JP6289093B2 - 吹付コンクリート及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は液体急結剤を用いる吹付コンクリートおよびその製造方法に関する。
掘削したトンネルや地下空間などでの建設工事においては、掘削露出面に粉体急結剤を添加したコンクリートを吹付けてライニングし、該露出面の崩落を防止することが広く行われている(特許文献1、2参照)。粉体急結剤としては、カルシウムアルミネートを主成分とし、アルミン酸塩やアルカリ金属炭酸塩などが配合された急結剤が知られている。この粉体急結剤は急結性に優れるものの、一方で粉塵発生量が多いこと、吹付けたコンクリートのリバウンド量が多いことなど課題がある。
この問題を解決する方策として、液体急結剤が用いる技術が提案されている(特許文献3、4参照)が、液体急結剤の急結性や初期強度発現性は粉体急結剤に比べて劣ることが大きな課題である。
液体急結剤使用時の課題の解決策として、液体急結剤と粉体急結剤を併用する方法が提案されている(特許文献5,6参照)。具体的には、液体急結剤の他に、粉末硫酸アルミニウム及びアルミン酸カルシウム等の無機化合物を添加する方法である。粉体急結剤(無機化合物)の添加方法としては、ベースとなる吹付用コンクリートに含有させることも可能であるが、吹付用セメントコンクリートが吹付される直前に水、もしくは液体急結剤と混合してスラリー化したものを、セメントコンクリートの吐出直前に混合させる方法が、粉塵低減の観点から好ましいとされている。
特公昭60−004149号公報 特開平09−019910号公報 特表2001−509124号公報 特開平10−087358号公報 特開2002−220270号公報 特開2007−055831号公報
しかしながら、液体急結剤に加えて粉体急結剤をベースとなるコンクリートに含有させた場合、一般的にコンクリートのコンシステンシーが不良となり、吹付時のベースコンクリートのポンプ圧送性に支障をきたすことになる。
従って、本発明の課題は、液体急結剤を用いても、急結性や初期強度発現性が優れ、かつコンクリートのコンシステンシーの良好な吹付コンクリート及びその製造方法を提供することにある。
そこで、本発明者は、液体急結剤を用いて粉塵発生やコンクリートのリバウンドを抑制し、急結性や初期強度発現性に優れ、かつコンクリートのコンシステンシーを低下させない吹付コンクリートを開発すべく種々検討した結果、液体急結剤として硫酸アルミニウム含有溶液を採用し、ベースコンクリート中にセメント用減水剤に加えて少量のアルミン酸ナトリウムと少量のセッコウを配合することにより、急結性及び初期強度発現性に優れ、かつコンクリートのコンシステンシーが良好で吹付時のポンプ圧送が良好な吹付コンクリートが得られることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、次の〔1〕〜〔〕を提供するものである。
〔1〕硫酸アルミニウムを有効成分とする液体急結剤と、
遊離生石灰及びカルシウムシリケートを含有する生石灰系クリンカ組成物、アルミン酸ナトリウム、セッコウ並びにセメント用減水剤を含有するベースコンクリートとからなる吹付コンクリートであって、
該生石灰系クリンカ組成物の含有量がベースコンクリート中のセメント100質量部に対して0.5〜3.0質量部であり、
該アルミン酸ナトリウムの含有量がベースコンクリート中のセメント100質量部に対して0.2質量部〜2.0質量部であり、
該セッコウの含有量がベースコンクリート中のセメント100質量部に対して0.5〜4.0質量部であることを特徴とする吹付コンリート。
〔2〕セメント用減水剤が、ポリカルボン酸系減水剤である〔1〕に記載の吹付コンクリート。
〔3〕液体急結剤の使用量が、ベースコンクリート中のセメント100質量部に対して3〜15質量部である〔1〕又は〔2〕に記載の吹付コンクリート。
〔4〕硫酸アルミニウムを有効成分とする液体急結剤と、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のベースコンクリートを吹付ノズルの先端で混合させることを特徴とする吹付コンクリートの製造方法。
本発明の吹付コンクリートは、急結性、初期強度発現性に優れるとともにコンクリートのコンシステンシーが良好で吹付時のポンプ圧送が良好であり、施工時の粉塵発生量が少なく、さらに吹付コンクリートのリバント量が少ない。
本発明は、硫酸アルミニウムを有効成分とする液体急結剤と、アルミン酸ナトリウム、セッコウ及びセメント用減水剤を含有するベースコンクリート(モルタルを含む)からなる吹付コンクリート(モルタルを含む)であって、
該アルミン酸ナトリウムの含有量がベースコンクリート中のセメント100質量部に対して0.2質量部〜1.0質量部であり、
該セッコウの含有量がベースコンクリート中のセメント100質量部に対して0.5〜4.0質量部であることを特徴とする吹付コンリートである。
本発明で使用する液体急結剤は硫酸アルミニウムを有効成分とする液体急結剤である。通常、粉末状の硫酸アルミニウム(又はその水和物)を水と混ぜ、水溶液として調製されるが、特にこれに限定されるものではない。可溶性アルミニウム成分と硫酸などの硫黄源を調整して、硫酸アルミニウムを水溶液として調製したものと同じ効果をもたらすものであってもかまわない。また、本発明の特長が損なわない程度において、さらに他の成分を添加することを妨げない。他の成分としては、例えば、沈降性シリカ、アルカノールアミンなどが挙げられる。
液体急結剤中の硫酸アルミニウム含有量は、15質量%以上が好ましく、20〜35質量%がより好ましく、22〜30質量%がさらに好ましい。
液体急結剤の使用量は、急結性能と長期強度発現性のバランスの点から、ベースコンクリート中のセメント100質量部に対して、3〜15質量部が好ましく、5〜10質量部がより好ましい。
本発明で用いるベースコンクリートは、アルミン酸ナトリウム、セッコウ及びセメント用減水剤を含有する。
本発明におけるアルミン酸ナトリウムは、液体急結剤の急結性を補助的に向上させるために使用するものである。一般に市販されている試薬、あるいは工業製品を使用することができるが、特にNa2OとAl23のモル比(Na2O/Al23)が0.8〜1.5であるものが好ましい。
アルミン酸ナトリウムの使用量は、セメント100質量部に対して、0.2〜2.0質量部である。使用量が0.2質量部より少ないと急結性の向上が不十分であり、2.0質量部より多くなるとベースコンクリートのコンシステンシーが悪くなり、ポンプ圧送性などに支障をきたす。さらに、長期強度の発現性を阻害することになる。好ましい使用量はセメント100質量部に対して0.5〜1.0質量部である。
本発明におけるセッコウとしては、無水石膏、二水石膏、半水石膏などが挙げられるが、無水石膏が好ましい。セッコウの使用量はセメント100質量部に対して、0.5〜4.0質量部である。使用量が0.5質量部より少ないと材齢1日以降の圧縮強度の発現性が不十分であり、4.0質量部より多くなるとベースコンクリートの流動性を阻害する。好ましい使用量は、セメント100質量部に対して0.5〜3.0質量部であり、より好ましくは1.0〜2.0質量部である。
本発明におけるセメント用減水剤としては、一般に市販されているものを使用することができる。例えば、ポリカルボン酸系減水剤、ナフタレンスルフォン酸系減水剤、メラミン系減水剤などが挙げられるが、ベースコンクリートのコンシステンシー(流動性)を長い時間保持する観点から、ポリカルボン酸系減水剤が好適である。
セメント用減水剤の使用量は、ベースコンクリートのコンシステンシーの確保及び吹付コンクリートの急結性向上効果の点から、セメント100質量部に対して、1.0〜5.0質量部が好ましく、1.2〜3.0質量部がより好ましい。
本発明に用いるベースコンクリートには、さらに生石灰系クリンカ組成物を使用するのが好ましい。生石灰系クリンカ組成物とは、遊離生石灰およびエーライト等のカルシウムシリケートを含有するクリンカ粉砕物である。遊離石灰として65%以上含むものが好ましい。生石灰系クリンカ組成物は、CaO原料、CaSO4原料、Al23原料、Fe23原料、SiO2原料等を含有する配合物を熱処理して生成される。熱処理生成物は、インペラーブレーカーなどで粗砕され、さらにミルで粉砕され、ブレーン比表面積2,000〜4,000cm2/gに粒度調整される。
生石灰系クリンカ組成物の使用量は、初期急結性の発現性及びベースコンクリートの流動性保持の点から、セメント100質量部に対して、0.5〜3.0質量部が好ましく、1.5〜3.0質量部がより好ましい。
本発明に用いるベースコンクリートには、さらにフライアッシュを使用するのが好ましい。フライアッシュとしては、石炭の燃焼により発電する火力発電設備において発生するフライアッシュを、そのままのもの、或いは分級又は/及び粉砕したブレーン比表面積が1,500cm2/g以上のものを使用できる。フライアッシュの使用量は、初期急結性の発現性及びベースコンクリートの流動性保持の点から、セメント100質量部に対して、0.5〜5.0質量部が好ましく、0.5〜3.0質量部がより好ましい。
本発明で使用するセメントは特に限定されるものではなく、普通、早強、超早強、低熱及び中庸熱等の各種ポルトランドセメントや、これらポルトランドセメントに高炉スラグ、フライアッシュおよび石灰石微粉末を混合した各種混合セメント等が挙げられる。また、前記セメントの一種であっても、二種以上のものであっても良い。
ベースコンクリートに用いられる骨材としては、特に制限されるものではなく、通常のコンクリート又はモルタルの製造に使用される骨材を何れも使用することができる。
ベースコンクリート(モルタルを含む)には、前記セメント用減水剤の他に、必要に応じて、本発明の特長が損なわない程度において、AE剤、流動化剤、増粘剤、膨張材、収縮低減剤、セメント用ポリマー、防水材、防錆剤、凍結防止剤、保水剤、顔料、白華防止剤、発泡剤、消泡剤、撥水剤、各種繊維等を添加することを妨げない。
前記のベースコンクリートは、ポンプ圧送され、吹付ノズルの先端で液体急結剤と混ざり、トンネル等の掘削露出面に吹付施工される。吹付装置あるいは吹付施工方法については、一般的に使用されている液体急結剤を使用する吹付システムを利用することができる。
本発明における液体急結剤の急結性を補助する成分は、急結助剤成分として、予め混合した上で、ベースコンクリートに添加することは有効である。例えば、アルミン酸ナトリウム、セッコウおよび粉末状ポリカルボン酸系高性能減水剤を所定の配合割合で混合し、粉体混和材としたもの、さらに生石灰クリンカ組成物、あるいはフライアッシュを混合したものが使用できる。
その場合の各成分の配合比率としては、アルミン酸ナトリウムが20〜40質量部、セッコウが60〜80質量部、粉末状ポリカルボン酸系高性能減水剤が0.1〜5.0質量部である。さらに、生石灰クリンカ組成物あるいはフライアッシュが30〜70質量部である。
ベースコンリートの製造時に、この粉体混和材をセメントに対し1.0〜5.0質量%添加し、適宜、高性能減水剤を追加添加して、調整を行うことによって、比較的簡便に液体急結剤吹付用のベースコンクリートを製造することができる。
以下、更に具体的な実施例および比較例を挙げて説明する。但し、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。
〔使用材料〕
(1)セメント:普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製、密度;3.16g/cm3
(2)アルミン酸ナトリウム:市販品、粉末(Na2OとAl23のモル比=1.35)
(3)セッコウ:無水石膏;市販品(旭硝子社製)
(4)セメント用減水剤:ポリカルボン酸系高性能減水剤「NT−1000H」(BASF社製)
(5)生石灰系クリンカ組成物:遊離石灰65%、ブレーン比表面積3,200cm2/g
(6)フライアッシュ:JIS灰(ブレーン比表面積4,000cm2/g)
(7)カルシウムアルミネート(C−A):CaO/Al23モル比=2.03、ガラス化率:85%、ブレーン比表面積7,600cm2/g
(8)細骨材:JIS砂
(9)水:水道水
(10)液体急結剤:硫酸アルミニウム系液体急結剤(硫酸アルミニウム含有量;27質量%)
〔評価試験〕
(1)急結性評価
急結性評価はモルタルによるプロクター貫入抵抗試験で行った。
砂セメント比(S/C)を2.5、水セメント比(W/C)を45%ないし50%としたモルタル配合に、急結助剤(粉体混和材)として所定量のアルミン酸ナトリウム(SSA)、セッコウ、ポリカルボン酸系高性能減水剤(SP)を添加し、モルタルミキサーで1分間混練した。このモルタルに、セメントに対して7質量%ないし9質量%の液体急結剤を添加し、ハンドミキサーを用いて5秒間撹拌した後、プロクター貫入抵抗値を測定した。測定は、液体急結剤添加直後を0秒とし、30秒、60秒、90秒、120秒後の各材齢で試験を行った。結果を表1〜表2に示す。
(2)圧縮強度
急結性評価試験と同様に液体急結剤を添加、混練したモルタルを素早く型枠に詰め、圧縮強度試験用の供試体とした。圧縮強度試験は、材齢3時間、1日及び28日で行った。
(3)流動性評価
急結性評価試験と同様に急結助剤を添加、混練したモルタルについて、流動性(フロー)、締り具合などから目視で評価した。
なお、以下の表1、表2及び表4に記載されている実施例は、参考例であって、本発明の範囲に含まれるものではない。
Figure 0006289093
Figure 0006289093
表1〜表2から明らかなように、液体急結剤として硫酸アルミニウム含有溶液を用い、ベースコンクリートに一定量のアルミン酸ナトリウム、一定量のセッコウ及びセメント用減水剤を配合した吹付コンクリートは、プロクター貫入値が30秒で0.8N/mm2以上、60秒で1.5N/mm2以上、120秒で3.0N/mm2以上であって急結性が良好であり、初期圧縮強度も十分に高く、かつ流動性も良好であり、コンシステンシーも良好であることがわかる。一方、アルミン酸ナトリウムの使用量がセメント100質量部に対して0.2質量部未満の場合(比較例3)は、所定の急結性能を得ることができず、2.0質量部を超える場合(比較例4)は良好な流動性を得られなかった。また、セッコウの使用量がセメント100質量部に対して0.5質量部未満の場合(比較例2、5)は、プロクター貫入値は良好なものの3時間、1日の強度発現が得られず、4.0質量部を超える場合(比較例7)は、練混ぜ直後から流動性を失い満足するフレッシュ性状を得ることが困難な状況であった。
表3には、さらに生石灰系クリンカ組成物(EX)を添加した場合の結果を示す。表から明らかなように、セメント100質量部に対して3.0質量部以下の添加で良好な急結性能を示した。5.0質量部の添加の場合(比較例9)は、練混ぜ直後から流動性を失い満足するフレッシュ性状を得ることが困難な状況であった。
Figure 0006289093
表4には、さらにフライアッシュ(FA)を添加した場合の結果を示す。表から明らかなように、セメント100質量部に対して5.0質量部以下の添加で良好な急結性能を示した。6.0質量部の添加の場合(比較例10)は、練混ぜ直後から流動性を失い満足するフレッシュ性状を得ることが困難な状況であった。
Figure 0006289093

Claims (4)

  1. 硫酸アルミニウムを有効成分とする液体急結剤と、
    遊離生石灰及びカルシウムシリケートを含有する生石灰系クリンカ組成物、アルミン酸ナトリウム、セッコウ並びにセメント用減水剤を含有するベースコンクリートとからなる吹付コンクリートであって、
    該生石灰系クリンカ組成物の含有量がベースコンクリート中のセメント100質量部に対して0.5〜3.0質量部であり、
    該アルミン酸ナトリウムの含有量がベースコンクリート中のセメント100質量部に対して0.2質量部〜2.0質量部であり、
    該セッコウの含有量がベースコンクリート中のセメント100質量部に対して0.5〜4.0質量部であることを特徴とする吹付コンリート。
  2. セメント用減水剤が、ポリカルボン酸系減水剤である請求項に記載の吹付コンクリート。
  3. 液体急結剤の使用量が、ベースコンクリート中のセメント100質量部に対して3〜15質量部である請求項1又は2に記載の吹付コンクリート。
  4. 硫酸アルミニウムを有効成分とする液体急結剤と、請求項1〜のいずれかに記載のベースコンクリートを吹付ノズルの先端で混合させることを特徴とする吹付コンクリートの製造方法。
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