JP6002432B2 - 耐硫酸性グラウト組成物及びこれを用いた充填工法 - Google Patents

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本発明は、下水道、温泉地、化学工場等の硫酸又は硫酸塩による腐食が問題になる箇所での使用に適し、かつ酸性雨に対する耐久性を向上させ、更に、充てん性に優れた耐硫酸性グラウト組成物及びこれを用いた充填工法に関する。
下水道、温泉地、化学工場等の硫酸又は硫酸塩に晒される箇所においては従来から、硫酸又は硫酸塩によるセメント硬化体の腐食が問題になっている。更に近年、酸性雨によるセメントを使用した構造体全体の腐食も問題となっている。
セメント硬化体(セメントペースト、モルタル又はコンクリートの硬化体)は、硫酸に接触すると難溶性でかつ膨張性の石膏を形成すると共に、ケイ酸、アルミナ等が溶解して、シリカやアルミナのゲルを生成する。この膨張性の石膏やシリカやアルミナのゲルが溶出して、セメント硬化体を崩れやすくさせる、セメントに対する硫酸のこの作用は、当然のことながら酸の濃度に依存する。pHが2を超える場合(硫酸濃度0.1%以下)、すなわち、酸の濃度が低い場合には、炭酸ガスや低濃度の酸による腐食、又は硫酸塩等の腐食性を示す塩類による場合と同様に、セメント硬化体を緻密化させること、例えば高性能AE減水剤等の使用により作業性を確保しながら水セメント比を低下させることにより、腐食物質の内部への浸透を抑制することができ、これにより耐食性を向上させることができる。しかし、硫酸の濃度が高くなるとセメント硬化体の緻密化のみでは、対応が難しい。水セメント比を低くしてセメント硬化体を緻密化すると、酸によって生成される石膏の結晶成長による膨張圧を緩和する細孔が少なくなる。このため、例えばpHが2以下と非常に低くなると、石膏が表面からはがれ易くなり、侵食が進行してセメント硬化体の耐食性が悪化する場合があり、セメント組成物に、酸に対する抵抗性を期待することは困難である。
pHが2以下(硫酸濃度0.1%以上)のときは、酸によるセメント硬化体の劣化を防止するために、セメント組成物にポリマーを複合させたポリマーセメントや、セメント組成物の表面を耐食性材料(例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂)で被覆し、化学的腐食性物質(例えば、硫酸)とセメント組成物の接触を防止する防食被覆(ライニング)材が用いられている。しかし、ポリマーセメントや防食被覆材は高価であるだけでなく、製造時又は施工時に特殊な工程を必要とするため汎用的な対策ではない。また、耐硫酸性の要望があっても、コストが多大となるのであれば耐硫酸性の向上よりもコストが重視される場合もある。
耐硫酸性を向上させた硬化体が得られるセメント組成物として、数平均分子量が2000〜6000及び重量平均分子量が3000〜30000であるナフタレンスルホン酸塩縮合物を含むセメント組成物が知られている(特許文献1)。
特開2011−063477号公報
ところで、本発明者らが特許文献1に記載のセメント組成物の更なる用途展開について検討したところ、当該セメント組成物をグラウト組成物として使用することに着目した。そこで、本発明は、施工性、材料分離抑制性及び間隙への充填性の全てを十分高水準に達成でき、かつ優れた耐硫酸性を有する硬化体が得られるグラウト組成物及びこれを用いた充填工法を提供することを目的とする。
本発明者等は、上記セメント組成物の特性を詳細に検討した結果、当該セメント組成物に膨張材や発泡材を加えることで、耐硫酸性や材料分離抑制性を維持したまま、間隙に充填するのに適したグラウト組成物が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明に係る耐硫酸性グラウト組成物は、セメントを含むものであり、セメント100質量部に対して、数平均分子量が2000〜6000でありかつ重量平均分子量が3000〜30000であるナフタレンスルホン酸塩縮合物を固形分基準で0.3〜5質量部と、膨張材5〜20質量部と、発泡材0.1〜0.8質量部と、石灰石微粉末を30〜400質量部と、細骨材とを含む。
本発明に係る耐硫酸性グラウト組成物は、数平均分子量が2000〜6000及び重量平均分子量が3000〜30000であるナフタレンスルホン酸塩縮合物と、膨張材と、発泡材とを併用したものである。これらの成分を併用したことにより本発明は、施工時に特別な工程を必要とすることなく、施工が簡便であり、材料分離を抑制することができ、更に、間隙に充填することができる。
また、本発明は上記耐硫酸性グラウト組成物を使用した充填工法を提供する。当該充填工法はコンクリート構造物の隙間に上記耐硫酸性グラウト組成物を充填する工程を備える。
本発明によれば、施工性、材料分離抑制性及び間隙への充填性の全てを十分高水準に達成でき、かつ優れた耐硫酸性を有する硬化体が得られるグラウト組成物及びこれを用いた充填工法が提供される。
標準ポリスチレンスルホン酸を用いた分子量較正曲線である。 膨張収縮量測定試験を実施する装置を示す写真である。 膨張収縮量測定試験を実施する装置を拡大して示す写真である。 経過時間に対する長さ変化を示すグラフである。 (a)は中性化深さの測定方法を説明するための図であり、(b)は浸漬後の供試体を示す写真である。
本発明の好適な実施形態について詳述する。
本実施形態に係る耐硫酸グラウト組成物は、セメントを含むものであり、セメント100質量部に対して、数平均分子量が2000〜6000でありかつ重量平均分子量が3000〜30000であるナフタレンスルホン酸塩縮合物を固形分基準で0.3〜5質量部と、膨張材5〜20質量部と、発泡材0.1〜0.8質量部と、細骨材とを含むことを特徴とする。
本実施形態において使用するセメントとしては、JISで規定されるポルトランドセメントや混合セメントを挙げることができる。具体的には、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、及びそれらの低アルカリ型ポルトランドセメント、更に高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカセメント等を挙げることができる。
本実施形態において使用するナフタレンスルホン酸塩縮合物は、数平均分子量が2000〜6000であり、好ましくは2000〜5000、より好ましくは2050〜4500、更に好ましくは2080〜4000である。また、上記ナフタレンスルホン酸塩縮合物は、重量平均分子量が3000〜30000であり、好ましくは3050〜20000、より好ましくは3100〜10000、更に好ましくは3150〜6000である。ナフタレンスルホン酸塩縮合物の数平均分子量及び重量平均分子量が上記範囲であれば、耐硫酸性を十分に得られる。
数平均分子量と重量平均分子量が上記範囲であることにより耐硫酸性が向上する理由は明らかではない。しかしながら、以下の機構が推定される。
硫酸侵食とは、下水道及び温泉地等の環境下で発生する硫酸イオンがモルタル、コンクリートから溶出するカルシウムイオンと反応して脆い石膏を形成し、形成された石膏層が脱落後また新たに石膏を形成するというサイクルによって、モルタル構造物、コンクリート構造物が侵食される現象である。
数平均分子量及び重量平均分子量が上記の特定の範囲であるナフタレンスルホン酸塩縮合物は、ナフタレン構造に続くスルホン酸基がセメント粒子表面のカルシウムイオン等の多価カチオンに吸着し、吸着点から極近傍に嵩高い剛直なナフタレン構造やそれに続くポリマーがセメント粒子表面を被覆することでカルシウムイオンの溶出を抑制したり、硫酸イオンとの反応を抑制すると考えられる。
すなわち、グラウト組成物又はコンクリート組成物中に特定の数平均分子量及び重量平均分子量のナフタレンスルホン酸塩縮合物が共存する場合は、ナフタレンスルホン酸塩縮合物が共存しない場合と比較して、特定の数平均分子量及び重量平均分子量を有するナフタレンスルホン酸塩縮合物がセメント表面を被覆することによって、緩やかに石膏を形成し、緻密に配向した石膏層を形成することにより、硫酸の侵食を防ぎ、耐硫酸性を向上させると推定される。
上記ナフタレンスルホン酸塩縮合物としては、場合により一個以上のアルキル基で置換されているナフタレンスルホン酸塩のホルマリン縮合物を用いることができ、置換基としては、メチル基、エチル基等の炭素数1〜3のアルキル基が挙げられる。また、ナフタレンスルホン酸塩縮合物は、ナトリウム(Na)、カリウム(K)等のアルカリ金属、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)等のアルカリ土類金属、アンモニウム又はアミン類との塩であることが好ましい。
上記ナフタレンスルホン酸塩縮合物としては、数平均分子量及び重量平均分子量が上記範囲内であれば、コンクリート用の高性能分散剤、顔料、染料及び農薬水和剤等に使用される分散剤として市販されているものを用いることができる。また、ナフタレンスルホン酸塩縮合物としては、ナフタレンスルホン酸塩縮合物を主成分として、高分子ポリマー製造時の未反応モノマーが残存したものであっても、未反応モノマーを除去精製したものであってもよく、添加剤等が混合されたものであってもよい。
上述のとおり、一般的に有機高分子系の市販品には、分散剤ならば分散という主目的を担う主成分に加え、重合に関与しなかった残存モノマーや重合禁止剤、滑剤、防腐剤、消泡剤、染料などが共存する場合があるが、本発明における数平均分子量及び重量平均分子量とは、主成分についての数平均分子量及び重量平均分子量を意味する。
また、本発明において数平均分子量及び重量平均分子量は、ナフタレンスルホン酸塩縮合物をゲルろ過クロマトグラフィー(GFC:Gel Filtration Chromatography)で分子量を測定する場合に、複数のピークを持つ分子量分布のうち、測定初期に検出される高分子量側のピーク強度(面積)の最大ピークを主成分ピークとし、その主成分ピーク単独の数平均分子量及び重量平均分子量を標準物質(例えばポリスチレン)の較正曲線換算で算出したものをいう。
ナフタレンスルホン酸塩縮合物は、セメント100質量部に対して固形分基準で、好ましくは0.3〜5質量部、より好ましくは0.4〜4質量部、更に好ましくは0.5〜3.5質量部である。ナフタレンスルホン酸塩縮合物の配合量が上記範囲であれば、得られるセメント硬化体は、耐硫酸性を十分に得られる。
本実施形態において使用する膨張材としては、JISで規定されるコンクリート用膨張材であればよく、カルシウムサルフォアルミネート及び/又は生石灰を含んだものであれば更に好ましい。膨張材の量としては、セメント100質量部に対して、5〜20質量部、好ましくは5〜15質量部である。膨張材の量(セメント100質量部基準)が5質量部未満であるとグラウト材として必要とされる膨張特性が得られにくく、20質量部を超えると、膨張量が大きくなりすぎて弊害を生じる可能性が高くなるとともに、コスト的に不利益となりやすい。
本実施形態において使用する発泡材としては、コンクリートに気泡を混入させるものであれば、特にこだわるものではないが、鉄筋コンクリートの防錆や中性化の面からは、水素の発生を利用したアルミニウム粉末を含むものが好ましい。発泡材の量としては、セメント100質量部に対して、0.1〜0.8質量部、好ましくは、0.2〜0.7質量部である。発泡材の量(セメント100質量部基準)が0.1質量部未満であると満足な発泡が生じず、グラウト材としての特性が得られにくく、20質量部を超えると、過多な発泡により、セメント硬化体に欠陥が生じやすくなる。
本実施形態に係る耐硫酸グラウト組成物は、セメント100質量部に対して、更に石灰石微粉末を30〜400質量部含むことが好ましい。本実施形態において使用する石灰石微粉末は、セメント100質量部に対して、より好ましくは50〜350質量部であり、更に好ましくは70〜300質量部であり、特に好ましくは80〜250質量部である。石灰石微粉末の量が、上記範囲内であると、グラウト組成物からなるセメント硬化体が硫酸に晒された際に、より緻密な石膏層を生成することが可能となり、硬化体の耐硫酸性を更に向上する効果も期待できる。
石灰石微粉末は、ブレーン比表面積が、好ましくは2000〜20000cm/gのものを使用することができる。石灰石微粉末のブレーン比表面積は、より好ましくは2500〜15000cm/g、更に好ましくは3000〜10000cm/g、特に好ましくは4000〜7000cm/gのものを使用することができる。石灰石微粉末のブレーン比表面積が上記範囲内であると、材料分離を抑制することができ、良好なワーカビリティを維持することができる。ここで、石灰石微粉末のブレーン比表面積は、JIS R 5201‐1997「セメント物理試験方法」に準じて測定した値とする。
本実施形態に係る耐硫酸性グラウト組成物は、分離低減剤として、無機質粉体組成物100質量部に対して、水溶性増粘剤を、有機質成分量基準で好ましくは0.01〜0.5質量部、より好ましくは0.02〜0.2質量部の範囲の量にて使用するとよい。なお、有機質成分量基準とは、示差熱重量分析(TG−DTA)を行なった場合の約210〜510℃の重量減少量をいう。水溶性増粘剤が有機質成分量基準で0.01質量部未満であると、材料分離が発生して作業性が不十分となりやすい。また、水溶性増粘剤が有機質成分量基準で0.5質量部を越えると、粘性が高くなるため作業性が不十分となりやすく、凝結も遅延する傾向となる。
上記水溶性増粘剤としては、アクリル系水溶性高分子、バイオポリマー、グリコール系水溶性高分子、セルロース系水溶性高分子等から選ばれる1種、又はこれらの混合物が挙げられる。ここで、アクリル系水溶性高分子としては、例えば、アクリルアミドとアクリル酸の共重合体、ポリアクリル酸等を例示することができる。また、バイオポリマーとしては、β−1、3グルカン、水溶性ポリサッカライド等を例示することができる。グリコール系水溶性高分子としては、ポリアルキレングリコール、ジステアリン酸グリコール、繊維素グリコール酸等を例示することができる。セルロース系水溶性高分子としては、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース等を例示することができる。
本実施形態に係る耐硫酸性グラウト組成物は、分離低減剤として、無機質粉体組成物100質量部に対して、無機増粘剤を、好ましくは0.1〜5質量部、より好ましくは0.3〜2質量部の範囲の量にて使用するとよい。無機増粘剤が0.1質量部未満であると、材料分離が発生して作業性が不十分となりやすい。無機増粘剤が、5質量部を越えると、粘性が高くなるとともに、スランプフローが小さくなり、自己充てん性が不十分となりやすい。
無機増粘剤としては、例えば、アタパルジャイト、セピオライト、ベントナイト、タルク、シリカヒューム等から選ばれる1種、又はこれらの混合物が挙げられる。なお、これらの無機増粘剤は、高流動コンクリート製造あるいは左官用モルタルの作業性の改善に使用されている。
本実施形態に係る耐硫酸性グラウト組成物は、水セメント比が好ましくは30〜70%であり、より好好ましくは40〜60%であり、更に好ましくは48〜58%である。水セメント比が30%未満であるとグラウト組成物の粘性が高くなり所定の流動性を得にくくなり、70%を超えると十分な強度が得られにくく、材料分離も生じやすくなる。
本実施形態に係る耐硫酸性グラウト組成物は、細骨材を含む。骨材としては、川砂、陸砂、海砂、砕砂、高炉スラグ細骨材、石灰石細骨材等を使用することができる。耐硫酸性グラウト組成物中に含まれる細骨材は、セメント100質量部に対して、好ましくは50〜800質量部、より好ましくは100〜650質量部、更に好ましくは110〜500質量部、特に好ましくは120〜300質量部、もっとも好ましくは130〜200質量部であるである。
本実施形態に係る耐硫酸性グラウト組成物は、混練に先立ち各成分を予め混合しておくことも可能であるが、セメントに水を加えて混練する際に、ナフタレンスルホン酸及び/又はその塩のホルマリン縮合物と、細骨材及びその他混和剤を加えて調製することが好ましい。このように当該耐硫酸性グラウト組成物は、簡便な方法によって調製することが可能であり、通常のセメント硬化体を形成する施設等において、容易かつ安価に調製することができる。
また、本実施形態に係る耐硫酸性グラウト組成物には、基本成分であるベースセメント、ナフタレンスルホン酸縮合物、石灰石微粉末及び水に加えて、フレッシュ性状を調整するためリグニン系、ナフタレン系、ポリオール系、ポリカルボン酸系等の化合物であるAE剤、AE減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤、中性能減水剤、高機能減水剤、多機能減水剤等の化学混和剤や、増粘剤、消泡剤、空気量調整剤、凝結促進剤、硬化促進剤、硬化遅延剤、鉄筋防錆剤等の公知の添加剤、及び、ポリプロピレンなどの有機繊維や鋼繊維等の剥落防止材料等を添加することもできる。また、養生は常温養生だけではなく、蒸気養生や加熱養生でも製造することができる。
本実施形態に係る耐硫酸性グラウト組成物を硬化させてなる硬化体は、硫酸を含む水溶液と接触することにより表面に石膏層が形成される。これらの表面に石膏層を有する硬化体は、石膏層により硫酸侵食が防止され、耐硫酸性が向上する。
本実施形態に係る耐硫酸性グラウト組成物は、優れた耐硫酸性が求められる温泉施設、下水道施設、化学工場等のコンクリート構造物等のセメントを用いたコンクリート製品や、コンクリート製品の表面に塗布して防食被覆層を形成する防食被覆材料の劣化部に対する充填工法などの補修材料等として好適に使用することができる。より具体的には、当該充填工法は、コンクリート構造物の隙間に本実施形態に係る耐硫酸性グラウト組成物を充填する工程を備える。当該充填工法によれば、コンクリート構造物が例えばpHが2以下となる環境下に晒されても充填部分の侵食を十分に抑制できる。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の内容をより具体的に説明する。なお、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
[使用材料]
以下に示す材料を使用した。
(1)セメント
普通ポルトランドセメント(C):ブレーン比表面積 3270cm/g(JIS R 5201−1997 「セメントの物理試験」に準じて測定した。試料ベットのポロシティーは0.50とした。)
(2)石灰石粉末
石灰石粉末(LSP):ブレーン比表面積 4500cm/g(JIS R 5201−1997 「セメントの物理試験」に準じて測定した。試料ベットのポロシティーは0.47とした。)
(4)骨材
珪砂(S1)(表乾密度2.58g/cm、粗粒率3.62)
珪砂(S2)(表乾密度2.65g/cm、粗粒率2.71)
(5)練混ぜ水
上水道水(W)
(6)ナフタレンスルホン酸塩縮合物(A)
ゲルろ過クロマトグラフィー(GFC:Gel Filtration Chromatography)により、以下に示す条件で、下記式で示されるナフタレンスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物の数平均分子量及び重量平均分子量を測定した。
[ゲルろ過クロマトグラフィーの測定条件]
GFC装置:日本分光株式会社製 PU−2085plus型システム
カラム:東ソー株式会社製 GMPW(内径7.8mm×長さ300mm)
溶離液:50mM LiCl水溶液/CHCN=60/40(容量比)
注入量:10μL
溶離液流速:0.6mL/min
カラム温度:40℃
検出器:紫外吸収型(波長260nm)
標準試料:ポリスチレンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸
[分子量の測定方法]
表1に示すように、ポリスチレンスルホン酸とp−トルエンスルホン酸の分子量と保持時間の関係を測定し、この測定結果から図1に示す分子量較正曲線を作成した。
表2に分子量分布の測定結果を示す。表2のピークトップ分子量とは、分子量分布曲線における最も大きなピークの最大値のリテンションタイムから、標準試料であるポリスチレンスルホン酸とp−トルエンスルホン酸から算出された分子量較正曲線に基づいて換算した分子量である。
(7)分離低減剤
TNS−100(V1):太平洋マテリアル社製
Acti-Gel208(V2):ITC社製
(8)凝結促進剤(RA)
硫酸アルミニウム:大明化学工業社製
(9)膨張材(Z)
カルシウムサルフォアルミネート(太平洋ジプカル:太平洋マテリアル社製)
(10)発泡材(CA)
アルミニウム粉末:大和金属粉工業社製(粒径44μm以下60%以上のアルミニウム粉)
[モルタル組成物及びグラウト組成物の調製]
表3に示す配合割合で、JIS R 5201‐1997「セメントの物理試験」における練混ぜ方法に準じてモルタル組成物及びグラウト組成物を調製した。具体的には、以下のように調製した。
練り鉢に、材料を表3に示す配合割合で投入し、直ちに練混ぜ機でパドルを低速(自転速度:毎分140±5回転、公転速度:62±5回転)で回転させながら練混ぜた。モルタル組成物の場合は、水(W)、普通ポルトランドセメント(C)及び石灰石微粉末(LSP)、化学混和剤(A)、分離低減剤(V1、V2)、凝結促進剤(RA)を使用し、グラウト組成物の場合は更に膨張材(Z),発泡材(CA)を使用した。
パドルを始動させてから30秒後、練混ぜた混合物に細骨材(S1,S2)を30秒の間に投入した。次いで、パドルを高速(自転速度:毎分285±10回転、公転速度:125±10回転)で回転させながら、30秒間練混ぜた。次いで撹拌を停止し、停止後最初の15秒の間でパドル及び練り鉢の側壁から混合物をかき落とした。攪拌停止90秒後、再びパドルを上記と同様の高速で回転させ60秒間練混ぜて、モルタル組成物を得た。練混ぜ機は、JIS R 5201‐1997「セメント物理試験」に規定された練混ぜ機を使用した。
(1)モルタル組成物の0打フロー及び材料分離の目視観察
得られたモルタル組成物を用いて、JIS R 5201‐1997「セメントの物理試験方法 11.フロー試験」に記載される方法において、打撃を与えずに測定した値(以下「0打フロー」という。)、0打フロー250mmに到達した時間及びモルタル組成物の分離の有無を目視で確認した。モルタル組成物に材料分離が生じた場合を×、材料分離あるいは沈降が生じなかった場合を○として評価した。結果を表4に示す。膨張材及び発泡材を添加しても,モルタルフローは320〜330mm程度であり,分離も生じていなかった。この結果より,膨張材及び発泡材を添加してもフレッシュ性状に変化がないことを確認した。
(2)膨張収縮量測定試験
[供試体の調製]
直径5cm×高さ10cmの円筒型枠に調製したモルタル組成物を流し込み、渦電流式非接触変位センサーを用いて膨張収縮量を測定した。具体的には,流し込んだモルタル組成物の上に、乾燥防止のため丸型の塩化ビニール板を置き、その上に検出物体として金属板を置いて、発振の変化により、材齢7日までの変位を測定した。測定状況を図2及び図3に、測定結果を表5、表6及び図4にそれぞれ示す。
<膨張収縮試験の評価>
温度20±2℃、相対湿度60±5%で養生し,流し込みから(打設)材齢7日まで変位を測定し,材齢7日で収縮しないことを確認した。
表5に示すように,始発から材齢7日までの膨張量が零に近い参考例2が、添加量が少なくコスト的に優位あることが確認できる。そこで、この参考例2のモルタル組成物に発泡材、膨張材及び細骨材を加えグラウト組成物を調製した(実施例1、2、比較例1)。表6に示すように,材齢7日における長さ変化率が1000〜2000の範囲である実施例1及び実施例2が,過度な膨張又は収縮が生じていないことを確認した。一方、発泡材をセメント100質量部に対して0.9質量部と過剰添加すると、過度な膨張が生じた。このように,膨張材及び発泡材を適度に用いることで収縮を抑制できることを確認した。参考のため、図4に実施例1の経過時間に対する長さ変化を示す。
(3)硫酸浸せき試験
<硬化体の調製>
縦4cm×横4cm×長さ16cmの角柱型枠に調製したモルタル組成物を流し込み、20℃で一昼夜養生した後脱型し、その後水温20℃の水中で28日間養生してモルタル硬化体を得て,試験用の供試体とした。
<耐硫酸性の評価>
JIS原案の「コンクリートの溶液浸漬による耐薬品性試験方法」に基づいて、耐硫酸性の試験を行った。具体的には、養生終了後、片側面(暴露面)以外を樹脂によって防食塗装した供試体を5質量%硫酸水溶液(pH約0.3、20±2℃)に浸漬し、浸漬期間4週間(4W)、8週間(8W)、13週間(13W)、26週間(26W)後に硫酸水溶液から供試体を取り出した。取り出した供試体を湿式切断機で端面から2cm幅で切断し、切断面にフェノールフタレイン溶液を噴霧し、中性化深さを測定した。中性化深さは以下の式(1)で求めた。結果を表7に示す。比較用として汎用コンクリートの試験結果を併記する。なお、汎用コンクリートの配合を表8に示す。汎用コンクリートは、普通セメントを用い、粗骨材には硬質砂岩砕石(G2),細骨材には海砂(S2)を使用した。また、分散剤には一般的に使用されるポゾリスNo.70(Ad)を使用した。
<中性化深さの算出式>
中性化深さ(mm)=L−L1・・・式(1)
式中、Lは硫酸水溶液に浸漬する前の供試体の長さ3点の平均値(mm)を示し、L1は硫酸水溶液に所定期間浸漬した後の供試体の着色した部分の長さ3点の平均値(mm)を示す(図5参照)。
表7に示すとおり、いずれの浸せき期間においても、比較例2よりも、実施例1のグラウト組成物は、中性化深さが小さく、耐硫酸性が向上していた。このように膨張材及び発泡材を適量で使用することにより,耐硫酸性を損なうことなく,収縮を抑制することが確認できた。
以上のように、耐硫酸性を有するセメント組成物に膨張材及び発泡材を適量で使用することにより,間隙に充填可能なグラウトとしての新たな用途を見出すことが可能となった。

本発明の耐硫酸性グラウト組成物は、温泉地、下水道施設、化学工場等の硫酸又は硫酸塩に晒される可能性の高い箇所において使用するコンクリート構造物やその補修材料への適用は勿論、近年問題になっている酸性雨にも高い耐久性を示すことから、一般のセメントコンクリート製品を形成するための組成物として利用価値が高い。

Claims (6)

  1. セメントを含む耐硫酸性グラウト組成物であって、
    セメント100質量部に対して、数平均分子量が2000〜6000でありかつ重量平均分子量が3000〜30000であるナフタレンスルホン酸塩縮合物を固形分基準で0.3〜5質量部と、膨張材5〜20質量部と、発泡材0.1〜0.8質量部と、石灰石微粉末を30〜400質量部と、細骨材とを含むことを特徴とする耐硫酸性グラウト組成物。
  2. 前記膨張材は、カルシウムサルフォアルミネート及び/又は生石灰を含む、請求項1に記載の耐硫酸性グラウト組成物。
  3. 前記発泡材は、アルミニウム粉末である、請求項1又は2に記載の耐硫酸性グラウト組成物。
  4. 更に、分離低減剤を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の耐硫酸性グラウト組成物。
  5. セメント100質量部に対して、更に分離低減剤を0.5〜5質量部含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の耐硫酸性グラウト組成物。
  6. コンクリート構造物の隙間に、請求項1〜5のいずれか一項に記載の耐硫酸性グラウト組成物を充填する工程を備える充填工法。
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