JP5387463B2 - 水硬性組成物 - Google Patents

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本発明は、土木建築工事に使用されるグラウト用の水硬性組成物に関する。さらに、本発明は、前記水硬性組成物と水とを混練して調製した水硬性モルタル(スラリー)及び水硬性モルタル(スラリー)硬化体に関する。
グラウト組成物と水とを連続混練又は連続混練機を用いて混練して安定した流動性を有するスラリーが得られるグラウト組成物を提供することを目的として、特許文献1には、ポルトランドセメントを含む水硬性無機結合材と流動化剤と膨張剤とを含むグラウト組成物が開示されている。特許文献1には、さらに前記グラウト組成物を用い、連続混練機を使用して連続混練して得られたスラリーを、ポンプを用いて施工部に連続して供給するグラウトスラリーの施工方法が開示されている。
特開2006−298662号公報
本発明は、土木建築分野の大規模なグラウト工事でも採用可能な、優れた流動特性が得られると共に、良好な材料分離抵抗性を有し、硬化過程でのひび割れ抵抗性に優れ、さらに消泡性に優れる水硬性モルタル(スラリー)を効率的かつ安定的に製造でき、さらにスラリーポンプを用いて、長い距離を、スラリーホースを介して安定的にポンプ圧送し、離れた施工箇所へ水硬性モルタル(スラリー)を供給して打設・施工できる水硬性組成物を提供することを目的とする。なお、「消泡性に優れる」とは、水硬性モルタル(スラリー)の施工時に、消泡する時間が短く、発生する泡の量が少ないことをいう。また、本発明は、硬化過程での寸法変化率や断熱温度上昇が小さく、ひび割れ抵抗性に優れ、さらに消泡性に優れ、かわばりの発生が無く優れた表面状態を有する高耐久な構造体を提供すること及びその構造体を得るための水硬性モルタルを提供することを目的とする。
本発明者らは、特定の構成要素を持つ水硬性成分と、細骨材と、ポリエーテル系収縮低減剤と、ポリカルボン酸系流動化剤又はナフタレンスルフォン酸系流動化剤と、消泡剤と、無機系膨張材と、ヒドロキシプロピルメチルセルロース系増粘剤とを含む水硬性組成物は、水と混練した際に優れた流動特性が得られると共に、良好な材料分離抵抗性を有し、調製した水硬性モルタル(スラリー)は硬化過程でのひび割れ抵抗性に優れ、さらに消泡性に優れることを見出した。
すなわち、本発明は、水硬性成分と、細骨材と、ポリエーテル系収縮低減剤と、ポリカルボン酸系流動化剤又はナフタレンスルフォン酸系流動化剤と、消泡剤と、無機系膨張材と、ヒドロキシプロピルメチルセルロース系増粘剤とを含む水硬性組成物であって、水硬性組成物は水硬性組成物100質量%中に、水硬性成分を34.0〜38.0質量%含み、ポリエーテル系収縮低減剤を0.10〜0.50質量%含み、ポリカルボン酸系流動化剤を0.050〜0.075質量%又はナフタレンスルフォン酸系流動化剤を0.350〜0.480質量%含み、消泡剤を0.001〜2.0質量%含み、無機系膨張材を0.3〜4.0質量%含み、ヒドロキシプロピルメチルセルロース系増粘剤を0.001〜0.6質量%含み、さらに、水硬性成分は、水硬性成分100質量%中に早強ポルトランドセメントを55.0〜65.0質量%含み、普通ポルトランドセメントを35.0〜45.0質量%含む、水硬性組成物である。本発明の水硬性組成物を用いることにより、消泡性に優れる水硬性モルタル(スラリー)を得ることができる。
また、本発明は、上記の水硬性組成物と水とを混練して得られる水硬性モルタルである。本発明の水硬性モルタルは、消泡性に優れるので、得られる硬化体の表面状態は優れたものである。
また、本発明は、上記水硬性モルタルを硬化させて得られる水硬性モルタルの硬化体である。本発明により、優れた表面状態の硬化体を得ることができる。
また、本発明は、水硬性組成物を貯蔵するタンクを備えた水硬性モルタル調製・施工用トラックに搭載したミキサーを用いて、水硬性組成物と水とを連続的に混練して水硬性モルタルを調製する工程と、前記トラックに搭載されたスラリーポンプによりスラリーホースを介して水硬性モルタルを施工箇所へ連続的に供給・打設して硬化させる工程とを含む、グラウト用の水硬性モルタルの施工方法である。本発明の施工方法により、消泡性に優れる水硬性モルタル(スラリー)によって、かわばりの発生が無く優れた表面状態の硬化体を得ることができる。
本発明の水硬性組成物は、特定の構成要素を持つ水硬性成分と、特定の粒度構成を持つ細骨材と、ポリエーテル系収縮低減剤と、ポリカルボン酸系流動化剤又はナフタレンスルフォン酸系流動化剤と、消泡剤と、無機系膨張材と、ヒドロキシプロピルメチルセルロース系増粘剤を含むことによって、水と混練した際に優れた流動特性が得られ、良好な材料分離抵抗性を有すると共に、消泡性に優れる水硬性モルタル(スラリー)を得ることができる。その結果、流動特性が良好でかつ安定した水硬性モルタル(スラリー)製造することができる。
また、本発明の水硬性組成物を用いて調製した水硬性モルタル(スラリー)は、良好な材料分離抵抗性を有していることから、ポンプを使用して長距離圧送することができ、効率的にかつ安定性状の水硬性モルタル(スラリー)を離れた施工場所へ充填することが可能となり、品質の安定した構造物の構築に優れた効果を発揮することができる。
さらに、本発明の水硬性組成物を用いて調製した水硬性モルタル(スラリー)の硬化体は、硬化過程での寸法変化率や断熱温度上昇が小さく、ひび割れ抵抗性に優れ、さらに消泡性に優れるため、かわばりの発生が無く優れた表面状態を有する高耐久な構造体を得ることができる。
本発明で用いるスラリー製造・供給装置の構成の一例を説明するための模式断面図である。 本発明で用いる多重螺旋状攪拌板とパドル型攪拌板とを配置した複合攪拌羽根の全体構成を示す図である。 水硬性組成物を貯蔵するタンク及びスラリー製造・供給装置を搭載した水硬性モルタル(スラリー)調製・施工用トラックの全体構成を示す模式図である。 混練条件Aで水硬性モルタル(スラリー)を調製する場合に使用するタービン羽根を示す模式図である。 長さ変化率を測定する測定器の概要を示す模式図である。 簡易断熱養生温度を測定する測定器の概要を示す模式図である。 参考例1〜5及び参考比較例1の水硬性組成物を用いたモルタル(スラリー)硬化体の長さ変化率を示す図である。 参考例1、2及び5並びに参考比較例2及び5の水硬性組成物を用いたモルタル(スラリー)硬化体の長さ変化率を示す図である。 参考例1、2及び5並びに参考比較例2〜5の水硬性組成物を用いたモルタル(スラリー)硬化体の断熱温度上昇を示す図である。 参考例1、2、5及び10並びに参考比較例12及び13の水硬性組成物を用いたモルタル(スラリー)硬化体の長さ変化率を示す図である。
本発明の水硬性組成物は、水硬性成分と細骨材と収縮低減剤と流動化剤と消泡剤と無機系膨張材とヒドロキシプロピルメチルセルロース系増粘剤とを必須成分とする、土木建築工事に使用されるグラウト用の水硬性組成物であって、水と混練することによって優れた流動特性が得られると共に、良好な材料分離抵抗性を有し、硬化過程での寸法変化率や断熱温度上昇が小さく、ひび割れ抵抗性に優れ、さらに消泡性に優れる水硬性モルタル(スラリー)を安定して調製することができる。すなわち、本発明の水硬性モルタル(スラリー)を用いるならば、水硬性モルタル(スラリー)の施工時に、消泡する時間が短く、発生する泡の量が少なく、かわばりの発生が少ない。そのため、本発明の水硬性モルタルを硬化させて得られる水硬性モルタルの硬化体において、優れた表面状態を得ることができる。
水硬性組成物の水硬性成分は、早強ポルトランドセメントと普通ポルトランドセメントとを含む水硬性成分であり、早強ポルトランドセメントは、水硬性成分100質量%中に、好ましくは55.0〜65.0質量%、より好ましくは55.5〜64.7質量%、さらに好ましくは56.5〜64.0質量%であることが好ましく、普通ポルトランドセメントは、水硬性成分100質量%中に、好ましくは35.0〜45.0質量%、より好ましくは35.3〜44.5質量%、さらに好ましくは36.0〜43.5質量%であることが好ましい。
水硬性成分の構成要素が前記の範囲にない場合には、水硬性モルタル(スラリー)が優れた流動特性や材料分離抵抗性を安定して得られ難くなり、さらに断熱温度の上昇による硬化過程でのひび割れ、圧縮強度の低下及びブリーディングなど硬化物性の不良を生じることがあるため好ましくない。
また、本発明で用いる水硬性成分は、水硬性組成物100質量%中に、好ましくは34.0〜38.0質量%、より好ましくは34.5〜37.5質量%、さらに好ましくは34.7〜37.2質量%、特に好ましくは35.0〜37.0質量%であることが好ましい。
水硬性成分量が前記の範囲より多い場合には、流動特性が悪化する傾向が強くなり、さらに断熱温度が上昇して硬化過程でのひび割れを生じる確率が高まり、前記の範囲より少ない場合には、圧縮強度が低下する傾向が強くなり、さらにブリーディングを生じ易くなることから好ましくない。
さらに、本発明の水硬性成分は、早強ポルトランドセメントと普通ポルトランドセメントの他に、必要に応じて本発明の特性を損なわない範囲で石膏、アルミナセメント等の速硬性セメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント等のポルトランドセメントを含むことができ、それらの一種又は二種以上を混合して使用することができる。
石膏としては、無水、半水等の石膏がその種類を問わず、一種又は二種以上の混合物として使用できる。
アルミナセメントとしては、鉱物組成の異なるものが数種知られ市販されているが、いずれも主成分はモノカルシウムアルミネート(CA)であり、市販品はその種類によらず使用することができる。
本発明の水硬性組成物では、水と混練することにより優れた流動特性が得られると共に、硬化過程でのひび割れ抵抗性に優れる水硬性モルタル(スラリー)が得られることから、収縮低減剤と流動化剤とを使用する。
本発明で用いる収縮低減剤としては、ポリエーテル系の収縮低減剤を用いることが好ましい。市販品では竹本油脂社製ヒビダン等を好適に使用できる。
ポリエーテル系収縮低減剤は、水硬性組成物100質量%中に、好ましくは0.10〜0.50質量%、より好ましくは0.15〜0.45質量%、さらに好ましくは0.20〜0.40質量%であることが好ましい。
添加量が前記の範囲より少ないと寸法変化率が大きく、硬化過程でひび割れを生じる傾向が高くなり、また前記の範囲より多すぎても添加量に見合った効果は期待できず単に不経済であるだけでなく、ブリーディングを生じる傾向が高まることから好ましくない。
また、本発明で用いる流動化剤としては、ポリカルボン酸系の流動化剤又はナフタレンスルフォン酸系の流動化剤から選ばれるいずれか1種を用いることができる。
ポリカルボン酸系流動化剤は、水硬性組成物100質量%中に、好ましくは0.050〜0.075質量%、より好ましくは0.052〜0.074質量%、さらに好ましくは0.054〜0.073質量%であることが好ましい。
また、ナフタレンスルフォン酸系流動化剤は、水硬性組成物100質量%中に、好ましくは0.350〜0.480質量%、より好ましくは0.360〜0.475質量%、さらに好ましくは0.380〜0.470質量%であることが好ましい。
流動化剤の添加量が、それぞれの好ましい範囲より少ないと、水硬性成分を速やかに分散させる効果が乏しくなって充分な効果(良好な流動性状、優れた材料分離抵抗性)が発現せず、また好ましい範囲より多すぎても添加量に見合った効果は期待できず単に不経済であるだけでなく、ブリーディングを生じる傾向が高まることから好ましくない。
本発明の水硬性組成物では、水と混練することにより速やかに良好な流動性状を有する水硬性モルタル(スラリー)を得ることができ、さらに優れた材料分離抵抗性を有する水硬性モルタル(スラリー)を安定して得るために、最大粒径が2mm(2000μm)未満で、最小粒径が30μm以上の特定の粒度構成を有する細骨材を選択して使用することが好ましい。前記細骨材を用いることによって、良好で安定した流動性状の水硬性モルタル(スラリー)を得られると共に、長距離をポンプ圧送した際にも、材料分離に伴うスラリーホースの閉塞を回避することができる。
細骨材としては、珪砂、川砂、海砂、山砂、砕砂などの砂類、シリカ粉、粘土鉱物、廃FCC触媒などの無機質材、ウレタン砕、EVAフォーム、発砲樹脂などの樹脂粉砕物、アルミナセメントクリンカー骨材などを用いることができる。
細骨材ついては、珪砂、川砂、海砂、山砂、砕砂などの砂類、石英粉末、廃FCC触媒などを用いることが特に好ましい。
本発明で使用する細骨材は、細骨材100質量%中に好ましくは、30μm以上〜300μm未満の粒子を10.0〜20.0質量%含み、300μm以上〜600μm未満の粒子を10.0〜25.0質量%含み、600μm以上〜1180μm未満の粒子を35.0〜75.0質量%含み、1180μm以上〜2000μm未満の粒子を1.0〜35.0質量%含むものを好適に使用でき、より好ましくは、30μm以上〜300μm未満の粒子を11.0〜18.0質量%含み、300μm以上〜600μm未満の粒子を11.0〜23.0質量%含み、600μm以上〜1180μm未満の粒子を40.0〜72.0質量%含み、1180μm以上〜2000μm未満の粒子を1.5〜20.0質量%含むものを好適に使用でき、さらに好ましくは、30μm以上〜300μm未満の粒子を12.0〜17.0質量%含み、300μm以上〜600μm未満の粒子を12.0〜22.0質量%含み、600μm以上〜1180μm未満の粒子を42.0〜70.0質量%含み、1180μm以上〜2000μm未満の粒子を2.0〜10.0質量%含むものを好適に使用できる。
細骨材の粒度構成が前記の範囲(「特定の粒度構成」という)にない場合には、水硬性モルタル(スラリー)が優れた流動特性や材料分離抵抗性を安定して得られ難くなり、また水硬性モルタル(スラリー)を、スラリーポンプを用いて長距離(100m)圧送した際に、水硬性モルタル(スラリー)中の細骨材が材料分離を生じてスラリーホースを閉塞させることがあるため好ましくない。
細骨材の使用量は、水硬性組成物100質量%中に、好ましくは20〜90質量%、より好ましくは40〜80質量%、さらに好ましくは50〜70質量%の範囲にすることにより、優れた良好な流動性、材料分離抵抗性、ポンプ圧送性、及び、良好な硬化体強度発現性が得られることから好ましい。
本発明の水硬性組成物では、硬化過程での寸法変化率が小さく、ひび割れ抵抗性に優れる水硬性モルタル(スラリー)が得られることから、無機系膨張材を使用する。
無機系膨張材としては、カルシウムサルフォアルミネート系ではアウイン、石灰系では生石灰、生石灰−石膏系、仮焼ドロマイト等が挙げられ、これらから選ばれた少なくとも1種を使用できる。石灰系膨張材としては、生石灰、生石灰−石膏系が好ましく、特に生石灰−石膏系が好ましい。
無機系膨張材としては、例えば遊離生石灰を膨張成分として含むものや、カルシウムサルフォアルミネート等のエトリンガイト形成物質を膨張成分とする市販品を使用することができる。好ましくは、収縮補償効果とともに反応時の水和発熱によって低温環境下の強度増強効果を有する生石灰を有効成分として含む膨張材が特に好ましく、この場合膨張材中の生石灰含有量は特に限定されないが、生石灰含有量が高いもの(100重量%を含む)では水和反応が急激に進行することがあるので80重量%以下の含有量が好ましい。
無機系膨張材の添加量は、水硬性組成物100質量%に対して、好ましくは0.3〜4.0質量%、より好ましくは0.5〜3.5質量%、さらに好ましくは1.0〜3.0質量%の範囲で用いることが好ましい。
添加量が少ないと寸法変化率も大きく、充分な膨張効果を発現せず、また多すぎても硬化過程で膨張過多によるひび割れを生じることから好ましくない。
本発明では水硬性組成物の必須成分として消泡剤を使用する。
本発明で使用する消泡剤としては、シリコン系、アルコール系、ポリエーテル系などの合成物質又は植物由来の天然物質などを用いることができる。特にポリエーテル系の消泡剤を好適に用いることができる。
消泡剤の添加量は、水硬性組成物100質量%に対して、好ましくは0.001〜2.0質量%、より好ましくは0.008〜1.2質量%、さらに好ましくは0.03〜0.5質量%の範囲で用いることが好ましい。
添加量が好ましい範囲より少ないと充分な消泡効果を発現せず、型枠などに充填した際にエア溜りを生じやすく、構造物との一体性が損なわれることがあり、また添加量が好ましい範囲より多すぎても流動特性が悪化する場合があり、ブリーディングを生じ易くなることから好ましくない。
本発明では水硬性組成物の必須成分として増粘剤を使用する。本発明の水硬性組成物では、増粘剤としてヒドロキシプロピルメチルセルロース系増粘剤を用いることに特徴がある。なお、ヒドロキシプロピルメチルセルロース系増粘剤以外の増粘剤として、セルロース系、蛋白質系、ラテックス系、変性アクリルアミド系及び水溶性ポリマー系などを挙げることができる。水硬性組成物の消泡性を向上するために、増粘剤としてはヒドロキシプロピルメチルセルロース系増粘剤のみを用いることが好ましい。
増粘剤の添加量は、水硬性組成物100質量%に対して、好ましくは0.001〜0.6質量%、より好ましくは0.01〜0.06質量%、さらに好ましくは0.015〜0.03質量%の範囲で用いることが好ましい。
増粘剤及び消泡剤を併用して用いることは、水硬性成分や細骨材などの骨材分離の抑制、気泡発生の抑制、硬化体表面の改善に好ましい効果を与え、グラウト用途の水硬性モルタル(スラリー)としての特性を向上させるために好ましい。
本発明の水硬性組成物は、水硬性成分、細骨材、収縮低減剤、流動化剤、無機系膨張材消泡剤及び増粘剤の他に、必要に応じて本発明の特性を失わない範囲で凝結調整剤、樹脂粉末及び無機質微粉末などの成分を少なくとも1種以上含むことができる。
金属系膨張材は、本発明の特性を損なわない範囲で添加することができ、無機系膨張材と併用して用いることが好ましい。
金属系膨張材としては、アルミニウム粉、鉄粉などの金属粉を使用することができるが、中でも比重の面から、アルミニウム粉の使用が特に好ましい。アルミニウム粉は、JIS K5906:1998「塗装用アルミニウム粉」の第2種に準ずるものが好適に使用できる。
凝結調整剤は、用いる水硬性成分に応じて、特性を損なわない範囲で適宜添加することができ、凝結促進剤及び凝結遅延剤の成分、添加量及び混合比率を適宜選択して、流動性、可使時間、硬化性状などを調整することができる。
樹脂粉末としては、エチレン・酢酸ビニル共重合体、アクリル系重合体などの乳化重合した高分子エマルジョンを噴霧乾燥して調製した樹脂粉末などを用いることができる。
無機質微粉末としては、必要に応じて本発明の特性を損なわない範囲で、高炉スラグ、フライアッシュ、炭酸カルシウム、ミクロシリカ、溶融スラグなどを用いることができる。
本発明で用いる水硬性組成物を構成する場合に、好適な成分構成は、特定の構成要素を持つ水硬性成分と、細骨材と、ポリエーテル系収縮低減剤と、ポリカルボン酸系流動化剤又はナフタレンスルフォン酸系流動化剤と、消泡剤と、無機系膨張材と、ヒドロキシプロピルメチルセルロース系増粘剤とを含む水硬性組成物である。
本発明で用いる水硬性組成物を構成する場合に、特に好適な成分構成は、特定の構成要素を持つ水硬性成分と、細骨材と、ポリエーテル系収縮低減剤と、ナフタレンスルフォン酸系流動化剤と、消泡剤と、無機系膨張材と、ヒドロキシプロピルメチルセルロース系増粘剤とを含む水硬性組成物であって、さらに金属系膨張材を含むものである。
本発明では、水硬性成分、細骨材、ポリエーテル系収縮低減剤、ナフタレンスルフォン酸系流動化剤、消泡剤、無機系膨張材及びヒドロキシプロピルメチルセルロース系増粘剤と、必要に応じて、金属系膨張材、凝結調整剤、粉末樹脂、樹脂粉末及び無機質微粉末などから選択される成分を1種以上とを添加し、混合機で混合して水硬性組成物のプレミックス粉体を得ることができる。
本発明の水硬性組成物は、混練装置を用いて、又は、混練機構を有するミキサー設備を用いて、水と混練することにより、安定して良好な流動性を有する水硬性モルタル(スラリー)を製造することができる。
また、本発明の水硬性組成物は水とともに、定量的かつ連続的に混練機構を有するミキサー設備に供給されることにより、速やかに混練されて安定した流動性状を有するスラリーが得られることから、図1に示すように、水硬性スラリータンク(リザーバータンク)に螺旋形状の撹拌羽根を備えた連続混練装置を好ましく用いることができる。螺旋形状の撹拌羽根としては、図2に示すような形状及び寸法を有するものを好ましく使用でき、水硬性スラリータンク(リザーバータンク)中の水硬性モルタル(スラリー)の均一性をより高めて、水硬性モルタル(スラリー)の流動性状や材料分離特性などを安定化することができる。
さらに、大規模な現場で大量の水硬性モルタル(スラリー)を限られた期間内に施工する場合には、特に、水硬性モルタル(スラリー)を連続的に製造し、離れた施工場所へ供給・施工できる図3に示すような水硬性組成物を貯蔵するタンクを備えた水硬性モルタル(スラリー)調製・施工用トラックを使用し、該トラックに搭載した連続混練ミキサー(図1)を用いて、水硬性組成物と水とを連続的に混練して水硬性モルタル(スラリー)を連続的に調製し、該トラックに搭載されたスラリーポンプによりスラリーホースを介して水硬性モルタル(スラリー)を施工箇所へ連続的に供給・打設する水硬性モルタル(スラリー)施工方法が、施工効率及び施工品質において極めて有効である。
本発明の水硬性組成物は、所定量の水と速やかに混練され、安定して優れた流動性状と良好な材料分離抵抗性とを有するスラリーが得られることから、前記の水硬性組成物を貯蔵するタンクを備えた水硬性モルタル(スラリー)調製・施工用トラックを使用した施工方法に好適に用いることができる。
本発明の水硬性組成物は、所定量の水と混練することによって速やかに良好な流動特性を有し、材料分離抵抗性に優れた水硬性モルタル(スラリー)を調製することができる。本発明では、混練条件Aの条件で水硬性組成物と水とを混練し、混練操作によって得られる水硬性モルタル(スラリー)の流動特性をJ14ロート流下値によって評価する。
混練条件Aとは、温度20℃、湿度65%の恒温室において、恒温室と同温度に養生した水硬性組成物と水を用い、2Lポリ容器に表1から表6等に示す所定の水比の水を入れ、図4に示す形状のタービン羽根を取り付けた0.15KW攪拌機を使用し、300rpmで攪拌しながら水硬性組成物1500gを全量投入後、780rpmで2分間混練して、水硬性モルタル(スラリー)を調製するものである。
本発明の水硬性組成物を混練条件Aの条件で混練して調製し、同恒温室にて測定した水硬性モルタル(スラリー)のJ14ロート流下値は、好ましくは4.0〜10.1秒の範囲、さらに好ましくは5.0〜10.05秒の範囲、特に好ましくは6.0〜10.0秒の範囲であることが速やかに優れた流動性を安定して確保でき、優れた材料分離抵抗性を有する水硬性モルタル(スラリー)を安定して得られることから好ましい。
本発明のセルフレベリング性水硬性組成物は、水と混合して調製した水硬性モルタルのフロー値(建築改修工事監理指針(下巻、平成19年版)8章 耐震改修工事に記載の試験方法に準拠して測定)が、好ましくは180〜270mm、より好ましくは200〜260mm、さらに好ましくは210〜250mmに調整されていることが好ましい。フロー値が上記範囲であることにより、水硬性モルタルは、施工の容易さ及び優れた流動性を有し、特に卓越したモルタル流動速度を安定して発揮させて、水平レベル精度が高くスラリー同士の合流箇所の馴染み性が優れる。
本発明の水硬性組成物は、水の添加量を調整することにより、水硬性モルタル(スラリー)の流動性、材料分離抵抗性などを、さらに硬化して得られる硬化体の強度などを調整することができる。
水の添加量は、用いる水硬性成分や水硬性組成物に応じて、適宜選択して用いることができる。水硬性組成物と水との質量比率である水比(水/水硬性組成物)は、好ましくは0.080〜0.500、さらに好ましくは0.090〜0.400、特に好ましくは0.110〜0.200の範囲であることが好ましい。なお、水比は水の添加量を水硬性組成物の質量で除した値を用いる。
水硬性モルタル(スラリー)は、以下の特性を有することが好ましい。
1)ブリーディング率が、好ましくは0.3%以下、より好ましくは0.2%以下、特に好ましくは0.1%以下である。
2)エア量が、好ましくは4.5%以下、より好ましくは4.0%以下、特に好ましくは3.5%以下である。
水硬性モルタル(スラリー)の硬化体は、以下の特性を有することが好ましい。
1)圧縮強度(材齢28日)が、好ましくは40N/mm以上、より好ましくは45N/mm以上、さらに好ましくは50N/mm以上である。
2)長さ変化率(材齢7日)が、好ましくは−22×10−4以上、より好ましくは−21×10−4以上、さらに好ましくは−20×10−4以上である。
3)簡易断熱養生温度の最高温度が、好ましくは87℃以下、より好ましくは86℃以下、さらに好ましくは85℃以下である。
4)ひび割れ確認(目視)が、○:ひび割れ無しである。
本発明の水硬性モルタル(スラリー)は、トンネルやシールドの裏込め、ダムの継ぎ目、橋梁のシュウ、構造物の補修や補強、鉄筋継手、機械基礎の固定、下水道の補修等、土木・建築分野の各種グラウト工事において、高流動性、無収縮性及び高強度といった性能を有することからその利用価値は大きい。
特に、大規模な現場で大量のグラウチングを行うような場合に、連続的に水硬性モルタル(スラリー)を調製して、連続的に施工箇所へ供給・打設施工する場合にその性能を発揮するものである。
以下、本発明を実施例に基づき、さらに詳細に説明する。但し、本発明は下記実施例により制限されるものでない。
(特性の評価方法)
1)J14ロート流下値(秒):
土木学会基準「充てんモルタルの流動性試験方法(JSCE F541−1999)」に準拠して、水硬性モルタル(スラリー)のJ14ロート法による流下値を示す。
2)ブリーディング率(%)
土木学会基準「充てんモルタルのブリーディング率および膨張率試験方法(JSCE F541−1999)」に準拠して、水硬性モルタル(スラリー)の練り混ぜ2時間後のブリーディング率を示す。
3)圧縮強度(N/mm):
温度20℃、湿度65%の条件で混練した水硬性モルタル(スラリー)を用い、温度20℃、湿度95%の条件で硬化させ、翌日脱型後、20℃の水中で28日間養生した試験体φ5×10cmを用い、JIS A1108:2006に準拠して評価を行う。
4)膨張収縮率(%):
土木学会基準「充てんモルタルのブリーディング率および膨張率試験方法(JSCE F541-1999)」に準拠して、膨張収縮率を示す。
5)ポンプ圧送性:
ミキサー装置の排出ポンプ出口に、内径32cmで長さ25m、50m又は100mのスラリーホースを接続して評価を行う。
ポンプは、モーノポンプ、型番:2NM50(兵神装備社製)を用いて行う。
水硬性モルタル(スラリー)の圧送性の評価指標は、○:閉塞無し、×:閉塞有りとする。
6)長さ変化率:
長さ変化率の測定は、図5に示す装置を用いる。長さ変化率の測定は、混練直後の水硬性モルタル(スラリー)を型内部の型枠の高さまで打設し、打設直後より長さ変化の測定を開始し、測定間隔は10分毎で行い、材齢7日まで測定する。測定条件は、20℃、RH65%の気中で行う。
水硬性モルタル(スラリー)の硬化時の長さ変化率は、図5(a)に示す変位センサーの端部と、変位センサーの端部と隣接するSUS製円盤との間隔の変化量(mm)を、水硬性モルタル(スラリー)の硬化体の内部に位置する2枚のSUS製円盤の間隔(b=480mm)で除した値とする。
7)簡易断熱養生温度(℃):
簡易断熱養生温度の測定は、図6に示す装置を用いる。簡易断熱養生温度の測定は、混練直後の水硬性モルタル(スラリー)を断熱材中の型枠に打設し、打設直後より簡易断熱養生温度の測定を開始し、測定間隔は5分毎で行う。測定条件は、20℃、RH65%の恒温室内で行う。
8)ひび割れ確認(目視):
温度20℃、湿度65%の条件で混練した水硬性モルタル(スラリー)を用い、縦20cm×横12cm×高さ2cmのプラスティック容器に流し込み、温度35℃、湿度60%の条件で硬化させ、打ち込み7日後のひび割れ有無を目視にて確認する。評価指標は、○:ひび割れ無し、×:ひび割れ有りとする。
9)エア量(%):
温度20℃、湿度65%の条件で混練した水硬性モルタル(スラリー)を用い、JIS A1128:2005「フレッシュコンクリートの空気量の圧力による試験方法」に準拠して、エア量を示す。
10)混練条件A:
温度20℃、湿度65%の恒温室において、恒温室と同温度に養生した水硬性組成物と水を用い、2Lポリ容器に表1から表6に示す所定水比の水(比較例1〜4及び実施例1〜3の場合の水比は16.1%)を入れ、図4に示すタービン羽根を取り付けた0.15KW攪拌機(新東科学社製、品番:スリーワンモータBL600)を使用し、300rpmで攪拌しながら水硬性組成物1500gを全量投入後、780rpmで2分間混練して、水硬性モルタル(スラリー)を調製することを混練条件Aとする。
原料は以下のものを使用した。
1)水硬性成分:
・早強ポルトランドセメント(宇部早強セメント、ブレーン比表面積4500cm/g)。
・普通ポルトランドセメント(宇部普通セメント、ブレーン比表面積3300cm/g)。
比表面積の評価法は、JIS R5201−1997に規定されているブレーン空気透過装置を用いて測定されたものである。
2)細骨材:
・珪砂A : N30、瓢屋社製。
・珪砂B : S4、JFEミネラル社製。
・珪砂C : N50、瓢屋社製。
・珪砂D : N70、瓢屋社製。
・珪砂E : N40、瓢屋社製。
・珪砂F : SN40、瓢屋社製。
・珪砂G : SN50、瓢屋社製。
・珪砂H : SN70、瓢屋社製。
3)膨張材:
・無機系膨張材:太平洋ハイパーエクスパン構造用(太平洋マテリアル社製)。
・金属系膨張材:アルミニウム粉(粒度44μm以下60%以上、大和金属粉工業社製)。
4)流動化剤:
・流動化剤a:ポリカルボン酸系流動化剤、メルフラクスAP101F(BASFポゾリス社製)。
・流動化剤b:ナフタレンスルフォン酸系流動化剤、マイティ100(花王社製)。
5)収縮低減剤:ポリエーテル系収縮低減剤、ヒビダン(竹本油脂社製)
6)消泡剤:
・消泡剤A:ポリエーテル系消泡剤、B107F(ADEKA社製)
・消泡剤B:ポリエーテル系消泡剤、B115F(ADEKA社製)
7)ミクロシリカ:ブレーン比表面積19000cm/g、BASFポゾリズ社製
8)増粘剤
・増粘剤A:セルロース系増粘剤、ハイユーローズ(宇部興産社製)。
・増粘剤B:変性アクリルアミド系増粘剤、スタービス4302F(BASFポゾリス社製)。
・増粘剤C:ヒドロキシプロピルメチルセルロース系増粘剤、SCH300L(信越化学工業社製)
(参考比較例1、参考例1〜5)
表1に示す配合割合で水硬性組成物と水とを混練条件Aにしたがって混練して水硬性モルタル(スラリー)を調製し、同恒温室にてJ14ロート流下値(秒)を、温度35℃、湿度60%の恒温室にてひび割れ確認(目視)を測定した。測定結果を表1に示す。また、同水硬性モルタル(スラリー)を用いて長さ変化率を測定した結果を図7に示す。
(参考比較例2〜5、参考例1、2、5)
表2に示す配合割合で水硬性組成物と水とを混練条件Aにしたがって混練して水硬性モルタル(スラリー)を調製し、同恒温室にてJ14ロート流下値(秒)、ブリーディング率(%)を測定した。さらに温度35℃、湿度60%の恒温室にてひび割れ確認(目視)を測定した。水硬性組成物を混練条件Aで混練して調整したスラリーを硬化させた水硬性モルタル(スラリー)硬化体について28日圧縮強度を測定した。測定結果を表2に示す。また、参考例1、2、5、参考比較例2、5の水硬性モルタル(スラリー)を用いて長さ変化率を測定した結果を図8に、参考例1、2、5、参考比較例2〜5の水硬性モルタル(スラリー)を用いて簡易断熱養生温度(℃)を測定した結果を図9に示す。
(参考比較例6〜7、参考例1、2、5、6)
表3に示す配合割合で水硬性組成物と水とを混練条件Aにしたがって混練して水硬性モルタル(スラリー)を調製し、同恒温室にてJ14ロート流下値(秒)及びブリーディング率(%)を測定した。水硬性組成物を混練条件Aで混練して調整したスラリーを硬化させた水硬性モルタル(スラリー)硬化体について28日圧縮強度を測定した。また、使用した細骨材の粒度構成を表3に示す。測定結果を表3に示す。
(参考比較例8〜11、参考例1、5〜9)
表4に示す配合割合で水硬性組成物と水とを混練条件Aにしたがって混練して水硬性モルタル(スラリー)を調製し、同恒温室にてJ14ロート流下値(秒)、ブリーディング率(%)を測定した。測定結果を表4に示す。
(参考比較例12〜13、参考例1、2、5,10)
表5に示す配合割合で水硬性組成物と水とを混練条件Aにしたがって混練して水硬性モルタル(スラリー)を調製し、同恒温室にてJ14ロート流下値(秒)、膨張収縮率(%)及びブリーディング率(%)を測定した。さらに温度35℃、湿度60%の恒温室にてひび割れ確認(目視)を測定した。測定結果を表5に示す。また、同水硬性モルタル(スラリー)を用いて長さ変化率を測定した結果を図10に示す。
(参考比較例14〜15、参考例1、2、5、11)
表6に示す配合割合で水硬性組成物と水とを混練条件Aにしたがって混練して水硬性モルタル(スラリー)を調製し、同恒温室にてJ14ロート流下値(秒)、ブリーディング率(%)及びエア量(%)を測定した。水硬性組成物を混練条件Aで混練して調整したスラリーを硬化させた水硬性モルタル(スラリー)硬化体について28日圧縮強度を測定した。測定結果を表6に示す。
(参考例11)
参考例11の水硬性組成物を用いて、水硬性組成物と所定量の水とをミキサー装置を備えたスラリー製造・供給装置(図1)に供給して連続的に混練し、水硬性モルタル(スラリー)を連続製造してスラリーを一旦リザーバータンクに収容した。
水硬性モルタル(スラリー)は、リザーバータンク中で約2分間、多重螺旋状攪拌板とパドル型攪拌板とを配置した複合攪拌羽根を有する攪拌機によって強制攪拌条件下に保持した後、スラリー製造設備の吐出ポンプ(スラリーポンプ)を用いて吐出した。
スラリー製造設備の吐出ポンプ(スラリーポンプ)から吐出した水硬性モルタル(スラリー)は、ポンプから吐出直後を0mとし、ポンプに接続した内径が32mmで長さが25m、50m、75m及び100mのスラリーホースの筒先より吐出させてポンプ圧送性を評価した。また、連続製造してリザーバータンクに収容したスラリーと、吐出ポンプ(スラリーポンプ)を用いて、ポンプからの吐出直後を0mとし、25m、50m、75m及び100mのスラリーホースの筒先より吐出させてスラリーについて、J14ロート流下値、ブリーディング率、ひび割れ(目視)及び28日圧縮強度を測定した。
スラリー中に含まれる水比は、リザーバに収容したスラリーを一部取り出して電子レンジ法により測定した。
ポンプ圧送性、J14ロート流下値、ブリーディング率、ひび割れ(目視)及び28日圧縮強度の測定結果を表7に示す。
所定量のポリエーテル系収縮低減剤を用いた参考例1〜5の場合、図7に示すように混練条件Aで混練したスラリーの長さ変化率はポリエーテル系収縮低減剤を用いない参考比較例1よりも優れる。また、表1に示すように参考例1〜5のスラリーはひび割れ確認(目視)においても良好なひび割れ抵抗性が得られている。
特定の構成要素を持つ水硬性成分を用いた参考例1、2、5の場合、図9に示すように混練条件Aで混練したスラリーは簡易断熱養生した際の最高温度が参考比較例5のスラリーと比較して低く、発熱が抑制されている。さらに図8及び表2に示すように参考例1、2、5のスラリーは参考比較例5のスラリーと比較して長さ変化率が小さく、ひび割れ確認(目視)においても良好なひび割れ抵抗性が得られている。また表2に示すように、参考例1、2、5のスラリーは参考比較例2よりも材料分離抵抗性に優れる。特定の構成要素を持つ水硬性成分を用いた場合でも所定量よりも少ない参考比較例3のスラリーは、表2より参考例1、2、5のスラリーと比較して材料分離抵抗性が劣り、図8及び表2より比所定量よりも多い参考比較例4のスラリーは、参考例1、2、5のスラリーと比較してひび割れ抵抗性が劣る。
特定の粒度構成を持つ細骨材を用いた参考例1、2、5、6の水硬性組成物を混練条件Aで混練したスラリーは、表3に示すように参考比較例6と比較してJ14ロート流下値が良好で、参考比較例7よりも材料分離抵抗性に優れるため、優れたポンプ圧送性が得られている。所定量のポリカルボン酸系流動化剤又はナフタレンスルフォン酸系流動化剤を用いた参考例1、5、7〜9の水硬性組成物を混練条件Aで混練したスラリーは、表4に示すようにJ14ロート流下値が良好で、材料分離抵抗性に優れるため、優れたポンプ圧送性が得られている。所定量よりも少ない参考比較例9、10の水硬性組成物を混練条件Aで混練したスラリーは、J14ロート流下値が悪化し、所定量よりも多い参考比較例8、11の水硬性組成物を混練条件Aで混練したスラリーは、材料分離を生じるため優れたポンプ圧送性は得られない。
所定量の膨張材を用いた参考例1〜2、5、10の水硬性組成物を混練条件Aで混練したスラリーは、図10に示すように適度な長さ変化率が得られており、表5に示すひび割れ確認(目視)においても良好なひび割れ抵抗性及び材料分離抵抗性が得られている。
所定量の消泡剤を用いた参考例1〜2、5、11の水硬性組成物を混練条件Aで混練したスラリーは、表6に示すようにJ14ロート流下値が良好で、材料分離抵抗性に優れている。また同スラリーは参考比較例14の水硬性組成物を混練条件Aで混練したスラリーと比較してエア量が少ないため、スラリーを充填した際にエア溜りを生じにくく、一体性の高い構造物を作製できる。
参考例11に示す水硬性組成物を用いて調製したスラリーをポンプ圧送し、25m、50m、100mのスラリーホースを介してポンプ圧送実験を実施したところ骨材のアーチング現象や材料分離に起因するホース内閉塞現象は見られず、良好なポンプ圧送性が得られた。また同ポンプ圧送試験において、25m、50m、100mのスラリーホース先スラリーはJ14ロート流下値が良好で、優れた材料分離抵抗性が得られ、さらにひび割れ抵抗性にも優れているため、高耐久な硬化体を得ることができる。
(比較例1〜4、実施例1〜3)
表8に示す配合割合で水硬性組成物と水とを混練条件Aにしたがって混練して水硬性モルタル(スラリー)を調製した。なお、比較例1〜4及び実施例1〜3の水比は16.1%とした。このスラリーを、温度5℃、湿度65%の恒温室にてJ14ロート流下値(秒)、フロー値及び消泡時間等を測定した。測定結果を表8に示す。
フロー値は、建築改修工事監理指針(下巻、平成19年版)8章 耐震改修工事に記載の試験方法に準拠して測定した。すなわち、厚さ5mmのみがき板ガラスの上に内径50mm、高さ102mmの塩化ビニル製パイプ(内容積200ml)を置き、練り混ぜた水硬性モルタルを充填した後、パイプを引き上げた。広がりが静止した後、直角2方向の直径を測定し、その平均値をフロー値とした。
表8から明らかなように、増粘剤Cを含む実施例1〜3の場合、消泡する時間は、2分30秒(2.5分)以下と短かった。増粘剤Cとともに、消泡剤Bを併用した場合には、消泡剤Bの添加量が多いほど、消泡する時間が短かった。特に、消泡剤Bの添加量が0.15質量%以上の実施例1及び実施例2の場合には、消泡する時間が40秒以内であり非常に短かった。
表8から明らかなように、増粘剤Cを含む実施例1〜3の場合、発生する泡の量は、「やや多い」又は「少ない」であった。これに対して、増粘剤Cを含まない比較例の場合には、「非常に多い」又は「多い」であった。このことから、増粘剤Cを含む実施例1〜3の場合には、発生する泡の量を低減することができることが明らかとなった。
消泡後の表面は、次のように3段階で評価した。
1:表面に気泡抜け跡の凹凸有り
2:表面に気泡抜け跡の凹凸がわずかに有り
3:表面に気泡抜け跡の凹凸無し
表8から明らかなように、増粘剤Cを含む実施例1〜3の場合、消泡後の表面は、「2:表面に気泡抜け跡の凹凸がわずかに有り」又は「3:表面に気泡抜け跡の凹凸無し」だった。これに対して、増粘剤Cを含まない比較例の場合には、「1:表面に気泡抜け跡の凹凸有り」であった。このことから、増粘剤Cを含む実施例1〜3の場合には、表面の気泡抜け跡の凹凸を低減することができることが明らかとなった。
かわばりを次のように2段階で評価した。なお、「かわばり」とは、表面に薄膜状のものが形成することをいう。この「かわばり」ができることにより、気泡が抜けにくくなり消泡性が悪くなる。
1:かわばりの発生有り
2:かわばりの発生無し
表8から、増粘剤Cを含む実施例1〜3の場合、かわばりに関しては、「2:かわばりの発生無し」だった。これに対して、増粘剤Cを含まない比較例の場合には、「1:かわばりの発生有り」であった。このことから、増粘剤Cを含む実施例1〜3の場合には、かわばりの発生を低減することができることが明らかとなった。
なお、表8に示す実施例及び比較例では、細骨材の粒度は、特定の粒度構成のものを用いた。すなわち、表8に示す実施例及び比較例で用いた細骨材の粒度は、細骨材100質量%中に、30μm以上〜300μm未満の粒子を10.0〜20.0質量%含み、300μm以上〜600μm未満の粒子を10.0〜25.0質量%含み、600μm以上〜1180μm未満の粒子を35.0〜75.0質量%含み、1180μm以上〜2000μm未満の粒子を1.0〜35.0質量%含むものであった。そのため、本発明の実施例では、J14ロート流下値が良好で、材料分離抵抗性に優れるものだった。また、特定の粒度構成を持つ細骨材を用いた参考例1、2、5、6の水硬性組成物の表3に示す結果からも、増粘剤Cとともに、特定の粒度構成を持つ細骨材を用いる本発明の実施例の場合には、J14ロート流下値が良好で、材料分離抵抗性に優れるため、優れたポンプ圧送性が得られていることが推測される。
10 : 混練スクリュー
11 : スラリー製造・供給装置
12 : 水硬性組成物
13 : ホッパー
14 : ホッパースクリュー
15 : 給水口
16 : 混練装置(ミキサー)
17 : 水
18 : モルタル(スラリー)排出口
19 : 水硬性モルタル(スラリー)
20 : リザーバータンク
21 : 水硬性モルタル(スラリー)
22 : スターラースクリュー(多重螺旋状攪拌板とパドル型攪拌板とを配置した複合攪拌羽根)
23 : 移送スクリュー
24 : スネークポンプ(スラリーポンプ)
25 : 水硬性モルタル(スラリー)
26、27 : モーター
28 : 動力伝達ベルト
31 : 水硬性モルタル・スラリー調製・施工用トラック
32 : 水硬性組成物の供給口
33 : 水硬性組成物タンク
34 : 水硬性スラリー
35 : 混練装置(ミキサー)
36 : ホッパー
37 : 水硬性組成物
38 : スクリューフィーダー
39 : 水タンク
40 : 水供給ポンプ
41 : 水供給パイプ
42 : 多重螺旋状攪拌板とパドル型攪拌板とを配置した複合攪拌羽根
43 : 水硬性スラリータンク(リザーバータンク)
44 : スラリーポンプ
45 : スラリーホース

Claims (4)

  1. 水硬性成分と、細骨材と、ポリエーテル系収縮低減剤と、ポリカルボン酸系流動化剤又はナフタレンスルフォン酸系流動化剤と、消泡剤と、無機系膨張材と、ヒドロキシプロピルメチルセルロース系増粘剤とを含む水硬性組成物であって、
    水硬性組成物は水硬性組成物100質量%中に、
    水硬性成分を34.0〜38.0質量%含み、
    ポリエーテル系収縮低減剤を0.10〜0.50質量%含み、
    ポリカルボン酸系流動化剤を0.050〜0.075質量%又はナフタレンスルフォン酸系流動化剤を0.350〜0.480質量%含み、
    消泡剤を0.001〜2.0質量%含み、
    無機系膨張材を0.3〜4.0質量%含み、
    ヒドロキシプロピルメチルセルロース系増粘剤を0.001〜0.6質量%含み、
    さらに、水硬性成分は、水硬性成分100質量%中に
    早強ポルトランドセメントを55.0〜65.0質量%含み、
    普通ポルトランドセメントを35.0〜45.0質量%含む、
    水硬性組成物。
  2. 請求項1に記載の水硬性組成物と水とを混練して得られる水硬性モルタル。
  3. 請求項2に記載の水硬性モルタルを硬化させて得られる水硬性モルタルの硬化体。
  4. 請求項1に記載の水硬性組成物を貯蔵するタンクを備えた水硬性モルタル調製・施工用トラックに搭載したミキサーを用いて、水硬性組成物と水とを連続的に混練して水硬性モルタルを調製する工程と、前記トラックに搭載されたスラリーポンプによりスラリーホースを介して水硬性モルタルを施工箇所へ連続的に供給・打設して硬化させる工程とを含む、グラウト用の水硬性モルタルの施工方法。
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