以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、実施形態のエアバッグ装置10は、図1,5に示すように、助手席の前方のインストルメントパネル(インパネ)1の上面2側の部位に搭載される助手席用エアバッグ装置としている。エアバッグ装置10は、膨張用ガスGを流入させて展開膨張するエアバッグ11と、エアバッグ11に膨張用ガスGを供給するインフレーター50と、折り畳まれたエアバッグ11とインフレーター50とを収納保持するケース52と、ケース52の上方を覆うエアバッグカバー57と、を備えて構成される。
なお、本明細書において、前後・上下・左右の方向は、特に断らない限り、車両Vの前後・上下・左右の方向と一致するものである。
エアバッグカバー57は、図1,5に示すように、インパネ1に配設され、膨張するエアバッグ11に押されて前後両側に開くドア57a,57bを備えて構成される。ドア57a,57bの周囲には、下方に延びる四角筒形状の側壁57cが突設されている。側壁57cには、ケース52に連結させるための係止孔57dが形成されている。
なお、インパネ1は、車両Vの助手席の前方におけるフロントウインドシールド5の下方で、略水平方向に沿う上面2と、上面2の後端側で下方に曲がって略上下方向に配置される後面3と、を配置させて構成され、助手席と後面3と間には、助手席の乗員の車両への乗り降りや乗員の脚部の配置スペースとして、所定の距離が設けられている。
ケース52は、図1,5に示すように、板金製として、上方を開口させた略直方体形状とし、長方形板状の底壁部53と、底壁部53の外周縁から上方に延びる周壁部54と、を備えて構成される。底壁部53には、インフレーター50の略円柱状の各本体部50aを下方から挿入する円形の開口53aが設けられ、開口53aの周縁は、エアバッグ11を取り付ける取付座53bとして、リテーナ45の各ボルト46を挿通させる取付孔(図符号省略)が形成されている。周壁部54の上端には、エアバッグカバー57の側壁57cを係止するように、係止孔57dに係止される係止爪部55が形成されている。
なお、ケース52には、インパネリンホースから延びるブラケットに取付固定される図示しない複数の取付片部が、適宜、周壁部54若しくは底壁部53から延びるように、配設されている。換言すれば、これらの図示しない取付片部は、エアバッグ装置10を車両Vのボディ側に連結固定させる役目を果たす。
インフレーター50は、円柱状の本体部50aと、本体部50aの外周面に配設される四角環状のフランジ部50cと、を備えて構成され、本体部50aの上部には、膨張用ガスGを吐出するガス吐出口50bが形成されている。フランジ部50cには、リテーナ45のボルト46を挿通させる貫通孔(図符号省略)が形成されている。
リテーナ45は、エアバッグ11とインフレーター50とをケース52に取付固定するもので、それぞれ、インフレーター50の本体部50aを挿通可能な四角環状として、四隅に下方に突出するボルト46を配設させている。リテーナ45は、それぞれ、各ボルト46を、エアバッグ11内の後述する流入用開口16の周縁の取付孔17から下方へ突出させて、エアバッグ11内の流入用開口16の周縁に配置され、さらに、各ボルト46を、ケース52の底壁部53の取付座53bとインフレーター50のフランジ部50cとに、貫通させ、そして、各ボルト46にナット47を締結させることにより、ケース52の底壁部53の取付座53bに対して、エアバッグ11とインフレーター50とを取付固定している。
エアバッグ11は、図1〜5に示すように、膨張完了形状を半割りの略円柱状として、膨張完了時の前側の元部11aに、収納部位としてのケース52の底壁部53の取付座53bに取り付けるための取付部15を配設させ、取付部15から延びた先端部11b側を、ケース52から後方に延ばしてインパネ1の上面2に沿わせるとともに、インパネ1の後面3に接触させるように下方に曲げ、そして、インパネ1から離れて後方へ延ばすように、構成されている。
取付部15は、後述する下側壁部14の前端側に配設され、膨張用ガスGを流入させるための円形の流入用開口16と、流入用開口16の周縁に設けれられた取付孔17と、を設けて構成されている。流入用開口16には、下方からインフレーター50の円柱状の本体部50aが挿入され、取付孔17には、リテーナ45の各ボルト46がそれぞれ貫通することとなる。
また、エアバッグ11には、後述する上側壁部13に、余剰の膨張用ガスGを排気するベントホール39,39が形成されている。
エアバッグ11の周壁12は、上下で対向する上側壁部13と下側壁部14との外周縁13a,14a相互を縫合により結合させて構成されている。さらに、エアバッグ11内には、対向する上側壁部13と下側壁部14とにおける取付部15から離れた前後二箇所に、上側壁部13と下側壁部14との相互の離隔距離を規制するテザー35,37が配設されている。取付部15に近い側のテザーは、元側テザー34とし、取付部15から離れた先端部11bに近い側のテザーは、先側テザー37としている。これらの元側テザー34と先側テザー37とは、実施形態の場合、エアバッグ11の膨張完了時、左右方向に沿った帯状に配設される状態となって、左右両端を上側壁部13と下側壁部14との外周縁13a,14a相互の縫合部位から離すように、配設されている。
元側テザー34は、上端62a側を上側壁部13に縫着させたテザー用基布62の下端62b側と、下端63a側を下側壁部14に縫着させたテザー用基布63の上端63b側と、を相互に縫合して、形成されている。先側テザー37は、上端64a側を上側壁部13に縫着させたテザー用基布64の下端64b側と、下端65a側を下側壁部14に縫着させたテザー用基布65の上端65b側と、を相互に縫合して、形成されている。
なお、実施形態の場合、テザー用基布63とテザー用基布65との下端63a,65aは重なって下側壁部14に対して縫合されている。すなわち、元側テザー35と先側テザー37との下側壁部14への縫合箇所14bは、前後左右で重なるように、同じ位置としている。
さらに、上側壁部13には、元側テザー35と先側テザー37との間に、左右方向に延びる折目21,22を付けて、タック20が形成され、先側テザー37の先端部11b側に、左右方向に延びる折目26,27を付けて、タック25が形成されている。タック20は、表側に表れる表側折目21の下方に裏側折目22を隠すように、折目21,22を設けつつ、左右方向に延びる帯状の表側帯部20aの下に帯状の裏側帯部20bを重ねて、形成されている。タック25は、表側に表れる表側折目26の下方に裏側折目27を隠すように、折目26,27を設けつつ、左右方向に延びる帯状の表側帯部25aの下に帯状の裏側帯部25bを重ねて、形成されている。
なお、上側壁部13に設けられるこれらのタック20,25は、それぞれ、表側折目21,26や裏側折目22,27を左右方向に沿わせるように相互に平行とし、さらに、表側折目21,26を、裏側折目22,27より、取付部15側に配置させて、形成されている。
また、下側壁部14には、先側テザー37の先端部11b側に、左右方向に延びる折目31,32を付けて、タック30が形成されている。タック30は、表側に表れる表側折目31の上方に裏側折目32を隠すように、折目31,32を設けつつ、左右方向に延びる帯状の表側帯部30aの上に帯状の裏側帯部30bを重ねて、形成されている。
このタック30は、表側折目31を、裏側折目32より、先端部11b側に配置させて、形成されている。また、折目31,32は、左右方向に沿わせるように相互に平行としている。
そして、このエアバッグ11の製造時には、図4に示すように、上側壁部13を構成する上側基布60に、所定の折目21,22,26,27を設けてタック20,25を形成する。また、下側壁部14を構成する下側基布61に、所定の折目31,32を設けてタック30を形成する。そして、外表面側となる面相互を合わせるようにして、タック30を設けた下側壁部14の上に、タック20,25を設けた上側壁部13に重ね、タック20,25,30の左右両縁20d,20e,25d,25e,30d,30eとともに、外周縁13a,14a相互を縫合し、縫代が外表面側に現れないように、流入用開口16を利用して、裏返せば、エアバッグ11を製造することができる。
なお、予め、下側壁部14には、取付部15に補強布41を縫着するとともに、テザー用基布63,65の下端63a,65aを縫着しておく。また、上側壁部13にも、テザー用基布62,64の上端62a,64aを縫着しておく。
そして、タック20,25を設けた上側壁部13と、タック30を設けた下側壁部14とは、外形形状が同じ形状としてしており、相互に重ねて外周縁13a,14a相互の縫合時には、単純に重ねて平面縫製が行なえることから、外周縁13a,14a相互の結合作業を、容易に行うことができる。
また、外周縁13a,14a相互を縫合した後、流入用開口16を利用して、裏返した後には、テザー用基布64の下端64bとテザー用基布65の上端65bとを、流入用開口16を利用して、引き出して縫合して、エアバッグ11内に戻し、同様に、テザー用基布62の下端62bとテザー用基布63の上端63bとを、流入用開口16を利用して、引き出して縫合して、エアバッグ11内に戻せば、テザー35,37も形成できて、エアバッグ11の製造を完了させることができる。
このように製造したエアバッグ11は、エアバッグ11内の流入用開口16の周縁の取付部15にリテーナ45を配置させて、各ボルト46を、取付孔17を経てエアバッグ11外に突出させて、エアバッグ11を折り畳む。エアバッグ11の折り畳みは、収納部位としてのケース52に収納可能に、左右の幅寸法を狭め、そして、前後方向の寸法を狭めるように折り畳む。前後方向の寸法を狭める折畳時には、エアバッグ11の展開膨張時、インパネ1の上面2に沿って展開し易いように、先端部11b側を下側壁部14側で巻くロール折りにより折り畳むことが望ましい。
折り畳んだ後には、折り崩れを防止するために、破断可能なラッピングシート70(図1参照)によって、エアバッグ11を包んでおく。
その後、ケース52内に収納するように、底壁部53上に載せるとともに、エアバッグ11から突出するリテーナ45の各ボルト46を底壁部53の取付座53bから突出させ、そして、インフレーター50の本体部50aを、ケース52やエアバッグ11の開口53a,16を経て、下方からケース52内に挿入し、インフレーター50のフランジ部50cに各ボルト46を貫通させて、各ボルト46にナット47を締結すれば、底壁部53に、エアバッグ11とインフレーター50とを取付固定することができる。
その後、図示しない取付片部を利用して、ケース52を、車両Vの所定のインパネリンホースから延びるブラケットに連結させ、インフレーター50にエアバッグ装置10の作動用の図示しない制御装置から延びる作動信号入力用のリード線を結線し、ケース52の係止爪部55を側壁57cの係止孔57dに挿入係止させつつ、インパネ1を車両Vに組み付ければ、助手席用エアバッグ装置10を車両Vに搭載することができる。
エアバッグ装置10の車両Vへの搭載後、作動信号がインフレーター50に入力されれば、インフレーター50のガス吐出口50bから膨張用ガスGが吐出され、膨張用ガスGを流入させたエアバッグ11は、エアバッグカバー57のドア57a,57bを押し開いて、ケース52から後方側へ突出しつつ、展開膨張することとなる(図1,5参照)。エアバッグ11が膨張を完了させれば、タック20,25,30の配設部位で、上側壁部13と下側壁部14とが膜長を延ばすことから、それらの部位を外周側として、エアバッグ11が曲がり、すなわち、タック20,25の延びた部位では、タック20の元部11a側より先端部11b側が下方に曲がり、同様に、タック25の元部11a側より先端部11b側が下方に曲がる。また、タック30の延びた部位では、タック30の元部11a側より先端部11b側が上方へ曲がる状態となる。
そして、実施形態のエアバッグ装置10では、エアバッグ11の周壁12における上側壁部13が、元側テザー35と先側テザー37との間に、左右方向に沿う折目21,22を付けたタック20を設けた状態として、上側壁部13と下側壁部14との外周縁13a,14a相互を結合して、エアバッグ11が形成されている。そのため、上側壁部13と下側壁部14との外周縁13a,14a相互の結合前に、単に、上側壁部13にタック20を設けるだけで、簡単に、元側テザー35と先側テザー37との間の上側壁部13と下側壁部14とに膜長差を設けることができて、簡便に、下方へ曲がる膨張完了形状としたエアバッグ11を形成できる。さらに、上側壁部13と下側壁部14との膜長差も、タック20の摘み量(帯部20a,20bの前後方向の幅寸法)TL(図2のA参照)により、容易に調整できて、搭載する車両Vのインパネ1の上面2側の形状に応じて曲げる曲率の設定も容易に行なえることとなり、車両Vへの搭載自由度を向上させることができる。
したがって、実施形態のエアバッグ装置10では、助手席の前方に搭載されても、円滑にケース52の周縁におけるインパネ1の上面2に沿って展開膨張できるエアバッグ11を、簡便に構成でき、そして、車両Vへの搭載自由度を向上させることができる。
なお、膨張完了時のエアバッグ11は、タック20を設けた元側テザー35と先側テザー37との間において、厚さ規制した状態で、タック20を設けた上側壁部13が、タック20を設けない下側壁部14に対して、タック20の摘み量TLの2倍分の膜長差を設けて膨らんで、曲げ形状を確保できる。換言すれば、膨張完了時のエアバッグ11は、元側テザー35と先側テザー37との間、すなわち、膨張完了時のケース52側から離れた先端部11bに至るまでの中間部位において、厚さを規制した状態で曲げることができ、先端部11b側での曲げによる変位量を大きく確保できる。
さらに付言すれば、エアバッグ11は、左右方向に沿う平行な折目21,22のタック20を設けた状態として、同形の展開形状とした上側壁部13と下側壁部14との外周縁13a,14a相互を結合して形成されており、展開膨張時、ケース52から突出する突出方向(後方)と直交する折目21,22が、突出方向に沿って折りを解消しつつ、タック20の左右方向の略全域で、上側壁部13が後方に延びることから、先端部11b側での曲げによる変位量を、左右均等に、安定して確保できる。
そして特に、実施形態のエアバッグ装置10では、エアバッグ11が、膨張完了時、下側壁部14を収納部位としてのケース52の後方側におけるインパネ1の上面2側に接触させて、上側壁部13の先端部11b側をインパネ1から離れる後方へ配設させる構成としている。
そのため、実施形態では、膨張完了時のエアバッグ11が、所定の摘み量TLとして調整したタック20の膜長差により、インパネ1の上面2側のケース52から、その周囲のインパネ1の上面2側に接触させるように、下方に曲がって配設されることができて、インパネ1の上方に配置されるフロントウインドシールド5に支持させなくとも、インパネ1の後面3で支持されて反力を確保でき、前方移動する助手席の乗員を、上側壁部13の先端部11b側で的確に受け止めて保護することができる。さらに、膨張完了時のエアバッグ11は、インパネ1の後面3で支持されて反力を確保できることから、ケース52を配設させるインパネ1の上面2側に対応する膨張完了形状を確保できればよく、インパネ1の上方のフロントウインドシールド5の配置位置を考慮せずに、インパネ1の上面2側(上面2から後面3)に接触させてエアバッグ11を膨張完了させる点を考慮するだけで、車両Vに搭載できて、車種が変更されても容易に対応して搭載可能となり、一層、車両Vへの搭載自由度を向上させることができる。
そして、実施形態では、エアバッグ11が、下側壁部14における先側テザーより先端部11b側に、左右方向に沿う折目31,32を付けたタック30を設けた状態として、上側壁部13と下側壁部14との外周縁13a,14a相互を結合させて形成されている。
そのため、実施形態では、エアバッグ11が、膨張完了時、収納部位としてのケース52の後方で、インパネ1の上面2に沿って後方に延び、そして、上側壁部13のタック20により、インパネ1の上面2から後面3に支持されるように、下方に曲がり、さらに、下側壁部14のタック30により、インパネ1から離れる後方へ延びるように曲がることができる。すなわち、膨張完了時のエアバッグ11は、インパネ1の後面3に支持される状態を確保して、助手席の乗員側となる後方へ延びることから、前方移動する乗員とインパネ1とに距離があっても、移動する乗員を受け止め、さらに、インパネ1の後面3の支持による反力を確保して、的確に前方移動する乗員を受け止めることができる。
さらに、実施形態では、エアバッグ11が、上側壁部13における先側テザー37より先端部11b側に、左右方向に沿う折目26,27を付けたタック25を設けた状態として、上側壁部13と下側壁部14との外周縁13a,14a相互を結合させて形成されている。
そのため、実施形態では、膨張完了時のエアバッグ11が、下側壁部14のタック30により、インパネ1の後面3側から後方に曲がって、インパネ1から先端部11b側を後方に離しても、先側テザー37より先端部11b側の上側壁部13のタック25により、先端部11bを下方に曲げることができて、上側壁部13の先端部11b側の先端側部13bを略鉛直方向に沿わせることが可能となり、前方移動する乗員を、上下方向に略沿わせた上側壁部13の先端側部13bの広い面で、受け止めることができる。
そして、実施形態のエアバッグ装置10では、上側壁部13のタック20が、外表面側に表れる表側折目21と表側折目21の下方側に隠れる裏側折目22とを設けて、形成されるとともに、表側折目21を裏側折目22より取付部15側に配置させて、形成されている。
そのため、実施形態では、膨張用ガスGの流入によってエアバッグ11が展開膨張する際、収納部位としてのケース52から突出するエアバッグ11の周壁12には先端部11b側に引っ張られる張力が作用して、上側壁部13のタック20付近にも後方へ移動する張力T1が作用する(図6のA参照)。すると、タック20の左右両縁20d,20eが上側壁部13と下側壁部14との外周縁13a,14a相互と共に結合されていても、図6のA,Bに示すように、タック20の左右方向の中央20c付近では、タック20の表面側に表われる表側帯部20aが、裏側帯部20bから離れるように、膨張用ガスGの圧力を受けつつ表面側に膨らんで、表側折目21や裏側折目22の折目を解消させつつ、先端部11b側へずれ移動し、上側壁部13が実質的に膜長を延ばす。勿論、膨張用ガスGの流入によるエアバッグ11自体の内圧上昇の作用によっても、上側壁部13に張力が発生することから、この内圧上昇の作用によっても、タック20の折りの解消が促進されて、上側壁部13は膜長を延ばす。すなわち、図6のB,Cに示すように、周壁12の後方への突出と内圧上昇との作用により、徐々にタック20が解消して、上側壁部13の実質的な膜長を延ばすことから、タック20付近でエアバッグ11が下方に曲がりつつ、先端部11b側に膨張用ガスGを流して先端部11b側を膨張させることができる。そのため、このような構成では、ケース52側からの突出後のインパネ1の上面2や後面3に沿うような円滑な曲げ動作を安定して確保しつつ、全体を展開膨張させることに寄与できて、助手席前方に搭載されるエアバッグ11に好適に対応した展開膨張挙動を、確保できる。
なお、上記の挙動は、タック25の部位でも同様であり、図示しないが、エアバッグ11が展開膨張すれば、タック25の左右方向の中央25c付近において、タック25の表面側に表われる表側帯部25aが、裏側帯部25bから離れるように、膨張用ガスGの圧力を受けつつ表面側に膨らんで、表側折目26や裏側折目27の折目を解消させることから、タック25付近でエアバッグ11が下方に曲がりつつ、先端部11b側に膨張用ガスGを流して先端部11b側を膨張させることとなる。
また、実施形態のエアバッグ装置10では、下側壁部14のタック30が、外表面側に表れる表側折目31と表側折目31の上方側に隠れる裏側折目32とを設けて、形成されるとともに、表側折目31を裏側折目32より先端部11b側に配置させて、形成されている。
そのため、実施形態では、膨張用ガスGの流入によるエアバッグ11の展開膨張時、ケース52から突出するエアバッグ11の周壁12に先端部11b側に引っ張られる張力が作用して、下側壁部14のタック30付近にも後方へ移動する張力T2が作用する(図7のA参照)。しかし、左右両縁30d,30eを上側壁部13と下側壁部14との外周縁13a,14a相互と共に結合している下側壁部14のタック30は、表側折目31に隠れた裏側折目32の部位に張力T2が作用することとなって、その裏側折目32近傍の先端部11b側の部位33や裏側帯部30bは、タック30の表面側の表側帯部30aに外周を抑えられた状態となって、膨らみ難く、後方にずれ難い。そのため、図7のA,Bに示すように、下側壁部14のタック30の表側折目31や裏側折目32は、直ちに折りを解消させ難い。そして、膨張用ガスGの流入によるエアバッグ11自体の内圧上昇の作用によって張力が下側壁部14に作用した際に、図7のB,Cに示すように、その下側壁部14のタック30が解消され、そのタック30の解消までの間に、他の上側壁部13側のタック20,25が解消できて、インパネ1の上面2側に沿って曲がりつつ展開膨張するエアバッグ11、すなわち、助手席前方に搭載されるエアバッグ11に、好適に対応した展開膨張挙動を、確保できる。
さらに、実施形態のエアバッグ装置10では、元側テザー35と先側テザー37とが、下側壁部14に対して、前後方向や左右方向に沿ってずれずに、同じ位置の縫合箇所14bで連結されている。
そのため、実施形態では、下側壁部14側の元側テザー35と先側テザー37との間の距離が無く、上側壁部13と下側壁部14とにおける元側テザー35と先側テザー37との間の膜長差に関して、上側壁部13側における元側テザー35と先側テザー37との間の膜長LL(図5参照)自体となる。すなわち、このような構成では、最も大きな膜長差を確保できることとなって、より下方へ曲がった膨張完了形状のエアバッグ11を得ることができる。
なお、上記の点を考慮しなければ、元側テザー35と先側テザー37との下側壁部14への結合位置を、前後にずらしてもよい。
また、実施形態のエアバッグ装置10のエアバッグ11では、整流布を設けずに所定の曲げ形状を確保できることから、構成部品点数を低減して構成することができる。
さらに、実施形態のエアバッグ装置10のエアバッグ11では、所定のタック20,25,30を設けた上側壁部13と下側壁部14とが、外形形状を同一としており、構成部品点数が少なく嵩張らないことと相俟って、上側壁部13と下側壁部14とを重ねて平らに展開した状態で、エアバッグ11の折畳作業を行え、エアバッグ11の折畳作業が容易となる。
なお、実施形態では、助手席用のエアバッグ装置10について説明したが、他に、所定方向に曲げつつ膨張を完了させるエアバッグに本発明を適用できる。例えば、図8に示すように、膝保護用のエアバッグ装置10Aのエアバッグ11Aでは、インパネ1Aの下方からインパネ1Aの後面3Aに沿って上方へ曲がって膨張することが望まれている。そのようなエアバッグ装置10Aでは、折り畳まれて収納部位としてのケース52Aに収納されたエアバッグ11Aが、インフレーター50Aからの膨張用ガスGの流入時、ケース52Aに取り付けられた取付部15A側を残して、ケース52Aから突出するとともに、取付部15A側から離れた部位を展開膨張させる構成とし、さらに、膨張完了時の周壁12Aの対向する壁部13A,14Aにおける取付部15Aから離れた少なくとも二箇所において、相互の離隔距離を規制するテザーとしての取付部15Aに近い側の元側テザー35Aと、取付部15Aから離れた先端部11bに近い先側テザー37Aと、を配設させるとともに、対向する壁部、すなわち、車体側壁部13Aと膝を受け止める拘束側壁部14Aとの外周縁13a,14a相互を結合させて構成される。各テザー35A,37Aは、左右方向に沿う帯状として、左右両端を、車体側壁部13Aと拘束側壁部14Aとの外周縁13a,14a相互の結合部位から離して、配設されている。
このエアバッグ11Aは、図9に示すように、周壁12Aの対向する一方の拘束側壁部14Aにおける元側テザー35Aと先側テザー37Aとの間に、左右方向に沿う折目21,22を付けたタック20Aを設けた状態として、対向する壁部13A,14Aの外周縁13a,14a相互を縫合により結合させて構成されている。なお、車体側壁部13Aとタック20Aを設けた拘束側壁部14Aとは、外形形状を同一としており、平面縫製により、外周縁13a,14a相互を容易に縫合できる。
そして、タック20Aは、外表面側に表れる表側折目21と表側折目21の裏側に隠れる裏側折目22とを設けて、形成されるとともに、表側折目21を裏側折目22より取付部15A側に配置させて、形成されている。折目21,22は、相互に平行として、左右方向に沿って、すなわち、展開膨張時のエアバッグ11Aにおける収納部位としてのケース52Aから後方側に突出方向と直交し、かつ、車体側壁部13Aと拘束側壁部14Aとの対向方向と直交する方向に沿って、配設されている。
また、エアバッグ11Aは、円柱状のインフレーター50Aを保持した略円筒状のリテーナ45Aをエアバッグ11A内に収納して、リテーナ45Aから延びるボルト46をケース52Aにナット47止めして、インフレーター50Aとともに、ボディ側のインパネリンホースから延びるブラケットに固定されたケース52Aに対して、取付固定されている。さらに、エアバッグ11Aは、先端部11b側に、壁部13A,14A相互の離隔距離を規制するテザー38A,38Bを配設させて構成されている。これらのテザー38A,38Bも、左右方向に沿う帯状として、左右両端を、車体側壁部13Aと拘束側壁部14Aとの外周縁13a,14a相互の結合部位から離して、配設されている。
このエアバッグ装置10Aでは、ケース52Aに折り畳まれて収納されたエアバッグ11Aにインフレーター50Aから吐出する膨張用ガスGが流入されれば、図8の二点鎖線に示すように、エアバッグ11Aは、収納部位としてのケース52Aに取り付けられた取付部15A側を残して、エアバッグカバー57Aを押し開いて、ケース52Aから突出するとともに、取付部15A側から離れた部位を展開膨張させることとなる。そして、ケース52Aから突出するエアバッグ11Aの周壁12Aには取付部15Aから離れる方向に引っ張られる張力が作用して、タック20A付近にも取付部15Aから離れる方向の張力T1が作用する。すると、タック20Aの左右両縁20d,20eが対向する壁部13A,14Aの外周縁13a,14a相互と共に結合されていても、タック20Aの左右方向の中央20c付近では、タック20Aの表面側に表われる表側帯部20aが、膨張用ガスGの圧力を受けつつ表面側に膨らんで、表側折目21や裏側折目22の折目を解消させつつ、取付部15Aから離れる方向へずれ移動し、タック20Aを設けた拘束側壁部14Aが実質的に膜長を延ばす(図6参照)。勿論、膨張用ガスGの流入によるエアバッグ11A自体の内圧上昇の作用によっても、タック20Aを設けた壁部14Aに張力が発生することから、この内圧上昇の作用によっても、タック20Aの折りの解消が促進されて、タック20Aを設けた壁部14Aは膜長を延ばす。すなわち、周壁12Aの突出と内圧上昇との作用により、徐々にタック20Aが解消して、タック20Aを設けた壁部14Aの実質的な膜長を延ばすことから、タック20A付近でエアバッグ11Aが上方へ曲がりつつ(図8の二点鎖線参照)、先端部11b側に膨張用ガスGを流して先端部11b側を膨張させることができる。
そのため、このような構成のエアバッグ装置10Aでは、エアバッグ11Aの収納部位としてのケース52A側からの突出後において、インパネ1Aの後面3Aに沿うような円滑な曲げ動作を安定して確保しつつ、全体を展開膨張させることに寄与できて、収納部位としてのケース52Aの周縁3Aに沿わせるように曲げつつエアバッグ11Aを展開膨張させる必要のある膝保護用のエアバッグ装置10Aとして、好適に使用できる。
なお、上記のように、エアバッグの取付部側に表側折目を設け、先端部側に裏側折目を設けたタックを、対向する壁部の一方に配設されるエアバッグ装置のエアバッグとしては、曲げて膨張を完了させるエアバッグであれば、既述したような助手席用のエアバッグ11や膝保護用のエアバッグ11Aに限定されず、他の歩行者用エアバッグや頭部保護用エアバッグ等に適用することも可能である。
さらに、上記のような構成のエアバッグ装置10Aでは、エアバッグ11Aが、膨張完了時の周壁12Aの対向する車体側壁部13Aと拘束側壁部14Aとにおける取付部15Aから離れた少なくとも二箇所において、相互の離隔距離を規制するテザーとしての取付部15Aに近い側の元側テザー35Aと、取付部15Aから離れた先端部11bに近い先側テザー37Aと、を配設させるとともに、タック20Aを、元側テザー35Aと先側テザー37Aとの間に、配設させている。
そのため、このエアバッグ装置10Aでは、膨張完了時のエアバッグ11Aにおけるタック20Aを設けた元側テザー35Aと先側テザー37Aとの間において、厚さ規制した状態で、タック20Aを設けた拘束側壁部14Aが、タック20Aを設けない車体側壁部13Aに対して、タック20Aの摘み量TLAの2倍分の膜長差を設けて膨らんで、曲げ形状を確保できる。換言すれば、膨張完了時のエアバッグ11Aは、元側テザー35Aと先側テザー37Aとの間、すなわち、膨張完了時の収納部位としてのケース52A側から離れた先端部11bに至るまでの中間部位において、厚さを規制した状態で曲げることができ、先端部11b側での曲げによる変位量を大きく確保できる。
さらに付言すれば、エアバッグ11Aは、左右方向に沿う平行な折目21,22のタック20Aを設けた状態として、同形の展開形状とした壁部13Aと壁部14Aとの外周縁13a,14a相互を結合して形成されており、展開膨張時、ケース52Aから突出する突出方向(後方)と直交する折目21,22が、突出方向に沿って折りを解消しつつ、タック20Aの左右方向の略全域で、拘束側壁部14Aが後上方に延びることから、先端部11b側での曲げによる変位量を、左右均等に、安定して確保できる。
なお、エアバッグの取付部側に表側折目を設け、先端部側に裏側折目を設けたタックを、対向する壁部の一方に配設されるエアバッグ装置のエアバッグとしては、タックは、エアバッグの収納部位から突出する方向に沿う二つのテザーの間に、配設させなくともよく、例えば、実施形態のエアバッグ11の先端部11b側のタック25のように、テザー35,37から離れた先端部11b側に配設させたり、あるいは、テザー35,37から離れた元部11a側に配設させてもよい。さらに、エアバッグ装置としては、テザーを配設せずに構成するとともに取付部側から先端部側を突出させるように展開膨張させる構成のエアバッグに、取付部側に表側折目を設けて先端部側に裏側折目を設けたタックを、設けてもよい。