にフーリエ変換し、フーリエ変換後の2次位相信号Q1ff(ρ,γ)を乗算回路23に出力する。
乗算回路23は、スロータイムFT部21から出力された遅延スペクトルドップラー分布Gff(ρ,γ)と、スロータイムFT部22から出力された2次位相信号Q1ff(ρ,γ)とを周波数軸上で乗算し、その乗算結果Gff(ρ,γ)×Q1ff(ρ,γ)をスロータイムIFT部24に出力する。
スロータイムIFT部24は、乗算回路23の乗算結果Gff(ρ,γ)×Q1ff(ρ,γ)をドップラー周波数方向に逆フーリエ変換し、その逆フーリエ変換結果X1ft(ρ,η)を乗算回路25に出力する。この逆フーリエ変換結果X1ft(ρ,η)は、遅延スペクトルヒストリGft(ρ,η)と2次位相信号Q1ft(ρ,η)の畳み込み演算結果Gft(ρ,η)*Q1ft(ρ,η)に相当する。
乗算回路25は、スロータイムIFT部24から逆フーリエ変換結果X1ft(ρ,η)を受けると、その逆フーリエ変換結果X1ft(ρ,η)と2次位相信号生成回路9から出力された2次位相信号Q2ft(ρ,η)とを時間軸上で乗算し、その乗算結果X2ft(ρ,η)=X1ft(ρ,η)×Q2ft(ρ,η)をスロータイムFT部26に出力する。
スロータイムFT部26は、乗算回路25の乗算結果X2ft(ρ,η)をスロータイム方向にフーリエ変換し、フーリエ変換結果であるX2ff(ρ,γ)を乗算回路28に出力する。
スロータイムFT部27は、2次位相信号生成回路9から2次位相信号Q3ft(ρ,η)を受けると、その2次位相信号Q3ft(ρ,η)をスロータイム方向にフーリエ変換し、フーリエ変換後の2次位相信号Q3ff(ρ,γ)を乗算回路28に出力する。
乗算回路28は、スロータイムFT部26から出力されたフーリエ変換結果X2ff(ρ,γ)と、スロータイムFT部27から出力された2次位相信号Q3ff(ρ,γ)とを周波数軸上で乗算し、その乗算結果X2ff(ρ,γ)×Q3ff(ρ,γ)をスロータイムIFT部29に出力する。
スロータイムIFT部29は、乗算回路28の乗算結果X2ff(ρ,γ)×Q3ff(ρ,γ)をドップラー周波数方向に逆フーリエ変換し、その逆フーリエ変換結果X3ft(ρ,η)を乗算回路30に出力する。この逆フーリエ変換結果X3ft(ρ,η)は、乗算回路25の乗算結果X2ft(ρ,η)と2次位相信号Q3ft(ρ,η)の畳み込み演算結果X2ft(ρ,η)*Q3ft(ρ,η)に相当する。
乗算回路30は、スロータイムIFT部29から逆フーリエ変換結果X3ft(ρ,η)を受けると、その逆フーリエ変換結果X3ft(ρ,η)と2次位相信号生成回路9から出力された2次位相信号Q4ft(ρ,η)とを時間軸上で乗算し、その乗算結果X3ft(ρ,η)×Q4ft(ρ,η)を遅延スペクトルヒストリUft (margin)(ρ,η)としてマージン除去回路11に出力する。
なお、乗算回路23,25の処理によって信号の幅が拡大しているが、正しいマージンが設定されているため、乗算回路28,30の処理によって信号の幅が元の幅に戻っている。
マージン除去回路11は、受信信号スケーリング変換回路10からスロータイムに対する電波の伝搬遅延時間の1次変化が補償されている遅延スペクトルヒストリUft (margin)(ρ,η)を受けると、その遅延スペクトルヒストリUft (margin)(ρ,η)に付加されているマージンを除去する。
即ち、マージン除去回路11は、最小マージン付加回路8と逆の操作であり、最初に、遅延スペクトルヒストリUft (margin)(ρ,η)をスロータイム方向にフーリエ変換して得られる遅延ドップラー分布から、0ドップラー周波数を中心とするドップラー周波数幅Dの信号を抽出する。
次に、マージン除去回路11は、ドップラー周波数幅Dの信号を逆フーリエ変換して得られる遅延スペクトルヒストリから、0スロータイムを中心とするスロータイム幅dの信号を抽出することで、スロータイムとドップラー周波数の両者のマージンが除去された遅延スペクトルヒストリを得る。
以下、最小マージン付加回路8での説明と同様に、スロータイムとドップラー周波数が離散している場合のマージン除去回路11の具体的な処理を説明する。
まず、U2ft(ρ,h)=Uft (margin)(ρ,h・Htime/Ffreq)とする。ただし、h=−Hfreq/2,・・・,0,・・・,(Hfreq/2)−1)である。
2ft(ρ,h)をh方向に離散フーリエ変換して得られるU2ff(ρ,m)(m=−Htime/2,・・・,(Htime/2)−1)において、下記の式(62)によって0ドップラーを中心とするHtimeのドップラーセル幅の信号をU1ff(ρ,m)として得る。
Figure 0006289388
次に、U1ff(ρ,m)をm方向に逆離散フーリエ変換して得られるU1ft(ρ,h)(h=−Htime/2,・・・,(Htime/2)−1)において、下記の式(63)に示すように、0を中心とするHcut幅の信号を抽出して、Hcut幅の信号をU0ft(ρ,h)と表す。
Figure 0006289388
0ft(ρ,h)では、付加されたマージンが取り除かれている。また、そのスロータイムのステップ幅が元の値である1/Fに戻っている。
受信信号整形回路12は、補償手段5でのSPに基づくKT処理(スロータイムに対する電波の伝搬遅延時間の変化の補償)に伴って生じるファスト周波数毎のスロータイム幅の相違を補正し、スロータイム幅の相違を補正した遅延ヒストリをレーダ画像生成回路13に出力する。
即ち、受信信号整形回路12は、マージン除去回路11によりマージンが除去された遅延ヒストリから、0スロータイムを中心として、画像化パラメータ設定回路2により設定された画像化に用いるスロータイム幅T[s]の信号を切出し、その切出したスロータイム幅Tの信号をレーダ画像生成回路13に出力する。または、マージン除去回路11によりマージンが除去された遅延ヒストリの中で、0スロータイムを中心として、スロータイム幅Tの範囲外の値をゼロとするような重みづけを行う。
なお、スロータイムを離散化した表現では、最終的に画像化に用いるサンプル数(パルス数)Hの分のデータを切出して、下記の式(64)のような整形後の遅延スペクトルヒストリUft (last)(ρ,h)を得る。
Figure 0006289388
以上の各ブロックの処理を経て得られた遅延スペクトルヒストリUft (last)(ρ,h)は、KT処理の効果によって、スロータイムに対する電波の伝搬遅延時間の1次変化が解消されている。また、SPを適用した弊害で発生しているファスト周波数毎のスロータイム幅の相違も解消されている。
レーダ画像生成回路13は、受信信号整形回路12からスロータイム幅補正後の遅延ヒストリを受けると、その遅延ヒストリから目標の画像を再生する。
即ち、レーダ画像生成回路13は、SPに基づくKT処理後の遅延ヒストリを用いて、目標上の反射強度分布に関する電波画像を生成する処理を実施するが、伝搬遅延時間の1次変化や、ファスト周波数毎のスロータイム幅の相違が解消されているため、遅延ドップラー分布のピークが一点に結像するようになり、波形の乱れないレーダ画像を生成することができる。
レーダ画像生成回路13による画像生成処理は、各スロータイムにおける目標に対する見込み角の変化を考慮した厳密な開口合成を行ってもよいし、ISARなどの簡易的な処理としてしばしば用いられるスロータイム方向のフーリエ変換に基づく簡易な開口合成を行ってもよい。
これら開口合成に用いるデータに、伝搬遅延時間のスロータイムに対する2次以上の高次の変化の影響が残存する可能性がある場合には、この影響を予め補償する処理を追加するようにしても構わない。ここまでの処理では、既にスロータイムに対する電波の伝搬遅延時間の変化のうち、1次の変化成分は補償されている。
一般的には、高次成分になる程、その寄与が小さくなるため、2次以上の成分が残存しても、遅延ヒストリ上の反射点の軌跡は、同じファストタイムの分解能セル内に留まることが期待される。
しかし、これをスロータイム方向にフーリエ変換して得られた遅延ドップラー分布では、波長オーダの大きさの距離変化でさえもぼけを生じさせる可能性がある。
この種の補償処理としては、ドップラー周波数のスロータイムに対する変化に基づいて位相変化を推定するものや、位相変化そのものを抽出するもの、さらには、位相変化を様々に仮定して、これを打ち消すように補償し、その補償後の結像度の良し悪しに基づいて、どの仮定が正しかったかを推定するような方法など、様々なものが考えられる。
このレーダ画像生成回路13では、この種の補償処理も含めて画像化を実施するものとする。
以上で明らかなように、この実施の形態1によれば、補償手段5が、遅延スペクトルヒストリ上の信号をスロータイム軸上にリサンプリングする処理の途中で、電波のスロータイム方向及びドップラー周波数方向に拡大する当該信号の拡大幅に相当するサイズのマージンを遅延スペクトルヒストリ上の信号の両端に付加してから、当該信号のリサンプリングを実施するように構成したので、折り返し信号の発生を招くことなく、リサンプリングの処理負荷を十分に低減することができる効果を奏する。
また、この実施の形態1によれば、受信信号整形回路12が、補償手段5でのSPに基づくKT処理(スロータイムに対する電波の伝搬遅延時間の変化の補償)に伴って生じるファスト周波数毎のスロータイム幅の相違を補正し、スロータイム幅補正後の遅延ヒストリをレーダ画像生成回路13に出力するように構成したので、サイドローブ形状の乱れなどの画質劣化を防止することができる効果を奏する。
この実施の形態1では、切出しスロータイム幅の下限値Tcutminが、画像化パラメータ設定回路2により設定されたスロータイム幅Tと異なるものを示しているが、比帯域ξが十分に小さい場合には、切出しスロータイム幅の下限値Tcutminが画像化パラメータ設定回路2により設定されたスロータイム幅Tとほぼ一致するとみなせる場合がある。
このような場合は、結果として発生するファスト周波数毎のスロータイム幅の相違も十分に小さくなり、その影響による画像の乱れも小さいことが期待される。
したがって、このような場合は、切出幅設定回路3が、切出しスロータイム幅の下限値Tcutminを画像化パラメータ設定回路2により設定されたスロータイム幅Tと一致するように設定することで、Hcut=H、Tcut=Tとなるようにしてもよい。
このように切出しスロータイム幅の下限値Tcutminを設定する場合、受信信号整形回路12の実装を省略することができるので、処理構成を簡単化することができる利点がある。
この実施の形態1では、2次位相信号パラメータ設定回路7が、マージン最小化2次位相係数決定回路6で得られた2次位相係数bの最適な設計値b(opt)に基づいて、式(51)〜(54)からwの最適値w (opt)を得る一方、最小マージン付加回路8が、式(55)でドップラー周波数幅の最適値W (max,opt)を得て、この最適値W (max,opt)と既に得られているwの最適値w (opt)とからマージンのサイズを設定して、そのマージンを付加することで、KT処理の途中段での信号のスロータイム幅とドップラー周波数幅の増大の影響で発生する折り返し信号の重畳を回避する方法を採用している。
しかし、この方法は、2次位相係数bが最適な設計値b(opt)である場合に限り、成立するものではない。
したがって、最適な設計値b(opt)ではない2次位相係数bに基づいて、式(51)〜(55)からwやW (max)を得ることでマージンのサイズを設定して、そのマージンを付加するようにしても、折り返し信号の重畳を回避することができる。
したがって、マージン最小化2次位相係数決定回路6の代わりに、何らかの制約や目的に基づいて定めた2次位相係数bを出力する回路を追加するような構成でも、折り返し信号の重畳を回避することができる。
この場合には、マージンの完全な最小化という目的は必ずしも達成することができないが、2次位相係数bの設定に自由度を残しながら、その条件下でのマージン最小化を行うことはできる。よって、この実施の形態1のバリエーションとして、マージン最小化2次位相係数決定回路6の代わりに、何らかの制約や目的に基づいて定めた2次位相係数bを出力する回路を実装している構成も含まれる。
実施の形態2.
図4はこの発明の実施の形態2による画像レーダ装置を示す構成図であり、図4において、図1と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
伝搬遅延時間変化粗推定回路31は例えばCPUを実装している半導体集積回路、あるいは、ワンチップマイコンなどから構成されており、外部機器(例えば、目標追尾レーダ、レーダプラットフォームに搭載されている一般的な運動センサや位置計測センサなど)により観測された目標とレーダの間の相対的な位置関係の変化から、スロータイムに対する電波の伝搬遅延時間の変化を推定する処理を実施する。
受信信号粗補償回路32は例えばCPUを実装している半導体集積回路、あるいは、ワンチップマイコンなどから構成されており、伝搬遅延時間変化粗推定回路31により推定された伝搬遅延時間の変化を打ち消すように、レーダ受信信号取得回路1により取得された遅延ヒストリを補償し、補償後の遅延ヒストリを受信信号切出回路4に出力する処理を実施する。
次に動作について説明する。
伝搬遅延時間変化粗推定回路31及び受信信号粗補償回路32を実装している点以外は、上記実施の形態1と同様であるため、ここでは、伝搬遅延時間変化粗推定回路31及び受信信号粗補償回路32の処理内容だけを説明する。
伝搬遅延時間変化粗推定回路31は、外部機器が目標とレーダの間の相対的な位置関係を観測すると、その位置関係の変化から、スロータイムに対する電波の伝搬遅延時間の変化を推定する。
例えば、レーダと目標の共通の座標系において、レーダによる目標観測中の時刻がηであるとき、レーダの位置ベクトルがrrdr(η)、目標の位置ベクトルがrtgt(η)であるとすると、伝搬遅延時間s(η)は、下記の式(65)で算出することができる。明細書の文章中では、ベクトルの“r”を細字で記述しているが、式(65)の中では“r”を太字で記述している。
Figure 0006289388
式(65)において、Cは光速である。
レーダの送信機と受信機の位置が異なる場合、送信機の位置ベクトルがrtra(η)、受信機の位置ベクトルがrrec(η)であるとすると、伝搬遅延時間s(η)は、下記の式(66)で算出することができる。

Figure 0006289388
受信信号粗補償回路32は、伝搬遅延時間変化粗推定回路31が伝搬遅延時間s(η)を推定すると、その伝搬遅延時間s(η)の変化を打ち消すように、レーダ受信信号取得回路により取得された遅延ヒストリを補償し、補償後の遅延ヒストリを受信信号切出回路4に出力する。
即ち、受信信号粗補償回路32は、伝搬遅延時間s(η)の変化を打ち消す補償量であるej2π(ρ+Fc)×s(η)を式(5)の遅延スペクトルヒストリft(ρ,η)に乗算し、遅延スペクトルヒストリft(ρ,η)×ej2π(ρ+Fc)×s(η)をファストタイム方向に逆フーリエ変換することで、補償後の遅延スペクトルヒストリを算出する。
これ以降の処理は、上記実施の形態1と同様である。
伝搬遅延時間s(η)の推定に用いている各種の位置ベクトルの推定精度が低い場合には、受信信号粗補償回路32が伝搬遅延時間s(η)の変化を打ち消すように、レーダ受信信号取得回路1により取得された遅延ヒストリを補償しても、伝搬遅延時間s(η)の変化が残存する可能性があるが、受信信号粗補償回路32が補償処理を実施しない場合よりは、伝搬遅延時間s(η)の変化が低減されることが期待される。
オリジナルのKT処理では、ドップラー周波数の折返しが生じる目標への適用は困難であるが、ドップラー周波数の折返しが生じる目標の場合でも、上記の補償処理を行うことで、ドップラー周波数の折返しが解消されて、後段のKT処理を適用することが可能になることが期待される。
なお、本願発明はその発明の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
1 レーダ受信信号取得回路(信号取得手段)、2 画像化パラメータ設定回路、3 切出幅設定回路、4 受信信号切出回路、5 補償手段、6 マージン最小化2次位相係数決定回路、7 2次位相信号パラメータ設定回路、8 最小マージン付加回路、9 2次位相信号生成回路、10 受信信号スケーリング変換回路、11 マージン除去回路、12 受信信号整形回路、13 レーダ画像生成回路(画像再生手段)、21 スロータイムFT部(第1のフーリエ変換手段)、22 スロータイムFT部(第2のフーリエ変換手段)、23 乗算回路(第1の乗算回路)、24 スロータイムIFT部(第1の逆フーリエ変換手段)、25 乗算回路(第2の乗算回路)、26 スロータイムFT部(第3のフーリエ変換手段)、27 スロータイムFT部(第4のフーリエ変換手段)、28 乗算回路(第3の乗算回路)、29 スロータイムIFT部(第2の逆フーリエ変換手段)、30 乗算回路(第4の乗算回路)、31 伝搬遅延時間変化粗推定回路、32 受信信号粗補償回路。

Claims (12)

  1. 観測対象である目標との相対的な位置関係を変えながら電波を繰り返し送受信するレーダから、前記電波の受信信号として、前記電波の送信時刻からの経過時間であるファストタイムと前記電波の送信時刻であるスロータイムとの2次元分布である遅延ヒストリを取得する信号取得手段と、
    前記信号取得手段により取得された遅延ヒストリをファストタイム方向にフーリエ変換することで得られる遅延スペクトルヒストリの各ファスト周波数に応じたサンプリング間隔で、前記遅延スペクトルヒストリ上の信号をスロータイム方向にリサンプリングすることで、前記遅延ヒストリにおけるスロータイムに対する電波の伝搬遅延時間の変化を補償する補償手段と、
    前記補償手段による補償後の遅延ヒストリから前記目標の画像を再生する画像再生手段とを備え、
    前記補償手段は、前記リサンプリングでの処理の途中で、スロータイム方向及びドップラー周波数方向に拡大する前記遅延スペクトルヒストリ上の信号の拡大幅に相当するサイズのマージンを前記遅延スペクトルヒストリ上の信号の両端に付加してから、当該信号をリサンプリングすることを特徴とする画像レーダ装置。
  2. 前記補償手段は、
    前記スロータイムに対して、2次の位相変化を有する2次位相信号のスロータイム幅を設定する2次位相信号パラメータ設定回路と、
    前記遅延スペクトルヒストリ上の信号の拡大幅に相当するサイズのマージンを前記遅延スペクトルヒストリ上の信号の両端に付加するマージン付加回路と、
    前記2次位相信号パラメータ設定回路により設定されたスロータイム幅を有する4種類の2次位相信号を生成する2次位相信号生成回路と、
    前記マージン付加回路によりマージンが付加された遅延スペクトルヒストリ上の信号と前記2次位相信号生成回路により生成された4種類の2次位相信号とを用いて、前記遅延ヒストリにおけるスロータイムに対する電波の伝搬遅延時間の変化を補償する受信信号スケーリング変換回路とを備えていることを特徴とする請求項1記載の画像レーダ装置。
  3. 前記補償手段は、
    前記受信信号スケーリング変換回路で遅延ヒストリの補償処理が実施されても、折り返し信号が発生しない限界のスロータイム幅及びドップラー周波数幅と、前記電波の中心周波数に対する送信帯域幅の比である比帯域とから、前記2次の位相変化を定める2次位相係数を決定する2次位相係数決定回路を備え、
    前記2次位相信号パラメータ設定回路は、前記2次位相係数決定回路により決定された2次位相係数にしたがって2次の位相変化を有する2次位相信号のスロータイム幅を設定し、
    前記マージン付加回路は、前記2次位相係数決定回路により決定された2次位相係数にしたがって前記マージンのサイズを設定することを特徴とする請求項2記載の画像レーダ装置。
  4. 前記2次位相係数決定回路は、前記限界のスロータイム幅がd、前記限界のドップラー周波数幅がD、前記比帯域がξであるとき、前記2次位相係数であるbをb=(D/d)×(2(1+ξ)/ξ)1/2によって計算することを特徴とする請求項3記載の画像レーダ装置。
  5. 前記2次位相信号パラメータ設定回路は、前記2次位相係数決定回路により計算された2次位相係数bを用いて、前記2次位相信号のスロータイム幅であるw,w,w,wをw=β×D/b(βは1以上の定数)、w=β(d×b+D)/b(βは1以上の定数)、w=β(ξ×d×b+2(1+ξ)D)/2b(βは1以上の定数)、w=wによって計算することを特徴とする請求項4記載の画像レーダ装置。
  6. 前記マージン付加回路は、前記2次位相係数決定回路により計算された2次位相係数bを用いて、前記2次位相信号のドップラー周波数幅であるW (max)をW (max)=β(ξ×d×b+2(1+ξ)D)/(2−ξ)によって計算し、
    前記遅延スペクトルヒストリ上の信号のスロータイム幅が前記2次位相信号のスロータイム幅wと一致するように、サイズが(w−d)のマージンを前記遅延スペクトルヒストリ上の信号の両端に付加してから、マージン付加後の信号を前記電波のスロータイム方向にフーリエ変換し、フーリエ変換後の信号のドップラー周波数幅が前記2次位相信号のドップラー周波数幅W (max)と一致するように、サイズが(W (max)−D)のマージンを前記フーリエ変換後の信号の両端に付加することを特徴とする請求項5記載の画像レーダ装置。
  7. 前記2次位相信号生成回路は、前記2次位相係数決定回路により計算された2次位相係数b及び前記2次位相信号パラメータ設定回路により計算された2次位相信号のスロータイム幅w,w,w,wを用いて、相互に位相変化が関連している4種類の2次位相信号であるQ,Q,Q,Qを生成することを特徴とする請求項5または請求項6記載の画像レーダ装置。
  8. 前記受信信号スケーリング変換回路は、
    前記マージン付加回路によりマージンが付加された遅延スペクトルヒストリ上の信号をスロータイム方向にフーリエ変換する第1のフーリエ変換手段と、
    前記2次位相信号生成回路により生成された2次位相信号Qをスロータイム方向にフーリエ変換する第2のフーリエ変換手段と、
    前記第1のフーリエ変換手段によりフーリエ変換された信号に対して、前記第2のフーリエ変換手段によりフーリエ変換された2次位相信号Qを乗算する第1の乗算回路と、
    前記第1の乗算回路により2次位相信号Qが乗算された信号をドップラー周波数方向に逆フーリエ変換する第1の逆フーリエ変換手段と、
    前記第1の逆フーリエ変換手段により逆フーリエ変換された信号に対して、前記2次位相信号生成回路により生成された2次位相信号Qを乗算する第2の乗算回路と、
    前記第2の乗算回路により2次位相信号Qが乗算された信号をスロータイム方向にフーリエ変換する第3のフーリエ変換手段と、
    前記2次位相信号生成回路により生成された2次位相信号Qをスロータイム方向にフーリエ変換する第4のフーリエ変換手段と、
    前記第3のフーリエ変換手段によりフーリエ変換された信号に対して、前記第4のフーリエ変換手段によりフーリエ変換された2次位相信号Qを乗算する第3の乗算回路と、
    前記第3の乗算回路により2次位相信号Qが乗算された信号をドップラー周波数方向に逆フーリエ変換する第2の逆フーリエ変換手段と、
    前記第2の逆フーリエ変換手段により逆フーリエ変換された信号に対して、前記2次位相信号生成回路により生成された2次位相信号Qを乗算する第4の乗算回路とを備えていることを特徴とする請求項7記載の画像レーダ装置。
  9. 前記補償手段は、
    前記受信信号スケーリング変換回路によりスロータイムに対する電波の伝搬遅延時間の変化が補償された信号に付加されているマージンを除去するマージン除去回路を備えていることを特徴とする請求項2から請求項8のうちのいずれか1項記載の画像レーダ装置。
  10. 前記信号取得手段により取得された遅延ヒストリにおけるスロータイムの切出し幅を設定する切出幅設定回路と、
    前記切出幅設定回路により設定された切出し幅で、前記信号取得手段により取得された遅延ヒストリを切出し、切出した遅延ヒストリを前記補償手段に出力する受信信号切出回路と、
    前記補償手段による遅延ヒストリの補償に伴って生じるファスト周波数毎のスロータイム幅の相違を補正し、前記スロータイム幅の相違を補正した遅延ヒストリを前記画像再生手段に出力する受信信号整形回路とを備えたことを特徴とする請求項1から請求項9のうちのいずれか1項記載の画像レーダ装置。
  11. 前記切出幅設定回路は、前記電波の中心周波数に対する送信帯域幅の比である比帯域がξ、前記画像再生手段の画像化に用いる遅延ヒストリのスロータイム幅がTであるとき、前記スロータイムの切出し幅であるTcutをTcut≧2T/(2−ξ)のように設定することを特徴とする請求項10記載の画像レーダ装置。
  12. 外部機器により観測された前記目標と前記レーダの間の相対的な位置関係の変化から、前記スロータイムに対する電波の伝搬遅延時間の変化を推定する伝搬遅延時間変化粗推定回路と、
    前記伝搬遅延時間変化粗推定回路により推定された伝搬遅延時間の変化を打ち消すように前記信号取得手段により取得された遅延ヒストリを補償し、補償後の遅延ヒストリを前記補償手段に出力する受信信号粗補償回路とを備えたことを特徴とする請求項1から請求項11のうちのいずれか1項記載の画像レーダ装置。
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