JP6284812B2 - 止水用組成物及び止水工法 - Google Patents
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Description
しかしながら、止水剤を漏水部に注入する施工現場においてpH調整剤を用いて適切なpHに調整することは困難であり、予め止水剤にpH調整剤を添加した場合には、pHが変化してしまう場合もある。
本発明1は、(メタ)アクリル酸塩(a)と、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート(b)と、重合触媒(c)とを含み、(メタ)アクリル酸塩(a)は、固形分濃度20〜40質量%の水溶液の20℃におけるpHが4.0〜8.0である、ゲル化時間の調整可能な止水用組成物である。
本発明2は、(メタ)アクリル酸塩(a)が、(メタ)アクリル酸カルシウム及び/又は(メタ)アクリル酸マグネシウムである、本発明1記載の止水用組成物である。
本発明3は、(メタ)アクリル酸塩(a)が、固形分濃度で25質量%の水溶液の20℃におけるpHが4.0〜8.0である(メタ)アクリル酸カルシウム(a1)と、固形分濃度で30質量%の水溶液の20℃におけるpHが5.0〜6.0である(メタ)アクリル酸マグネシウム(a2)とを含み、(メタ)アクリル酸カルシウムと(メタ)アクリル酸マグネシウムの質量割合が70:30〜98:2である、本発明1又は2記載の止水用組成物である。
本発明4は、(メタ)アクリル酸塩(a)とポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート(b)との質量割合が95:5〜55:45であり、(メタ)アクリル酸塩(a)とポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート(b)と重合触媒(c)との合計量が、固形分濃度3〜80質量%である、本発明1〜3のいずれかに記載の止水用組成物である。
本発明5は、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート(b)が、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートである、本発明1〜4のいずれかに記載の止水用組成物である。
本発明6は、重合触媒(c)がレドックス系触媒である、本発明1〜5のいずれかに記載の止水用組成物である。
本発明7は、(メタ)アクリル酸塩(a)と、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート(b)と、レドックス系触媒の還元剤成分(c1)とを含む水溶液であるA液と、レドックス系触媒の酸化剤成分(c2)を含む水溶液であるB液とを含む、本発明6記載の止水用組成物である。
本発明8は、アクリル酸塩(a)とポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート(b)の固形分合計量100質量部に対して、レドックス系触媒である重合触媒(c)を固形分で0.05〜30質量部含み、アクリル酸塩(a)とポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート(b)の固形分合計量100質量部に対して、レドックス系触媒の還元剤成分(c1)を固形分で0.01〜5質量部含み、レドックス系触媒の還元剤成分(c1)とレドックス系触媒の酸化剤成分(c2)の質量割合が1:1〜1:200である、本発明7記載の止水用組成物である。
本発明9は、本発明1〜6のいずれかに記載の止水用組成物を漏水部に注入する工程を含む、止水工法である。
本発明10は、本発明7又は8記載の止水用組成物のA液とB液とを混合する工程と、A液とB液とを混合した止水用組成物を漏水部に注入する工程を含む、止水工法である。
本発明は、固形分濃度20〜40質量%の水溶液の20℃におけるpHが4.0〜8.0の範囲で異なる(メタ)アクリル酸塩を止水用組成物に含むことによって、止水用組成物のゲル化時間を3秒以上60秒以下に調整することができる。
本発明は、(メタ)アクリル酸塩(a)と、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート(b)と、重合触媒(c)とを含み、(メタ)アクリル酸塩(a)は、固形分濃度20〜40質量%の水溶液のpHが4.0〜8.0である、止水用組成物である。本発明の止水用組成物は、pH調整剤を使用することなく、ゲル化時間を3秒以上60秒以下の間に調整することが可能である。
なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸とは、メタクリル酸及び/又はアクリル酸を意味し、「・・・(メタ)アクリル・・・」は「・・・メタクリル・・・」及び/又は「・・・アクリル・・・」を意味する。
例えば、固形分濃度20〜40質量%の水溶液の20℃におけるpHが8.0を超える(メタ)アクリル酸塩は、経時変化による加水分解により、止水用組成物に濁りが生じる場合があり、安定性が低下する場合がある。
例えば、固形分濃度25質量%の水溶液の20℃におけるpH4.4〜7.2である(メタ)アクリル酸カルシウムは、水溶液中に含まれる(メタ)アクリル酸分が18〜21質量%であり、カルシウム分は5〜6質量%である。
(メタ)アクリル酸カルシウムは、(メタ)アクリル酸分を変化させることによって、固形分濃度25質量%の水溶液の20℃において、例えばpH4.4、pH5.1、pH5.6、pH6.8、pH7.2である(メタ)アクリル酸カルシウムを得ることができる。
例えば、固形分濃度30質量%の水溶液の20℃におけるpHが5.3〜5.8である(メタ)アクリル酸マグネシウムは、水溶液中に含まれる(メタ)アクリル酸分が25〜27質量%であり、マグネシウム分は4〜5質量%である。
(メタ)アクリル酸マグネシウムは、(メタ)アクリル酸分を変化させることによって、固形分濃度30質量%の水溶液の20℃におけるpHが、例えば5.4である(メタ)アクリル酸マグネシウムを得ることができる。
例えば、固形分濃度25質量%の水溶液の20℃におけるpHが4.4である(メタ)アクリル酸カルシウムを含む止水用組成物は、20℃において、ゲル化時間を7〜8秒と、10秒以下の短時間とすることができる。
例えば、固形分濃度25質量%の水溶液の20℃におけるpHが5.1である(メタ)アクリル酸カルシウムを含む止水用組成物は、20℃において、ゲル化時間を8〜9秒と、10秒以下の短時間とすることができる。
例えば、固形分濃度25質量%の水溶液の20℃におけるpHが5.6である(メタ)アクリル酸カルシウムを含む止水用組成物は、20℃において、ゲル化時間を13〜14秒とすることができる。
例えば、固形分濃度25質量%の水溶液の20℃におけるpHが6.8である(メタ)アクリル酸カルシウムを含む止水用組成物は、20℃において、ゲル化時間を44〜45秒とすることができる。
例えば、固形分濃度25質量%の水溶液の20℃におけるpHが7.2である(メタ)アクリル酸カルシウムを含む止水用組成物は、20℃において、ゲル化時間を50〜51秒とすることができる。
また、水が滲出しているような漏水部には、比較的広範囲まで止水用組成物が拡散浸透するように、ゲル化時間が40〜45秒となるような比較的長いゲル化時間に調整した止水用組成物を使用することができる。
また、本発明によれば、ゲル化時間が長くなる傾向にある冬やゲル化時間が比較的短くなる夏等の季節等の温度変化や施工場所が変化しても、最適なゲル化時間に調整された止水用組成物を選択して使用することができる。
2種以上の(メタ)アクリル酸塩(a)を併用する場合には、固形分濃度20〜40質量%の水溶液の20℃におけるpHが4.0〜8.0である(メタ)アクリル酸塩を2種以上混合して使用することが好ましい。2種以上の(メタ)アクリル酸塩を使用する場合には、(メタ)アクリル酸塩は、(メタ)アクリル酸カルシウム(a1)と、(メタ)アクリル酸マグネシウム(a2)とを併用することが好ましい。
CH2=C(R1)CO−O−(CH(R3)CH2O)n−COC(R2)=CH2 (I)
(式中、R1、R2、R3は、水素原子又はメチル基であり、nは2〜50の整数である。)
CH2=C(R1)CO−O−(CH2CH2O)n−COC(R2)=CH2 (i)
(式中、R1、R2は、水素原子又はメチル基であり、nは2〜50の整数である。)
なお、ポリスチレン換算の重量平均分子量が300以下は添加したポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートが分離してしまい望ましくない。
止水組成物は、レドックス系触媒の還元剤成分(c1)とレドックス系触媒の酸化剤成分(c2)の質量割合(c1:c2)を変化させることにより、pH調整剤を使用することなく、ゲル化時間の調整が可能である。
例えば、固形分濃度25質量%の水溶液の20℃におけるpHが5.6であるアクリル酸カルシウムを含む止水用組成物は、レドックス系触媒の還元剤成分(c1)とレドックス系触媒の酸化剤成分(c2)の質量割合(c1:c2)が1:15であると、15℃において、ゲル化時間が30秒である。
例えば、固形分濃度25質量%の水溶液の20℃におけるpHが5.6であるアクリル酸カルシウムを含む止水用組成物は、レドックス系触媒の還元剤成分(c1)とレドックス系触媒の酸化剤成分(c2)の質量割合(c1:c2)が1:60であると、15℃において、ゲル化時間が15秒である。
例えば、固形分濃度25質量%の水溶液の20℃におけるpHが5.6であるアクリル酸カルシウムを含む止水用組成物は、レドックス系触媒の還元剤成分(c1)とレドックス系触媒の酸化剤成分(c2)の質量割合(c1:c2)が1:120であると、15℃において、ゲル化時間が9秒である。
ただし、レドックス系触媒の酸化剤成分(c2)の質量割合が多くなると硬化体の内部に析出物が発生して、弾性力及び強度が十分である硬化体(ゲル体)を形成することができない。
A液とB液は、それぞれ別の容器に収容し、施工前にA液とB液とを混合して使用することが保存安定性の観点から好ましい。
本発明の止水用組成物を用いた止水工法は、止水用組成物を漏水部に注入し、硬化させて、漏水部を止水することができる。止水用組成物を漏水部に注入後、止水後の漏水部の注入口には、ポリマーセメントモルタルを充填して硬化することが好ましい。
また、本発明の止水用組成物を用いた止水工法は、止水用組成物のA液とB液とを混合する工程を含む。A液とB液とを混合する方法としては、Y字管や二重管を使用して、A液とB液を別々に液送し、漏水部に注入する前にY字管の合流部や二重管の先端部でA液とB液とを混合する方法が挙げられる。その後、本発明の止水工法は、A液とB液とを混合した止水用組成物を漏水部に注入する工程を含む。止水用組成物を注入する工程において、止水用組成物を、漏水部に注入する工程は、上記と同様の方法を適用することができる。
〔A液〕
[アクリル酸カルシウム(a1)]
固形分濃度25質量%のアクリル酸カルシウムを含み、20℃で、pH4.4、pH5.1、pH5.6、pH6.8、pH7.2である水溶液
[アクリル酸マグネシウム(a2)]
固形分濃度30質量%のアクリル酸マグネシウムを含み、20℃で、pHが5.4である水溶液
[ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート(b)]
ポリエチレングリコールジアクリレートNo.600(ポリスチレン換算の重量平均分子量600、商品名:ブレンマーPDE−600(日油株式会社製))
[レドックス系触媒の還元剤成分(c1)]
イソアスコルビン酸ナトリウム(1%溶液)(関東化学株式会社製)
[レドックス系触媒の酸化剤成分(c2)]
ペルオキソ二硫酸ナトリウム(関東化学株式会社製)
[水]
水道水
[ゲル化時間の測定方法]
ゲル化時間の測定方法は、A液とB液を別の容器に収容しておき、A液とB液を1つの容器内で混合した直後から、混合物が流動性を失いゲル化するまでの時間を測定することとする。
A液とB液を混合し、7日間経過後の2cm×2cm×2cm(厚み)の硬化体を20℃の水中に10日間浸漬し、水中に浸漬前の硬化体の質量(吸水前硬化体質量)と、水中から取り出した後の硬化体の質量(吸水後硬化体質量)から以下の式(1)に基づき、吸水膨張率を測定した。実施例1〜5の吸水膨張率はいずれも50〜55%であった。
吸水膨張率(%)=(吸水後硬化体質量−吸水前硬化体質量)/吸水前硬化体質量×100(1)
7日間経過後の直径5cm×高さ10cmの円柱状の硬化体の一軸圧縮強度を、(JIS A 1216:2009)に準拠して、測定した。実施例1〜5の一軸圧縮強度はいずれも31〜35kN/m2であった。
環境庁告示46号法(平成3年8月23日)に準拠して検液を作製した。その検液の重金属濃度をJIS K 0102「工場排水試験方法」に準拠して測定した。7日間経過後の硬化体からのフッ素の溶出量は0.2mg/L(基準値0.8mg/L以下)であり、ホウ素は0.81mg/L(基準値1.0mg/L以下)であった。硬化体からのフッ素の溶出量及びホウ素の溶出量は、両者ともに基準値以下であった。その他の環境庁告示46号法の別表の項目に挙げられる物質の硬化体からの溶出量は、定量下限値以下又は不検出であった。
〔A液〕
[アクリル酸カルシウム(a1)]
固形分濃度25質量%のアクリル酸カルシウムを含み、20℃でpH5.6である水溶液
[アクリル酸マグネシウム(a2)]
固形分濃度30質量%のアクリル酸マグネシウムを含み、20℃で、pH5.4である水溶液
[ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート(b)]
ポリエチレングリコールジアクリレートNo.600(ポリスチレン換算の重量分子量600、商品名:ブレンマーPDE−600(日油株式会社製))
[レドックス系触媒の還元剤成分(c1)]
イソアスコルビン酸ナトリウム(5%溶液)(関東化学株式会社製)
[レドックス系触媒の酸化剤成分(c2)]
ペルオキソ二硫酸ナトリウム(関東化学株式会社製)
[水]
水道水
Claims (10)
- (メタ)アクリル酸塩(a)と、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート(b)と、重合触媒(c)とを含む止水用組成物のゲル化時間の調整方法であって、
pH調整剤を使用することなく、(メタ)アクリル酸カルシウム(a1)を用い、その固形分濃度25質量%の水溶液の20℃におけるpHを4.0〜8.0に調整することにより止水用組成物のゲル化時間を調整する方法。 - (メタ)アクリル酸塩(a)が、さらに固形分濃度30質量%の水溶液の20℃におけるpHが5.0〜6.0である(メタ)アクリル酸マグネシウム(a2)を含み、(メタ)アクリル酸カルシウムと(メタ)アクリル酸マグネシウムの質量割合が70:30〜98:2である、請求項1記載の方法。
- (メタ)アクリル酸塩(a)とポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート(b)との質量割合が95:5〜55:45であり、(メタ)アクリル酸塩(a)とポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート(b)と重合触媒(c)との合計量が、固形分濃度3〜80質量%である、請求項1又は2記載の方法。
- ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートが、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートである、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
- 重合触媒(c)がレドックス系触媒である、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
- 止水用組成物が、(メタ)アクリル酸塩(a)と、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート(b)と、レドックス系触媒の還元剤成分(c1)とを含む水溶液であるA液と、
レドックス系触媒の酸化剤成分(c2)を含む水溶液であるB液とを含む、請求項5記載の方法。 - アクリル酸塩(a)とポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート(b)の固形分合計量100質量部に対して、レドックス系触媒である重合触媒(c)を固形分で0.05〜30質量部含み、アクリル酸塩(a)とポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート(b)の固形分合計量100質量部に対して、レドックス系触媒の還元剤成分(c1)を固形分で0.01〜5質量部含み、レドックス系触媒の還元剤成分(c1)とレドックス系触媒の酸化剤成分(c2)の質量割合が1:1〜1:200である、請求項6記載の方法。
- 請求項1〜5のいずれか1項記載の方法により調製した止水用組成物を漏水部に注入する工程を含む、止水工法。
- 請求項6又は7記載の方法により調製した止水用組成物のA液とB液とを混合する工程と、A液とB液とを混合した止水用組成物を漏水部に注入する工程を含む、止水工法。
- 漏水部が、水が噴出している漏水部又は水が滲出している漏水部である、請求項8又は9記載の止水工法。
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